説明

栽培用ハウス

【課題】外張りや内張りを開閉する巻取器を有する栽培用ハウスにおいて、巻取器の近傍に溜まった水の凍結により巻取器の操作ができなくなることや巻取軸を変形させたり破損させることを防止した栽培用ハウスを提供する。
【解決手段】栽培用ハウスは、躯体(1,1a)と、躯体(1,1a)に展張されている合成樹脂製のフィルム又はシートからなる外張り(2,2a,2b)と、巻取軸(40)を備え外張り(2,2a,2b)を開閉するときに巻取軸(40)自体が躯体(1,1a)上又は躯体(1,1a)に沿って移動しながら外張り(2,2a,2b)を巻き取り又は繰り出す巻取器(4,4a,4b,4c,4d)とを備えており、巻取器(4,4a,4b,4c,4d)の停止位置には、展張状態の外張り(2,2a,2b)と巻き取られたロール状態の外張り(2,2a,2b)又は巻取軸(40)との間で形成される窪みに溜まる雨水又は結露水を排出するための透水孔(21)が所要数設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培用ハウスに関するものである。更に詳しくは、躯体に合成樹脂製のフィルム又はシートを展張して形成した外張りや骨組に展張した内張りを開閉する巻取器を有する栽培用ハウスにおいて、巻取器より上側の外張りや内張りに雨水又は結露水が溜まらないようにした栽培用ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
各種作物を栽培する栽培用ハウスには、骨組等の躯体に合成樹脂製の透光性を有するフィルム又はシートを張設して、ハウスの中に更に内張りを形成した構造のものがある。
このように内張りを設けたものは、外張りと内張りの間に空気の層を設けることで保温性を高めることができるが、反面、内張りの上面に結露水が溜まり、その重みでフィルム又はシートが破裂することによる落水で下方で栽培されている作物を傷めてしまう問題があった。
【0003】
この問題を解消するために、栽培用ハウスの内張りに水抜きのための多数の孔を有する有孔フィルムが使用されており、その一例としては、例えば特許文献1に記載されている農業用有孔フィルムを使用したハウスがある。
【0004】
特許文献1に記載の農業用有孔フィルムは、合成樹脂フィルムの長さ方向に沿って、幅方向の少なくとも一方の端から20〜100cmの幅に、10〜20cm間隔で穿孔された直径2〜5mmの孔を有する開孔部が設けられ、開孔部の合計面積がフィルムの全面積の5〜20%であり、農業用フィルム、特にハウスの内張フィルムの保温性を保持することができると共にフィルム上に結露水が溜まることがないというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−211761
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の農業用有孔フィルムを使用した栽培用ハウスには次のような課題があった。
すなわち、通常、栽培用ハウスには、外張りや内張りを開閉して内部の温度を調節するために、外張りや内張りを開閉するときに巻取軸自体が躯体上又は躯体に沿って移動しながら外張りや内張りを巻き取り又は繰り出す巻取器を備えている。
巻取器は、栽培用ハウスの長さと同じ長さを有する巻取軸を有しており、巻取器の停止位置には、展張状態の外張りや内張りと巻き取られたロール状態の外張りや内張り又は巻取軸との間で形成される窪みに雨水又は結露水が溜まるので、特に寒冷地においてはこれが凍結して巻取器の操作ができなくなることがあった。
【0007】
また、巻取軸は長尺であるため、一般には多数の金属パイプを連結した構造である。このため、前記のように巻取軸の近傍に溜まった雨水又は結露水がパイプの継ぎ目部分から内部に侵入し、これが腐蝕の原因となったり、特に寒冷地では、内部の水が凍結してパイプを変形させたり破損させることがあった。
しかし、前記特許文献1に記載された従来の栽培用ハウスは、一般に使用されている前記のような巻取器について何ら記載がなく、当然ながら巻取器の使用に対応できるような有孔フィルムの張設構造についても説明がされていない。
【0008】
(本発明の目的)
