説明

染色システム

【課題】本発明の目的は、簡単に無駄なく所望の色に染色できる染色システムを提供することにある。
【解決手段】染色システム10は、被染色物を収容する染色用容器P、染色用容器Pを搬送経路に沿って搬送する搬送装置T、搬送経路の途中に設けられた種々の処理ステーションA,B,C,D,Eおよび染色の制御をおこなうための制御装置12を備える。制御装置12は、染色用容器Pに入れる被染色物の数を選択する選択手段14と、染色用容器Pの数を算出する演算手段16と、染色用容器Pに入れる被染色物の数および染色用の処理材料の量を決定する決定手段18として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被染色物を染色するための染色システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生地を染色するための染色システムが開発され、開示されている(特許文献1参照)。染色用容器の中に、生地、染液および助剤を入れる。染色用容器を回転させ、加熱をおこなうことによって染色をおこなう。さらに、中和剤、洗浄液、フィックス剤および柔軟剤によって、後処理をおこなう。その後、染色用容器から染色された生地を取り出す。染色用容器は元の位置に戻され、再び生地などが入れられて染色に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−249534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多品種少量生産をおこなう場合、大容量の染色容器を用いて染色処理を行うことは効率が悪い。そのため、小容量の染色用容器を複数用いて、必要枚数を小分けにして染色処理を行うことが考えられる。オペレーターが、染色をおこなう生地の種類と枚数から、染色用容器の数を選定する。また、生地の種類と枚数から、染液などの総量を計算して、各染色用容器に割り振りをおこなう。例えば231枚の生地を染色する場合、生地を20枚入れる染色用容器が11個、生地を11枚入れる染色用容器が1個になるように割り振る。染色用容器の合計は12である。オペレーターが20枚入れる染色用容器を考えたのは、人間の心理として計算しやすい数を選択するからである。
【0005】
しかし、選定された染色用容器の数が必ずしも最適になるとは限らない。染色用容器の数が最適になっているか否かをオペレーターが確認するのは手間である。1つの染色用容器に収容された生地が多すぎれば、染液が足りなくて染色ムラが発生し、所望の染色ができない。染液の量が多くなると、染液がこぼれたり、加熱に時間が掛かる。このように染色用容器の数が最適になっていないと、材料や時間の無駄が生じる。
【0006】
本発明の目的は、簡単に無駄なく所望の色に染色できる染色システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の染色システムは、被染色物および染色用の処理材料を収納する染色用容器と、染色用容器に収納された被染色物に対して染色処理をおこなう処理ステーションと、前記被染色物の大きさ、種類、数および染色内容によって、使用する染色用容器の数、各染色用容器に入れる被染色物の数および染色用の処理材料を求める制御装置とを備える。
【0008】
前記制御装置は、前記染色用容器に入る被染色物の最大数量と最少数量の間から、1つの染色用容器に入れる被染色物の数を選択する選択手段と、前記被染色物の全数量を選択された数で除算または該除算の余りを選択された数で除算する演算手段と、前記演算手段の結果から、染色用容器に入れる被染色物の数量と染色用の処理材料の量を決定する決定手段として機能する。前記演算手段は、除算の余りが0にならなかった場合に、選択手段が選択する数を変更して余りに対して除算し、余りが0になるまで、選択手段が選択する数を変更し、演算手段が除算を繰り返す。
【0009】
前記除算を所定回数繰り返して余りが0にならない場合に、選択手段が選択する数を変更し、演算手段が最初から除算をおこなう。
【0010】
前記選択手段が最初に選択する数が、染色用容器に入る被染色物の最大数量である。
【0011】
前記処理ステーションは、ピックアップヘッドによって被染色物を染色用容器に投入する被染色物投入処理ステーションを含む。前記決定手段は、除算の商がピックアップヘッドの数の倍数を選択し、前記除算の商がピックアップヘッドの数の倍数になるまで、選択手段と演算手段が数の選択と除算を繰り返す。
【0012】
前記選択手段が選択した数の差が所定範囲よりも大きければ、選択手段が選択する数を変更し、演算手段が除算を繰り返す。
【0013】
