説明

条体束保持体

【課題】 多数の条体の束を保持し、条体群の端部側を清掃・洗浄等に用い得、効率的に製造可能な条体束保持体の提供。
【解決手段】 束Bの中点部分を緊締部F1により緊締する。延設部F4を挿入孔D1bに挿通して条体保持器Dの外部に突出させ、固定部材Aの挿入口から挿入部A1に挿通して逆側から突出させる。延設部F4を引きながら固定部材Aを柄連結部D2に挿入し、束Bの緊締箇所を含む部分が側方において椀形内面部D1aの開口から挿入され、束Bのうち緊締部F1の両側の部分が椀形内面部D1a内に圧接した状態とすると共に、固定部材Aにおける挿入部A1の挿入口側が条体保持器Dにより支持された状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の条体からなる束を保持し、その条体群の端部側等を各種清掃又は洗浄等に用い得る条体束保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001−78833号公報には、洗剤なしで洗える繊維を同サイズでカットし中央部を同繊維の紐(2)で束ねた毛部分(1)、左右の側面の外側に滑落防止部(6)・内側に毛押さえ止め部(14)・上面に数カ所のスベリ止め部(5)・複数のはめ込み凸部(4)を有する毛乗せ部(3)、毛乗せ部(3)のはめ込み凸部(4)の位置に合わせてはめ込み凹部(8)・複数のストッパー(9)を有する毛押さえ部(7)、中央部に柄取付部分(11)・左右の側面に滑落防止穴(12)を有するカバー(10)からなるバスタブ洗いが記載されている。
【0003】
このバスタブ洗いを製造するには、数個の毛部分(1)を毛乗せ部(3)の上に横に並べ、はめ込み凸部(4)を毛押さえ部(7)のはめ込み凹部(8)へはめ込み、毛押さえ部(7)の両端を毛押さえ止め部(14)で固定する。そしてそれら全体をカバー(10)の中へ押し込み、滑落防止部(6)を滑落防止穴(12)へ入れてずれおちないようにするという工程を要する。
【0004】
このような工程は、煩雑であり、この洗剤なしで洗える繊維からなるバスタブ洗いは、効率良く製造し得るものとは言い得ないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−78833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、多数の条体の束を保持し、条体群の端部側を清掃・洗浄等に用い得、効率的に製造可能な条体束保持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 上記目的を達成する本発明の条体束保持体は、
多数の条体からなる束と、
前記多数の条体からなる束を緊締する緊締部とその緊締部から延びる延設部を有する緊締体と、
挿入孔を有する条体保持器を備え、
前記多数の条体からなる束が中間部において前記緊締体の緊締部により緊締され、
その緊締体の延設部が前記条体保持器の挿入孔に挿入された状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定されていることを特徴とする。
【0008】
前記の多数の条体からなる束が中間部において緊締体の緊締部により緊締され、その緊締体のうち緊締部から延びる延設部が条体保持器の挿入孔に挿入され、緊締体の延設部と条体保持器が固定されることにより、多数の条体からなる束が条体保持器に対し固定保持された条体束保持体が効率的に得られる。
【0009】
(1-1) 上記条体束保持体は、上記緊締体の延設部が条体保持器の挿入孔に挿入された状態において前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することを防ぎ得る固定用係合部を備え、
その固定用係合部により前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定されているものとすることができる。
【0010】
固定用係合部により緊締体の延設部が条体保持器の挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることによって、緊締体の延設部と条体保持器が固定される。
【0011】
(1-1-1) この条体束保持体は、上記挿入孔が条体保持器の外部へ貫通しており、上記延設部が前記挿入孔を通じて条体保持器の外部に達し得、
条体保持器の外部において前記延設部が挿入され得る挿入部を備えた固定部材を有し、
前記延設部と前記固定部材の挿入部に上記固定用係合部が設けられ、
前記挿入孔を挿通した前記延設部が条体保持器の外部において前記固定部材の挿入部に挿入され、その固定部材における挿入部の挿入口側が条体保持器により支持された状態で、前記固定用係合部により前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定されているものとすることができる。
【0012】
この場合、条体保持器の挿入孔を挿通した延設部が条体保持器の外部において固定部材の挿入部に挿入され、その固定部材における挿入部の挿入口側が条体保持器により支持された状態で、固定用係合部により前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定される。
【0013】
(1-1-2) 上記条体束保持体は、上記延設部と上記条体保持器の挿入孔に上記固定用係合部が設けられ、上記延設部が挿入孔に挿入されて前記固定用係合部により延設部が挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定されているものとすることができる。
【0014】
この場合、緊締体の延設部が条体保持器の挿入孔に挿入されて固定用係合部により延設部が挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることによって、緊締体の延設部と条体保持器が固定される。
【0015】
(1-2) 上記条体束保持体は、
上記緊締体が、帯状部とその帯状部を挿通する挿通部(挿通するための孔部を有する部分)とを一体状に有してなるものであり、
前記帯状部が前記挿通部に挿通された状態において、それらの帯状部と挿通部が環状をなして上記緊締部を構成すると共に、帯状部のうち緊締部を構成しない部分が上記延設部を構成し、前記帯状部と前記挿通部には、帯状部が挿通部に対し前記緊締部を締める向きと逆向きに移動することを防ぐ緊締用係合部が設けられているものとすることができる。
