説明

木工用塗料

【課題】硬化後に優れた硬度を示し、平滑な塗膜を形成することができる木工用塗料を提供すること。
【解決手段】ポリオール樹脂を含有する塗料主剤とポリイソシアネート樹脂を含有する硬化剤とを混合して用いる2液型の木工用塗料である。塗料主剤は、ポリオール樹脂100質量部に対して合成繊維を10〜70質量部含有する。合成繊維は、ビニロン繊維、ポリアミド系合成繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリオレフィン系合成繊維、ロックウール、グラスウールから選ばれる1種以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料主剤と硬化剤とを混合して用いる2液型の木工用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ナラ、ケヤキ、トチ、スギ、及びヒノキ等の木材は、家具及び建築部材等に広く用いられている。しかし、木材は一般に硬度が低く、表面が傷付きやすい。そのため、特に家具等の用途においては、表面に塗装が施されていた。また、塗装には、木材表面の凹凸を小さくできるという効果もある。
【0003】
木材用の塗料としては、塗料主剤とその硬化剤とを使用時に混合して用いる2液型の木工用塗料がある。具体的には、例えばポリオール樹脂を含有する塗料主剤と、ポリイソシアネート樹脂を含有する硬化剤とからなる塗料組成物がある(特許文献1参照)。
【0004】
このような塗料主剤と硬化剤とを混合すると、ポリオール樹脂の水酸(OH)基と、ポリイソシアネート樹脂のイソシアネート(NCO)基とが反応し、ウレタン結合を形成して硬化する。反応は常温で進行し、安定なウレタン結合を形成するため、硬度に優れた塗膜を形成することができる。
【0005】
ところが、スギ等の軟質木材を家具等の用途に適用する場合には、より硬度に優れた木工用塗料が望まれる。そこで、塗料主剤に天然繊維を添加した木工用塗料が開発されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−32759号公報
【特許文献2】特開2009−209237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、塗料に天然繊維を用いると、乾燥後の塗膜表面の表面粗さが大きくなり易い。そのため、表面の凹凸が目立ち、意匠性が要求される家具等の用途に用いることが困難になってしまう。また、特に表面における平滑性が要求される、テーブルや机等に適用することができなくなってしまうという問題があった。
そこで、軟質木材を家具等の用途に適用するためには、より高い硬度を示す木工用塗料の開発が望まれていた。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、硬化後に優れた硬度を示し、平滑な塗膜を形成することができる木工用塗料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリオール樹脂を含有する塗料主剤とポリイソシアネート樹脂を含有する硬化剤とを混合して用いる2液型の木工用塗料において、
上記塗料主剤は、上記ポリオール樹脂100質量部に対して合成繊維を10〜70質量部含有することを特徴とする木工用塗料にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の木工用塗料において最も注目すべき点は、上記塗料主剤が上記合成繊維を上記特定量含有している点にある。
そのため、上記木工用塗料は、硬化後に優れた硬度を示すことができると共に、例えば天然繊維を添加した場合に比べて、平滑な塗膜を形成させることができる。
合成繊維は、天然繊維に比べて形状が一定であるため、上記木工用塗料に用いた場合には上述のごとく塗膜の硬度を高める効果があると共に、表面に発生しうる凹凸を防止することができる。
【0011】
上記塗料主剤は水酸基を有するポリオール樹脂を含有し、上記硬化剤はイソシアネート基を有するポリイソシアネート樹脂を含有するため、上記木工用塗料の使用時に上記塗料主剤と上記硬化剤とを混合すると、水酸基とイソシアネート基が反応してウレタン結合を形成して硬化し、ポリウレタン系樹脂からなる塗膜を形成させることができる。