本発明は、骨組等の躯体に合成樹脂製のフィルム又はシートを展張して形成した外張りや内張りを開閉する巻取器を有する栽培用ハウスにおいて、展張状態の外張りや内張りと巻き取られたロール状態の外張りや内張り又は巻取軸との間で形成される窪みに雨水又は結露水が溜まらないようにすることにより、溜まった水の凍結により巻取器の操作ができなくなることや巻取軸を変形させたり破損させることを防止した栽培用ハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0010】
(1)本発明は、
中央部分が高く、両側部分が前記中央部分より低い屋根部分を有する栽培用ハウスであって、
門型のパイプを有する躯体と、
該躯体に展張されている合成樹脂製のフィルム又はシートからなる外張りと、
を有し、
前記躯体の幅方向の両側には、
前記外張りの端縁部を固定具で固定している巻取軸を有し、前記外張りを開閉するときに前記巻取軸自体が前記躯体上又は躯体に沿って移動しながら外張りを巻き取り又は繰り出す巻取器を備え、
該巻取器で前記外張りの下側を、閉じたときの位置から開き位置まで巻き上げて停止させたときの巻取器より上側の巻き取られていない展張状態の外張りには、巻き取られたロール状態の外張りとの間で形成される窪みに溜まる雨水を排出するための透水孔が備わっている、
栽培用ハウスである。
【0011】
(2)本発明は、
栽培用ハウスは、屋根部分の下側にアーチ状のパイプで構成された内張り用の骨組をハウス内に備え、該骨組の上面側には合成樹脂製のフィルム又はシートを展張して内張りが設けられており、
該内張りの両側には、内張りの端縁部を固定具で固定している巻取軸を有し、前記内張りを開閉するときに前記巻取軸自体が前記骨組上又は骨組に沿って移動しながら内張りを巻き取り又は繰り出す巻取器を備えており、
該巻取器で前記内張りの下側を、閉じたときの位置から開き位置まで巻き上げて停止させたときの巻取器より上側の巻き取られていない展張状態の内張りには、巻き取られたロール状態の内張りとの間で形成される窪みに溜まる結露水を排出するための透水孔が備わっている、
前記(1)の栽培用ハウスである。
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「展張」とは、フィルム又はシートを展開して(拡げて)張設するという意味を含むものである。
また、本明細書及び特許請求の範囲にいう「外張り」、「内張り」は、透光性を有する合成樹脂製のフィルム又は概念的にはその厚さがフィルムよりやや厚いとされるシートからなるものである。合成樹脂製のフィルム又はシートの材料としては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル(PE)、ポリプロピレン(PP)等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
(作用)
本発明に係る栽培用ハウスの作用を説明する。
栽培用ハウスは、巻取器の停止位置に、展張状態の外張りや内張りと巻き取られたロール状態の外張りや内張り又は前記巻取軸との間で形成される窪みに溜まる雨水又は結露水を排出するための透水孔が所要数設けられているので、前記窪みに雨水又は結露水が溜まらないようにすることができる。
これにより、前記窪みに溜まった水の凍結により巻取器の操作ができなくなることや巻取軸を変形させたり破損させることを防止することができる。
【0014】
ハウスの中に内張り用の骨組を備えており、該骨組には合成樹脂製のフィルム又はシートを水平に展張して内張りが設けられており、該内張りには、全面にわたり結露水が溜まらないように排出するための透水孔が所要数設けられているものは、例えば下方で栽培されている作物が、内張りの透水孔から滴下した水に強く、濡れても傷みにくいものであったり、ハウス内部でビニルトンネル栽培を行う場合のように作物に直接滴下しないようになっている等、結露水が落下しても被害を受けにくい場合に有用である。したがって、栽培用ハウスは、内張りを設けることにより、ハウス内の保温性を高めることができると共に内張りに結露水が溜まることも防止できる。
【0015】
