説明

柱の基礎の施工方法

【課題】 片持ち梁形式のカーポート用の柱のような、引き抜き荷重および/または転倒モーメントのかかる柱に、十分な強度を持たせることのできる、柱の基礎の施工方法を提供する。
【解決手段】 柱の基礎の施工方法は、柱11の立設位置に縦穴41を掘削し、縦穴41内に、内部に充填材と縦筋とかんざし筋とを有する一対の鋼管杭21、22を、縦穴41の掘削深度よりも深い位置まで打ち込むステップと、縦穴41内に、柱11を設置するステップと、柱11と鋼管杭21、22とを接続部材23で接続するステップと、柱11と鋼管杭21、22とが接続された状態で、縦穴41の空間内を含む基礎構築部にコンクリートを打設して、柱11と鋼管杭21、22とを一体化するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柱の基礎の施工方法に関し、特に、施工が困難な状況において十分な強度を有する柱の設置が可能な柱の基礎の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隣地との境界の近くに、ガレージの柱や、背の高い目隠しフェンスを設けることがある。この場合のガレージの屋根の柱用の基礎の配置を図9(A)に示す。図9(A)を参照して、隣地との境界50に近い位置にガレージの屋根を施工する場合の基礎73と、柱71と、隣地との境界50との関係が示されている。一方、図10は、境界50の近くにフェンスを構築する場合の、基礎83の施工断面を示す図である。図10を参照して、従来は、深い穴85を掘削し、そこにある程度、栗石84やクラッシャランを転圧し、捨てコンを打ち、その内部に空洞82を有するコンクリートの基礎83を作り、穴85を土で埋め戻す。空洞82の中にフェンスを支持する柱81を垂直に保持し、フェンスを設置する。その後、空洞82にはモルタルが流し込まれて、基礎との一体化がなされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図9(B)は、図9(A)において、B−Bで示す部分の矢視図であり、図9(A)に示した隣地との境界近傍部分にカーポートを設ける場合の、従来における、カーポートの支柱を基礎に埋め込む場合の施工状態を示す図である。図9(B)を参照して、従来は、日本の土地事情から、隣地との境界50ぎりぎりにカーポートを設ける場合が多い。この場合に、カーポートの柱71の基礎73に、コンクリートのかぶり厚を確保しようとすると、境界50からその一部(図9(B)においてdで示す部分)が隣地側にはみ出すため、敷地境界内では、コンクリートのかぶり厚が確保できず、その基礎73は、十分な平面上の面積を得ることができない。一方、境界50の反対側のカーポートの位置が決められている場合、かぶり厚dを確保しようとすると、かぶり厚d分だけカーポートとしての有効面積が減る。
図10に示すフェンスの基礎83についても同様で、図10において、境界50ぎりぎりにフェンスの基礎83を設ける場合に、敷地境界内において、フェンスの基礎83に、敷地内でコンクリートのかぶり厚が確保できず、その一部がはみ出し(図10においてdで示す部分)、基礎83は、十分な平面上の面積を得ることができない。
【0004】
上記のように、基礎コンクリートのかぶりを確保せず施工をすると、図10に示すような、背の高いフェンスの基礎を施工した場合、強風時にフェンスが傾いたり、図9に示したカーポートの場合は、屋根に積もった雪の重みでカーポートが倒れるという問題があった。
【0005】
上記のように、柱を境界ぎりぎりに設置するときは、片持ち梁形式のカーポートの柱やフェンスの基礎のような、引き抜き荷重および/または転倒モーメントのかかる柱の基礎の施工は、基礎のコンクリートのかぶり厚が確保できないため、困難であるという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような従来の課題に鑑みてなされたもので、片持ち梁形式のカーポート用の柱のような、引き抜き荷重および/または転倒モーメントのかかる柱に、十分な強度を持たせることのできる、柱の基礎の施工方法を提供することを目的とする。
【0007】
この発明の他の目的は、片持ち梁形式のカーポート用の柱のような、引き抜き荷重および/または転倒モーメントのかかる柱を簡単に施工できる、柱の基礎の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる、柱の基礎の施工方法は、柱の立設位置に縦穴を掘削し、縦穴内に、杭を、縦穴の掘削深度よりも深い位置まで打ち込むステップと、縦穴内に柱を設置するステップと、柱と杭とを接続部材で接続するステップと、柱と杭とが接続された状態で、縦穴の空間内を含む基礎構築部に、コンクリートを打設することにより、柱と杭とを一体化するステップとを含む。
