説明

架橋型皮膚用粘着剤

【課題】人皮膚に対して良好な粘着性および剥離性を有する、刺激性の少ない、及び医療用又は化粧用に適した、さらには製造するに適した、より保存性に優れた架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物を提供すること。
【解決手段】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分としジアセトンアクリルアミド3〜45質量%を必須構成成分として含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体A)100質量部と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とし側鎖に第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体B)0.1〜30質量部によって形成される。共重合体Bは、1分子鎖中2個以上の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を有し、共重合体B中の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基は(メタ)アクリル酸エステルコモノマー5〜100分子鎖中に1個の割合で含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋型皮膚用粘着剤、それを用いた架橋型皮膚用粘着剤シート、その架橋型皮膚用粘着剤を製造するための組成物、および架橋型皮膚用粘着剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚用粘着剤シートの特性としては、皮膚に貼付後、一般に24時間程度確実に密着することが必要であり、発汗時、入浴時にも密着し剥離しないことが必要である。また、剥離時は痛くない程度の剥離力で引き剥がせることも必要であり、粘着力が必要以上に強いと剥離時に毛むしりや角質剥離が起きたり、皮膚の引っ張りによる機械的皮膚刺激を生じる。その結果、紅斑が発生し、剥離後も数日間続く場合もあるので、このような不都合をできるだけ少なくする必要がある。また、粘着剤シートを皮膚から剥離した後、皮膚面に粘着剤が残存しないことも要求される。
【0003】
従来から、アクリル系粘着剤を架橋させることは粘着剤の凝集力を向上させるために皮膚用粘着剤において一般的に行われてきた。その場合、架橋にはアクリル共重合体中のアクリル酸を用いて架橋させることがほとんどであるがその場合、(1)粘着力が強すぎる、またはアクリル酸の化学的刺激のため皮膚刺激性が強くなりがちである、(2)薬物を含有させた経皮吸収製剤においては、アクリル酸と塩基性薬物とが相互作用して薬物が粘着剤中から皮膚に移行し難くなり経皮吸収性が悪くなる、(3)架橋剤としてのポリイソシアネートは極めて活性が高く薬物と反応することが多くそれにより薬剤安定性が損なわれる等の欠点を有していた。
【0004】
特開昭61−100520号公報には、2−エチルヘキシルアクリレート45モル%、ビニルピロリドン20〜55モル%及びエステル部分の炭素数が3〜12のアクリル酸エステル35モル%以下からなり、さらに多官能性モノマーを全モノマー質量の0.005〜0.5質量%含み前架橋させるアクリル酸を含まない粘着剤が提案されている。しかしこの粘着剤を用いた経皮吸収製剤は薬剤の経皮吸収性、安定性は良好であるが、薬物放出性を向上させるために軟化剤、可塑剤等を添加した場合凝集力が不足し、経皮吸収製剤を剥離した場合の皮膚上への糊残りが生じるという欠点があった。従って、優れた皮膚用粘着剤シートを獲得するためには、特に糊残りの問題を解決することが必要である。
【0005】
また、架橋型アクリル系粘着剤の改良として、多量の可塑剤を含有せしめたアクリル共重合体組成物溶液を塗工乾燥後架橋させて粘着剤シートを得る方法が提案されており、具体例としては、特許第2700835号、特許第3014188号等が挙げられる。しかし、この経皮吸収製剤の場合、粘着剤層の保型性を高めることができるが、皮膚への粘着力と、粘着剤の凝集力をバランスさせた製剤設計が困難である。
【0006】
一方、ジアセトンアクリルアミドを含むアクリル系粘着剤と可塑剤とをアジピン酸ジヒトラジド、ヘキサンジアミン等のポリアミンを混合し、混合液を塗工後、溶媒を加熱乾燥させて架橋させる方法に関しては、特表2002−535475号公報に提案されている。
しかしながらこの方法の欠点としては、
(1)アジピン酸ジヒドラジド、ヘキサンジアミンなどの低分子ポリアミンは粘着剤溶液と混合することにより数時間経過すると塗工のための混合液がゲル化してしまい塗工不可能となる。
(2)アジピン酸ジヒドラジド、ヘキサンジアミンなどの低分子ポリアミンは薬剤が存在しない時はジアセトンアクリルアミド含有アクリル系粘着剤を架橋させるが、薬剤含有時に、薬剤との反応、あるいは薬剤の妨害等によって架橋が進行しないことが多い。
(3)アジピン酸ジヒドラジドは有機溶媒溶解性が低く、塗工溶液に添加するに当たっては水に溶解させて添加しなければならない。その為多量に使用する際には高分子の沈殿が起こりやすく取り扱いが不便であるという欠点を有する。
(4)さらにアジピン酸ジヒドラジト等のヒドラジン化合物は皮膚から吸収されて毒性を示す危険性が指摘されており皮膚用粘着剤のための添加剤として不適である等の欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献1】特開昭61−100520号公報
【特許文献2】特許第2700835号公報
【特許文献3】特許第3014188号公報
【特許文献4】特表2002−535475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑み、人皮膚に対して良好な粘着性および剥離性を有し、皮膚に対する刺激性の少ない架橋型皮膚用粘着剤、及び医療用又は化粧用に適した架橋型皮膚用粘着剤シートを提供することを目的とし、さらには該架橋型皮膚用粘着剤を製造するに適した、保存性に優れた架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の架橋型皮膚用粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分としジアセトンアクリルアミド3〜45質量%を必須構成成分として含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体A)100質量部と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とし側鎖に第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体B)0.1〜30質量部によって形成される。共重合体Bは、1分子鎖中2個以上の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を有し、共重合体B中の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基は(メタ)アクリル酸エステルコモノマー5〜100分子鎖中に1個の割合で含まれている。共重合体Bの側鎖に含まれる第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基は、共重合体Aに含まれるジアセトンアクリルアミドに由来するカルボニル基と架橋反応するので、架橋剤として作用するとともに粘着剤の構成成分ともなる。したがって、本架橋型皮膚用粘着剤は低分子の架橋剤を用いないで架橋できることが重要な特徴である。
