説明

果実の品質を向上させる方法およびそのための肥料組成物

【課題】 散布に必要な諸作業を省力化するために低濃度で散布しても、ヒビ、サビの発生を確実に防止することができる果実の品質を向上させる方法およびそのための肥料組成物を提供する。
【解決手段】 果実の品質を向上させるための肥料組成物は、平均粒子径が60μm以下の鉱物質粉末を30〜60重量%と、水溶性のカルシウム塩を70〜40重量%含有することを特徴とする。また、果実の品質を向上させる方法は、この肥料組成物を水に分散および溶解して、鉱物質粉末の濃度が0.1〜1%(w/v)、水溶性のカルシウム塩の濃度が0.05〜1%(w/v)の液体肥料とし、栽培中の果実に散布することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実の品質を向上させる方法およびそのための肥料組成物に関し、さらに詳しくは、栽培中のリンゴ、ナシ、カキ等の果実に発生するヒビ、サビ等を防止して、その品質を向上させる方法およびそのための肥料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国内産果実類は、輸入果実の増大により果実生産が過剰に推移し、市場価格の低迷化が続いている。また長い不況により嗜好品である果実類を消費者が買い控え、需給バランスが崩れ、市場の低迷化に拍車をかけている状況である。さらに果実に対する消費者の要求は高く、無農薬化又は減農薬化による安全性の他に、果実の外観も病害虫による被害がなく、高い糖度で酸味の少ない果実類が求められているため、高品質果実の生産が必須となっている。
【0003】
このような問題を解決するために、果樹栽培では各県の試験場で病害虫の防除回数の低減による防除効果の確認や、対象病害虫の人工フェロモンによる交尾阻害等の減農薬化の試験が実施され、現場に導入されている。また、消費者の高糖度果実等の味に対する要求に対しては、圃場への雨水の流入を防ぎ、余分な水分を果実に移行することを防止する、マルチシートの導入が実施されている。
【0004】
果実の外観に関しては、農薬の散布により病害虫防除をしているが、農薬の有効成分やその他の成分である界面活性剤等の農薬補助成分自身が、リンゴ、ナシ、カキ等の果実の表皮にヒビ、サビ等の障害を発生させる場合もある。また、果皮表面の弱い幼果期に果実近隣の葉が風等により果実に接触し、これにより生じた擦りキズがコルク化し、果実肥大に伴いそのキズが大きくなってサビとなる場合もある。
【0005】
それらの防止対策として、炭酸カルシウムを主剤とした製剤を農薬と混用散布することで、ヒビ、サビを防止する方法が既に現場で実施されている(特公昭55−30767号公報、特公昭57−42594号公報、特公昭59−19923号公報、特公平7−84369号公報)。
【0006】
しかしながら、炭酸カルシウムを主剤とした製剤は効果が認められるものの、その散布濃度は80〜100倍と高濃度であり、それ以上の低濃度では満足な効果を得ることができない。そのため、一般的に農家に普及、使用されている1000L容量の薬液タンクには、炭酸カルシウム製剤を10〜12kgも投入しなければならず、農薬調合時に労力を要する。近年の農家の高齢化に伴い、この調合作業に対する労力はさらに増大している状況である。さらに、炭酸カルシウムは水への懸濁性、分散性が悪いため、水への分散を改善するために各種の分散剤が添加されている。それにもかかわらず、高濃度散布が原因で薬液散布後の薬液タンクの底に炭酸カルシウムが沈殿し、これを取り除く作業も労力のかかるものである。
【0007】
このため、農家は炭酸カルシウムを主剤とした製剤の散布を中止するか、炭酸カルシウムに代えて水溶性のカルシウム塩を主剤とした製剤を400〜1000倍の低濃度で散布している。しかしながら、炭酸カルシウムに代えて水溶性カルシウムを単に散布しても、調合作業などは軽減されるものの、本来の目的であるヒビ、サビに対する防止効果はほとんど得られていないのが現状である。
【0008】
一方、果面保護のため、ゼオライト、モンモリロナイト、珪藻土またはシリカゲル等からなる多孔質粉体を果面に散布する方法が提案されている(特開2004−315406号公報)。しかしながら、炭酸カルシウムに代えてこのような多孔質粉体を単に散布しても、炭酸カルシウムと同等の優れたヒビ、サビの防止効果を得ることはできなかった。
【特許文献1】特公昭57−42594号公報
【特許文献2】特公昭59−19923号公報
