説明

杭穴充填物の採取方法及び採取装置

【課題】取込口周辺の付着物を除去して、所望の深さの杭穴充填物を確実に採取する。
【解決手段】筒状基体1内を連通孔7付きの隔離板6で、採取取込室11と採取タンク12に区画し、採取取込室11に取込口13を形成し、筒状基体1内に、連通孔7を塞ぐ上栓体22と下栓体8を有し、操作ロッド51で昇降できる主塞ぎ具21を内装して、採取装置40とする。杭穴内で、上栓体22で連通孔7を塞ぎ、採取装置40を下降し(a)、所定深さでパイプ部3から洗浄水を噴射して、取込口13付近の付着物を洗い流す。採取位置に移動して(a)、操作ロッド51を上昇して(b)、杭穴充填部物を取込口13、連通孔7から採取タンク12内に取り込む。収容が完了したならば、操作ロッド31を上昇させて、下栓体23で連通孔7を塞ぎ(c)、採取装置40を地上に引き上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、杭穴を掘削して、杭穴内にソイルセメントセメンの層やセメントミルク層などの各層の杭穴充填物を試料として地上に取り出すために用いる杭穴充填物の採取方法及び採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
杭穴充填物は、掘削時に使用した水や掘削泥土内にセメントミルクを注入して、杭穴残存物と置換してセメントミルク層を形成し、あるいは杭穴残存物と撹拌混合してソイルセメントを形成して、既製杭を埋設していた。また、昨今の高い支持力を臨む要求から、既製杭の効果と共に、既製杭と杭穴の間のセメントミルクの強化が求められていた。
【0003】
従って、実際に杭穴内からサンプルを採取して、地上で固化させて強度試験をして強度を確認することも求められていた。特に支持地盤付近、即ち杭穴底付近(根固め部)の強度が重要となっており、杭穴底は地上から70m程度に達することもある。
【0004】
よって、この場合、杭穴内に、杭穴内充填物の採取装置を下降させて採取していた。採取装置として、例えば、内窓を設けたホッパーに、外窓を設けた外枠を被せて、内窓・外窓を一致させて杭穴充填物をホッパー内に取込み、内窓・外窓をずらして、ホッパーを塞ぐ工夫がされていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−73360
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の採取装置の場合、途中で杭穴充填物を誤って採取するおそれもなく、採取後も確実にホッパーを略密封して、所望の杭穴充填物を地上まで引き上げることができた。しかし、採取装置が粘土質の地層で杭穴壁や杭穴内の泥土と触れた場合には、外窓の縁に土などが付着するおそれがあり、その場合に、その土をホッパー内に取り込み、そのまま固化されるおそれが生じる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明では、杭穴充填物を取り入れ取入口を有する採取取込室に液体などを噴射して、その後に、杭穴充填物を採取タンクに収容するので、前記問題点を解決した。
【0008】
即ちこの採取方法の発明は、杭穴内から充填物を採取して、地上で回収する方法であって、以下のように構成することを特徴とした杭穴充填物の採取方法である。
(1) 採取タンクと、採取取込室とが、開閉自在の連通孔で連通し、採取取込室に杭穴に臨む取込口を有する採取装置を構成する。
(2) 前記採取装置を、連通孔を閉じた状態で、前記杭穴の採取深さ、採取深さ近傍又はその他の深さに位置させる。
(3) 続いて、採取取込室の内側から前記取込口側に向けて液体を噴射して、前記取込口の周囲の付着物を除去する。
(4) 続いて、採取位置と原位置がずれていた場合には、前記採取装置を所定の採取位置へ移動する。
(5) 続いて、前記連通孔を開けて、杭穴充填物を前記採取タンク内に取り込む。
(6) 前記採取タンク内に前記杭穴充填物の採取が完了したならば、前記連通孔を閉じて、前記採取装置を地上に引き上げる。
【0009】
また、採取装置の発明は、中空部内に注水パイプを設けた掘削ロッドの下端に取り付けて使用する杭穴充填物の採取装置である。
(1) 縦方向に配置した筒状基体の上端に、前記掘削ロッドとの下端を連結し、あるいは前記掘削ロッドと着脱可能に連結できる連結部を形成する。
