説明

末端リン酸標識ヌクレオチド及び使用方法

本発明は、標識基質又は基質類似体を使用してターゲットを検出する改善方法に関する。本方法は、酵素触媒反応で基質又は基質類似体を反応させて、このような基質又は基質類似体が反応した場合にのみ独立に検出可能なシグナルを伴う標識成分を生じさせるステップを含む。本発明は特に、核酸ポリメラーゼのための基質として末端リン酸標識ヌクレオチドを使用することを元に、試料中の核酸を検出する方法を記載している。本発明により提供される方法は、末端リン酸に結合している比色染料、化学発光又は蛍光成分、質量タグ又は電気化学タグを有するポリリン酸ヌクレオシド、ポリリン酸ジデオキシヌクレオシド又はポリリン酸デオキシヌクレオシド類似体を利用する。核酸ポリメラーゼが基質としてこの類似体を使用すると、酵素活性可能な標識は、ホスホリル転移による無機ポリリン酸副産物に存在することになる。ホスファターゼによるホスホリル転移からのポリリン酸生成物の分解により、その上に結合している標識に検出可能な変化が生じる。ホスファターゼの存在下にポリメラーゼアッセイを行うと、ターゲット核酸のDNA又はRNA合成及び検出をリアルタイム監視するための簡便な方法が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年4月1日提出された米国特許出願第10/113030号明細書の連続部分(continuation−in−part)である2003年2月5日に提出された米国特許出願第10/358818号明細書による優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、標識基質又は基質類似体を使用してターゲットを検出するための改善方法に関する。この改善は、酵素触媒反応で、基質又は基質類似体を反応させて、このような基質又は基質類似体が反応した場合にのみ、独立して検出可能なシグナルを伴う標識成分を生じさせることを含む。本発明は特に、核酸ポリメラーゼのための基質として、3個又はそれ以上のリン酸を含有する末端リン酸標識ヌクレオチドを使用することを元に、試料中のポリヌクレオチドを検出する方法に関する。使用される標識は、ポリメラーゼの作用を受けた場合にのみ、化学変化をうけて、蛍光又は呈色試薬になる染料である。
【0003】
高い特異性及び感受性で、試料中の特異的核酸又は分析物を検出するための方法は、知られている。このような方法は通常、特異的なターゲット配列又は分析物の存在を元に、核酸配列を増幅することを初めに必要とする。増幅の後に、増幅された配列を検出及び定量する。核酸のための慣用の検出系には、蛍光標識の検出、蛍光酵素−架橋検出系、抗体仲介標識検出及び放射性標識の検出が含まれる。
【0004】
現在幅広く使用されている検出方法の欠点の1つは、最終的に標識生成物又は副産物から、標識出発物質を分離することが必要であることである。このような分離は通常、検出のための膜の上でターゲット配列をゲル電気泳動又は固定化させることが必要である。さらに往々にして、多数の試薬又はインキュベーションステップが、検出のために必要である。
【0005】
DNA及びRNAポリメラーゼは、三リン酸成分のγ位に、又はその代わりに、修飾を伴うヌクレオシドを認識及び利用しうることが知られている。さらに、γ修飾された三リン酸ヌクレオチドを認識及び利用する様々なポリメラーゼの能力は、γリン酸に結合する成分に応じて、変動するようであることが知られている。通常、RNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼよりも無差別的である。
【0006】
γリン酸修飾されたヌクレオチドの存在下に、RNAポリメラーゼからのRNA合成を監視するための比色アッセイが既に報告されている。この先行する報告では、RNAポリメラーゼ反応は、そのγリン酸の所でジニトロフェニル基で修飾されている、ガンマ修飾されているアルカリホスファターゼ耐性の三リン酸ヌクレオチドの存在下に行われた。RNAポリメラーゼ反応が、唯一の三リン酸ヌクレオチドとしてのこのγ修飾NTP及びホモポリマーテンプレートの存在下に行われると、RNAポリメラーゼは修飾NTPを認識及び利用することができることが判明した。さらに、ホスホリル転移からのピロリン酸p−ニトロフェニルアルド生成物を消化して、色素原p−ニトロフェニレートにするアルカリホスファターゼの存在下に、ポリメラーゼ反応が行われると、吸収が増大することが報告された。この検出方法の欠点は、アルカリホスファターゼの存在下に行われるリアルタイム比色アッセイは、ホモポリマーテンプレートを伴って初めて機能することである。
【0007】
したがって、ヘテロポリマーテンプレートの存在下に、RNAを検出するための方法を提供することが有利であり、この際、この方法は、アルカリホスファターゼに実質的に非反応性である唯一のヌクレオチドとしての単一の末端リン酸修飾されたヌクレオチドを使用することに制限されるべきではないであろう。これにより、ヘテロポリマーテンプレートを使用するRNA合成をリアルタイム監視するためのシングルチューブアッセイが可能である。
【0008】
通常、アッセイでの蛍光染料は、標識実体で、その近接に設置された分子により失活され、構造が変化し、失活剤が除去され、染料から除去されるか、もしくは不活性化されると、検出可能なシグナルをもたらす。この時点で、検出可能なシグナルが生じる。しかしながら、失活が完全でないので、このようなアッセイの動的な幅は限られる。
【0009】
さらに、末端リン酸でのラベルのアイデンティティーを変化させて、RNAポリメラーゼによるより良好な認識及び利用が可能であるRNAのための同様のアッセイを提供することが有利である。さらに、末端リン酸上のラベルを変化させて、化学発光及び蛍光検出又は還元電位、さらに、改善された比色検出が可能であり、その際、検出のために、単純で、日常的な器具のみが必要であり、動的幅が高まることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
DNAポリメラーゼは、末端修飾されたヌクレオチドの認識及び利用に関して、RNAポリメラーゼよりも無差別ではないと当技術分野で知られていて、その際、末端位置に位置する成分のアイデンティティーは、ヌクレオチドに対するDNAポリメラーゼの特異性にかなり影響を及ぼしうるので、DNAポリメラーゼ活性を監視することによりDNAを検出するための非放射性方法を提供することがかなり望ましい。さらに、DNAの合成及び検出を、リアルタイム監視するためのシングルチューブアッセイで行うことができ、さらに、ヌクレオチド基質の末端リン酸に位置する標識は、化学発光、蛍光及び比色検出、さらに、質量又は環言電位による分析を包含しうることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、標識基質又は基質類似体を使用して、ターゲットを検出する改善方法に関する。この改善は、酵素触媒反応で、基質又は基質類似体を反応させて、これにより、このような基質又は基質類似体が反応した場合にのみ、独立して検出可能なシグナルを伴う標識成分を生じさせることを含む。さらに本発明は、核酸配列の存在を検出する方法も提供するが、これは、a)核酸ポリメラーゼ反応を行うが、その際、反応には、標識ポリリン酸の生成をもたらす末端リン酸標識ヌクレオチドの反応が含まれるステップと、b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、検出可能な種を生じさせるステップと、c)検出可能な種の存在を検出するステップとを含む。本発明でのホスファターゼの定義には、リン酸モノエステル、ポリリン酸及びヌクレオチドを分解して、無機リン酸を放出する何らかの酵素が含まれる。本発明では、この酵素は、末端標識リン酸ヌクレオシドを分解しない(即ち、末端リン酸標識ヌクレオチドは、ホスファターゼに対して実質的に非反応性である)。本願明細書で提示されるホスファターゼの定義には、これらに限られないが、アルカリホスファターゼ(EC3.1.3.1)及び酸ホスファターゼ(EC3.1.3.2)が含まれる。本発明のヌクレオチドの定義には、そのままか、又は修飾されたリン酸ヌクレオシドが含まれる。
【0012】
本発明はさらに、DNA配列の存在を検出する方法を提供し、これは、a)末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に、DNAポリメラーゼ反応を行い、この反応により、標識ポリリン酸の生成をもたらすステップと、b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、検出可能な種を生じさせるステップと、c)検出可能な種の存在を検出するステップを含む。
【0013】
さらに、核酸配列の存在を検出する方法を提供するが、これは、(a)ポリリン酸鎖中に4個又はそれ以上のリン酸基を有する1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に、核酸ポリメラーゼ反応を行い、この反応により、標識ポリリン酸を生じさせるステップと、(b)標識ポリリン酸を検出するステップとを含む。
【0014】
加えて、本発明は、核酸配列の存在を検出する方法に関し、これは、(a)ポリリン酸鎖中に4個又はそれ以上のリン酸基を有する1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に、核酸ポリメラーゼ反応を行い、この反応により、標識ポリリン酸を生じさせるステップと、(b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、検出可能な種を生じさせるステップと、(c)検出可能な種の存在を検出するステップを含む。
【0015】
本発明のさらなる態様は、核酸を定量する方法に関し、これは、(a)核酸ポリメラーゼ反応を行い、その際、反応には、標識ポリフォスフェートの生成をもたらす末端リン酸標識ヌクレオチドの反応が含まれるステップと、(b)標識ポリフォスフェートとフォスファターゼとを反応させて、核酸の量に実質的に比例する量で検出可能な副産物種を生じさせるステップと、(c)検出可能な種を測定するステップと、(d)既知の標準を使用して、測定を比較し、核酸の量を決定するステップとを含む。
【0016】
本発明はさらに、DNA配列を定量する方法に関し、これは、(a)末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下にDNAポリメラーゼ反応を行い、この反応により、標識ポリリン酸を生じさせるステップと、(b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、DNA配列の量に実質的に比例する量で検出可能な副産物種を生じさせるステップと、(c)検出可能な種を測定するステップと、(d)既知の標準を使用して、測定を比較し、DNAの量を決定するステップとを含む。
【0017】
本発明の他の態様は、核酸配列中の単一のヌクレオチドのアイデンティティーを決定する方法に関し、これは、(a)1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に核酸ポリメラーゼ反応を行い、この反応により、標識ポリリン酸を生じさせるステップと、(b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、検出可能な種を生じさせるステップと、(c)検出可能な種の存在を検出するステップと、(d)導入されたヌクレオシドを同定するステップとを含む。
【0018】
核酸配列中の単一のヌクレオチドのアイデンティティーを決定する方法をさらに提供し、これは、(a)ポリリン酸鎖中に4個又はそれ以上のリン酸基を有する1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に、核酸ポリメラーゼ反応を行い、この反応により、標識ポリリン酸を生じさせるステップと、(b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、検出可能な種を生じさせるステップと、(c)前記の検出可能な種の存在を検出するステップと、(d)導入されたヌクレオシドを同定するステップとを含む。
【0019】
本発明はさらに、核酸検出キットを含み、ここで、このキットは、
(a)下記の式Iによる1種以上以上の末端リン酸標識ヌクレオチド:
【0020】
【化1】