【0016】
この場合、帯状部が挿通部に挿通されてそれらの帯状部と挿通部が環状の緊締部を構成し、多数の条体からなる束がその緊締部に挿通した状態で、前記緊締部を締める向きに帯状部を挿通部に対し移動させることにより、その緊締部により前記束を緊締することができる。
【0017】
緊締した状態で帯状部が挿通部に対し前記緊締部を締める向きと逆向きに(従って緊締部を緩める向きに)移動することは、帯状部と挿通部に設けられた緊締用係合部により防がれる。
【0018】
(1-3) 上記条体束保持体は、上記多数の条体からなる束が、中間部が緊締されることにより、被緊締箇所から両側に離れるに従い、被緊締箇所の両側の条体群がそれぞれ全体として側方に広がるものとすることができる。
【0019】
また、上記束を構成する条体は、スプリットヤーン糸であるものとすることができる。
【0020】
(2) 本発明の条体束保持体は、上記条体保持器が、外部に開口する椀形内面部を有し、上記挿入孔は、前記椀形内面部の一部から外方へ向かうものであり、上記束のうち緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方において前記条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入された状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定され、前記束における緊締部により緊締された条体群の端部側は、椀形内面部の開口の外部に位置するものとすることが望ましい。
【0021】
前記の多数の条体からなる束が中間部において緊締体の緊締部により緊締され、その緊締体のうち緊締部から延びる延設部が前記条体保持器の椀形内面部の一部から外方へ向かう挿入孔に挿入すると共に、前記束のうち前記緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方において前記条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入された状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定されることにより、束における緊締部により緊締された条体群の端部側は、椀形内面部の開口の外部に位置するものとなる。そのため、条体束保持体を効率的に得ることができる。
【0022】
緊締体の延設部と条体保持器は、例えば、上記固定用係合部により前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより固定されているものとすることができる。
【0023】
(2-1) 上記条体束保持体は、束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の端部側が、椀形内面部の開口の外部に位置するものであることが望ましい。
【0024】
(2-1-1) 上記条体束保持体は、上記多数の条体からなる束が、中間部が緊締されることにより、被緊締箇所から両側に離れるに従い、被緊締箇所の両側の条体群がそれぞれ全体として側方に広がるものとすることができる。
すなわち、この条体束保持体は、
多数の条体からなる束であって、中間部が緊締されることにより、被緊締箇所から両側に離れるに従い、被緊締箇所の両側の条体群がそれぞれ全体として側方に広がるものと、
前記多数の条体からなる束を緊締する緊締部とその緊締部から延びる延設部を有する緊締体と、
外部に開口する椀形内面部を有すると共に椀形内面部の一部から外方へ向かう挿入孔を有する条体保持器を備え、
前記多数の条体からなる束が中間部において前記緊締体の緊締部により緊締され、
その緊締体の延設部が前記条体保持器の挿入孔に挿入すると共に、前記束のうち前記緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方において前記条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入された状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定され、
前記束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の端部側は、椀形内面部の開口の外部に位置するものである。
【0025】
この場合、前記束は、多数の条体からなり、中間部が緊締されることにより、被緊締箇所から両側に離れるに従い、被緊締箇所の両側の条体群がそれぞれ全体として側方に広がるものである。
【0026】
そのため、前記の多数の条体からなる束が中間部において緊締体の緊締部により緊締され、その緊締体のうち緊締部から延びる延設部が前記条体保持器の椀形内面部の一部から外方へ向かう挿入孔に挿入すると共に、前記束のうち前記緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方において前記条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入された状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定されることにより、束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の端部側は、分散した状態で椀形内面部の開口の外部に位置するものとなる。そのため、椀形内面部の開口の外部に位置する条体群の端部側により、各種清掃又は洗浄等に効果的に用いることができる。
【0027】
また、上記束を構成する条体は、スプリットヤーン糸であるものとすることができる。
【0028】
(2-1-2) 本発明の条体束保持体は、上記束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群同士が、椀形内面部の開口の外部において混合しているものとすることができる。
【0029】
(2-1-3) 本発明の条体束保持体は、上記束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の条体の端部が、椀形内面部の開口の外部において椀形内面部よりも径方向外方まで広がっているものとすることができる。