【0009】
共重合体Bの第一の例は、主たる構成成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、側鎖に第1級アミノ基を有する(メタ)アクリル系モノマーと共重合して得られるアクリル系共重合体である。
【0010】
共重合体Bの第二の例は、主たる構成成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、(メタ)アクリル酸と共重合させ、次いで得られた共重合体に含まれる遊離のカルボキシル基をイミン、ジアミン及び/又はジカルボン酸ジヒドラジドと反応させて得られるアクリル系共重合体である。
【0011】
共重合体Bの第三の例は、主たる構成成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、ジアセトンアクリルアミドと共重合させ、次いで得られた共重合体に含まれるカルボニル基をジアミン及び/又はジカルボン酸ジヒドラジドと反応させて得られるアクリル系共重合体である。
【0012】
本発明の架橋型皮膚用粘着剤をシート状支持体上に形成したものが貼付剤として使用される。この架橋型皮膚用粘着剤シートは、共重合体A100質量部と、共重合体B0.1〜30質量部を溶媒に溶解し、公知の方法により溶媒を加熱蒸散させることにより製造することができる。その際、共重合体A100質量部に対して可塑剤25〜200質量部、経皮吸収性の医療用成分及び/又は化粧用成分、経皮吸収促進剤、香料等を加えることができる。
【0013】
本発明の架橋型皮膚用粘着剤は、その製造に先立ち共重合体Aと共重合体Bを溶媒に溶解し、公知の方法で溶媒を加熱蒸散させて製造される。共重合体Aと共重合体Bは溶媒中で緩やかに架橋反応を起こすため、その溶液を長期に保存することはできない。しかし、その溶液に全溶媒に対し5.0質量%以上のアセトン、ブタノンのような揮発性ケトン類を添加しておくことにより保存中の架橋反応が防止され、長期に保存することが出来る。したがって、本発明は、共重合体Aおよび共重合体Bをアセトン、ブタノンのような揮発性ケトンを含有する溶媒に溶解した長期保存可能な架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物をも提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低分子の架橋剤を用いることなく、皮膚に対して良好な粘着性及び剥離性を有し、皮膚に対する刺激性の少ない架橋型皮膚用粘着剤及び医療用又は化粧用に適した皮膚用粘着剤シートが提供される。更には、長期保存によっても安定な架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物が提供される。
本発明の架橋型皮膚用粘着剤は、以下のような特徴を有する。(1)共重合体Aはアクリル酸を含んでいないためアクリル酸系粘着剤の過度に強い凝集力とカルボン酸に基づく皮膚刺激性がなく、皮膚用粘着剤として適切である。(2)薬物を含有する場合、塩基性薬物は通常のアクリル酸含有粘着剤中のアクリル酸と相互作用して安定性を損なわれる、あるいは経皮吸収性が低下することが欠点であるが、本粘着剤はアクリル酸を含まないためそれらの不都合な現象が起こらない。(3)架橋剤として多用されるイソシアネート系架橋剤を使用しないため薬物との反応による安定性低下が無い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】オキシブチニンの経皮吸収をラット皮膚を用い評価した結果のグラフである。
【図2】ツロブテロールの経皮吸収をラット皮膚を用い評価した結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分としジアセトンアクリルアミド3〜45質量%を必須構成成分として含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体A)を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、併用されてもよい。
【0017】
共重合体A中の必須構成成分であるジアセトンアクリルアミドの含有量は3〜45質量%であり、好ましくは8〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。下限未満であると後述する架橋が十分に起こりがたく凝集力が不足し、また上限を超えると凝集力が強すぎて粘着力が低下する。
【0018】
共重合体Aには、医療用成分、化粧用成分等の粘着剤中への溶解度を高めるために極性モノマー(例えば、2−ビニルピロリドン、酢酸ビニル、アクリルアミド等)を1.0〜20質量%の範囲で共重合させてもよい。
【0019】
共重合体Aを調製するには、通常、重合開始剤の存在下で所要構成成分を溶液重合すればよい。ただし、重合形態はこれに限定されない。また、重合反応条件は主として構成成分の種類により適宜選定される。溶液重合を行う場合、例えば、所要構成成分の所定量に、酢酸エチル又はその他の一般的な重合溶媒を加え、攪拌装置及び冷却還流装置を備えた反応容器中でアゾビス系、過酸化物系等の重合開始剤の存在下、窒素雰囲気で70〜90℃、8〜40時間反応させればよい。なお、上記構成成分及び溶媒は一括投入してもよいし、適宜分割投入してもよい。重合開始剤は反応の進行状況に応じて、適宜分割投入するのが望ましい。
【0020】
アゾビス系重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス−イソ−ブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、ジ(tert−ブチル)パーオキサイド等が挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とし側鎖に第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体B)は、共重合体Aのジアセトンアクリルアミドに由来するケトン基との反応により共重合体Aを架橋させるとともに、架橋型皮膚用粘着剤の構成成分となるものである。本共重合体Bは既知の方法で調製できる。例えば以下の方法が挙げられる。