(2) 前記筒状基体の長さ方向の中間部に、連通穴を設けた隔離板を取つけて、上部の採取取込室と下部の採取タンクに区分する。
(3) 前記筒状基体の側壁で、前記採取取込室の高さ位置に取込口を空けると共に、前記注水パイプの下縁を前記採取取込室内に臨ませる。
(4) 前記連通孔を跨いで、主塞ぎ具を上下動自在に配置し、前記主塞ぎ具は、前記連通孔を塞ぐことができる上栓体と下栓体とを連結して構成する。
(5) 前記主塞ぎ具の上端に、地上から前記注水パイプを通って配置された操作ロッドの下端を連結する。
【0010】
また、前記において、以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置である。
(1) 主塞ぎ具の上栓体が、隔離板の連通穴を塞いだ状態で、取込口を塞ぐことができる補助塞ぎ具を操作ロッド又は前記主塞ぎ具に連結する。
(2) 前記補助塞ぎ具は、前記主塞ぎ具の昇降に連動して、前記主塞ぎ具の両栓材が前記連結穴を塞いでいない状態で、前記取込口の全部又は一部を開放する高さに位置するように、構成する。
【0011】
また、前記において、以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置である。
(1) 掘削ロッドに下端に取り付ける筒状基体と、前記掘削ロッドから取り外した前記筒状基体を地上で受ける受け具を組み合わせて採取装置とする。
(2) 前記筒状基体に放射方向に突出する係止部を形成し、前記筒状基体の底部に内容物を取り出せる取出口を設ける。
(3) 前記受け具は、前記筒状基体の係止部に係止して、前記筒状の下降を制限する受け部と、前記受け部を所定位置に保持する支柱とから構成する。
さらに、前記において、以下のように構成したことを特徴とする杭穴充填物の採取装置である。
(1) 筒状基体に、杭穴充填物を採取完了後に、主塞ぎ材具の操作ロッドに係止して、主塞ぎ具の相対的な下降を規制するストッパーを設けた。
【0012】
前記における採取取込室で液体を噴射して付着物を除去工程は、「採取装置を、連通孔を閉じた状態で、前記杭穴の採取深さ、採取深さ近傍又はその他の深さに位置させ」は、噴射位置から採取位置へ移動する際に、再度付着物が生じるおそれがあるので、採取位置で行うことが望ましいが、この場合には、噴射する液体が採取する杭穴充填物に影響する場合もあり、杭穴充填物の状況などから両要因を考慮して行う。通常は採取位置のやや上方で液体の噴射を実施して、採取装置を下降して採取位置に移動する。
また、前記の採取位置への移動は、通常は深さ方向であるが、水平方向の移動もある。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、採取タンクを閉じた状態で、取込口に臨む採取取込室内に液体を噴射するので、万一取込口の縁に粘土などが付着した場合であってもこれを除去でき、採取タンク内に、取り込むおそれは無い。従って、所望深さの杭穴充填物を確実に地上に採取できる効果があり、杭穴充填物の固化強度を正確に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態1の採取装置で、(a)〜(d)は採取方法を説明する概略した縦断面図である。
【図2】この発明の実施形態1の採取装置で、採取した杭穴充填物を取り出している状態の概略した縦断面図である。
【図3】この発明の実施態様2の採取装置で、(a)〜(c)は採取方法を説明する概略した縦断面図である。
【図4】この発明の実施態様3の採取装置で、(a)は筒状基体の縦断面図、(c)は主塞ぎ具の正面図である。
【図5】(a)〜(c)は、この発明の実施態様3の採取装置を使った採取方法を説明する正面図である。
【図6】この発明の実施態様4の採取装置で、(a)は採取前の正面図、(b)は採取前の側面図、(c)は採取中の正面図、(d)(e)(f)は、それぞれ(a)(b)(c)の筒状基体のみを破折した正面図である。
【図7】同じく実態態様4の採取装置で、(a)は採取完了の正面図、(b)は地上で未固結使用を取り出している状態の正面図、(c)(d)は、それぞれ(a)(b)の筒状基体を破折した正面図である。