【0021】
[上式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、nは、2又はそれ以上であり、Yは、酸素又はイオウ原子であり、Bは、窒素含有複素環式塩基であり、Sは、非環式成分、炭素環成分又は糖成分であり、Lは、そのままか、又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸の所にリン酸エステル、チオエステル又はホスホルアミデート結合を形成するために適したヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する酵素活性可能な標識であり、P−Lは、リン酸が除去されると、好ましくは独立に検出可能になるリン酸化標識である]、
(b)1種以上のDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又は逆転写酵素、及び
(c)ホスファターゼ
を含む。
【0022】
本発明はさらに、アッセイがリン酸標識ヌクレオチドを利用するプロセスを提供するが、この際、塩基がヌクレオチドに導入されて、標識ピロリン酸が放出され、次いでこれが、ホスファターゼなどの適切な酵素の作用により検出することができるようになるまで、標識は検出できない。塩基が導入されない限り、標識は検出できないので、このアッセイは、均一系フォーマットで、又は試薬の複数回の添加を必要としない単一の容器中で運転することができる。加えて、未反応のヌクレオチド中の標識は、シグナルを生じないので、未反応の試薬を分離する必要はない。さらに、塩基が導入されて初めて、シグナルが生じるので、システムは、広い動的範囲を有し、2個又はそれ以上、好ましくは4個の異なる標識ヌクレオチドが使用されると、アッセイは、多重化されうる。
【0023】
さらに、式:
Dye−(P)−P
のポリリン酸染料を有する新規の組成物を提供する
[上式中、
nは、2〜5であり、Dyeは、蛍光、着色、蛍光原、色素原、発光原(luminogenic)染料又は電気化学標識からなる群から選択される。nが1〜5である場合、染料は、蛍光原又は蛍光原成分又は電気化学標識である]。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本願明細書で定義される用語「ヌクレオシド」は、1′位また同等の位置で、糖又は炭素環又は非環式成分などの糖代替物に結合しているプリン、デアザプリン、ピリミジン又は修飾塩基を含む化合物であり、2′−デオキシ及び2′−ヒドロキシル、2′、3′−ジデオキシ形態、さらに他の置換基を含む。
【0025】
本願明細書で使用する場合、「ヌクレオチド」との用語は、ヌクレオシドのリン酸エステルに関し、この際、エステル化部位は通常、ペントース糖のC−5位に結合しているヒドロキシル基に対応する。
【0026】
「オリゴヌクレオチド」との用語には、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシドなどを含むヌクレオチドの直鎖オリゴマー又はその誘導体が含まれる。本明細書を通して、オリゴヌクレオチドが文字列で表される場合は常に、ヌクレオチドは左から右へ5′→3′の順序であり、ここで、他に記載が無ければ、Aは、デオキシアデノシンを表し、Cは、デオキシシチジンを表し、Gは、デオキシグアノシンを表し、Tは、チミジンを表す。
【0027】
「プライマー」との用語は、固有の核酸配列に特異的にアニーリングし、その固有の配列の増幅を可能にする直鎖オリゴヌクレオチドに関する。
【0028】
「ターゲット核酸配列」などの語句は、本発明の1つ以上の方法により、その配列アイデンティティーもしくはヌクレオシドの順番又は位置が決定される核酸に関する。
【0029】
ポリリン酸との用語は、2個又はそれ以上のリン酸に関する。
【0030】
発光原成分との用語は、活性化して初めて、化学発光シグナルを生じる化学成分に関する。
【0031】
本発明は、試料中のポリヌクレオチドを検出する方法に関し、この際、核酸ポリメラーゼ活性を介してRNA又はDNA合成を監視するために、簡便なアッセイを使用する。RNA及びDNAポリメラーゼは、三リン酸ヌクレオシド(NTP)又は三リン酸デオキシヌクレオシド(dNTP)から成長中のオリゴヌクレオチド鎖の3′ヒドロキシルへの一リン酸ヌクレオシドの転移を介して、オリゴヌクレオチドを合成する。この反応を推進する力は、無水物結合の分解及び無機ピロリン酸の随伴性生成である。本発明は、ヌクレオチドの末端リン酸の構造的修飾によって、ポリメラーゼ反応で機能するその能力は失われないという発見を利用している。オリゴヌクレオチド合成反応は、ヌクレオチドのα−及びβ−ホスホリル基でのみ直接的な変化を必要とするので、末端リン酸位に修飾を伴うヌクレオチドは、核酸ポリメラーゼ反応のための基質として役立ちうる。
【0032】
特定の実施形態では、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼI、II又はIIIもしくはDNAポリメラーゼα、β、γなどのDNAポリメラーゼもしくは末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ又はテロメラーゼである。他の実施形態では、適切なポリメラーゼには、これらに限られないが、DNA依存性RNAポリメラーゼ、プライマーゼ又はRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)が含まれる。
【0033】
本発明により提供される方法は、末端リン酸に結合されている電気化学的標識、質量タグ、比色染料、化学発光又は蛍光標識を伴うポリリン酸デオキシヌクレオシド、ポリリン酸ジデオキシヌクレオシド、ポリリン酸炭素環ヌクレオシド又はポリリン酸アクリル酸ヌクレオシド類似体などのポリリン酸ヌクレオシドを利用する。核酸ポリメラーゼが基質としてこの類似体を使用すると、酵素活性化可能な標識は、ホスホリル転移による無機ポリリン酸副産物の上に存在することになる。ホスファターゼを介して、ホスホリル転移によるポリリン酸産物が分解されることにより、その上に結合している標識に検出可能な変化が生じる。RNA及びDNAポリメラーゼは、修飾された末端ホスホリル木を伴うヌクレオチドを認識することができるが、本発明者らは、この出発物質は、ホスファターゼのためのテンプレートではないと決定したことを特記する。下記のスキームは、本発明の方法に最も関連する分子を示している、即ち、末端リン酸標識ヌクレオチド、標識ポリリン酸副産物及び抗素活性化標識。
【0034】
【化2】

