説明

栽培ハウス

【課題】積雪による破損を防止することが可能な栽培ハウスを提供する。
【解決手段】保持部材に保持された植物を栽培するための栽培ハウスであって、保持部材を支持する支持台と、支持台に支持された保持部材を収容する、水平軸周りに回転可能な収容体と、を備える栽培ハウス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持部材に保持された植物を栽培するための栽培ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農作物等の植物を降雨等から保護し、あるいは温度環境を調整する等の目的で施設園芸が広く行われており、この施設園芸においては一般的に栽培ハウスが用いられている。この栽培ハウスは、例えば特許文献1に示されるように、アーチ状のフレームをビニールシートで覆い、栽培する植物をその内部に収容する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−61481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような栽培ハウスは、降雪量の多い寒冷地で用いられた場合、屋根部分に多量の雪が積もり、雪の重量で破損してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、積雪による破損を防止することが可能な栽培ハウスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、保持部材に保持された植物を栽培するための栽培ハウスであって、前記保持部材を支持する支持台と、前記支持台に支持された保持部材を収容する、水平軸周りに回転可能な収容体と、を備えている。
【0007】
上記栽培ハウスは、収容体を水平軸周りに回転させることで収容体に積もる雪を落下させることができるため、積雪により収容体が破損するのを防止することができる。また、収容体が回転することで台風等の際にも風の影響を受けにくく、暴風による収容体の破損を防止することができる。なお、本発明における「保持部材」は、植物を保持することができるものであればよく、例えば、中空の箱状のものや、パネル状のもの、プランタ等も含む概念である。
【0008】
また、上記栽培ハウスは、収容体を自動で回転させることができるよう、収容体を回転させる回転手段をさらに備えることができる。
【0009】
上記回転手段は、収容体の外周面に接触し水平軸周りに回転可能な転動体、及び転動体を回転駆動する駆動源を有していてもよい。
【0010】
また、上記栽培ハウスにおいて、収容体は、水平方向に延びる円筒形状に形成されることが好ましい。この構成によれば、収容体に積もる雪を確実に落下させることができる。
【0011】
また、上記栽培ハウスは、収容体が透明であって一部が遮光されており、この遮光された部分が収容体の軸方向に延びるよう構成されていてもよい。この構成によれば、必要に応じて収容体を回転させ遮光された部分を収容体内の植物の上部に配置することで、収容体内の植物に照射される光量や植物に対する日照時間を制限することができる。なお、本発明の「遮光」とは、完全に光を遮断する場合だけではなく、例えば、薄手の布や寒冷紗等を用いて光を一部遮断する場合も含む概念である。また、本発明において「収容体の一部を遮光する」とは、収容体の一部を遮光材で形成することや、収容体の外側面又は内側面を遮光材で覆うこと等を含む。
【0012】
また、上記栽培ハウスは、収容体が、支持フレーム、及びこの支持フレームに摺動可能に支持されるとともに収容体の軸方向に延びる複数の被覆部材を有し、各被覆部材を支持フレームから取り外すことができるよう構成することができる。これにより、被覆部材を容易に交換することができ、また、各々異なる材質の被覆部材で収容体を構成することもできる。なお、被覆部材としては、例えば、ビニールシート、遮光材、断熱材等、種々のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、積雪による栽培ハウスの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る栽培ハウスの一部を示す、斜視透視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る栽培ハウスの正面断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る栽培ハウスの側面断面図である。
【図4】本発明の実施形態に栽培ハウスにおける回転手段の(a)正面図、及び(b)側面断面図である。
【図5】本発明の実施形態に栽培ハウスにおける保持部材の正面断面図である。
【図6】上記実施形態の変形例に係る栽培ハウスにおける円筒部の斜視図である。
【図7】上記実施形態の変形例に係る栽培ハウスの正面断面図である。
【図8】上記実施形態の変形例に係る栽培ハウスの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る栽培ハウスの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
本実施形態に係る栽培ハウス1は、図1に示すように、植物Pを保持する保持部材4を支持するための支持台2と、支持台2上の保持部材4を収容する収容体3と、を備えている。
【0017】
