説明

核医学診断装置

【課題】トランスミッション撮像時に適切な検出器内散乱線処理を行って、偶発同時計数の影響を抑制し精度の高い減衰分布を得ることができる核医学診断装置を提供する。
【解決手段】放射線検査装置1では、検出器4によって検出された複数のイベントが所定のタイムウインドウ内で発生し、かつ、複数のイベントの検出エネルギの合計が所定のエネルギウインドウ内であるか否かが判断され、タイムウインドウ内で発生し検出エネルギの合計がエネルギウインドウ内であると判断された複数のイベントについて、照射γ線22のエネルギおよびイベントの検出エネルギを基に、このイベントに係る推定散乱角(推定入射角22)が推定される。そして、イベントの検出位置、このイベントに係る推定散乱角、および外部線源の位置を基に、複数のイベントの検出位置から照射γ線の正しい初期散乱位置を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッション撮像を行う核医学診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PET検査は、15O、13N、11C、18Fなどの陽電子放出核種で標識した薬剤(放射性薬剤;PET用薬剤)を被検体に投与し(または、投与しながら)、この被検体を外部から撮像し、被検体内で放射性薬剤がどのように集積するかを調べるものである。例えば、進行がんは糖の代謝が亢進しているので、糖の一種であるグルコースを放射性同位体であるフッ素−18(18F)で標識したフルオロデオキシグルコース(18FDG)をPET用薬剤として被検者に投与し、その集積分布を画像化することによって、がん病巣の状態を定量的に知ることができる。
【0003】
PET用薬剤からは、固有の確率で放出される陽電子の対消滅に起因して、それぞれ511[keV]のエネルギを持つ一対のγ線(以下、対γ線という)が放射される。互いに正反対の方向に放射される2個のγ線を、2個のγ線検出器で検知することにより、対γ線の飛跡を知ることができる。同様に対γ線の飛跡を多数検知し、例えば、フィルタードバックプロジェクション法(Filtered Back Projection Method)によって画像化すれば、陽電子−電子の対消滅が生じた箇所、すなわち、PET用薬剤の集積分布を表す画像が得られる。なお、得られたデータは、各検出器の間で発生したγ線対の数であるため、その数を各ボクセル(3次元画像を構成する微小立方体)のデータに変換する。
【0004】
被検体内から放射されるγ線は、被検体内の組織や器官などによって不均等に減衰する。そこで、より高精度のPET像を得るには、トランスミッション撮像を行って、被検体内の減衰分布データ(減弱マップ)を取得し、この減衰分布データを用いてPET検査で得られたデータ(エミッションデータ)を補正すればよい。トランスミッション撮像とは、外部線源としてセシウム−137(137Cs)などを用いて、被検体外からγ線を照射し、被検体を透過したγ線の強度を測定することによって、被検体内におけるγ線の減衰率の分布を測定することである。被検体内での減衰による画像カウントの低下を補正することを吸収補正という。
【0005】
SPECT検査は、被検体に、99Tc、67Ga、201Tlなどの単光子放射性核種で標識した薬剤(放射性薬剤;SPECT用薬剤)を投与し、この被検体を外部から撮像するとき、コリメータを用いて被検体内から放射される単光子のγ線の飛跡を規制し、PET検査と同様にエミッション像を得るものである。SPECT検査も、PET検査と同様に、トランスミッション撮像を行って、より高精度のSPECT像を得ることができる。これらの被検体内から放出される薬剤からのγ線の計測をエミッション撮像と呼ぶ。
【0006】
従来、PET検査の精度を向上させるため、半径方向に三層になるようにした多段構成の検出器を備えて深さ位置情報を取得し、それを用いて画像を再構成し、画質の向上を図った放射線検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
PET検査やSPECT検査では、被検体内で散乱したγ線(散乱線)は散乱時に進行方向が変化するため、仮に検出しても放射性薬剤の所在の情報が含まれていないばかりか、ノイズとなって画質を低下させる。そこで、γ線が散乱するときエネルギを失われることを応用し、エネルギ閾値を設けてエネルギ閾値以上のγ線のデータだけを利用し、それより小さいエネルギのγ線のデータは棄却していた。
【0008】
γ線は、さらに、被検体内のほか、検出器内でも散乱を生じる。仮に、ある散乱線の散乱箇所および吸収箇所をもれなく検出できたとすると、検出エネルギの合計は入射したγ線のエネルギに等しくなる。しかし、従来のPET装置やSPECT装置では、複数の検出器で散乱したγ線は各々独立に処理されていたため、複数の検出器で検出されたエネルギの合計がエネルギ閾値を超えていても、それぞれの検出器で検出されたエネルギがエネルギ閾値を超えていなければ、すべての検出イベントが別個の散乱線によるものとみなされ、検出データは利用されなかった。
【0009】
従来、そのような複数の検出器で減衰したデータを利用して検出効率の向上を図るため、複数の検出器で検出したデータを使う核医学診断装置およびPET検査装置が知られている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。検出効率が向上すれば短時間で高画質な像を得ることができるため、被検者の放射線被曝が低減する。
【0010】
PET検査やSPECT検査で複数回散乱したγ線のデータを利用する場合は、初期散乱位置、つまり、複数の検出器のうちどれが最初に信号を検出した検出器なのかを推定する必要がある。初期散乱位置を特定するために、各検出位置でのエネルギと検出位置同士の角度等を用いて推定する構成(特許文献2および特許文献3参照)や撮像装置の中心により近い検出位置を選択する構成(特許文献4参照)が知られている。このような複数の検出器内散乱イベントの検出情報から1つの正しい検出位置を推定する方法を総称して検出器内散乱線処理と呼ぶ。
【0011】
【特許文献1】特開2003−167058号公報
【特許文献2】特開2000−321357号公報(段落0045〜0056、図8、図9)
【特許文献3】特開2003−255048号公報(段落0048〜0049、図9)
【特許文献4】特開2006−214916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記した従来例はいずれもエミッション撮像に係るものであるが、トランスミッション撮像もエミッション撮像と同様に、検出器内での散乱に起因して感度が低下する問題点があった。そこで、従来のPET装置(特許文献1記載)を用いて、トランスミッション撮像においてもエミッション撮像と同様に複数の検出器を用いた計測、すなわち検出器内散乱線処理により、感度を向上させることが考えられる(特許文献2〜4参照)。
【0013】
これらの処理によれば、ある検出イベントが生じたときに、特定の時間幅(タイムウインドウ)内で検出された同時検出イベントについて、全検出イベントのエネルギの合計が外部線源の放出するγ線のエネルギにより設定される所定のエネルギ閾値を超えるか、またはエネルギウインドウ内に入るイベント群について、その中から初期散乱位置(正しい検出位置)を推定することとなる。
【0014】
なお、従来のこれらの処理を用いないトランスミッション撮像では、所定のエネルギウインドウ内に入るイベントだけを取得するため、エネルギウインドウの広さに応じて混入する体内散乱線のみが、取得される減弱マップの精度を劣化させていた。
【0015】