【0035】
上記のスキームでは、nは、1又はそれ以上であり、R及びRは独立に、H、OH、SH、SR、OR、F、Br、Cl、I、N、NHR又はNHであり、Bは、ヌクレオチド塩基又は修飾された複素環式塩基であり、Xは、O、S又はNHであり、Yは、O、S又はBHであり、Lは、色素原、蛍光原、化学発光分子、質量タグ又は電気化学タグであってよいホスファターゼ活性可能な標識である。質量タグは、質量の違いにより他の成分と容易に区別できる、質量分析に適した低分子量の成分である。電気化学タグは、容易に酸化されうるか、還元されうる種である。nが2又はそれ以上である場合、nが1である場合よりも、このヌクレオチドは、ポリメラーゼのための非常に良好な基質であることが判明している。したがって、好ましい実施形態では、nは、2、3又は4であり、R及びRは独立に、H又はOHであり、X及びYは、Oであり、Bはヌクレオチド塩基であり、Lは、色素原、蛍光原又は化学発光分子であってもよい標識である。
【0036】
本願明細書で提供される核酸配列の存在を検出する方法の1実施形態では、ステップは、(a)核酸ポリメラーゼ反応を行うが、その際、反応は、末端リン酸標識ヌクレオチドを含み、ポリメラーゼ反応により、標識ポリリン酸が生じるステップと、(b)標識ポリリン酸を、リン酸エステルを加水分解するために適したホスファターゼと反応させて、検出可能な種を生じさせるステップと、(c)適切な手段により、検出可能な種の存在を検出するステップを含む。この実施形態では、核酸ポリメラーゼ反応のために使用されるテンプレートは、ヘテロポリマー又はホモポリマーテンプレートであってよい。末端リン酸標識ヌクレオチドとは、本明細書を通して、成長中のヌクレオチド鎖に一リン酸ヌクレオシドが導入された後に随伴して放出される標識ポリリン酸が、ホスファターゼと反応して、検出可能な種を生成しうることを意味している。ホスファターゼに実質的に非反応性である反応に含まれる他のヌクレオチドは例えば、検出可能な種の生成をもたらさない成分により末端リン酸のところでブロックされていてもよい。この特定の実施形態で検出するための核酸には、RNA、そのままか、又は合成のオリゴヌクレオチド、ミトコンドリアDNA又は染色体DNAが含まれうる。
【0037】
さらに本発明は、DNA配列の存在を検出する方法を提供し、これは、(a)末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に、DNAポリメラーゼ反応を行い、この反応により、標識ポリリン酸を生じさせるステップと、(b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、検出可能な種を生じさせるステップと、(c)前記の検出可能な種の存在を検出するステップを含む。検出するためのDNA配列には、細胞から単離されたDNA、亜硫酸水素塩で処理されたメチル化DNAなどの化学処理されたDNA又は当技術分野で知られている方法により化学的又は酵素的に合成されたDNAが含まれうる。このような方法には、PCR、参照により本願明細書に援用されるDNA Structure Part A:Synthesis and Physical analysis of DNA,Lilley,D.M.J.and Dahlberg,J.E.(Eds.),Methods Enzymol.,211,Academic Press,Inc.,New York(1992年)に記載されている方法が含まれる。DNA配列にはさらに、染色体DNA及びそのままか、合成のオリゴヌクレオチドが含まれる。DNAは、二本鎖又は一本鎖であってよい。
【0038】
本発明の方法は、ポリメラーゼ反応で1種以上の付加的な検出試薬を含むステップをさらに含んでもよい。付加的な検出試薬は、検出可能な種とは検出的に異なる応答が可能であってよい。例えば、付加的な検出試薬は、抗体であってもよい。
【0039】
ポリメラーゼ反応に基質として加えるために適したヌクレオチドには、これらに限られないが、ポリリン酸デオキシリボヌクレオシド、ポリリン酸リボヌクレオシド、ポリリン酸ジデオキシヌクレオシド、ポリリン酸炭素環ヌクレオシド及びポリリン酸非環式ヌクレオシド及びこれらの類似体などを含むポリリン酸ヌクレオシドが含まれる。ポリリン酸鎖中に3個、4個又は5個のリン酸基を含有し、末端リン酸が標識されているヌクレオチドが特に望ましい。
【0040】
ポリリン酸鎖中に4個又はそれ以上のリン酸を有する末端リン酸標識ヌクレオチドを含む実施形態では、ホスホリル転移による標識ポリリン酸副産物は、ホスファターゼ処理を使用しなくても検出できてもよいことも、本発明の計画の範囲内である。例えば、そのままか、修飾されているヌクレオシド塩基、特に、グアニンは、蛍光マーカーの失活をもたらしうることが知られている。したがって、末端リン酸標識ヌクレオチドでは、標識は、この塩基により部分的にクエンチされうる。一リン酸ヌクレオシドを導入すると、標識ポリリン酸副産物は、その増強された蛍光により検出されうる。もしくは、蛍光、色、化学発光又は電気化学的検出により同定する前に、クロマトグラフィー分離法により、標識ポリリン酸生成物を物理的に分離することもできる。加えて、質量分析を使用して、質量の差異により生成物を検出することもできる。
【0041】
本発明の方法は、1種以上のDNA又はRNAポリメラーゼの存在下に、ポリメラーゼ反応を行うことを含んでもよい。適切な核酸ポリメラーゼにはさらに、プライマーゼ、テロメラーゼ、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ及び逆転写酵素も含まれる。核酸テンプレートが、ポリメラーゼ反応を生じさせるために必要であることもあり、これを、ポリメラーゼ反応溶液に加えることができる。本発明の検出方法でのステップ(a)、(b)及び(c)は全て、単一の、均一な反応混合物を使用して同時に、さらに、連続して運転することができると予想される。
【0042】
核酸ポリメラーゼ反応が、ポリメラーゼを利用する増幅方法を含みうることは十分に、本発明の予想の範囲内である。このような方法の例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)及び核酸配列ベースの増幅(NASBA)が含まれる。例えば、ターゲット分子がDNAなどの核酸ポリマーである場合には、これは、DNA分子へのアデニン、チミン、シトシン、グアニン又は他の窒素複素環塩基などのγ−リン酸標識ヌクレオチド塩基のPCR導入により検出することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法は、Saiki et al、Science Vol.239,487頁,1988年、Mullis et al、米国特許第4683195号明細書及びSambrook,J.et al.(Eds.)、Molecular Cloning,second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1980年)、Ausubel,F.M.et al.(Eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,NY(1999年)及びWu,R.(Ed.),Recombinant DNA Methodology II,Methods in Zumulogy,Academic Press,Inc.,NY,(1995年)に記載されている。PCRを使用する場合には、PCR試薬及び適切なプライマーを含有する反応溶液に中に直接挿入することにより、DNAなどの検出するためのターゲット核酸を増幅させる。通常、配列において、ターゲット核酸の少なくとも一部と相補的であるプライマーを選択する。
【0043】
本発明の方法のステップ(a)を行うために適している核酸ポリメラーゼ反応はさらに、核酸配列を増幅させる様々なRCA方法を含んでもよいことを特記する。例えば、参照により本願明細書に援用されるLizardi、Paul M.に付与された米国特許第5854033号明細書に開示されている方法を使用することができる。ポリメラーゼ反応はさらに、核酸配列ベースの増幅(NASBA)を含んでもよく、この際、このシステムは、DNAではなくRNAの増幅に関し、その増幅は、等温性であり、同じ温度(41℃)で行われる。NASBAによるターゲットRNAの増幅は、3つの酵素:逆転写酵素、RナーゼH及びT7RNAポリメラーゼの協調活性と共に、試料ターゲットRNAを対象とするオリゴヌクレオチドプライマーを必要とする。これらの酵素は、4つのステップ:伸張、分解、DNA合成及び環状RNA増幅で、ターゲット一本鎖RNAの指数増幅を触媒する。
【0044】
RT−PCR、RCA及びNASBAの方法は通常、本来の量のターゲット核酸が増幅産物の定量により間接的に測定されることを必要とする。増幅産物を通常、アガロースゲル上での電気泳動を介して出発物質から初めに分離して、増幅の成功を確認し、次いで、蛍光標識の検出などの核酸用の慣用の検出系、酵素結合検出系、抗体仲介標識検出及び放射性標識の検出のいずれかを使用して、定量する。対照的に、本方法により、これらの産物を検出する前に、出発原料からポリメラーゼ反応の産物を分離する必要性が省かれる。例えば、本発明では、リン酸エステル結合によりマスキングされている一定の条件下では、検出不可能であるように、レポーター分子(蛍光、化学発光又は発色団)又は他の有用な分子をヌクレオチドに結合させる。しかしながら、成長中のオリゴヌクレオチド鎖にヌクレオチドを導入し、反応をホスファターゼ処理した後には、そのような条件下に、標識は、検出可能である。例えば、1,3−ジクロロ−9,9−ジメチル−アクリジン−2−オン(DDAO)の三環式構造の側鎖上のヒドロキシル基がヌクレオチドの末端リン酸位に結合している場合には、DDAOは、659nmで蛍光しない。一リン酸ヌクレオシドがDNAに導入されると、その他の生成物、DDAOポリリン酸(これも、659nmでは蛍光しない)は、ホスファターゼのための基質である。脱リン酸化されて、DDAOが生じると、染料成分は、659nmで蛍光するようになり、したがって、検出可能になる。ポリリン酸生成物の個々の分析を、ポリメラーゼ反応溶液中で実施することができるので、出発材料から反応生成物を分離する必要が省かれる。このスキームにより、分光光度計などの慣用の器具を使用して、ポリメラーゼ反応の間に生じた核酸の検出、場合によって定量が可能である。
【0045】
前記の方法では、ポリメラーゼ反応ステップはさらに、標識ポリリン酸副産物を検出可能な標識に変えるホスファターゼの存在下で、ポリメラーゼ反応を行うことを含んでもよい。こうして、核酸配列の存在を検出するための簡便なアッセイが確立され、これにより、検出可能な種の形成を連続的に監視することができる。これは、単一の管で行うことができる均一系アッセイフォーマットを示している。
【0046】
前記のアッセイ方法の1フォーマットは、これらに限られないが、検出可能な種、例えば、末端リン酸修飾されたATPを産生しうる単一タイプの末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に、ポリメラーゼ反応を行うことを含んでもよく、この際、他のヌクレオチドは全て、ホスファターゼに対して実質的に非反応性で、検出不可能な種をもたらす。
【0047】
他のアッセイフォーマットでは、ポリメラーゼ反応を、1種よりも多い末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に行うこともできるが、この際、いずれのタイプも、固有の検出可能な種を産生しうる。例えば、このアッセイは、ホスホリル転移による無機ポリリン酸副産物から酵素により遊離されると、第1の波長で発光する第1の標識を伴う第1のヌクレオチド(例えば、ポリリン酸アデノシン)及び第2の波長で発光する第2の標識を伴う第2のヌクレオチド(例えば、ポリリン酸グアノシン)を含有する。望ましくは、第1及び第2の波長発光は、実質的にほとんど重ならないか、重ならない。したがって、ヌクレオチド配列情報に基づく複数の同時アッセイは、ポリリン酸から放出される特定の標識に由来してもよいことは、本発明の範囲内である。
【0048】
前記の核酸配列の存在を検出する方法の1態様では、末端リン酸標識ヌクレオチドは、次の構造(式I)により示される:
【0049】
【化3】

