説明

染色機及びその染液濃度検知方法

【課題】本発明は、染色槽内と同じ条件で染液濃度を検知することができる染色機及びその染液濃度検知方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】染色槽1内の染液を循環管路10内に引き込み、熱交換器11により温度調整をしながら染液を循環させる。分岐管路20では、戻し配管10dから一部の染液を分岐配管20aに分岐させて流入させる。流入した染液は染液貯留部21内に流れ込んで一旦貯留される。貯留された状態の染液は、内部に混入した気泡が染液貯留部21内の上部空間に逃げて除去されるようになる。染液貯留部21から流出した染液は濃度検知装置23を通過し、気泡の混入していない染液の濃度が検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の染色条件に基づいて、染色槽内の染液(染料、染色助剤及び水の混合されたもの)を循環させながら被染色材料を浸漬し染色を行う方法において、染液の濃度を検知する濃度検知装置からの濃度検知信号に基づいて染色条件制御を行う染色機及びその染液濃度検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維及び布帛類等の被染色材料の染色において、染色中の染液濃度をハロゲン光、色素レーザー、ガスレーザーの光源を用い、ガラスフィルタを介して連続的に光学密度(染液の濃度)を測定することにより繊維中の染料の染着量を推定算出して目標とする色相に染色する制御染色法が大きな関心を集めている。例えば、非特許文献1及び非特許文献2にも、その詳細を見ることができる。
【0003】
また、特許文献1には、液流処理型染色機を用いる染色において液循環部の途中にて染浴の温度を最初からその最高温度領域の一定温度に加熱して光透過率を測定し、演算処理して染色温度等を制御することにより、染色中の染液濃度の測定に基づき染料吸収状態を制御しながら染色する染色装置及び染色方法が記載されている。
【特許文献1】特許公開平5−98557号公報
【非特許文献1】昭和63年度 岐阜大学工学部電子情報工学科 研究生報告書色素レーザーによる光3原色発振に関するレポート
【非特許文献2】平成元年度 技術開発研究費 補助事業成果普及講習会テキスト(平成2年10月号)第II章 コンピュータ制御による染色機能の高度化に関する研究(愛知県尾張繊維技術センター)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
染色中の染液濃度を検知する場合、染色槽内の染液を濃度検知装置内を流通させて測定する際に、染色槽内と同じ条件で濃度検知を行なうことが必要である。しかしながら、実際に流通する染液には気泡の混入といった検知精度に悪影響を及ぼす要因が存在するため、十分な精度で染液濃度を検知することが困難であった。
【0005】
また、あらかじめ被染色材料が入っている染色槽内に染料・染色助剤を含む染液を投入添加する場合、特に酸性染料や直接染料を用いた場合には、被染色材料と染液が接触した時点から被染色材料への染料の吸着が始まってしまうため、染色槽内に被染色材料及び染液を投入した状態で染液濃度の検知を開始しても、被染色材料を投入する前の初期段階における染液の正確な濃度が測定できず、正確な染料吸着率が算出できない。特に淡色染色、中色染色時に正確な染料吸着率が算出できないと、所定の色に染めることが難しいという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載のように、染色において液循環部の途中にて染液の温度を最初からその最高温度領域の一定温度に加熱して光透過率を測定した後にこの液を染色槽内に戻すと、正確な染色槽内温度のコントロールが困難になり、特に酸性染料などでは、加熱された事により染着速度が速くなるため、急激な染着による染めムラ等の品質欠点となりやすいといった問題があった。
【0007】