【図8】同じく実施態様4の採取装置で、保持具を組み合わせた状態を表し、(a)は斜視図、(b)は載置状態の正面図、(b)取出口を開いた状態の正面図である。
【図9】同じく実施態様4の他の採取装置で筒状基体を破折した正面図で、(a)実施態様4の採取装置で採取前、(b)は他の実施態様で採取前、(c)は他の実施態様で採取完了後を表す。
【図10】同じく実施態様4の他の採取装置で筒状基体を破折した正面図で、(a)は採取前、(b)は他採取途中、(c)は採取完了後を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施形態1の採取装置40の構成
【0016】
(1) 筒状基体1の中間部内面に、筒状基体1の内部を上下に仕切る隔離板6を固定して、隔離板6の上方を採取取込室11とし、下方を採取タンク12とする。隔離板6の中央部に、採取取込室11と採取タンク12とを連通させる連通孔7を形成してある。連通孔7の周面は、隔離板6の下面9側が上面8側より大径となるように、下方に向けて斜面が形成されている。
【0017】
隔離板6から所定高さH上方で、筒状基体1の側壁に開口を形成して取込口13、13とする。取込口13は円周方向で等間隔に4つ設け、筒状基体1の内外を連通する。
【0018】
筒状基体1の上端部に上蓋5をして、上蓋5上に、掘削ロッド51の凹連結部(連結部)52と連結できる凸連結部(被連結部)2を形成する。凹連結部52には、セメントミルクや掘削液(水など)を地上から掘削ロッド51の下端に供給するための注水パイプ53が形成され、凸連結部2内には、注水パイプ53と連結して連通できるパイプ部3を配置する。パイプ部3の下端4は取込口13の上方又は取込口13付近に位置する。
【0019】
筒状基体1の底板15の中央に開口を形成して、採取した杭穴充填物の取出口16として、底板15の下面に、底板15に着脱可能で、かつ取出口16を塞ぐ下蓋板18を有する下端突起17を取り付ける。下端突起17は下蓋板18の下面に突起部19を固定して構成する。
【0020】
(2) 隔離板6の上方に、隔離板6の上面8側から連通孔7を塞ぐことができる上栓体22を配置する。隔離板6の下方に、隔離板6の下面9側から連通孔7を塞ぐことができる下栓体23を配置する。上栓体22の下面と下栓体23の上面とを長さLの連結棒14で連結して、主塞ぎ具21とする。
【0021】
地上から、注水パイプ53、パイプ部3に操作ロッド31を挿通して、操作ロッド31の下端を主塞ぎ具21の上栓体22の上面に連結する。
【0022】
前記筒状基体1は、上栓体22が連通孔7を塞いだ位置から、取込口13の直下位置までの間で、内小径部(肉厚部)26が形成され、この内小径部26では、筒状基体1の内壁に上栓体22の外周面が密着して、取込口13、13が開放されても、採取取込室11と採取タンク12とは連通せずに、採取タンク12は、略密封される。
【0023】
また、下栓体23は上面側が小径で下面側が大径に形成され、連通孔7の周面に密着できるように、周面は上方に向けた斜面が形成される。
【0024】
(3) 主塞ぎ具21の上方で、筒状基体1内で摺動可能に塞ぎ筒(補助塞ぎ具)28を内装する。上栓体22の下面から塞ぎ筒28の下面までの距離をLとし、塞ぎ筒28の高さをLとする。塞ぎ筒28は、主塞ぎ具21の上栓体22が連通孔7を塞いだ状態で、塞ぎ筒28が取込口13、13を塞ぐような位置に配置されている。さらに、塞ぎ筒28は、上栓体22及び下栓体23のいずれも連通孔7を塞がず、連通孔7が開放された状態で、取込口13、13の一部又は全部を開放しているように配置される。この位置関係を維持できるように、塞ぎ筒28は操作ロッド31に固定される。塞ぎ筒28と操作ロッド31との固定は、例えば、塞ぎ筒28に直径方向の棒材29、29を固定し、その棒材29と操作ロッド31とを固定する(図1(a))。
【0025】
(4) 以上のようにして、採取装置40を構成する(図1)。
【0026】
(5) 他の実施形態
前記において、掘削ロッド51の凹連結部52に連結できるように凸連結部2を形成したが、掘削ロッド51に直接に筒状基体1を固定することもできる(図示していない)。
また、前記において、パイプ部3の下端4は下方に向けて形成したが、横方向に、例えば取込口13の縁、特に上側の縁に向けて形成することもできる(図示していない)。また、パイプ部3の下端部を分岐させて、下端4を多数形成することもできる(図示していない)。