栽培用ハウスが横方向に連結されている連棟型であり、各棟間の外張りの谷部に排水樋が棟の長さ方向に設けられており、前記外張りに設けられている透水孔は、少なくとも展張状態の外張りと巻き取られたロール状態の外張り又は前記巻取軸との間で形成される窪みに溜まる雨水を前記排水樋に誘導することができる位置に設けられているものは、水の凍結により巻取器の巻取軸を回転させる操作ができなくなることや内部の凍結した水で巻取軸を変形させたり破損させることを防止することができると共に、透水孔から落ちた雨水を排水樋によって所要箇所に確実に排出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、躯体に合成樹脂製のフィルム又はシートを展張して形成した外張りや骨組に展張された内張りに、それらを開閉する巻取器を有する栽培用ハウスにおいて、巻取器の停止位置に、展張状態の外張りや内張りと巻き取られたロール状態の外張りや内張り又は巻取軸との間で形成される窪みに溜まる雨水又は結露水を排出するための透水孔が所要数設けられているので、前記窪みに雨水又は結露水が溜まらないようにすることができる。
これにより、前記窪みに溜まった水の凍結により巻取器の巻取軸を回転させる操作ができなくなることや内部で凍結した水によって巻取軸を変形させたり破損させることを防止した栽培用ハウスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る単棟型の栽培用ハウスの実施の形態を示す概略正面図。
【図2】図1におけるP1部の斜視説明図。
【図3】本発明に係る連棟型の栽培用ハウスの実施の形態を示す概略正面図。
【図4】図3におけるP2部の斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施の形態1〕
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1及び図1のP1部分を説明する図2を参照する。
【0019】
単棟型の栽培用ハウスA1は、門型の多数のパイプ10とそれらを連結するパイプ11で形成された躯体1を有している。躯体1の外面側には、合成樹脂製(本実施の形態ではポリ塩化ビニル製)のフィルムを展張して外張り2が設けられている。外張り2は、躯体1を構成する門型のパイプ10の両端側に固定されているパイプ11aの間に張り渡された多数のゴム製のバンド3で外側から締め付けられて躯体1に固定されている。
【0020】
外張り2においてパイプ10の軸線方向の両端部には、それぞれ巻取器4が取り付けられている。巻取器4は、栽培用ハウスA1の長さとほぼ同じ長さの巻取軸40を有し、巻取軸40の両端部に巻取軸40を手動で回転させるためのハンドル41(図2では省略)を有している。巻取軸40には、外張り2の先端縁部が固定具(図示省略)で固定されている。
【0021】
そして、巻取軸40を回転(図1で右側の巻取器4では左回転、左側の巻取器4では右回転)させて外張り2を巻き取ることにより、巻取器4が上昇して外張り2の下側を開けることができる。また、巻取軸40を前記とは逆方向に回転させて外張り2を巻き戻すことにより、巻取器4を下降させて外張り2を閉じることができる。なお、巻取器4はバンド3で押さえられており、自重で落ちないようにしている。
【0022】
外張り2において、巻取器4で外張り2を巻き取って外張り2の下側を開けたときの巻き上げ位置(開き位置)H2より上側の巻き取られていない部分には、透水孔21が所要間隔で形成されている(図2参照)。本実施の形態では、各透水孔21の縦方向(栽培用ハウスA1の幅方向)の間隔が200mm、横方向(栽培用ハウスA1の長さ方向)の間隔が200mm、透水孔21の口径が4mmに設定されているが、これに限定するものではなく適宜設定することができる。
【0023】
各透水孔21は、ポリ塩化ビニル製のフィルムである外張り2に加熱したピン状のもので素材を熱溶融させながら孔を開ける方法で形成されている。これにより、透水孔21の孔縁部分は熱で溶けた後、固まるので、孔縁部分が破れたりすることがなく、外張り2は裂けにくい。
【0024】