しかしながら、前記した複数の同時イベントを用いた処理を行う場合、エミッション撮像における偶発同時計数(ランダム)成分の混入のように、従来のトランスミッションの単光子撮像では存在しなかった別種の偶発同時計数(ランダム)成分が新たに発生する。この偶発同時計数イベントは、被検体への放射性薬剤の投与量(放射能)が増えるほど増加する。したがって、散乱線処理によって感度の増加を図った反面、偶発同時計数による誤カウントが増加してノイズが増え、吸収補正が適正に行えなくなる問題点があった。
【0016】
そこで、本発明の課題は、トランスミッション撮像時に適切な検出器内散乱線処理を行って、偶発同時計数の影響を抑制し精度の高い減衰分布を得ることができる核医学診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を達成するために、本発明の核医学診断装置は、タイムウインドウ内で発生し検出エネルギの合計が前記エネルギウインドウ内であると判断された複数のイベントについて、照射γ線のエネルギおよびイベントの検出エネルギを基に、このイベントに係る推定散乱角を推定して、イベントの検出位置、このイベントに係る推定散乱角、および外部線源の位置を基に、複数のイベントの検出位置から前記照射γ線の正しい初期散乱位置を選択する構成とした。これらの具体的手段については、後記する実施形態を通じて、詳細に説明するものとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、トランスミッション撮像時に適切な検出器内散乱線処理を行って、偶発同時計数の影響を抑制し精度の高い減衰分布を得ることができる核医学診断装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付した各図を参照し、本発明による各実施形態について詳細に説明する。なお、以降の説明において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。
《第1実施形態》
≪装置の構成≫
図1は、本発明による第1実施形態の放射線検査装置(PET装置)1を示す構成図である。
放射線検査装置1は、撮像装置2と、信号処理装置7と、断層像作成装置10と、ベッド(寝台)16とを備えている。
【0020】
撮像装置2は、ケーシング3、検出器基板5に支持された多数の検出器4、外部線源20を有している。
ケーシング3は、被検体17をベッド16に載置したまま挿入可能な開口部6を有している。
検出器基板5には、配列して実装されている多数の検出器4と、集積回路からなり検出器4からの検出信号を処理する読出回路14とが実装されている。検出器基板5は、体軸方向(被検体17の挿入方向)に複数枚並べられ、検出器ユニット15を構成している。検出器ユニット15は、開口部6の周りを取り囲むように配置されている。
【0021】
図2を参照すると、描画の都合上、検出器ユニット15(図1参照)が円周方向に10個配置されている場合について図示したが、撮像装置2を実現するには、より多数の検出器ユニット15を開口部6の円周方向に配置し、ほぼ円筒形の検出器面を構成するとよい。なお、検出器4が6段に配置される場合について図示したが、検出器4の段数は6段より多くても少なくてもよい。
図1に戻り、開口部6の半径方向に多段で被検体17(撮像範囲)の周囲を取り囲むように検出器4を配置可能であれば、検出器ユニット15の形状や配置は図示したものに限られない。多数の検出器4は、DOI(Depth Of Interaction)構成を実現するように配列される。
【0022】
検出器4は半導体検出器であって、エネルギ分解能に優れたテルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)などの検出素子を含んで構成されている。エネルギ分解能に優れ、このような多段構成が可能であれば、テルル化カドミウム(CdTe)やテルル化カドミウム亜鉛(CZT)に限らず、他の半導体検出器またはシンチレータ検出器(いずれも図示せず)を用いてもよい。あるいは、多段構成に限らず、半径方向に検出位置を分解できる検出素子を用いてもよい。
【0023】
外部線源20は、セシウム−137(137Cs)点線源であって、ハウジング開口部21hを穿設された外部線源ハウジング21内に収められている。
外部線源ハウジング21は、検出器4と開口部6との間に、図示していない支持部によって保持され、図示していない周回機構によって、ハウジング開口部21hを被検体17が挿入される撮像範囲の中央に向けたまま、開口部6の外縁部を周回可能になっている。
外部線源20はトランスミッション撮像時に用いられ、エミッション撮像時は、充分な遮蔽能力を有するシャッタ(図示せず)によってハウジング開口部21hを閉じられている。または、外部線源20は、エミッション撮像時、格納容器(図示せず)に格納され放出γ線を遮蔽される構成としてもよい。外部線源20およびトランスミッション撮像については、後で詳細に説明する。
【0024】
信号処理装置7は、ユニットデータ統合装置112と、γ線弁別ああ8と、同時計数装置9とを備えている。
ユニットデータ統合装置112は、検出器ユニット15ごとに設けられた配線13によって撮像装置2に接続され、検出器ユニット15から出力された検出信号を統合する機能を有する。
なお、検出器4から出力される検出信号には、少なくとも検出器位置アドレス、検出時刻、検出エネルギを示す情報が含まれる。
γ線弁別装置8は、ユニットデータ統合装置112に接続され、ユニットデータ統合装置112から入力された検出信号から、γ線の検出エネルギによって検出信号を分別する機能を有する。
同時計数装置9は、γ線弁別装置8に接続され、複数の検出信号(データ)が実質的に同時に発生したものであるか否かを判定する機能を有する。
【0025】
断層像作成装置10は、信号処理装置7に接続され、コンピュータ11と、データ記憶装置12と、表示装置18とを備えている。
コンピュータ11は、入力装置(図示せず)を有し、手動での命令入力操作などを受け付ける機能と、撮像装置2を制御する機能と、信号処理装置7から取得したデータを断層像データに変換する機能とを備えている。
データ記憶装置12は、コンピュータ11が生成した断層像データを記憶する。
表示装置18は、コンピュータ11が生成した断層像データから、断層像を可視的な画像として表示する。
【0026】
ベッド16は、被検体17を載置した状態で可動であって、被検体17を撮像装置2の開口部6から挿脱できる。
【0027】
≪装置の処理≫
続いて、放射線検査装置(PET装置)1を用いた撮像処理について説明する。
まず、被検体17の体内に、あらかじめ注射などの方法によりPET用の放射性薬剤を投与し、その放射性薬剤が撮像可能な状態に被検体17内に拡散して患部に集積するまで所定の時間待つ。なお、放射性薬剤は、検診する患部などを勘案して選ぶ。そして、被検体17をベッド16上に寝かせる。なお、検査の種類によっては、放射性薬剤をベッド16上に寝かせた被検体17に投与するか、放射性薬剤を被検体17に投与しながら、撮像装置2で被検体17を撮像してもよい。
【0028】
エミッション撮像において、被検体17内から放出されるγ線は被検体17内である割合で散乱したり、減衰したりする。この減衰による画像カウントの低下を補正するための手段が吸収補正であり、この元となるデータを取得するのがトランスミッション撮像である。通常は薬剤投与後エミッション撮像までの時間(エミッション撮像の前)、またはエミッション撮像の後に、トランスミッション撮像を行う。
次に、エミッション撮像について説明してから、トランスミッション撮像について説明する。
【0029】
(エミッション撮像)
エミッション撮像を行うには、放射性薬剤を投与した被検体17をベッド16に載せ、撮像装置2に向かって移動させる。被検体17およびベッド16が、図面の左側から開口部6内に挿入されて図面の右側に向かって移動する。被検体17の患部に集積された放射性薬剤から放出された511[keV]のγ線は、検出器4に入射する。
