説明

検体の自動サンプリング方法及び装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品等中の細菌数の検査などを行うときのサンプリング方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、食品の安全性等を検査や成分分析するため検体の定量分析や定性分析が行われている。この分析の方法には種々の方法があるが、例えば所望する食品のサンプルを所定量取り、必要に応じて希釈を行いこのサンプルを適当な培地によって培養することが行われている。例えばビフィズス菌等の有効菌の場合には、一つの飲料パック中の菌数が決まっているが、サンプル用の一つの容器(シャーレ等)でカウントする菌数は通常300個以下が好ましいので、106 倍から10 8倍に希釈後、容器に入れ培地をいれる。この希釈・培養作業は、一般にその検体の数が多枝にわたること、そのサンプリングの数も検査項目によって多数あり、培地の種類も複数あるような場合には、検体のサンプリングならびに液体培地にあってはその注入に多大な時間を要する。この培養作業は一般に無菌状態の室内等において行われるが、これはその検査精度を高める等の目的で行われている。このように培養による検査には当然のことながら高い検査精度が要求されるが、一方では例えば工場等における生産工程の品質管理において生産ラインを止めることなく検査を定期的に行う場合など、検査結果を直ぐにフィードバックすることに重要な意味がある場合には検査結果の迅速性が要求される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来においては、上記の培養作業においては、これを人手に頼るのがほとんどであるために、作業者への負担が大きいだけでなく、無菌状態の維持の観点から、人手に頼る作業はその信頼性に問題が残されていた。更にまた、寒天培地を使用した培養はその検査結果においては信頼性が高いが、その結果を見るまでに比較的多くの時間を必要とする欠点がある。これに対して液体培地を使用した検査方法で、例えば培養により細菌が代謝によって放出する二酸化炭素の量を光学的測定器により観察してその培養状態を検査する検査方法があり、この方法の場合、検査結果を非常に速く出すことが出来る。しかし、液体培地を使用したこのような検査方法にあっては、検査結果を出すのは速くできるが、検査精度においては多少の難点があった。このようなことから、検査精度の要求を満足する検査方法と検査結果の迅速性を満たす検査方法とを併用して行うことがある。
【0004】しかしながら、上述の両検査方法は例えば培養のための培地、培養のための容器、観察方法など大きく相違する方法であって、従来においては当然のながら同じ作業者が両方の検査をする場合には、作業者への負担が大きくなってしまう。また、例えば別々の作業者が別の検査ラインにおいて作業を行うことにより両方の検査を同時進行させることができるものの、これでは当然のことながら検査のための作業者が多く必要となる問題が発生する。本発明は、上記のごとき問題点に鑑みてなされたものであり、食品等の検体の培養における作業性の向上ならびに検査精度及び信頼性の向上だけでなく、検査精度に重点を置いた検査のサンプリングと検査結果の迅速性に重点を置いた検査のサンプリングとを略同時にできるサンプリング方法及び装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、寒天培地を用いる第1容器を特定の第1搬送路にて移動させると共に、液体培地を用いる第2容器を第2搬送路の少なくても一部分を前記第1搬送路に沿うようにして、検体のサンプルを注出する一つの検体供給手段により前記第1容器及び第2容器に該検体を供給し、その後において、予め入力されていた表示項目を出力可能とする一つの表示手段により、前記第1容器及び第2容器上に表示したのちに、前記各容器を前記第1搬送路及び前記第2搬送路の各終端側の保管領域に収容することを特徴とする検体の自動サンプリング方法により達成することができる。
【0006】又、本発明の上記目的は寒天培地を用いる第1容器をを順次送り出す第1容器送出し装置及び液体培地を用いる第2容器を第2容器送出し装置と、送り出された前記第1容器を第1搬送路上にて移動させる第1搬送手段及び該第1搬送手段に少なくても一部が沿うように構成され前記第2容器を第2搬送路上にて移動させる第2搬送手段と、前記第1及び第2搬送手段に隣設し複数の検体を保持した検体保持手段と、前記検体からそのサンプルを注出するピペットチップをピペットチップラックから取出し自在としかつ前記第1及び第2容器へ検体サンプルを供給するべく移動自在なアームを備えた一つの検体供給手段と、予め入力された情報を前記第1及び第2容器に表示する一つの表示手段と検体サンプルの培養可能状態にて前記第1及び第2容器を夫々保管収容する各保管部とを備えてなる検体の自動サンプリング装置により達成できる。
【0007】