また、特に分散染料では、最高温度へ加熱した事により、微分散した染料の凝集を招き、この染液を染色槽に戻すと、染色材料への凝集染料の付着による色汚れ、ターリング汚れ等の品質欠点となりやすいといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、染色槽内と同じ条件で染液濃度を検知することができる染色機及びその染液濃度検知方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る染色機は、被染色材料を浸漬して所定の染色条件に基づいて染色処理を行う染色槽と、前記染色槽内の染液を循環させる循環管路と、染液の濃度を検知する濃度検知装置とを備え、濃度検知装置からの濃度検知信号に基づいて染色条件制御を行う染色機において、前記循環管路を循環する染液を貯留する染液貯留部を備え、前記濃度検知装置は、前記染液貯留部から流出する染液が通過するように接続配置されていることを特徴とする。さらに、前記循環管路に両端部が接続された分岐管路を設け、前記染液貯留部は、前記分岐管路に設けられており、前記濃度検知装置は、前記染液貯留部の下流側に配置されて前記分岐管路に設けられていることを特徴とする。さらに、前記分岐管路は、一方の端部を前記循環管路の下流側に接続するとともに他方の端部を前記循環管路の上流側に接続しており、前記染液貯留部は、前記循環管路の下流側から前記分岐管路に流入する染液を貯留して底部から流出させるように接続されており、前記染液貯留部の底部から流出した染液が前記濃度検知装置を通過して前記分岐管路から前記循環管路の上流側に戻されることを特徴とする。さらに、前記循環管路には染液の温度を調整する熱交換器が接続されており、前記分岐管路は、その両端部が前記熱交換器の上流側及び下流側にそれぞれ接続されていることを特徴とする。さらに、染料を溶解させて染料溶解液を生成するとともに前記循環管路に接続して染料溶解液を供給する染料タンクを備え、前記染料タンク及び前記循環管路から染料溶解液を前記染液貯留部に流入させる管路を設け、前記濃度検知装置を通過した染料溶解液を前記染液貯留部に戻す帰還路を設けていることを特徴とする。さらに、前記帰還路を流通して前記濃度検知装置と前記染液貯留部との間を循環する染液を加温する加温装置を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る染液濃度検知方法は、染色槽内の染液を循環させながら被染色材料を浸漬し、染液の濃度を検知する濃度検知装置からの濃度検知信号に基づいて染色条件制御を行う染色機の染液濃度検知方法であって、循環させる染液を染液貯留部に一旦貯留し、染液貯留部から流出した染液が前記濃度検知装置を通過して染液の濃度検知を行なうことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る別の染液濃度検知方法は、染色槽内の染液を循環させながら被染色材料を浸漬し、染液の濃度を検知する濃度検知装置からの濃度検知信号に基づいて染色条件制御を行う染色機の染液濃度検知方法であって、循環させる染液とともに染料タンクにおいて染料を溶解させて生成された染料溶解液を前記染液貯留部に流入させて貯留後、希釈して染液を作成し、貯留された染液を前記濃度検知装置に循環させて染液の濃度検知を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のような構成を有することで、循環させる染液を染液貯留部に一旦貯留し、染液貯留部から流出した染液が前記濃度検知装置を流通することにより染液の濃度検知が行われる。すなわち、染色槽内を循環する染液に気泡が混入している場合でも染液貯留部に一旦染液を貯留することで染液内の気泡を除去することができ、気泡の影響を除去して染色槽内と同じ条件で染液の濃度検知を行うことが可能となる。
【0013】
また、染色前に、染料タンクにおいて染料を溶解させて生成された染料溶解液を染液貯留部に流入させて貯留し、貯留された染料溶解液を、染色槽に供給した際の染色槽内の染液濃度になるように希釈して、濃度検知装置に循環させて染液の濃度検知を行なうようにすれば、被染色材料を投入する前の、つまり染液と被染色材料が接触する前の初期段階の染液濃度を、被染色材料を投入する前に正確に検知することが可能となる。そのため、被染色材料を投入して染色開始直後から正確に染色条件制御を行うことができる。
【0014】
したがって、本発明により、染色前および染色中の染液の濃度を精度よく検知できるため、被染色材料の染料染着率を正確に算出でき、所定の色彩に染色制御することが可能となる。
【0015】
また、循環管路に両端部が接続された分岐管路を設け、染液貯留部を分岐管路に設けるとともに濃度検知装置を染液貯留部の下流側に配置して分岐管路に設けるようにすれば、染液の循環を妨げることなく、分岐管路に流入する染液を用いて濃度検知を正確に行なうことができる。また、分岐管路を循環管路から遮断して染液貯留部内の濃度検知を行なうようにすることもでき、染色前に染色条件制御に必要な染液濃度の検知を容易に行うことが可能となる。
【0016】