【0012】
該塗膜は、上記のごとく、合成繊維を含有するため、高い硬度を発揮できる共に、表面にほとんど凹凸を形成することもない。即ち、上記木工用塗料を用いれば、硬度が高く、表面平滑性に優れた塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1にかかる、下塗り塗膜、中塗り塗膜、及び上塗り塗膜を表面に形成した杉単板の断面構造を示す説明図。
【図2】実施例2にかかる、木工用塗料(試料X17)によって形成した塗膜の任意の部位Aについて測定した粗さ曲線を示す説明図。
【図3】実施例2にかかる、木工用塗料(試料X17)によって形成した塗膜の任意の部位Bについて測定した粗さ曲線を示す説明図。
【図4】実施例2にかかる、木工用塗料(試料X17)によって形成した塗膜の任意の部位Cについて測定した粗さ曲線を示す説明図。
【図5】実施例2にかかる、木工用塗料(試料X18)によって形成した塗膜の任意の部位Aについて測定した粗さ曲線を示す説明図。
【図6】実施例2にかかる、木工用塗料(試料X18)によって形成した塗膜の任意の部位Bについて測定した粗さ曲線を示す説明図。
【図7】実施例2にかかる、木工用塗料(試料X18)によって形成した塗膜の任意の部位Cについて測定した粗さ曲線を示す説明図。
【図8】実施例2にかかる、木工用塗料(試料X19)によって形成した塗膜の任意の部位Aについて測定した粗さ曲線を示す説明図。
【図9】実施例2にかかる、木工用塗料(試料X19)によって形成した塗膜の任意の部位Bについて測定した粗さ曲線を示す説明図。
【図10】実施例2にかかる、木工用塗料(試料X19)によって形成した塗膜の任意の部位Cについて測定した粗さ曲線を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の木工用塗料は、ポリオール樹脂を含有する塗料主剤とポリイソシアネート樹脂を含有する硬化剤とを混合して用いる2液型の木工用塗料である。該木工用塗料は、使用時に、上記塗料主剤と上記硬化剤とを混合して使用する。上記塗料主剤と上記硬化剤とを混合して木材に塗布すると、室温で硬化が進行し、木材の表面に硬度の高い塗膜を形成することができる。
【0015】
上記木工用塗料は、例えばナラ、ケヤキ、トチ、スギ、及びヒノキ等の木材に対して適用することができる。
好ましくは、スギ等の軟質木材に適用することがよい。この場合には、上記木工用塗料による硬度の向上効果がより顕著になる。
【0016】
上記塗料主剤及び上記硬化剤からなる上記木工用塗料は、下塗り塗料として、下塗り膜の形成に用いることができる。また、上記木工用塗料に、シリカ、タルク、及びステアリン酸亜鉛等を適宜添加することにより、中塗り用塗料及び上塗り用塗料として、中塗り膜及び上塗り膜の形成に用いることも可能である。
【0017】
上記塗料主剤における上記ポリオール樹脂としては、例えば水酸基を有するポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、エポキシ系樹脂等がある。
好ましくは、上記ポリオール樹脂は、ポリエステル系ポリオール樹脂、アクリル系ポリオール樹脂、及びアルキド系ポリオール樹脂から選ばれる1種以上であることがよい(請求項3)。
一般に、硬度の高い塗膜を形成すると、塗料の使用可能時間が短くなったり、硬化時のひずみが大きくなったり、塗膜が変色したり、塗膜に割れが発生したりし易くなる。上述のポリエステル系ポリオール樹脂、アクリル系ポリオール樹脂、及びアルキド系ポリオール樹脂から選ばれる1種以上を採用することにより、これらの問題を回避しつつ、高硬度の塗膜の形成が可能になる。
また、上記ポリオール樹脂としては、OH価が100〜300のものを採用することが好ましい。
【0018】
上記ポリイソシアネート樹脂としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びヘキサメチレンジイソシアネート(MDI)等がある。
上記木工用塗料においては、上記塗料主剤と上記硬化剤とを混合してポリオール樹脂とポリイソシアネート樹脂とを反応させることにより、ウレタン結合を形成してポリウレタン樹脂を生成させ、硬化させることができる。