【0027】
2.実施形態1の杭穴充填物の採取方法(採取装置40の使用)
【0028】
(1) 所定の杭穴の掘削が完了して、杭穴内にセメントミルクを注入して、杭穴の下端部にセメントミルク層、その上方にソイルセメント層が形成されている(図示していない)。
続いて、掘削ロッド51の凹連結部52に、採取装置40の凸連結部2を連結して、杭穴の採取位置(ここでは杭穴底付近)まで、採取装置40を下降させる。この際、主塞ぎ具21の上栓体22の下面が連通孔7を塞ぎ、かつ塞ぎ筒28が取込口13、13を塞いでいる(図1(a))。
この状態で、取込口13、13が塞ぎ筒28で塞がれているので、取込口13、13から杭穴充填物が、筒状基体1内に取り込まれることはない。なお、この場合、杭穴充填物内に粘土質の塊が撹拌されずに残っている場合、粘土質の杭穴壁に接触した場合などに、まれに取込口13、13の縁に、その粘土分が付着する場合もある。
【0029】
(2) 杭穴内で、採取予定の深さあるいはその近傍の深さ(通常は採取予定の深さの若干上方)で、操作ロッド31を上昇させて、主塞ぎ具21の上栓体22を内小径部26の上端部付近に位置させる(図1(b))。この状態で、杭穴充填物が取込口13、13を通過して、採取取込室11内に入っているが、上栓体22が内小径部26の周面に密着しているので、採取タンク12は空の状態である。
この状態で、パイプ部3の下端4から取込口13の縁に向けて、高圧の洗浄水を噴射して、取込口13の縁付近の泥土の付着を洗い流す。なお、洗浄水は、採取予定の杭穴充填物のセメントミルク濃度(ソイルセメントのセメントミルク成分の濃度)に相当する濃度のセメントミルクが望ましいが、杭穴内での固化強度に影響を与えない程度で、水、泥水、ソイルセメントなどを使用することもできる。
【0030】
(3) この取込口6が開放された状態で(図1(b))、掘削ロッド51を回転して、採取装置40を回転して、噴射した洗浄水の影響を少なくするように、周りの杭穴充填物となじませる。従って、この状態で、採取予定深さの杭穴充填物と、採取取込室11内の杭穴充填物がほぼ同じ内容となっている。
【0031】
(4) 続いて、採取装置40が採取位置にある場合にはその位置で、採取装置が離れている場合には採取位置まで移動して、再度、操作ロッド31を上昇して、主塞ぎ具21の上栓体22を内小径部26の上方に位置させて、上栓体22の周縁と筒状基体1の内壁との間に隙間を形成し、さらに上栓体22を取込口13、13付近からさらに上方に移動させて(図1(c))、杭穴充填部物を、取込口13、13、内小径部26、連通孔7を通過させて、採取タンク12内に取り込む。
【0032】
(5) 所定時間経過して、タンク内に必要量の杭穴充填物を収容したならば、さらに操作ロッド31を上昇させて、主塞ぎ具21の下栓体23を、連通孔7を下方から連通孔7に嵌挿して連通孔7を塞ぐ(図1(d))。
【0033】
(6) 続いて、主塞ぎ具21の下栓体23で連通孔7を塞いだ状態を維持して(図1(d))、掘削ロッド51と共に採取装置40を地上に引き上げる。地上で、筒状基体1から下端突起17を外せば、筒状基体1の底板15の取出口16から採取タンク12内の杭穴充填物を取り出す(図2)。取り出した杭穴充填物は、テストピース作成用の型枠に入れて養生して固化させる(図示していない)。
【0034】
3.実施形態2の採取装置40及び採取方法
【0035】
(1) 前記実施態様1において、塞ぎ筒(補助塞ぎ具)28を使用したが、この実施態様2は、塞ぎ筒28を省略した実施態様で、内小径部26も省略して、上栓体22の外周と筒状基体1の内面とに隙間を形成してある(図3(a))。他の構成は、前記実施態様と同じである。以上のようにして、採取装置40を構成する(図3)。
【0036】
(2) 次に、この採取装置40を使った採取方法について説明する。前記実施態様と同様に、掘削ロッド51の凹連結部52に、採取装置40の凸連結部2を連結して、杭穴の採取位置(ここでは杭穴底付近)まで、採取装置40を下降させる。この際、主塞ぎ具21の上栓体22の下面が連通孔7を塞でいるので(図3(a))、取込口13、13から杭穴充填物が、筒状基体1内に取り込まれても、連通孔7から採取タンク12内に入ることはない。