【0030】
検出器4は、被検体17の患部などから放出されたγ線を検出し、読出回路14へ検出信号を出力する。読出回路14は、検出したγ線のエネルギを計測し、γ線の検出タイミング信号を含む信号と検出アドレス、検出エネルギ情報を出力する。これらの信号は、配線13を通じてユニットデータ統合装置112に送られる。
【0031】
ユニットデータ統合装置112は、すべての検出器ユニット15からの検出信号を統合する。
γ線弁別装置8および同時計数装置9は、検出したγ線が、511[keV]のエネルギを有する対γ線であるか否かを判定する。具体的には、同時計数装置9は、あるイベントの検出時刻からある時間幅、例えば10[nsec]のタイムウインドウの中でもう1つの511[keV]のイベントが検出されたとき、その対検出位置情報をコンピュータ11を介してデータ記憶装置12へ送って記憶させる。このとき、γ線弁別装置8は、検出器4でのエネルギ検出精度はエネルギ分解能で表されるある幅(誤差)を持っているため、目的とする511[keV]を含むあるエネルギ幅、例えば450[keV]〜550[keV]というエネルギウインドウによって照射γ線が511[keV]であるかどうかのエネルギ判定を行い、この範囲外の検出イベントを棄却する。なお、このウインドウ幅によって、わずかにエネルギの低下した幾分の体内散乱線24(図7を参照して後記)の混入を許すことになる。そのため、検出器4はエネルギ分解能の優れたものが望ましく、エネルギウインドウを狭く設定することによって、ノイズとなる混入散乱線の割合を減らすことができる。また、タイムウインドウ内に1対の対γ線が検出されるとは限らず、別個の対のγ線が同一のタイムウインドウ内に検出される場合がある。これは偶発同時計数(ランダム)と呼ばれ、誤った対検出位置情報を与え、画質を低下させる要因となる。投与した放射性薬剤の放射能が多くなるほど、この影響は大きく受ける。タイムウインドウもエネルギウインドウと同様狭い方が望ましい。
【0032】
また、被検体17内でγ線が散乱しうるのと同様に、検出器4内でもγ線は散乱しうる。検出器4内で散乱した場合、検出信号は511[keV]より低いエネルギを示すため、エネルギウインドウ外となり、従来は一律に除外されていた。検出器4が多段である場合、散乱した位置以外の検出器4で散乱光子を捕らえる可能性がある。仮に、検出器4内で散乱した光子が他の検出器4内で完全に吸収されたとすれば、これらの検出信号のエネルギの総和は511[keV]となる。これらの検出イベントはほぼ同時に起こるため、ある時間幅(タイムウインドウ)でもってこれらのイベントを検出し、エネルギ加算処理後のエネルギがエネルギウインドウ内に入っていると判定できれば、1つの照射γ線の現象と推定ができ、棄却されていたイベントを有効に使うことができる。これらのイベントの中で最初に散乱した位置を知ることができれば、エミッション位置由来のγ線入射経路を知ることができる。本願出願人による特開2006−214916号公報に示されるように、511[keV]のγ線が前方散乱の確率が高いことを利用して、これら複数の同時検出イベントのうち開口部6の中心軸により近い検出器4の位置を選択する方法により1つの対検出位置を決定する(以下、検出器内散乱線処理と呼ぶ)。図14に、信号処理装置7内に備えられ、これらの処理を行うエネルギ積算回路301およびch決定回路302を示す。これらの処理は、図14に示すハードウェアではなく、ソフトウェアによって処理が行われるようにしてもよい。
【0033】
図1に戻り、断層像作成装置10は、信号処理装置7から送られ、または、データ記憶装置12に記憶されている対検出位置情報によって、対検出位置を結ぶ直線(LOR:Line of Response)を得て、LORを半径方向rと周回方向θのマトリクスにマッピングし直したサイノグラムを作成し、吸収補正を含む各種の補正処理を施した後、フィルタードバックプロジェクション法やOS−EM法などによって断層像を再構成する。作成された断層像は表示装置18に表示される。
【0034】
(トランスミッション撮像)
次にトランスミッション撮像について説明する。トランスミッション撮像は、外部線源20を用いて被検体17内のγ線透過率(減衰率)の分布を計測するものであって、外部線源20としてX線源の代わりにγ線源を用いるほかは、原則として、X線CT装置(図示せず)を用いた撮像と同様である。その計測に要する時間は、数分程度であり、通常エミッション撮像の前または後に行う。外部線源20からの照射γ線22がエミッション撮像時に混入して画質の劣化を招くため、通常はエミッション撮像とトランスミッション撮像とを別の時相で行う。
【0035】
トランスミッション撮像では、外部線源20から放出され、被検体17を透過した照射γ線22を、エミッション撮像と同じ検出器4で計測する。外部線源20の放射能強度及び計測されたγ線カウントに基づいて、被検体17内のγ線減衰率分布(減弱マップ)を求める。このγ線減衰率分布を用いて、体内(散乱)吸収の補正が行われる。外部線源20として、例えばセシウム−137(137Cs)を用いると、その照射γ線22のエネルギは662[keV]である。したがって、照射γ線22のエネルギは、エミッション撮像で用いる511[keV]の対γ線のエネルギと異なるため、減弱マップは、662[keV]のものを、511[keV]のものへ変換して吸収補正に用いる。
【0036】
図3(適宜図1)を参照し、トランスミッション撮像手順の具体例について説明する。
撮像は本来、三次元で解析すべきものであるが、簡単のため、外部線源20を含む一断面(平面)上ですべてのイベントが起こる例について説明する。
被検体17が横たわっているベッド16が開口部6内に挿入され、トランスミッション撮影を開始するとき、外部線源ハウジング21が格納容器(図示せず)から開口部6と検出器4との間に移動し、設置される。ハウジング開口部21hは対向する検出器4を向いていて、撮像視野外は照射γ線22が影響を及ぼさないように外部線源ハウジング21によって遮蔽されている。外部線源20は点線源であり、外部線源20が周回の上端にあるとき、γ線の放射領域は被検体17の体軸方向も含め、図3中に示した被検体17を挟んで対向に位置する下半分の測定対象となる検出器ユニット15面である。つまり、本実施形態は、いわゆるコーンビームCTの場合を示す。外部線源20は回転機構(図示せず)により開口部6の内周を周回し、全周からの透過データを取得する。撮像が終了すると外部線源20は再び格納容器へ格納される。測定対象となる検出器ユニット15は外部線源20の回転とともに変化する。
【0037】
外部線源20は、前記したとおり、例えばセシウム−137(137Cs)であり、662[keV]のエネルギのγ線を放出する。γ線を検出した検出器4は、エミッション撮像のときと同様に、検出器アドレス、検出時刻、エネルギの3つの情報を含む信号を信号処理装置7(図1参照)へ送る。トランスミッション撮像は対γ線を検出するものでないので、シングルイベントが検出され、662[keV]のエネルギウインドウ(例えば、600〜700[keV])内に入っている場合、そのときの外部線源20の位置情報とともに計数する。また、エミッション撮像と同様に、散乱線処理によって複数の検出器4内で散乱したイベントが実質的に同時に検出され、合計エネルギが662[keV]に対するエネルギウインドウに入れば計数する。初期散乱位置の同定もエミッション撮像と同様に行う。外部線源20の位置Oと検出した位置A1とからLOR(Line Of Response)を求め、エミッション撮像と同様に撮像終了後に画像再構成し、662[keV]の減弱マップを得る。この662[keV]の減弱マップを511[keV]のものに変換し、エミッション撮像の吸収補正に用いる。
