説明

染色方法、及び染料蒸着装置

【課題】 気相転写染色方法の技術を用いながら量産性を上げることのできる染色方法、及び該方法に用いる染料蒸着装置を提供する。
【解決手段】 常圧下において昇華性染料と被染色物とを所定距離だけ離した状態で対向させ昇華性染料を加熱して被染色物に向けて昇華させるステップであって,被染色物の染色予定領域に対して昇華性染料の蒸着が部分的となるように定めるとともに昇華性染料が蒸着される部分的な領域が染色予定領域において経時的に変更するように染色予定領域における昇華性染料の昇華位置を相対的に移動させて染色予定領域に昇華性染料を付ける第1ステップと、第1ステップにて昇華性染料が付けられた被染色物の少なくとも一部の領域を加熱することによって,一部の領域上に付けられた昇華性染料を被染色物に定着させて染色を行う第2ステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は常圧下にて被染色物を染色する方法、及び該染色方法に用いる染料蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昇華性染料を含有する染色用インクを紙等の基体上に塗布(出力)させ、これを真空中でレンズ等の被染色物と非接触に置き、昇華性染料をレンズ側に飛ばして染色を行う方法(以下 気相転写染色方法と記す)による染色方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような気相転写染色方法は、従来、染色液に被染色物を所定時間だけ浸漬させて染色を行う方法では染色することのできなかった樹脂材料に対しても染色を行うことができ、廃液処理の問題や悪臭の存在する環境での染色作業が無いという利点がある。
【特許文献1】特開2001−215306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した気相転写染色法は真空中にて行う作業を必要としているため、量産性が良くないという問題があった。
【0004】
上記従来技術の問題点に鑑み、気相転写染色方法の技術を用いながら量産性を上げることのできる染色方法、及び該方法に用いる染料蒸着装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0006】
(1) 被染色物を染色する染色方法において、常圧下にて昇華性染料と被染色物とを所定距離だけ離した状態で対向させ前記昇華性染料を加熱して前記被染色物に向けて昇華させるステップであって,前記被染色物の染色予定領域に対して前記昇華性染料の蒸着が部分的となるように定めるとともに前記昇華性染料が蒸着される前記部分的な領域が前記染色予定領域において経時的に変更するように前記染色予定領域における前記昇華性染料の昇華位置を相対的に移動させて前記染色予定領域に前記昇華性染料を付ける第1ステップと、第1ステップにて前記昇華性染料が付けられた被染色物の少なくとも一部の領域を加熱することによって,前記一部の領域上に付けられた前記昇華性染料を前記被染色物に定着させて染色を行う第2ステップと、を有することを特徴とする。
(2) (1)の染色方法において、前記第1ステップにおける前記基体と被染色物との距離は0.1mm以上10mm以下であることを特徴とする。
(3) (2)の染色方法において、前記第1ステップでは前記昇華性染料が塗布された基体の塗布面をレーザ光により加熱することにより前記昇華性染料を前記被染色物に対して昇華させることを特徴とする。
(4) (3)の染色方法において、前記第1ステップでは前記被染色物と前記基体とを前記レーザ光に対して移動させることにより、前記染色予定領域における前記昇華性染料の昇華位置を移動させることを特徴とする。
(5) (4)の染色方法において、前記レーザ光は前記昇華性染料、及び/または基体に対する吸収波長を持つ光,若しくは赤外域の光であることを特徴とする。
(6) 染料を被染色物に蒸着させるための染料蒸着装置は、昇華性染料が塗布された基体と被染色物とを所定距離だけ離した状態で対向させて保持する保持手段と、前記基体に向けてレーザ光を照射するための照射手段と、該照射手段による前記レーザ光の照射に対して相対的に前記被染色物を移動させる移動手段と、を備え、前記レーザ光の照射中に前記移動手段によって前記被染色物を前記レーザ光に対して相対的に移動させることにより、前記レーザ光によって加熱され昇華する前記昇華性染料を前記被染色物の染色予定面全域に蒸着させることを特徴とする。
(7) (6)の染料蒸着装置において、前記移動手段は前記被染色物と基体とを一体的に移動させることにより、前記レーザ光の基体への照射位置、及び前記被染色物への前記昇華性染料の蒸着位置を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、気相転写染色方法の技術を用いながら、すべての工程を常圧下にて行うことができ量産性を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参考にしつつ説明する。図1は本実施形態に使用される染色システムの概略図を示した図である。
