説明

板状搬送用コンベヤ

【課題】簡易な駆動機構で、板材を傷付けることなく搬送でき、また搬送時には振動や蛇行のない、またダストの発生が少ない板材搬送用コンベヤを提供する。
【解決手段】互いに並列に配置される一対のエンドレス駆動ベルト2,2間に、搬送方向に直角に架け渡される棒状部材3をベルト2の全周に多数設け、各棒状部材3に搬送対象の板材Wを支持する支持部材4を設けた。また棒状部材3の断面形状は、駆動ベルト2への平坦な一対のベルト取付部の間に上方に突出する支持部材取付部を有する形状としてもよい。棒状部材3の両側には、支持部材4aより背が高い位置決め部材4bを設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を搬送する板状搬送用コンベヤの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば薄型表示装置の製造工程等において、ガラス基板に代表される板材を搬送する技術が必要となっている。板材を搬送するコンベアには、一例として、図7の概念図に示す様なローラーコンベヤ10があり、多数のローラー11がこの上に載置される板材を搬送する為に回転駆動される様になっている。このローラーコンベヤ10は、板材の板面を多数のローラー面で支持するのであるが、板材には薄い板材もあり、この様な場合はその薄さから撓みやすいのが一般であり、そのため支持点が少ないと撓みも大きなものになってしまう。従ってこの様な薄い板材におけるローラーコンベア10は、隣接するローラー11同士の間隔が広くなりすぎない様に、多数のローラー11が配置されており、板材の撓みに配慮した構成になっている。
【0003】
ただこの様に撓みを考慮した構成であっても、ある程度の撓みは避けられない。例えば図8に示す様に、搬送される時の板材Wの先頭部分Waは、ローラー11aから次のローラー11bに辿り着くまでの区間は、その先頭部分Waが多少でも垂れた状態となるのである。しかし少しでも先頭部分Waが垂れた状態であると、次のローラー11bに辿り着く時には、先頭Waがそのローラー面に一度衝突してから乗り上げるという手順になってしまっている。この様な衝突は、それが僅かなものであってもダストの発生となり、また板材Wを傷付けることにもなる。
【0004】
また撓みやすい板材であれば、図8に示されている様に、ローラー11とローラー11とに跨った部分12は低く撓み、ローラー11に乗り上げた部分13は高くなる。その為、この様なローラー11を通過するたびに、この様な高低による波形を繰り返すこととなり、この点でも板材Wが傷付いたり、或いは振動する原因にもなっている。
【0005】
またこの様なコンベヤ10に水平に載置された板材Wは、下の板面を多数のローラー11に支持されており、これらローラー11の回転駆動は同じ回転速度にしてあるが、それでも種々の条件が重なって、板材Wは搬送途中で蛇行するなどの状態になることがある。蛇行は、コンベア10に対する位置ズレや、ローラー11との摺擦による傷付きとなり不具合である。
【0006】
また別の板材用のコンベアとして、ベルトコンベアによるものがある。例えば特許文献1に示す板状体の搬送装置20があり、これはベルトコンベア21を多数用いた装置であって、図9に示す様な突起状支持体22がベルト23の搬送方向と平行な方向へ間隔をおいて、ベルト面に取り付けたものである。そしてこの様なベルトコンベア21を、図10〜11に示す様に多数列に配置したものであり、この多数の突起状支持体22が板材Wを支持して搬送する様になっている。この突起状支持体22は、例えば樹脂で形成されている。
【特許文献1】特開2004−210440号公報
【0007】
このコンベアベルト20によれば、突起状支持体22が板材Wを支持したまま移動するので、上記に指摘したローラーコンベア10の様な問題点がないとされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ただこの様な突起状支持体(以下、「支持体」ともいう)を取り付けたベルトコンベアによる搬送装置20であれば、ベルトコンベア21を多数並列に配置しなければならない。特に撓みやすい板材であれば、支持体22の間隔が広いと撓みすぎてしまうからである。支持体22はベルトの搬送方向における間隔を狭くしなければならないが、搬送方向と直角な方向(コンベアの幅方向)の間隔も狭くしなければならない。
【0009】
ただその場合は、隣り合うベルトコンベヤ21,21の間隔を狭くすることになり、ベルトコンベア21の本数も多くなり、それだけ装置の構成が複雑になる。また、隣り合うベルトコンベヤの駆動プーリーは共通の駆動軸に取り付けられるようになっており、ベルトの交換などのメンテナンス作業が著しく困難となる。
【0010】
本願発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な駆動機構で、板材を傷付けることなく搬送でき、また搬送時には振動や蛇行のない、またダストの発生が少ない板材搬送用コンベヤの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、互いに並列に配置される一対のエンドレス駆動ベルト間に、搬送方向に直角に架け渡される棒状部材をベルトの全周に多数設け、各棒状部材に搬送対象の板材を支持する支持部材を設けたことを特徴とする板材搬送用コンベヤである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載の板材搬送用コンベヤであって、棒状部材の断面形状を、駆動ベルトへの平坦な一対のベルト取付部の間に上方に突出する支持部材取付部を有する形状としたことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の板材搬送用コンベヤであって、棒状部材の両側に、支持部材より背が高い位置決め部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願請求項1記載の発明の板材搬送用コンベヤによれば、一対のベルトコンベアに架けた棒状部材に板材を載置するので、用いるベルトコンベヤは板材の幅に拘わらず常に2本で済むのであり、よって簡単な駆動構造で、板材を傷付けることもなく搬送できる。また支持部材はコンベヤ幅方向の間隔を自由に選択することができ、狭い間隔でも可能なので、板材の撓みを抑えることができる。
