説明

染料による皮膚刺激緩和用の組成物

本発明は、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物を提供する。前記組成物は、染料による皮膚刺激の緩和、及び炎症の予防又は防止効果を有する。また、本発明は、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物を含む染毛剤組成物を提供する。前記染毛剤組成物は、染料による皮膚刺激及び炎症が減少する効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料(dye)による皮膚刺激を緩和する効果を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、若白髪及び白髪をカバーし、個性表現の欲求を満たすために、老若男女を問わず、多くの人々が染毛剤を使用している。このような染毛剤は、持続時間に応じ、次のようなタイプに分類することができる。
【0003】
第一に、一時的にカラーを出すためのもので、水洗いの後には、色が毛髪に残らないような一時的染毛剤(Temporary Color)がある。このような一時的染毛剤は中性に近く、カラースプレー、カラームース、カラーゲル、マスカラ等がこれに含まれる。
【0004】
第二に、多機能一体(all-in-one)型の染毛剤である半永久染毛剤(Semi‐permanent Color)が挙げられる。これは、アルカリカラーと酸性カラーにさらに分類することができる。酸性カラーは、永久染毛剤と同様に、過酸化水素を混合するが、ペルオキシドの濃度が薄いので、毛髪の損傷度が永久染毛剤よりは少ない。アルカリカラーは、ペルオキシドが全く混合されておらず、髪のキューティクルとコルテックスの損傷がなく、むしろ光沢のある保護膜を形成して、UV遮断と毛髪保護の役割を果たす。このような半永久染毛剤の持続期間は、2週間から4週間程度である。それらは、化学反応でないイオン結合により染色が可能なものであり、ヘアマニキュアが、これに含まれる。
【0005】
第三に、第1剤(染毛剤)と第2剤(酸化剤)で構成され、これらが組み合わされた際に、第1剤と第2剤との反応により、染色を可能にする染毛剤である、永久染毛剤(Permanent Color)が挙げられる。該永久染毛剤は、植物性染毛剤と急速性染毛剤、酸化染毛剤に更に区分することができる。現在、酸化染毛剤が最も多く使用されている。
【0006】
一般的に、酸化染毛剤は、酸化染料とアルカリ剤を含む。前記酸化染料としては、m‐アミノフェノール、p‐フェニレンジアミン、p‐アミノフェノール等の染料が使用される。このような酸化染料が毛髪に浸透して、毛髪の色を変化させる役割を果たす。前記アルカリ剤は、毛髪を膨潤させて、前記酸化染料を毛髪内に浸透させる役割を果たす。前記アルカリ剤の典型的な例は、モノエタノールアミンおよびアンモニア水を含む。第2剤の典型的な例は、過酸化水素を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第2003/0138468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、炭水化物又はその誘導体を活性(active)成分として含有する組成物が、染料による皮膚刺激を緩和し、及び染料による炎症を予防又は防止する効果を有することを見出した。この開示により、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する、染料による皮膚刺激の緩和、及び炎症の予防又は防止をするための組成物が導かれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一般的な側面においては、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する、染料による皮膚刺激緩和用の組成物が提供される。
【0010】
本発明の他の側面においては、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する、染料による皮膚炎症予防又は防止用の組成物が提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面においては、前記組成物を含む染毛剤用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る組成物は、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有し、染料による皮膚刺激を緩和する効果を有する。
【0013】
本発明に係る組成物は、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有し、染料による皮膚炎症を予防又は防止する効果を有する。
【0014】
本発明に係る染毛剤組成物は、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物を含み、染料による皮膚刺激及び炎症を予防又は防止する効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「皮膚」とは、動物の体表を覆う組織を意味する。その最広義の概念においては、それは、顔や体等の体表を覆う組織のみならず、頭皮や毛髪をカバーする。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
現在使用されている染毛剤製品は、ジアミン系有機染料、界面活性剤、香料、アンモニア水、過酸化水素水、チオグリコール酸アンモニウム、脂肪酸アルコール等を含む。しかしながら、前記のような配合成分のうち、ジアミン系有機染料は、皮膚刺激を生ずる。加えて、ジアミン系有機染料が皮膚細胞と結合して抗原として作用する場合、皮膚に発赤、発疹、掻痒、じんましん、炎症、水泡、接触性皮膚炎等といった副作用を生じさせる。したがって、皮膚が敏感な人がこれを使用した場合、接触性アレルギー性皮膚炎等により苦しむ可能性がある。頻繁なパーマや染色及びストレス等により敏感になった頭皮に染毛剤を使用する場合、ジアミン系有機染料が過量に吸収されて刺激をひどく感じる。ある場合においては、該ユーザーが、染色施術をまったく受け入れられなくなる可能性がある。現在、染毛施術を行うために、染毛剤と組み合わせて、刺激緩和剤が使用されている。しかしながら、染毛剤製品自体の低pHや染色施術に含まれる酸化反応等により、染色施術において使用される大部分の刺激緩和剤が、目的とする皮膚刺激緩和効果を得ることは困難である。また、刺激緩和剤を染毛剤製品と組合せて過量に使用する場合、染色反応自体に悪影響を与える。したがって、このような刺激緩和剤の使用には、制限がある。
【0018】
本発明の一つの側面において、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する、染料による皮膚への刺激緩和用、及び炎症予防又は防止用の組成物が提供される。
【0019】
前記炭水化物又はその誘導体は、一般に、炭素、水素、酸素を含み、一般式C(HO)を有し、分子あたり、1つ以上のアルコール基(‐OH)と、1つのアルデヒド基(‐CHO)又はケトン基(=CO)を含有している化合物を意味する。しかしながら、「炭水化物又はその誘導体」は、

