説明

柔軟性、耐摩耗性、ヒートシール性に優れた長繊維不織布

【課題】柔軟性、耐磨耗性、形態保持性、及びヒートシール性に優れた、使い捨てカイロ用基布に好適な長繊維不織布を提供する。
【解決手段】ポリブチレンテレフタレートを95重量%以上含有し、複屈折率が0.100〜0.125である長繊維からなる不織布において、縦方向の目付当りの5%伸張時応力が、22℃雰囲気では、0.5〜1.1N/50mm(g/m)、乾熱120℃雰囲気では、0.10〜0.40N/50mm(g/m)、縦方向の22℃雰囲気での目付当り破断強力が1.1〜3.0N/50mm(g/m)で、交絡処理していないことを特徴とする長繊維不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性、耐摩耗性、ヒートシール性に優れた、使い捨てカイロ用基布に好適な長繊維不織布に関する。更に詳しくは、カイロ用表皮基布がフイルムラミネート加工を省略してもヒートシール加工が可能な長繊維不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てカイロは、一般的に空気に曝すことで発熱する組成物を利用しており、製品寿命等は包材の通気性の影響を強く受けるため、通気性を制御し易い有孔フィルム、微孔フィルム等が包材として用いられている。しかしながら、これらのフイルムはヒートシール性は満たされるが、柔軟性に乏しく、ゴワツキ感があり、衣服内で用いることが多い使い捨てカイロにおいては、使用快適性に問題があり、同時に両機能を満たすカイロ用被覆材は提案されていない。
【0003】
快適性の問題を解消するために、例えば特許文献1、2では、使い捨てカイロ用包材として、フィルム特有の貼りついた触感、ゴワゴワする肌触り等を防ぎ、布的触感を持たせると共に、包材層の裂けにくさを付与する狙いとしてフイルムに不織布をラミネート加工したものが提案されている。しかしながら、従来の不織布を用いた場合は、包材の裂け難さと毛羽立ちの少なさを配慮すると、硬くなってゴワゴワ感が増し、逆に繊維触感を持たせ柔軟性を保持させると、毛羽立ちや形態保持性が悪くなる問題があった。
【0004】
かかる問題を解消する方法として、例えば特許文献3では、エンボス加工により凹凸を付与した不織布とラミネートフィルムとの接合を調整して肌との接着面の柔軟性を改良する方法が提案されている。しかしながら、かかる方法においても、不織布の柔軟性を改良する検討がなされておらず、ラミネートにより不織布の非接合部をラミネートフィルムと主体的に接合させるので、不織布の柔らかさが拘束されて不織布の柔軟性を充分生かせない問題があった。
【0005】
また、特許文献4では、不織布の厚みと見掛密度を限定して温熱機能を改良する方法が提案されている。しかしながら、かかる方法は、厚みで発熱体からの初期の熱移動を調整するのみであり、不織布の柔軟性やヒートシール性、形態保持性を向上させる検討がなされておらず、使い捨てカイロとして実用上の不具合が生じやすい。
【0006】
ラミネート性の改良方法として、例えば特許文献5では、不織布片面の繊維表面に低融点樹脂皮膜を塗布する方法が提案されている。この方法は、煩雑なコーティング工程を加える必要があり、コストアップが不可避である。また、不織布自身の柔軟性とヒートシール性及び耐熱性の問題点も解決されていない。
【0007】
また、ラミネート性向上による形態保持性の改良方法として、例えば特許文献6〜8では、熱接着成分を繊維化してラミネートする方法が提案されている。これらの方法は、低融点成分を繊維化しているので、低温でのラミネートは可能だが、耐熱性に劣る問題があった。
【0008】
同様に、特許文献9では、低融点繊維不織布と低融点フイルムを用いた低温シール性等に優れるラミネート不織布が提案されている。この方法では、低温シール性は良くなるが、不織布の耐熱性が不充分な問題が残る。
【0009】
柔軟性を改良する方法として、例えば特許文献10、11では、不織布を構成する繊維に扁平断面繊維を用いる方法が提案されている。これらの方法では、柔軟性向上以外の利点として、扁平断面繊維を用いるので、不織布の平滑性が向上して印刷性が改良されることと、厚みが薄くなり伝熱性が良くなる効果が開示されている。確かに、扁平断面繊維を用いると、断面二次モーメントの低い方向では曲げ剛性が低下するが、断面二次モーメントの高い方向では剛性が著しく高くなり、全方向の柔軟性を付与することは困難である。更に、フラット化により厚みに由来する柔らかさは付与できなくなる。従って、ペーパーライクな接触感となり柔らかな風合いを付与できない問題があった。また、ヒートシール性は、フィルムラミネートで行うので、不織布のヒートシール性は改良されていない。
【0010】