【0015】
また本願請求項2記載の発明の板材搬送用コンベヤによれば、棒状部材の強度を高めることができ、搬送面の撓みを抑えることができる。
【0016】
また本願請求項3記載の発明の板材搬送用コンベヤによれば、位置決め部材により、搬送時における板材の位置ズレを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に発明を実施するための最良の形態を列記する。
(形態1) ベルトはゴム系の材質で形成される、あるいはステンレス系の材質でもよく、その他の材質でもよい。
(形態2) 棒状部材は樹脂材料或いは金属材料でもよい。
(形態3) 棒状部材のベルトへの取付は、ベルトへのリベット止め、ボルト止めなど、締結部材を用いて取り付けるのでもよく、或いは、適宜な接着剤による貼付でもよい。
(形状4) 棒状部材はベルトに形態3のようなベルトに直接取り付ける方法ではなく、ベルトに棒状部材の取り付けられる着脱部を別途設けておき、これに着装させることで取り付ける様にしてもよい。
(形態5) 支持部材や位置決め部材の材質としては、UPE(超高分子量(高密度)ポリエチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のクリーン対策材料として使用されているものが、耐摩耗性に優れ、ダストが発生しにくいため好適であるが、これには限らない。
(形態6) 支持部材は、ベルト面から突き出た円柱形状で頂部が円形平面であるものが代表的な形状であるが、円柱状でなくまた頂部も半球状その他の形状であってもよく、ベルト面から板材を離して支持できるものであればよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の板材搬送用コンベヤ1(以下、単に「コンベア」ともいう)の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、板材搬送用コンベヤ1を平面視した図であり、図2は側面視した図である。この板材搬送用コンベヤ1は、互いに並列に配置される一対のエンドレス駆動ベルト2間に、搬送方向に直角に架け渡される棒状部材3を、ベルト2の全周に多数設けたものである。そして各棒状部材3には、搬送対象の板材Wを支持する支持部材4aを設けてある。
【0019】
エンドレス駆動ベルト2(以下、単にベルト2ともいう)はゴム製であり、2つのプーリー5にゴム製のベルト2が張設されている。そしてベルト面が水平となる様に載置され、2つのプーリー5が図示しない駆動部により回転駆動されることにより、ベルト2が一方向Xに移動するのである。そしてこの様なエンドレス駆動ベルト2を2つ並列に配置するのである。
【0020】
棒状部材3は、2つのエンドレス駆動ベルト2に、ベルト2の走行方向に直角となる様に架け渡すものであり、この様にして架けられる棒状部材3が、ベルト2の全周に等間隔で多数設けてある。
【0021】
この棒状部材3はスチール製であり、細幅で2つのベルト2の各外側に届く程度の長さの細長い板材である。そして棒状部材3の断面形状は、図3に示す様になっている。即ち、棒状部材3の幅方向両端には、その下面に一対の平坦な面6が形成されており、これが棒状部材をベルト面7に取り付けの為のベルト取付部6aとなっている。またこのベルト取付部6aの間には、上方に突出する断面コ字状の部位8aが棒状部材3の長手に沿って設けられており、これが支持部材4aを取り付ける支持部材取付部8を形成している。この様に棒状部材3の断面形状は立体形状となっているため強度を出すことができ、棒状部材3の長手中央あたりでの弛みを抑えることができる。よって搬送面の撓みを抑えることができるのである。
【0022】
支持部材4aには、UPEもしくはPEEKが使用されており、ベルト面から突き出た円柱形状で、その頂部が円形平面に形成されている。この様な支持部材4aは、耐磨耗性が高く、機械的な強度に優れているためにダストが発生しにくいのでクリーン対策材料として好適である。なお、棒状部材3の長手方向を弓なりにして、長手中央を少し高くしておき、板材Wの荷重によりほぼ横水平に変形する様にしておけば、支持部材4aの板材への支持力が比較的均一になり好適である。
【0023】
この様な支持部材4aが、棒状部材3の全長に形成されている支持部材取付部8に、図4に示す様に、等間隔で取り付けられている。これら支持部材4aは板材をその上に載置するための支持部材4aであり、よって同形状で同じ高さである。また棒状部材の両側には、これら支持部材4aより背の高い位置決め部材4bが取り付けられていて、搬送する板材Wの両端を規制して板材が位置ズレしないようになっている。
【0024】