【0050】
[上式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、nは、2又はそれ以上であり、Yは、酸素又はイオウ原子であり、Bは、窒素含有複素環式塩基であり、Sは、非環式成分、炭素環成分又は糖成分であり、Lは、そのままか、又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸の所でリン酸エステル、チオエステル又はホスホルアミデート結合を形成するために適したヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する酵素活性可能な標識であり、P−Lは、リン酸が除去されると、好ましくは独立に検出可能になるリン酸化標識である]。
【0051】
リン酸加水分解に加えて、他の多くの種類の反応が、色素原性、蛍光原性であり、独立に検出可能な標識をもたらしてもよい。例えば、グリコシダーゼは、X−gal(ブロモクロロインドリルガラクトシド)で作用するβガラクトシダーゼなどの色素原グリコシドで作用しうる。プロテアーゼ及びペプチダーゼは、エステル及びN−アシルローダミンなどのアミドで作用しうる。本発明の他の態様は、ターゲットのレポーターとしてのこれら他の種類の反応の使用である。ターゲットの存在下にこれらの酵素のレポーティング基質に変化する基質類似体を使用することは、本発明に開示されている方法のさらなる例である。
【0052】
本発明の方法のために、有用な炭素環成分が、Ferraro,M.及びGotor,V、Chem Rev.2000年、volume 100、4319〜48頁に記載されている。適切な糖成分は、Joeng,L.S.et al.,J Med.Chem.1993年、vol.356、2627〜38、Kim H.O.et al.、J Med.Chem.193,vol.36、30〜7頁、及びEschenmosser A.、Science1999年、vol.284、2118〜2124頁に記載されている。さらに、有用な非環式成分は、Martinez,C.I.,et al.、Nucleic Acids Research 1999年、vol.27、1271〜1274頁、Martinez,C.I.,et al.,、Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 1997年、vol.7、3013〜3016頁及びTrainer,G.L.に付与された米国特許第555891号明細書に記載されている。これらの成分の構造を下記に示すが、この際、成分Rは全て、H、OH、NHR、F、N、SH、SR、OR低級アルキル及びアリールであり、糖成分では、X及びYは独立に、O、S又はNHであり、非環式成分では、X=O、S、NH、NRである。
【0053】
【化4】