【0009】
染色システムは、被染色物10に向けて昇華性染料を昇華させ蒸着(転写)させるための気相転写機20(染料蒸着装置)と、昇華性染料が蒸着した被染色物10を加熱させ染色を行うための加熱手段となるオーブン200とを有する。なお、本実施形態では透明な樹脂からなるプレート(平板)を被染色物10として用いるものとしている。透明な樹脂としては、例えばポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アリル系樹脂、フマル酸系樹脂、スチレン系樹脂、ポリメチルアクリレート系樹脂、繊維系樹脂(例えば、セルロースプロピオネート)、さらにはチオウレタン系やチオエポキシ系等の高屈折率の材料等を用いることができる。
【0010】
気相転写機100は、レーザ光源20、レンズ21、ステージ22、載置台23、制御部24等から構成される。レーザ光源20はステージ22の上方に設置され、ステージ22に向けてレーザ光を照射して基体1に形成された昇華性染料の塗布領域1aを加熱し昇華させる役目を持つ。レンズ21はレーザ光源20とステージ22との間に置かれ、レーザ光源20から出射したレーザ光をステージ上に置かれた基体1に集光させる。なお、レーザ光源20及びレンズ21は、図示なき固定部材により固定保持されている。また、塗布領域1aに対してレーザ光を集光させて加熱する必要がなければレンズ21を用いる必要はない。さらにレンズ21に換えてビームエキスパンダレンズによりレーザ光の光径を広げた後、、シリンドリカルレンズによりラインフォーカスさせる構成としてもよい。
【0011】
レーザ光源から出射されるレーザ光は、昇華性染料を昇華させるために用いられるため、基体1及び昇華性染料を加熱するために赤外域の波長を有する光(レーザ光)か、昇華性染料及び基体1の少なくともどちらか一方に吸収波長を有する光(レーザ光)である。レーザ光源としては昇華性染料(または基体)を加熱し昇華性染料を昇華させることのできる波長、及び出力が得られる光源であれば特に限定されるものではなく、例えば半導体レーザ光源等の既知のレーザ光源を使用することが可能である。
【0012】
ステージ22は基体1を置くための載置面(上面)と、載置面の4隅に設けられた柱状の載置台23とを有する。載置台23上には被染色物10が染色予定面を下にして載せられ保持される。また、ステージ22は図示なき駆動機構によって水平面上(前後左右方向)を移動可能とされている。ステージ22の移動は、コントロール部24によって予め設定された移動速度、移動方向に基づき行われる。なお、コントロール部24は、レーザ光源20から出射されるレーザ光の出力を設定することもできる。
【0013】
ステージ22の水平方向への移動は、レーザ光源20から出射されるレーザ光の基体1上での照射位置、及び被染色物10における昇華性染料の蒸着位置を変えるために行われる。本実施形態ではステージ22を水平方向に移動させることにより、レーザ光に対する基体1及び被染色物10の位置を変更するものとしているが、これに限るものではない。レーザ光の照射位置が基体1及び被染色物10に対して相対的に変化すればよいため、レーザ光源20をステージ22に対して水平方向に移動させるような機構であってもよい。また、レーザ光源20から出射されたレーザ光を反射ミラーを介して基体1に向けて照射させる機構とし、反射ミラーの反射面の角度を変えることによりレーザ光の照射位置を基体1及び被染色物10に対して変更することもできる。
【0014】
載置台23は被染色物10の染色予定面とステージ22の載置面に置かれる基体1との間隔dを定めるものである。このような間隔dは好ましくは0.1mm以上10mm以下、さらに好ましくは0.5mm以上5mm以下である。間隔dが10mmを越えてしまうと、レーザー光による加熱によって大気中に昇華する昇華性染料の分散の影響が大きく、所望する染色濃度が得られなかったり、色ムラの原因となってしまう。
【0015】
基体1は、紙等の媒体に昇華性染料を含む染色用インクが図示なきインクジェットプリンタにより塗布(出力)され塗布領域1aが形成されたものである。インクジェットプリンタに用いられる染色用インクは、少なくとも赤、青、黄、の計3色が用いられる。染色用インク中に含有される染料は昇華性を有しつつ、昇華時の熱に耐えうる染料を使用する必要がある。染料としてはキノフタロン系昇華性染料またはアントラキノン系昇華性染料が好適に用いられる。なお、本実施形態ではインクジェットプリンタにより染色用インクを印刷用紙に出力させることにより塗布領域1aが形成された基体1を得るものとしているが、これに限るものではなく。レザープリンターや他の塗布手段を用いて昇華性染料が紙等の媒体に塗布することができるものであればよい。また、基体1に用いられる媒体は紙に限るものではなく、金属の薄板や薄いプラスチック板等の昇華性染料を塗布でき、熱により昇華性染料を基体に定着させることなく昇華させることのできる媒体であればよい。