前記染色用容器を搬送経路に沿って搬送する搬送装置を備える。搬送経路の途中に処理ステーションが配置され、搬送装置によって染色用容器を処理ステーションへ搬送する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、オペレーターが計算や確認をおこなわなくても、染色用容器の数を最小にすることが可能であり、無駄を少なくすることができる。1つの染色用容器に対して最適な被染色物の量になり、染液も最適な量にできるため、染液がこぼれたり、染色ムラが発生せず、染色に材料や時間の無駄が発生しない。各染色用容器に収容される被染色物の量が所定範囲内になるため、染色用容器ごとに染色の度合いが異なることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の染色システムの構成を示す図である。
【図2】染色用容器の数と染色用容器ごとの被染色物の数を求めるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の染色システムについて図面を使用して説明する。
【0017】
図1に示す染色システム10は、被染色物を収容する染色用容器P、染色用容器Pを搬送経路に沿って搬送する搬送装置T、搬送経路の途中に設けられた種々の処理ステーションA,B,C,D,Eおよび染色の制御をおこなうための制御装置12を備える。
【0018】
染色用容器Pは、開口を有し、開口に蓋をすることによって密封可能な円筒形の容器である。形状は円筒形に限らず、密封及び回転可能な形状であればよい。開口から被染色物や染色用の処理材料を染色用容器Pの中に収容する。被染色物の種類によって、染色用容器Pに収容される被染色物の数に所定の幅があり、被染色物の数は最大数量と最小数量との間になるようにする。染色用容器Pは所定の位置に配置されており、使用後に再び所定の位置に戻される。
【0019】
被染色物は、衣類、生地または糸を含む。染色用の処理材料は、染液、助剤、中和剤、洗浄液、フィックス剤および柔軟剤などの染色をおこなうために必要な材料である。
【0020】
搬送装置Tは、ベルトコンベヤ、チェーンコンベヤ、ローラーコンベヤまたは搬送台車などである。処理ステーションA,B,C,D,Eの間に搬送装置Tが設置される。処理ステーションA,B,C,D,Eから次の処理ステーション(A,B,C,D,E)へ染色用容器Pを搬送する。
【0021】
処理ステーションA,B,C,D,Eは、搬送経路Tに複数備えられる。処理ステーションA,B,C,D,Eは、被染色物投入処理ステーションA、染液調合処理ステーションB、染色処理ステーションC、後処理ステーションDおよび回収洗浄処理ステーションEなどが備えられる。上記処理ステーションAからEの全て備える必要はなく、例えば被染色物投入処理ステーションA、染液調合処理ステーションBまでを備える構成でもよい。
【0022】
被染色物投入処理ステーションAは、ピックアップヘッドによって被染色物をピックアップして染色用容器Pに投入する装置である。
【0023】
染液調合処理ステーションBは、所望の色に染色するために複数の染液を調合して染色用容器Pに供給する装置である。染液を調合するときに、さらに染色を補助するための助剤を追加して調合する場合もある。複数の染液と助剤を貯留するタンクを有し、タンクから染色用容器Pにそれらを供給する。供給は、シリンダに染液または助剤を充填し、ピストンの押圧によって供給する。
【0024】
染色処理ステーションCは、染色用容器Pを回転させて被染色物を染色する装置である。染色用容器Pを回転させるとき、染色用容器Pを重力方向に対して所定角度傾斜させる。染色用容器P内の被染色物や染液がこぼれないように、染色用容器Pは蓋によって密封される。また、染色用容器Pを回転させるときに染色用容器Pの外部から内部を加熱する。
【0025】
後処理ステーションDは、中和処理、洗浄処理、フィックス処理、柔軟処理をおこなう後処理ステーションD1,D2,D3,D4が含まれる。図1でフィックス処理は2回に分けておこなっているが、フィックス処理の回数は任意であり、他の処理についても同様である。符号D1,D2,D3,D4は、後処理ステーションDの区別をおこなわない場合は符号Dとして説明する。
【0026】
回収洗浄処理ステーションEは、染色用容器Pの中から被染色物および染色用の処理材料を回収し、染色用容器Pを洗浄する装置である。
【0027】
搬送装置Tと処理ステーションA,B,C,D,Eには、所定の処理をおこなうためのプログラマブル・ロジック・コントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)が備えられている。PLCが、実際に所定の処理をおこなうための動力源などをシーケンス制御する。PLCは、同等のマイクロコンピュータであっても良い。
【0028】
搬送装置Tと各処理ステーションA,B,C,D,Eは、それぞれ複数備えられ、並列して配置されていても良い。同時に複数の染色用容器Pで同じ処理をおこなうことができる。
【0029】