【0054】
一定の実施形態では、式I中の糖成分は、次から選択することができる:リボシル、2′−デオキシリボシル、3′−デオキシリボシル、2′、3′−ジデヒドロジデオキシリボシル、2′、3′−ジデオキシリボシル、2′−又は3′−アルコキシリボシル、2′−又は3′−アミノリボシル、2′−又は3′−フルオロリボシル、2′−又は3′−メルカプトリボシル、2′−又は3′−アルキルチオリボシル、非環式、炭素環式及び他の修飾糖。
【0055】
さらに、式I中で、塩基には、ウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、グアニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン、2,6−ジアミノプリン又はこれらの類似体が含まれうる。
【0056】
さらに、塩基がヌクレオチドに導入されて、ポリリン酸を放出し、次いでこれが、ホスファターゼなどの酵素に作用され、検出可能なシグナルを生ずるまでは、シグナルを発しない標識と共に、末端リン酸標識ヌクレオチドを利用することができる。このような系では、標識は、塩基が導入されると、不活性な(検出不可能な)形態から活性な(検出可能な)形態へと化学変化を受けて、導入された塩基のアイデンティティーに関する情報をもたらす。色は、反応を受けて初めて生じるので、シグナルは、実質的に背景なしに生じ、アッセイの増強された動的範囲をもたらす。望ましい場合には、2種又はそれ以上の別々に標識ヌクレオチドを1回で添加することができるので、アッセイの多重化が可能である。
【0057】
標識は、下記のように、色素産生又は蛍光であってよいが、必ずしも失活剤を含有しなくてもよいことを特徴とする。さらに、好ましい使用は、本願明細書に記載されているようなヌクレオチド配列決定又は同定アッセイにおいてであるが、これらの末端リン酸標識ヌクレオチドは、抗体又はハプテンなどの他の結合分子に共役していて、これらのタイプの均一なアフィニティーアッセイを多重フォーマットで運転することを可能にすると理解されたい。
【0058】
通常のアッセイでは、1種以上の末端標識ヌクレオチドを、反応混合物に入れ、存在する場合には、相補性塩基を、核酸ポリメラーゼにより配列に導入する、これにより、染料標識ポリリン酸が放出され、次いでこれを、他の酵素、好ましくは、ホスファターゼ、さらに好ましくは、シュリンプアルカリホスファターゼ、ウシ腸アルカリホスファターゼ、E.coliアルカリホスファターゼ又はRhodothermus marinusアルカリホスファターゼの作用により検出することができる。次いで、適切な比色又は蛍光手段により、標識を検出することができる。
【0059】
末端リン酸標識ヌクレオチド中の末端リン酸位に結合している標識は、1,2−ジオキセタン化学発光化合物、蛍光原染料、色素原染料、質量タグ、電気化学タグからなる群から選択することができる。これは、色、蛍光発光、化学発光、質量変化、電気化学検出又はそれらの組合せのいずれかの存在により、検出可能な種を検出可能にする。
【0060】
式I中のリン酸化標識が蛍光原性成分である場合には、これは望ましくは、次のいずれかから選択する(全て、ホスホモノエステルとして示す):ELF97(Molecular Probes,Inc)の商品で市販されている2−(5′−クロロ−2′−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4−(3H)−キナゾリノン、二リン酸フルオレセイン(四アンモニウム塩)、リン酸フルオレセイン3′(6′)−O−アルキル−6′(3′)、リン酸9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)(二アンモニウム塩)、リン酸4−メチルウンベリフェリル(遊離酸)、リン酸レソルフィン、リン酸4−トリフルオロメチルウンベリフェリル、リン酸ウンベリフェリル、リン酸3−シアノウンベリフェリル、リン酸9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル、リン酸6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリル及びこれらの誘導体。
【0061】
これらの染料の構造を下記に示す:
【0062】
【化5】

【0063】
【化6】

【0064】
【化7】

【0065】
前記の式I中のリン酸化標識成分が、色素原成分である場合には、これは、次から選択することができる:リン酸5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル、リン酸3−インドキシル、リン酸p−ニトロフェニル及びこれらの誘導体。これらの色素原染料の構造は、ホスホモノエステルとして下記のように示される:
【0066】
【化8】

【0067】
末端リン酸位に位置する成分はさらに、化学発光化合物であってもよく、この際、これは、ホスファターゼ活性化1,2−ジオキセタン化合物であることが望ましい。1,2−ジオキセタン化合物には、これらに限られないが、CDP−Star(Tropix,Inc.,Bedford,MA)の商品名で市販されている2−クロロ−5−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2′−(5−クロロ)トリシクロ[3,3,1−13,7]−デカン]−1−イル)−1−フェニルリン酸二ナトリウム、CSPD(Tropix)の商品名で販売されているクロロアダマント−2′−イリデンメトキシフェノキシリン酸化ジオキセタン及びAMPPD(Tropix)の商品名で販売されている3−(2′−スピロアダマンタン−4−メトキシ−4−(3”−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタンが含まれうる。これら市販のジオキセタン化合物の構造はそれぞれ、米国特許第5582980号明細書、同第5112960号明細書及び第4978614号明細書に開示されており、参照により本願明細書に援用される。
【0068】
前記の方法はさらに、核酸配列を定量するステップを含んでもよい。関連する態様では、検出可能な種を、増幅された核酸配列の量に実質的に比例した量で生じさせることができる。核酸配列を定量するステップは、検出可能な種により生じるスペクトルと、知られているスペクトルとを比較することにより行うことが望ましい。
【0069】
1実施形態では、本発明は、核酸を定量する方法を提供するが、これは、(a)核酸ポリメラーゼ反応を行うが、その際、ポリメラーゼ反応が、ホスファターゼに実質的に非反応性であるヌクレオチドに加えて、1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの反応を含み、反応により、標識ポリリン酸が生じるステップと、(b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、定量されるべき核酸の量に実質的に比例する量で検出可能な副産物種を生じさせるステップと、(c)検出可能な種を測定するステップと、及び(d)既知の標準を使用して測定を比較し、核酸の量を決定するステップを含む。核酸を定量する方法のこの実施形態では、定量すべき核酸は、RNAであってよい。核酸はさらに、そのままか、合成のオリゴヌクレオチド、染色体DNA又はDNAであってもよい。
【0070】
本発明はさらに、DNA配列を定量する方法を提供し、これは、(a)末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に、DNAポリメラーゼ反応を行うが、その際、反応により、標識ポリリン酸を生じさせるステップと、(b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、定量すべきDNA配列の量に実質的に比例する量で、検出可能な副産物種を生じさせるステップと、(c)検出可能な種を測定するステップと、及び(d)既知の標準を使用して測定を比較し、DNAの量を決定するステップとを含む。この実施形態では、定量のためのDNA配列には、そのままか、又は合成のオリゴヌクレオチド、又は染色体DNAを含む細胞から単離されたDNAが含まれうる。
【0071】
前記の核酸配列を定量するこれらの方法ではそれぞれ、ポリメラーゼ反応ステップはさらに、ホスファターゼの存在下にポリメラーゼ反応を行うことを含んでもよい。本明細書中で先に記載したように、これにより、核酸ポリメラーゼ活性をリアルタイム監視することができるので、定量するためのターゲット核酸配列をリアルタイム検出することができる。
【0072】
本願明細書で提供される、核酸配列を定量する方法に役立つ末端リン酸標識ヌクレオチドは、前記の式Iで表される。標識と、そのままか、修飾されたヌクレオチドの末端リン酸との間のリン酸エステル結合を、検出可能な種が生じるように変化させるホスファターゼの酵素活性を介して、酵素活性可能な標識は、検出可能になる。色、蛍光発光、化学発光、質量差又は電気化学電位のいずれか、又はこれらの組合せの存在により、検出可能な種は、検出可能になる。既に前記したように、酵素活性可能な標識は、1,2−ジオキセタン化学発光化合物、蛍光染料、色素原染料、質量タグ又は電気化学タグ又はこれらの組合せであってよい。適切な標識は、前記のものと同様である。
【0073】
実施例部分でさらに詳細に記載するように、本発明は、ターゲット核酸配列中の単一のヌクレオチドのアイデンティティーを決定するための方法を提供する。これらの方法は、(a)1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に、核酸ポリメラーゼ反応を行い、この反応により、標識ポリリン酸を生じさせるステップと、(b)標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させて、検出可能な種を生じさせるステップと、(c)検出可能な種の存在を検出するステップと、(d)導入されたヌクレオシドを同定するステップとを含む。望ましい実施形態では、末端リン酸標識ヌクレオチドは、ポリリン酸鎖中に4個又はそれ以上のリン酸を含有する。
【0074】
本発明の他の態様は、
(a)下記の式Iによる1種以上以上の末端リン酸標識ヌクレオチド:
【0075】
【化9】