【0030】
(2-2) 上記条体束保持体は、上記束の中間部のうち緊締部により緊締された箇所の両側の部分が、椀形内面部内に圧接した状態をなすものとすることができる。
【0031】
この場合、上記束のうち前記緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方において前記条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入され、その束のうち緊締部により緊締された箇所の両側の部分が、椀形内面部内に圧接した状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定されるので、前記束が条体保持器に安定的に保持される。なお、前記のように椀形内面部内に圧接するのは、束の中間部のうち緊締部により緊締された箇所の両側の相当部分であればよい。
【0032】
(2-3) 本発明の条体束保持体は、
上記条体保持器が、椀形内面部を複数有し、
それらの椀形内面部毎に、椀形内面部の一部から外方へ向かう挿入孔と、中間部において緊締体の緊締部により緊締された束を有し、
前記椀形内面部毎に、緊締体の延設部が前記挿入孔に挿入すると共に、前記束のうち前記緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方において前記条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入された状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定され、前記束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の端部側は、椀形内面部の開口の外部に位置するものとすることができる。
【0033】
この場合、複数の椀形内面部毎に多数の条体からなる束が保持される。
【0034】
(2-3-1) 前記条体束保持体は、複数の椀形内面部が並列状に隣接しているものとすることができる。
【0035】
この場合、並列状に隣接した複数の椀形内面部にそれぞれ多数の条体からなる束が保持されたものとなる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の条体束保持体においては、多数の条体からなる束が中間部において緊締体の緊締部により緊締され、その緊締体のうち緊締部から延びる延設部が条体保持器の挿入孔に挿入され、緊締体の延設部と条体保持器が固定されることにより、多数の条体からなる束が条体保持器に対し固定保持された条体束保持体が効率的に得られ、条体保持器に対し固定保持された条体群の端部側等を、各種清掃又は洗浄等に効果的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】緊締体の正面図である。
【図2】緊締体の一部拡大正面図である。
【図3】条体束保持体の製造工程を示す破砕斜視図である。
【図4】条体束保持体の製造工程を示す断面図である。
【図5】条体束保持体の製造工程を示す断面図である。
【図6】条体束保持体の製造工程を示す破砕斜視図である。
【図7】条体束保持体の製造工程を示す破砕斜視図である。
【図8】緊締体の緊締部により束を緊締した状態を示す要部模式図である。
【図9】別の条体束保持体の製造工程を示す正面図である。
【図10】別の条体束保持体の製造工程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(1) 図1乃至図8は、何れも本発明の条体束保持体の実施の形態の例としての洗浄具に関するものである。この洗浄具は、主に浴槽、浴室又はその他の対象物の洗浄に用いるものであり、合成樹脂製の浴槽やユニットバス等の合成樹脂製の浴室内面の洗浄に特に適する。
【0039】
(1-1) この洗浄具は、多数の条体Sからなる束Bと、緊締体Fと、条体保持器Dと、固定部材Aと、柄体Hからなる
【0040】
束Bを構成する条体Sは、ポリプロピレンに対し少量のポリエチレンを混合したポリマーアロイ製の一軸延伸合成フィルムに縦方向の切れ目が多数形成されたものを、幅方向(フィルムの送り方向に直交する方向)に拡げたときに網状となるスプリットヤーン糸である。
【0041】
この束Bは、同一材料で同一長さの多数の条体Sからなるものであり、それらの条体Sからなる束Bの両端間の中点の部分が緊締体Fの緊締部F1により緊締されることにより、被緊締箇所から両側に離れるに従い、被緊締箇所の両側の条体S群(多数の条体Sの群)がそれぞれ全体として側方(条体Sの軸線方向に対し直交する方向)に広がるが、被緊締箇所から両側に離れることにより、緊締した状態から自然の状態に側方に広がった場合、その両側方において更に広がるものではない。
【0042】
緊締体Fは、可撓性の帯状部F2とその帯状部F2を挿通する挿通部F3(挿通するための孔部を有する部分)とがポリアミド樹脂により一体成形されたものである。帯状部F2を挿通部F3に挿通することにより、それらの帯状部F2と挿通部F3が環状をなして緊締部F1を構成すると共に、帯状部F2のうち緊締部F1を構成しない部分が延設部F4を構成する。
【0043】
この帯状部F2の片面に、その軸線に沿って多数連続的に設けられた係合歯F2aと、挿通部F3に設けられた係止部F3aが、帯状部F2が挿通部F3に対し緊締部F1を締める向きと逆向きに移動することを防ぐ緊締用係合部を構成する。各係合歯F2aは、帯状部F2の片面において軸線に直交する方向の突条状に形成されている。係止部F3aは、片持梁状の支持部F3bの端部に、係合歯F2aに係止し得る係止歯F3cを有してなる。係止部F3aにおける支持部F3bは、帯状部F2が挿通部F3に対し緊締部F1を締める向きに移動する場合には係止歯F3cが各係合歯F2aを係止しないように弾性的に撓み変形し、帯状部F2が挿通部F3に対しそれと逆向きに移動する場合には実質上撓み変形せず係止歯F3cが各係合歯F2aを係止する。
【0044】
よって、帯状部F2を、挿通部F3に対し緊締部F1を締める向きに移動させることにより、緊締部F1は、条体Sの束Bを緊締する内周の長さを漸次縮小させて締め付けることができる。緊締部F1により条体Sの束Bを締め付けることにより緊締部F1が縮小すると同時に緊締部F1を構成していた部分が延設部F4の一部になって延設部F4が延長される。