【0009】
好ましくは、杭は、鋼管であり、鋼管の上部近傍を貫通するかんざし筋を有する。
【0010】
さらに好ましくは、杭は、鋼管杭であり、鋼管杭は、内部に充填材と縦筋とを有する。
【0011】
この発明の他の局面によれば、柱の基礎の施工方法は、柱の立設位置に縦穴を掘削し、縦穴内に柱を設置するステップと、柱の周囲に所定の強度を有する接続部材を巻付けるステップと、縦穴の内部において柱の周囲にコンクリートを打設することにより、柱と接続部材とコンクリートとを一体化するステップとを含む。
【0012】
好ましくは、接続部材は柱に近接する第1の部分と、柱から離れた位置に延在する、第1の部分と異なる第2の部分とを含む。
【0013】
さらに好ましくは、第1の部分と第2の部分とは、相互に対向した位置に延在する。
【0014】
なお、接続部材は、ジオグリッド、ベルト、ロープ、金属板、鉄筋、スパイラル筋、かんざし筋のいずれかであってもよい。
【0015】
また、ジオグリッドの原織物、ベルト、ロープは、高強度繊維で形成されている。
【発明の効果】
【0016】
この発明においては、柱と杭とが接続された状態で、縦穴の空間内を含む基礎構築部にコンクリートを打設することにより、柱と杭とを一体化するため、柱に転倒モーメントがかかっても、杭によって、鉛直方向でもって支持される。
【0017】
その結果、片持ち梁形式のカーポート用の柱のような、引抜荷重および/または転倒モーメントのかかる柱に、十分な強度を持たせることのできる、柱の基礎の施工方法を提供できる。
【0018】
したがって、たとえば、カーポートやフェンスの柱を敷地境界のぎりぎりの位置に設けた場合のように、境界側にコンクリートのかぶり厚が確保しづらい柱についても、ジオグリッドのような厚さが2mm〜3mm程度の接続部材で柱と杭とが接続されるため、安全が確保でき、十分な強度を持たせることができる。
【0019】
この発明の他の局面によれば、柱の基礎の施工方法は、柱の立設位置に縦穴を掘削し、縦穴内に柱を設置するステップと、柱の周囲に所定の強度を有する接続部材を巻付けるステップと、縦穴の内部において柱の周囲にコンクリートを打設することにより、柱と接続部材とコンクリートとを一体化するステップとを含む。
【0020】
柱の周囲に所定の強度を有する接続部材を巻付けてコンクリートを打設することにより、柱と強度部材とコンクリートとを一体化するため、杭を用いることなく、柱の基礎の施工方法を提供できる。
【0021】
したがって、たとえば、カーポートやフェンスの柱を敷地境界のぎりぎりの位置に設けた場合のように、境界側にコンクリートのかぶり厚が確保しづらい柱についても、安価に施工が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。図1(A),(B)は、この発明の一実施の形態における、従来の図9(A)、(B)に対応する図であり、図2は、図1において、II−IIで示す部分の断面図である。ここでは、カーポートの柱を施工する場合について説明するが、背の高いフェンスの柱を施工する場合も同様である。
【0023】
図1および図2を参照して、柱11の転倒を防止するための杭として、図6に示す鋼管杭21,22を使用する。すなわち、柱11の施工用の縦穴41に、杭頭補強部として、掘削穴42を複式スコップで掘削する。この杭頭補強の掘削穴42に、垂直でなくても良い状態で、一対の鋼管杭21、22を打ち込む。
【0024】
この実施の形態においては、カーポートの柱11に対して、鋼管杭21,22は、隣地境界50の反対側に2本設けられ、カーポートの柱11、鋼管杭21、22は、接続部材23で接続されて、コンクリートを打設することにより、一体化される。このように、鋼管杭21,22を、カーポートの柱11に対して、敷地内に設けることにより、柱の上部の転倒モーメントを、接続部材23を通じて鋼管杭21,22で吸収する。その結果、鋼管杭21,22で、隣地境界50の近傍において、隣地側または敷地内部側へ転倒することなく、柱11を建てることができる。
【0025】