また、分岐管路の一方の端部を循環管路の下流側に接続するとともに他方の端部を循環管路の上流側に接続し、染液貯留部は、循環管路の下流側から分岐管路に流入する染液を貯留して底部から流出させるように接続し、染液貯留部の底部から流出した染液が濃度検知装置を通過して分岐管路から循環管路の上流側に戻されるようにすれば、循環管路から染色槽内に戻る下流側の染液が染液貯留部に貯留されるようになり、染色槽内の染液により近い状態の染液の濃度を正確に検知することが可能となる。そして、染液貯留部の底部から流出した染液を濃度検知装置に通過させれば、確実に気泡が除去された染液を濃度検知装置に提供することができる。
【0017】
また、循環管路に染液の温度を調整する熱交換器が接続されており、分岐管路の両端部を熱交換器の上流側及び下流側にそれぞれ接続するようにすれば、温度調整後の染液が分岐管路に流入して染液貯留部に貯留されるようになり、染色槽内に戻される温度状態の染液の濃度検知を正確に行うことができる。
【0018】
また、染料を溶解させて染料溶解液を生成するとともに循環管路に接続して染料溶解液を供給する染料タンクを備え、染料タンク及び循環管路から染料溶解液を染液貯留部に流入させる管路を設け、濃度検知装置を通過した染液を染液貯留部に戻す帰還路を設けることで、染色槽内に染料タンクから新たに染料を加える場合に、染色槽に供給した際の染色槽内の染液濃度になるように予め染液貯留部で希釈することにより、染色槽で実際に染色する染液と同じ状態の染液を実現することができ、その染液を濃度検知装置に通過させて染液貯留部に戻しながら濃度検知すれば、染色槽内に新たな染液を加えた場合の染液濃度を同じ条件で正確に検知することが可能となる。
【0019】
そして、帰還路を流通して濃度検知装置と染液貯留部との間を循環する染液を加温する加温装置を設けることで、染色槽内に染料を投入した際の染液と同じ条件の染液を染液貯留部に貯留して濃度検知装置を循環させながら温度変化による染液の濃度変化を予め検知することができるようになり、検知された染液濃度は染色槽内に染液を循環させながら濃度検知を行なう際の基準値として用いることでより正確な染色制御を行うことが可能となる。
【0020】
一般に染料の各温度における光の透過強度はほぼ一定であるが、一部の分散染料等では、光の透過強度が一定の値にならず、温度上昇に伴って透過強度の相対比率が20〜60%に拡がるようになる。これは、染料の分散度、可溶化度、凝集化度が温度によって変化するためである。こうした染料では、染色槽内の染液を昇温し染色を始める前に染液貯留部と濃度検知装置との間で染液を循環させながら実際に染液が流通した状態で、温度を130℃まで上昇させて各温度での濃度を検知し、この検知結果に基づいて染色処理中の各温度での染液の濃度を検知するようにすれば、温度上昇に伴って透過強度の相対比率が変化する染料においても正確な濃度検知を行なうことができ、均質で安定した染色条件制御を行うことが可能となる。
【0021】
なお、本発明に係る染色機は、特に浸染用染色機に好適である。浸染用染色機には、糸や布帛などを染液に浸して染料や繊維に適した温度や時間で染める、液流染色機、ジッガー染色機、ビーム染色、チーズ染色機、かせ染め染色機、パッケージ型染色機などがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明に係る染色機に関する概略構成図である。染色機は、染色槽1を備えており、染色槽1の内部には染液が滞留する滞留部2が設けられている。また、染色槽1には搬送管路3が接続されており、布地等の被染色材料Mが滞留部2から搬送管路3を通って循環しながら搬送されるようになっている。被染色材料Mは吐出部3aで染液を噴射され、被染色材料Mを搬送する場合には、染色槽1内に設けられたリール4に被染色材料Mを巻回し、リール4を図示せぬ駆動モータ等で回転駆動させて搬送される。被染色材料Mは滞留部2では染液に浸漬された状態で搬送されていき、染色処理が行われるようになっている。
【0024】
染色槽1の底部には吸入口5及び6が設けられており、吸入口5には配管10aが接続され、吸入口6には配管10bが接続されている。そして、2つの配管10a及び10bは主配管10cに合流するように接続されている。主配管10cには、循環ポンプP1及び熱交換器11が接続されており、熱交換器11には戻し配管10dが接続され、戻し配管10dを介して搬送管路3の吐出部3aに接続されている。
【0025】