【0045】
(1-2) 図1乃至図8に示す例における条体保持器Dは、下方に開口する略半球面状の椀形内面部D1aを有する略半球殻部D1と、その略半球殻部D1の頂部付近から斜上方に伸びる円筒状の柄連結部D2からなる。略半球殻部D1には、椀形内面部D1aから外方へ向かい柄連結部D2の基部内に貫通する挿入孔D1bが設けられている。椀形内面部D1aのうち挿入孔D1bが開口する部分には、緊締体Fの挿通部F3が収容される収容凹部D1cを有する。また、略半球殻部D1の椀形内面部D1aには、径方向内方に突起し開口部D1dから上方に延びるリブD1eを、周方向間隔おきに複数箇所に有する。
【0046】
固定部材Aは、略円柱状をなし、緊締体Fの帯状部F2が構成する延設部F4が挿入され得る挿入部A1を備え、緊締体Fの延設部F4を挿入部A1に挿入しつつ円筒状の柄連結部D2内に挿入し得る。
【0047】
緊締体Fの帯状部F2に、その軸線に沿って多数連続的に設けられた係合歯F2aと、固定部材Aの挿入部A1に設けられた係止部A1aが、帯状部F2が構成する延設部F4が挿入部A1に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれる固定用係合部を構成する。係止部A1aは、挿通部F3に設けられた係止部F3aと同様に構成され、各係合歯F2aが、帯状部F2が挿入部A1に対し挿入する向きに移動(換言すれば、挿入部A1が、帯状部F2に対し緊締部F1を締める向きに相対的に移動)する場合には係止しないように弾性的に変形し、帯状部F2が挿入部A1に対しそれと逆向きに移動する場合には係止するように設けられている。
【0048】
柄体Hは、その基部を条体保持器Dにおける円筒状の柄連結部D2内に嵌挿固定することにより、条体保持器Dに連結することができる。
【0049】
(1-3) 図9及び図10に示す例における条体保持器Jは、中間部が下方開口の略半円筒状、両端部が下方開口の略4分の1球殻状の殻状をなし、内側には、下方に開口する略半球面状の同一形状の3つの椀形内面部J1aを長手方向に隣接して並列状に有し、外側の長手方向中央位置には円筒状の柄連結部J2を有する。
【0050】
条体保持器Jには、椀形内面部J1aから外部に貫通する挿入孔J1bが設けられている。挿入孔J1bは、緊締体Fの帯状部F2が構成する延設部F4が挿入され得るものであり、挿入孔J1bには係止部J1cが設けられている。
【0051】
緊締体Fの帯状部F2に、その軸線に沿って多数連続的に設けられた係合歯F2aと、条体保持器Jの挿入孔J1bに設けられた係止部J1cが、帯状部F2が構成する延設部F4が挿入孔J1bに対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれる固定用係合部を構成する。係止部J1cは、挿通部F3に設けられた係止部F3aと同様に構成され、各係合歯F2aが、帯状部F2が挿通孔J1bに対し挿入する向きに移動(換言すれば、挿通孔J1bが、帯状部F2に対し緊締部F1を締める向きに相対的に移動)する場合には係止しないように弾性的に変形し、帯状部F2が挿入孔J1bに対しそれと逆向きに移動する場合には係止するように設けられている。
【0052】
柄体Hは、その基部を条体保持器Jにおける円筒状の柄連結部J2内に嵌挿固定することにより、条体保持器Jに連結することができる。
【0053】
(2) これらの洗浄具は、例えば次のように製造することができる。
【0054】
(2-1) 緊締体Fの帯状部F2を挿通部F3に挿通して形成した環状の緊締部F1に束Bを挿通し、挿通部F3を帯状部F2に対し緊締部F1を締める向きに相対的に移動させてその内周の長さを漸次縮小させることにより、束Bの両端間の中点の部分を緊締部F1により緊締する。帯状部F2が挿通部F3に対し緊締部F1を締める向きに移動する場合には、緊締体Fの挿通部F3に設けられた係止部F3aが、帯状部F2の軸線に沿って多数連続的に設けられた係合歯F2aに係止しないように弾性的に変形し、帯状部F2が挿通部F3に対しそれと逆向きに移動する場合は係止部F3aが係合歯F2aに係止する。そのため、束Bを一旦締め付けた緊締部F1が緩むことが防がれ、効率的に束Bを緊締することができる。
【0055】
(2-2) 次いで、図1乃至図8に示す例においては、束Bを緊締した緊締体Fにおける帯状部F2のうち、挿通部F3に挿通され、挿通部F3から突出して緊締部F1の外方に出た部分である延設部F4を、条体保持器Dの挿入孔D1bに挿通して条体保持器Dの外部に突出させ、更に、条体保持器Dの外部において固定部材Aの挿入口から挿入部A1に挿通し、挿入部A1の逆側から突出させる。
【0056】
その上で、固定部材Aの挿入部A1から突出した延設部F4を引きながら固定部材Aを条体保持器Dの柄連結部D2内の最奥部に挿入し、束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所を含む部分が束Bの側方において条体保持器Dの椀形内面部D1aの開口からその椀形内面部D1a内に挿入され、緊締体Fの挿通部F3が収容凹部D1cに収容され、束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所の両側の部分が椀形内面部D1a内に圧接した状態とすると共に、固定部材Aにおける挿入部A1の挿入口側が条体保持器Dにより支持された状態とする。束Bにおける緊締部F1により緊締された箇所の両側の条体S群同士は、椀形内面部D1a内及び椀形内面部D1aの開口の外部において混合し、束Bにおける緊締部F1により緊締された箇所の両側の条体S群の条体Sの端部は、椀形内面部D1aの開口の外部において椀形内面部D1aよりも径方向外方まで広がった状態となる。
【0057】
延設部F4が条体保持器Dの挿入孔D1b及び固定部材Aの挿入部A1に対し挿入の向きに移動する場合には、固定部材Aの挿入部A1に設けられた係止部A1aが、帯状部F2の軸線に沿って多数連続的に設けられた係合歯F2aに係止しないように弾性的に変形し、延設部F4がそれと逆向きに移動する場合は係止部A1aが係合歯F2aに係止する。そのため、固定部材Aの挿入部A1から突出した延設部F4が外部側へ引かれて束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所を含む部分が束Bの側方において条体保持器Dの椀形内面部D1aの開口からその椀形内面部D1a内に挿入されて束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所の両側の部分が椀形内面部D1a内に圧接した状態が緩むことが防がれる。