【特許文献3】特開2004−315406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、散布に必要な諸作業を省力化するために低濃度で散布しても、ヒビ、サビの発生を確実に防止することができる果実の品質を向上させる方法およびそのための肥料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、その一態様として、栽培中の果実に散布して果実の品質を向上させるための肥料組成物であって、平均粒子径が60μm以下の鉱物質粉末30〜60重量%と、水溶性のカルシウム塩70〜40重量%とを含有することを特徴とする。なお、この肥料組成物は、水に分散および溶解して液体肥料としてから果実に散布するためのものである。
【0011】
鉱物質粉末および水溶性カルシウム塩をそれぞれ順番に散布しても、炭酸カルシウムのような優れたヒビ、サビの防止効果を得ることはできないが、驚くべきことに、上記のように所定の平均粒子径の鉱物質粉末と水溶性カルシウム塩とを所定の重量比で含有する肥料組成物とすることで、炭酸カルシウムと同等の優れたヒビ、サビの防止効果を得ることができる。また、この肥料組成物は、炭酸カルシウム製剤と比べて遙かに低濃度の液体肥料にして散布してもヒビ、サビの発生を十分に防止できるとともに、水への懸濁性および分散性に優れているので、散布に必要な諸作業を省力化することができる。
【0012】
上記鉱物質粉末としては、クレー、カオリン、セリサイト、タルクおよびマイカからなる群から選ばれる少なくとも1種類が好ましい。また、上記水溶性のカルシウム塩としては、水への溶解度が0.20g以上のものが好ましい。
【0013】
本発明は、別の態様として、果実の品質を向上させる方法であって、平均粒子径が60μm以下の鉱物質粉末30〜60重量%と、水溶性のカルシウム塩70〜40重量%とを含有する肥料組成物を調製するステップと、この肥料組成物を水に分散および溶解して液体肥料とするステップと、この液体肥料を栽培中の果実に散布するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る果実の品質を向上させる方法は、別の実施形態として、平均粒子径が60μm以下の鉱物質粉末と水溶性のカルシウム塩とを、30:70から60:40の重量比で水に分散および溶解して液体肥料を調製するステップと、この液体肥料を栽培中の果実に散布するステップとを含むことを特徴とする。このように肥料組成物を経ることなく、鉱物質粉末と水溶性カルシウム塩が所定の重量比で分散、溶解された液体肥料を調製することでも、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明によれば、散布に必要な諸作業を省力化するために低濃度で散布しても、ヒビ、サビの発生を確実に防止できる果実の品質を向上させる方法およびそのための肥料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る果実の品質を向上させる方法の一実施の形態について説明する。本実施の形態では、先ず、栽培中の果実に散布するための液体肥料を調製する。この液体肥料は、水に、鉱物質粉末と水溶性のカルシウム塩とを分散、溶解することで調製することができる。
【0017】
鉱物質粉末としては、水溶性のカルシウム塩と同時に用いることでヒビ、サビの発生防止効果を発揮するとともに、環境に悪影響を与える可能性がなく、かつ価格と入手のし易さから、クレー、カオリン、セリサイト、タルク、ベントナイト、珪石、珪藻土、酸性白土、ゼオライト、マイカ、ホワイトカーボン等が好ましい。これらの鉱物質粉末は、単独でも2種類以上の混合物でも良い。また、これらの中のでも特に好ましい鉱物質粉末は、粘土質でかつ非膨潤性を有することから、クレー、カオリン、セリサイト、タルクおよびマイカである。
【0018】
また、鉱物質粉末の平均粒子径は、散布媒体である水への懸濁性および分散性の観点から、60μm以下である必要がある。特に30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。一方、下限は特に限定されないが、0.5μm以上が好ましい。
【0019】