図2に示すように、柱11の下部と鋼管杭21、22(図示無し)の上部とが、ジオグリッド(ジオテキスタイル)のような接続部材23で接続されている。なお、鋼管杭21,22には、その中央部に縦筋25が設けられている。柱のかんざし筋33と、鋼管杭のかんざし筋32とを用いて、柱11と鋼管杭21,22とを接続するようにしてもよい。
【0026】
また、通常はこのような位置に柱11を建てると、隣地境界50側の基礎のコンクリートのかぶり厚を十分確保できないため、コンクリートにクラックが入って問題になるが、この実施の形態のように、柱11と隣地境界50との間に接続部材23を通すことによって、接続部材23とコンクリートとが一体化するため、そのような問題は生じない。
【0027】
なお、ここでは、鋼管杭を2本用いた例について説明したが、これに限らず、鋼管杭は1本でもよい。
【0028】
ここで、ジオグリッドとは、盛土の不等沈下防止等を目的として開発された繊維原織物を樹脂でコーティングしたものであり、繊維原織物としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアラミド繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維等が好ましい。このように合成繊維を用いているため、さびが生じない。なお、ジオグリッドの原織物に使用される繊維としては、上記繊維の高強度繊維が好ましい。このような高強度繊維としては、高分子量ポリエチレン、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ナイロン6、ポリアラミド(パラ、メタ)、ガラス、ビニロン、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PPS繊維、ポリイミド繊維、PEEK繊維、フッソ繊維等がある。
【0029】
また、コンクリートの付着等を考慮して、網目の寸法は、10mmから100mm程度が好ましい。
【0030】
以上のように、接続部材23で柱11と杭21,22とを抱き込み、コンクリートを打設し、一体化することにより、隣地側基礎コンクリートのかぶり厚がゼロでも、十分な強度が確保できる。
【0031】
また、接続部材23を構成する繊維は、地中に埋設されるため、紫外線による劣化は生じない上に、必要な強度を計算して繊維量を増すことによって、安全を確保できる。
【0032】
図3は、図2の変形例を示す図である。図3を参照して、ここでは、ジオグリッドの代わりに、水平方向の上下に離れた、2本以上のベルト、または、ロープ23a、23bで柱11と、一対の鋼管杭21、22(図示無し)とが接続されている。
【0033】
ここで、ベルトおよびロープ23a、23bは、上記したジオグリッドの生布に用いられる高強度繊維で制織されたものが好ましい。
【0034】
なお、この場合も、柱のかんざし筋38と、鋼管杭のかんざし筋32とを用いて、柱11と鋼管杭21,22(図示なし)とを接続するようにしてもよい。
【0035】
図4は、図1に示した柱11と、鋼管杭21,22との接続関係を示すさらに他の例を示す図である。図4(A)では、柱11に柱のかんざし筋89を通し、それを、鋼管杭21,22のかんざし筋88で接続している。柱のかんざし筋89と鋼管杭のかんざし筋88とは、結束線(図中黒四角で示す)で接続している。
【0036】
鋼管杭21,22の縦筋25,26は任意の位置に回転可能であるため、これら縦筋25、26を適切な向きに向け、柱11のかんざし筋89とを接続すればより効果的である。
【0037】
このように、柱11と鋼管杭21,22とが、鋼管杭のかんざし筋88と柱のかんざし筋89とで一体化されることにより、先の実施の形態と同様に、柱の上部の転倒モーメントを、鋼管杭のかんざし筋88を通じて吸収でき、鋼管杭21,22を打ち込むことにより、隣地との境界50の近傍において、隣地側または敷地内部側へ転倒することなく、柱11を建てることができる。
【0038】
なお、図4(A)では、柱11を貫通するかんざし筋89を固定するために、角柱で構成される柱11の内部にモルタル103を流し込んだ状態を示している。このモルタル103は柱11の上部の開口から流し込んでもよいし、かんざし筋89の上部の側面に設けられた図示のない開口部から流し込んでもよい。このようにモルタル103を充填すると、かんざし筋89は柱11の肉厚だけではなく、柱11の断面全体で支持されるとともに、柱11と基礎とが一体化されるため、より好適である。
【0039】
また、図4(B)では、柱11の境界50側に「コ」の字形のサポート34を設け、これに穴を設けて、この穴を貫通した鉄筋35、36と、鉄筋37とは結束線(図中黒四角で示す)で接続されている。