【0058】
(2-3) また、図9及び図10に示す例においては、束Bを緊締した緊締体Fにおける帯状部F2のうち延設部F4を、条体保持器Jの挿入孔J1bに挿通して条体保持器Jの外部に突出させる。
【0059】
条体保持器Jの外部に突出した延設部F4を十分に引き出すことにより、束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所を含む部分が束Bの側方において条体保持器Jの椀形内面部J1aの開口からその椀形内面部J1a内に挿入されて束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所の両側の部分が椀形内面部J1a内に圧接した状態とする。束Bにおける緊締部F1により緊締された箇所の両側の条体S群同士は、椀形内面部J1a内及び椀形内面部J1aの開口の外部において混合し、束Bにおける緊締部F1により緊締された箇所の両側の条体S群の条体Sの端部は、椀形内面部J1aの開口の外部において椀形内面部J1aよりも径方向外方まで広がった状態となる。この場合、隣接した椀形内面部J1aにそれぞれ保持された束Bの条体S群の一部は、椀形内面部J1aの開口の外部において混合しているものとすることができる。
【0060】
延設部F4が条体保持器Jの挿入孔J1bに対し挿入の向きに移動する場合には、その挿入孔J1bに設けられた係止部J1cが、帯状部F2の軸線に沿って多数連続的に設けられた係合歯F2aに係止しないように弾性的に変形し、延設部F4がそれと逆向きに移動する場合は係止部J1cが係合歯F2aに係止する。そのため、条体保持器Jの挿入孔J1bを通じて外部に突出した延設部F4が外部側へ引かれて束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所を含む部分が束Bの側方において条体保持器Jの椀形内面部J1aの開口からその椀形内面部J1a内に挿入されて束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所の両側の部分が椀形内面部J1a内に圧接した状態が緩むことが防がれる。条体保持器Jの挿入孔J1bに挿通して条体保持器Jの外部に突出した延設部F4は、適宜切断することができる。図10における右側の延設部F4は未切断状態を示す。
【0061】
(2-4) このように、何れの例においても、多数の条体Sからなる束Bを緊締体Fにより緊締し、緊締された束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所を含む部分を椀形内面部D1a又はJ1aの開口からその椀形内面部D1a又はJ1a内に挿入させて束Bのうち緊締部F1により緊締された箇所の両側の部分が椀形内面部D1a又はJ1a内に圧接した状態として緊締体Fの延設部F4と条体保持器D又はJを固定し、束Bにおける緊締部F1により緊締された箇所の両側の条体S群同士が椀形内面部D1a又はJ1a内及び椀形内面部D1a又はJ1aの開口の外部において混合し、束Bにおける緊締部F1により緊締された箇所の両側の条体S群の条体Sの端部は椀形内面部D1a又はJ1aの開口の外部において椀形内面部D1a又はJ1aよりも径方向外方まで広がった状態の洗浄具を効率的に製造することができる。
【0062】
(3) 本発明における条体束保持体は、中間部が緊締部により緊締された条体束のうち、椀形内面部の開口の外部に位置する条体群の端部側により清掃又は洗浄を行う清掃具又は洗浄具として主に用いることができる。
【0063】
(4) 本発明における束は、多数の条体(好ましくは同一状の長さの条体)からなるものであり、その中間部が緊締されることにより、被緊締箇所から両側に離れるに従い、被緊締箇所の両側の条体群(多数の条体の群)がそれぞれ全体として側方(条体の軸線方向に対し直交する方向)に広がるものである。なお、本発明における束は、前記被緊締箇所から両側に離れる距離の如何にかかわらず側方に広がるものであることを要するものではなく、距離がある程度長くなれば側方に広がらないものであってよい。また本発明における束は、被緊締箇所から両側に離れることにより、緊締した状態から自然の状態に側方に広がった場合、その両側方において更に広がることを要するものではない。
【0064】
このような束を構成する条体は、可撓性の線状体や帯状体等の細長材、例えば、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、又は合成樹脂フィルム等からなる糸状体又は紐状体等から選択することができる。好ましく用いることができるものの例として、スプリットヤーン糸を挙げることができる。
【0065】
スプリットヤーン糸は、例えば、一軸延伸合成フィルムに縦方向の切れ目が多数形成されたものを、幅方向(フィルムの送り方向に直交する方向)に拡げたときに網状となる糸状体とすることにより得ることができる。スプリットヤーン糸の材料として好ましいのは、ポリプロピレン、或いは、ポリプロピレンに対し少量のポリエチレンを混合したものである。
【0066】
スプリットヤーンの太さは、例えば500乃至5000dTexとすることができる。好適な太さは、1000乃至3000dTX、例えば2000dTexである。また本発明におけるスプリットヤーンとしては、例えばスリット幅が0.4乃至0.7mmのものを用いることができる。また本発明におけるスプリットヤーンの原材料である、ポリプロピレン、或いは、ポリプロピレンに対し少量のポリエチレンを混合したもののロックウェル硬さとしては、例えば85乃至110HRCのものを用いることができる。硬い方が掻きとり効果は上がるが、硬すぎると洗浄対象に傷が付きやすくなる。
【0067】
なお、本発明における束は、同一種類の条体の種類のみからなるものの他、複数種(例えば材料や太さ・断面形状等の形態等が異なるもの)の条体からなるものとすることもできる。
【0068】
本発明における束が緊締体の緊締部により緊締される中間部は、好ましくは長手方向の中央部、より好ましくは長手方向の中点である。