ポリ塩化ビニル製の外張り2は、僅かな切れ目等からでも簡単に裂けてしまうため、本実施の形態では、前記方法を採用しているが、例えばポリエステルやポリプロピレン等の裂けにくい素材のフィルムを採用する場合は、単に尖ったピンで透水孔を開けるようにしてもよい。これについては、後述する内張り5の各透水孔51及び栽培用ハウスA2の外張り2a、2bの各透水孔21a、21b、内張り8a、8bの各透水孔81、82についても同様である。
【0025】
また、透水孔21は、外張り2において巻取軸40で巻き取られている部分にまで及ぶように形成することもできる。これについては、後述する栽培用ハウスA2の巻取器4a、4b、4c、4d近傍の透水孔21についても同様である。さらに、外張り2において、巻取器4で外張り2を巻き戻して外張り2を閉じたときの位置(閉じ位置)H1より上側または近傍部分に透水孔を形成することもできる。なお、図1において、閉じ位置H1にある巻取器4及び外張り2の巻取器4につながる部分は想像線で表している。
【0026】
また、栽培用ハウスA1の内部側の天部近傍には、フィルムを水平に展張した内張り5が設けられている。内張り5は、躯体1に設けられた骨組である両側のパイプ12間に張り渡したゴム製のバンド50の上に載せて展張されている。内張り5には、全面にわたり多数の透水孔51が所要間隔で形成されている。各透水孔51の縦方向及び横方向の間隔と口径は、前記透水孔21と同様であるが、これに限定するものではなく適宜設定ができる。
【0027】
(作用)
図1及び図2を参照して栽培用ハウスA1の作用を説明する。
栽培用ハウスA1は、巻取器4が外張り2の開き位置H2に位置したときの巻取器4の巻取軸40より上側のフィルムに透水孔21が設けられており、雨水又は結露水はこの透水孔21を通って落下するので、展張状態の外張り2と巻き取られたロール状態の外張り2との間で形成される窪みに雨水又は結露水が溜まらないようにすることができる。
これにより、前記窪みに溜まった水の凍結により巻取器4の巻取軸40を回転させる操作ができなくなることや、巻取軸40内部で凍結した水で巻取軸40を変形させたり破損させることを防止することができる。
【0028】
また、内張り5は、外張り2の内部側に外張り2の内天部と所要の間隔で水平に展張されており、内張り5には、その全面にわたり結露水が溜まらないように排出するための透水孔51が所要数設けられている。
これにより、栽培用ハウスA1は、例えば下方で栽培されている作物が、内張り5の透水孔51から滴下した水に強く、濡れても傷みにくいものであったり、ハウス内部でビニルトンネル栽培を行う場合のように作物に直接滴下しないようになっている等、結露水が落下しても被害を受けにくい場合に有用である。したがって、栽培用ハウスA1は、内張り5を設けることにより、ハウス内の保温性を高めることができると共に内張り5に結露水が溜まることも防止できる。
【0029】
〔実施の形態2〕
図3及び図3のP2部分を説明する図4を参照する。
連棟型の栽培用ハウスA2は、躯体1a、1bに合成樹脂製(本実施の形態ではポリ塩化ビニル製)のフィルムを展張して外張り2a、2bが形成されており、単棟型の栽培用ハウスを幅方向に一体に並設した構造を有している。栽培用ハウスA2は、幅方向の中央に多数の支柱6を有しており、各支柱6の上端には、栽培用ハウスA2の長さ方向に排水樋7が水平に固定されている。排水樋7は、水平な底板70と、その幅方向両側に斜め上方へ傾斜して設けられた斜板71で構成されている。
【0030】
排水樋7の底板70の上方には、パイプ72が取付具73によって排水樋7と平行に固定されている。パイプ72には、並設されている両棟(符号省略)に外張り2a、2bを固定するために張り渡される多数のバンド3a、3bの一端が取り付けられている(図4参照)。また、各バンド3a、3bの他端は、前記栽培用ハウスA1の場合と同様に両棟の幅方向において外側下部のパイプ11bに取り付けられている。
【0031】
栽培用ハウスA2において、両棟の幅方向の外側には、前記栽培用ハウスA1と同様にして外張り2aの先端に巻取器4a、外張り2bの先端に巻取器4bが取り付けられている。外張り2a、2bの幅方向下側を開けるときの巻取器4a、4bの巻き上げ位置(開き位置)H3は、前記栽培用ハウスA1の巻取器4の開き位置H2よりやや高くなるように、具体的には後述する内張り8a、8bのパイプ80の取付位置近傍とほぼ同じ高さになるように設定されている。