不織布の伝熱特性を利用する方法として、例えば、特許文献12では、不織布の断熱性を高めて、発熱体の発熱を有効に利用する方法が提案され、特許文献13では、特許文献12と逆に不織布の断熱性を低下させて熱損失を低減する方法が提案されている。しかしながら、断熱性が良すぎると、発熱体の発熱を伝達し難くなり温まり難く、断熱性が悪すぎると発熱体の発熱を制御し難くなり熱すぎる問題が発生する。即ち、不織布に対して適度の伝熱効率の付与が必要であるが、これらの方法は、その範囲が無視されており、快適性の配慮に欠けるものである。
【0011】
不織布の柔軟性を向上させる方法として、例えば特許文献14では、伸縮性を持つポリトリメチレンテレフタレートを用いて、ソフトな風合いを付与する方法が提案され、特許文献15では、ポリブチレンテレフタレートに非晶性ポリエステルをブレンドして、素材のモジュラスを低減させ、柔らかさとヒートシール性を付与する方法が提案されている。これらの方法では、柔軟性は向上するが、繊維が柔らかなため、不織布強度が弱く破れやすい問題が残る。また、不織布のヒートシール性は改良されておらず、フィルムラミネートが開示されている。
【0012】
上述のように、従来の使い捨てカイロ用包材の改良では、柔軟性、耐磨耗性、及び形態保持性、不織布のヒートシール性を全て満足したものが得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開昭51−23769号公報
【特許文献2】実開昭55−59616号公報
【特許文献3】特開平2−297362号公報
【特許文献4】特開平3−1856号公報
【特許文献5】特開平9−300547号公報
【特許文献6】特開平8−131472号公報
【特許文献7】特開平10−314208号公報
【特許文献8】特開平10−328224号公報
【特許文献9】特開平11−56894号公報
【特許文献10】特開2004−24748号公報
【特許文献11】特開2004−24749号公報
【特許文献12】特開2004−41299号公報
【特許文献13】特開2004−42300号公報
【特許文献14】特開平11−89869号公報
【特許文献15】特開2007−105163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、柔軟性、耐磨耗性、及び形態保持性に優れ、更には、不織布のみのヒートシール性にも優れた、使い捨てカイロ用基布に好適な長繊維不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。即ち、本発明は、以下の構成からなるものである。
1.ポリブチレンテレフタレートを95重量%以上含有し、複屈折率が0.100〜0.125である長繊維からなる不織布において、縦方向の目付当りの5%伸張時応力が、22℃雰囲気では、0.5〜1.1N/50mm(g/m)、乾熱120℃雰囲気では、0.10〜0.40N/50mm(g/m)、縦方向の22℃雰囲気での目付当り破断強力が1.1〜3.0N/50mm(g/m)で、交絡処理していないことを特徴とする長繊維不織布。
2.不織布の剛軟度が30〜70mmであり、エンボス加工されたことを特徴とする上記1に記載の長繊維不織布。
3.ポリブチレンテレフタレート(A成分)に対して、A成分と非相溶でありかつ120〜160℃のガラス転移点温度を有する熱可塑性ポリスチレン系共重合体(B成分)を0.05〜4.0重量%混合して得られるポリエステルからなる長繊維で構成されたことを特徴とする上記1又は2に記載の長繊維不織布。
4.ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が0.8以上である請求項1〜3のいずれかに記載の長繊維不織布。
5.ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が0.8〜1.2である上記4に記載の長繊維不織布。
6.カイロ用基布として上記1〜5のいずれかに記載の長繊維不織布を用いたことを特徴とするカイロ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の長繊維不織布は、柔軟性、耐磨耗性、形態維持に充分な耐久性を維持できる力学特性を保持して、加熱時の変形が容易なためヒートシール性にも優れた不織布である。従って、本発明の長繊維不織布は、特に使い捨てカイロ用基布にフィルムラミネートを省略しても使用できるため、、柔軟な風合いを損なわず、カイロが製造可能となり、性能、コストダウンにも寄与でき、極めて有用なカイロ用基布用長繊維不織布である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の長繊維不織布を詳述する。
本発明の長繊維不織布は、ポリブチレンテレフタレートを95重量%以上含有するポリエステル繊維からなるものである。
本発明におけるポリブチレンテレフタレートは、耐熱性を維持して、低モジュラス化による柔軟性を付与するためのものであり、汎用性の高い安価な素材である。