水溶性のカルシウム塩としては、特に限定されるものではないが、果皮への吸収性および散布の作業性の観点から、水への溶解度が0.2g以上(温度:20℃)のものが好ましい。具体的には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム等の無機カルシウム塩や、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩が好ましい。また、これらのカルシウム塩の混合物を用いることもできる。
【0020】
なお、液体肥料には、上記の鉱物質粉末と水溶性カルシウム塩の他に、窒素、リン酸、カリウムの肥料三要素やその他の微量要素を添加することもできる。また、通常、農園芸用薬剤に使用される補助剤を添加することもできる。このような補助剤としては、通常、農園芸用薬剤に使用される界面活性剤、結合剤、安定化剤、固着剤などを必要に応じて単独でまたは組み合わせで添加することができる。さらに場合によっては、防菌、防カビのための工業用殺菌剤、防菌剤、防カビ剤などを添加してもよい。
【0021】
液体肥料中の鉱物質粉末と水溶性のカルシウム塩の重量比は、ヒビ、サビの発生防止効果を十分に発揮するため、その合計を100重量%として、30〜60重量%と70〜40重量%にする必要がある。特に、鉱物質粉末を35〜50重量%、水溶性のカルシウム塩を65〜50重量%にすることが好ましい。
【0022】
液体肥料中における鉱物質粉末と水溶性のカルシウム塩の濃度は、果実の種類によって異なるが、以下の濃度にすることで、果実の中でも特にリンゴ、ナシ、カキ等についてはそのヒビ、サビ、キズ等を確実に防止して、果実の品質を向上させることができる。
【0023】
鉱物質粉末の濃度は、0.1〜1%(w/v)の範囲が好ましく、0.125〜0.5%(w/v)の範囲がより好ましく、0.15〜0.33%(w/v)の範囲がさらに好ましい。鉱物質粉末の濃度が0.1%未満であると、薬液乾燥効果および物理的な果面保護効果が得られないおそれがあり、一方、1%を超えると、効果が限界に達するとともに、液体肥料中に沈殿が生じる可能性があるので好ましくない。
【0024】
水溶性のカルシウム塩の濃度は、0.05〜1%(w/v)の範囲が好ましく、0.08〜0.5%(w/v)の範囲がより好ましく、0.1〜0.33%(w/v)の範囲がさらに好ましい。水溶性のカルシウム塩の濃度が0.05%未満であると、カルシウム補給効果による果皮強化効果が得られないおそれがあり、一方、1%を超えると、効果が限界に達するとともに、使用する水溶性のカルシウム塩の種類により、液体肥料中に沈殿が生じたり、散布後に葉に褐変等の薬害の生じるおそれがあるので好ましくない。
【0025】
なお、液体肥料を容易に調製するため、予め、鉱物質粉末と水溶性のカルシウム塩を所定の重量比で含有する粉末状、顆粒状または懸濁液状の肥料組成物を製剤化しておくことが好ましい。すなわち、この肥料組成物は、鉱物質粉末を30〜60重量%と、水溶性のカルシウム塩を70〜40重量%含有することが好ましく、鉱物質粉末を35〜50重量%と、水溶性のカルシウム塩を65〜50重量%含有することがより好ましい。また、この肥料組成物は、肥料組成物を粉末状、顆粒状または懸濁液状にするための補助剤を含有することができる。
【0026】
肥料組成物は、散布する際、水で100〜1000倍(すなわち、粉末状の肥料組成物1kgに対して水100〜1000L)に希釈して液体肥料とすることが好ましい。より好ましい希釈倍率は、300〜800倍である。よって、この肥料組成物は、炭酸カルシウムを主剤とした製剤と比較して、希釈倍率が顕著に高いとともに、水への懸濁性および分散性に優れていることから、調合や沈殿物除去などの作業を省力化することができる。
【0027】
次に、上記のように調製した液体肥料を栽培中の果実に散布する。液体肥料を果実に散布する時期としては、落花後が好ましいが、特に果皮表面が弱い時期である落花直後から落花後60日の間までに散布することで、より高い効果を得ることができる。液体肥料の散布は、所定の期間中に1回以上、好ましくは10〜20日おきに2〜5回散布することでより高い効果を得ることができる。
【0028】
また、この液体肥料は、防除薬剤と混用散布しても防除薬剤の効果を減ずることがなく、防除薬剤との混用による薬害の発生もないことから、単用で散布するだけでなく、防除薬剤を添加して防除薬剤と混用散布することもできる。さらに、この液体肥料は、防除薬剤と混用散布することで、農薬の有効成分および界面活性剤などの農薬の補助成分によるビビ、サビの発生も防止することができる。よって、液体肥料の散布を、リンゴ等の果樹の一般の防除体系に組み入れることができるので、農家に大きな負担をかけることがなく、ヒビ、サビの発生を確実に防止することができる。