そして、配管10a及び10b、主配管10c並びに戻し配管10dが循環管路に相当するもので、染色槽1の滞留部2に滞留する染液は循環ポンプP1により吸入口5及び6から吸引されて配管10a及び10b、主配管10cに流入し、循環ポンプP1を通過して熱交換器11から戻し配管10dに流出して染液が吐出部3aから吐出されるようになる。染液の吐出により搬送管路3内に液流が発生し、被染色材料Mを搬送管路3内に引き込むように作用する。そのため、被染色材料Mが液流とともに搬送されて滞留部2から搬送管路3内を連続して循環するようになる。
【0026】
熱交換器11は、循環管路内を流通する染液の温度を調整する装置で、高温蒸気又は冷水を用いて染液を加熱又は冷却する。
【0027】
戻し配管10dには、分岐配管20aが接続されており、分岐配管20aは染液貯留部21に接続されている。染液貯留部21は密閉タンクからなり、その上蓋21aを貫通するように分岐配管20aの開口端部が挿入固定されている。また、染液貯留部21の底部には、排出口21bが形成されており、排出口21bには配管20bが接続されている。配管20bには、ポンプP2、加温装置22及び濃度検知装置23が接続され、濃度検知装置23には戻し配管20cが接続され、戻し配管20cを介して循環管路の配管10bに接続されている。
【0028】
そして、分岐配管20a、染液貯留部21、配管20b及び戻し配管20cが分岐管路に相当するもので、循環管路の戻し配管10dから流入した染液は分岐配管20aを流通して染液貯留部21に一旦貯留された後底部の排出口21bから配管20bに流出して加温装置22及び濃度検知装置23を通過して戻し配管20cから循環管路の配管10bに戻されるようになっている。したがって、循環管路内の染液の流れの下流側及び上流側に分岐管路の両端部が接続されている。
【0029】
また、戻し配管20cには帰還配管20dが接続され、帰還配管20dは染液貯留部21の上蓋を貫通するように挿入固定されている。
【0030】
戻し配管10dには、別の分岐配管30a及び30bが接続されており、分岐配管30aは、染液貯留部21の上蓋を貫通するように挿入固定されている。分岐配管30bは、染料タンク31に接続されている。染料タンク31は、染料を溶解させて染料溶解液を生成し、この染料溶解液を染色槽へ供給するためのタンクで、底部には排出口31aが設けられている。そして、排出口31aには配管30cが接続されており、配管30cには、ポンプP3が接続されて分岐配管30aに合流するように接続されている。配管30cの合流位置から染液貯留部21側には流量計32が分岐配管30aに接続されている。
【0031】
また、配管30cには、ポンプP3に対して染料タンク31とは反対側において戻し配管30dが接続されており、戻し配管30dは循環管路の配管10bに接続されている(図1では、戻し配管30dのA−A間が繋がっている)。
【0032】
循環管路の配管10bには、配管40を介してpH調整装置41が接続されている。また、染色槽1には配管50を介して給水装置51が接続されている。
【0033】
染液貯留部21は、ステンレス等の金属製で1.0MPa程度の耐圧性を備えているものが好ましい。必要に応じて加温機能を備えるようにしてもよい。加温機能は、10分程度で5リットルの常温水を130℃まで昇温可能なものであれば、蒸気式又は電気式等の種々の方式を採用することができる。分散染料の場合には、密閉した状態で130℃まで昇温した場合でも減圧による気泡の発生を抑えることができ、染色槽内と同じ条件で分散染料を貯留することが可能となる。
【0034】
加温装置22は、染液貯留部21及び濃度検知装置23の間を染液が循環する場合に所定の温度条件を設定するために用いるもので、例えば、熱交換装置を用いて冷却水や蒸気により循環する染液の温度設定を行うことができる。
【0035】
濃度検知装置23は、例えば、染液を透過する光の強度に基づいて染液の濃度を検知する装置が用いられる。図5は、光が透過する検知部分の一例を示す正面図(図5(a))及び断面図(図5(b))である。濃度検知装置23の検知部分200は、3つの検知ブロック200a、200b及び200cからなり、3つの検知ブロックを連通して検知管路210が設けられている。検知管路210は、透明な管で、配管20cの一部を構成するもので配管20c内を流通する染液が連続して流れるようになっている。検知管路210には図示せぬ流量調整弁が設けられており、測色可能な流量に調整できるようになっている。検知ブロック数は上記に限定されるものでなく条件に応じ適宜設定できる。
【0036】