本発明におけるポリブチレンテレフタレートの固有粘度は、0.8以上が好ましい。固有粘度が0.8未満では、A成分と非相溶でありかつ120〜160℃のガラス転移点温度を有する熱可塑性ポリスチレン系共重合体(B成分)を含有する場合、糸切れが顕著で不織布化できなくなる場合があり、又、不織布化できても、タフネスさが劣り脆くなるので、伸度が低下して好ましくない。固有粘度が1.2を越えると、配向結晶化を生じる紡糸速度が低下して、高伸度を保持するためには、紡糸速度を低く設定する必要から、生産性が低下する問題がある。本発明のより好ましい固有粘度は0.8〜1.2、最も好ましくは、0.9〜1.1である。なお、本発明では、固有粘度は不織布を構成する繊維の固有粘度である。
本発明では、ポリブチレンテレフタレート成分に対して特性を低下させない範囲で、必要に応じて、共重合成分を含む各種の樹脂や、抗酸化剤、耐光剤、着色剤、抗菌剤、難燃剤、消臭剤などの改質剤を添加することができる。
【0018】
本発明の不織布を構成する繊維は、長繊維である。短繊維不織布では、繊維端が毛羽立ちの原因になるので好ましくない。長繊維では、繊維が切断しない限り毛羽立ちが発生しないので、本発明では長繊維からなる不織布を使用する。長繊維不織布としては、スパンボンド不織布、長繊維トウ不織布などが挙げられるが、スパンボンド不織布が、高速紡糸による力学特性の制御が容易なことから好ましい。
【0019】
本発明の不織布を構成する長繊維の複屈折率は、0.100〜0.125である。複屈折率が0.100未満では、力学特性が劣り、耐磨耗性や形態維持性能が劣るので好ましくない。0.125を越えると、剛直性が増加し、ヒートシール性も劣るようになり好ましくない。本発明の複屈折率は、より好ましくは0.110〜0.120である。
【0020】
本発明の不織布の縦方向の22℃雰囲気での目付当りの5%伸張時応力は、0.5〜1.1N/50mm(g/m)である。0.5N/50mm(g/m)未満では、塑性変形しやすくなり、取扱性や形態保持機能が劣るので好ましくない。1.1N/50mm(g/m)を越えると、柔軟性が劣り好ましくない。本発明の好ましい22℃雰囲気での5%伸張時応力は、0.6〜1.0N/50mm(g/m)であり、より好ましくは0.65〜0.85N/50mm(g/m)である。なお、本発明では、取扱性の観点から、不織布の縦方向の特性を特に限定しているが、横方向の5%伸張時応力に関しては、好ましくは縦方向の0.5〜1.0倍の範囲である。
【0021】
本発明の不織布の縦方向の乾熱120℃雰囲気での目付当りの5%伸張時応力は、0.10〜0.40N/50mm(g/m)である。0.10N/50mm(g/m)未満では、熱加工時に変形しやすくなり、加工性が劣る問題を生じる場合がある。0.40N/50mm(g/m)を越えると、熱変形し難くなり、ヒートシール性が劣るので好ましくない。本発明の好ましい乾熱120℃雰囲気での目付当りの5%伸張時応力は、0.15〜0.35N/50mm(g/m)であり、より好ましくは0.20〜0.30N/50mm(g/m)である。
【0022】
本発明の不織布の縦方向の22℃雰囲気での目付当り破断強力は、1.1〜3.0N/50mm(g/m)である。1.1N/50mm(g/m)未満では、着用時や取扱時の破断や破れを発生しやすくなり好ましくない。3.0N/50mm(g/m)を越えると剛直性が増加して柔軟性が低下するので好ましくない。本発明での好ましい22℃雰囲気での目付当り破断強力は、1.3〜2.8N/50mm(g/m)であり、より好ましくは、1.6〜2.7N/50mm(g/m)である。
【0023】
本発明の不織布は、不織布を構成する繊維を損傷させないため、交絡処理していない不織布に限定される。ここで交絡処理とは、ニードルパンチ交絡処理、水流交絡処理などの処理により、構成繊維が不織布の断面方向に絡み合いを生じる処理を言う。交絡処理を行うと、長繊維を用いても繊維が切断され、毛羽立ちを生じやすくなるので好ましくない。本発明でいう交絡処理しない不織布とは、エンボス加工、熱接着加工などの圧着加工で不織布を固定された不織布を言う。本発明では、交絡処理されていない不織布であれば特には限定されないが、圧着面積が全面に及ぶとフィルム化してしまい柔軟性が低下するので好ましくない。フィルム化させない圧着方法としては、エンボス加工が望ましい。エンボス加工における好ましい圧着面積率は、柔軟性と表面平滑性と耐磨耗性を同時に満足できる30%未満であり、特に好ましくは8〜25%である。本発明のエンボス加工文様は、特には制限されないが、好ましくは柔軟性が保持できる凸横楕円ドットや凸格子柄ドットなどが挙げられる。
【0024】
本発明の不織布は、柔軟性の指標となるJIS L1096による剛軟性A法に準拠した剛軟度が、好ましくは30〜70mmである。剛軟度が30mm未満では、柔らかすぎて取扱性に問題が出る場合があり、70mmを越えると、硬い風合いを感じるので、好ましくない場合がある。本発明でのより好ましい剛軟度は35〜65mmであり、更に好ましくは40〜60mmである。