【0029】
さらに、この液体肥料は、鉱物質粉末と水溶性のカルシウム塩を水に低濃度で分散、溶解させたものなので、地域や天候等の差異に対してもバラツキが小さく、安定した作用を有する。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
(液体肥料の調製)
鉱物質粉末としてカオリン(平均粒子径1.5μm)40重量%、水溶性カルシウム塩として塩化カルシウム無水物30重量%、硫酸カルシウム二水和物30重量%をニーダーにて混合して肥料組成物を調製した。この肥料組成物は白色の微粉末であった。そして、この肥料組成物を250倍に希釈して、カオリンの濃度が0.16%(w/v)、水溶性のカルシウム塩の濃度が0.24%(w/v)の液体肥料を調製した。また、カオリンに代えてセリサイト(平均粒子径7.5μm)およびタルク(平均粒子径5μm)を用い、上記と同様の条件で、それぞれ液体肥料を調製した。
【0032】
(評価試験1)
試験圃場(長野県)において、試験樹りんご(品種:ふじ/M26、樹齢:12年生樹)を対象とし、リンゴ果実の果面におけるヒビ、サビの防止効果を評価する試験を行った。なお、防止効果の比較を行うため、上記により調製した液体肥料を散布した区(実施例1〜3)の他、炭酸カルシウム水和剤またはギ酸カルシウムからなる液体肥料を散布した区(比較例1〜3)、このような肥料を全く散布しなかった区(比較例4)を設けた。なお、各液体肥料の希釈倍率を表1に示す。
【0033】
【表1】

※ 現地で一般的に使用されている濃度。
【0034】
これら液体肥料は、現地の防除基準と同様の時期に、農薬と混用し、肩掛け散布機を使用して散布した。現地の防除基準、実際に散布した日、混用した薬剤およびその希釈倍率を表2に示す。なお、肥料無散布区(比較例4)でも、慣行防除薬剤は散布した。
【0035】
【表2】

※ 全散布日で、展着剤としてネオエステリンを5000倍の濃度で混用。
【0036】
そして、11月20日に試験樹から果実を収穫し、その日のうちに各区50果を無作為に抽出してヒビ、サビの各発生率を調査した。サビについては発生率の他に、後述する方法で発生度を算出した。これらの結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
サビの発生度は、以下に示す発生したサビの程度に応じた0〜4の発生指数で評価した後、これを以下に示す式1により算出したものである。
0:発生なし。
1:梗あ部においては肩に上がらないもの、胴、がくあ部においては目立たないもの。
2:肩に上がりその周辺1/5以下、または平滑で散在しており総合して果面の1/5以下。
3:肩に上がりその周辺1/3以下、または平滑で散在しており総合して果面の1/3以下。
4:3以上のもの。
発生度=Σ(発生指数×発生果数)/(4×調査果数)×100・・・(式1)
【0039】
表3に示すように、肥料無散布区である比較例4では、ヒビ、サビとも発生率が10%を超えている。なお、ヒビが発生した果実には商品価値がない。よって、比較例4では商品価値がない果実が12%も発生しており、問題の重大さがわかる。
【0040】
ギ酸カルシウム散布区である比較例3は、比較例4と比較して、ヒビの発生率が若干低いが、それでも10%と高い発生率であり、商品価値のない果実の割合は依然として多かった。また、サビの発生率は低くなっているが、発生度はほぼ同じ値であり、サビに関してもほとんど効果がなかった。
【0041】
炭酸カルシウム水和剤散布区の場合、濃度が100倍と高い比較例2では、ヒビ、サビの発生率もサビの発生度も非常に低く、外観に問題のない果実の生産が可能である。しかしながら、濃度が250倍と低い比較例1では、比較例2と比較すると、その効果は劣る結果となった。
【0042】
一方、カオリンと水溶性カルシウム塩を所定の割合で混合した実施例1では、比較例1〜4のいずれの区と比較しても、優れた効果を得ることができた。特にヒビの発生率については0%であった。また、サビの発生率も低く、その発生度も低いため、高品質果実の生産に対し有効であることがわかる。さらに、250倍の低濃度でも優れた効果があることから、液体肥料調製時の労力軽減にも有効であることがわかる。また、混用した農薬の効果の低下や、農薬の混用したことによる薬害の発生などは見られなかった。セリサイトおよびタルクを用いた実施例2および3も、カオリンとほぼ同様の結果が得られた。