【0019】
上記塗料主剤は、上記ポリオール樹脂100質量部に対して合成繊維を10〜70質量部含有する。上記合成繊維の含有量が上記ポリオール樹脂100質量部に対して10質量部未満の場合には、硬度を十分に向上させることができなくなるおそれがある。一方、70質量部を超えて添加しても、硬度の向上効果はほとんどなくなり、コストが増大してしまうおそれがある。
より好ましくは、上記合成繊維の含有量は、上記ポリオール樹脂100質量部に対して20質量部以上がよく、さらに好ましくは25質量部以上がよい。
【0020】
上記合成繊維は、ビニロン繊維、ポリアミド系合成繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリオレフィン系合成繊維、ロックウール、グラスウールから選ばれる1種以上であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、硬度及び表面平滑性の向上効果をより顕著にすることができる。特に好ましくは、ビニロン繊維がよい。
ポリアミド系合成繊維としては例えばナイロン繊維、ポリエステル系合成繊維としては例えばポリエチレンテレフタレート繊維、ポリオレフィン系合成繊維としては例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等を採用することができる。
【0021】
上記合成繊維としては、繊維長80〜200μmのものを採用することが好ましい。
この場合には、硬度及び表面平滑性を向上できるという上述の作用効果がより一層顕著になる。繊維長が80μm未満の場合には、繊維同士が十分に絡みあうことができず、硬度の向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。また硬度を十分に向上させるために必要な合成繊維の添加量が多くなり、コストが高くなるおそれがある。一方、200μmを超える場合には、硬化後の塗膜表面の凹凸が激しくなり、表面平滑性が低下するおそれがある。
【0022】
上記塗料主剤及び上記硬化剤は、その粘度等を調整して混合及び塗布を容易に行うことができるように、有機溶剤を適量で含有することができる。
好ましくは、上記塗料主剤は、上記ポリオール樹脂100質量部に対して、有機溶剤を100〜250質量部含有することがよい(請求項4)。
上記有機溶剤の含有量が100質量部未満の場合には、粘度が高くなり、硬化剤との混合が困難になったり、混合後に行う木材への塗布が困難になるおそれがある。一方、250質量部を超える場合には、塗料成分が分離し易くなり、組成が不均一になったり、被塗布物の周囲に塗料が溜まり易くなり、均一な厚みでの塗布が困難になるおそれがある。より好ましくは、上記有機溶剤の含有量は、上記ポリオール樹脂100質量部に対して150〜200質量部がよい。
【0023】
また、同様の観点から、上記硬化剤は、上記ポリイソシアネート樹脂100質量部に対して、有機溶剤を100〜200質量部含有することが好ましい(請求項5)。より好ましくは、120〜170質量部がよい。
【0024】
上記塗料主剤及び上記硬化剤に用いる溶剤としては、それぞれ上記ポリオール樹脂及び上記ポリイソシアネート樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
具体的な有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGA)等のエステル系溶剤等を用いることができる。
【0025】
上記塗料主剤及び上記硬化剤は、上記ポリオール樹脂及び上記ポリイソシアネート樹脂の含有量に応じて適宜最適な混合比で混合して使用することができる。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
次に、本発明にかかる木工用塗料の実施例及び比較例について説明する。
実施例にかかる木工用塗料は、ポリオール樹脂を含有する塗料主剤とポリイソシアネート樹脂を含有する硬化剤とを混合して用いる2液型の木工用塗料である。塗料主剤は、上記ポリオール樹脂100質量部に対して合成繊維を10〜70質量部含有する。
【0027】