【0032】
外張り2a、2bにおいて開き位置H3に位置する巻取器4a、4bより上側には、前記外張り2と同様の透水孔21が設けられている。なお、図3において、閉じ位置H1にある巻取器4a、4b及び外張り2a、2bの巻取器4a、4bにつながる部分は想像線で表している。
【0033】
また、栽培用ハウスA2において、両棟の外張り2a、2bで形成される谷部(P2部分)には、外張り2a、2bの基端に前記栽培用ハウスA1の各巻取器4と同様にして巻取器4a、4bが取り付けられている。これら巻取器4a、4bは、前記排水樋7の底板70近傍に位置させることができる。外張り2a、2bにおいて、谷部にある巻取器4a、4bで外張り2a、2bを巻き戻して外張り2a、2bの下側を閉じたとき(図3、図4参照)の位置(閉じ位置)H4より上側の巻き取られていない部分には、透水孔21a、21bが前記外張り2の透水孔21と同様に形成されている。
【0034】
そして、透水孔21aは、図4に示すように排水樋7の一方の斜板71に対応してその範囲に収まるように、透水孔21bは、他方の斜板71に対応してその範囲に収まるように形成されている。すなわち、外張り2a、2bを構成するフィルムに設けられている透水孔21a、21bは、少なくとも巻取器4a、4bの巻取軸40近傍で止まる雨水を斜板71によって排水樋7に誘導することができる位置に設けられている。
【0035】
栽培用ハウスA2の両棟の内部側の天部近傍には、栽培用ハウスA2の長さ方向に所要数並設された緩やかなアーチ状のパイプ80の上面側に合成樹脂製(本実施の形態ではポリ塩化ビニル製)のフィルムを展張して内張り8a、8bが設けられている。
内張り8a、8bは、アーチ状の各パイプ80に張り渡された多数のゴム製のバンド(図示省略)で締め付けて各パイプ80に固定されている。
【0036】
内張り8a、8bにおいてパイプ80の軸線方向の両端部には、それぞれ前記栽培用ハウスA1の外張り2に設けられている巻取器4と同様の巻取器4c、4dが取り付けられている。巻取器4c、4dは、巻取軸(符号省略)を回転させて内張り8a、8bを巻き取ることにより、巻取器4c、4dが内方向へ移動して内張り8a、8bの幅方向の両側を開けることができる。また、巻取軸を前記とは逆方向に回転させて内張り8a、8bを巻き戻すことにより、巻取器4c、4dを外方向へ移動させて内張り8a、8bを閉じることができる。
【0037】
そして、内張り8a、8bにおいて、巻取器4c、4dで内張り8a、8bを巻き取って内張り8a、8bの両側を開けたときの巻き上げ位置(開き位置)H6より上側の巻き取られていない部分には、透水孔81が所要間隔で形成されている(図3参照)。また、内張り8a、8bにおいて、巻取器4c、4dで内張り8a、8bを巻き戻して内張り8a、8bを閉じたときの位置(閉じ位置)H5より上側にも透水孔82が同様に形成されている。なお、図2の内張り8aにおいて、閉じ位置H5にある各巻取器4c及び内張り8aの各巻取器4cにつながる部分は想像線で表している。
【0038】
(作用)
図3及び図4を参照して栽培用ハウスA2の作用を説明する。
栽培用ハウスA2は連棟型であり、外張り2a、2bにおいて各棟間の谷部に設けられている排水樋7によって外張り2a、2bをたどって谷部に流れ込む雨水を所定の箇所に排水できるようになっている。
【0039】
すなわち、外張り2a、2bにおいて各棟間の谷部側に設けられている多数の透水孔21a、21bは、排水樋7の各斜板71の上面位置に設けられているので、巻取器4a、4b近傍の展張状態の外張り2a、2bと巻き取られたロール状態の外張り2a、2bとの間で形成される窪みに溜まる雨水を透水孔21a、21bを通して各斜板71から排水樋7の底板70に誘導でき、窪みに水が溜まることを防止できる。
なお、排水樋を通常の樋構造とし、その幅方向両側に誘導板を設けて、透水孔を通った雨水を各誘導板によって排水樋に誘導することもできる。
また、外張り2a、2bにおいて谷部とは反対側に設けられている透水孔21a、21bは、前記栽培用ハウスA1の透水孔21と同様に作用する。
【0040】