【0022】
調製法の例1は、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とし、これを(メタ)アクリル酸アミノエチルのような側鎖に第1級アミノ基を有するモノマーを通常の方法で共重合させる方法である。このようにして得られる共重合体は側鎖に遊離の第1級アミノ基を有する。
【0023】
調製法の例2は、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とし、これを(メタ)アクリル酸と通常の方法で共重合させ、得られた共重合体のカルボキシル基をイミン、ジアミン、及び/又はジカルボン酸ジヒドラジドを用いて変性する方法である。この共重合体の重合に用いる装置、溶媒、開始剤、反応条件等は共重合体Aと同じでよい。得られた共重合体を変性するイミンとしては、たとえばエチレンイミン及びプロピレンイミン等のアルキレンイミンが挙げられ、エチレンイミンが特に好ましい。ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミンのような鎖状アルキレンジアミン及びシクロヘキシルジアミンのようなシクロアルキレンジアミン等が挙げられ、ヘキサンジアミンが特に好ましい。ジカルボン酸ジヒドラジドとしては、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド等が挙げられ、アジピン酸ジヒドラジドが特に好ましい。これらのイミン、ジアミン、ジカルボン酸ジヒドラジドは単独で使用することも、2成分以上を混合して使用することもできる。アルキレンイミンで変性する場合には、共重合体に含まれるカルボキシル基とエステル結合が形成され側鎖に遊離の第1級アミノ基が生成する。ジアミン及び/又はジカルボン酸ジヒドラジドで変性する場合には、共重合体に含まれるカルボキシル基がジアミン及び/又はジカルボン酸ジヒドラジドの一方のアミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基と酸アミド結合し、側鎖に第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基が生成する。
【0024】
調製法の例3は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、ジアセトンアクリルアミドと共重合させ、次いで得られた共重合体に含まれるカルボニル基をジアミン及び/又はジカルボン酸ジヒドラジドと反応させる方法である。ここで用いるジアミン及びジカルボン酸ジヒドラジドは調製法の例2で述べたものを使用することができる。これらは単独で使用することも、2成分以上を混合して使用することもできる。共重合体に含まれるジアセトンアクリルアミドに由来するカルボニル基は、ジアミン及び/又はジカルボン酸ジヒドラジドの一方のアミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基と共有結合し側鎖に遊離の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基が生成する。
【0025】
上記の共重合体Bの製法は、あくまでも例示に過ぎず、上記の例に限定されるものではない。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とし側鎖に第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体が生成する方法であれば如何なる方法を採用してもよい。また、このようにして得られた共重合体Bは、必要に応じて精製し、未反応のイミン、ジアミン、ジカルボン酸ジヒドラジドを除去してから使用することも可能である。
【0026】
共重合体Bは共重合体Aと同一の溶媒に溶解し相溶性が大きいことが重要であるので(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とする必要がある。その分子量は2,000以上であることが高分子架橋剤の性質を発揮するために望ましい。分子量が2,000未満であると、低分子ポリアミンとの性能の差が現れにくく本発明の特徴が発揮できない。共重合体B中の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基は、共重合体Aとの適度の架橋性を発揮するために共重合体Bの1分子鎖中、2個以上存在することが必要であり、3個以上存在することが好ましい。共重合体B中における第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基は(メタ)アクリル酸エステルコモノマー5〜100分子鎖中に1個の割合で含まれる。また共重合体Aに対する共重合Bの添加割合が少なくなると添加による凝集力の増強効果が発現しにくくなり、多くなると粘着力が低下するので共重合体Bの添加量は共重合体A100質量部に対し0.1〜30質量部に制限され、好ましくは0.3〜20質量部である。本発明における共重合体Bによる共重合体Aの架橋は、共重合体Aに含まれるジアセトンアクリルアミドに由来するカルボニル基が、共重合体Bの側鎖に含まれる遊離の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基と脱水反応に基づく共有結合を形成して生じるものである。
【0027】
本発明の皮膚用粘着剤シートは、シート状支持体の少なくとも片面に、架橋型皮膚用粘着剤からなる粘着剤層を積層して構成され、皮膚用粘着剤シートとして絆創膏、ドレッシングなどに好適に使用できる。さらに医療用及び/又は化粧用成分等を添加して経皮吸収製剤、貼付用化粧品とすることができる。
【0028】
皮膚用粘着剤シート用支持体は、薬物が不透過性又は難透過性のものであって柔軟なものが好ましく、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂フィルム;アルミニウムシート等が挙げられ、これらの積層シートであってもよく、織布や不織布と積層されていてもよい。また、粘着剤層との接着性を高める目的で、支持体にコロナ処理、プラズマ放電処理等の表面処理を施したり、アンカー剤によりアンカーコート処理を施したりしてもよい。
【0029】
本発明の架橋型皮膚用粘着剤は、可塑剤を配合することができる。可塑剤を添加することにより、架橋型皮膚用粘着剤が、さらに皮膚に低刺激性となり、かつ薬物を含浸させた場合に薬物の経皮吸収性を向上させることが可能となる。可塑剤の添加量は共重合体A100質量部に対し25〜200質量部が好ましい。添加量は25質量部より少ないと目的の添加効果が出にくく、200質量部より多いと、後述する架橋によっても粘着剤の凝集力が不足しがちとなる。