本例においては、後述の表1〜表3に示すごとく、合成繊維、天然繊維、又は無機化合物からなる添加剤を含有する塗料主剤を作製し、これらの特性を比較評価する。即ち、本例においては、表1〜表3に示すごとく、塗料主剤における添加剤の種類及び量を変えて31種類の木工用塗料を作製した。
【0028】
本例において、塗料主剤は、ポリオール樹脂100質量部に対して、合成繊維、天然繊維、又は無機化合物と、溶剤とを後述の表1〜3に示す割合で添加し、デスパーで撹拌することにより作製した。また、合成繊維、天然繊維、及び無機化合物のいずれも添加しない塗料主剤(試料X1)も比較用として作製した(表1参照)。
【0029】
本例において、ポリオール樹脂としては、イソシアネート硬化型のポリエステル系樹脂であるタイ・ドゥノゥ・ゲンゲン(Thai Do No Gen Gen)社製のポリエステル樹脂PO265−78を用いた。
また、合成繊維としては、ビニロン繊維(ユニチカ(株)製の「ビニロンファイバー」、繊維長80〜150μm)、又はロックウール(ラピナス社製の「ラピナスファイバー」、繊維長100〜150μm)を採用した。
【0030】
天然繊維としては、杉材をのこぎりで削りだし分粒して得た木粉(繊維長100〜300μm)、又はセルロースパウダー(日本製紙ケミカル社製のKCフロック、平均繊維長28μm)を採用した。
無機化合物添加剤として、発泡ガラス球体(美瑛白土工業社製のタイセツバルーン、平均粒径120μm)を採用した。
また、溶剤としては、酢酸ブチルを用いた。
【0031】
次に、硬化剤は、ポリイソシアネート樹脂100質量部に対して、溶剤を122質量部混合することにより作製した。
ポリイソシアネート樹脂としては、TDI型ポリイソシアネートである三井化学社製の「タケネートD204」を採用した。溶剤としては、塗料主剤と同様に酢酸ブチルを用いた。
【0032】
次に、図1に示すごとく、本例において作製した試料X1〜試料X31の木工用塗料をそれぞれ用いて、木材(杉単板)1の表面に、下塗り塗膜2、中塗り塗膜3、上塗り塗膜4を形成した。
【0033】
下塗り塗膜2の形成にあたっては、まず各試料について、塗料主剤と硬化剤とを混合し、下塗り用の塗料を作製した。この塗料をスプレーガンで杉単板1の表面に塗布量20g/尺で塗装した。その後、室温で1時間乾燥して塗料を硬化させ、杉単板の表面に塗膜を形成した。次いで、硬化後の塗膜上に、さらに同じ塗料を1回目の塗装と同様にして重ね塗りし、室温で4時間乾燥させた。このようにして図1に示すごとく、杉単板1の表面に下塗り塗膜2を形成した。乾燥後の下塗り塗膜2の膜厚は約160μmである。
【0034】
次に、以下のようにして下塗り塗膜2上に中塗り塗膜3を形成した。
まず、下塗り塗膜2の形成に用いた塗料主剤と硬化剤との混合物中に、タルク5質量%、ステアリン酸亜鉛3質量%を添加し、中塗り用塗料を作製した。この中塗り用塗料を下塗り塗膜2上に、スプレーガンで塗布量10g/尺で塗装し、室温で30分間乾燥して塗料を硬化させた。次いで、さらに同じ塗料を1回目の塗装と同様にして重ね塗りし、室温で4時間乾燥させた。このようにして図1に示すごとく、下塗り塗膜2上に中塗り塗膜3を形成した。乾燥後の中塗り塗膜2の膜厚は約60μmである。
【0035】
次に、以下のようにして中塗り塗膜3上に上塗り塗膜4を形成した。
まず、下塗り塗膜2の形成に用いた塗料主剤と硬化剤との混合物中に、シリカからなるつや消し剤2質量%を添加し、上塗り用塗料を作製した。次に、中塗り塗膜3の表面をサンドペーパー(♯400)で研磨して塗膜表面を平滑にした。次いで、上塗り用塗料を平滑にした中塗り塗膜3上に、スプレーガンで塗布量80g/尺で塗装し、室温(20℃〜25℃)で7日間乾燥させた。このようにして図1に示すごとく、中塗り塗膜3上にさらに上塗り塗膜3を形成した。乾燥後の上塗り塗膜2の膜厚は約30μmである。
【0036】
次に、各試料(試料X1〜試料X31)の木工用塗料を用いて杉単板上に形成した塗膜の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度は、JIS K5600に規定の「引っかき硬度(鉛筆法)」に準じて行った。その結果を表1〜表3に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