酸素原子数が一般式よりも一つ少ないもの(デオキシリボース等)、窒素原子を更に含有するもの(ジアミノ糖等)、イオウ原子を更に含有するもの(コンドロイチン硫酸等)をも包含する。
【0020】
本発明の一態様において、前記炭水化物又はその誘導体は、単糖類、オリゴ糖類及び多糖類からなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0021】
前記用語「単糖類」は、炭水化物のユニットを意味し、多糖類(澱粉、セルロース等)を酸又は酵素により加水分解したときに生じる糖類を含む。より具体的には、本発明の一態様において、前記単糖類は、ラムノース(rhamnose)、グルコース(glucose)、ガラクトース(galactose)、フラクトース(fructose)又はキシロース(xylose)であってよい。
【0022】
前記ラムノースの分子式はC12である。天然に産出されるラムノースは、主にL型ラムノースであり、6‐デオキシマンノースともいう。
【0023】
グルコースは分子式はC12を有し、アルデヒド基を有する典型的な6炭糖単糖類である。グルコースは、下記化学式1によって表すことができる。本発明の一態様において、化学式1の「n」は1であってよい。
【0024】
【化1】

【0025】
ガラクトースは、アルデヒド基を有する6炭糖の一つであって、グルコースよりも甘味の少ない砂糖のタイプであり、分子式C12を有し、下記化学式2によって表すことができる。本発明の一態様において、化学式2の「n」は1であってよい。
【0026】
【化2】

【0027】
フラクトースは、6炭糖であるのみならず、ケトースであって、分子式C12を有し、下記化学式3によって表すことができる。本発明の一態様において、化学式3の「n」は1であってよい。
【0028】
【化3】