【0030】
可塑剤としては、例えば、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、乳酸ミリスチル等の一価アルコールの脂肪酸エステル;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチル、コハク酸ジオクチル等の二塩基酸エステル;ジカプリン酸プロピレングリコール、トリオクタン酸グリセリル、トリ(オクタン酸/デカン酸)グリセリル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の多価アルコール等の脂肪酸エステルなどが挙げられ、特にミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチルおよび中鎖脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸エステルが好適に使用される。
【0031】
架橋型皮膚用粘着剤に含有させる医療用成分としては、経皮的に生体膜を透過しうるものであれば特に限定されず、例えば、全身麻酔剤、睡眠・鎮痛剤、抗癲癇剤、解熱鎮痛消炎剤、ステロイド系抗炎症剤、興奮剤・覚醒剤、鎮暈剤、精神神経用剤、局所麻酔剤、骨格筋弛緩剤、自立神経用剤、鎮痙剤、抗パーキンソン剤、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、動脈硬化用剤、呼吸促進剤、鎮咳去痰剤、消化性潰瘍治療剤、利胆剤、ホルモン剤、泌尿生殖器及び肛門用剤、抗喘息薬、寄生性皮膚疾患用剤、皮膚軟化剤、ビタミン剤、無機質製剤、止血剤、血液凝固阻止剤、肝臓疾患用剤、習慣性中毒用剤、痛風治療剤、糖尿病用剤、抗悪性腫瘍剤、放射性医薬品、漢方製剤、抗生物質、化学療法剤、駆虫剤・抗原虫剤、麻薬等が挙げられる。
【0032】
解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アンフェナックナトリウム等が挙げられ、ステロイド系抗炎症剤としては、例えば、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン等が挙げられる。
【0033】
血管拡張剤としては、例えば、塩酸ジルチアゼム、四硝酸ペンタエリスリトール、硝酸イソソルビド等が挙げられる。不整脈用剤としては、例えば、塩酸プロカインアミド、ジソピラミド、塩酸メキシレチン等が挙げられる。血圧降下剤としては、例えば、塩酸クロニジン、塩酸ブニトロロール、カプトプリル等が挙げられる。
【0034】
局所麻酔剤としては、例えば、アミノ安息香酸エチル、塩酸テトラカイン、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸オキシブプロカイン、塩酸プロピトカイン等が挙げられる。ホルモン剤としては、例えば、エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン等が挙げられる。泌尿器用薬としては、例えばオキシブチニン、抗喘息薬としては例えば、ツロブテロール、抗ヒスタミン剤としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジフェニルピラリン等が挙げられる。血液凝固阻止剤としては、例えば、ワルファリンカリウム、塩酸チクロピジン等が挙げられる。
【0035】
全身麻酔剤としては、例えば、チオペンタールナトリウム、ペントバルビタールナトリウム等が挙げられる。睡眠・鎮痛剤としては、例えば、ブロムワレリル尿素、アモバルビタール、フェノバルビタール等が挙げられる。抗癲癇剤としては、例えば、フェニトインナトリウム等が例示される。興奮剤・覚醒剤としては、例えば、塩酸メタンフェタミン等が挙げられる。鎮暈剤としては、例えば、塩酸ジフェンドール、メシル酸ベタヒスチン等が挙げられる。
【0036】
精神神経用剤としては、例えば、塩酸クロルプロマジン、チオリダジン、メプロバメート、塩酸イミプラミン、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム等が挙げられる。骨格筋弛緩剤としては、例えば、塩酸スキサメトニウム、塩酸エペリゾン等が挙げられる。自立神経用剤としては、例えば、臭化ネオスチグミン、塩化ベタネコール等が挙げられる。抗パーキンソン剤としては、例えば、塩酸アマンタジン等が挙げられる。利尿剤としては、例えば、ヒドロフルメチアジド、イソソルビド、フロセミド等が挙げられる。
【0037】
血管収縮剤としては、例えば、塩酸フェニレフリン等が挙げられる。呼吸促進剤としては、例えば、塩酸ロベリン、ジモルホラミン、塩酸ナロキソン等が挙げられる。麻薬としては、例えば、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、塩酸コカイン、塩酸ペチジン等が挙げられる。
【0038】
架橋型皮膚用粘着剤に含有させる化粧用成分としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、コウジ酸、ルシノール、トラネキサム酸、油溶性甘草エキス等の美白成分、レチノール、レチノイン酸、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等の抗しわ成分、ビタミンE、酢酸トコフェロール、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等の血行促進成分、イソプロピルメチルフェノール、感光素、酸化亜鉛等の抗菌成分、ビタミンD、ビタミンD、ビタミンK等のビタミン類などが挙げられる。
【0039】
架橋型皮膚用粘着剤に含有させる医療用及び化粧用成分の含有量は、種類、使用目的に応じて適宜決定されるが、少なくなると有効性が低下し、多くなると粘着性が低下することから、粘着剤層中0.01〜50質量%が好ましい。医療用及び化粧用成分が粘着剤層中で過飽和状態で存在したり、結晶が析出した状態で存在したりしていても特に支障はない。また、医療用及び化粧用成分を吸収促進剤とともにカプセル化したり、医療用及び化粧用成分のための貯蔵層を設けたりしてもよい。
【0040】
本発明の皮膚用粘着剤を用いて得られる経皮吸収製剤や貼付用化粧品においては、経皮吸収促進剤、薬物溶解助剤、防止剤、香料等を加えても良い。本発明の皮膚用粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではない。しかし、薄い場合には医療用及び化粧用成分の含有量を高くしなければならず粘着力が低下する。厚い場合には支持体付近の粘着剤中に存在する医療用及び化粧用成分が粘着剤層表面に拡散しにくくなり、薬物放出率が低下する。一般的には、10〜200μmが好ましい。
【0041】