【0038】
ここで、まずセシウム−137(137Cs)を用いたトランスミッション撮像における一般的な課題を述べる。セシウム−137(137Cs)を用いたトランスミッション撮像での問題点は大きく2つある。
ひとつはエミッション撮像と同様に体内散乱線24の混入が画像の劣化、すなわち減弱マップの誤差を引き起こすことである。これはエネルギウインドウの広さによってその影響度が異なる。一般にエネルギ分解能が優れているほど、エネルギウインドウを狭く設定でき、体内散乱線24の影響を低減できる。
もうひとつは投与後の被検体17内からのエミッションγ線31(図2参照)がトランスミッションのエネルギウインドウに混入することである。従来のPET装置ではエネルギ分解能が悪く、511[keV]のエネルギを対象とした感度スペクトルがさらに高いエネルギ側まで分布を有し、セシウム−137(137Cs)のγ線の662[keV]を測定するウインドウまで達していたことによる。エネルギ分解能に優れた検出器4を用いれば、これら2つの問題は解決する。
【0039】
しかしながら、エネルギ分解能に優れた検出器4が必ずしも充分な感度を有しているとは限らない。例えば、テルル化カドミウム(CdTe)や、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)などの半導体検出器を用いた場合、511[keV]におけるエネルギ分解能は5%以下とすることも可能であるが、検出器4での感度は従来のシンチレータには及ばない。そのため、エミッション撮像と同様にトランスミッション撮像のときも、検出器内散乱線処理を行い、検出器4内での散乱線をも生かして感度の向上を図っている。これらの処理は、ある検出イベントが生じたときに、特定の時間幅(タイムウインドウ)内で検出された同時検出イベントについて判定するため、エミッション撮像における偶発同時計数(ランダム)成分の混入のように、従来のトランスミッションの単光子撮像では考慮の必要がなかった別種の偶発同時計数(ランダム)成分が発生する。この検出器内散乱ランダムイベントは、被検体17(患者)への放射性薬剤の投与量(放射能)が増えるほど増加する。この結果、散乱線処理は感度の増加という利点の反面、セシウム−137(137Cs)の662[keV]ウインドウ内に誤カウントを生ずるという問題を引き起こし、吸収補正に影響を及ぼす。
【0040】
本実施形態では、散乱線処理によって生じるトランスミッション撮像における偶発同時計数による誤カウントを抑制し、精度の高い減衰分布を得、より正確な吸収補正により、PET像の定量性の向上を図っている。
【0041】
次に、図3を参照し、本実施形態の散乱線処理方法について説明する。
外部線源20から放出された照射γ線22は、被検体17を透過し、検出器4の位置A1で吸収されまたは散乱する。位置A1で散乱した場合は位置A2で吸収されるか、または、さらに散乱して他の点で吸収されたり、吸収されずに撮像装置2を貫通したりする。このとき、照射γ線22が位置A1で完全に吸収されれば、位置A1と外部線源20の位置Oを結ぶ線が正しい透過ラインとして記録される。
【0042】
照射γ線22が位置A1で散乱し、位置A2で吸収されたり位置A2でも散乱して他の点で吸収されたりすれば、エミッションと同様に、次の2つの処理を行う。
(A)エネルギウインドウ処理:
例えば600[keV](ETH_L)<ΣEi<700[keV](ETH_h
(662[keV]ウインドウ)
(B)タイムウインドウ処理:
検出時刻差|ti−tj|<(例えば)10[nsec](Tw)
そして、これらの条件を満たした複数の点を初期散乱位置の候補として選択する。
【0043】
エミッション撮像と同様に、より内側の(外部線源20に近い)検出器4を初期散乱位置に選択するという散乱線処理によって、正しい推定透過ラインを記録してもよい。エネルギが662[keV]のγ線は、エネルギが511[keV]のγ線よりも前方散乱の確率が高いため、この方式はより合理的であるが、次の事項を考慮すべきである。
【0044】
いま、検出器4に入射するγ線を考えると、正しい透過ラインの他に、図7に示す体内散乱位置23からの散乱線や、図8に示す被検体17内の放射性同位元素(RI)30から放出されるエミッションγ線31などが存在する。これらは対象とする662[keV]のエネルギよりも低いエネルギの放射線であり、単独で入射した場合は、通常、エネルギウインドウによって除外される。
【0045】
しかしながら、前記した散乱線処理を行うことにより、エネルギウインドウよりも低いエネルギのものも計数対象として扱うため、誤った位置を出力することがある。例えば、図7に示すように、位置A1で散乱した光子はそのまま撮像装置2を貫通してしまい検出されず、同時に体内散乱線24が位置A3に入射し、位置A1および位置A3でのエネルギの和(EA1+EA3)が662[keV]のエネルギウインドウに入ったとする。このとき、現状の散乱線処理ではより内側にある位置A3を誤って真の情報と判断してしまう。これは、図8に示すように、エミッションγ線31についても同様である。散乱線処理におけるより内側の(外部線源20に近い)検出器4の位置を採用するという方式は、外部線源20のセシウム−137(137Cs)から放出される662[keV]の照射γ線22が検出器4内で前方散乱が多いという前提であるため、このような外部線源20の位置以外からの放射線の入射は誤った位置を検出する可能性が多少なりとも存在する。このような誤計数により、正しい透過分布が若干ぼやけた状態になり、吸収補正の精度を低下させる。
【0046】
検出器4内での散乱現象は、照射γ線の散乱角度θとして、次のコンプトン散乱の式(1)〜式(4)によって記述される。
【0047】
【数1】

【0048】
ν:入射光子の振動数、ν´:散乱光子の振動数、m:電子の静止質量、c:光速
で与えられる。
【0049】
照射γ線光子のエネルギE[keV]、散乱光子のエネルギE´[keV]、電子の静止エネルギE=m(=511[keV])から、次式に書き換えることができる。
【0050】
【数2】

【0051】
式(2)を書き換え、次式に整理できる。
【0052】
【数3】

【0053】
一方、散乱によって反跳電子に与えられるエネルギE
【0054】
【数4】

【0055】
このエネルギEが、散乱時に検出器4で観測される。
したがって、検出器4で計測されたエネルギEから、E´=E − Eとして散乱光子のエネルギE´を推定すれば、散乱角θが推定できる。
【0056】
図5は、散乱角θと、散乱事象で検出されるエネルギ(反跳電子のエネルギ)Eおよび散乱光子のエネルギE´との関係を示すグラフである。
このグラフは、前記した式(1)〜式(4)と等価であって、同様に、検出器4で計測されたエネルギEA1から、E´=E − EA1として、散乱光子のエネルギEA2を推定し、散乱角θが推定できる。
【0057】
散乱角θは、照射γ線の進行方向に対して、散乱光子が飛翔する方向がなす角度である。また、図4(a)に示すように、同一と推定される照射γ線が検出された位置A1と位置A2とを結ぶ直線と、照射γ線の当初の入射方向とがなす角度と同義である。そこで、位置A1から見て、位置A1と位置A2とを結ぶ直線を中心軸とし、推定散乱角θ1で開いた円錐面上に照射γ線の入射方向があると推定できる。すなわち、検出したエネルギEA1またはエネルギEA2から推定した推定散乱角θ1または推定散乱角θ2の円錐の表面から誤差範囲内Δθ内に外部線源20の位置Oが存在すれば、そのイベントを真と判断し、それ以外のものは偽として除外する。
【0058】