各検知ブロックには、一対の透明材料からなる透視部材201a〜201cが検知管路210を間に挟むように設けられている。透視部材の両側には発光素子及び受光素子が設置されており、発光素子から照射される光が透視部材を透過して受光素子で受光される。受光素子は受光した光を電気信号に変換し、受光した光強度が検知され、制御装置100に送信される。
【0037】
そして、各透視部材の対向する面側には、その中心部に光か透過する透過窓部202a〜202cが検知管路210に向かって突出するように形成されている。透過窓部202aの間の間隔が最も大きくなるように設定され、透過窓部202cの間の間隔がもっとも小さくなるように設定されて透過窓部202bの間の間隔が中間の間隔になるように設定されている。
【0038】
したがって、検知管路210に染液が流通すると、各透過窓部の間に存在する染液が透過窓部202aで最も厚く透過窓部202cでは最も薄くなるため、各透過窓部を透過する光の強度は透過窓部202aが最も弱く(最も暗くなる)、透過窓部202bから202cにいくに従い順次強くなる(明るくなる)。
【0039】
そのため、染液の濃度が高い場合には、光の透過率の大きい透過窓部202cを透過する光の強度から濃度を検知し、濃度が低下するに従い検知する透過窓部を透過率の小さい透過窓部202b及び202aに切り換えていくことで、染液濃度に合せて正確な濃度検知を行うことができる。
【0040】
制御装置100は、循環管路等に設置した温度センサ及びpHセンサ(図示せず)からの検知信号、濃度検知装置23から検知信号に基づいて熱交換器11、pH調整装置41、各ポンプ、各配管に設けられた開閉弁等を制御して染色条件制御を行う。制御結果等については表示パネル101に表示される。表示パネル101は、タッチパネルを用いて操作入力装置と兼用させてもよい。
【0041】
図2は、染色処理前に初期の染液濃度を測定する場合の染液の流路を示す説明図である。染料タンク31で染料を水に分散溶解した染料溶解液を染色槽1内に供給する前に染液貯留部21に投入して濃度検知装置23で濃度検知を行う。
【0042】
まず、開閉弁12を開いた状態で循環ポンプP1を駆動して循環管路に染色槽1内の染色助剤を含む水を循環させ、開閉弁33を開く。開閉弁33を開くことで分岐配管30aに染色助剤を含む水を流入させ、指定量を流量計32で測定し、染液貯留部21に供給する。指定量を供給し終わった時点で開閉弁33を閉じる。次に、開閉弁34を開いてポンプP3を駆動し、配管30cに染料タンク31内の染料溶解液を導入して分岐配管30aに合流させ指定量を流量計32で測定し、染液貯留部21に供給する。指定量を供給し終わった時点で開閉弁34を閉じる。染液貯留部21に供給する染色槽1内の染色助剤を含む水の量と染液貯留部21に供給する染料タンク31内の染料溶解液の量の割合を、染色槽1内の染色助剤を含む水の量と染料タンク31の染料溶解液の量の割合と同じになるように調整する。例えば、染色槽1内の染色助剤を含む水900リットルに対して染料溶解液を100リットル投入する場合には、分岐配管30aから染色助剤を含む水4.5リットル流入させて染液タンク31から染料溶解液0.5リットル導入させて染液貯留部21に合計5リットル貯留すれば、染色槽1内に染料溶解液を投入した場合と同一の状態を染液貯留部21内に条件設定することができる。
【0043】
そして、ポンプP2を常時5リットル/分以上の一定流量で駆動して染液貯留部21内の染液を吸入して配管20bから濃度検知装置23に通過させる。戻し配管20cに接続された帰還配管20dに設けられた開閉弁26を開き、濃度検知装置23を通過した染液を染液貯留部21に戻す。この操作により染料、染色助剤と水は均一に混合希釈された染液となる。そのため、染液貯留部21内の染液を濃度検知装置23に循環させて染液の濃度を検知することができる。
【0044】
濃度検知処理を行った後、開閉弁35を開いて染料タンク31内の染料溶解液を戻し配管30dに流入させ、戻し配管30dに設けた開閉弁36を開き配管10bに導入する。配管10bに導入された染料溶解液は循環管路内の染色助剤を含む水と混合して染色槽1内に流入していく。また、帰還配管20dの開閉弁26を閉じて戻し配管20cの開閉弁25を開き、染液貯留部21内の染液を濃度検知装置23に通過させて配管10bに戻す。
【0045】
以上のように、染料タンク31内の染料溶解液を染色槽1内に投入する前に投入後の染液の正確な濃度が検知されるので、以後の染色条件制御を正確に行うことができる。特に、染料の吸着が速い材料の場合にも正確に染料吸着率を算出しながら染色条件制御できる。
【0046】