【0040】
また、縦筋25,26を鉄筋35、36と接続する、または、鉄筋37と接続すると、より効果的である。
【0041】
図5は、スパイラル状の鉄筋(以下、「スパイラル筋」という)45を示す図である。スパイラル筋45は直径が約2mm〜16mmの鉄筋で形成され、ばねのように多重スパイラルを形成するよう構成されている。したがって、これを広げようとしても容易には広がらない。スパイラル筋45は、その一端にスパイラルの中心方向に向かって曲げらた部分46を有し、この部分46が柱11の図示の無い穴部に挿入可能である。鋼管杭21、22を打ち込んだ後、柱11の穴部にスパイラル筋の曲げられた部分46を挿入し、スパイラル筋45で柱11の本体、2本の鋼管杭21、22を接続する。鋼管杭21,22の内部に充填剤を充填する。その後、コンクリートおよびモルタルを縦穴41、杭頭補強の掘削穴42に流し込んで全体を一体化して固定する。
【0042】
ここで、スパイラル筋45は、一端側にスパイラルの中心方向に向かって曲げられた部分46を有しているが、他端側にもスパイラルの中心方向に向かって曲げられた部分46を有してもよい。
【0043】
このようにすれば、大容量のコンクリートを使用することなく、少ないコンクリートの量で柱11が鋼管杭21、22と一体化され、強固な基礎を得ることができる。
【0044】
なお、鋼管杭21,22に充填される充填材としては、無収縮モルタルを使用するのが好ましい。
【0045】
また、鋼管杭21,22は、縦穴41と杭頭補強の掘削穴42内部へのコンクリートおよび/またはモルタルの充填は、同時に行なったほうが好ましい。
【0046】
また、鋼管杭21、22の径が大きい場合は、鋼管杭21,22内への充填材の充填と、縦穴41、杭頭補強の掘削穴42内へのコンクリートおよび/またはモルタルの充填は、同時に行ってもよい。
【0047】
なお、図6を参照して、鋼管杭21、22は、頂部が開放され、下端部28が尖塔型を有しており、内部に縦筋を回転自在に支持するための支持部材29が設けられている。図2や3においては、図6に示す支持部材29によって、縦筋25、26が支持されている。施工時には、この鋼管杭21、22の内部にも無収縮モルタルが充填される。
【0048】
また、鋼管杭21,22にはかんざし筋を貫通して保持するためのかんざし筋穴27が設けられている。
【0049】
図7はこの発明の他の実施の形態を示す図であり、図1で、VII−VIIで示す部分の矢視図である。図7を参照して、この実施の形態においては、カーポートの柱51を取付けた状態で、掘削穴65の下部に連続して、カーポートの柱51を挟んで対称的に2つの杭頭補強の掘削穴66、67を設ける。それぞれの杭頭補強の掘削穴66、67に図1に示した鋼管杭21、22と同様の鋼管杭61,62を打ち込む。カーポートの柱51にはその下部にかんざし筋52,53が取付けられている。一方、鋼管杭61,62にも縦筋63,64と、かんざし筋54、55が取付けられている。縦筋63,64およびかんざし筋54、55のそれぞれの端部は、カーポートの柱51の2本のかんざし筋52,53と交差可能な位置に設けられ、それぞれの交差部は結束線56a、56b、56c、56dで接続される。これによって、カーポートの柱51と、鋼管杭61,62とが結束される。
【0050】
なお、この鋼管杭61,62も共に、先の実施の形態と同様に、垂直方向に向けられるのではなく、斜め方向に向けられてもよい。
【0051】
この状態で、掘削穴65,66,67にコンクリートを流し込む。その結果、カーポートの柱51の強固な基礎を得ることができる。
【0052】
上記実施の形態においては、杭として、鋼管杭を用いた例について説明した。しかしながら、杭として、鋼管杭以外にコンクリート杭や樹脂製の杭を用いてもよい。図8は、コンクリート杭75を示す図である。図8を参照して、コンクリート杭は、コンクリート杭本体75と、コンクリート杭本体75の上部に設けられ、鉄製のキャップを埋め込んだ保護具76と、コンクリート杭本体75に埋め込まれたかんざし筋77、78とを含み、その下端部79は尖塔型を有している。図7に示したように、このかんざし筋77,78を、柱に埋め込まれたかんざし筋と結束線で固定することによって、カーポートの柱と一体化する。なお、かんざし筋は1本でもよい。
【0053】
なお、コンクリート杭75を用いた場合でも、先の実施の形態と同様に、この杭75と柱とをジオグリッド等で接続するように構成してもよい。