この例では、位置A1から見たθ1方向には外部線源20の位置Oが存在するが、位置A2から見た推定散乱角θ2の方向には外部線源20の位置Oは存在しない。したがって、位置A1が正しいと判定できる。この判定は、言い換えれば、位置A1,位置A2のそれぞれについて角∠OAiAjが推定散乱角θi±Δθiの範囲内に存在するとき真とし、それ以外を除去するということである。誤差範囲をΔθiと添字を付したのは、検出器4が立方体状や球状ではなく、直方体状である場合など、検出位置Aiが検出器4内で異方性のある誤差を持ち、角度誤差を散乱角θの大きさ(方向)により変化させることが必要な場合があるからである。
【0059】
図4(b)に示すように、別の解釈をすると、位置A1および位置A2から見て、ベクトルOA1、OA2に対してそれぞれ推定散乱角θ1、推定散乱角θ2方向に前記した条件(A)のエネルギと(B)の同時性を満たす検出位置が存在するか否かで、そのイベントが真であるか偽であるかを判断ができるということでもある。この判定により、前記した特殊な偶発同時イベントや体内散乱線24を除去できる。
【0060】
次に、具体的な処理手順について説明する。
図9は、本発明による第1実施形態のγ線の初期散乱位置のイベントと偶発同時散乱線イベント(棄却イベント)を推定識別する処理を示すフローチャートである。
まず、複数イベントが検出され、位置Ai、エネルギEi、検出時刻tiのデータが出力される(ステップS101)。
【0061】
次に、エネルギウインドウ処理およびタイムウインドウ処理を行う(ステップS102)。つまり、あるタイムウインドウTw内に複数のイベントが発生し、かつそれら複数イベントの検出エネルギの合計が662[keV]を検出するためのエネルギウインドウEw内にあることを判断する。具体的には、前記した条件(A)および(B)について判定すればよい。
いずれかの条件を満たさない場合は(ステップS102のNo)、このイベントに係るデータを棄却し(ステップS103)、処理を終了する。
【0062】
いずれの条件も満たした場合は(ステップS102のYes)、単独で662[keV]ウインドウに入るイベントがあるか否かを判断する(ステップS104)。
単独で662[keV]ウインドウに入るイベントがある場合は(ステップS104のYes)、その位置を真の検出位置とし(ステップS105)、処理を終了する。
【0063】
単独で662[keV]ウインドウに入るイベントがない場合は(ステップS104のNo)、得られた各検出位置Aiについて、検出エネルギから推定散乱角θiと、これに対応する角度誤差Δθiと、角∠OAiAjとを計算する(ステップS106)。
【0064】
そして、各検出位置Ai同士を結ぶすべての線分に対して180°−∠OAiAjを求めて、θi−Δθi<180°−∠OAiAj<θi+Δθを満たす位置Aiがあるか否かを判断する。
これを満たす位置Aiがない場合は(ステップS107のNo)、そのイベントの位置Aiは棄却し(ステップS108)、処理を終了する。
【0065】
これを満たす位置Aiがある場合は(ステップS107のYes)、そのイベントの位置Aiを初期散乱位置として決定し(ステップS109)、処理を終了する。
【0066】
なお、角度誤差Δθiは、エネルギ分解能と検出位置の精度に起因する関数である。エネルギ分解能が優れていればコンプトン散乱角θの算出自体の誤差が減少する。また、1つの検出器4が照射γ線の照射方向に沿って細長い場合、長手方向には位置誤差が大きいため、長手方向に垂直な方向には角度誤差Δθiは大きく設定される。概して検出器4へのγ線の入射は長手方向であるため、散乱角θが90°に近いほど角度誤差Δθを大きくする。検出器4が略立方体であれば、角度誤差Δθは一定でよい。また、検出器4が分離した多段構成では、検出器4は有限の大きさであるため、隣接検出器同士では誤差は±90°になってしまうが、検出器4内でのγ線反応の位置の確率を考慮して範囲を絞ることができる。角度誤差Δθiは、散乱角θを変数とする関数から演算してもよいし、散乱角θと角度誤差Δθiとの対応マップ(図示せず)を用意しておき、これを参照してもよい。さらに、無段階に検出位置Aiを識別できる検出素子を用いれば、角度誤差Δθを小さくすることができ、非常に精度よく偶発同時イベントを除去できる。
【0067】
これらの処理は、信号処理装置7で行ってもよいし、コンピュータ11で行ってもよい。
また、複数の位置が条件に適合した場合、より線源に近いイベント位置を選択するか、または、すべてのイベント位置を棄却するように処理を行う。
【0068】
これらの構成は、検出器4内で照射γ線が散乱することを前提としていて、検出器4の配列の内側に、より散乱しやすい(つまり、原子番号の比較的小さい)珪素(14Si)やガリウム砒素(31Ga 33As)などを用いた検出器4を配置し、その外側に(原子番号の比較的大きい)テルル化カドミウム(48Cd 52Te)、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、あるいはよりγ線を吸収しやすい臭化タリウム(TlBr)などを用いた検出器4を配置するとよい。
【0069】
このように、第1実施形態の放射線検査装置によれば、散乱線処理を用いたトランスミッション撮像において、偶発同時計数を抑制することができ、精度の高い減弱分布を得、より正確な吸収補正により、PET像の定量性を向上できる。
【0070】
なお、この効果は、照射γ線の入射方向に対して位置分解能を有し、ある程度、検出器4内で散乱が生じ、エネルギ分解能の優れた検出器4を採用する場合に顕著である。γ線の検出位置の精度が高いほど、また、エネルギ分解能が優れているほど、効果は大きくなる。本実施形態の課題であった偶発同時計数は、散乱線処理をしているが時間分解能が充分でない場合、特にテルル化カドミウム(CdTe)やテルル化カドミウム亜鉛(CZT)などを用いた場合に影響が大きかった。しかし、本実施形態によれば、タイムウインドウを狭めなくても偶発同時計数を抑制でき、良好な吸収補正を行うことができるようになる。
【0071】
《第2実施形態》
次に、本発明による第2実施形態の放射線検査装置について説明する。
この放射線検査装置は、第1実施形態の放射線検査装置1に対して、トランスミッションにおける散乱線処理方法が異なるが、その他のハードウェア構成は、第1実施形態の放射線検査装置1と同様でよい。そこで、第1実施形態の放射線検査装置1を引用し、これと異なる構成および動作について説明し、その余の構成および動作について、重複する説明を省略する。
【0072】
まず、第1実施形態において、散乱線処理に用いるイベント数を増やすと感度を向上させることができる。しかし、多数のコンプトン散乱角が同定され、前記した角度条件を満たす位置が複数個出現し、初期散乱位置の同定が困難になる可能性がある。
【0073】
このような問題に鑑みて、外部線源20に最も近い検出器4の段の位置情報を優先して利用し、この検出器4の位置に対して第1実施形態による処理を適用する。この場合、一部の後方散乱イベントを計数し損ねることになるが、前方散乱の確率の高さと検出器4での感度向上効果とを考慮すると、総合して感度が向上する。よって感度向上と偶発同時計数の除去精度とを両立させることができる。
【0074】
このときに判定の前処理として、図5に示すように初期散乱位置での検出エネルギは478[keV](コンプトンエッジエネルギEcomp)より大きくなることはない(散乱光子のエネルギである)ため、このエネルギ以上のエネルギを検出した検出位置は初期散乱位置から除外できる(検出位置情報としては利用する)。
【0075】