図3は、染色処理に用いる染液の温度特性を予め測定する場合の染液の流路を示す説明図である。この場合には、まず図2の場合と同様に染液貯留部21に供給する染色槽1内の染色助剤を含む水の量と染液貯留部21に供給する染料タンク31内の染料溶解液の量の割合が、染色槽1内の染色助剤を含む水の量と染料タンク31の染料溶解液の量の割合と同じになるように染液貯留部21に貯留する。そして、染液を染料タンク31及び循環管路から染液貯留部21内に導入して貯留する。次に、ポンプP2を常時5リットル/分以上の一定流量で駆動しながら、染液貯留部21内の染液を配管20bから加温装置22及び濃度検知装置23を通過させ、開閉弁26を開き、開閉弁25を閉じて、染液を戻し配管20cから帰還配管20dを流通させて染液貯留部21に戻す。こうして染液を染液貯留部21と濃度検知装置23との間を循環させながら、加温装置22により加温して染液の温度を変化させていく。そして、所定温度毎に濃度検知を行ない、所定温度における濃度の基準値を予め測定して取得することができる。実際の染色条件制御での濃度検知では、測定した基準値に基づいて検知処理を行えば、より正確に染液の濃度検知を行なうことが可能となる。
【0047】
濃度検知を行なった染液は、開閉弁27を開いて、配管20eから廃棄する。また、濃度検知を行なう際に染液貯留部21に貯留する染液の量は、染色処理時の染液量の0.5%以下とすることが好ましい。0.5%より多いと、廃棄する染料が増えるため、その後の染色処理にて、被染色物が所定の色より薄く染色されるなど悪影響が生じるためである。
【0048】
図4は、循環管路内に染色槽1内の染液を循環させて染色処理を行う場合の染液の流路を示す説明図である。図4では、染液の流通する流路を実線で描画している。この場合には、循環管路の戻し配管10dに設けられた開閉弁12を開いて循環ポンプP1を駆動することで、染色槽1内の染液を循環管路内に引き込み、熱交換器11により温度調整をしながら戻し配管10dから染液を搬送管路3内に吐出して染液を循環させる。
【0049】
分岐管路では、分岐配管20aに設けられた開閉弁24及び戻し配管20cに設けられた開閉弁25を開いて、戻し配管10dから一部の染液を分岐配管20aに分岐させて流入させる。流入した染液は染液貯留部21内に流れ込んで一旦貯留される。貯留された状態の染液は、内部に混入した気泡が染液貯留部21内の上部空間に逃げて除去されるようになる。染液貯留部21には図示せぬ液面センサが設けられており、染液の流入により液面が所定の高さまで上昇すると開閉弁24を閉じて染液の供給を止める。これと同時にポンプP2を駆動して底部の排出口から染液を流出させる。次に液面が所定の下限の高さまで低下すると開閉弁24を開いて、染液が供給される。ポンプP2は、一度駆動が始まってからは、常時5リットル/分以上の一定流量で染液を濃度検知装置23を流通させ、戻し配管20cに設けられた開閉弁25を開いて配管10bに戻す。ポンプP2を常時駆動させるのは、ポンプの駆動、停止を繰り返すと、停止した際に配管内に気泡が混入しやすかったり、流量が変化すると染液濃度検知精度が悪くなったりするためである。また流量が5リットル/分以下になると濃度検知装置23に送出されるまでのタイムラグが長くなり、染色槽1内の染液の状態とずれてくる可能性があり、濃度検知の精度が悪くなる。
【0050】
染色処理中に染液貯留部21に貯留する染液の量は常時0.5〜1リットルに設定しておくことが好ましい。0.5リットル以下では貯留する量が少なく気泡の除去が不完全になるおそれがある。また、5リットル以上では貯留してから濃度検知装置に送出されるまでのタイムラグが長くなり、染色槽1内の染液の状態とずれてくる可能性があり、濃度検知の精度が悪くなる。
【0051】
染液貯留部21から流出した染液は濃度検知装置23を通過し、その際に染液の濃度が検知される。この場合、染液は、染液貯留部21内で気泡が除去され、さらに底部から流出するため、気泡が混入していない染色槽1内の染液と同じ状態で流出するようになる。また、熱交換器11よりも下流側に分岐管路を接続して染液を流入させるようにしているので、温度調整されて染色槽1内に流入する染液について濃度検知を行なうことができ、染色槽1内の染液と同一の温度条件で正確に濃度検知を行なうことが可能となる。
【0052】
濃度検知装置23を通過した染液は戻し配管20cを流通して開閉弁25を通り、配管10bに戻される。戻し配管20c内にはポンプP2により染液が圧送されるので、配管10bへ染液を流出させることができる。また、逆止弁を戻し配管20cに設けておけば、配管10bからの逆流入を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る染色機に関する概略構成図である。