この板材搬送用コンベヤ1によれば、図1〜2のXに示す様に、板材Wは支持部材4aに支持された状態で搬送される。即ち、プーリー5が回転駆動することによりベルト2が走行し、これに取り付けられている棒状部材3と共に支持部材4aも搬送方向に走行するのである。そしてこれら支持部材4aは、その頂部が同一平面に位置している状態で走行するのであり、よって上流からこの板材搬送用コンベヤ1に移載される板材Wを、その平面形状を維持しながら搬送することができ、これにより板材Wを傷付けることを抑えることができるのである。
【0025】
また支持部材4aは棒状部材3に取り付けられているので、例えば図10〜11に示した搬送装置20のように、横方向に隣り合う支持体22(本願の支持部材に相当)が別々のベルト21に取り付けられているのと異なり、走行中に支持部材4aの間隔が微妙に変動するという様な事はない。また支持部材4aの幅方向の間隔は、どの様な間隔にでも狭められるのであり、図10〜11に示した搬送装置20のように、隣り合うベルト21の間隔に制限されるという事もない。更に本実施例の板材搬送用コンベヤ1では、1本の棒状部材3に取り付けられた幅方向の多数の支持部材4aは、当然ながら走行速度も互いに同一となり、蛇行などが起こし難くなるなど搬送性能が良好となる。また仮に蛇行などが生じても位置決め部材4bにより位置が規制されているので、結果、蛇行が規制される。
【0026】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。たとえば、ベルトはゴム製に限らずスチー製その他どの様な材質でもよい。棒状部材、支持部材、位置決め部材に於いてもその材質を制限するものではない。また棒状部材、支持部材、位置決め部材の形状も発明の趣旨の範囲で、どの様であってもよい。
【0027】
なお上記実施例では、支持部材に突起状の部材を用いているが、支持部材はこれに限らない。例えば、実施例に示した棒状部材3の支持部材取付部8の上面にUPEやPEEKによる樹脂プレート4a’やフィルムを貼着し(図5参照)、あるいはUPEやPEEKによるコーティングを施す等してもよい。この場合は、樹脂プレート4a’やコーティング膜が支持部材となる。
【0028】
あるいは、棒状部材としてスチールパイプ9などを用い(図6参照)、これにUPEやPEEKによる樹脂チューブ9aを被せたり、あるいはUPEなPEEKによるコーティングを施してもよい。
【0029】
このようなスチールパイプ9を取り付けるには、例えば一対のベルト2a,2aの各々に、L字状のホルダー9bを背中合わせに備えて一対となる様に形成し、この一対のホルダー9b,9bにスチールパイプ9を挟むようにして取り付けることができる。
【0030】
要するに本発明における支持部材は、第1の実施例のように点(比較的狭い面)接触に近い状態で板材を支持するもの、第2の実施例のように面(比較的広い面)接触に近い状態で板材を支持するもの、第3の実施例のように線接触に近い状態で板材を支持するもの等、どの様な状態で板材を支持するものであってもよい。
【0031】
またベルト2a,2aに、図5〜6に示したようなタイミングベルト2a,2aを用いると、これら一対のベルト2a,2aの互いの速度を一致して走行させることができるので、搬送する板材の蛇行なども生じない。このタイミングベルト2a,2aはベルト内周面に歯形2a’が設けられており、また図示しないプーリーにはこの歯形2a’に対応した歯付きプーリーを用いるのである。これにより平ベルトなどに見られるスリップが無くなり、よって一対のベルト2a,2aは同じ速度で走行できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この図は、本発明の実施例の板材搬送用コンベヤを平面視した概要図である。
【図2】この図は、図1の板材搬送用コンベヤを側面視した概要図であり、位置決め部材は省略してある。
【図3】この図は、図1におけるA−A断面を説明する図である。
【図4】この図は、図1におけるB−B断面を説明する図である。
【図5】この図は、棒状部材に設けた支持部材の別の態様を示す図であり、併せてタイミングベルトの採用を示している。
【図6】この図は、棒状部材にスチールパイプを用いた態様を示す図であり、併せてタイミングベルトの採用を示している。
【図7】この図は、従来のローラーコンベアの概念図である。
【図8】この図は、ローラーコンベアのローラー上を搬送される板材の撓む様子を説明する図である。
【図9】この図は、特許文献1の搬送装置に用いられるベルトコンベアの部分的な説明図である。
【図10】この図は、特許文献1の搬送装置の平面視した概要図である。
【図11】この図は、図10の搬送装置の側面視した概要図である。
【符号の説明】
【0033】
1 板材搬送用コンベヤ
2 エンドレス駆動ベルト
3 棒状部材
4a 支持部材
4b 位置決め部材
5 プーリー
6a ベルト取付部
8 支持部材取付部
W 板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に配置される一対のエンドレス駆動ベルト間に、搬送方向に直角に架け渡される棒状部材をベルトの全周に多数設け、各棒状部材に搬送対象の板材を支持する支持部材を設けたことを特徴とする板材搬送用コンベヤ。
【請求項2】
棒状部材の断面形状を、駆動ベルトへの平坦な一対のベルト取付部の間に上方に突出する支持部材取付部を有する形状としたことを特徴とする請求項1記載の板材搬送用コンベヤ。
【請求項3】
棒状部材の両側に、支持部材より背が高い位置決め部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の板材搬送用コンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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