表1〜3より知られるごとく、合成繊維又は天然繊維をポリオール樹脂100質量部に対して10質量部以上含有する木工用塗料(試料X12〜X15、試料X17〜X20、試料X22〜X25、試料X27〜試料X30)は、添加剤を含有しないものや無機化合物を含有するものに比べて高い硬度を示すことがわかる。また、合成繊維及び天然繊維の添加量を大きくする程、硬度が高くなるが、添加量に対する硬度向上効果は徐々に飽和することがわかる(表1〜表3参照)。よって、添加量の上限は70質量部未満であることが好ましい。
【0041】
また、合成繊維を含有する塗料主剤を用いた場合には、上述のごとく優れた硬度を発揮できることがわかるが、合成繊維の中でもビニロン(ポリビニルアルコール系合成繊維)を用いるとより硬度を向上できることがわかる。
【0042】
(実施例2)
本例は、実施例1で作製した試料X1、及び試料X17〜X21の木工用塗料について、耐衝撃性、表面粗さ、密着性の評価を行った。
試料X1は、添加剤を含有しない塗料主剤を用いた木工用塗料である(表1参照)。
試料X17は、ポリオール樹脂100質量部に対してビニロン(合成繊維)を29.6質量部含有する塗料主剤を用いた木工用塗料である(表2参照)。
【0043】
試料X18は、ポリオール樹脂100質量部に対してロックウール(合成繊維)を29.6質量部含有する塗料主剤を用いた木工用塗料である(表2参照)。
試料X19は、ポリオール樹脂100質量部に対して木粉を29.6質量部含有する塗料主剤を用いた木工用塗料である(表2参照)。
【0044】
試料X20は、ポリオール樹脂100質量部に対してセルロースパウダーを29.6質量部含有する塗料主剤を用いた木工用塗料である(表2参照)。
試料X21は、ポリオール樹脂100質量部に対して発泡ガラス球体を29.6質量部含有する塗料主剤を用いた木工用塗料である(表2参照)。
【0045】
これらの試料X1、試料X17〜X21を用いて、実施例1塗同様にして杉単板上に塗膜を形成した。そして、形成された塗膜について、耐衝撃性、表面粗さ、及び密着性の評価を行った。
【0046】
耐衝撃性の評価は、JIS K5600に準じて行った。
具体的には、デュポン式の衝撃試験機(コーティングテスター(株)製のデュポン衝撃試験器)を用いて行い、塗膜上に接触配置させた撃芯(先端R寸法:1/2インチ)上に、所定の高さから質量300gのおもりを落下させて塗膜表面のワレの発生を目視にて評価した。落下させるおもりの高さを5cm〜50cmまでの間で5cm間隔で変化させ、塗膜にワレが発生したときの高さを調べた。その結果を表4に示す。なお、表4には、ワレが発生しない最大の高さを示す。5cmの高さでも割れが発生した場合は、表中に「−」と示す。
【0047】
次に、表面粗さは、表面粗さ測定器を用いて測定した。
具体的には、(株)東京精密製の「サーフコム1800」を用いて測定した。その結果を表4に示す。なお、表面粗さRaの測定条件は次の通りである。
算出規格:JIS B0601(1994)規格
測定種別:粗さ測定
測定長さ:4.0mm
カットオフ波長:0.8mm
測定倍率:×5K
測定速度:0.60mm/s
カットオフ種別:ガウシアン
傾斜補正:最小二乗直線補正
【0048】
また、参考までに試料X17〜試料19については、表面粗さ測定器によって得られる粗さ曲線を図2〜図10示す。図2〜図10において、縦軸は表面粗さ(μm)を示し、横軸は測定長さ(mm)を示す。
図2〜図4は、試料X17を用いて作製した塗膜の表面粗さ曲線である。図2〜図4は、いずれもが試料X17の表面粗さ曲線を示すが、それぞれ異なる部位におけるものである。図2においては、表面粗さ(算術平均粗さ)Ra:0.40μm、最大高さRy:2.59μm、十点平均粗さRz:1.88μmである。図3においては、Ra:0.45μm、Ry:3.06μm、Rz:2.18μmである。図4においては、Ra:0.39μm、Ry:3.02μm、Rz:1.91μmである。
【0049】