【0037】
採取装置40が引き続きこの状態にあるように維持して、採取深さ付近まで、採取装置を下降させる(図3(a))。この位置で、パイプ部3の下端4から取込口13、13の縁に向けて、高圧の洗浄水を噴射して、取込口13、13の縁付近の泥土や他の深さで付着したソイルセメントなどの付着物を洗い流す。
【0038】
この状態で(図3(a))、必要に応じて掘削ロッド51を回転・昇降などをして、採取装置40を回転・昇降などをし、噴射した洗浄水の影響を少なくするように、杭穴内の周りの杭穴充填物となじませることもできる。従って、この状態で、採取予定深さの杭穴充填物と、採取取込室内の杭穴充填物がほぼ同じ内容となっていることが望ましい。また、上記洗浄の工程を、採取予定の位置(深さ)以外の位置で行うこともでき、この場合には洗浄の工程を終了した後に、採取予定の位置に移動して、以下の工程を行う。
【0039】
続いて、所定の採取位置で、操作ロッド51を上昇して、主塞ぎ具21の上栓体22を上方に位置させて、上栓体22の周縁と筒状基体1の内壁との間に隙間を形成し(図3(b))、杭穴充填部物を、取込口13、13、連通孔7を通過させて、採取タンク12内に取り込む。所定時間経過して、採取タンク12内に必要量の杭穴充填物を収容したならば、さらに操作ロッド31を上昇させて、主塞ぎ具21の下栓体23を、連通孔7の下方から連通孔7に嵌挿して連通孔7を塞ぐ(図3(c))。
【0040】
続いて、主塞ぎ具21の下栓体23で連通孔7を塞いだ状態を維持して(図3(c))、掘削ロッド51と共に採取装置40を地上に引き上げる。地上で、筒状基体1から下端突起17を外せば、筒状基体1の底板15の取出口16から採取タンク12内の杭穴充填物を取り出すことができる(図2参照)。
【0041】
4.実施形態3の採取装置40及び採取方法
【0042】
(1) この実施態様は、上記実施形態2の塞ぎ筒28を使用しない実施形態で、先端突起17の下蓋板18の上面に案内筒33を突設して、案内筒33を底板15の取出口16に嵌挿した実施形態である。案内筒33には上縁からU字状の切り欠き34が形成されている。また、隔離板6の連通孔7は、斜面に代えて上下縁をテーパー状に形成する。
また、主塞ぎ具21の上栓体22は下部を細径としたテーパー状に形成し、下栓体23の上部を細径としたテーパー状に形成する。また、主塞ぎ具21は上栓体22の上面に突起部25を形成し、突起部25に操作ロッド31の下端を回転自在に連結する(図4(b))。以上のようにして、採取装置40を構成する(図5(a))。
【0043】
(2) 次に、この採取装置40を使った採取方法については、採取した杭穴充填物を地上で取り出す以外の工程は、前記実施態様2の場合と同じである。
【0044】
即ち、前記実施態様1と同様に、掘削ロッド51の凹連結部52に、採取装置40の凸連結部2を連結して、杭穴の採取位置まで、採取装置40を下降させる。この際、主塞ぎ具21の上栓体22の下面が連通孔7を塞でいるので(図5(a))、取込口13、13から杭穴充填物が、筒状基体1内に取り込まれても、連通孔7から採取タンク12内に入ることはない。
【0045】
採取装置40が引き続きこの状態にあるように維持して、採取深さ付近まで、採取装置を下降させる(図5(a))。この位置で、パイプ部3の下端4から取込口13、13の縁に向けて、高圧の洗浄水を噴射して、取込口13、13の縁付近の泥土や他の深さで付着したソイルセメントなどの付着物を洗い流す。この状態で(図5(a))、必要に応じて掘削ロッド51を回転・昇降などをして、採取装置40を回転・昇降などをし、噴射した洗浄水の影響を少なくするように、杭穴内の周りの杭穴充填物となじませることもできる。従って、この状態で、採取予定深さの杭穴充填物と、採取取込室11内の杭穴充填物がほぼ同じ内容となっていることが望ましい。
【0046】
続いて、必要ならば採取装置40を移動して、所定の採取位置で、操作ロッド51を上昇して、主塞ぎ具21の上栓体22を上方に位置させて、上栓体22の周縁と筒状基体1の内壁との間に隙間を形成し(図5(b))、杭穴充填部物を、取込口13、13、連通孔7を通過させて、採取タンク12内に取り込む。所定時間経過して、採取タンク12内に必要量の杭穴充填物を収容したならば、さらに操作ロッド31を上昇させて、主塞ぎ具21の下栓体を、連通孔7の下方から連通孔7に嵌挿して連通孔7を塞ぐ(図5(c)鎖線図示17)。