【0054】
次にこの発明のさらに他の実施の形態について説明する。図11は、この発明のさらに他の実施の形態を示す図であり、先に示した図1に対応する。図1の実施の形態においては、一対の鋼管杭を設け、柱の下部と鋼管杭とをジオグリッドのような接続部材で接続したが、この実施の形態においては、鋼管杭を使用しない。
【0055】
なお、以下の説明においては、各図の(A)は、柱11の立面を示す図であり、(B)は、図(A)において、B-Bで示す矢視図(平面図)である。
【0056】
この出願の発明者は、各種の実験を行ない、柱11の転倒モーメントが小さい条件下では、ジオグリッドのような所定の強度を有する接続部材を用いて、柱の下部と打設するコンクリートとを一体化すれば、鋼管杭のような杭は不要であることを見いだした。以下にこの実施の形態について説明する。
【0057】
図11(B)を参照して、まず、図1と同様に隣地との境界の所定の位置にカーポート用の柱11を固定する縦穴91を掘削する。掘削した縦穴91の底面をつき固め、捨てコンを打つ。この捨てコンはなくてもよいが、あると、位置決めが容易になる。
【0058】
次いで、柱11を据え付ける。ここでは図示を省略しているが、柱11およびその上に設けられた屋根が転倒しないように地面から支持する。ここでは、柱として角柱の場合について説明するが、これに限らず、円形や楕円形等であってもよい。
【0059】
この状態で、図12(A)、(B)に示すように、柱11の周囲を囲むようにジオグリッドのような任意の形状で配置可能な接続部材23を配置する。ここでは、接続部材23は、一定の幅を有する長手部材であって、接続部23cでその両端を接続している。この状態で縦穴91内にコンクリートを打設して、柱11、接続部材23およびコンクリートを一体化する。
【0060】
このとき、接続部材23の横方向の上端部および下端部には、柱11を垂直方向に保持する力がかかるため、それらの端部に沿って横方向に多くの糸量が設けられるか、または、端部を多重に折っておくのが好ましい。
【0061】
接続部材23は、柱11の敷地境界線側においては、柱11に近接するように配置する(接続部材の第1の部分23d)。また、その反対側では柱11から間隔を開けて配置する(接続部材の第2の部分23e)。そして、全体に楕円形、または、柱11側において寸法の狭い台形状に配置する。こうすれば、柱11の敷地境界50の反対側において多くのコンクリートを保持して柱11とコンクリートとが一体化される。また、台形のように2つの辺が交わるような形状になるときは、その2辺の交わる部分は、鋭角ではなく、できるだけ大きな半径となるように配置するのが好ましい。
【0062】
図13は、上記のようにして施工された柱11の縦穴91およびその中に打設されたコンクリート92による保持状態を示す図である。図13を参照して、柱11の下部とコンクリート92とが接続部材23(図12参照)を介して一体化されているため、施工後に荷重がかかって、柱11が11aや、11bのように斜めになったり、転倒することはない。また、屋根を含めた柱11の転倒モーメントは、敷地境界線50側の縦穴91とコンクリート92との接合部で問題なく受けられる。
【0063】
なお、縦穴91へのコンクリートの打設においては、型枠をすることなく、コンクリートを土に直接接触させるほうが、両者間の付着力から好ましい。また、型枠を使用した場合は、しっかりと穴固めして埋め戻しをする必要がある。
【0064】
また、ここでは接続部材23としてジオグリッドを用いた場合について説明したが、これに限らず、ある程度の強度があり、軽くて、細くて、施工性のよいものであれば、プラスチックやエンジニアリングプラスチック等であってもよい。
【0065】
次にこの実施の形態の変形例について図14を参照して説明する。図14に示すように、この実施の形態においては、接続部材としてジオグリッドのような所定の幅を有するものではなく、柱11の下部において、上下の2箇所で幅の狭い接続部材93a、93bを使用して柱11とコンクリートとを一体化する。接続部材93a、93bを柱11の敷地境界50の反対側で保持するために、この実施の形態においては、縦穴91の4隅に鉄筋94a〜94dを設け、これらに直交して、これらを取り囲むように逆C字状の鉄筋94e、94fを設け、図14(B)に示すように、柱11と鉄筋94b、94cとを接続部材93aと93bとで接続する。このように接続した後で、縦穴91の内部にコンクリートを打設する。
【0066】