図5〜図7は、試料X18を用いて作製した塗膜の表面粗さ曲線である。図5〜図7は、いずれもが試料X18の表面粗さ曲線を示すが、それぞれ異なる部位におけるものである。図5においては、Ra:0.40μm、Ry:3.25μm、Rz:2.23μmである。図6においては、Ra:0.38μm、Ry:3.16μm、Rz:2.08μmである。図7においては、Ra:0.45μm、Ry:4.16μm、Rz:2.43μmである。
【0050】
図8〜図10は、試料X19を用いて作製した塗膜の表面粗さ曲線である。図9〜図10は、いずれもが試料X19の表面粗さ曲線を示すが、それぞれ異なる部位におけるものである。図8においては、Ra:0.73μm、Ry:4.54μm、Rz:3.15μmである。図9においては、Ra:1.38μm、Ry:6.56μm、Rz:5.09μmである。図10においては、Ra:1.35μm、Ry:5.93μm、Rz:4.81μmである。
【0051】
また、密着性の評価は、JIS K5600に規定の「クロスカット法」に準じて行った。具体的には、カッターナイフで、塗膜を貫通して杉単板に達する切り傷を1辺2mmの碁盤目(100個)状に付けた。次いで、塗膜にセロハンテープを付着させた後、そのセロハンテープを剥離させ、セロハンテープに接着して剥離したマス目の数を計測した。その結果を表4に示す。なお、表4には、100個のマス目において剥離しなかったマス目の数を示す。即ち、全く剥離しなかった場合には「100/100」になる。
また、参考までに表4には、実施例1で測定した各試料の鉛筆硬度を併記する。
【0052】
【表4】

【0053】
表4より知られるごとく、塗料主剤に合成繊維を含有する試料X17及び試料X18は、他の試料に比べて優れた耐衝撃性を示すことがわかる。
また、試料X17及び試料X18は、上述のごとく耐衝撃性に優れるだけでなく、表面粗さが小さく、表面平滑性にも優れていることがわかる。そして、密着性において、他の試料と同様に優れた密着性を示した。
このように、本例によれば、合成繊維を用いることにより、硬化後に優れた硬度を示し、平滑な塗膜を形成することができる木工用塗料を提供できることがわかる。
【符号の説明】
【0054】
1 木材(杉単板)
2 下塗り塗膜
3 中塗り塗膜
4 上塗り塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール樹脂を含有する塗料主剤とポリイソシアネート樹脂を含有する硬化剤とを混合して用いる2液型の木工用塗料において、
上記塗料主剤は、上記ポリオール樹脂100質量部に対して合成繊維を10〜70質量部含有することを特徴とする木工用塗料。
【請求項2】
請求項1に記載の木工用塗料において、上記合成繊維は、ビニロン繊維、ポリアミド系合成繊維、ポリエステル系合成繊維、ポリオレフィン系合成繊維、ロックウール、グラスウールから選ばれる1種以上であることを特徴とする木工用塗料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の木工用塗料において、上記ポリオール樹脂は、ポリエステル系ポリオール樹脂、アクリル系ポリオール樹脂、及びアルキド系ポリオール樹脂から選ばれる1種以上であることを特徴とする木工用塗料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の木工用塗料において、上記塗料主剤は、上記ポリオール樹脂100質量部に対して、有機溶剤を100〜250質量部含有することを特徴とする木工用塗料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の木工用塗料において、上記硬化剤は、上記ポリイソシアネート樹脂100質量部に対して、有機溶剤を100〜200質量部含有することを特徴とする木工用塗料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−162736(P2011−162736A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30000(P2010−30000)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(391029635)玄々化学工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】