【作 用】このように本発明によれば、同じ検体サンプルを使用してこのサンプルを異種の二つの培地とを夫々別の容器に同じ検体供給手段により自動的に連続的供給でき、かつ最終的に所望する情報表示においても同じ表示手段により異種の容器上に正確に表示するもとができ、又、各容器を別の搬送ラインにて所定箇所に集めることができ、さらに、検体のサンプル取りや培地分注においても、人手をなくすことができ、異なった要求に対応した異種の検査のためのサンプリングの正確性ならびに作業速度を高めることができる。また、このようにサンプル取り及び培地の分注や液体培地の入ったビン内への検体の注入を全自動化したことにより、この作業がすべて無菌室等において行うことができ、その無菌レベルを高めることが容易となり培養データの信頼性の向上が可能である。
【0008】
【実施例】以下、図1及び図2に示す本発明の一実施例について説明する。なお、図1は自動サンプリング・培地分注装置の斜視図であり、図2は図1に示した装置の平面図である。先ず、本実施例の装置の概要についてのべる。本装置は密封包装された、例えば乳酸菌飲料、その他製品中の生菌数、大腸菌数などを検査するために、製品のバーコードと予め作ってある充填機のナンバーや容器種類等のバーコードをリーダで読み入力するか、タッチ表示器を用いて、製品名・充填機のナンバーや採取日等を入力し、入力した順にセットした製品を自動的に搬送し、開口部周囲を滅菌し、開口し、規定量吸引後、シャーレに注入(必要に応じて希釈後に注入)、培地を規定量分注したのち混釈し、又、培地の入ったバイエルビンにも検査のためのサンプリングをし、入力データ(充填機ナンバー、製品名、採取日、採取時間、等)を、バーコード化し、シャーレ蓋やバイエルビンに貼り例えば該シャーレを多数重ねて積載収納したり、さらにはバイエルビンを所定の収納部に自動収納することのできるサンプリング装置である。なお、バイエルビンBは図9に示すように、液体培地Lが適量入れられており口部分がゴム製のキャップB1により閉じられ、該キャップB1の外周縁部分を覆うようにアルミ製の止め金具B2でかしめられている。
【0009】上記装置について図を参照して詳細に説明する。図1および図2に示すように、本実施例における装置1は、主架台2上に後述するような各種部材および装置を有すると共に、この主架台2に隣接して検体保持架台3およびバイエルビン供給部90、さらにバイエルビン搬送部99が設けられている。主架台2には、該架台2の下側の支持面2aと上側の上支持面4とを有しており、この上支持板4には、光透過性の容器であるシャーレ20を順次送り出す容器送出し装置5、マイクロピペットを整列収納したピペットラック18、ピペット回収部19、検体希釈部21、表示部70、シャーレ保管部80、バイエルビン保管部96等が設けられている。また、下支持面2aには、送り出し装置5により送り出されたシャーレ20を特定の経路である例えば搬送路30及び押し棒32を備えたチェーン31等からなる搬送手段、この搬送路30に隣設し検体保持架台3からシャーレ20(場合によっては検体希釈部21に注出し、そこからシャーレ20に供給する)に検体のサンプルを注出するための検体供給装置であるロボット40、シャーレ20に流動状の培地を供給する培地供給装置である培地分注機50、培地と検体サンプルとを混釈する混釈装置60、シャーレ20及びバイエルビンBに特定の表示事項を記載したプリントシートを自動貼着する表示部70等が設けられている。
【0010】前述の各部材について説明する。先ず、送り出し装置5は、図示のごとくシャーレ20を高く積み上げた状態のものを移動(図中右側方向への移動)させるものであり、例えば少なくとも一対(片方のみ図示)ベルトローラ6に張設されたコンベヤベルト7と、そのコンベヤベルト7に両側に直立した側板8により構成されており、図示しないモータ等により適宜信号に基づいて駆動される。
【0011】この送り出し装置5の終端部にはコンベヤベルト7の高さと略同じに位置する支持面を持つ支持ブラケット9が配置されており、この支持ブラケット9にはシャーレ20を下方に落とし込む円孔10が形成されていると共に、該円孔10の縁部分を囲むように4本の支持バー11が直立されている。この支持バー11のうちコンベヤ側の一本は、図示しない適宜装置により移動自在に構成されており、コンベヤベルト7により送りこまれてきた段積みシャーレ20をこの支持バー11の中に収納できるように構成されている。
【0012】支持ブラケット9の部分に供給された段積みシャーレ20は、その最下段のものは円孔10から落とされた状態で、該ブラケット9の下のシャーレ供給テーブル12上に載置されている。ここで、このシャーレ供給テーブル12の略中心位置には回転軸13が突出し、この回転軸13に固定されて供給テーブル12上を回転(反時計周りの方向に回転)する切りだしアーム14が設けられている。この切りだしアーム14は、円孔10の所に位置しているシャーレ20の側面を押して該シャーレ20を略半円を描くように送り出すのであるが、この時、上下のシャーレ20同士がその接触面において引っ掛からない形状であるときには、切りだしアーム14を回転するだけで、最下段のシャーレ20を滑り押し出すようにして一個ずつ送り出すことができる。しかし、シャーレ同士が上下接触面部分において引っ掛かる構造の場合は、図示しない把持装置により、2段目より上のシャーレ20を持ち上げた状態で、切りだしアーム14にて送り出すことができる。