支持台2は、図1及び図2に示すように、複数の保持部材4が載置される載置部21と、この載置部21を支持する複数の脚部22とを備えている。載置部21は、載置された保持部材4を水平方向に搬送することができるよう、駆動源(図示省略)によって駆動される複数の円筒コロ211を有している。各脚部22には、収容体3を水平軸周りに回転させられるよう、後述する回転手段5が取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、支持台2の少なくとも一方の端部には、各保持部材4を昇降させるための昇降機構6が設けられていてもよい。この昇降機構6は、例えば、保持部材4を収容する昇降ケージ61をチェーン62の巻き取り及び送り出しにより昇降させるよう構成されており、さらに、この昇降ケージ61が保持部材4ごと反転可能に構成されていてもよい。このように昇降ゲージ61を反転させる場合は、昇降ゲージ61の下方に液体が貯留される貯留槽7が設けられていることが好ましく、これにより、植物Pを貯留槽7内の液体に浸漬し、例えば、害虫駆除や、葉面施肥、有害物質の除去等を行うことができる。
【0019】
収容体3は、図1及び図2に示すように、複数の円筒部31から成り、各円筒部31は支持台2の脚部22間に配置されている。各円筒部31は、図1及び図3に示すように、複数の環状フレーム311、及び複数の環状フレーム311を連結する複数の水平フレーム312を有しており、これらの環状フレーム311及び水平フレーム312を透明のビニールシート313で覆った構成となっている。また、各円筒部31の両端の環状フレーム311は、図4(a)に示すように、後述の回転手段5の転動体51が係合するための係合溝314が周縁部に形成されている。なお、収容体3は単一の円筒部で構成されていてもよく、少なくとも一つの開閉可能な換気口が設けられていることが好ましい。
【0020】
回転手段5は、図1に示すように、各円筒部31を回転可能に支持している。より詳細には、回転手段5は、図2及び図4に示すように、各円筒部31の両端の環状フレーム311における係合溝314に係合する複数の転動体51と、回転軸52を介して各転動体51を水平軸周りに回転させる駆動源53と、を備えている。回転軸52は、図1及び図4(b)に示すように、支持台2の脚部22を貫通するとともに複数の円筒部31に亘って水平方向に並ぶ、複数の転動体51を連結しており、駆動源53により駆動された際に複数の円筒部31を同時に回転させる。なお、駆動源53は、一部の回転軸52にのみ設けることもできる。
【0021】
保持部材4は、図5に示すように、中空の箱状であり、上下に分割されている。保持部材4の上面には複数の貫通孔41が設けられており、この貫通孔41によって、葉茎部が保持部材4の上面に露出するとともに根部が保持部材4の内部に収納されるよう植物Pが保持される。保持部材4は、内部に培養液を注入するための注入管42、及び内部から培養液を排出するための排出管43を有しており、この注入管42を介して培養液タンク(図示省略)から内部に培養液が注入され、排出管43を介して内部から排出された培養液が排出樋(図示省略)を経て培養液タンク(図示省略)に戻されるよう構成されている。保持部材4内に注入される培養液としては、特に限定されるものではないが、水の他、窒素、リン酸、若しくはカリ等の化学肥料、又は堆肥抽出液若しくは動植物の発酵液等の有機肥料を適当な溶媒に溶解させたものを使用することができ、天然の植物生長促進剤又は天然の害虫忌避剤を添加することもできる。なお、保持部材4の内部には必要に応じてシート状の保水材(図示省略)を収納しておくことができ、この保水材としては、特に限定されるものではないが、例えば、発泡スチロールチップや、発砲ポリウレタンチップ、スポンジチップ、糸玉、紙片、又は繊維マット等が挙げられる。
【0022】
保持部材4の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、縦300〜5000mm×横100〜1000mm×高さ10〜100mmの直方体状とすることができ、側壁の厚さを10〜150mmとすることができる。また、貫通孔41の大きさとしては、例えば、直径10〜200mmとすることができ、各貫通孔41間の間隔は、例えば、50〜600mmとすることができる。保持部材4の材質としては、断熱性を有するものが好ましいが特に限定されるものではなく、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、又はポリエチレン樹脂等の合成樹脂発泡体や、合成樹脂発泡体と、合成樹脂板、木板、又はステンレス等の金属板との複合材等を用いることができ、合成樹脂発泡体で保持部材4を形成した場合は、保持部材4の表面にポリウレタン樹脂塗料(登録商標リボールマイティ)等の防水塗料を塗布することが好ましい。
【0023】
次に、上述したように構成された栽培ハウス1の使用方法について説明する。
【0024】
上記栽培ハウス1を使用する場合、植物Pを保持した複数の保持部材4を支持台2の載置部21に載置し、収容体3内で植物Pを栽培する(図1)。そして、必要に応じて駆動源53を駆動すると回転軸52及び転動体51が回転し、これにより、収容体3の複数の円筒部31が水平軸周りに回転する。
【0025】
以上のように、本実施形態に係る栽培ハウス1は、収容体3を水平軸周りに回転させることができるため、降雪の際、収容体3に積もる雪を落下させることができる。これにより、収容体3が雪の重量で破損するのを防止することができる。また、本実施形態に係る栽培ハウス1は、収容体3が回転することで台風等の際にも風の影響を受けにくく、暴風により収容体3が破損するのを防止することもできる。さらに、本実施形態に係る栽培ハウス1は、従来の栽培ハウスと比較してフレームの数を少なくすることもでき、従来はコストの観点から使用することができなかったステンレス等をフレームに使用することができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、収容体3の各円筒部31には透明のビニールシート313が用いられていたが、半透明や不透明の資材を用いてもよい。