【0016】
オーブン200は気相転写機100にて昇華性染料がついた被染色物10を所定温度で加熱して染料を定着、発色させるための加熱手段として用いられる。被染色物10の染色予定面には昇華性染料が蒸着することによって蒸着領域10aが形成されており、オーブン200内に備えられる載置台30上に被染色物10が載せられた状態で加熱される。なお、オーブン200は昇華性染料を直接、または間接的に加熱し、被染色物10に定着させることのできるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、熱風を送り被染色物10全体を加熱することのできるドライオーブンや、IRヒーター、ハロゲンランプを用いたオーブン等、既知の加熱手段を用いることができる。また、被染色物10の全体を一度に加熱するのではなく、加熱用のレーザ光を被染色物に対して走査することにより、昇華性染料がついた被染色物に対して所定領域内を部分的に加熱させ、加熱された部分(領域)につけられている昇華性染料のみを定着させることもできる。このような加熱方法を用いれば被染色物に所望する色にて記号、文字やデザイン等を染色により形成することができる。レーザ光を用いる場合には、被染色物、または昇華性染料に対して吸収波長を持つレーザ光を使用すればよい
なお、オーブン200による加熱は、被染色物10の耐熱温度以下で、できるだけ高温に設定された温度にオーブン内を加熱し、昇華性染料の定着に必要とされる予め定めておいた時間だけ行われる。例えば被染色物10の全体を一度に加熱する場合、実際の加熱温度は昇華性染料に対して50〜200℃程度、加熱時間は30分〜2時間程である
以上のような構成を備える染色システムにおいて、その動作を説明する。
【0017】
赤色、青色、黄色の各色の昇華性染料が含有してなる赤色インク,青色インク,黄色インクのカートリッジが装着された図示なきインクジェットプリンターを用いて、印刷紙の片面に少なくとも1色のインクを出力させ、所定の色合いの塗布領域1aが形成された基体1を得る。塗布領域1aの色合いの設定、塗布領域の設定、出力指示は、インクジェットプリンターに接続される汎用のPC(パーソナルコンピュータ)により行うものとしている。
【0018】
次に、被染色物10と、昇華性染料が含まれたインクにより形成された塗布領域1aを有する基体1とをステージ22にセットする。このとき被染色物10は載置台23上に載せられ、被染色物10の染色予定面と基体1の塗布領域1aとが所定の間隔をあけた状態で対向するように位置決め、固定される。
【0019】
ステージ22上に基体1及び被染色物10がセットされた後、コントロール部24はレーザ光源20から所定の出力にてレーザ光を照射させるとともに、レーザ光が基体1の塗布領域1a上を走査するように(言い換えれば、被染色物10の染色予定領域全体に昇華性染料を蒸着させるために)ステージ22の移動制御を行う。レーザ光源20から出射されたレーザ光は透明樹脂である被染色物を透過して、その下方に置かれる基体1に集光される。
【0020】
図2は基体1上に集光されるレーザ光の移動軌跡を示したものである。本実施の形態では、ステージ22をXY(前後左右)方向に移動させることにより、図2に示すように第1スキャン、折り返して第2スキャン、また折り返して第3スキャンを順次行っている。以降のスキャンも同様である。各スキャンは被染色物の染色予定面全域に昇華性染料が蒸着(つく)ように行われる。なお、ステージ22の移動速度(レーザ光のスキャン速度)は一律に決定されるものではないが、本件発明は所定の出力のレーザ光が塗布領域1aのある部分に照射されたときに、その部分における昇華性染料の昇華が生じるのに必要な加熱時間が得られるだけの速度が設定される。
【0021】
一般的に、大気中にて昇華性染料を加熱し昇華させる場合、昇華した染料が拡散しやすいため、昇華性染料が塗布された基体と被染色物との間隔が広いと被染色物に昇華性染料が好適につきにくい。一方、基体と被染色物との間隔を狭めれば、昇華した染料の分散の影響を抑えることができるが、昇華性染料が塗布された塗布領域を一度に加熱してしまうと、基体との間隔が狭い分だけ被染色物にも加熱温度が伝わってしまい、昇華した染料が被染色物に蒸着しにくくなるという問題が生じる。本発明は基体と被染色物との間隔を狭めた状態で、レーザ光によって基体上の塗布領域を部分的に加熱させ、その加熱領域(部分)が塗布領域上において経時的に変更するように、ステージを移動させている。これによって、被染色物に移る加熱温度を抑制し、昇華した昇華性染料が好適に被染色物に蒸着されるようにしている。
