説明

架台

【課題】架台ユニットに梁部材を嵌め込んで組み立てられる架台において、梁部材の構造のみを変更することによって、対角方向に引っ張っても分解し難い架台を提供する。
【解決手段】梁部材9の取付部17は、頂板部17a、縦板部17b、及び傾斜板部17cを有し、頂板部17aは、ガイド頂壁部15bに対向し且つ縦板部17bに繋がる対向部17e及び打出し部が嵌め込まれる貫通孔17fを有する。取付部17は、傾斜板部17cが、縦方向外側端がストッパー部15gに引っ掛かることによってストッパー部15gとガイド側壁部15aとの間に挟まれ、さらに、打出し部は貫通孔17fに嵌め込まれ、対向部17e及びガイド頂壁部15b、縦板部17b及びガイド側壁部15a、傾斜板部17c及びガイド延出部15cがそれぞれ接触するように、架台ユニットの嵌合部37に嵌め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空調装置等の機器を設置するための架台に関し、特に長尺状の架台ユニットを2つ並べて梁部材で連結した構造を有する架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、運搬を容易にすると共に組み立てに手間を掛けないために、横方向部材を縦方向部材に嵌め合わせることによって組み立てられる架台がある。
【0003】
この種の架台として、特許文献1に開示された防振架台がある。図14は、特許文献1に開示された防振架台100を示す図であって、架台ユニット30の上架台50の端部と梁部材90の端部とが結合されるコーナー部の斜視図である。図15(a)は、このコーナー部の拡大平面図であり、同図(b)は同図(a)における上架台50の端部及び梁部材90の端部のXVb−XVb線矢視断面図である。上架台50の端部と梁部材90の端部との結合は、梁部材90の両端部に設けられた取付部170が、上架台50の両端部に設けられた嵌合部370に、それぞれ縦方向外側から主として上下方向に弾性変形しながら嵌め込まれることによってなされる。
【0004】
各嵌合部370は、縦方向外側に開口しており、横方向に相対向する一対のガイド側壁部(第1壁部)150a,150aと、ガイド側壁部150a,150aの上縁同士を繋ぎ且つガイド側壁部150a,150aの縦方向外側の側縁よりもさらに縦方向外側に延びるガイド頂壁部(第2壁部)150bと、このガイド頂壁部150bから下方に突起する打出し部(突起部)150jと、ガイド側壁部150a,150aの縦方向外側の側縁の下部から縦方向外側に延びるガイド延出部(第3壁部)150c,150cと、これらガイド延出部150c,150cの上縁における縦方向外側の端部に形成されている、上方に向かって突起するストッパー部(係合部)150g,150gと、ガイド頂壁部150bのガイド側壁部150a,150aよりも縦方向外側の部分における横方向両側の側縁から下方に延在する一対のガイド突出壁部(第4壁部)150d,150dと、を有している。
【0005】
各取付部170は、縦方向に延びる略水平な頂板部(第1板部)170aと、この頂板部170aの縦方向内側の側縁から下方に延びる縦板部(第2板部)170bと、この縦板部170bの下縁から縦方向外側に向かうほど下方に傾斜して延びる傾斜板部(第3板部)170cと、頂板部170aの縦方向外側の側縁から下方に延びる梁部材本体90aと、を有し、さらに頂板部170aは、上記一対のガイド突出壁部150d,150dに対応する部分において縦方向に延びて縦方向内側に開口する一対の長孔170d,170dと、この一対の長孔170d,170dに設けられ、縦方向内側の側縁を梁部材本体90aに片持ち支持された舌状部170eと、この舌状部170eの上記打出し部150jに対応する部分において上下方向に貫通する貫通孔170fと、を有している。
【0006】
そして、各取付部170は、傾斜板部170cが、縦方向外側からストッパー部150g,150gを乗り越え、縦方向外側端がストッパー部150g,150gに引っ掛かることによってストッパー部150g,150gとガイド側壁部150a,150aとの間に挟まれ、さらに、打出し部150jが貫通孔170fに嵌め込まれることによって、舌状部170e及びガイド頂壁部150b、縦板部170b及びガイド側壁部150a,150a、傾斜板部170c及びガイド延出部150c,150cがそれぞれ接触するように各嵌合部370に嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−99495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この防振架台100を使用する際は、架台ユニット30及び梁部材90を機器の設置場所に運搬し、その場で組み立て、組み立てた防振架台100に機器を設置する。従って、組み立てた防振架台100を運搬することは稀である。しかし、組み立てた防振架台100を運搬する可能性はゼロではない。そして、その運搬方法の一つとして、組み立てた防振架台100のコーナー部の1つにベルト等を巻回し、そのベルト等をクレーン等で吊り上げて運搬する方法が考えられる。ところが、この運搬方法では、ベルトが巻かれたコーナー部が、防振架台100の重みによって、図15(a)に示す矢印XVc又は矢印XVd方向、即ち、防振架台100の対角方向(以下、対角方向という)に引っ張られ、取付部170が嵌合部370から外れて防振架台100が分解する可能性がある。この分解のメカニズムは、次のようなものである。
【0009】