【0029】
キシロースは、アルデヒド基を有する5炭糖であって、アルドペントースに属し、分子式C10を有する。
【0030】
前記用語「オリゴ糖類」は、「オリゴメリック」糖ともいい、複数の単糖類のグリコシド結合によって形成された糖類である。該用語は、単糖2個からなる二糖類から、単糖10個からなる十糖類までの糖類をカバーする総称である。糖タンパク質や糖脂質のうち、その糖成分の大部分はオリゴ糖類に属する。より具体的には、本発明の一態様において、前記オリゴ糖類は、ラクトース(lactose)、スクロース(sucrose)又はマルトース(maltose)であってよい。本発明の他の一態様において、前記オリゴ糖類は、三糖類であるラフィノース(raffinose)、又は四糖類であるスタキオース(stachyose)を含むことができる。
【0031】
前記ラクトースは、乳糖ともいい、ガラクトースとグルコースからなる二糖類である。ラクトースは、分子式はC122211を有する。
【0032】
前記スクロースは、ショ糖(table sugar)ともいい、グルコースとフラクトースからなる二糖類である。
【0033】
前記マルトースは、麦芽糖ともいい、二つのグルコースからなる二糖類で、分子式122211を有する。
【0034】
前記用語「多糖類」は、単糖類2個以上がグリコシド結合を介してマクロ分子として形成された糖類をすべて包含する。数千から100万以上までの分子量を有することができる。本発明の一態様において、多糖類は、前記化学式1乃至3のnが2〜100,000である化合物を含む。
【0035】
本発明の一態様において、前記多糖類は、構成糖が一種であるホモ多糖類と、二種類以上であるヘテロ多糖類を含むことができる。具体的に、前記多糖類は、デンプン、グリコーゲン、セルロース、ヘミセルロース、又はペクチンを含む。より具体的に、前記多糖類は、グルコースのポリマーであるデキストラン(Dextran)若しくは澱粉(Starch)、キシロースのポリマーであるキシラン(Xylan)、フラクトースのポリマーであるイヌリン(inulin)若しくはレバン(levan)、又はガラクトースのポリマーであるガラクタン(Galactan)を含む。
【0036】
本発明の一態様に係る炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物は、染料による皮膚刺激をの緩和し、及び炎症を予防又は防止する効果を有する。本発明の他の一態様において、前記染料は、ジアミン系有機染料であってよい。
【0037】
本発明の他の一態様において、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物を含む染毛剤組成物が提供される。前記染毛剤組成物は、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物が、染料による皮膚刺激を緩和する効果、および炎症を予防又は防止する効果があるため、該染毛剤組成物は、既存の染毛剤組成物に比べて皮膚刺激及び炎症が減少する効果を示し得る。前記染料は、より具体的に、ジアミン系有機染料であってよい。
【0038】
本発明の一態様において、前記染毛剤組成物は、第1剤と第2剤とを含むことができる。第1剤の場合、粉末タイプ、液状タイプ、クリーム又はローションタイプ、ゲルタイプ等に剤形化することができるが、これらに限定されるものではない。本発明の他の一態様において、前記染毛剤組成物は、第1剤と第2剤が一つの組成物に一体化(integrated)された多機能一体型染毛剤組成物であってよい。前記多機能一体型染毛剤組成物は、粉末タイプ、液状タイプのクリーム又はローションタイプ、ゲルタイプ等に剤形化することができるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の一態様において、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物のうち、炭水化物又はその誘導体は、組成物全体の重量を基準に、0.1〜80重量%の量で存在することができる。本発明の他の一態様において、炭水化物又はその誘導体は、組成物全体の重量を基準に、0.1〜50重量%の量で存在することができる。本発明の他の一態様において、炭水化物又はその誘導体は、組成物全体の重量を基準に、0.1〜10重量%の量で存在することができる。炭水化物又はその誘導体が、0.1重量%よりも少ない量で存在する場合、充分な効果を与えることができない。炭水化物又はその誘導体が、80重量%よりも多い量で存在する場合、組成物の安定性に問題がある可能性がある。
【0040】
本発明の一態様において、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物を含む染毛剤組成物のうち、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物は、染毛剤組成物全体の重量を基準に、0.1〜10重量%の量で存在することができる。本発明の他の一態様において、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物は、染毛剤組成物全体の重量を基準に、0.1〜5重量%の量で存在することができる。本発明の他の一態様において、炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物は、染毛剤組成物全体の重量を基準に、0.1〜1重量%の量で存在することができる。炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物が0.1重量%よりも少ない量で存在する場合、充分な効果を与えることができない。炭水化物又はその誘導体が、80重量%よりも多い量で存在する場合、組成物の安定性に問題がある可能性がある。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および試験例を挙げつつ、本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。しかしながら、これらの実施例および試験例は、本発明の理解を助けるために、例示の目的でのみ提供されたものであるに過ぎず、開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0042】