したがって、寒冷地において、溜まった水の凍結により巻取器4a、4bの巻取軸40を回転させる操作ができなくなることや、内部で凍結した水で巻取軸40を変形させたり破損させることを防止することができる。
【0041】
また、外気温が上昇しない場合に保温性を良好にする使用においては、外張り2a、2bの巻取器4a、4bを閉じ位置H4に位置させて外張り2a、2bを閉じ、さらに各巻取器4c、4dを巻き戻し操作をする等して閉じ位置H5に位置させ、内張り8a、8bを閉じた状態とする。
【0042】
逆に、外気温が上がってハウス内の温度を下げなければならない場合には、外張り2a、2bの巻取器4cを開き位置H3に位置させて外張り2a、2bを開け、さらに巻取器4c、4dを巻取操作して開き位置H6に位置させ、内張り8a、8bの両側を開けた状態とする。
【0043】
このように各内張り8a、8bによれば、ハウス内部の温度のより細かな調節ができると共に、前記各位置の各巻取器4c、4dの近傍に透水孔81、82が設けられているので、前記いずれの場合も結露水が透水孔81、82から滴下排出され、内張り8a、8bの上面側に溜まることを防止できる。
【0044】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
A1 栽培用ハウス
1 躯体
10 パイプ
11 パイプ
11a パイプ
12 パイプ
2 外張り
21 透水孔
3 バンド
4 巻取器
40 巻取軸
41 ハンドル
H1 閉じ位置
H2 開き位置
5 内張り
50 バンド
51 透水孔
A2 栽培用ハウス
1a、1b 躯体
11b パイプ
2a、2b 外張り
21a、21b 透水孔
3a、3b バンド
4a、4b、4c、4d 巻取器
H3 開き位置
H4 閉じ位置
H5 閉じ位置
H6 開き位置
6 支柱
7 排水樋
70 底板
71 斜板
72 パイプ
73 取付具
8a、8b 内張り
80 パイプ
81 透水孔
82 透水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部分が高く、両側部分が前記中央部分より低い屋根部分を有する栽培用ハウスであって、
門型のパイプを有する躯体と、
該躯体に展張されている合成樹脂製のフィルム又はシートからなる外張りと、
を有し、
前記躯体の幅方向の両側には、
前記外張りの端縁部を固定具で固定している巻取軸を有し、前記外張りを開閉するときに前記巻取軸自体が前記躯体上又は躯体に沿って移動しながら外張りを巻き取り又は繰り出す巻取器を備え、
該巻取器で前記外張りの下側を、閉じたときの位置から開き位置まで巻き上げて停止させたときの巻取器より上側の巻き取られていない展張状態の外張りには、巻き取られたロール状態の外張りとの間で形成される窪みに溜まる雨水を排出するための透水孔が備わっている、
栽培用ハウス。
【請求項2】
栽培用ハウスは、屋根部分の下側にアーチ状のパイプで構成された内張り用の骨組をハウス内に備え、該骨組の上面側には合成樹脂製のフィルム又はシートを展張して内張りが設けられており、
該内張りの両側には、内張りの端縁部を固定具で固定している巻取軸を有し、前記内張りを開閉するときに前記巻取軸自体が前記骨組上又は骨組に沿って移動しながら内張りを巻き取り又は繰り出す巻取器を備えており、
該巻取器で前記内張りの下側を、閉じたときの位置から開き位置まで巻き上げて停止させたときの巻取器より上側の巻き取られていない展張状態の内張りには、巻き取られたロール状態の内張りとの間で形成される窪みに溜まる結露水を排出するための透水孔が備わっている、
請求項1記載の栽培用ハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−231807(P2012−231807A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197568(P2012−197568)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2010−142956(P2010−142956)の分割
【原出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(592255095)協伸化成株式会社 (5)
【Fターム(参考)】