防振架台100のコーナー部が図15(a)の矢印XVc方向に引っ張られると、先ず、長方形状の防振架台100が平行四辺形状になるように変形してコーナー部が鋭角に変形する。そして、取付部170が嵌合部370に対して相対的に縦方向外側に移動する。すると、貫通孔170fに嵌め込まれた打出し部150jが貫通孔170fの縦方向内側端面を押圧する。このとき、縦方向に延びる舌状部170eは、その縦方向外側端のみ支持されているため、縦方向内側に行くに従って下方に傾斜し、その結果、打出し部150jが貫通孔170fから外れる。そして、打出し部150jは、舌状部170eの貫通孔170fよりも縦方向内側部分を下方に押圧する。そうすると、図15(b)に示すように、梁部材90が、ガイド頂壁部150bの下面につっかえるものを有しないため、梁部材90全体が横方向に延びる軸回りに、即ち、図15(b)に示す矢印方向に回転し、それに伴って傾斜板部170cがストッパー部150g,150gの縦方向内側端面をせり上がる。そうして、傾斜板部170cがストッパー部150g,150gを乗り越えると、取付部170が嵌合部370から外れ、防振架台100が分解する。
【0010】
なお、防振架台100が図15(a)の矢印XVd方向に引っ張られる場合も同様に分解する。具体的には、防振架台100がXVd方向に引っ張られると、コーナー部が鈍角に変形し、取付部170は、一旦、嵌合部370に対して相対的に縦方向内側に移動する。さらに対角方向に引っ張られると、防振架台100の変形が進み、矢印XVc方向に引っ張られる場合と同様に、取付部170が嵌合部370に対して相対的に縦方向外側に移動する。その後の梁部材90の挙動は矢印XVc方向に引っ張られる場合と同様であって、最終的に防振架台100が分解する。
【0011】
このような防振架台100の分解は、安全上好ましくない。一方、分解を避けるために架台ユニット30及び梁部材90の双方の構造を変更すると、製造コストが嵩む。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、架台ユニットに梁部材を嵌め込んで組み立てられる架台において、梁部材の構造のみを変更することによって、対角方向に引っ張っても分解し難い架台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、梁部材の構造について、突起部が嵌め込まれる貫通孔が形成された対向部を、その縦方向内側にある第2板部で支持するとともに、第2壁部の下面につっかえる部分を設ける、という変更を行うことによって、架台が対角方向に引っ張られても、突起部が貫通孔から外れ難くなるとともに梁部材全体が横方向に延びる軸回りに回転するのを規制することを特徴とする。
【0014】
具体的には、本発明は、長尺状の角柱部材を備える架台ユニットが、横並びに配設され、且つ、互いに対をなす角柱部材同士が梁部材によって連結された架台を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0015】
すなわち、第1の発明は、上記角柱部材の両端部には、縦方向外側に開口する嵌合部がそれぞれ設けられ、当該嵌合部は、横方向に相対向する一対の第1壁部と、当該第1壁部の上縁同士を繋ぎ且つ当該第1壁部の縦方向外側の側縁よりもさらに縦方向外側に延びる第2壁部と、当該第2壁部から下方に突起する突起部と、当該第1壁部の縦方向外側の側縁の下部から縦方向外側に延びる第3壁部と、当該第3壁部の上縁における縦方向外側の端部に形成されている、上方に向かって突起する係合部と、当該第2壁部の当該第1壁部よりも縦方向外側の部分における横方向両側の側縁から下方に延びる一対の第4壁部と、を有しており、上記梁部材は、縦方向外側から上記各嵌合部に主として上下方向に弾性変形しながら嵌め込まれる取付部を備え、当該取付部は、縦方向に延びる略水平な第1板部と、当該第1板部の縦方向内側の側縁から下方に延びる第2板部と、当該第2板部の下縁から縦方向外側に向かうほど下方に傾斜して延びる第3板部と、を有しており、上記第1板部は、上記一対の第4壁部に対応する部分において縦方向に延びて当該一対の第4壁部が嵌め込まれる一対の長孔と、当該一対の長孔の間に設けられ、上記第2壁部の下面に対向し且つ上記第2板部の上縁に繋がる対向部と、当該対向部の上記突起部に対応する部分において上下方向に貫通して当該突起部が嵌め込まれる貫通孔と、を有していて、上記取付部は、上記第3板部が、縦方向外側から上記係合部を乗り越えることで、縦方向外側端が当該係合部に引っ掛かることによって当該係合部と上記第1壁部との間に挟まれ、さらに、上記突起部が上記貫通孔に嵌め込まれることによって、上記対向部及び上記第2壁部、上記第2板部及び上記第1壁部、上記第3板部及び上記第3壁部がそれぞれ接触するように上記各嵌合部に嵌め込まれていることを特徴とするものである。
【0016】
第1の発明によれば、貫通孔が形成された対向部が、その縦方向内側にある第2板部によって支持されているので、架台が対角方向に引っ張られて取付部が嵌合部に対して相対的に縦方向外側に移動し、突起部が貫通孔の縦方向内側端面を押圧しても、突起部の移動先にある対向部の縦方向内側部分が、縦方向内側に行くに従って上方に傾斜し、突起部の移動を阻む。従って、突起部が貫通孔から外れ難くなる。
【0017】
また、対向部を支持する第2板部が上下方向に延び、且つ、その上端と繋がる対向部が第2壁部の下面に接触しているので、突起部が対向部の貫通孔よりも縦方向内側部分を縦方向内側に強く押圧するほど、当該縦方向内側部分がより大きな勾配で傾斜し、第2板部が第2壁部の下面をより強く押圧する。これにより、第2板部が第2壁部の下面につっかえるので、梁部材の回転が規制される。
【0018】
さらに、上記のように梁部材の回転が規制されるので、第2板部の、対向部と繋がる部分、及び、第3板部の各形状が保持される。従って、対角方向に引っ張り続けると、梁部材の比較的剛性の低い部分である、第2板部の上記一対の長孔に対応する部分に応力が集中して変形する。従って、梁部材の比較的剛性の低い部分に応力を集中させつつ、梁部材の、嵌合部と係合する部分(対向部、第2板部の対向部と繋がる部分、及び、第3板部)の各形状をほぼ保持することができる。
【0019】
以上により、架台を対角方向に引っ張る際に、梁部材の一部を変形させつつも架台を分解し難くすることが可能となる。
【0020】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記貫通孔の横方向両端は、上記一対の長孔の横方向内側端にそれぞれ繋がっていることを特徴とするものである。