【0025】
本発明の不織布を構成する長繊維の複屈折率を、ポリブチレンテレフタレートのみを高速紡糸域(紡糸速度が3500m/分以上)で紡糸することにより、0.100〜0.125の範囲とすることは困難である。高速紡糸域で複屈折率を0.100〜0.125にするためには、ポリブチレンテレフタレート(A成分)に対してポリブチレンテレフタレートと非相溶で、且つ、ガラス転移点温度が120〜160℃の非晶性熱可塑性樹脂(B成分)を0.05〜4重量%ブレンドした系での溶融吐出繊条を高速紡糸することで得られる。B成分をブレンドしない繊維の場合は、高速紡糸域では複屈折率が0.125を越えて配向結晶化が進み、剛直性が増し、変形し難くなるため、柔軟性とヒートシール性が低下するので好ましくない。本発明におけるB成分として、好ましい熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリスチレン系共重合体があげられる。(B成分)は、A成分と相溶性を有しないことにより、A成分中で島成分として独立に存在する特性を有し、また、海成分であるA成分のガラス転移点温度より高い特定のガラス転移点温度とすることにより、B成分が紡糸張力を受けてポリエステルの配向結晶化を抑制する効果を発揮する。B成分としては、例えば、122℃のガラス転移点温度を有するスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体樹脂(市販品では、例えば、Rohm GmbH&Co.KGのPLEXIGLAS hw55)や155℃のガラス転移点温度を有するスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(市販品では、例えば、SARTOMER製SMA1000)が少量の添加量で高い配向結晶化抑制効果を期待できるので特に好ましい。なお、ガラス転移点温度が120℃未満では、配向結晶化抑制効果が少なくなるので、本発明実施形態では推奨できない。
【0026】
本発明のポリエステルでは、A成分に対するB成分の混合割合は0.05〜4.0重量%が好ましく、より好ましくは0.08〜3.0重量%であり、更に好ましくは0.1〜1.5重量%である。B成分の混合量が0.05重量%未満では、配向結晶化抑制効果が少なくなり、繊維の配向度と比重が高くなり、柔軟性とヒートシール性が低下するので好ましくない。混合量が4.0重量%を超えると、高速紡糸時は糸切れが顕著となり紡糸が不可となり、糸切れしない低速紡糸域では、繊維の配向度が非常に低いものしか得られず、弱い不織布しか得られないうえに、生産性も劣るので好ましくない。
【0027】
本発明の不織布を構成する長繊維の比重は、特には限定されないが、好ましくは、1.30〜1.35である。比重は結晶化の評価メジャーであり、複屈折率が高くても、配向結晶化を抑制しているため、比較的低い比重を本発明の不織布では示す。比重が1.30は、ポリブチレンテレフタレートの非晶比重は1.28であるが、繊維化では比重が1.30以下にならないので下限値としては1.30となる。比重が1.35を越えると配向結晶化が進んでいるため剛直性が増加して柔軟性が低下し、ヒートシール性も悪くなる問題がある場合がある。本発明でのより好ましい繊維の比重は、1.30〜1.33であり、更に好ましくは1.31〜1.32である。但し、ポリブチレンテレフタレートのみでは、牽引伸張による冷延伸効果でボイドを発生する場合があり、低比重の繊維となる場合があり、低比重繊維は、小角X線回折像(SAXS)でボイドの散乱干渉像が認められる。したがって、上記比重は、SAXS回折像でボイドの散乱干渉像が認められない繊維に限定したものである。又、無機物、例えば酸化チタンなどのダル剤を添加した場合にも変るので、熱可塑性樹脂の比重を言う。
【0028】
本発明の不織布を構成する長繊維の繊度は、特に限定されないが、被覆性と柔軟性を維持できる0.5〜5dtexが好ましい。より好ましくは1〜4dtexである。本発明の不織布を構成する長繊維の断面形状は、特に限定されないが、丸断面以外に異形断面、中空断面、中空異形断面を用いることができる。本発明の不織布の目付は、特に限定されないが、使い捨てカイロ用基布として用いる場合、柔軟性と被覆性の観点から15〜50g/mが好ましく、20〜45g/mがより好ましい。本発明不織布の22℃雰囲気での縦方向の伸度は、特には限定されないが、好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜68%、更に好ましくは40〜65%である。伸度が30%未満では、剛直性が増加して柔らかさが劣ると共に不織布のタフさがなくなり構造保持性も劣るものとなる場合があり、伸度が70%を超えると、引き伸ばされ易くなり、形態保持性や加工性が劣る場合があるので、使用条件により、所望の適正伸度を設定するのが望ましい。