本発明の経皮吸収製剤や貼付用化粧品の製造には、従来公知の粘着テープの製造方法が使用できる。例えば、溶剤塗工法では、共重合体A、共重合体Bを含む溶液に可塑剤、医療用及び化粧用成分等を所定量混合し、必要に応じて有機溶媒で希釈し、得られた液を支持体上に塗布・乾燥する方法、及び剥離紙上に塗布・乾燥した後支持体上に転写する方法等が好適に使用される。
【0042】
本発明の架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物は、共重合体Aおよび共重合体Bを溶媒に溶解したものである。溶媒としては、例えば、共重合体を重合する際に使用される溶媒、例えば酢酸エチル等をそのまま用いることができる。溶媒は、単独であっても混合溶媒であってもよい。
【0043】
共重合体Aと共重合体Bとを混合して通常使用される溶媒(例えば酢酸エチル、トルエン等)に溶解させた状態では共重合体Aは重合体Bによって溶液中であっても次第に架橋され溶液がゲル状になっていくので塗工に先立つ用時調製が必要となる。これは通常の低分子架橋剤を使用する際と同様である。本発明によれば、さらに、共重合体A100質量部、共重合体B0.1〜30質量部及び所定量の溶媒(例えば、重合用溶媒である酢酸エチル)からなる溶液に、ケトン類例えばアセトン、ブタノンを添加した架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物が提供される。これは、アセトン、ブタノン等が共重合体Aの共重合体Bによる架橋反応を防止するという新たな知見に基づくものであり、この架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物は、長期保存が可能である。ここで用いるケトンは、共重合体Aと共重合体Bの溶液を加熱蒸散させて皮膚用粘着剤を製造する際に容易に蒸散するものであることが好ましく、アセトン、ブタノン又はその混合物が適当である。共重合体Aと共重合体B、さらに必要に応じて可塑剤、医療用又は化粧用成分を、例えば酢酸エチル、トルエン等の溶媒に溶解しアセトン及び/又はブタノンを加えた溶液として保存しておくことにより、溶液を用時調製する必要がなく作業性が大いに向上する。
【0044】
共重合体Aと共重合体Bとを溶解させる溶媒にアセトン及び/又はブタノンを添加した場合には、共重合体Aのジアセトンアクリルアミドに由来するケトン基と共重合体B側鎖上の第1級アミノ基又はカルボキシヒドラジド基との架橋反応が、アセトン及び/又はブタノンにより妨げられる。この結果、組成物がゲル化せず長期保存が可能となるものである。アセトン及び/又はブタノンの含有量は、混合溶媒全量中5質量%以上が好ましい。含有量が少なすぎると架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物の保存性が低下する。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明する。なお、以下において、部および%は質量部および質量%を意味する。
【0046】
[共重合体Aの作成例1]
モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル200部、アクリル酸ブチル100部、ジアセトンアクリルアミド50部を用い、溶媒として酢酸エチル300部を加えた混合物を攪拌装置及び還流冷却装置付きセパラブルフラスコに供給し、攪拌及び窒素置換しながら75℃に昇温した。過酸化ベンゾイル2部を酢酸エチル20部に溶解した溶液を5分割し、その1をセパラブルフラスコに添加し、重合を開始した。残部の4を反応開始後2時間目から1時間間隔で1ずつ添加し、添加終了後、さらに2時間反応させた。なお、粘度調節のため反応開始後、2時間毎に酢酸エチルを50部ずつ4回添加した。反応終了後、冷却し、次いで酢酸エチルを追加して固形分濃度30質量%、ゲル浸透クロマトグラフィー測定(GPC)によるスチレン換算重量平均分子量110×10の共重合体Aの溶液を得た。
【0047】
[共重合体Aの作成例2]
モノマー組成をアクリル酸2−エチルヘキシル150部、アクリル酸ブチル100部、ジアセトンアクリルアミド50部、酢酸ビニル50部とし、共重合体Aの作成例1と同様にして固形分濃度30質量%、GPCによるスチレン換算重量平均分子量95×10の共重合体Aの溶液を得た。
【0048】
[共重合体Aの作成例3]
モノマー組成をアクリル酸2−エチルヘキシル150部、アクリル酸ブチル150部、ジアセトンアクリルアミド100部とし、重合開始剤として過酸化ラウロイルを用いて、共重合体Aの作成例1と同様にして固形分濃度30質量%、GPCによるスチレン換算重量平均分子量95×10の共重合体Aの溶液を得た。
【0049】
[共重合体Bの作成例1]
モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル200部、アクリル酸ブチル100部、メタクリル酸アミノエチル30部を用い、溶媒として酢酸イソプロピル300部を加えた混合物を攪拌装置及び還流冷却装置付きセパラブルフラスコに供給し、攪拌及び窒素置換しながら80℃に昇温した。過酸化ベンゾイル2部を酢酸エチル30部に溶解した溶液を5分割し、その1をセパラブルフラスコに添加し、重合を開始した。残部の4を反応開始後2時間目から1時間間隔で1ずつ添加し、添加終了後、さらに2時間反応させた。なお、粘度調節のため反応開始後、2時間毎に酢酸イソプロピルを50部ずつ4回添加した。反応終了後、冷却し、次いで酢酸エチルを追加して固形分濃度30質量%、GPC測定によるスチレン換算重量平均分子量12×10の共重合体Bの溶液を得た。
【0050】
[共重合体Bの作成例2]
モノマー組成をアクリル酸2−エチルヘキシル200部、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸10部とし、分子量調節剤としてドデシルメルカプタン20部を添加し、共重合体Bの作成例1と同様にして固形分濃度30質量%、GPCによるスチレン換算重量平均分子量9×10の共重合体溶液を得た。本溶液にエチレンイミン10部、濃塩酸5部を加えた後、80℃で5時間反応を行った。反応終了後、冷却し、精製水で3回洗浄した後、酢酸エチルを追加して固形分濃度30質量%の共重合体Bの溶液を得た。
【0051】
[共重合体Bの作成例3]
モノマー組成をアクリル酸エチル660部、ジアセトンアクリルアミド70部とし、分子量調節剤としてドデシルメルカプタン40部及び溶媒として酢酸エチル400部を加えた混合物を攪拌装置及び還流冷却装置付きセパラブルフラスコに供給し、攪拌及び窒素置換しながら70℃に昇温した。アゾビスイソブチロニトリル5部を酢酸エチル100部に溶解した溶液を5分割し、その1をセパラブルフラスコに添加し、重合を開始した。残部の4を反応開始後2時間目から1時間間隔で1ずつ添加し、添加終了後、さらに2時間反応させた。なお、粘度調節のため反応開始後、2時間毎に酢酸エチルを50部ずつ4回添加した。