制御装置12、搬送装置Tおよび各処理ステーションA,B,C,D,Eはそれぞれ通信装置を備える。制御装置12は搬送装置Tと各処理ステーションA,B,C,D,Eに通信接続されている。通信接続は、有線方式または無線方式のいずれであっても良い。制御装置12は、後述するような処理をおこなうハードウェア、ソフトウェアまたはその両方を備えたコンピュータを使用する。オペレーターが被染色物の種類、数および染色する色などを入力するためのキーボードやタッチパネルなどの入力装置および種々の情報を表示するモニターを備える。
【0030】
制御装置12から搬送装置Tと各処理ステーションA,B,C,D,Eにデータを送信し、搬送装置Tと各処理ステーションA,B,C,D,Eは、受信したデータにしたがって駆動する。駆動させるためのデータは、染液、助剤、中和剤、洗浄液、フィックス剤および柔軟剤の種類や量、各処理ステーションA,B,C,D,Eでの処理時間などの処理内容を含む。制御装置12は、被染色物の大きさ、種類、数および染色内容によって、使用する染色用容器Pの数、各染色用容器Pに入れる被染色物の数および染色用の処理材料を求める。
【0031】
制御装置12は、染色用容器Pに入れる被染色物の数を選択する選択手段14と、染色用容器Pの数を算出する演算手段16と、染色用容器Pに入れる被染色物の数および染色用の処理材料の量を決定する決定手段18として機能する。
【0032】
選択手段14は、1つの染色用容器Pに入れることができる被染色物の最大数量と最少数量の中から、染色用容器Pに入れる被染色物の数を選択する。後述するように演算手段16がおこなう除算で余りが出たとき、最大数量と最少数量の中から新たな数を選択する。選択手段14は、数を選択するたびに、異なる数を選択する。具体的には、最初に選択される数を最大数量にして、その後に最大数量から減らす。この場合、演算の結果は染色用容器Pの数を最小にできる可能性が高くなる。
【0033】
被染色物の最大数量と最少数量は、染色用容器Pの中に被染色物および染色用の処理材料を入れたときに、安全に処理がおこなえる上限と下限である。被染色物の種類によって最大数量と最少数量が異なる。また、染色用の処理材料の量は、被染色物の種類などで決定される。オペレーターが入力した被染色物の種類と全数量を使用して、選択手段14が最大数量と最少数量の間から自動的に数の選択をおこなう。被染色物の種類の違いは、1枚の重量、浴比および保水率の違いを含む。オペレーターは、これらの違いによって被染色物の種類を識別し、入力する。
【0034】
演算手段16は、被染色物の全数量を選択された数で除算する。商は正の整数として余りが出た場合、余りを新たに選択された数で除算する。余りが0になるまで、余りに対する除算を繰り返す。除算を繰り返す回数は、予め設定しておく。繰り返し回数の除算で余りが0にならない場合、数の選択と除算の結果をリセットし、選択手段14の数を変更して除算する。繰り返し回数は、2以上である。例えば、繰り返し回数を3にする。
【0035】
なお、除算の結果、余りが最小数量に満たない場合、その除算の商と余りは消去し、数の選択からやり直しする。数を選択するとき、余りを最小数量よりも大きくするために、先に選択した数よりも小さくする。
【0036】
決定手段18は、演算手段14の結果、余りが0になるまでに得られた商を染色用容器Pの数にする。除算するときの選択された数を1つの染色用容器Pに入れる被染色物の数にする。除算した際に余りが生じ、数の選択を複数回おこなった場合、選択された数とそのときの商を対応させて、被染色物の数と染色用容器Pの数にする。すなわち、数の選択を複数回行えば、被染色物の数の異なる染色用容器Pが生じる。
【0037】
決定手段18は、各染色用容器Pに入れる被染色物の枚数が求められれば、被染色物の重量、保水率、浴比から染色用の処理材料の量を決定する。浴比には、基準となる基準浴比と正常に染色をおこなう最大の最大浴比とが含まれる。例えば、1個の染色用容器Pに入れる染液の量は、被染色物1枚の重量、被染色物の保水率、1個の染色用容器Pへ入れる被染色物の枚数、基準浴比の全てをかけ算することによって求める。
【0038】
1個の染色用容器Pに入れられる染液の下限は、被染色物1枚の重量、被染色物の保水率、1個の染色用容器Pへ入れる被染色物の枚数、最大浴比の全てをかけ算した値以下になる。この値になるように、1個の染色用容器Pに収納される被染色物の最小枚数が決定される。
【0039】
制御装置12は、被染色物の種類ごとに1枚の重量、保水率、浴比を記憶手段に記憶しておく。染色をおこなうに当たって必要な染液、助剤、中和剤、洗浄液、フィックス剤および柔軟剤の量や処理方法を記憶しておく。指定された被染色物に対して指定された染色をおこなうためである。
【0040】
制御装置12は、使用する染色用容器Pの数、各染色用容器Pに入れる被染色物の数と染色用の処理材料の量が決定されれば、各処理ステーションA,B,C,D,Eにその内容を含むデータを送信する。各処理ステーションA,B,C,D,Eは、受信したデータに基づいて染色処理をおこなう。例えば、被染色物投入処理ステーションAは、データに含まれる枚数の被染色物を染色用容器Pに収容する。