【0029】
次に、本発明の不織布の製造方法の一例を以下に示すが、本発明の製造方法はこれらに限定されるものではない。
例えば、A成分として用いるポリブチレンテレフタレートは、樹脂の固有粘度が0.9以上1.4以下のものを用いると、公知の紡糸方法では、繊維の固有粘度は0.8〜1.2の範囲になるので、この範囲のポリブチレンテレフタレートを用いるのが好ましい。樹脂水分や紡糸条件等により樹脂固有粘度の低下度合は異なるが、例えば、樹脂の固有粘度が0.75のものを用いた、単成分の通常紡糸では繊維の固有粘度が0.65くらいまで低下するが、繊維形成は容易にできる。しかし、B成分を含有させると、糸切れが顕著となり繊維形成が困難となる。樹脂固有粘度が0.87では、繊維の固有粘度が0.78くらいまで低下しても、単成分では糸切れせず繊維形成は容易だが、B成分を含有させると、糸切れが発生して繊維形成が不良となる。B成分を含有させたときの、通常の紡糸条件での糸切れが発生しない繊維の固有粘度は0.8以上であり、樹脂の固有粘度は0.9以上とするのが好ましい。他方、樹脂固有粘度が高すぎるものを用いると、低い紡糸速度で配向結晶化を生じる傾向があり、低速での生産を余儀なくされるので、特定繊度を維持するとノズル単孔あたりの生産性が低下して好ましくない。例えば、樹脂の固有粘度が1.55を越えると繊維の固有粘度も1.4前後となり、3500m/分以下の低紡糸速度で配向結晶化するので、細繊度とするためには単孔吐出量を低く設定する必要から生産性が低下する問題がある。
【0030】
例えば、固有粘度1.00のポリブチレンテレフタレート99.5重量部とB成分としてスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(例えば、PLEXIGLAS hw55)0.5重量部を乾燥機でブレンド乾燥し、次いで、通常の溶融紡糸機にて、孔長(L)と孔径(D)の比(L/D)が1〜5のオリフィスを持つノズルを用いて、A成分の融点+20〜50℃である紡糸温度、例えば265℃にて紡糸する。L/Dが1未満では、バラス効果が大きくなりやすく高速紡糸では糸切れが発生しやすくなる。L/Dが5を越えると、剪断力でA成分とB成分が分離しやすくなるので、配向結晶化抑制効果が繊維断面内で均質になりにくい問題がある。本発明では、繊維断面内で均質にA成分中にB成分が分散できるために、L/Dは好ましくは2〜4であり、より好ましくは3である。吐出量は所望の繊度を得るために、設定牽引速度に応じて設定する。例えば、2dtexの繊維を得たい場合、牽引による紡糸速度を4500m/分に設定する時は、単孔吐出量を0.9g/分にて吐出する。
【0031】
紡糸された吐出糸条はノズル直下〜10cm下で冷却風により冷却されつつ、下方に設置された牽引ジェットにて3000〜5000m/分の紡糸速度で牽引細化されて固化する。A成分が固化する前にB成分が固化して、A成分は、配向結晶化し難くなり、得られる長繊維の複屈折率と比重を低く保つことができる。
【0032】
牽引紡糸された固有粘度0.95の長繊維は、下方に設置された吸引ネットコンベア上に振落されてウェッブ化される。連続して、ウェッブはバラケないように100〜210℃にて予備圧着されてハンドリング性を確保される。次いで、巻き取られ、又は、連続して、エンボス加工される。圧着面積率が8〜25%の場合、用いるエンボスローラーのエンボス文様は、圧着面積となる凸部面積が6〜23%に設定したドット文様を用いることが好ましい。本発明でのエンボス加工温度は、素材と目付、加工速度、線圧により好ましい温度が異なるが、140〜230℃、特に160〜220℃で行うことが好ましい。
【0033】
なお、本発明の不織布は、必要に応じて、片面を印刷加工することができる。印刷加工は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセットのいずれかの印刷機を用いて表面全面に施されていることが好ましい。印刷加工に使用されるインキは、ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂をバインダーとするものがポリエステル不織布との接着性の点で好ましい。印刷加工の厚みは全面に10μm以上が好ましく、より好ましくは15μm以上である。印刷加工の代わりにフィルムのラミネート加工をしてもよい。なお、本発明不織布は、接合面にフィルムラミネートしないでもヒートシールが可能な使い捨てカイロ用基布に使用できる不織布であり、接合面にはフィルムラミネートしない使用形態が望ましい。低温シールが必要な場合においては、フィルムラミネートしてもよい。この場合、ラミネートフィルムは多孔性フィルムを使用することが好ましい。ラミネートされるフィルムの厚みは、柔軟性を損なわない範囲で5〜100μm程度が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例で記載する特性の評価は以下の方法による。