次にこの実施の形態のさらに他の変形例について図15を参照して説明する。図15に示すように、この実施の形態においては、接続部材として上下の2箇所で幅の狭い接続部材を用いる点では先の変形例に似ているが、柱11とコンクリートとを一体化する接続部材は、柱側部材と、コンクリート側部材と、両者を接続する矩形の鉄板97の3つの部材から構成される。
【0067】
すなわち、柱11の敷地境界50の反対側に柱11に接触するように矩形の鉄板97を設け、鉄板97と接触しない柱11の残りの部分を上下方向に間隔を開けて配置されたUボルト95a,95bで取り囲み、Uボルト95a,95bを鉄板97にナットで固定する。同様に、コンクリート側でも上下方向に間隔を開けて配置されたUボルト96a,96bを設け、Uボルト96a,96bを鉄板97にナットで固定する。ここで、Uボルト96a,96bのU字間の間隔はUボルト95a,95bの間隔よりも広くなっているのが好ましい。
【0068】
次にこの実施の形態のさらに他の変形例について図16を参照して説明する。図16に示すように、この実施の形態においては、柱11の下部で、上下に間隔を開けて設けられた2組の鉄筋で構成された接続部材を用いる。上側の接続部材は、柱11の側面を貫通して設けられたかんざし筋98aと、かんざし筋98aの両端部において結束線(またはケーブルバンド、以下同じ)101で結束された鉄筋99a、99bと、鉄筋99a、99bのかんざし筋98aと接続された側の反対側の端部において結束線101で結束された横筋87aとを含む。下側の接続部材も同様の構成を有し、上側の接続部材と下側の接続部材とは、縦方向に設けられた縦筋86a、86bで接続されている。これらの鉄筋の接続は、結束線101で行ってもよいが、溶接で接続してもよい。
【0069】
図16(B)においては、図4(A)と同様に、柱11を貫通するかんざし筋98a,98b(図示なし)
を固定するために、角柱で構成される柱11の内部にモルタル103を流し込んだ状態を示している。
【0070】
なお、最初の実施の形態においては、杭を用いた場合について説明し、この実施の形態においては、杭を用いない場合について説明したが、どの場合に杭を用いるかは、柱にかかる転倒モーメントの大きさにもよるが、柱を支持するコンクリートの重量にも関係する。すなわち、コンクリートの重量が小さいときは、杭が必要となり、コンクリートの重量が大きくなれば、杭は不要となる。
【0071】
上記実施の形態においては、カーポートの柱や、背の高いフェンスの柱を補強する場合について説明したが、これに限らず、この柱の基礎の施工方法は、道路標識、ガードレール、看板、信号機、電柱、電灯柱、ポール、バスケットゴールの固定等にも利用が可能である。これらの柱において、鋼管杭を用いた場合は、その径は、柱の寸法にもよるが、約30mm〜150mm程度である。
【0072】
また、上記実施の形態においては、杭として、一対の鋼管杭を用いて柱と接続する場合について説明したが、これに限らず、1本の鋼管杭を用いてもよいし、地盤に応じて、3本以上の杭を用いてもよい。また、鋼管杭に限らず、非鉄金属の管を用いてもよい。
【0073】
なお、上記実施の形態の形態では、掘削穴にコンクリートを流し込むと記載したが、これは、使用する箇所に応じて、コンクリートまたは/およびモルタルを使用してもよいことを意味する。
【0074】
上記実施の形態においては、杭の寸法については、特に規定しなかったが、地盤の悪いところでは、通常に比べて、杭を太く、長くすることで対処可能である。
【0075】
上記実施の形態においては、施工用の縦穴に、杭頭補強部として、より深い縦穴を設けた場合について説明したが、これに限らず、縦穴と杭頭補強部とを同一深さの穴としてもよい。
【0076】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の一実施の形態に係る基礎の施工例を示す平面図および立面図である。
【図2】図1においてII−IIで示す部分の断面図である。
【図3】図1においてII−IIで示す部分の他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】柱と鋼管杭とを一体化させる他の例を示す平面図である。
【図5】スパイラル筋の構成を示す模式図である。
【図6】鋼管杭を示す図である。
【図7】柱と鋼管杭とを一体化させるさらに他の例を示す立面図である。
【図8】コンクリート杭または樹脂製杭を示す図である。
【図9】従来の、隣地に隣接している位置にカーポートの基礎を施工する場合の柱と隣地との境界の位置関係を示す図である。