【0047】
続いて、主塞ぎ具21の下栓体23で連通孔7を塞いだ状態を維持して(図5(c)鎖線図示17)、掘削ロッド51と共に採取装置40を地上に引き上げる。地上で、筒状基体1から下端突起17を外して下降させれば、筒状基体1の底板15の取出口16に案内筒33が嵌挿された状態で、ゆっくりと下端突起17が下降する。また、採取タンク12内の杭穴充填物は、案内筒33の切り欠き34から流れ出るので、予め切り欠き34の位置に併せて、各種容器を設置すれば、漏らすことなく杭穴充填物を取り出すことができる(図5(c)実線図示17)。
【0048】
5.実施形態4の採取装置40及び採取方法
【0049】
(1) この実施態様は、塞ぎ筒28を使用しない実施形態(実施態様2、3と同様)で、上記実施形態3でさらに、筒状基体1に係止部36を形成して採取装置40とすると共に、掘削ロッドから取り外した筒状基体を地上で保持するための保持具を組み合わせて採取装置40を構成するものである。
【0050】
(2) 筒状基体1の上蓋5を、筒状基体1より大径に形成して、筒状基体1の側面より放射状に突出する形状として、上蓋5の外周部を係止部36とする(図6)。また、筒状基体1の上蓋5の下面内周側に、筒状基体1に主塞ぎ具21を収容した際に、主塞ぎ具21の上栓体22を収容する凹部38を形成する(図6(d)〜(f)、図4(a))。
【0051】
また、実施態様3と同様に、先端突起17の下蓋板18の上面に案内筒33を突設して、案内筒33を底板15の取出口16に嵌挿した実施形態である。案内筒33には上縁からU字状の切り欠き34が形成されている。また、隔離板6の連通孔7は、斜面に代えて上下縁をテーパー状に形成する。
【0052】
また、パイプ部3の上端に細径部3aを形成し、細径部3aの上方(凸連結部2の上面付近)にストッパー57を取り付ける。ストッパー57は、その係止縁が細径部3aを横切る位置と細き径部3aを開放するする位置との2位置をとり、細径部3aを横切る位置側に付勢されている(図示していない)。なお、付勢(ばねなど)は省略して、手動で2位置を取れるように操作することもできる。
【0053】
また、主塞ぎ具21の上栓体22は下部を細径としたテーパー状に形成し、下栓体23の上部を細径としたテーパー状に形成する。また、主塞ぎ具21は上栓体22の上面に突起部25を形成し、突起部25に操作ロッド31の下端を回転自在に連結する(図4(b))。
【0054】
また、主塞ぎ具21の操作ロッド31で、昇降した際に細径部3aが位置する範囲を含むような長さ(高さ)で、大径部31aを形成し、大径部31aの下端を係止縁32とする。係止縁32はストッパー57と係止して、筒状本体1に対して主塞ぎ具21が下降するような動きを規制できる。
他の構造を実施態様1〜3と同様に形成した、採取装置40を構成する(図5(a))。
【0055】
(3) また、この採取装置40は、保持具50を使用する。
保持具50は、ベース板43上に、中央部にスペース49を空けて、3つの支柱44、44を立設して、支柱44、44の上端部でスペース49側に、リング状の受けリング(受け部)45を固定する。前記スペース49は、筒状基体1を縦に収容できる広さを有し、受けリング45の外周面を各支柱44、44の内面に固定する。受けリング45の内径は筒状基体1が通過できるような大きさに形成し、外径は筒状基体1の上蓋5の係止部36(外周部)の外径より大きく形成する。また、ベース板43から受けリング45の上縁46までは高さHで形成され、支柱44の上縁と同一高さに形成されている。また、支柱の中間高さに、受けリング45と同じ内径外径の中間リング47を固定する。
【0056】
(4) この採取装置40では、前記各実施態様2〜3と同様に使用する。まず、所定深さまで採取装置40を沈める(図6(a)(b)(d)(e))。この際、主塞ぎ具21の操作ロッド31の太径部31aの上端部が、パイプ部3の細径部3aに位置している(図6(d)(e))。この位置で、採取位置(深さ)で、操作ロッド31を上昇させ、主塞ぎ具21の上栓体22を上方に位置させて、上栓体22の周縁と筒状基体1の内壁との間に隙間を形成する(図6(c)(f)。この状態で、主塞ぎ具21の操作ロッド31の太径部31aの中間部が、パイプ部3の細径部3aに位置している(図6(c)(f))図3(b)参照)。