【0021】
第2の発明によれば、対向部が、縦方向内側にある第2板部によって片持ち支持されているので、対向部の縦方向外側部分が下方に撓み易くなる。従って、梁部材を角柱部材に嵌め込む作業が容易になり、架台の組立性が向上する。
【0022】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記貫通孔は、上下方向から見て縦方向内側端が縦方向外側端よりも横方向長さが短い略台形状であることを特徴とするものである。
【0023】
第3の発明によれば、貫通孔と一対の長孔との間の部分(対向部における貫通孔の横方向両側部分)は、縦方向外側に行くに従って横方向長さが短くなるので、対向部の縦方向外側部分が下方に撓みやすくなる。従って、突起部を貫通孔に嵌め込み易くなり、架台の組立性が向上する。
【0024】
第4の発明は、上記第1乃至第3のいずれかの発明において、上記対向部の上記貫通孔よりも縦方向内側部分には、切欠き部又は孔部が形成されていることを特徴とするものである。
【0025】
第4の発明によれば、対向部の、貫通孔よりも縦方向内側部分に切欠き部又は孔部が形成されているので、梁部材を角柱部材に嵌め込む際に、貫通孔と切欠き部又は孔部との間の部分が下方に撓み易く、突起部を貫通孔に嵌め込み易くなる。さらに、梁部材を角柱部材に嵌め込む際に、切欠き部又は孔部の縦方向内側端面を突起部に当てることによって取付部の横方向における位置決めが容易になる。従って、梁部材を角柱部材に嵌め込む作業が一層容易になり、架台の組立性が一層向上する。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る架台によれば、架台が対角方向に引っ張られる際に、突起部の移動先にある対向部の縦方向内側部分が、縦方向内側に行くに従って上方に傾斜して突起部の移動を阻み、さらに、対向部の縦方向内側端に繋がる第2板部が第2壁部の下面を押圧する。従って、突起部が貫通孔から外れ難くなるとともに、第2板部が第2壁部の下面につっかえることによって、梁部材の回転が規制され、それに伴って、梁部材の、嵌合部と係合する部分の各形状が保持される。よって、架台が対角方向に引っ張られる際に、梁部材の一部に応力を集中させて変形させつつも架台が分解するのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態1に係る防振架台を示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は正面図であり、同図(c)は側面図である。
【図2】下側耐震ブラケットを示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は正面図であり、同図(c)は側面図である。
【図3】ガイド部材及び上側耐震ブラケットの分解斜視図であり、同図(a)はガイド部材の斜視図であり、同図(b)は上側耐震ブラケットの斜視図である。
【図4】上架台の端部と梁部材の端部とが結合されるコーナー部の斜視図である。
【図5】上架台の端部と梁部材の端部とが結合されるコーナー部の拡大側面図である。
【図6】上架台の端部と梁部材の端部とが結合されるコーナー部の拡大正面図である。
【図7】上架台の端部と梁部材の端部とが結合されるコーナー部の拡大平面図である。
【図8】図7における上架台の端部及び梁部材の端部のVIII-VIII線矢視断面図である。
【図9】ガイド部材を上側耐震ブラケットに組み付けた状態を示す斜視図である。
【図10】実施形態1に係る梁部材を示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は正面図であり、同図(c)は側面図である。
【図11】梁部材の上架台への組み付け作業を説明する斜視図である。
【図12】実施形態2に係る梁部材を示す平面図である。
【図13】実施形態3に係る梁部材を示す平面図である。
【図14】従来の防振架台を示す図であり、上架台の端部と梁部材の端部とが結合されるコーナー部の斜視図である。
【図15】従来の防振架台を示す図であり、同図(a)は上架台の端部と梁部材の端部とが結合されるコーナー部の平面図であり、同図(b)は同図(a)における上架台の端部及び梁部材の端部のXVb-XVb線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る架台を所謂エアコン防振台に適用した実施形態を示し、同図(a)は平面図であり、同図(b)は正面図であり、同図(c)は側面図である。図示の如く、この防振架台(架台)1は、図示しないエアコン室外機を設置するためのものであり、上架台(角柱部材)5及び下架台7を有する長尺状の架台ユニット3(所謂レール式防振台である)を横並びに一対、並べて配設し、それらの両端に後述する梁部材9,9を架け渡して、連結している。
【0030】
なお、以下の説明では、上架台5の延びる方向を縦方向とし、当該上架台5の配列方向を横方向とする。また、以下では、図1(a)において右下に位置するコーナー部について説明するが、その他のコーナー部についても、右下に位置するコーナー部とほぼ同様の構成である。
【0031】
この防振架台1では、対をなす架台ユニット3,3は同じものであり、各々断面矩形状の角パイプ材(例えば構造用角形鋼管等)からなる長尺の上架台5及び下架台7が、互いに上下方向に所定の間隔を空けて配置され、その間には縦方向に離れて2つのアイソレータ11,11が介設されている。アイソレータ11は、上架台5及び下架台7の間の振動伝達を軽減するものであり、例えばコイルばねとゴムを一体成形したものや樹脂ケース内にコイルばねを内蔵したものが用いられる。
【0032】
本実施形態の架台ユニット3においては、上架台5よりも下架台7が長くなっており、その両端部がそれぞれ上架台5の端部よりも縦方向外側に突出している。下架台7の両端部におけるこの突出する部位の内側には、それぞれ、図2に示す、鉄板を折り曲げてなる下側耐震ブラケット21が取り付けられている。