【0069】
(5) 本発明における緊締体は、緊締部とその緊締部から延びる延設部を有する。
【0070】
緊締部は、多数の条体からなる束を緊締するためのものであり、全部又は部分が可撓性又は非可撓性である環状部とすることができる。この環状部は、好ましくは紐状又は帯状材からなるものとすることができる。
【0071】
緊締部は、条体の束を緊締する内周の長さを漸次縮小させて締め付けることができるもの(例えば全体又は部分が可撓性材料からなるもの)とすることが好ましく、閉じていない状態から環状を形成して内周の長さを漸次縮小させつつ条体の束を締め付けることができるものであることがより好ましい。なお、緊締部を、開閉可能な環状部で、閉じることにより条体の束を緊締し得、閉じた状態の内周の長さは一定であるものとすることもできる。
【0072】
緊締部の材料として好ましいのは、可撓性を有する合成樹脂(好ましくはポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂を挙げることができる)である。
【0073】
緊締部から延びる延設部は、全部又は部分が可撓性又は非可撓性である細長材、好ましくは紐状又は帯状材、からなるものとすることができる。緊締部が環状部である場合、延設部は、環状部から径方向外方に延びるものとすることができる。
【0074】
延設部の材料として好ましいのは、可撓性を有する合成樹脂(好ましくはポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂を挙げることができる)である。
【0075】
緊締体を構成する緊締部と延設部は、一体をなすものであることが好ましいが、別体の緊締部と延設部が結合して緊締体を構成するものとすることもできる。
【0076】
緊締部と延設部が一体をなす場合、緊締部により条体の束を締め付けることにより緊締部が縮小すると同時に緊締部を構成していた部分が延設部の一部になって延設部が延長されるものとすることができる。例えば、可撓性の細長材のうち、一部が緊締部として機能し、それ以外の部分が延設部を構成するものであって、緊締部が縮小すれば延設部が延長されるものとすることができる。
【0077】
より具体的には、例えば、緊締体は、帯状部とその帯状部を挿通する挿通部とを一体状に有してなるもの(例えば合成樹脂により一体成形されたもの)であり、
前記帯状部が前記挿通部に挿通された状態において、それらの帯状部と挿通部が環状をなして上記緊締部を構成すると共に、帯状部のうち緊締部を構成しない部分が上記延設部を構成し、前記帯状部と前記挿通部には、帯状部が挿通部に対し前記緊締部を締める向きと逆向きに移動(換言すれば、挿通部が、帯状部に対し緊締部を締める向きと逆向きに相対的に移動)することを防ぐ緊締用係合部が設けられているものとすることができる。
【0078】
このような緊締用係合部としては、帯状部に、その軸線に沿って多数(好ましくは連続的に)設けられた係合歯と、挿通部に、前記各係合歯が、帯状部が挿通部に対し緊締部を締める向きに移動する場合には係止しないように弾性的に変形又は変位し、帯状部が挿通部に対しそれと逆向きに移動する場合には係止するように設けられた係止部からなるものとすることができる。
【0079】
(6) 本発明における条体保持器は、外部に開口する椀形内面部を有すると共に椀形内面部から外方へ向かう挿入孔を有する。
【0080】
椀形内面部は、内面部の形状が椀形状をなす。椀形内面部の具体的な形状としては、例えば半球面状若しくはその他の平面で球を二分割した一方における球面形状又は楕円体の表面の一部等の凹曲面形状、各種正多面体又はその他の多面体の表面の一部の形状等を例示することができる。好ましくは、開口部の中央に直交する軸線のまわりに回転対称状をなす形状、より好ましくは任意角度で回転対称状をなす形状である。
【0081】
条体保持器が有する挿入孔は、椀形内面部の一部(好ましくは椀形内面部の最奥部。例えば半球面の場合、その頂部)から外方へ向かう。挿入孔は、外部へ通じ、延設部が挿通し得るものとすることが好ましいが、外部へ通じないか又は延設部が挿通し得ないものとすることもできる。
【0082】
(7) 緊締体の延設部と条体保持器は、緊締体の延設部が前記条体保持器の挿入孔に挿入すると共に、前記束のうち前記緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方(束を構成する条体の方向に交差[好ましくは直角若しくはそれに近い角度で交差]する方向)において条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入された状態(例えば、緊締体の延設部が条体保持器の挿入孔に挿入されるに伴い緊締体によって束が椀形内面部内に引き込まれて挿入された状態)で、固定される。
【0083】
この場合、前記束のうち緊締部により緊締された箇所の両側の部分が、椀形内面部内に圧接した状態をなすものとすることができる。
【0084】
(8) 緊締体の延設部と条体保持器の固定は、例えば次のa)、b)、又はc)のようなものとすることができる。
【0085】
a) 上記緊締体の延設部が条体保持器の挿入孔に挿入した状態において前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することを防ぎ得る固定用係合部を備え、その固定用係合部により前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定されるもの。
【0086】
このような固定用係合部としては、緊締体の延設部に、条体保持器の挿入孔に挿入する方向に沿って多数(好ましくは連続的に)設けられた係合歯と、条体保持器の挿入孔又はその他の部分若しくは部材に、前記各係合歯が、前記延設部が前記挿入孔に対し挿入する向きに移動する場合は係止しないように弾性的に変形又は変位し、延設部が挿入孔に対しそれと逆向きに移動する場合には係止するよう設けられた係止部からなるものとすることができる。
【0087】
b) 上記挿入孔が条体保持器の外部へ貫通しており、上記延設部が前記挿入孔を通じて椀形内面部内から条体保持器の外部に達し得、
条体保持器の外部において前記延設部が挿入され得る挿入部を備えた固定部材を有し、
前記延設部と前記固定部材の挿入部に上記固定用係合部が設けられ、