【0043】
(評価試験2)
上記の試験圃場において、試験樹りんご(品種:つがる/M26、樹齢:10年生樹)を対象とし、リンゴ果実の果面におけるヒビ、サビの防止効果を評価する試験を行った。本評価試験2では、炭酸カルシウム水和剤を100倍の倍率にのみ希釈したことを除いて評価試験1と同様に、上記により調製した液体肥料を散布した区(実施例4〜6)、炭酸カルシウム水和剤またはギ酸カルシウムの液体肥料を散布した区(比較例5、6)、このような肥料を全く散布しなかった区(比較例7)を設けた。
【0044】
また、各液体肥料は、現地の防除基準と同様の時期に、農薬と混用し、肩掛け散布機を使用して散布した。現地の防除基準、実際に散布した日、混用した薬剤およびその希釈倍率を表4に示す。なお、肥料無散布区(比較例7)でも、慣行防除薬剤は散布した。
【0045】
【表4】

※ 全散布日で、展着剤としてハイテンパワーを5000倍の濃度で混用。
【0046】
そして、11月22日に試験樹から果実を収穫し、その日のうちに各区70果を無作為に抽出してサビの発生率を部位別に調査した。また、比較試験1と同様の方法でサビの発生度も調査した。これらの結果を表5に示す。
【0047】
【表5】

【0048】
表5に示すように、肥料無散布区である比較例7では、全ての部位でサビの発生率が100%であった。また、その発生度も高く、商品性が著しく失われていた。
【0049】
ギ酸カルシウム散布区である比較例6では、各部位での発生率および発生度が比較例7より若干低いものの、商品性を改善するまでに至っておらず、効果不足であった。
【0050】
炭酸カルシウム水和剤散布区である比較例5では、発生率および発生度とも比較例7と比較して顕著に低下しており、このような高濃度で散布する場合は、商品性を改善するのに有効であることがわかる。
【0051】
一方、カオリンと水溶性カルシウム塩を所定の割合で混合した実施例4では、比較例5〜7のいずれの区と比較しても発生率および発生度は低く、品質向上効果があることがわかる。また、散布濃度は250倍であり、同様な効果が認められた比較例5の散布濃度である100倍と比べて非常に低濃度で散布できるため、液体肥料調製時の省力化にも有効であることがわかる。さらに、混用した農薬の効果の低下や、農薬の混用したことによる薬害の発生なども見られなかった。セリサイトおよびタルクを用いた実施例5および6も、カオリンとほぼ同様の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培中の果実に散布して果実の品質を向上させるための肥料組成物であって、平均粒子径が60μm以下の鉱物質粉末30〜60重量%と、水溶性のカルシウム塩70〜40重量%とを含有する肥料組成物。
【請求項2】
上記鉱物質粉末が、クレー、カオリン、セリサイト、タルクおよびマイカからなる群から選ばれる少なくとも1種類である請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項3】
上記水溶性のカルシウム塩の水への溶解度が0.20g以上である請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項4】
平均粒子径が60μm以下の鉱物質粉末30〜60重量%と、水溶性のカルシウム塩70〜40重量%とを含有する肥料組成物を調製するステップと、
この肥料組成物を水に分散および溶解して液体肥料とするステップと、
この液体肥料を栽培中の果実に散布するステップと
を含んでなる果実の品質を向上させる方法。
【請求項5】
平均粒子径が60μm以下の鉱物質粉末と水溶性のカルシウム塩とを、30:70から60:40の重量比で水に分散および溶解して液体肥料を調製するステップと、
この液体肥料を栽培中の果実に散布するステップと
を含んでなる果実の品質を向上させる方法。

【公開番号】特開2007−55829(P2007−55829A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240751(P2005−240751)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(593119527)白石カルシウム株式会社 (17)
【Fターム(参考)】