【0033】
この下側耐震ブラケット21は、略矩形状の頂壁部21aと、当該頂壁部21aの横方向両側の側縁から下方に延びる側壁部21b,21bとを有していて、縦方向から見て断面略コ字状に形成されている。下側耐震ブラケット21は、頂壁部21aが下架台7の上壁7aの下面に接触するように、下架台7の両端部に嵌着されている。この頂壁部21aには、耐震ボルト23が挿通される丸孔21eと、下架台7を基礎に固定するアンカーボルト(図示せず)の挿通される長孔21fとが形成されている。
【0034】
さらに、下側耐震ブラケット21は、頂壁部21aの縦方向外側の側縁から下方に延びる妻壁部21cを有していて、横方向から見て断面略L字状に形成されている。また、妻壁部21cには、横方向内側の側壁部21bよりもさらに横方向内側(対をなす下架台7に向かって)に張り出す張出部21dが形成されており、これにより、下架台7の安定度が増すことから、防振架台1全体が捻れるのが抑えられるようになっている。
【0035】
一方、上架台5,5の両端部にはそれぞれ、図3(b)に示す上側耐震ブラケット19が取り付けられていて、これら上側耐震ブラケット19及び下側耐震ブラケット21が、以下に述べるように下架台7との間に、上架台5との相対変位を規制するための耐震ストッパ13を構成している。
【0036】
−耐震ストッパ−
図1(a)において右下に位置するコーナー部について図4〜図7に拡大して示すように、上側耐震ブラケット19は、下架台7から上方に延びる耐震ボルト23と協働して耐震ストッパ13を構成する。上側耐震ブラケット19は、鉄板を曲げ加工及び溶接してなり、縦方向外側且つ横方向外側の角が隅切りされた略矩形状の床壁部19aと、この床壁部19aの縦方向内側の側縁から上方に立ち上がる縦壁部19bと、床壁部19aの横方向内側の側縁から上方に立ち上がる側壁部19cとを備えている。これら縦壁部19b及び側壁部19cは、その側縁同士が溶接されて平面視で略L字状に連繋している。
【0037】
側壁部19cには、図7に示すように、上架台5の横方向内側の側壁5bの内面に沿って延びる内側延出部19fが形成されている。この内側延出部19fには、横方向に延びる断面矩形のネジ孔19hが貫通形成されており、当該ネジ孔19hに挿通されるネジ2
5と、これに螺合するナット26とによって、内側延出部19fは上架台5の横方向内側の側壁5bに締結されている。
【0038】
縦壁部19bの上縁には、角パイプである上架台5の下壁5dの端縁に沿って折り曲げられて、その下壁5dの上面に沿って縦方向内側に延びる延出部19eが形成されている。この延出部19eの縦方向内側の側縁には、上方に折れ曲がる妻壁部19gが形成されており、当該妻壁部19g及び内側延出部19fは、その側縁同士が平面視で略L字状に連繋している。
【0039】
さらに、縦壁部19bの横方向外側の側縁には、縦方向内側に折り曲げられて上架台5の横方向外側の側壁5cの外面に沿って延びる外側延出部19dが形成されている。この外側延出部19dには、横方向に延びる断面矩形のネジ孔19hが形成されており、当該ネジ孔19hに挿通されるネジ25により、外側延出部19dが上架台5の横方向外側の側壁5cに締結されている。
【0040】
図3(b)に示すように上側耐震ブラケット19の側壁部19cには、縦方向外側の側縁に凸辺19jが形成されていて、後述するように梁部材9との結合に用いられる。また、上側耐震ブラケット19の床壁部19aには、上下方向に貫通するボルト貫通孔19iが形成されていて、当該ボルト貫通孔19iに耐震ボルト23の軸部が遊嵌状態で挿通されている。耐震ボルト23は、その軸部が下側耐震ブラケット21(丸孔21e)とこれに重なる下架台7の上壁7aとを貫通して上向きに延びるように配設されていて、この軸部の付け根に螺合するナット27,29によって、下架台7の上壁7aに締結されている。
【0041】
また、図5に示すように、耐震ボルト23の軸部において上側耐震ブラケット19の床壁部19aのボルト貫通孔19iに挿入されている部位には、ゴムブッシュ31が外挿されている。このゴムブッシュ31は、ボルト貫通孔19iよりも少しだけ直径の小さな円筒部と、その上に連なる鍔部とからなり、この鍔部がボルト貫通孔19iの周縁部に上方から接触している。また、その鍔部の上には平座金33を介在させて耐震ボルト23の軸部にナット35が螺合されている。
【0042】
すなわち、図4〜図7においては上側耐震ブラケット19の床壁部19a上にゴムブッシュ31の鍔部が接触する状態を示しているが、これは防振架台1を使用しないときであり、防振架台1を使用するときにはナット35の位置を調整して、床壁部19aの上面とゴムブッシュ31の鍔部下面との間に適当な大きさ(約2〜3mm程度)の隙間を形成する。このことで、地震等による上架台5及び下架台7の上下方向の相対変位を適切に規制することができる。
【0043】
しかも、地震等によって上架台5及び下架台7が比較的大きく相対変位したときでも、上側耐震ブラケット19と耐震ボルト23や平座金33との、即ち金属製部材同士の接触が回避される。尚、上側耐震ブラケット19の床壁部19aとその下方の下架台7との間隔は、上架台5に許容される傾きの上限等から例えば30mmくらいとされている。
【0044】
なお、図4及び図7に示す符号5eは、上架台5を室外機の底部に固定する締結ボルト(図示せず)を挿通するために、上架台5の上壁5aに貫通形成された丸穴を示す。
【0045】
−梁部材の嵌合構造−
本実施形態では、前記の如き構成の上側耐震ブラケット19に、図3(a)に示すガイド部材15を取り付け、当該ガイド部材15に、梁部材9の横方向両端部を嵌め込んで、しっかりと結合できるようにしている。
【0046】
ガイド部材15は、鉄板を曲げ加工したものであり、横方向に相対向する2つのガイド側壁部(第1壁部)15a,15aと、当該ガイド側壁部15a,15aの上縁同士を繋ぎ且つ当該ガイド側壁部15a,15aの縦方向外側の側縁よりもさらに縦方向外側に延びるガイド頂壁部(第2壁部)15bと、当該ガイド側壁部15a,15aの縦方向外側の側縁の下部(略下半分)から縦方向外側に延びるガイド延出部(第3壁部)15c,15cとを有している。