【0057】
また、杭穴充填部物を、取込口13、13、連通孔7を通過させて、採取タンク12内に取り込む。所定時間経過して、採取タンク12内に必要量の杭穴充填物を収容したならば、さらに操作ロッド31を上昇させて、主塞ぎ具21の下栓体23を、連通孔7の下方から連通孔7に嵌挿して連通孔7を塞ぐ(図7(a)(c)。図3(c)参照)。連通孔7が塞がれた状態で、主塞ぎ具21の操作ロッド31の太径部31aが、パイプ部3の細径部3aの上方に突出して、ストッパー57の係止縁が太径部31aの係止縁32を係止する。
続いて、主塞ぎ具21の下栓体23で連通孔7を塞いだ状態を維持して、掘削ロッド51と共に採取装置40を地上に引き上げる。この際、ストッパー57の係止縁が太径部31aの係止縁32を係止するので、主塞ぎ具21が筒状基体1に対して下降することが無いので、採取タンク12の密封が維持され、地上55までに途中の杭穴充填物が採取タンク12内に混入することを防止できる。
【0058】
(5) 地上55で、保持具50のスペース49に上方から採取装置40の筒状基体1を入れ、筒状基体1の上蓋5の係止部36の下面37を、保持具50の受けリング45の上縁46及び支柱44、44の上縁に係止して、保持具50に採取装置40を載置する。この状態でも、ストッパー57の係止縁が太径部31aの係止縁32を係止するので、主塞ぎ具21が筒状基体1に対して下降することが無いので、不慮に採取タンク12が開くことを防止できる。また、この状態で、掘削ロッド51を凸連結部2から取り外すが(図7(a)(c))、この状態で、保持具50は採取装置40に載置されたまま移動できないので、取り外した掘削ロッド51は他の作業に使用することができる。
【0059】
(6) 保持具50に採取装置40を載置する前又は後に、ベース板43上で、採取装置40の直下に、杭穴充填物(未固結試料)の採取容器48を置く。
続いて、採取装置40の筒状基体1から下端突起17を外せば、筒状基体1の底板15の取出口16から採取タンク12内の杭穴充填物を採取容器48に取り出すことができる(図8(a)(c)、図7(b))。この際、下端突起17を下方に取り出して、杭穴充填物の取り出し作業を行うので、この作業に支障が無いように充分なスペースを確保できるように、保持具50の高さHが設定されている。
【0060】
(7) 前記実施態様で、上蓋5を大径に形成して上蓋5の外周側を係止部36としたが、別途筒状基体1の外周面に突起物を放射状に突設して、係止部36とすることもできる(図示していない)。
また、前記実施態様で保持具50の構造は、採取装置40を高さHで保持できる受けリング45の機能があれば、他の構造とすることもできる(図示していない)。
【0061】
(8) 前記実施態様において、操作ロッド31に太径部31aを設けたので、操作ロッド31の他の部分(太径部31aより小径)が、パイプ部3の細径部3aに位置する際に、隙間が生じる場合もある(図9(a))。この場合、採取タンク12を開く前(採取装置40を所定深さまで沈めている最中)に取入口13からパイプ部3を杭穴充填物が矢示58、58のように、小径部3aから上方(掘削ロッド51の中空部内)に移動することも考えられる。
これを防止するために、操作ロッド31の太径部31aの下方位置で、パイプ部3の下端部の位置(太径部31aより細い径)にパイプ部3を塞ぐ止水材(円柱状)56を取り付けることもできる(図9(b))。止水材56は、操作ロッド31の上昇に従ってパイプ部3内を上昇動する(図9(c))。
【0062】
また、操作ロッド31で太径部31の下方に、止水材56の高さと同程度の高さを有する下太径部31bを形成することもできる(図10)。この場合、止水材(円柱状)56はパイプ部3の上端(小径部3aを直下から塞ぐ位置)に位置して、この位置を保持して、止水材56内を操作ロッド31が摺動する(図10(a)〜(c))。
【符号の説明】
【0063】
1 筒状基体
2 凸連結部
3 パイプ部
3a パイプ部の小径部
4 パイプ部の下端
5 上蓋
6 隔離板
7 連通孔
8 隔離板の上面
9 隔離板の下面
11 採取取込室