【0022】
次に、昇華性染料がつけられた被染色物10をオーブン200内の載置台30上に置き、所定温度、所定時間で被染色物を加熱して染料を被染色物に定着させ、染色を行う。
【0023】
以上の実施形態では、加熱用のレーザ光を被染色物を透過させて下方に置かれている基体に照射するものとしているが、これに限るものではない。被染色物の幅が狭いものであれば透過させることなく、レーザ光を斜め方向から基体に斜入射させて昇華性染料を加熱することも可能である。
【0024】
また、大気中にて基体が上、被染色物が下の条件にて昇華性染料を被染色物に蒸着させ、その後定着させる例を図3に示し、第2の実施形態として説明する。なお、上述した第1の実施形態と同機能を有する部材には同じ番号を付し詳細な説明は割愛する。
【0025】
図示するように、基体1はステージ22の上面に載置された被染色物11の上方にて所定間隔をあけた状態で図示なき保持部材によって固定保持されている。なお、保持部材はステージ22に取り付けられているため、ステージ22の前後左右方向の移動に伴って基体1及び被染色物11が同時に移動することとなる。また、塗布領域1aは被染色物11の染色予定面に対向されており、レーザ光は基体1の裏面(塗布領域1aの面と反対側の面)に照射される。基体1は第1の実施形態と同様の媒体が使用可能であるが、好ましくは基体1の裏面は黒色等の熱を吸収しやすい色にて形成されていることが好ましい。また、レーザ光源20は、基体1の裏面に集光し加熱するために赤外域の波長のレーザ光を出射する光源である。また被染色物11はレーザ光を透過させる必要がないため、透明樹脂ではなく、色付きの樹脂や繊維等を用いることができる。被染色物11に昇華性染料を蒸着した後は、上述したように加熱手段(オーブン200)を用いて染料の定着作業を行う。このように、第2の実施形態によれば、直接基体にレーザ光を照射することができるため、被染色物が透明である必要がなく、被染色物の選択を増やすことができる。
【0026】
なお、上述した実施形態では、基体上に形成された塗布領域を加熱することにより昇華性染料を昇華させ、基体と被染色物とをレーザ光に対して移動させるものとしているが、これに限るものではない。被染色物の染色予定領域に対して昇華性染料の蒸着が部分的となるようにするとともに、染料が蒸着する部分的な領域を経時的に変更するようにできればよい。より具体的には、例えば、昇華性染料をペレット状にしておき、レーザ光やその他の加熱手段(接触加熱でもよい)を用いてペレットを加熱して染料を昇華させる。その際、ペレットから昇華する染料の昇華領域が染色予定領域よりも小さくなるように、ペレットの大きさや、ペレットと被染色物との距離等を定め、被染色物の染色予定領域に部分的に蒸着させるようにする。そして、被染色物を染料の昇華領域(昇華位置)に対して相対的に移動させるようにする。このようにすれば、被染色物への加熱温度の移動が限定的となり、昇華した染料が被染色物に好適に蒸着される。
【0027】
次に具体的な実施例について説明する。
【0028】
<実施例1>
1.テスト条件
(1) 上述した第1の実施形態で使用した染色システムを用いて、大気中にてポリカーボネイト板(50mm×50mm×2mm)の染色を行った。基体を作成するためのプリンターはEPSON MJ-8000C、インクは赤色の昇華性染料を含むニデック製 TTS INK RED NK-1を用いて印刷用紙に赤色の塗布領域を形成し基体を得た。
(2) 基体とポリカーボネイト板との間隔は0.8mm、レーザ光照射中のステージの移動速度を1mm/sとし、レーザ光源として日亜化学工業製NDV7113E(波長405nm)を用いて出力0.1Wにて基体上にレーザ光を照射した。レーザ光照射中、ポリカーボネイト板の染色予定領域全体に昇華性染料が蒸着するようにステージの移動制御を行った。
(3) 昇華性染料が蒸着したポリカーボネイト板をオーブン(ヤマト科学製DKN612)内に入れ、130℃、1時間の加熱条件にて定着作業を行い、染色を完了した。
【0029】
2.結果
染色後のポリカーボネイト板目視にて確認し、板表面のダメージもなく所望する色濃度にて染色されていることが確認された。
【0030】
<実施例2>
1.テスト条件
(1) 実施例1と同様の条件にて赤色の塗布領域を持つ基体を得た。
(2) 基体とポリカーボネイト板との間隔は1mm、レーザ光照射中のステージの移動速度を6mm/sとし、レーザ光源としてイエナオプティクス社製TOLD-45-CPXF1-K(波長808nm)を用いて出力2.5Wにて基体上にレーザ光を照射した。実施例1と同様にレーザ光照射中、ポリカーボネイト板の染色予定領域全体に昇華性染料が蒸着するようにステージの移動制御を行った。