反応終了後、冷却し、次いで、アジピン酸ジヒドラジド40部を精製水40部、メタノール1600部、酢酸エチル260部の混合液に溶解した溶液をセパラブルフラスコに添加し、更に濃塩酸5部を加えた後、70℃に昇温した。
反応終了後、冷却し、精製水で3回洗浄した後、生成物を酢酸エチル700部、アセトン1400部、メタノール400部の混合溶媒に溶解させ、固形分濃度30質量%、GPC測定によるスチレン換算重量平均分子量12×10の共重合体Bの溶液を得た。
【0052】
[比較作成例1]
モノマー組成をアクリル酸2−エチルヘキシル150部、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸15部とし、共重合体Aの作成例1と同様にして固形分濃度30質量%、GPCによるスチレン換算重量平均分子量125×10の共重合体の溶液を得た。
【0053】
[比較作成例2]
モノマー組成をアクリル酸2−エチルヘキシル100部、アクリル酸ブチル100部、酢酸ビニル50部、アクリル酸10部とし、共重合体Aの作成例1と同様にして固形分濃度30質量%、GPCによるスチレン換算重量平均分子量95×10の共重合体の溶液を得た。
【0054】
[比較作成例3]
ジアセトンアクリルアミドが5部である以外はすべて共重合体Aの作成例1と同様にして固形分濃度30質量%、GPCによるスチレン換算重量平均分子量85×10の共重合体の溶液を得た。
【0055】
[実施例1]
共重合体Aの作成例1によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例1によって得られた溶液5部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液をシリコン処理した厚さ35μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に乾燥後の粘着剤層の厚みが100μmになるように塗布し、乾燥させ、次いで厚さ35μmのPET/EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)積層フィルムのPET層上に上記粘着剤層をラミネートして皮膚用粘着剤シートを得た。
【0056】
[実施例2]
共重合体Aの作成例1によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例1によって得られた溶液4部、及び可塑剤としてミリスチン酸イソプロピル20部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により皮膚用粘着剤シートを得た。
【0057】
[実施例3]
共重合体Aの作成例2によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例2によって得られた溶液4部、及び可塑剤としてパルミチン酸イソプロピル30部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により皮膚用粘着剤シートを得た。
【0058】
[実施例4]
共重合体Aの作成例1によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例1によって得られた溶液2部、及び薬物としてオキシブチニン15部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により薬物含有皮膚用粘着剤シートを得た。
【0059】
[実施例5]
共重合体Aの作成例2によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例2によって得られた溶液3部、及び薬物としてツロブテロール10部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により薬物含有皮膚用粘着剤シートを得た。
【0060】
[実施例6]
共重合体Aの作成例1によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例1によって得られた溶液3部、及びアセトン10部(溶媒全体の約12質量%)を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。本混合液を密栓つきガラス瓶に入れ室温で3ヶ月間保存した。本混合溶液は3ヵ月後も粘度上昇の傾向も、液のゲル化の徴候も無かった。
【0061】
[実施例7]
共重合体Aの作成例2によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例2によって得られた溶液3部、及びブタノン30部(溶媒全体の約30質量%)を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。本混合液を密栓つきガラス瓶に入れ室温で3ヶ月間保存した。本混合溶液は3ヵ月後も粘度上昇の傾向も、液のゲル化の徴候も無かった。
【0062】
[実施例8]
共重合体Aの作成例2によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例2によって得られた溶液4部、可塑剤としてトリオクタン酸グリセリル20部、及び薬物としてケトプロフェン10部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により薬物含有皮膚用粘着剤シートを得た。
【0063】
[実施例9]
共重合体Aの作成例3によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例3によって得られた溶液10部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により皮膚用粘着剤シートを得た。
【0064】
[実施例10]
共重合体Aの作成例3によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例3によって得られた溶液3部、及び可塑剤としてミリスチン酸イソプロピル15部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により皮膚用粘着剤シートを得た。
【0065】
[実施例11]
共重合体Aの作成例3によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例3によって得られた溶液10部、及び可塑剤としてミリスチン酸イソプロピル20部、薬物としてケトプロフェン10部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により薬物含有皮膚用粘着剤シートを得た。
【0066】
[実施例12]