【0047】
ガイド頂壁部15bは、略矩形状に形成されており、前記した上側耐震ブラケット19の床壁部19aの上方に、その上面が上架台5の上壁5aの上面と面一なるように位置付けられている。このガイド頂壁部15bには、断面が横方向に長い楕円形状の、上下方向に延びる開口部15iが形成されていて、当該開口部15iから耐震ボルト23を締め付ける際に用いる固定具(図示せず)を挿入できるようになっている。また、この開口部15iよりも縦方向外側には、例えばガイド頂壁部15bの上面を下方に向かって打ち出すことによって形成された、下方に突起する打出し部(突起部)15jが形成されている。
【0048】
さらに、ガイド頂壁部15bの縦方向外側の端部、より具体的には、当該ガイド頂壁部15bの、後述する梁部材9の頂板部17aと重なる部分には、横方向両側の側縁で下方に折り曲げられてR部15kを介して下方に延び、且つ、縦方向にも延びるガイド突出壁部(第4壁部)15d,15dが形成されている。これらガイド突出壁部15d,15dは、図6に示すように、横方向における両ガイド側壁部15a,15aの内側に形成されている。
【0049】
ガイド側壁部15a,15aは、各々略矩形状に形成されており、その縦方向外側の側縁に凸辺15h,15hがそれぞれ形成されている(図9参照)。また、両ガイド側壁部15a,15aの縦方向内側の側縁には、上架台5の横方向内側の側壁5bの内面及び外側の側壁5cの外面に沿って延びる取付壁部15e,15eがそれぞれ形成されている。これら取付壁部15e,15eには、上側耐震ブラケット19の内側延出部19f及び外側延出部19dに形成されたネジ孔19h,19hと同形同大の、横方向に延びる断面矩形のネジ孔15f,15fがそれぞれ形成されている。
【0050】
ガイド部材15は、図7に示すように、取付壁部15e,15eを、上側耐震ブラケット19の内側延出部19fと外側延出部19dとの間に挟むとともに、取付壁部15e,15eのネジ孔15f,15fと、内側延出部19f及び外側延出部19dのネジ孔19h,19hとを合わせる(横方向から見て重なる)ようにして、上側耐震ブラケット19に取り付けられている。このように、鉄板を曲げ加工してなるガイド部材15を、鉄板を曲げ加工及び溶接してなる上側耐震ブラケット19に取り付けることによって、ガイド部材15及び上側耐震ブラケット19は、剛性の高い立体構造となっているとともに、複雑な形状でありながら容易に製造できるようになっている。
【0051】
そうして、ガイド部材15は、取付壁部15e,15eが上架台5の側壁5b,5cと上側耐震ブラケット19の内側及び外側延出部19f,19dとに挟まれた状態で、ネジ孔15f,19hに挿通される上記ネジ25と、これに螺合するナット26とによって、上側耐震ブラケット19と共締めで上架台5の側壁5b,5cに締結されている。より詳しくは、図7に示すように、ガイド部材15の横方向内側の取付壁部15eは、上架台5の横方向内側の側壁5bの内面と上側耐震ブラケット19の内側延出部19fの外面とに挟まれた状態で、また、ガイド部材15の横方向外側の取付壁部15eは、上架台5の横方向外側の側壁5cの外面と上側耐震ブラケット19の外側延出部19dの内面とに挟まれた状態で、上架台5の側壁5b,5cに締結されている。
【0052】
ガイド延出部15c,15cの上縁は、縦方向外側に向かうほど下方に傾斜しており、これら上縁の縦方向外側の端部には、上方に向かって突起するストッパー部(係合部)15g,15gがそれぞれ形成されている。また、ガイド延出部15c,15cの上縁における、ストッパー部15g,15gの縦方向内側には、下方に凹む凹部15l,15lがそれぞれ形成されている。
【0053】
上述の如く、各ガイド延出部15c,15cは、各ガイド側壁部15a,15aの縦方向外側の側縁の下部から縦方向外側に延びているので、ガイド側壁部15aとガイド延出部15cとは、横方向から見て略L字状をなしている。さらに、ガイド頂壁部15bは、ガイド側壁部15a,15aの縦方向外側の側縁よりもさらに縦方向外側に延びているので、ガイド頂壁部15bの下面と、ガイド側壁部15aの縦方向外側の側縁と、ガイド延出部15cの上縁とは、図5に示すように、横方向から見て略コ字状をなしている。このようにガイド部材15を形成することにより、ガイド頂壁部15bとガイド側壁部15aとガイド延出部15cとは、後述する梁部材9の取付部17が嵌め込まれる、縦方向外側に開口する嵌合部37を構成している。
【0054】
これに対し、互いに対をなす上架台5,5を連結する梁部材9は、ZAM鋼板(登録商標)を曲げ加工したものであり、図10に示すように、ガイド部材15の縦方向外側に配設され、横方向に延びる梁部材本体9aと、当該梁部材本体9aの上縁から縦方向内側に突設され、嵌合部37に嵌め込まれる取付部17とを有している。
【0055】
梁部材本体9aは、図10(b)に示すように、T字状に形成されていて、その下縁には、剛性を高めるために斜め上方に折り曲げられた、折返し部9bが形成されている。また、梁部材本体9aの下端部おける横方向両外側の下部側縁には、横方向両外側に突起する突起片9c,9cがそれぞれ形成されている。これら突起片9c,9cは、梁部材9が上架台5に取り付けられた状態で、上側耐震ブラケット19の側壁部19cにおける縦方向外側の側縁に当たるようになっている。なお、図6に示すように、この突起片9cの上端を、上側耐震ブラケット19の側壁部19cの縦方向外側の側縁に形成された凸辺19jの下端に当てることで、梁部材9をガイド部材15に嵌め込む際の、上下方向における位置決めが容易になる。
【0056】