前記挿入孔を挿通した前記延設部が条体保持器の外部において前記固定部材の挿入部に挿入され、その固定部材における挿入部の挿入口側が条体保持器により支持された状態で、前記固定用係合部により前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定されるもの。
【0088】
このような固定用係合部としては、緊締体の延設部に、条体保持器の挿入孔に挿入する方向に沿って多数(好ましくは連続的に)設けられた係合歯と、固定部材における挿入部に、前記各係合歯が、前記延設部が前記挿入孔に対し挿入する向きに移動する場合は係止しないように弾性的に変形又は変位し、延設部が挿入孔に対しそれと逆向きに移動する場合には係止するよう設けられた係止部からなるものとすることができる。
【0089】
c) 上記延設部と上記条体保持器の挿入孔に上記固定用係合部が設けられ、上記延設部が挿入孔に挿入されて前記固定用係合部により延設部が挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定されるもの。
【0090】
この場合の条体保持器の挿入孔は、外部へ通じ、延設部が挿通し得るものとすることが好ましいが、外部へ通じないか又は延設部が挿通し得ないものとすることもできる。
【0091】
このような固定用係合部としては、緊締体の延設部に、条体保持器の挿入孔に挿入する方向に沿って多数(好ましくは連続的に)設けられた係合歯と、条体保持器の挿入孔に、前記各係合歯が、前記延設部が前記挿入孔に対し挿入する向きに移動する場合は係止しないように弾性的に変形又は変位し、延設部が挿入孔に対しそれと逆向きに移動する場合には係止するよう設けられた係止部からなるものとすることができる。
【0092】
(9) 多数の条体からなる束のうち、緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方において条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入され、緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の端部側は、椀形内面部の開口の外部に位置する。例えば、多数の条体からなる束の中点から端部に至る長さの1乃至8割が椀形内面部の開口の外部に位置するものとすることができる。
【0093】
上記束における、緊締部により緊締された箇所は、被緊締箇所から両側に離れるに従い、被緊締箇所の両側の条体群がそれぞれ全体として側方に広がる。但し、椀形内面部内では束が椀形内面部により圧縮されて被緊締箇所の両側の条体群が十分に広がらないことがある。
【0094】
束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群同士は、椀形内面部の開口の外部において混合しているものであることが好ましい。特に、束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群同士は、椀形内面部の開口の外部において、互いに混合することにより両者を区別し得ない状態であることが好ましい。
【0095】
このような、束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群同士の混合は、椀形内面部の開口の外部において、一部同士の混合であってもよく、全体同士の混合であってもよい。また、椀形内面部内においても束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群が一部同士又は全体同士混合していることが望ましい。
【0096】
多数の条体からなる束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の条体の端部は、椀形内面部の開口の外部において、全体的に均等状に分散した状態をなすことが好ましい。
【0097】
また、多数の条体からなる束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の条体の端部は、椀形内面部の開口の外部において椀形内面部よりも径方向外方まで広がっているものであることが好ましく、径方向最外方よりも内側には十分な密度で(より好ましくは全体的に均等状に分散した状態で)条体の端部が存在することが特に好ましい。
【0098】
(10) 椀形内面部は、緊締体のうち緊締部と延設部の境界部の少なくとも一部が収容される収容凹部を有するものとすることができる。この場合、上記束における緊締部により緊締された箇所の両側の部分のうち、椀形内面部内に圧接する範囲を広くすることができる。
【0099】
(11) 外部に開口する椀形内面部であって椀形内面部の一部から外方へ向かう挿入孔を有するものを複数備える条体保持器は、例えば、箱形状又は殻状であって、平面視において、長方形状若しくは角部が湾曲した長方形状、その他の多角形状若しくは角部が湾曲した多角形状、又は円形状若しくは楕円形状のものとすることができる。
【0100】
1つの条体保持器における複数の椀形内面部は、挿入孔の位置を含めて互いに同一形状とすることができる他、同一形状であって一部又は全ての椀形内面部における挿入孔の位置が他と異なるものとすることや、一部又は全ての椀形内面部の形状が他と異なるものとすることもできる。
【0101】
また、1つの条体保持器における複数の椀形内面部は、例えば、一列若しくは複数列に、一定姿勢で並列状に若しくは種々の姿勢で、隣接して又は一定間隔若しくは種々の間隔おきに位置するものとすることができる。隣接した椀形内面部にそれぞれ保持された束の条体群は、一部が椀形内面部の開口の外部において混合しているものとすることができる。その場合、椀形内面部の開口の外部において、それらの隣接した束の条体群が連続状をなすものとなる。
【符号の説明】
【0102】
A 固定部材
A1 挿入部
A1a 係止部
B 束
D 条体保持器
D1 略半球殻部
D1a 椀形内面部
D1b 挿入孔
D1c 収容凹部
D1d 開口部
D1e リブ
D2 柄連結部
F 緊締体
F1 緊締部
F2 帯状部
F2a 係合歯
F3 挿通部
F3a 係止部
F3b 支持部
F3c 係止歯
F4 延設部
H 柄体
J 条体保持器
J1a 椀形内面部
J1b 挿入孔
J1c 係止部
J2 柄連結部