【0035】
1.ガラス転移点温度及び融点
樹脂のサンプル5mgを採取し、示差走査型熱量計(TA instruments社製Q100)によって、窒素雰囲気下で20℃から10℃/分にて290℃まで昇温させたときの発熱ピーク位置の温度をガラス転移点温度、吸熱ピーク位置の温度を融点として評価した。
【0036】
2.ポリブチレンテレフタレートの固有粘度
フェノール/テトラクロルエタン:6/4の混合溶媒25ml中に溶解ろ過し、30℃にてオストワルド粘度計を用いて測定した溶液粘度(ηsp/c)を求め、0に補外した濃度0の点の値を固有粘度(η)とする。
【0037】
3.複屈折率
不織布又はウェッブから取り出した単繊維をベレックコンペンセーターを装着した偏向顕微鏡によりレターデーションと繊維径により求めたn=5の平均値を繊維の複屈折率(Δn)とした。
【0038】
4.比重
不織布又はウェッブから取り出した単繊維を硝酸カルシウム4水和物と浄水の混合液からなる密度勾配管により30℃で測定したn=3の平均値を繊維の比重とした。
【0039】
5.不織布の目付
JIS L1906(2000)に準じて測定した単位面積あたりの質量(Ms):g/mを目付とした。
【0040】
5.不織布の縦方向の伸度および破断強力
幅50mm、縦方向の測定長さ200mmのサンプルを、JIS L1906(2000)に準拠して、22℃および120℃雰囲気にて測定した引張り強さと伸び率の破断までの曲線(SS曲線)を測定して、グラフより破断までの最大強力を示す時の伸び率の平均値を縦方向の伸度(DE)、最大強力の平均値を縦方向の破断強力(DT)として求めた。
【0041】
7.不織布の縦方向の5%伸張時応力
上記5.でSS曲線から求めた伸度5%伸張時の強力の平均値を縦方向の5%伸張時応力として求めた。
【0042】
8.不織布の圧着面積率
任意の20箇所で30mm角に裁断し、SEMにて50倍の写真を撮る。撮影写真をA3サイズに印刷して圧着単位面積を切り抜き、面積(S0)を求める。次いで圧着単位面積内において圧着部のみを切り抜き圧着部面積(Sp)を求め、圧着面積率(P)を算出する。その圧着面積率P 20点の平均値を求めた。
P=Sp/S0 (n=20)
【0043】
9.不織布の剛軟度
幅20mm、縦方向の長さ200mmの試料を用い、JIS L1096(2000)剛軟性A法に準拠した条件で測定した(n=10の平均値)(単位:mm)。
【0044】
10.不織布の耐磨耗性
JIS L1096(2000)II法に準拠して、株式会社大栄科学精器製作所製「学振型染色物摩擦堅牢度試験機」を用いて、不織布を試料とし、摩擦布は金巾3号を使用して、荷重500gfを使用、摩擦回数100往復にて摩擦させ、不織布表面の毛羽立ち、磨耗状態を下記の基準で目視判定で評価した(n=5の平均値)。
0級:損傷大
1級:損傷中
2級:損傷小
3級:損傷なし、毛羽発生あり小
4級:損傷なし、毛羽発生微小
5級:損傷なし、毛羽なし
【0045】
11.不織布のヒートシール性
A4版に切り出した不織布の接合面を2枚に重ねて、富士インパルス株式会社製のヒートシーラー(FA−450−5W型)を用い、加熱を5.5、冷却を10、設定はマニュアルにして、ヒートシールし、接合部を手で剥離しようとして、剥離の状態により、以下の評価をした。
5級:シール接合良好、接合部は剥離しない。
4級:シール接合少し斑あり、接合部は剥離しない。
3級:シール接合するが接合斑あり、接合側辺部は少し剥離する。
2級:シール接合やや不良でかなり剥離する。
1級:シール接合されていない。
【0046】
12.官能評価
作成した長繊維不織布を、20cm×15cmに切断して試料とし、これを二つ折りして、この間に市販の使い捨てカイロから取り出した発熱部分を挿入して周囲を熱シールして10cm×15cmのカイロを作成した。なお、ヒートシール性不良の不織布はメルトインデックス10の30μmの低密度ポリエチレンフィルムラミネートしてカイロを作成した。この作成したカイロに対して、パネラー5名による以下の官能評価を行った。
(1)柔らかさ
作成したカイロを手で軽く接んでもらい、柔らかさを官能評価した。
4級:日本製紙クレリア製「クリネックス」並み〜より柔らかい、2級:旭化成製「クリーンワイプP」並みを基準にして、それらの中間を3級、2級より硬い場合を1級として、5名のパネラーの平均値を評価値にした。なお、3級以上を合格とした。
(2)毛羽立ち性
作成したカイロを、下着(腎部)に外れないように縫いつけて8時間作業した後、目視で以下の基準で官能評価した。
4級:毛羽剥離なし、3級:毛羽微小剥離なし、2級:毛羽小〜中剥離微小、1級:毛羽大剥離中以上とし、5名の平均値とした。3級以上を合格とした。
【0047】
<実施例1>