【0027】
また、上記実施形態において、円筒部31の少なくとも一部、好ましくは半周を、円筒部31の軸方向に延びる遮光材で形成し、あるいは遮光材で覆うこともできる。遮光材としては、光を完全に遮断するものだけでなく、例えば寒冷紗のように、光を一部遮断するものも使用することができる。この構成によれば、遮光材が上部に位置するよう円筒部31を回転させることで、光を完全に遮断する遮光材の場合は植物Pに対する日照時間を調整することができ、光を一部遮断する遮光材の場合は植物Pに対する光量を制限することができる。なお、この遮光材に代えて断熱材を使用してもよい。すなわち、円筒部31の少なくとも一部、好ましくは半周を円筒部31の軸方向に延びる断熱材で形成又は被覆すれば、外部からの冷気や熱気を遮断することができる。
【0028】
また、図6に示すように、収容体の円筒部301が、支持フレーム3011、及び支持フレーム3011に摺動可能に支持されるとともに円筒部301の軸方向に延びる複数の被覆部材3012を有するよう構成されていてもよい。この構成によれば、被覆部材3012を容易に交換することが可能となり、また、複数の被覆部材3012の一部を取り外せば、その取り外した部分を換気口として用いることができる。なお、被覆部材3012の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニールシート、遮光材、断熱材等、種々のものを用いることができ、複数の被覆部材3012全てが同じ材質で作製される必要はない。
【0029】
また、収容体3の内部において、少なくとも一層の断熱部8を支持台2に取り付けることもできる。この断熱部8は、図7(a)に示すように、載置部21全体を覆うように設けられていてもよく、また、図7(b)に示すように、載置部21の上半分を覆うように設けられていてもよい。この構成によれば、栽培ハウスの断熱性を向上させることができる。なお、断熱部8は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニールシート等透明の資材で作製することができる。
【0030】
また、上記実施形態において、例えばブラシやモップといった清掃器具を、収容体3の外周面に当接するよう設けることもできる。これにより、収容体3を回転させることで収容体3の外周面を容易に清掃することができる。
【0031】
また、上記実施形態においては、駆動源53により収容体3の複数の円筒部31を同時に回転させていたが、各円筒部31を個別に回転させるよう構成することもでき、さらに、収容体3を手動又は風力等で回転させることもできる。
【0032】
また、上記実施形態においては、収容体3は円筒形状に形成されていたが、水平軸周りに回転可能であれば、多角形状等に形成されていてもよい。
【0033】
また、上記実施形態においては、支持台2の載置部21は一段であったが、図8に示す栽培ハウス10のように、支持台20に載置部201を複数設けることもできる。この場合、支持台20の両端に昇降機構6を設け、少なくとも一方の昇降機構6が保持部材4を反転させることができるよう構成することが好ましい。
【0034】
また、上記実施形態においては、保持部材4として中空の箱状のものを用いていたが、植物Pを保持することができればこれに限定されず、パネル状のものや、プランタ等、種々のものを保持部材として用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1,10 栽培ハウス
2,20 支持台
3 収容体
4 保持部材
5 回転手段
51 転動体
53 駆動源
3011 支持フレーム
3012 被覆部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材に保持された植物を栽培するための栽培ハウスであって、
前記保持部材を支持する支持台と、
前記支持台に支持された保持部材を収容する、水平軸周りに回転可能な収容体と、
を備える栽培ハウス。
【請求項2】
前記収容体を回転させる回転手段をさらに備える、請求項1に記載の栽培ハウス。
【請求項3】
前記回転手段は、前記収容体の外周面に接触し水平軸周りに回転可能な転動体、及び前記転動体を回転駆動する駆動源を有する、請求項2に記載の栽培ハウス。
【請求項4】
前記収容体は、水平方向に延びる円筒形状に形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の栽培ハウス。
【請求項5】
前記収容体は、透明であって一部が遮光されており、
前記遮光された部分は、前記収容体の軸方向に延びている、請求項1〜4のいずれかに記載の栽培ハウス。
【請求項6】
前記収容体は、支持フレーム、及び前記支持フレームに摺動可能に支持されるとともに当該収容体の軸方向に延びる複数の被覆部材を有しており、
前記各被覆部材は、前記支持フレームから取り外すことができる、請求項1〜5のいずれかに記載の栽培ハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−21924(P2013−21924A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156351(P2011−156351)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(395021239)株式会社生物機能工学研究所 (21)
【Fターム(参考)】