S 条体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の条体からなる束と、
前記多数の条体からなる束を緊締する緊締部とその緊締部から延びる延設部を有する緊締体と、
挿入孔を有する条体保持器を備え、
前記多数の条体からなる束が中間部において前記緊締体の緊締部により緊締され、
その緊締体の延設部が前記条体保持器の挿入孔に挿入された状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定されていることを特徴とする条体束保持体。
【請求項2】
上記緊締体の延設部が条体保持器の挿入孔に挿入された状態において前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することを防ぎ得る固定用係合部を備え、
その固定用係合部により前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定されている請求項1記載の条体束保持体。
【請求項3】
上記挿入孔が条体保持器の外部へ貫通しており、上記延設部が前記挿入孔を通じて条体保持器の外部に達し得、
条体保持器の外部において前記延設部が挿入され得る挿入部を備えた固定部材を有し、
前記延設部と前記固定部材の挿入部に上記固定用係合部が設けられ、
前記挿入孔を挿通した前記延設部が条体保持器の外部において前記固定部材の挿入部に挿入され、その固定部材における挿入部の挿入口側が条体保持器により支持された状態で、前記固定用係合部により前記延設部が前記挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定されている請求項2記載の条体束保持体。
【請求項4】
上記延設部と上記条体保持器の挿入孔に上記固定用係合部が設けられ、上記延設部が挿入孔に挿入されて前記固定用係合部により延設部が挿入孔に対し挿入の向きと逆向きに移動することが防がれることにより、緊締体の延設部と条体保持器が固定されている請求項2記載の条体束保持体。
【請求項5】
上記緊締体は、帯状部とその帯状部を挿通する挿通部とを一体状に有してなるものであり、
前記帯状部が前記挿通部に挿通された状態において、それらの帯状部と挿通部が環状をなして上記緊締部を構成すると共に、帯状部のうち緊締部を構成しない部分が上記延設部を構成し、前記帯状部と前記挿通部には、帯状部が挿通部に対し前記緊締部を締める向きと逆向きに移動することを防ぐ緊締用係合部が設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の条体束保持体。
【請求項6】
上記多数の条体からなる束が、中間部が緊締されることにより、被緊締箇所から両側に離れるに従い、被緊締箇所の両側の条体群がそれぞれ全体として側方に広がるものである請求項1乃至5の何れか1項に記載の条体束保持体。
【請求項7】
上記束を構成する条体がスプリットヤーン糸である請求項6記載の条体束保持体。
【請求項8】
上記条体保持器が、外部に開口する椀形内面部を有し、上記挿入孔は、前記椀形内面部の一部から外方へ向かうものであり、上記束のうち緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方において前記条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入された状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定され、前記束における緊締部により緊締された条体群の端部側は、椀形内面部の開口の外部に位置する請求項1乃至5の何れか1項に記載の条体束保持体。
【請求項9】
上記束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の端部側が、椀形内面部の開口の外部に位置する請求項8記載の条体束保持体。
【請求項10】
上記多数の条体からなる束が、中間部が緊締されることにより、被緊締箇所から両側に離れるに従い、被緊締箇所の両側の条体群がそれぞれ全体として側方に広がるものである請求項9記載の条体束保持体。
【請求項11】
上記束を構成する条体がスプリットヤーン糸である請求項10記載の条体束保持体。
【請求項12】
上記束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群同士が、椀形内面部の開口の外部において混合している請求項9乃至11の何れか1項に記載の条体束保持体。
【請求項13】
上記束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の条体の端部が、椀形内面部の開口の外部において椀形内面部よりも径方向外方まで広がっている9乃至12の何れか1項に記載の条体束保持体。
【請求項14】
上記束の中間部のうち緊締部により緊締された箇所の両側の部分が、椀形内面部内に圧接した状態をなす請求項8乃至13の何れか1項に記載の条体束保持体。
【請求項15】
上記条体保持器が、椀形内面部を複数有し、
それらの椀形内面部毎に、椀形内面部の一部から外方へ向かう挿入孔と、中間部において緊締体の緊締部により緊締された束を有し、
前記椀形内面部毎に、緊締体の延設部が前記挿入孔に挿入すると共に、前記束のうち前記緊締部により緊締された箇所を含む部分が、その束の側方において前記条体保持器の椀形内面部の開口からその椀形内面部内に挿入された状態で、緊締体の延設部と条体保持器が固定され、前記束における緊締部により緊締された箇所の両側の条体群の端部側は、椀形内面部の開口の外部に位置する請求項8乃至14の何れか1項に記載の条体束保持体。
【請求項16】
上記複数の椀形内面部が並列状に隣接している請求項15記載の条体束保持体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−39253(P2013−39253A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178651(P2011−178651)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000178583)山崎産業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】