固有粘度1.00のポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と言う))99.6重量%とスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体樹脂(Rohm GmbH&Co.KGのPLEXIGLAS hw55(以下、「hw55」と言う))0.4重量%を混合乾燥し、ノズルオリフィスがL/D3.0のノズルを用い、紡糸温度265℃、単孔吐出量0.7g/分にて常法により溶融紡糸し、紡糸速度4500m/分にて引取り、ネットコンベア上に振落してウェッブを得た。連続して、ネット上で190℃の予備圧着ローラーにて押さえ処理を行い、固有粘度0.94、単糸繊度1.5dtexの長繊維からなるウェッブを得た。次いで、圧着面積率16%の210℃に加熱した凸楕円エンボスローラーにて、線圧30kN/mにてエンボス加工して、目付量30g/mの長繊維不織布を得た。得られた不織布の詳細と評価結果を表1に示す。実施例1の不織布は、柔らかく毛羽立ちがなく、柔軟性、耐磨耗性、及びヒートシール性がともに優れた不織布であった。
【0048】
<実施例2>
目付量が40g/mとなるようにコンベア速度を調整した以外、実施例1と同様にして長繊維不織布を得た。得られた不織布の詳細と評価結果を表1に示す。実施例2の不織布は、柔らかく毛羽立ちがなく、柔軟性と耐磨耗性及びヒートシール性がともに優れた不織布であった。
【0049】
<実施例3>
目付量が20g/mとなるようにコンベア速度を調整した以外、実施例1と同様にして長繊維不織布を得た。得られた不織布の詳細と評価結果を表1に示す。実施例3の不織布は、柔らかく毛羽立ちがなく、柔軟性と耐磨耗性及びヒートシール性がともに優れた不織布であった。
【0050】
<実施例4>
PBTを99.0重量%、hw55を1.0重量%とした以外は、実施例1と同様にして長繊維不織布を得た。得られた不織布の詳細と評価結果を表1に示す。実施例4の不織布は、柔らかく毛羽立ちがなく、柔軟性と耐磨耗性及びヒートシール性がともに優れた不織布であった。
【0051】
<実施例5>
固有粘度0.87のPBTを用い、予備圧着温度及びエンボス加工温度をやや低温とした以外、実施例1と同様にして得られた、固有粘度0.82の繊維からなる不織布の詳細と評価結果を表1に示す。実施例5の不織布は、柔らかく毛羽立ちがなく、柔軟性と耐磨耗性及びヒートシール性がともに優れた不織布であった。
【0052】
<実施例6>
固有粘度1.30のPBTを用いた以外、実施例1と同様にして得られた、固有粘度1.19の繊維からなる不織布の詳細と評価結果を表1に示す。実施例6の不織布は、柔らかく毛羽立ちがなく、柔軟性と耐磨耗性及びヒートシール性がともに優れた不織布であった。
【0053】
【表1】

【0054】
<比較例1>
PBTを100重量%とし、hw55を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして長繊維不織布を得た。得られた不織布の詳細と評価結果を表2に示す。比較例1の不織布は、配向結晶化して複屈折率(Δn)と比重が高くなり、本発明要件の力学特性は満たすものの、耐磨耗性、ヒートシール性が劣る不織布であった。
【0055】
<比較例2>
単孔吐出量を0.5g/分とし、紡糸速度を2000m/分とした以外、比較例1と同様にして得た不織布の詳細と評価結果を表2に示す。比較例2は中速紡糸域の繊維であるが、複屈折率は本発明範囲に入るが、力学特性は劣り硬くなるので、ヒートシール性がやや劣り、柔軟性と耐磨耗性も劣る不織布であった。
【0056】
<比較例3>
単孔吐出量0.25g/分とし、紡糸速度を1000m/分とした以外は、比較例1と同様にして得た長繊維不織布の詳細と評価結果を表2に示す。比較例3は低速紡糸のために繊維の複屈折率が低くなり、ヒートシール性は改良されるが、力学特性が劣るため耐久性、耐磨耗性が悪い不織布となる。
【0057】
<比較例4>
実施例1と同様にして作成したウェッブを、ペネ数60でニードルパンチ加工して長繊維不織布を得た。得られた不織布の詳細と評価結果を表2に示す。比較例4の不織布は、交絡処理をしているため、柔軟性は良いが、ヒートシール性と耐磨耗性が劣る不織布となる。
【0058】
<比較例5>
エンボス加工ローラーを圧着面積45%の凹形織目柄とした以外、実施例1と同様にして得た長繊維不織布の詳細と評価結果を表2に示す。比較例5は、エンボス加工による圧着面積が高くなりペーパーライクな柔軟性に劣る不織布となる。
【0059】
<比較例6>
hw55の添加量を0.001重量%とした以外、実施例1と同様にして得た長繊維不織布の詳細と評価結果を表2に示す。比較例6は、hw55の添加量が少ないため、配向結晶化抑制効果が得られず、柔軟性、耐磨耗性、ヒートシール性が劣る不織布となる。
【0060】