【図10】従来のフェンスを支持する柱の基礎を示す図である。
【図11】この発明の他の実施の形態に係る基礎の施工例を示す平面図および立面図である。
【図12】図11においてXII−XIIで示す部分の断面図である。
【図13】柱の縦穴およびその中に打設されたコンクリートによる保持状態を示す図である。
【図14】他の実施の形態における変形例を示す図である。
【図15】他の実施の形態におけるさらなる変形例を示す図である。
【図16】他の実施の形態におけるさらなる変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
11,51 柱、21,22,61,62 鋼管杭、23,93 接続部材、25,26,63,64 縦筋、28,79 下端部、29 支持部材、41,65,91 縦穴、45 スパイラル筋、52,53,54,55,98 かんざし筋、42,66,67 杭頭補強の掘削穴、94,99 鉄筋、95 Uボルト、97 鉄板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の立設位置に縦穴を掘削し、前記縦穴内に、杭を、前記縦穴の掘削深度よりも深い位置まで打ち込むステップと、
前記縦穴内に柱を設置するステップと、
前記柱と前記杭とを接続部材で接続するステップと、
前記柱と前記杭が接続された状態で、前記縦穴の空間内を含む基礎構築部にコンクリートを打設することにより、前記柱と前記杭とを一体化するステップとを含む、柱の基礎の施工方法。
【請求項2】
前記杭は、鋼管であり、前記鋼管の上部近傍を貫通するかんざし筋を有する、請求項1に記載の柱の基礎の施工方法。
【請求項3】
前記杭は、内部に充填材と縦筋とを有する鋼管杭である、請求項1または2に記載の柱の基礎の施工方法。
【請求項4】
柱の立設位置に縦穴を掘削し、前記縦穴内に柱を設置するステップと、
前記柱の周囲に所定の強度を有する接続部材を巻付けるステップと、
前記縦穴の内部において柱の周囲にコンクリートを打設することにより、前記柱と前記接続部材とコンクリートとを一体化するステップとを含む、柱の基礎の施工方法。
【請求項5】
前記接続部材は前記柱に近接する第1の部分と、前記柱から離れた位置に延在する、前記第1の部分と異なる第2の部分とを含む、請求項4に記載の柱の基礎の施工方法。
【請求項6】
前記第1の部分と前記第2の部分とは、相互に対向した位置に延在する、請求項5に記載の柱の基礎の施工方法。
【請求項7】
前記接続部材は、ジオグリッド、ベルト、ロープ、金属板、鉄筋、スパイラル筋、かんざし筋のいずれかを含む、請求項1から6のいずれかに記載の柱の基礎の施工方法。
【請求項8】
前記ジオグリッドの原織物、ベルト、ロープは、高強度繊維である、請求項7に記載の柱の基礎の施工方法。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の立設位置に縦穴を掘削し、前記縦穴内に、杭を、前記縦穴の掘削深度よりも深い位置まで打ち込むステップと、
前記縦穴内に柱を設置するステップと、
前記柱と前記杭とを接続部材で接続するステップと、
前記柱と前記杭が接続された状態で、前記縦穴の空間内を含む基礎構築部にコンクリートを打設することにより、前記柱と前記杭とを一体化するステップとを含む、柱の基礎の施工方法。
【請求項2】
前記杭は、鋼管であり、前記鋼管の上部近傍を貫通するかんざし筋を有する、請求項1に記載の柱の基礎の施工方法。
【請求項3】
前記杭は、内部に充填材と縦筋とを有する鋼管杭である、請求項1または2に記載の柱の基礎の施工方法。
【請求項4】
前記接続部材は、ジオグリッド、ベルト、ロープ、金属板、鉄筋、スパイラル筋、かんざし筋のいずれかを含む、請求項1からのいずれかに記載の柱の基礎の施工方法。
【請求項5】
前記ジオグリッドの原織物、ベルト、ロープは、高強度繊維である、請求項に記載の柱の基礎の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−83683(P2006−83683A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22010(P2005−22010)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(391026014)株式会社フジアウテック (10)
【出願人】(591221570)
【Fターム(参考)】