共重合体Aの作成例3によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例3によって得られた溶液5部、及びアセトン2部(溶媒全体の約5質量%)を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。本混合液を密栓つきガラス瓶に入れ室温で3ヶ月間保存した。本混合溶液は3ヵ月後も粘度上昇の傾向も、液のゲル化の徴候も無かった。
【0067】
[実施例13]
共重合体Aの作成例3によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例3によって得られた溶液10部、及びアセトン6部(溶媒全体の約10質量%)を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。本混合液を密栓つきガラス瓶に入れ室温で3ヶ月間保存した。本混合溶液は3ヵ月後も粘度上昇の傾向も、液のゲル化の徴候も無かった。
【0068】
[比較例1]
比較作成例1によって得られた共重合体の溶液100部に、架橋剤として3官能性ポリイソシアネート(コロネートHL、日本ポリウレタン)を0.5部添加し液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により皮膚用粘着剤シートを得た。
【0069】
[比較例2]
比較作成例2によって得られた共重合体の溶液100部に、架橋剤としてアルミニウムアセチルアセトネート0.5部をアセチルアセトンに溶解して添加し液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により皮膚用粘着剤シートを得た。
【0070】
[比較例3]
比較例1によって得られた混合液100部に、薬物としてオキシブチニン15部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により薬物含有皮膚用粘着剤シートを得た。
【0071】
[比較例4]
比較例2によって得られた混合液100部に、薬物としてツロブテロール10部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により薬物含有皮膚用粘着剤シートを得た。
【0072】
[比較例5]
比較例1によって得られた混合溶液を密栓つきガラス瓶に入れ室温で保存したところ2日後に溶液全体がゲル化して流動性を失い、塗工してシートを得ることは不可能であった。
【0073】
[比較例6]
比較作成例3によって得られた共重合体の溶液100部に、共重合体Bの作成例1によって得られた溶液3部、及び可塑剤としてパルミチン酸イソプロピル30部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により皮膚用粘着剤シートを得た。
【0074】
[比較例7]
共重合体Aの作成例2によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例1によって得られた溶液0.05部、及び可塑剤としてパルミチン酸イソプロピル30部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。得られた混合液を実施例1と同じ操作により皮膚用粘着剤シートを得た。
【0075】
[比較例8]
共重合体Aの作成例1によって得られた溶液100部に、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジドの1%水溶液を3部添加し、得られたものに可塑剤としてパルミチン酸イソプロピル30部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。その後の操作は実施例1と同様にして皮膚用粘着剤シートを得ようとしたが溶液の分離が起こり良好な塗工が不可能であり、以後の操作を中止した。
【0076】
[比較例9]
共重合体Bの作成例2で得られた共重合体Bの代わりにヘキサンジアミン0.5部を添加した以外は実施例8と同様にして薬物含有粘着剤シートを得た。
【0077】
[比較例10]
共重合体Aの作成例1によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例1によって得られた溶液3部、及びアセトン1部(溶媒全体の約1.4質量%)を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。本混合液を密栓つきガラス瓶に入れ室温保存した。本混合溶液は1週間後に粘度上昇しゲル化した。この結果から、アセトンの添加量が少なすぎる場合には長期保存ができないことが判明した。
【0078】
[比較例11]
共重合体Aの作成例3によって得られた溶液100部に、共重合体Bの作成例3によって得られた溶液3部を加えて液全体をディゾルバーにて均一に攪拌し、混合液を得た。本混合液を密栓つきガラス瓶に入れ室温保存した。本混合溶液は1日後に粘度上昇しゲル化した。この結果から、アセトン等を加えない場合には長期保存ができないことが判明した。
【0079】
得られた皮膚用貼付剤、経皮吸収製剤について、皮膚刺激性試験、糊残り性試験、剥離性試験を以下のように行い、結果を表1に示した。
[皮膚刺激性試験]
日本白色種のウサギ(4羽)の脱毛した背部に粘着剤シート(テープ製剤)の試験片(面積10cm)を貼付し、24時間後、これを剥離し、剥離直後及び剥離1時間後の皮膚の紅斑状態を目視で観察した。なお、本試験において浮腫及び痂皮の形成は認められなかった。紅斑の程度は下記の0〜4の5段階の判定基準で評価した。
0:紅斑なし、1:かろうじて識別できるごく軽度の紅斑、2:明らかな紅斑、
3:中程度の紅斑、4:深紅色の強い紅斑
評点の総和をウサギ数4で割った平均値を各々のテープ製剤の皮膚刺激性指数とした。
【0080】
[糊残り性試験]
上記皮膚刺激性試験の時、剥離直後の皮膚上の糊残りの有無を目視で観察した。評価基準は下記の通りである。
0:糊残りなし、 1:ごく軽度の糊残りあり、 2:広い糊残りあり
評点の総和をウサギ数4で割った平均値を各々のテープ製剤の糊残り指数とした。
[剥離性試験]
上記皮膚刺激性試験の時、剥離直前の試験テープ製剤の皮膚からの剥離状況の有無を目視で観察した。ウサギ皮膚に試験テープ製剤が全面的に張り付いていたものを剥離なしとした。評価基準は下記の通りである。
0:剥離なし、 1:ごく軽度の剥離あり、 2:広い剥離あり
評点の総和をウサギ数4で割った平均値を各々のテープ製剤の剥離性指数とした。
なお、比較例6、7、9においては貼付部位全面に糊残りしており、皮膚刺激性測定をしなかった。こられのサンプルにおいては架橋反応がほとんど進んでいなかったことが原因である。
【0081】
【表1】

【0082】
[In vitro経皮吸収試験]