さらに、図6(a)および図6(b)に示すとおり、478[keV]以上のエネルギを持った散乱光子は、散乱角θが45°以下の前方散乱をしたものであることから、このエネルギが外部線源20に最も近い検出器4の段で検出された場合は、検出器4の領域よりも内側からの散乱線であることが分かるので、このイベントは排除できる。このときの検出器4の段とは、検出器基板5(図3など参照)における検出器4の配列の横並びの1列単位を指す。段の識別は同一の検出器基板5内だけでなく、周方向、体軸方向を含めた隣接する検出器基板5において定義可能であり、それぞれの段について外部線源20位置に近い方から優先段(以下最近接段という)を決定する。これにより複数候補の数が減って、判定精度が向上する。これらの判定を付加することにより、エミッション由来のエネルギが511[keV]のγ線は確実に削除されるか、位置情報のみを残して、初期散乱位置の候補から除外され、エミッションに起因する偶発同時計数の増加を低減できる。
【0076】
さらに、図6(a)のグラフを参照すると、図6(b)に示すように、最近接段が初期散乱位置であるためには前方散乱の場合であるため、θ=90°+Δθの範囲のエネルギ(374[keV]+ΔE)だけ、初期散乱位置候補として残し、それ以上のエネルギを検出した場合は除外することができる。角度誤差Δθは可変なため、角度誤差Δθに対応したエネルギΔEは、散乱角θの関数とするとよいが、前処理では、エネルギΔEはあらかじめ適切な値を決めておけばよい。
【0077】
このとき、最近接段以外にも次段以降で初期散乱位置の可能性がまだ存在する。図6(c)に示すように、次段以降が初期散乱位置である場合、それより内側(外部線源20寄り)の段に同時イベントが存在するためには、後方散乱を起こした場合に限定される。478[keV]以上のエネルギ検出の場合は先ほどと同様、初期散乱位置ではないので除外できる。角度誤差Δθ分を加味して、θ=90°−Δθの範囲のエネルギ(374[keV]−ΔE)以上、478[keV]以下のエネルギ範囲のイベントだけ初期散乱位置候補として残すことができる。必要に応じてこのような候補点についても第1実施形態と同様に処理を行う。
【0078】
図10および図11は、本発明による第2実施形態のγ線の初期散乱位置のイベントと偶発同時散乱線イベント(棄却イベント)を推定識別する処理を示すフローチャートである。
まず、複数イベントの検出が行われ、位置Ai、エネルギEi、検出時刻tiのデータを得る(ステップS201)。
【0079】
そして、第1実施形態のステップS102(図9参照)と同様に、エネルギウインドウ処理およびタイムウインドウ処理を行う(ステップS202)。その結果によっては(ステップS202のNo)、第1実施形態のステップS103(図9参照)と同様にこれらのイベントを棄却し(ステップS203)、処理を終了する。
【0080】
さらに、第1実施形態のステップS104(図9参照)と同様に、単独で662[keV]に入るイベントがあるか否かを判断する(ステップS204)。その結果によっては(ステップS204のYes)、第1実施形態のステップS105(図9参照)と同様に、その位置を真の検出位置とし(ステップS205)、処理を終了する。
このように、あるタイムウインドウTw内に複数のイベントが発生し、かつそれら複数イベントの検出エネルギの合計が662[keV]を検出するためのエネルギウインドウEw内にあることが、条件(A)(B)の判定にもとづき判断された場合に、次のステップへ進む。
【0081】
次に、検出器4の段の位置の決定を行う(ステップS206)。すなわち、各検出イベント位置について、検出器4の並びの中での段情報を得る。
このとき、体軸方向にも斜めに入射するため、体軸方向と半径方向の2つを加味して、外部線源20により近い段から優先順位を決定する。
【0082】
このイベントのエネルギEiについて、Ei>478[keV]を満たすか否かを判断する(ステップS207)。
Ei>478[keV]を満たす場合(ステップS207のYes)、最近接段(すなわち、優先順位の最も高い段)であるか否かを判断する(ステップS211)。
最近接段である場合(ステップS211のYes)、このイベントを除外し(ステップS208)、残ったイベントに対して、ステップS202以降の処理を繰り返す。
このイベントが最近接段でない場合(ステップS211のNo)、初期散乱位置候補フラグを0にし(ステップS212)、次のステップ(ステップS241、図11参照)へ進む。
【0083】
このイベントのエネルギEiについて、Ei>478[keV]を満たすか否かを判断し(ステップS207)、Ei>478[keV]を満たさない場合(ステップS207のNo)、最近接段(すなわち、優先順位の最も高い段)であるか否かを判断する(ステップS221)。
【0084】
最近接段である場合(ステップS221のYes)、Ei<374[keV]+ΔEが満たされているか否かを判断する(ステップS222)。
満たされていない場合(ステップS222のNo)、このイベントを除外し(ステップS208)、処理を終了する。
満たされている場合(ステップS222のYes)、初期散乱位置候補フラグを1にし(ステップS223)、次のステップ(ステップS241、図11参照)へ進む。
最近接段でない場合(ステップS221のNo)、次段以降の処理(ステップS231,S232,S233)へ進む。
【0085】
すなわち、複数の検出位置Aiのうち優先順位の最も高い段でのエネルギが略478[keV]以上の場合、このイベントを排除する。このようなイベントがあった場合、再びステップS202以降の処理へ戻る。なかった場合は優先順位の最も高い段が最近接段として決定される。
そして、最近接段イベント検出位置について、略478[keV]以上のイベント位置を初期位置の候補から除外する(初期散乱位置候補フラグ=0)。また、最近接段イベント検出位置において、所定のエネルギレベルΔEを用いて、90°方向の散乱時の検出エネルギである374[keV]+ΔEより低い値であれば、初期散乱位置候補フラグは1とする。高い値であれば、このイベントは排除する。
【0086】
次段以降の処理では、まず、Ei>374[keV]−ΔEが満たされているか否かを判断する(ステップS231)。
満たされている場合(ステップS231のYes)、初期散乱位置候補フラグを1にする(ステップS232)。また、満たされていない場合(ステップS231のNo)、初期散乱位置候補フラグを0にする(ステップS233)。そして、いずれの場合も、次のステップ(ステップS241、図11参照)へ進む。
すなわち、最近接段の次段以降の検出イベントについて、順次検出エネルギを374[keV]−ΔEと比較し、高ければ初期散乱位置候補フラグを1とする。低ければ初期散乱位置候補フラグを0とする。
なお、次段以降の処理を行わない場合は、ステップS221,S231,S232,S233の処理を省略する。
【0087】
図11へ移り、次に、イベントデータ付加出力を行う(ステップS241)。検出イベントデータは、例えば、段情報および初期散乱位置候補フラグ(0または1)をもとのイベントデータに付加して、アドレス、段情報、エネルギ、検出時刻、および初期散乱位置候補フラグを含むデータとなる。
【0088】
そして、初期散乱位置候補フラグが1のものについてのみ、散乱角θi、角度誤差Δθi、角∠OAiAjを計算する(ステップS242)。
さらに、θi−Δθi<180°−∠OAiAj<θi+Δθiを満たすものが存在するか否かを判断する(ステップS243)。
この条件を満たすものが存在しない場合は(ステップS243のNo)、そのイベント位置Aiは棄却し(ステップS244)、処理を終了する。
この条件を満たすものが存在する場合は(ステップS243のYes)、そのイベント位置を初期散乱位置として決定し、処理を終了する。
すなわち、初期散乱位置候補フラグが1となったイベントの検出位置Aiについて、検出エネルギから推定散乱角θiを算出し、他の各検出位置Ajとを結ぶすべての線分に対して180°−∠OAiAjを求めて、これがθi±Δθiには入っている位置にあった場合、Aiを初期散乱位置として決定する(ステップS245)。
【0089】