【0041】
また、各処理ステーションA,B,C,D,Eから制御装置12に処理の状況などを含むデータを送信する。例えば、加熱温度やタンク内の染料の残量などである。制御装置12は、受信したデータに基づいて、染色処理の可否を判断したり、処理ステーションA,B,C,D,Eと搬送装置Tの駆動や停止を指示する。
【0042】
次に図2を参照しながら、染色用容器Pの数と染色用容器Pに収容する被染色物の数を求める処理の一例を説明する。被染色物の種類や染色される色については省略している。選択手段14が選択する数a1,a2,a3は、上述した最大数量から最少数量の範囲内である。
【0043】
オペレーターが被染色物の数としてYを入力したとする。選択手段14が最初に選択した数をa1としてYをa1で除算する(S1)。染色用容器Pの数を少なくするために、a1は最大数量にする。除算した結果の商をX1、余りをy1とすると(S2)、Y=a1×X1+y1となる。y1が0であれば数の選択と演算は終了する(S3)。
【0044】
y1が0でない場合(a1>y1>0)に選択手段14が新たに選択した数をa2として、y1をa2で除算する(S4)。y1を除算した結果の商をX2、余りをy2とすると(S5)、Y=(a1×X1)+(a2×X2)+y2となる。y2が0であれば数の選択と演算は終了する(S6)。
【0045】
y2が0でない場合(a2>y2>0)に選択手段14が新たに選択した数をa3として、y2をa3で除算する(S7)。y2を除算した結果の商をX3、余りをy3とすると(S8)、Y=(a1×X1)+(a2×X2)+(a3×X3)+y3となる。y3が0であれば数の選択と演算は終了する(S9)。
【0046】
例えば、演算の繰り返し回数が3の場合、y3が0でなければ、演算結果をリセットして再びa1の選択から開始する(S10)。y1、y2またはy3のいずれかが0になるまで繰り返す。例えば、y3が0になれば、X1の数の各染色用容器Pにa1の被染色物、X2の数の各染色用容器Pにa2の被染色物、およびX3の数の各染色用容器Pにa3の被染色物が収容される。
【0047】
余りが0にならず、演算結果をリセットして再びa1を選択するとき、先にa1として選択されなかった数である。本発明では、最初に選択したa1よりも1つ小さい数を選択する。最初に選択したa1が最大数量であるので、再びa1を選択したとき、最大数量よりも1つ小さい数となる。y3が0になるまで、a1を1つずつ小さくしながら繰り返す。染色用容器Pの数が最小にすることができる。
【0048】
また、最初にa1を最大数量にすれば、余りy1、y2を除算するために選択するa2、a3は最大数量よりも小さくなる。余りy1、y2が最小数量よりも大きい場合、選択手段はa2=y1、a3=y2のように余りを選択しても良い。演算を終了させることができる。
【0049】
例えば、従来技術で説明した場合と同じように被染色物が231枚である場合、Y=231になる。染色用容器Pに収容される被染色物の最大数量が24であり、最小数量が4であるとする。なお、被染色物の種類や染色される色については省略して説明する。
【0050】
選択手段14は、最初にa1として最大数量の24を選択する。商X1は9、余りy1は15になる。余りy1が15であるため、最大数量よりも小さく、最小数量よりも大きいため、次に選択手段14はa2として15を選択する。商X2は1、余りy2は0である。余りy2が0になったので演算は終了する。この場合、24枚の被染色物を入れる染色用容器Pが9個、15枚の被染色物を入れる染色用容器Pが1個になる。染色用容器Pの合計が10であり、従来技術で示したオペレーターの人間心理によって得られた12よりも少ない。
【0051】
以上のように、多品種少量生産であって同一処理のおこなわれる染色用容器Pの数が少なくなっても、染色用容器Pの数を最小にすることが可能であり、無駄を少なくすることができる。制御装置12が自動的に最適な染色用容器Pの数を演算するため、オペレーターの手間を省くことができる。1つの染色用容器Pに対して最適な被染色物の量になり、染液も最適な量にできるため、染液がこぼれたり、染色ムラが発生せず、染色に材料や時間の無駄が発生しない。
【0052】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。決定手段18は、各商が被染色物投入処理ステーションAに備えられたピックアップヘッドの数の倍数になった場合に、各商を染色用容器Pの数にしても良い。ピックアップヘッドごとに被染色物が積層されており、ピックアップヘッドごとに積層された被染色物をつまんで染色用容器Pへ収容する。積層された被染色物の数は同じであり、全てのピックアップヘッドが同じように駆動して、同時にそれぞれの染色用容器Pに被染色物を収容すれば、制御が簡単になる。被染色物の積層数量が同じであれば、同時に被染色物が無くなり、被染色物の補充も同時におこなうことができる。ピックアップヘッドの数が2であれば、各商は2の倍数にする。各商がピックアップヘッドの倍数にならなかった場合、数の選択と除算の結果をリセットし、選択手段12の数を変更して除算する。