実施例4、5及び比較例3、4において作成した試料を用いてラット皮膚透過試験を行った。拡散断面積は3.14cmのFranz型拡散セルを用いて試験を行った。透過膜としてはウイスター系雄性ラット腹部皮膚を剃毛して用い、レセプター溶液には、生理的食塩水+ポリエチレングリコール600(80:20、体積比)を用いた。ラット皮膚の角質側にサンプルを貼付し、その後一定時間ごとに100μlのレセプター溶液を採取しラット皮膚を拡散し、レセプターに移行する薬物の濃度を高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて測定した。
(HPLC測定条件)
カラム:ODS型逆相分配カラム。
オキシブチニンの移動相:リン酸バッファー(pH2.0)+アセトニトリル(58:42、体積比)
ツロブテロールの移動相:リン酸バッファー(pH2.0)+アセトニトリル(82:18、体積比)
オキシブチニンの検出:240nmの紫外光
ツロブテロールの検出:210nmの紫外光
【0083】
[In vitro経皮吸収試験結果]
得られた結果を図1(オキシブチニン)及び図2(ツロブテロール)に示す。実施例においては比較例に比べて明らかな薬物透過物量の増大が見られる。比較例においてはアクリル酸と薬物が相互作用して薬物の粘着剤からの放出が妨げられているからと思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分としジアセトンアクリルアミド3〜45質量%を必須構成成分として含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体A)100質量部と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とし側鎖に第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体B)0.1〜30質量部によって形成され
共重合体Bが、1分子鎖中2個以上の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を有し、
共重合体B中の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基は(メタ)アクリル酸エステルコモノマー5〜100分子鎖中に1個の割合で含まれている架橋型皮膚用粘着剤。
【請求項2】
共重合体Aに含まれるジアセトンアクリルアミドに由来するカルボニル基が、共重合体Bの側鎖に含まれる遊離の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基と脱水反応に基づく共有結合を形成して架橋を生じた請求項1に記載の架橋型皮膚用粘着剤。
【請求項3】
共重合体Bが、主たる構成成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、側鎖に第1級アミノ基を有する(メタ)アクリル系モノマーと共重合して得られるアクリル系共重合体である請求項1又は2に記載の架橋型皮膚用粘着剤。
【請求項4】
共重合体Bが、主たる構成成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、(メタ)アクリル酸と共重合させ、次いで得られた共重合体に含まれる遊離のカルボキシル基をイミン、ジアミン及び/又はジカルボン酸ジヒドラジドと反応させて得られるアクリル系共重合体である請求項1又は2に記載の架橋型皮膚用粘着剤。
【請求項5】
共重合体Bが、主たる構成成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、ジアセトンアクリルアミドと共重合させ、次いで得られた共重合体に含まれるカルボニル基をジアミン及び/又はジカルボン酸ジヒドラジドと反応させて得られるアクリル系共重合体である請求項1又は2に記載の架橋型皮膚用粘着剤。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の架橋型皮膚用粘着剤がシート状支持体上に形成されている架橋型皮膚用粘着剤シート。
【請求項7】
共重合体A100質量部に対して可塑剤25〜200質量部を含有する請求項に記載の架橋型皮膚用粘着剤シート。
【請求項8】
医療用または化粧用経皮性成分を含有する請求項又はに記載の架橋型皮膚用粘着剤シート。
【請求項9】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分としジアセトンアクリルアミド3〜45質量%を必須構成成分として含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体A)100質量部と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成成分とし側鎖に第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を含有し、遊離カルボキシル基を含有しないアクリル系共重合体(共重合体B)0.1〜30質量部を溶媒に溶解してなり、共重合体Bが、1分子鎖中2個以上の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基を有し、共重合体B中の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基は(メタ)アクリル酸エステルコモノマー5〜100分子鎖中に1個の割合で含まれている架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物。
【請求項10】
アセトン及び/又はブタノンを溶媒の全量に対して5.0質量%以上含有する溶媒に溶解してなる請求項に記載の架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物。
【請求項11】
請求項又は10記載の架橋型皮膚用粘着剤製造用組成物から溶媒を加熱蒸散させる架橋型皮膚用粘着剤の製造方法。
【請求項12】
共重合体Aに含まれるジアセトンアクリルアミドに由来するカルボニル基を、共重合体Bの側鎖に含まれる遊離の第1級アミノ基及び/又はカルボキシヒドラジド基と脱水反応に基づく共有結合を形成して架橋を生じる請求項11に記載の架橋型皮膚用粘着剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−149660(P2009−149660A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23068(P2009−23068)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【分割の表示】特願2005−114273(P2005−114273)の分割
【原出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000174622)ニプロパッチ株式会社 (31)
【出願人】(501296380)コスメディ製薬株式会社 (42)
【Fターム(参考)】