【図2】染色処理前に初期の染液濃度を測定する場合の染液の流路を示す説明図である。
【図3】染色条件制御に用いる染液の温度特性を測定する場合の染液の流路を示す説明図である。
【図4】循環管路内に染色槽内の染液を循環させて染色処理を行う場合の染液の流路を示す説明図である。
【図5】光が透過する検知部分の一例を示す正面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 染色槽
2 滞留部
3 搬送管路
4 リール
5 吸入口
6 吸入口
11 熱交換器
12 開閉弁
20 分岐管路
21 染液貯留部
22 加温装置
23 濃度検知装置
24〜26 開閉弁
31 染料タンク
32 流量計
33〜36 開閉弁
41 pH調整装置
51 給水装置
100 制御装置
101 表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被染色材料を浸漬して所定の染色条件に基づいて染色処理を行う染色槽と、前記染色槽内の染液を循環させる循環管路と、染液の濃度を検知する濃度検知装置とを備え、濃度検知装置からの濃度検知信号に基づいて染色条件制御を行う染色機において、前記循環管路を循環する染液を貯留する染液貯留部を備え、前記濃度検知装置は、前記染液貯留部から流出する染液が通過するように接続配置されていることを特徴とする染色機。
【請求項2】
前記循環管路に両端部が接続された分岐管路を設け、前記染液貯留部は、前記分岐管路に設けられており、前記濃度検知装置は、前記染液貯留部の下流側に配置されて前記分岐管路に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の染色機。
【請求項3】
前記分岐管路は、一方の端部を前記循環管路の下流側に接続するとともに他方の端部を前記循環管路の上流側に接続しており、前記染液貯留部は、前記循環管路の下流側から前記分岐管路に流入する染液を貯留して底部から流出させるように接続されており、前記染液貯留部の底部から流出した染液が前記濃度検知装置を通過して前記分岐管路から前記循環管路の上流側に戻されることを特徴とする請求項2に記載の染色機。
【請求項4】
前記循環管路には染液の温度を調整する熱交換器が接続されており、前記分岐管路は、その両端部が前記熱交換器の上流側及び下流側にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の染色機。
【請求項5】
染料を溶解させて染料溶解液を生成するとともに前記循環管路に接続して染料溶解液を供給する染料タンクを備え、前記染料タンク及び前記循環管路から染料溶解液を前記染液貯留部に流入させる管路を設け、前記濃度検知装置を通過した染料溶解液を前記染液貯留部に戻す帰還路を設けていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の染色機。
【請求項6】
前記帰還路を流通して前記濃度検知装置と前記染液貯留部との間を循環する染液を加温する加温装置を設けたことを特徴とする請求項5に記載の染色機。
【請求項7】
染色槽内の染液を循環させながら被染色材料を浸漬し、染液の濃度を検知する濃度検知装置からの濃度検知信号に基づいて染色条件制御を行う染色機の染液濃度検知方法であって、循環させる染液を染液貯留部に一旦貯留し、染液貯留部から流出した染液が前記濃度検知装置を通過して染液の濃度検知を行なうことを特徴とする染液濃度検知方法。
【請求項8】
染色槽内の染液を循環させながら被染色材料を浸漬し、染液の濃度を検知する濃度検知装置からの濃度検知信号に基づいて染色条件制御を行う染色機の染液濃度検知方法であって、循環させる染液とともに染料タンクにおいて染料を溶解させて生成された染料溶解液を前記染液貯留部に流入させて貯留後、希釈して染液を作成し、貯留された染液を前記濃度検知装置に循環させて染液の濃度検知を行なうことを特徴とする染液濃度検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−203568(P2009−203568A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45107(P2008−45107)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【出願人】(592037125)セーレン電子株式会社 (5)
【Fターム(参考)】