取付部17は、梁部材本体9aの上縁で折り曲げられて縦方向内側に延びる頂板部(第1板部)17aと、当該頂板部17aの縦方向内側の側縁から下方に延びる縦板部(第2板部)17bと、当該縦板部17bの下縁から縦方向外側に向かうほど下方に傾斜して延びる傾斜板部(第3板部)17cと、を有している。なお、頂板部17aと梁部材本体9aとのなす角度は、横方向から見てガイド頂壁部15bと上側耐震ブラケット19の側壁部19cの縦方向外側の側縁(上架台5の縦方向外側端)とのなす角度よりも小さく設定されている。また、頂板部17aと傾斜板部17cとのなす角度は、ガイド頂壁部15bの下面とガイド延出部15cの上縁とのなす角度よりも大きく設定されている。
【0057】
このように、頂板部17a、縦板部17b及び傾斜板部17cは、横方向から見て略コ字状をなしているとともに、傾斜板部17cが縦方向外側に向かうほど下方に傾斜しているので、主として上下方向に弾性変形し易くなっている。
【0058】
頂板部17aには、図10(a)に示すように、上下方向に貫通し、且つ、縦方向に延びて縦方向内側に開口する一対の長孔17d,17dが形成されており、これら長孔17d,17dは、取付部17が嵌合部37に嵌め込まれた状態で、ガイド部材15の一対のガイド突出壁部15d,15dが嵌挿される。ここで、縦方向に延びる一対のガイド突出壁部15d,15dを、縦方向に延びる一対の長孔17d,17dにそれぞれ嵌挿する構造となっているため、平面視で架台ユニット3と梁部材9とのなす角度が変化し難くなる。従って、防振架台1を例えば人力程度の力で引っ張っても、長方形状に組み立てられた防振架台1が平行四辺形状に変形するのを抑制することが可能となる。これら一対の長孔17d,17dの縦方向内側端部は、それぞれ縦方向内側に行くに従って横方向長さが広がるように形成されており、取付部17を嵌合部37に嵌め込む際に、ガイド突出壁部15d,15dがそれぞれ長孔17d,17dに入り込み易くなっている。これら一対の長孔17d,17dの間に設けられた対向部17eは、取付部17が嵌合部37に嵌め込まれた状態で、ガイド頂壁部15bの下面に対向する。この対向部17eは、上下方向から見て略矩形状であって、その縦方向内側の側縁が縦板部17bの上縁と繋がっている。
【0059】
この対向部17eの、ガイド部材15の打出し部15jに対応する位置には、上下方向に貫通する貫通孔17fが形成されていて、この貫通孔17fに打出し部15jが嵌り込むようになっている。貫通孔17fは、上下方向から見て、ハット状をなしている。具体的には、貫通孔17fの縦方向内側部分は、縦方向外側に行くに従って横方向長さが大きくなる台形状をなし、縦方向外側部分は、当該台形状部分の縦方向外側端と滑らかに繋がって横方向に延びている。この縦方向外側部分の横方向両側端は、それぞれ一対の長孔17d,17dの各縦方向外側端に近接している。従って、対向部17eの貫通孔17fと一対の長孔17d,17dとの間の部分(即ち、対向部17eの、貫通孔17fの横方向両側部分)が、縦方向外側に行くに従って横方向長さが短くなるので、対向部17eの縦方向外側部分が下方に撓みやすくなる。従って、打出し部15jを貫通孔17fに嵌め込み易くなり、防振架台1の組立性が向上する。
【0060】
また、この対向部17eの貫通孔17fよりも縦方向内側部分、即ち、ガイド部材15の開口部15iに対応する部分には、上下方向に貫通し且つ縦方向内側に開口する切欠き部17gが形成されている。そして、図8に示すように、対向部17eの、この切欠き部17gの横方向両側部分は、ガイド頂壁部15bの下面に対向している。この切欠き部17gの形状は、上下方向から見て、縦方向外側部分が、中央部が縦方向内側に突出する半円形状をなし、縦方向内側部分が、当該半円形状部分の縦方向内側端と同じ横方向長さを有する矩形をなしている。また、切欠き部17gの縦方向内側端は、貫通孔17fの縦方向内側端と横方向長さがほぼ等しく、且つ、貫通孔17fの縦方向外側端よりも横方向長さが短い。
【0061】
対向部17eの、切欠き部17gと貫通孔17fとの間の部分は、上から押されると下方に撓む。この部分を撓み部17hとすると、当該撓み部17hは、取付部17を嵌合部37に嵌め込む際に、打出し部15jに押されて下方に撓む。この撓み部17hの撓み具合は、撓み部17hの縦方向長さを伸縮することによって調整できる。従って、例えば、切欠き部17gの形状を変更し、撓み部17hの縦方向長さを調整することによって、防振架台1の組立性を調整することが可能となる。また、取付部17を嵌合部37に嵌め込む際には、この撓み部17hの縦方向内側端面を、換言すると、切欠き部17gの縦方向外側端面を、打出し部15jに当てることによって、取付部17の横方向における位置決めがなされる。
【0062】
このように形成された取付部17を、図11に示すように、横方向内側の長孔17dの横方向内側の側縁を横方向内側のガイド突出壁部15dに、横方向外側の長孔17dの横方向外側の側縁を横方向外側のガイド突出壁部15dに、さらに、撓み部17hの縦方向内側端面を打出し部15jに当てながら、各嵌合部37に縦方向外側から嵌め入れると、傾斜板部17cがストッパー部15gに当接することで、取付部17は主として上下方向に弾性変形しながら嵌合部37に入り込む。
【0063】
そうして、梁部材9を小槌等を用いて縦方向外側から叩くことによって、傾斜板部17cがストッパー部15g,15gを乗り越え、且つ、撓み部17hが打出し部15jの下をくぐると、対向部17eの上面及びガイド頂壁部15bの下面、縦板部17bの縦方向内側面及びガイド側壁部15aの縦方向外側の側縁、傾斜板部17cの下面及びガイド延出部15cの上縁がそれぞれ接触し、さらに、打出し部15jが貫通孔17fに嵌り込んだ状態で、取付部17が嵌合部37に嵌め込まれる。このとき、傾斜板部17cは、その縦方向外側端がストッパー部15g,15gに引っ掛かることによって当該ストッパー部15g,15gとガイド側壁部15aとの間に挟まれるとともに、梁部材本体9aの突起片9c,9cが、上側耐震ブラケット19の側壁部19cにおける縦方向外側の側縁に当たる。
【0064】