【0076】
[上式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、nは、2又はそれ以上であり、Yは、酸素又はイオウ原子であり、Bは、窒素含有複素環式塩基であり、Sは、非環式成分、炭素環成分又は糖成分であり、Lは、そのままか、又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸の所にリン酸エステル、チオエステル又はホスホルアミデート結合を形成するために適したヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する酵素活性可能な標識であり、P−Lは、リン酸が除去されると、好ましくは独立に検出可能になるリン酸化標識である]、
(b)1種以上のDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又は逆転写酵素、及び
(c)ホスファターゼ
を含む核酸検出キットに関する。
【0077】
キットに含まれる末端リン酸標識ヌクレオチド中の糖成分には、これらに限られないが、リボシル、2′−デオキシリボシル、3′−デオキシリボシル、2′、3′−ジデオキシリボシル、2′、3′−ジデヒドロジデオキシリボシル、2′−又は3′−アルコキシリボシル、2′−又は3′−アミノリボシル、2′−又は3′−フルオロリボシル、2′−又は3′−メルカプトリボシル、2′−又は3′−アルキルチオリボシル、非環式、炭素環式及び他の修飾糖が含まれうる。
【0078】
塩基は、これらに限られないが、ウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、グアニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン及び2,6−ジアミノプリン及びこれらの類似体であってよい。
【0079】
さらに、前記のように、酵素活性可能な標識は、1,2−ジオキセタン化学発光化合物、蛍光染料、色素原染料、質量タグ、化学発光タグ又はこれらの組合せであってよい。ヌクレオチドの末端リン酸位置に結合させるために適した化合物は、前記と同様のものである。
【実施例1】
【0080】
γ−(4−トリフルオロメチルクマリニル)ddGTP(γCFクマリン−ddGTP)の調製
ddGTP(46.4mM溶液200μl、純度>96%)を無水ジメチルホルムアミド(DMF、2×0.5ml)と共に同時蒸発させた。これに、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC,9.6mg、5当量)を加え、混合物を再び、無水DMF(0.5ml)と共に同時蒸発させた。残留物を無水DMF(0.5mL)に入れ、混合物を一晩攪拌した。まだ約20%の未環化三リン酸エステルが存在した(カラムでの環式トリメタリン酸エステルの加水分解に由来しうる)。この混合物に、さらに2当量のDCCを加え、2時間攪拌した後に、7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルクマリン(4−トリフルオロメチルウムベリフェロン、42.7mg、20当量)及びトリエチルアミン(26μl、20当量)を加え、混合物を室温で攪拌した。2日後に、HPLC(15分で0.1Mの酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)中0〜30%のアセトニトリル、5分で30〜50%のアセトニトリル及び10分で50〜100%のアセトニトリル、C18 3.9×150mmカラム、流速1ml/分)により、9.7分目に新規生成物及び出発環式三リン酸エステル(254nmで77:5の比)が判明した。混合物をもう1日攪拌した。P−31NMRにより、反応混合物の主成分としてγ標識三リン酸ヌクレオシドが示された。反応混合物を回転蒸発器上で濃縮した。残留物を水(5×1ml)で抽出した。HPLCにより、254nmで82%、335nmで81%の純度が示された。合わせた水溶液を回転蒸発器で濃縮し、水(1ml)に再溶解させた。これを、2.54cm(1インチ)×300cmのC18カラムで、30分で0.1Mの重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB、pH8.3)中0〜30%のアセトニトリル及び10分で30〜50%のアセトニトリルを使用して、流速15ml/分で精製した。生成物ピークを3フラクションで集めた。前記と同様の分取HPLC法を使用して、ただし、COを気泡導入することにより、TEAB緩衝液のpHを、6.7に低下させて、フラクション1を再精製した。生成物ピークを濃縮し、MeOH(2回)及び水(1回)と共に同時蒸発させた。試料を水1mlに溶かした。HPLCにより、254及び335nmで>99%の純度が示された。UVにより、2.2mMの濃縮物が示されたが、これは、322nmで11000の吸光係数と考えられる(7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルクマリンのβガラクトシド誘導体に関して報告、Molecular Probes Catalog)。MS:M=702.18(計算値702.31)、UVλ=253.276&322nm。ddGTPのγリン酸に結合しているトリフルオロクマリン染料は、励起最大322nm及び発光最大約415nmで蛍光性である。
【0081】
リン酸エステルが加水分解して、遊離のクマリン染料が放出されると、スペクトルは、励起最大約385nm及び発光最大約502nmに変化する。この変化は、簡単な蛍光測定又は色変化により容易に検出される。γヌクレオチドの合成は、Arzumanov、A.et al.、J Biol Chem(1996年)10月4日、271(40):24389〜94頁に一般的に記載されている。
【0082】
【化10】

【実施例2】
【0083】
γ−(3−シアノクマリニル)ddATP(γCNクマリン−ddATP)の調製
ddATP(89mM溶液100μl、純度>96%)を無水DMF(2×1ml)と共に同時蒸発させた。これに、DCC(9.2mg、5当量)を加え、混合物を再び、無水DMF(1ml)と共に同時蒸発させた。残留物を無水DMF(0.5mL)に入れ、反応を室温で攪拌した。一晩の後に、7−ヒドロキシ−3−シアノクマリン(33.3mg、20当量)及びTEA(25μl、20当量)を加え、混合物を室温で攪拌した。1日後に、主要な生成物(254nmで55%)が8.1分目に観察され、他の副次的な生成物は10分目に観察された(〜10%)。別の日には、著しい変化は生じなかった。反応混合物を回転蒸発器上で濃縮し、残留物を水3×2mlで抽出し、濾過した。水溶液を濃縮し、C−18で、30分で0.1MのTEAB(pH6.7)中0〜30%のアセトニトリル及び10分で30〜50%のアセトニトリルを使用して、流速15ml/分で精製した。主なピークを3フラクションで集めた。主なピーク(フラクション2)のHPLCにより、254nmで95.6%及び335nmで98.1%の純度が判明した。これを、回転蒸発器で(RTで)濃縮し、MeOH(2×)及び水(1×)と共に同時蒸発させた。残留物を水0.5mlに溶かした。試料5μlを、UV分析のために1mlに希釈した。346nm=0.784。20000の吸光係数(7−エトキシ−3−シアノクマリンに関して報告、Molecular Probes Catalog)、濃度=7.84mMと考えられた。収率=3.92μモル、44%。前記と同様の方法を使用して、C−18カラムで試料を再精製した。試料ピークを3フラクションで集めた。254nmで純度>98%及び340nmで純度>99.5%を有するフラクション2及び3を合わせた。濃縮の後に、残留物をMeOH(2回)及び水(1回)と共に同時蒸発させた。試料を水(1ml)に溶かすと、2.77mMの溶液が得られた。MS:M=642.98au(計算値643.00au)、UVλ=263&346nm。ddGTPのγリン酸に結合しているシアノクマリン染料は、励起最大346nm及び発光最大約411nmで蛍光性である。リン酸エステルが加水分解して、遊離のクマリン染料が放出されると、スペクトルは、励起最大約408nm及び発光最大約450nmに変化する。この変化は、簡単な蛍光測定又は色変化により容易に検出される。γヌクレオチドの合成は、Arzumanov、A.et al.、J Biol Chem(1996年)10月4日、271(40):24389〜94頁に一般的に記載されている。
【0084】
【化11】

【実施例3】
【0085】
四リン酸δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−ジデオキシチミジン−5′(ddT4P−DDAO)の調製
ddTTP(80mM溶液100μl)を無水ジメチルホルムアミド(DMF、2×1ml)と共に同時蒸発させた。これに、ジシクロヘキシルカルボジイミド(8.3mg、5当量)を加え、混合物を再び、無水DMF(1ml)と共に同時蒸発させた。残留物を無水DMF(1mL)に入れ、反応を室温で一晩攪拌した。HPLCにより、ほぼ環化された三リン酸エステルが判明した(〜82%)。反応混合物を濃縮し、残留物を無水ジエチルエーテル3×で洗浄した。これを、無水DMFに再溶解させ、回転蒸発器で乾燥するまで濃縮した。残留物をモノリン酸DDAOアンモニウム塩(5mg、1.5当量と共に無水DMF200μlに入れ、40℃で週末中攪拌した。HPLCにより、11.96分目に望ましいUV特性を有する新規生成物が示された。(HPLC法:15分で0.1Mの酢酸トリエチルアンモニウム(pH7)中0.30%のアセトニトリル及び5分で30〜50%のアセトニトリル、Novapak C−18 3.9×150mmカラム、1ml/分)。LCMS(ES−)によっても、M−1ピークで主な質量ピーク834が示された。反応混合物を濃縮し、Deltapak C18、19×300mmカラムで、0.1MのTEAB(pH6.7)及びアセトニトリルを使用して精製した。生成物を伴うフラクションを、前記と同じ方法を使用するHPLCにより再精製した。純粋な生成物を伴うフラクションを濃縮し、MeOH(2回)及び水(1回)と共に同時蒸発させた。残留物を水(1.2ml)に溶かすと、1.23mMの溶液が得られた。254nmで>97.5%、455nmで>96%のHPLC純度、UVλ=267nm及び455nm、MS:M−1=834.04(計算値8.33.95)。同様の方法で、四リン酸δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7=イル)−ジデオキシシチジン−5′(ddC4P−DDAO)、四リン酸δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−ジデオキシアデノシン−5′(ddA4P−DDAO)及び四リン酸δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−y−イル)−ジデオキシグアノシン−5′(ddG4P−DDAO)を合成及び精製した。これらの精製された化合物の分析により、次のデータが得られた:ddC4P−DDAO:UVλ=268nm及び454nm、MS:M−1=819.32(計算値818.96)、ddA4P−DDAO:UVλ=263nm及び457nm、MS:M−1=843.30(計算値842.97)、ddG4P−DDAO:UVλ=257nm及び457nm、MS:M−1=859.40(計算値858.97)。
【0086】
【化12】