(3) 昇華性染料が蒸着したポリカーボネイト板をオーブン(ヤマト科学製DKN612)内に入れ、130℃、1時間の加熱条件にて定着作業を行い、染色を完了した。
【0031】
2.結果
染色後のポリカーボネイト板目視にて確認し、板表面のダメージもなく所望する色濃度にて染色されていることが確認された。
【0032】
<実施例3>
1.テスト条件
(1) 実施例1と同様の条件にて赤色の塗布領域を持つ基体を得た。
(2) 基体とポリカーボネイト板との間隔は3mm、ステージの移動速度を6mm/sとし、レーザ光源としてイエナオプティクス社製TOLD-45-CPXF1-K(波長808nm)を用いて出力5Wにて基体上にレーザ光を照射した。実施例1と同様にレーザ光照射中、ポリカーボネイト板の染色予定領域全体に昇華性染料が蒸着するようにステージの移動制御を行った。
(3) 昇華性染料が蒸着したポリカーボネイト板をオーブン(ヤマト科学製DKN612)内に入れ、130℃、1時間の加熱条件にて定着作業を行い、染色を完了した。
【0033】
2.結果
染色後のポリカーボネイト板目視にて確認し、板表面のダメージもなく所望する色濃度にて染色されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に使用される染色システムの概略図を示した図である。
【図2】ステージの移動によって基体に対して相対的に移動されるレーザ光の移動軌跡を示したものである。
【図3】第2の実施形態に使用される染色システムの概略図を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 基体
1a 塗布領域
10 被染色物
20 レーザ光源
22 ステージ
24 コントロール部
100 気相転写機
200 オーブン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常圧下において昇華性染料と被染色物とを所定距離だけ離した状態で対向させ前記昇華性染料を加熱して前記被染色物に向けて昇華させるステップであって,前記被染色物の染色予定領域に対して前記昇華性染料の蒸着が部分的となるように定めるとともに前記昇華性染料が蒸着される前記部分的な領域が前記染色予定領域において経時的に変更するように前記染色予定領域における前記昇華性染料の昇華位置を相対的に移動させて前記染色予定領域に前記昇華性染料を付ける第1ステップと、
第1ステップにて前記昇華性染料が付けられた被染色物の少なくとも一部の領域を加熱することによって,前記一部の領域上に付けられた前記昇華性染料を前記被染色物に定着させて染色を行う第2ステップと、
を有することを特徴とする染色方法。
【請求項2】
請求項1の染色方法において、前記第1ステップにおける前記基体と被染色物との距離は0.1mm以上10mm以下であることを特徴とする染色方法。
【請求項3】
請求項2の染色方法において、前記第1ステップでは前記昇華性染料が塗布された基体の塗布面をレーザ光により加熱することにより前記昇華性染料を前記被染色物に対して昇華させることを特徴とする染色方法。
【請求項4】
請求項3の染色方法において、前記第1ステップでは前記被染色物と前記基体とを前記レーザ光に対して移動させることにより、前記染色予定領域における前記昇華性染料の昇華位置を移動させることを特徴とする染色方法。
【請求項5】
請求項4の染色方法において、前記レーザ光は前記昇華性染料、及び/または基体に対する吸収波長を持つ光,若しくは赤外域の光であることを特徴とする染色方法。
【請求項6】
昇華性染料が塗布された基体と被染色物とを所定距離だけ離した状態で対向させて保持する保持手段と、前記基体に向けてレーザ光を照射するための照射手段と、該照射手段による前記レーザ光の照射に対して相対的に前記被染色物を移動させる移動手段と、を備え、前記レーザ光の照射中に前記移動手段によって前記被染色物を前記レーザ光に対して相対的に移動させることにより、前記レーザ光によって加熱され昇華する前記昇華性染料を前記被染色物の染色予定面全域に蒸着させることを特徴とする染料蒸着装置。
【請求項7】
請求項6の染料蒸着装置において、前記移動手段は前記被染色物と基体とを一体的に移動させることにより、前記レーザ光の基体への照射位置、及び前記被染色物への前記昇華性染料の蒸着位置を変えることを特徴とする染料蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31537(P2012−31537A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171833(P2010−171833)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】