また、ガイド突出壁部15d,15dは、一対の長孔17d,17dにそれぞれ入り込み、横方向内側の長孔17dの横方向内側の側縁が、横方向内側のガイド突出壁部15dのR部15kに乗り上げる一方、横方向外側の長孔17dの横方向外側の側縁が、横方向外側のガイド突出壁部15dのR部15kに乗り上げる。
【0065】
以上のようにして、取付部17は、傾斜板部17cがストッパー部15g,15gとガイド側壁部15a,15aとの間に挟まれるとともに、貫通孔17fに打出し部15jが嵌り込むことによって、嵌合部37に嵌め込まれる。このような嵌め込み作業を一対の架台ユニット3,3の各両端部において実行することによって、防振架台1が組み立てられる。
【0066】
このように組み立てられた防振架台1が図7の矢印VIIa方向に引っ張られると、防振架台1は、平行四辺形状に変形し始める。そして、架台ユニット3と梁部材9とのなす角度が上下方向から見て鋭角に変形し、取付部17が嵌合部37に対して相対的に縦方向外側に移動する。すると、打出し部15jが貫通孔17fの縦方向内側端面を押圧する。このとき、対向部17eが縦方向内側にある縦板部17bによって支持されているため、撓み部17hを含む、対向部17eの貫通孔17fよりも縦方向内側部分が、縦方向内側に行くに従って上方に傾斜して打出し部15jの移動を阻む。従って、打出し部15jが貫通孔17fから外れ難くなる。
【0067】
また、対向部17eを支持する縦板部17bが上下方向に延び、且つ、縦板部17bの上端がガイド頂壁部15bの下面に接触しているので、打出し部15jが撓み部17hを縦方向内側に強く押圧するほど、対向部17eの貫通孔17fよりも縦方向内側部分がより大きな勾配で傾斜し、それに伴って縦板部17bの上端がガイド頂壁部15bの下面をより強く押圧する。これにより、縦板部17bがガイド頂壁部15bの下面につっかえるので、梁部材9が横方向に延びる軸回りに回転するのが規制される。
【0068】
さらに、梁部材9の回転が規制されるので、対角方向への引っ張りが継続しても、縦板部17bの、対向部17eと繋がる部分、及び、傾斜板部17cの各形状が保持される。従って、対角方向への引っ張りが継続すると、梁部材9の比較的剛性の低い部分である、縦板部17bの長孔17d,17dに対応する部分に応力が集中して変形する。
【0069】
なお、防振架台1が図7の矢印VIIb方向に引っ張られると、防振架台1が平行四辺形状に変形して架台ユニット3と梁部材9とのなす角度が鈍角に変形し、取付部17は、一旦嵌合部37に対して相対的に縦方向内側に移動するが、矢印VIIb方向への引張りが継続して変形が進むと、反対方向である矢印VIIa方向に引っ張られる場合と同様に、取付部17が嵌合部37に対して相対的に縦方向外側に移動する。その後の梁部材9の挙動は、防振架台1が矢印VIIa方向に引っ張られる場合と同様である。
【0070】
−引張試験−
本願発明者らは実際に、従来品と本実施形態の防振架台とについてそれぞれ引張試験を行った。引張試験は以下の手順で行った。先ず、組み立てた防振架台を用意し、任意のコーナー部及びその対角線上のコーナー部にそれぞれベルトを巻回した。次に、任意のコーナー部に巻かれたベルトに引張荷重を計測するロードセルを繋げ、このロードセルを防振架台を吊り上げるクレーンのフックに引っ掛けた。また、対角線上のコーナー部に巻かれたベルトに、数百kgの鉄板からなる錘を繋げた。そして、クレーンによって防振架台を徐々に吊り上げ、防振架台が分解、又は、防振架台は分解せずに梁部材の一部が破断した時点で吊り上げ動作を停止し、その時点におけるロードセルの表示値を読み取った。
【0071】
引張試験の結果、従来品では、防振架台が分解し、その時点のロードセルの表示値は50キログラム重(以下、kgfと表記する)であった。一方、本実施形態の防振架台では、防振架台は分解せずに梁部材の一部が破断し、その時点のロードセルの表示値は200kgfであった。従って、本実施形態の防振架台が従来品よりも分解し難いことが確認できた。また、本実施形態の防振架台では、防振架台の分解に先立って梁部材の一部が破断することが確認できた。
【0072】
(実施形態2)
本実施形態は、梁部材に形成された貫通孔がその横方向両側の一対の長孔に繋がっている点で実施形態1と異なるものである。図12は、本実施形態の梁部材を示す平面図である。以下、実施形態1と異なる点について図12を参照して説明する。
【0073】
図12に示すように、貫通孔171fは、その両端が一対の長孔17d,17dに繋がっている。具体的には、貫通孔171fの横方向外側端が、その横方向外側の長孔17dの縦方向外側端部の横方向内側端に繋がり、また、貫通孔171fの横方向内側端が、その横方向内側の長孔17dの縦方向外側端部の横方向外側端に繋がっている。換言すると、対向部17eは、上下方向から見て、縦方向内側端を除く三方を一対の長孔17d,17d及び貫通孔17fによって囲まれている。そして、対向部17eは、その縦方向内側端を縦板部17bによって片持ち支持されている。従って、対向部17eは、実施形態1のように縦方向両側端を頂板部17a及び縦板部17bによって両持ち支持された場合と比較して下方に撓み易くなり、取付部17を嵌合部37に嵌め込む際に、打出し部15jを貫通孔171fに嵌め込み易くなる。よって、防振架台1を分解し難くしつつ、防振架台1の組立性を向上させることが可能となる。
【0074】
本実施形態の防振架台について引張試験を行った。試験方法は、実施形態1のものと同様とした。その結果、防振架台は分解せずに梁部材の一部が破断し、その時点のロードセルの表示値は150kgfであった。従って、本発明の防振架台が従来品よりも分解し難いことが確認できた。また、本発明の防振架台では、防振架台の分解に先立って梁部材の一部が破断することが確認できた。
【0075】
(実施形態3)
本実施形態は、梁部材に形成された貫通孔の形状が実施形態1と異なるものである。図13は、本実施形態に係る梁部材9を示す平面図である。以下、実施形態1と異なる点について図13を参照して説明する。
【0076】