【実施例4】
【0087】
5′−五リン酸ε−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−ジデオキシチミジン 五リン酸DDAO−ddT(ddT5P−DDAOの調製)
A.ピロリン酸DDAOの調製
リン酸DDAO2アンモニウム塩(11.8μモル)を無水DMF(3×0.25ml)と共に同時蒸発させ、DMF(0.5ml)に溶かした。これに、カルボニルジイミダゾール(CDI、9.6mg、5当量)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。MeOH(5μl)を加え、30分間攪拌することにより、過剰のCDIを分解した。この混合物に、リン酸二水素トリブチルアンモニウム(10当量、DMF中0.5Mの溶液236ml)を加え、混合物を室温で4日間攪拌した。反応混合物を回転蒸発器上で濃縮した。残留物をHiPrep16.10Q XLカラムで、緩衝液Aとして0.1MのTEAB/アセトニトリル(3:1)及び緩衝液Bとして1MのTEAB/アセトニトリル(3:1)を使用して、0〜100%のBを使用して精製した。主なピーク(HPLC純度98%)を集め、濃縮し、メタノール(2×)と共に同時蒸発させた。残留物を水1mlに溶かすと、5.9mMの溶液が得られた。UV/VISλmax=456nm。
【0088】
B.ddT5P−DDAOの調製
ddTTP(水中47.5mMの溶液100μl)を無水DMF(2×1ml)と共に同時蒸発させた。これに、DCC(5当量、4.9mg)を加え、混合物をDMF(1×1ml)と共に同時蒸発させた。残留物を無水DMF(0.5ml)に入れ、室温で3時間攪拌した。これに、別に無水DMF(2×1ml)と同時蒸発させたピロリン酸DDAO1.03当量をDMF溶液として加えた。混合物を乾燥するまで濃縮し、次いで、無水DMF200μlに入れた。混合物を38℃で2日間加熱した。反応混合物を濃縮し、水で希釈し、濾過し、HiTrap5mlイオン交換カラムで2工程勾配を使用するA−B0〜100%を使用して精製した。溶剤A=0.1MのTEAB/アセトニトリル(3:1)及び溶剤B=1MのTEAB/アセトニトリル(3:1)。生成物の大部分を含有するフラクション12×13を合せ、濃縮し、メタノール(2×)と共に同時蒸発させた。残留物をXterra RP C−18 30〜100mmカラムで、5カラム容量で0.1MのTEAB中0.30%のアセトニトリル及び2カラム容量で30〜50%アセトニトリルを使用して、流速10ml/分で再精製した。純粋な生成物を含有するフラクションを濃縮し、メタノール(2×)及び水(1×)と共に同時蒸発させた。455nmでのHPLC純度>99%。UV/VIS=268nm及び455nm。MS:M−1=914.03(計算値913.93)。
【0089】
これらのポリリン酸のγリン酸に結合しているDDAO染料は、励起最大455nm及び発光最大約608nmを伴う蛍光性である。リン酸エステルが加水分解して、遊離のクマリン染料が放出されると、スペクトルは、励起最大約645nm及び発光最大約659nmに変化する。この変化は、簡単な蛍光測定又は色変化により容易に検出される。
【0090】
【化13】

【0091】
前記の実施例1〜4に記載されている方法と同様の方法を使用して、末端リン酸に結合している染料又は他の検出可能な成分を有する同様のヌクレオチド化合物を製造することもできることを特記する。これらには、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、四リン酸ヌクレオシド、天然に生じる塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ヒポキサンチン及びウラシル)のいずれかを伴うヌクレオチド、さらに、変性された塩基又は修飾された糖が含まれる。
【実施例5】
【0092】
三リン酸エチル−フルオレセインの調製
エチル−フルオレセイン(100mg)を無水アセトニトリル(2回)と共に同時蒸発させ、無水アセトニトリル(5ml)に再懸濁させた。これに、塩化ホスホリル(78μl)を加えた。0℃で30分間攪拌した後に、ピリジン3当量を加えた。混合物を放置して、室温まで加温し、室温で3時間攪拌した。反応混合物に、DMF(0.5M、10当量)中のリン酸トリブチルアンモニウム及びトリブチルアミン(15当量)を加えた。5分間攪拌した後に、1Mの重炭酸トリエチルアンモニウム15mlで、反応をクエンチした。反応混合物を濃縮し、メタノール(2回)と共に同時蒸発させた。残留物をイオン交換クロマトグラフィーにより、HiPrep16×10Q XLカラムにより、続いて、逆相クロマトグラフィーにより、Xterra C−18 30×100mmカラムで精製すると、274nmにラムダマックスを伴う純粋な生成物37.2μモルが得られた。M−1=598.99(計算値599)。プロトン及びリンNMRスペクトルは、下記の構造のリン酸エチルフルオレセインに対応した。
【0093】
【化14】