なお、条件を満たすイベント位置が複数存在した場合は、より内側のものを優先するか(つまり、より外部線源20に近いイベント位置を選択するか)、すべてのイベント位置を棄却するかの処理を行う。
これらの処理は、信号処理装置7内で行うよう構成してもよいし、コンピュータ11内で行うよう構成してもよい。
【0090】
図10に戻り、前記したとおり、処理の簡略化のため、最近接段についてのみ処理し、次段以降の処理を省略してもよい。特に散乱処理における同時検出イベントの許容値を大きくし、図12に示すように条件(A)(B)を満たす複数のイベントが発生したときは、最近接段についてのみ処理を行うことによって、効率的に初期散乱位置の推定や偶発同時イベントの除去を行うことができ、検出位置の確かさを高めることができる。この例では、複数の候補点から初期散乱位置を推定する代わりに、充分高い確率で初期散乱位置と思われる位置についてそれが正しい位置かどうかを確認、または除外しているので、複数の点のエネルギから角度を算出する必要がなく、計算量が少なくて済む。比較例として、初期散乱位置を完全に推定するには多数の候補点同士のエネルギと角度を計算してひとつひとつ判定していく必要があるが、本実施形態の方法では、一点だけのエネルギから散乱角θを推定し、判定ができる。したがって、計算点以外の検出点がどのようなエネルギを有し、どのような散乱経路をたどっていてもよく、エネルギの総和がエネルギウインドウEwに入っていることが分かればよい。
【0091】
図12に示す例のように、位置A1→位置A5→位置A6という散乱順序を持つイベントがあったとする。複数の検出器4によって、これらの多数イベントのエネルギの総和がエネルギウインドウEwに入っており、かつタイムウインドウTwに入る同時検出であるということが検出できる。このときに最近接段の位置A1で検出エネルギからコンプトン散乱による推定散乱角θ1を推定し、他の検出イベントがθ1±Δθ1方向に存在するか判定すると、位置A5が該当することがわかり、位置A1が正しい位置であったことがわかる。位置A5のエネルギ情報が角度判定に影響を及ぼさないということは、検出エネルギの総和がエネルギウインドウEwに入るという条件だけ満たせば、位置A5でどのような散乱をしても全吸収してもどちらでもよいことを意味する。さらには、位置A6でさらに散乱して位置A7が検出点として増えてもよい。すなわち、一点だけのエネルギから角度推定、判定ができるということであり、このような単純な判定を行うだけで最近接検出位置が正しい初期散乱位置なのかどうかが判定できる。
【0092】
また、図13に示す例のように、位置A5で散乱した光子は装置外に抜けてしまい、代わりに、被検体17内の放射性同位元素30から放出されたエミッションγ線31が混入して位置A7で検出され、エネルギ条件および同時検出条件を満たしたとする。この検出イベント位置が推定散乱角θ1の方向にないことは、前記した説明のとおりである。このような同時検出は、位置A1,位置A5,位置A7は同一の入射光子による現象ではないので、比較例として、多数の候補点同士のエネルギと角度を計算してひとつひとつ判定していく方法では、イベント全体が棄却される。しかし、確率的に位置A7が散乱角θ方向に存在し、誤った判定を行う可能性は存在するものの、厳密にはこのような正しくない同時検出イベント群であっても、位置A5が推定散乱角θ1の方向に位置すれば位置A1は正しい初期散乱位置だと判定することができる。エミッションγ線31による偶発同時イベントは投与した放射性同位元素(RI)30が増えるにつれ許容する同時検出イベント数に応じて、2乗,3乗,…に比例した項を持って増大する。このような誤計数は、初期散乱位置として最近接段を選択する簡易的なシステムでは、主にエミッションγ線31の検出が最近接段で起こるときに生じる。本実施形態では、このような場合は適当でない推定散乱角θ1が推定されるので、他の検出イベントがその角度方向に存在しなければ除外することができる。したがって、初期散乱位置として最近接段を選択する構成と比較して、感度を落とさずに検出精度を向上させることができる。
【0093】
本実施形態の放射線検査装置によれば、第1実施形態の放射線検査装置1による効果に加え、角度計算の処理が減るため、演算時間をさらに短縮できる。さらに、感度がさらに向上するため、トランスミッションの撮像時間をさらに短縮することができ、被検体17の放射線被曝をさらに低減できる。
【0094】
≪その他の実施形態≫
本発明による好適な実施形態について一例を示したが、本発明は前記した各実施形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、次の実施形態が考えられる。
(1)前記実施形態では、ユニットデータ統合装置112が、1つの検出器ユニット15の範囲内における検出器4からの複数の信号を処理するように記載したが、複数の検出器ユニット15にわたってγ線が散乱する可能性がある場合は、ユニットデータ統合装置112が、それらの複数の検出器ユニット15に属する検出器4からの信号を配線13経由で入力し、処理するように構成することも可能である。
(2)前記実施形態では、放射線検査装置1としてPET装置を例に示したが、吸収補正を行うSPECT装置でも同様のことが可能である。この場合、外部線源20はコバルト−57(57Co)などが用いられる。
(3)γ線が被検体17の方向から検出器4に入射し、散乱すると、減衰したγ線が他の検出器4に入射するため、被検体17に近い方の検出器4は検出感度が高く、被検体17に遠い方の検出器4は検出感度が低くなる。そこで、被検体17に近い方の検出器4を被検体17の体軸に対する法線方向(γ線の入射方向)に短くし、被検体17から遠い方の検出器4を前記法線方向に長くすることによって、検出器4の単位時間あたりのγ線の検出回数を平準化し、検出ミスを減らすことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によるトランスミッション撮像における散乱線処理方法は、エネルギ分解能に優れているが時間分解能の向上が難しい半導体検出器などの放射線検出器を用いたPET装置やSPECT装置において特に有効である。また、エネルギ分解能に優れ、γ線入射方向の検出位置を精度よく検出できる検出器構成であれば、半導体検出器に限らず、シンチレータ検出器を用いた装置においても有効である。さらに、エミッション撮像を行わないが、トランスミッション撮像を行う放射線検査装置に適用しても、高精度の放射線CT透過像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明による第1実施形態の放射線検査装置(PET装置)を示す構成図である。
【図2】本発明による第1実施形態に係る撮像装置を示す垂直断面図であって、エミッション撮像の状態を示している。
【図3】本発明による第1実施形態に係る撮像装置を示す垂直断面図であって、トランスミッション撮像の状態を示している。
【図4】本発明による実施形態の処理原理を示す説明図である。
【図5】散乱角と、散乱事象で検出されるエネルギ(反跳電子のエネルギ)および散乱光子のエネルギとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明による実施形態におけるエネルギ判定処理の一例を示す図である。
【図7】本発明による実施形態に係る撮像装置を示す垂直断面図であって、外部線源からのγ線の体内散乱線によって偶発同時計数が生じる例を示している。
【図8】本発明による実施形態に係る撮像装置を示す垂直断面図であって、体内RIからのエミッション線により偶発同時計数を生じる例を示している。
【図9】本発明による第1実施形態のγ線の初期散乱位置のイベントと偶発同時散乱線イベント(棄却イベント)を推定識別する処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明による第2実施形態のγ線の初期散乱位置のイベントと偶発同時散乱線イベント(棄却イベント)を推定識別する処理を示すフローチャートの第1面である。