図13に示すように、貫通孔172fは、上下方向から見て、縦方向内側端が縦方向外側端よりも横方向長さが短い略台形状をなしている。具体的には、貫通孔172fは、縦方向内側端から縦方向外側に行くに従って横方向長さが長くなり、縦方向長さの約半分の位置から縦方向外側に行くに従って横方向長さが短くなり、且つ、縦方向内側端が縦方向外側端よりも横方向長さが短い形状をなしている。換言すると、貫通孔172fの形状は、実施形態1のハット状の貫通孔17fの鍔部分を埋めた形状とほぼ同一である。つまり、貫通孔172fは、実施形態1の貫通孔17fよりも面積が小さい。従って、対向部17eの縦方向外側端部は、実施形態1における当該縦方向外側端部よりも撓み難い。よって、防振架台1の組立性が多少損なわれるものの、打出し部15jが貫通孔17fから一層外れ難くなり、防振架台1を一層分解し難くすることが可能となる。
【0077】
本実施形態の防振架台について引張試験を行った。試験方法は、実施形態1のものと同様とした。その結果、防振架台は分解し、その時点のロードセルの表示値は300kgfであった。従って、本実施形態の防振架台が従来品よりも分解し難いことが確認できた。
【0078】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0079】
上記実施形態では、架台が防振架台であったが、これに限定されず、防振機能を具備しない架台でもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、貫通孔17f,171f及び172fがそれぞれ上下方向から見て略台形状をなしていたが、これに限定されず、他の形状でもよい。
【0081】
さらに、上記実施形態では、対向部17eの貫通孔17f,171f及び172fよりも縦方向内側に切欠き部17gを設けたが、これに限定されず、切欠き部17gの代わりに上下方向に貫通する孔部を設けてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、対向部17eに切欠き部17gを設けたが、これに限定されず、切欠き部を設けなくてもよい。
【0083】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明は、設備機器を設置するための架台について有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 エアコン防振台(架台)
3 架台ユニット
5 上架台(角柱部材)
7 下架台
9 梁部材
15a ガイド側壁部(第1壁部)
15b ガイド頂壁部(第2壁部)
15c ガイド延出部(第3壁部)
15d ガイド突出壁部(第4壁部)
15g ストッパー部(係合部)
15j 打出し部(突起部)
17 取付部
17a 頂板部(第1板部)
17b 縦板部(第2板部)
17c 傾斜板部(第3板部)
17d 長孔
17e 対向部
17f,171f,172f 貫通孔
17g 切欠き部
37 嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の角柱部材を備える架台ユニットが、横並びに配設され、且つ、互いに対をなす角柱部材同士が梁部材によって連結された架台であって、
上記角柱部材の両端部には、縦方向外側に開口する嵌合部がそれぞれ設けられ、当該嵌合部は、横方向に相対向する一対の第1壁部と、当該第1壁部の上縁同士を繋ぎ且つ当該第1壁部の縦方向外側の側縁よりもさらに縦方向外側に延びる第2壁部と、当該第2壁部から下方に突起する突起部と、当該第1壁部の縦方向外側の側縁の下部から縦方向外側に延びる第3壁部と、当該第3壁部の上縁における縦方向外側の端部に形成されている、上方に向かって突起する係合部と、当該第2壁部の当該第1壁部よりも縦方向外側の部分における横方向両側の側縁から下方に延びる一対の第4壁部と、を有しており、
上記梁部材は、縦方向外側から上記各嵌合部に主として上下方向に弾性変形しながら嵌め込まれる取付部を備え、当該取付部は、縦方向に延びる略水平な第1板部と、当該第1板部の縦方向内側の側縁から下方に延びる第2板部と、当該第2板部の下縁から縦方向外側に向かうほど下方に傾斜して延びる第3板部と、を有しており、
上記第1板部は、上記一対の第4壁部に対応する部分において縦方向に延びて当該一対の第4壁部が嵌め込まれる一対の長孔と、当該一対の長孔の間に設けられ、上記第2壁部の下面に対向し且つ上記第2板部の上縁に繋がる対向部と、当該対向部の上記突起部に対応する部分において上下方向に貫通して当該突起部が嵌め込まれる貫通孔と、を有していて、
上記取付部は、上記第3板部が、縦方向外側から上記係合部を乗り越えることで、縦方向外側端が当該係合部に引っ掛かることによって当該係合部と上記第1壁部との間に挟まれ、さらに、上記突起部が上記貫通孔に嵌め込まれることによって、上記対向部及び上記第2壁部、上記第2板部及び上記第1壁部、上記第3板部及び上記第3壁部がそれぞれ接触するように上記各嵌合部に嵌め込まれていることを特徴とする架台。
【請求項2】
請求項1記載の架台において、
上記貫通孔の横方向両端は、上記一対の長孔の横方向内側端にそれぞれ繋がっていることを特徴とする架台。
【請求項3】
請求項1又は2記載の架台において、
上記貫通孔は、上下方向から見て縦方向内側端が縦方向外側端よりも横方向長さが短い略台形状であることを特徴とする架台。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の架台において、
上記対向部の上記貫通孔よりも縦方向内側部分には、切欠き部又は孔部が形成されていることを特徴とする架台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−15197(P2013−15197A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148928(P2011−148928)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】