【0094】
下記の実施例6及び7により、末端リン酸に結合している染料誘導体を有するジデオキシヌクレオチドは、核酸を検出するためのテンプレート指令プロセス(template−directed process)で、核酸ポリメラーゼにより成長中の核酸鎖に基質として有効に導入されうることが証明される。
【実施例6】
【0095】
γリン酸標識ddGTPのポリメラーゼ導入を用いる核酸配列検出
反応を、室温(23℃)で、実施例(1)のジデオキシヌクレオチドを使用して組立てた。反応は、プライマーの3′末端に隣接する次のテンプレートヌクレオチドとしてdC又はdTを有する2種の異なるオリゴヌクレオチドテンプレート(それぞれ、SEQ ID NO:2及びSEQ ID NO:3)の一方にアニーリングしている単一のオリゴヌクレオチドプライマー(SEQ ID NO:1で示される)を有するプライマー:テンプレートの組合せを含んだ。
【0096】
図1を参照すると、本実施例中のテンプレート1(SEQ ID NO:2)では、DNAポリメラーゼは、標識ddGTPを用いてプライマーを延長すると考えられる。同様に、図1中、テンプレート2(SEQ ID NO:3)では、DNAポリメラーゼは、ddATPを用いてプライマーを延長するが、標識ddGTPを用いては延長しないと考えられる。
【0097】
反応条件:Tris(pH8.0)25mM、グリセリン5%、MgCl5mM、βメルカプトエタノール0.5mM、ツイーン20 0.01%、シュリンプアルカリホスファターゼ0.25単位、テンプレートにアニーリングしているプライマー10mM(次のテンプレートヌクレオチドは、示されているようにdCMP又はdTMPである)及びddGTP−CF−クマリン2μMを含有する70μl反応を、LS−55Luminescence Spectrometer(Perkin Elmer)内の石英蛍光ウルトラマイクロキュベット中で構成し、時間駆動モードで運転した。励起及び発光波長はそれぞれ、390nm及び500nmであった。スリット幅は、励起スリットでは5nm、発光スリットでは15nmであった。3′−5′エキソヌクレアーゼ活性、5′−3′エキソヌクレアーゼ活性及びジデオキシヌクレオチドに対する識別を除くように通常は改変されているクローニングされたDNAポリメラーゼI0.35μl(11単位)及びMnCl0.25mMを加えることにより、反応を開始させた。
【0098】
図1に示されているように、γ標識されているddGTPを含有する反応では、プライマー:テンプレート1を有する場合にのみ、染料発光は検出され、この際、テンプレート中の次のヌクレオチドは、dCであった。シュリンプアルカリホスファターゼによるホスホリル転移のピロリン酸生成物の分解により、CFクマリン標識に検出可能な変化が生じ、これにより、核酸の検出が可能になる。プライマー:テンプレート2では、検出可能な染料発光は得られなかった。
【実施例7】
【0099】
γリン酸標識ddATPのポリメラーゼ導入を用いる核酸配列検出
反応を、室温(23℃)で実施例2のジデオキシヌクレオチドを使用して組立てた。反応は、プライマーの3′末端に隣接する次のテンプレートヌクレオチドとしてdC又はdTを有する2種の異なるオリゴヌクレオチドテンプレート(それぞれ、SEQ ID NO:2及びSEQ ID NO:3に対応)の一方にアニーリングしている単一のオリゴヌクレオチドプライマー(SEQ ID NO:1)を有するプライマー:テンプレートの組合せを含んだ。
【0100】
図2を参照すると、本実施例中のテンプレート2(SEQ ID NO:3)では、DNAポリメラーゼは、標識ddGTPを用いてプライマーを延長すると考えられる。同様に、図2中、テンプレート1(SEQ ID NO:3)では、DNAポリメラーゼは、ddGTPを用いてプライマーを延長するが、標識ddATPを用いては延長しないと考えられる。
【0101】
反応条件:Tris(pH8.0)25mM、グリセリン5%、MgCl5mM、βメルカプトエタノール0.5mM、ツイーン20 0.01%、シュリンプアルカリホスファターゼ0.25単位、テンプレートにアニーリングしているプライマー100nM及びddATP−CN−クマリン2μMを含有する70μl反応を、LS−55Luminescence Spectrometer(Perkin Elmer)内の石英蛍光ウルトラマイクロキュベット中で構成し、時間駆動モードで運転した。励起及び発光波長はそれぞれ、410nm及び450nmであった。スリット幅は、励起スリットでは5nm、発光スリットでは15nmであった。3′−5′エキソヌクレアーゼ活性、5′−3′エキソヌクレアーゼ活性及びジデオキシヌクレオチドに対する識別を除くように通常は改変されているクローニングされたDNAポリメラーゼI0.35μl(11単位)及びMnCl0.25mMを加えることにより、反応を開始させた。
【0102】
図2に示されているように、γ標識されているddATPを含有する反応では、プライマー:テンプレート2でのみ、染料発光は検出され、この際、テンプレート中の次のヌクレオチドは、dTであった。シュリンプアルカリホスファターゼによるホスホリル転移からのピロリン酸生成物の分解により、CNクマリン標識に検出可能な変化が生じ、これにより、核酸の検出が可能になる。プライマー:テンプレート1では、検出可能な染料発光は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】ホスファターゼの存在下に、テンプレート指令プロセスでγ−リン酸標識ddGTPをポリメラーゼ利用することにより得られた蛍光を示すグラフである。
【図2】ホスファターゼの存在下に、テンプレート指令プロセスでγ−リン酸標識ddATPをポリメラーゼ利用することにより得られた蛍光を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識基質又は基質類似体を使用して、ターゲットを検出する方法において、前記の基質又は基質類似体が反応した場合にのみ、独立に検出可能なシグナルを有する標識ポリリン酸をもたらす酵素触媒される反応で、前記の基質又は基質類似体を反応させるステップを含み、前記のターゲットが核酸である場合には、標識ポリリン酸が3以上のリン酸を有する方法。
【請求項2】
前記の標識ポリリン酸をさらに化学変化させて、検出可能なシグナルを生じさせることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の化学変化を、1種以上の酵素により触媒して、検出可能なシグナルを生じさせる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記のターゲットは、核酸ターゲットである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記のターゲットは、タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の標識基質類似体は、末端リン酸標識ポリリン酸ヌクレオシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の酵素触媒反応は、核酸重合である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の酵素触媒反応は、ホスホジエステラーゼにより触媒される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記の酵素触媒反応は、ジヌクレオチドホスホリラーゼにより触媒される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記の酵素触媒反応は、リガーゼにより触媒される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリリン酸は、2個又はそれ以上のリン酸基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記の標識されているポリリン酸は、式:
Label−x−(p)−p
で表される、請求項1に記載の方法
[上式中、Labelは、検出可能な成分であり、xは、O、S、NH又はリンカーであり、nは、1〜5であり、pは、リン酸又はリン酸誘導体である]。
【請求項13】
前記の標識ポリリン酸中の標識は、比色化合物、蛍光化合物、色素原化合物、蛍光原化合物、化学発光化合物又は電気化学標識である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記の標識は、化学発光化合物、蛍光原染料、色素原染料、電気化学タグ及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記の検出可能な種は、色、蛍光発光、化学発光、質量変化、還元/酸化電位及びこれらの組合せからなる群から選択される特性により検出可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記の比色標識は、シアニン、メロシアニン、フェノキサジン、アクリジノン又はニトロフェノールからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記の蛍光標識は、フルオレセイン、ローダミン、シアニン又はメロシアニンから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記の標識は、2−(5′−クロロ−2′−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4−(3H)−キナゾリノン、二リン酸フルオレセイン、リン酸フルオレセイン3′(6′)−O−アルキル−6′(3′)、リン酸9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)、リン酸4−メチルウンベリフェリル、リン酸レソルフィン、リン酸4−トリフルオロメチルウンベリフェリル、リン酸ウンベリフェリル、リン酸3−シアノウンベリフェリル、リン酸9,9−ジメチルアシルジン−2−オン−7−イル、リン酸6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリル及びこれらの誘導体からなる群から選択される蛍光原成分である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記の標識は、リン酸5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル、リン酸3−インドキシル、リン酸p−ニトロフェニル及びこれらの誘導体からなる群から選択される色素成分である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記の化学発光化合物は、ホスファターゼ活性される1,2−ジオキセタン化合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記の1,2−ジオキセタン化合物は、リン酸2−クロロ−5−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3′,2′−(5−クロロ−)トリシクロ[3,3,3,1−13,7]−デカン]−1−イル)−1−フェニル、クロロアダマント−2′−イリデンメトキシフェノキシリン酸化ジオキセタン、3−(2′−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3″−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記の酵素は、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、ポリリン酸転移酵素、ペプチダーゼ、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、スルファターゼ、エステラーゼ又はこれらの組合せから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項23】
前記の化学変化は、化学的加水分解により誘発される、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記の化学変化は、化学的加水分解及び酵素作用の組合せにより誘発される、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記の化学的加水分解は、自発的である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
標識ヌクレオチド類似体を使用して、ターゲット核酸配列を検出する方法において、核酸ポリメラーゼにより、前記の類似体を、ターゲット配列に相補的なポリヌクレオチドに導入して、ピロリン酸でもモノ置換されているピロリン酸でもない種を生じさせ、これを、化学変化させて、検出可能なシグナルを生じさせる方法。
【請求項27】
前記の化学変化は、1種以上の酵素により触媒される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記の種は、3個又はそれ以上のリン酸基を有する標識ポリリン酸である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記の種は、式:
Label−x−P−(p)−p
で表される、請求項26に記載の方法
[上式中、Labelは、検出可能な成分であり、xは、O、S、NH又はリンカーであり、nは、1〜4であり、pは、リン酸又はリン酸誘導体である]。
【請求項30】
前記のリンカーは、酵素除去可能なリンカーである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記のリンカーは、リン酸の除去の後に自発的に除去される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
式:
Label−(p)−p
で表される化合物を含む、標識リン酸
[上式中、Labelは、蛍光成分、着色成分、蛍光原成分、色素原成分、発光原成分又は電気化学標識からなる群から選択される検出可能な成分であり、nは、2〜5である]。
【請求項33】
式:
Label−(p)−p
で表される化合物を含む、標識リン酸
[上式中、Labelは、蛍光原成分、発光原成分又は電気化学標識からなる群から選択される検出可能な成分であり、nは、1〜5である]。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524358(P2007−524358A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503220(P2006−503220)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/002785
【国際公開番号】WO2004/072297
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】