【0053】
染色用容器Pごとに入れられる被染色物の数が大きく異なると、染色用容器Pごとに染色状態が異なる場合がある。そのために、決定手段18は、選択手段14が選択した数の差が一定範囲内でなければ、数の選択と除算の結果をリセットし、選択手段14の数を変更して除算する。各染色用容器Pに収容される被染色物の量が所定範囲内になるため、染色用容器Pごとに染色の度合いが異なることを防止できる。生地の種類や染色される色によって染色度合いの違いの認識に差が生じるため、生地の種類や染色される色によって数の差を適宜変更する。
【0054】
図2に示した処理によって選択された数と商を得ても、複数回図2の処理をおこない、複数種の選択された数と商を得ても良い。数を選択するときに、毎回異なる数になるようにする。選択された数が異なることによって染色用容器Pの数が異なる。決定手段18は染色用容器Pの数が最小になる選択された数と商の組み合わせを選択して、染色用容器Pの数と染色用容器Pごとに収容する被染色物の数とする。
【0055】
a1、a2およびa3を選択する際、y1、y2およびy3が0になるまでa1、a2およびa3の選択と演算を繰り返しても良い。図2のS1〜S2を複数回繰り返して、y1=0にならなければS4に進む。S4〜S6およびS7〜S9も同様である。繰り返し回数は、予め設定しておく。y3が0にならずに、最初から演算をやり直すことを防止できる。
【0056】
染色用容器Pの大きさ(容量)を一定として説明しているが、大きさの異なる複数の染色用容器Pを使用する染色システム10であっても良い。染色用容器Pの大きさおよび被染色物の種類によって染色用容器Pに収容される被染色物の最大数量と最少数量が異なる。選択手段14は、染色用容器Pの種類の選択をおこない、その上で上記の数の選択をおこなう。
【0057】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0058】
10:染色システム
12:制御装置
14:選択手段
16:演算手段
18:決定手段
A、B、C、D、D1、D2、D3、D4、E:処理ステーション
P:染色用容器
T:搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被染色物および染色用の処理材料を収納する染色用容器と、
前記染色用容器に収納された被染色物に対して染色処理をおこなう処理ステーションと、
前記被染色物の大きさ、種類、数および染色内容によって、使用する染色用容器の数、各染色用容器に入れる被染色物の数および染色用の処理材料を求める制御装置と、
を備えた染色システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記染色用容器に入る被染色物の最大数量と最少数量の間から、1つの染色用容器に入れる被染色物の数を選択する選択手段と、
染色される前記被染色物の全数量を選択された数で除算または該除算の余りを選択された数で除算する演算手段と、
前記選択手段の選択した数と演算手段の除算の結果から、染色用容器の数、各染色用容器に入れる被染色物の数量および染色用の処理材料の量を決定する決定手段と、
して機能する請求項1の染色システム。
【請求項3】
前記演算手段は、除算の余りが0にならなかった場合に、選択手段が選択する数を変更して余りに対して除算し、余りが0になるまで、選択手段が選択する数を変更し、演算手段が除算を繰り返す請求項2の染色システム。
【請求項4】
前記除算を所定回数繰り返して余りが0にならない場合に、選択手段が選択する数を変更し、演算手段が最初から除算をおこなう請求項2または3の染色システム。
【請求項5】
前記選択手段が最初に選択する数が、染色用容器に入る被染色物の最大数量である請求項2から4のいずれかの染色システム。
【請求項6】
前記選択手段が選択した数の差が所定範囲よりも大きければ、選択手段が選択する数を変更し、演算手段が最初から除算をおこなう請求項2から5のいずれかの染色システム。
【請求項7】
前記染色用容器を搬送経路に沿って搬送する搬送装置をさらに備える請求項1から6のいずれかの染色システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−60681(P2013−60681A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199199(P2011−199199)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】