【図11】本発明による第2実施形態のγ線の初期散乱位置のイベントと偶発同時散乱線イベント(棄却イベント)を推定識別する処理を示すフローチャートの第2面である。
【図12】本発明による実施形態の撮像装置を示す垂直断面図であって、本実施形態の原理によって、複数同時検出イベントにおいて、初期散乱位置の検証、偶発同時散乱線イベントの棄却判定を行う例を示している。
【図13】本発明による実施形態に係る撮像装置を示す垂直断面図であって、本実施形態の原理によって、複数同時検出イベントにおいて、初期散乱位置の検証、偶発同時散乱線イベントの棄却判定を行う例を示している。
【図14】信号処理装置内に備えられるエネルギ積算回路およびch決定回路の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0097】
1 放射線検査装置(核医学診断装置)
2 撮像装置
3 ケーシング
4 検出器
5 検出器基板
6 開口部
7 信号処理装置(散乱角推定部)
8 γ線弁別装置
9 同時計数装置
10 断層像作成装置(散乱角推定部)
11 コンピュータ
12 データ記憶装置
13 配線
14 読出回路
15 検出器ユニット
16 ベッド
17 被検体
18 表示装置
20 外部線源
21 外部線源ハウジング
21h ハウジング開口部
22 照射γ線
23 体内散乱位置
24 体内散乱線
30 放射性同位元素
31 エミッションγ線
112 ユニットデータ統合装置
301 エネルギ積算回路
302 ch決定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像領域へ照射γ線を放出する外部線源と、前記照射γ線の入射方向に位置分解能を有するように配置された複数の検出器と、前記検出器からの検出信号を基に前記撮像領域内のトランスミッション像を生成するトランスミッション像生成部とを具備した核医学診断装置であって、
前記検出器によって検出された複数のイベントが所定のタイムウインドウ内で発生し、かつ、前記複数のイベントの検出エネルギの合計が所定のエネルギウインドウ内であるか否かを判断する信号処理部と、
前記タイムウインドウ内で発生し前記検出エネルギの合計が前記エネルギウインドウ内であると判断された前記複数のイベントiについて、前記照射γ線のエネルギEおよび前記イベントの前記検出エネルギE´を基に、当該イベントに係る散乱γ線の散乱角θiを推定する散乱角推定部と、
前記イベントの検出位置、当該イベントに係る前記推定散乱角θi、および前記外部線源の位置Oを基に、前記複数のイベントの検出位置から前記照射γ線の正しい初期散乱位置を選択する初期散乱位置選択部と、
を具備したことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項2】
所定の撮像領域へ照射γ線を放出する外部線源と、前記照射γ線の入射方向に位置分解能を有するように配置された複数の検出器と、前記検出器からの検出信号を基に前記撮像領域内のトランスミッション像を生成するトランスミッション像生成部とを具備した核医学診断装置であって、
前記検出器によって検出された複数のイベントが所定のタイムウインドウ内で発生し、かつ、前記複数のイベントの検出エネルギの合計が所定のエネルギウインドウ内であるか否かを判断する信号処理部と、
前記タイムウインドウ内で発生し前記検出エネルギの合計が前記エネルギウインドウ内であると判断された前記複数のイベントiについて、前記外部線源に最も近接したものを前記照射γ線の正しい初期散乱位置として選択する初期散乱位置選択部と、
を具備したことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項3】
前記散乱角推定部の推定は、前記照射γ線のエネルギEから前記イベントの前記検出エネルギE´を減算して、散乱γ線の散乱角θiを推定するものであり、
前記初期散乱位置選択部の選択は、外部線源の位置O、前記複数のイベントのうち各イベントの位置Aiおよび位置Ajのなす角∠OAiAjを求めて、180°−∠OAiAjが所定の誤差範囲Δθを含むθi±Δθiの範囲内に合致するイベント位置Aiを正しい検出位置として選択するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項4】
前記タイムウインドウ内で発生し前記検出エネルギの合計が前記エネルギウインドウ内であると判断された前記複数のイベントiについて、前記照射γ線のエネルギEから前記イベントの前記検出エネルギE´を減算して、散乱γ線の散乱角θiを推定する散乱角推定部とを具備し、
前記初期散乱位置選択部の選択は、前記複数のイベントiについて、前記外部線源に近いものから前記照射γ線の正しい検出位置候補として選択していき、外部線源の位置O、前記複数のイベントのうち各イベントの位置Aiおよび位置Ajのなす角∠OAiAjを求めて、180°−∠OAiAjが所定の誤差範囲Δθを含むθi±Δθiの範囲内に合致しないイベント位置Aiを前記正しい検出位置候補から除外してゆき、前記正しい検出位置を選択するものである、
ことを特徴とする請求項2に記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記誤差範囲Δθiは、前記推定散乱角θiの関数であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の核医学診断装置。
【請求項6】
前記検出器は、多段検出器または深さ方向検出機能を有する検出器を有するDOI(Depth of Interaction)検出構成であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
【請求項7】
前記検出器のうち、前記外部線源に対して前段となる検出器は、前記外部線源に対して後段となる検出器よりも、原子番号の小さい元素からなる検出素子を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
【請求項8】
前記前段となる検出器は、珪素(14Si)またはガリウム砒素(31Ga 33As)からなる検出素子を含み、前記後段となる検出器は、テルル化カドミウム(48Cd 52Te)からなる検出素子を含むことを特徴とする請求項7に記載の核医学診断装置。
【請求項9】
前記検出器は、前記γ線の検出素子として、テルル化カドミウム(CdTe)またはテルル化カドミウム亜鉛(CZT)を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
【請求項10】
前記外部線源は、点線源であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
【請求項11】
前記外部線源は、セシウム−137(137Cs)またはゲルマニウム−68(68Ge)からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。
【請求項12】
PET撮像機能またはSPECT撮像機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核医学診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−190967(P2008−190967A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24776(P2007−24776)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】