[試験例1]
染料による皮膚刺激緩和の効果、及び炎症予防又は防止効果の評価
【0043】
染料による皮膚刺激緩和の効果、及び炎症予防又は防止の効果を評価するために、マウスを利用したマウス耳の膨潤(MEST)法を、以下のように行った。
【0044】
7週齢の試験用マウス(BALB/c)を入手して、10日間の検疫及び適応期間を置いた。その後、マウスの腹部部位の毛を除去し、染料の主成分、すなわち、3%パラフェニレンジアミン(PPD,para phenylene diamine)を、単糖類のグルコース(Glucose)、ガラクトース(Galactose)、フラクトース(Fructose);二糖類のマルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、スクロース(Sucrose)と組み合わせて、7日間、毎日、一日に3回ずつ適用した。また、対照群として、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒及び3%パラフェニレンジアミンをそれぞれ適用した。最後の適用から24時間経過後に、マウス耳の重さを測定した。耳の重さを測った後、ホルマリン(formalin)で固定し、病理組織検査としてヘマトキシリン&エオシン染色(H&E染色)した後、耳の厚さを測定した。このとき、耳の重さの測定は、各試験物質を塗布した試験用マウス(Balb/c)の耳を6mmパンチを用いて生検して重量を測定することにより行われた。耳の厚さの測定は、前記重量を測定した後、染色した試験用(Balb/c)マウスの耳を顕微鏡で鏡検して厚さを測定することにより、行われた。その結果を下記表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
前記結果から、パラフェニレンジアミンを炭水化物とともに適用した場合、パラフェニレンジアミンのみを適用した場合よりも、耳の重さと耳の厚さが有意に減少することを確認した。すなわち、これは、パラフェニレンジアミンにより引き起こされる皮膚刺激及び炎症による腫れ等が、炭水化物又はその誘導体により減少することを意味する。したがって、炭水化物又はその誘導体は、ジアミン系有機染料による皮膚刺激を緩和し、炎症を予防又は防止する効果があると見ることが理解できよう。異なる種類の炭水化物又はその誘導体を、組み合わせて使用することができる。
【0047】
以下、本発明による炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する組成物を含む染毛剤用組成物の剤形例について、より詳細に説明する。しかしながら、染毛剤用組成物は様々な剤形に応用可能であり、これらは、開示を限定しようと意図するものでなく、単に具体的に説明しようとするものである。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する、染料による皮膚刺激緩和用の組成物。
【請求項2】
炭水化物又はその誘導体を活性成分として含有する、染料による皮膚炎症予防又は防止用の組成物。
【請求項3】
前記炭水化物又はその誘導体が、単糖類、オリゴ糖類及び多糖類からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記単糖類が、ラムノース(rhamnose)、グルコース(glucose)、ガラクトース(galactose)、フラクトース(fructose)又はキシロース(xylose)を包含することを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記オリゴ糖類が、ラクトース(lactose)、スクロース(sucrose)又はマルトース(maltose)を包含することを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記多糖類が、グルコースのポリマーであるデキストラン(Dextran)若しくは澱粉(Starch);キシロースのポリマーであるキシラン(Xylan)、フラクトースのポリマーであるイヌリン(inulin)若しくはレバン(levan)、又はガラクトースのポリマーであるガラクタン(Galactan)を包含することを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記染料がジアミン系有機染料であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の組成物を含む染毛剤用組成物。

【公表番号】特表2013−511512(P2013−511512A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539811(P2012−539811)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008158
【国際公開番号】WO2011/062426
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(505118718)アモーレパシフィック コーポレイション (21)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【Fターム(参考)】