12 採取タンク
13 取入口
15 底板
16 取出口
17 下端突起
18 下蓋板(下端突起)
19 突起部(下端突起)
21 主塞ぎ具
22 上栓体(主塞ぎ具)
23 下栓体(主塞ぎ具)
24 連結棒(主塞ぎ具)
25 突起部(主塞ぎ具)
26 内小径部(筒状基体)
28 塞ぎ筒(補助塞ぎ具)
29 棒材
31 操作ロッド
31a 操作ロッドの大径部
32 操作ロッドの係止縁
33 案内筒
34 切り欠き(案内筒)
36 係止部
37 係止部の下面
40 採取装置
43 ベース板
44 支柱
45 受けリング(係止部)
46 受けリングの上縁
48 採取容器
50 保持具
51 掘削ロッド
52 凹連結部
53 注水パイプ
55 地上
56 止水材
57 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭穴内から充填物を採取して、地上で回収する方法であって、以下のように構成することを特徴とした杭穴充填物の採取方法。
(1) 採取タンクと、採取取込室とが、開閉自在の連通孔で連通し、採取取込室に杭穴に臨む取込口を有する採取装置を構成する。
(2) 前記採取装置を、連通孔を閉じた状態で、前記杭穴の採取深さ、採取深さ近傍又はその他の深さに位置させる。
(3) 続いて、採取取込室の内側から前記取込口側に向けて液体を噴射して、前記取込口の周囲の付着物を除去する。
(4) 続いて、採取位置と原位置がずれていた場合には、前記採取装置を所定の採取位置へ移動する。
(5) 続いて、前記連通孔を開けて、杭穴充填物を前記採取タンク内に取り込む。
(6) 前記採取タンク内に前記杭穴充填物の採取が完了したならば、前記連通孔を閉じて、前記採取装置を地上に引き上げる。
【請求項2】
中空部内に注水パイプを設けた掘削ロッドの下端に取り付けて使用する杭穴充填物の採取装置。
(1) 縦方向に配置した筒状基体の上端に、前記掘削ロッドとの下端を連結し、あるいは前記掘削ロッドと着脱可能に連結できる連結部を形成する。
(2) 前記筒状基体の長さ方向の中間部に、連通穴を設けた隔離板を取つけて、上部の採取取込室と下部の採取タンクに区分する。
(3) 前記筒状基体の側壁で、前記採取取込室の高さ位置に取込口を空けると共に、前記注水パイプの下縁を前記採取取込室内に臨ませる。
(4) 前記連通孔を跨いで、主塞ぎ具を上下動自在に配置し、前記主塞ぎ具は、前記連通孔を塞ぐことができる上栓体と下栓体とを連結して構成する。
(5) 前記主塞ぎ具の上端に、地上から前記注水パイプを通って配置された操作ロッドの下端を連結する。
【請求項3】
以下のように構成したことを特徴とする請求項2記載の杭穴充填物の採取装置。
(1) 主塞ぎ具の上栓体が、隔離板の連通穴を塞いだ状態で、取込口を塞ぐことができる補助塞ぎ具を操作ロッド又は前記主塞ぎ具に連結する。
(2) 前記補助塞ぎ具は、前記主塞ぎ具の昇降に連動して、前記主塞ぎ具の両栓材が前記連結穴を塞いでいない状態で、前記取込口の全部又は一部を開放する高さに位置するように、構成する。
【請求項4】
以下のように構成したことを特徴とする請求項2記載の杭穴充填物の採取装置。
(1) 掘削ロッドに下端に取り付ける筒状基体と、前記掘削ロッドから取り外した前記筒状基体を地上で受ける受け具を組み合わせて採取装置とする。
(2) 前記筒状基体に放射方向に突出する係止部を形成し、前記筒状基体の底部に内容物を取り出せる取出口を設ける。
(3) 前記受け具は、前記筒状基体の係止部に係止して、前記筒状の下降を制限する受け部と、前記受け部を所定位置に保持する支柱とから構成する。
【請求項5】
以下のように構成したことを特徴とする請求項3記載の杭穴充填物の採取装置。
(1) 筒状基体に、杭穴充填物を採取完了後に、主塞ぎ材具の操作ロッドに係止して、主塞ぎ具の相対的な下降を規制するストッパーを設けた。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−237192(P2012−237192A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−103948(P2012−103948)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】