<比較例7>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)99.5重量%とhw55を0.5重量%を混合乾燥し、ノズルオリフィスがL/D3.0のノズルを用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量0.88g/分にて常法により溶融紡糸し、紡糸速度3500m/分にて引取り、ネットコンベア上に振落してウェッブを得た。連続して、ネット上で100℃の予備圧着ローラーにて押さえ処理を行い、単糸繊度2.5dtexの長繊維からなるウェッブを得た。次いで、圧着面積率18%の140℃に加熱した横楕円エンボスローラーにて、線圧30kgfにてエンボス加工して、目付50g/mの不織布を得た。得られた不織布の詳細と評価結果を表2に示す。比較例7の不織布は、剛軟度が高く硬直なため、耐磨耗性は許容されるが、柔軟性とヒートシール性に劣る不織布であった。
【0061】
<比較例8>
PBTを95重量%、hw55を5重量%とした以外は、実施例1と同様にして紡糸したが、糸切れが顕著でウェッブが得られなかった。比較例8の詳細を表2に示す。比較例8は、B成分の添加量が多すぎるため、ウェッブを得ることも困難であった。
【0062】
<比較例9>
PBTを99.5重量%、東洋紡績株式会社製ペルプレン(登録商標)P40Bを0.5重量%とした以外、実施例1と同様にして得た長繊維不織布の詳細と特性を表2に示す。比較例9は、無添加のものより力学特性は少し柔軟になるが、耐磨耗性、ヒートシール性に劣る不織布となる。
【0063】
<比較例10>
固有粘度0.62のPBTを用いた以外、実施例5と同様にして得られた、繊維の固有粘度が0.54の不織布の詳細結果を表2に示す。比較例10の不織布は、固有粘度が低いため、製糸性が悪く糸切れが多くなり、糸切れがドリップ化しており、エンボス加工では収縮して不織布は硬く、やや脆くなるため、不織布の評価は行わなかった。
【0064】
<比較例11>
固有粘度0.62のPBTを用いたのみ以外、比較例10と同様にして得られた、繊維の固有粘度が0.56の不織布の詳細結果を表2に示す。比較例11の不織布は、固有粘度は低いが製糸性に問題はなかったが、不織布は、やや脆く、柔軟性、耐摩耗性、ヒートシール性、毛羽立ち性が劣る不織布であった。
【0065】
<参考例1>
固相重合により得られた固有粘度1.55のPBTを用いた以外、実施例1と同様にして不織布を得ようとしたが、糸切れするので、糸切れしない紡糸速度(吐出量も変更)にした以外、実施例1と同様にして得られた繊維の固有粘度1.42の長繊維不織布の詳細と特性を表2に示す。長繊維不織布比較例11は、耐磨耗性、毛羽立ち性は良好だが、ヒートシール性にやや難点がある不織布で本発明の許容範囲ではあるが、紡糸速度を低くする必要があり、生産性に問題がある事例である。
【0066】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の長繊維不織布は、柔軟性、耐磨耗性、形態保持性、及びヒートシール性に優れ、表面がフラットで印刷性にも優れているので、使い捨てカイロ用基布に特に最適な材料を提供することができる。これらの用途に展開されることで生産性と品質の向上をもたらし、産業界に大きく寄与することが期待される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレートを95重量%以上含有し、複屈折率が0.100〜0.125である長繊維からなる不織布において、縦方向の目付当りの5%伸張時応力が、22℃雰囲気では、0.5〜1.1N/50mm(g/m)、乾熱120℃雰囲気では、0.10〜0.40N/50mm(g/m)、縦方向の22℃雰囲気での目付当り破断強力が1.1〜3.0N/50mm(g/m)で、交絡処理していないことを特徴とする長繊維不織布。
【請求項2】
不織布の剛軟度が30〜70mmであり、エンボス加工されたことを特徴とする請求項1記載の長繊維不織布。
【請求項3】
ポリブチレンテレフタレート(A成分)に対して、A成分と非相溶でありかつ120〜160℃のガラス転移点温度を有する熱可塑性ポリスチレン系共重合体(B成分)を0.05〜4.0重量%混合して得られるポリエステルからなる長繊維で構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の長繊維不織布。
【請求項4】
ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が0.8以上である請求項1〜3のいずれかに記載の長繊維不織布。
【請求項5】
ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が0.8〜1.2である請求項4に記載の長繊維不織布。
【請求項6】
カイロ用基布として請求項1〜5のいずれかに記載の長繊維不織布を用いたことを特徴とするカイロ。