【0013】切りだしアーム14にて適当な位置に送りだされたシャーレ20は、先端に吸着盤16が設けられた蓋保持部材15によって蓋20aが吸着されて持ち上げられる。すなわち、この蓋保持部材15はアーム部分が上下移動すると共に適当な角度だけの水平回転移動又は水平移動できるように構成されており、又、吸着盤16は図示しない吸引手段に接続されており、吸引と吸引解除を適宜行うことができる。開蓋されたシャーレ20内にはロボット40の先端にセットされたピペット46により、所望する検体容器から検体サンプルを取り出してシャーレ内に所定量供給することができる。また、検体を希釈後にシャーレ内に供給する場合には、希釈水の入った希釈部21内の試験管内にて注入後、希釈部下面(図示しない)に取り付けられた攪拌装置等により適宜攪拌した(所望希釈倍率により同様の作業を繰り返し行った)後にシャーレ内に供給する。
【0014】ロボット40は、脚部41と、この脚部41の上に水平回転自在に設けられた回転胴部42と、回転胴部42に設けられたロボットアーム43と、このロボットアーム43の先端に取り付けられてマイクロピペット46を着脱自在とする先端部44とにより構成されている。又、検体保持架台3はロボットアーム43の届く範囲に検体容器25を保持するように配置されいる。そして、その構造は、例えば一対のスプロケット27aに掛け渡されたチェーン27に多数の移動台24が取り付けられたもので、後述するコントロール部29による信号に基づいて適宜回転駆動される。また、この検体保持架台3上には検体容器25の上面(少なくともマイクロピペットが接触する部分)ならびにバイエルビンBの栓部分の上面(少なくともマイクロピペットが接触する部分)を滅菌するための滅菌装置23が設けられている。
【0015】この滅菌装置23の構成は特に限定するものではないが、例えば滅菌用薬剤が含浸された帯状の不織布をロール状に収納した構成で、図示の如く二個のモータ23a,23b等を備えて、この帯状不織布を適宜巻き取りながら滅菌面に接触して滅菌処理を行うものである。又、その他にも例えばUVランプ等を使用して滅菌するタイプを使用することもできる。ピペットラック18及び使用済のマイクロピペット46を回収するピペット回収部19は、当然のことながら、ロボットアームの移動領域内の適所に配置されている。
【0016】シャーレ20はシャーレ供給テーブル12から搬送路30に送りだされる。この搬送路30には、その搬送路の内側に沿って例えばチェーン31がスプロケット33、34、35、36等を介してエンドレス掛け渡されており、このチェーン31に適当な間隔で固定された押し棒32が設けられており、シャーレ20がこの押し棒32により押されて移動する。なお、このチェーン32は、スプロケットの内いずれかが図示しない駆動系により駆動されて移動する。
【0017】培地分注機50は図3に示すように、例えば三種類の培地を供給できるように供給ノズル52a,53a,54aがそれぞれエアシリンダ52、53、54に取り付けられている。また、搬送路30の所定の位置(培地供給領域)に移動してきたシャーレ20は、この位置にて一旦停止し、図示しない吸引手段に繋げられた吸着盤51aを有した蓋保持部材51により蓋20aが持ち上げられ、この状態において、所定の培地を供給するために、例えばシリンダ52がシャーレ20の方向に伸びてノズル52aから培地を所定量吐出することができる。なお、培地の吐出は培地用ポンプ17のいずれかが作動して行われる。この培地の供給が完了してからはシリンダ52は待機位置に戻ると共に、蓋保持手段51が降下しかつ吸着盤51aの吸着を解除して蓋をすることができる。
【0018】培地と検体サンプルとが供給されたシャーレ20は搬送路30上を略90度回転してから混釈装置60の所に到達する。この混釈装置60は、例えば図4に示すように搬送路30の一部を構成する混釈テーブル60aが該搬送路30とは切り離された状態にて支持プレート61により支持されている。この支持プレート61は4本の比較的細い例えばシリコンチューブのごとき弾性支柱62を介してベース板63に固定、支持されている。また、支持プレート61の略中央部には下方に伸びた軸69が固定され、この軸69の軸周りを回転自在とする中間係合部材68は、ベアリング構造を介して接続されており、その下方端に伸びた係合軸68aが軸69とは軸心がずれた位置となっている。この係合軸68aはクランク部材67の長孔67aに係合しており、このクランク部材67はモータ64により駆動される減速機66の出力軸67bにより水平回転を行うように構成されている。したがって、混釈テーブル60aは、モータ64の所定方向の回転により一定の方向にほぼ水平方向の円運動を行う。また、混釈テーブル60aはモータ64の回転を逆転させることにより、反対方向の円運動を行うことができる。この円運動を正回転及び反転させることにより、混釈作用を迅速且つ円滑に行うことができる。
【0019】混釈作業の後方(搬送路の下流側)の位置には、シャーレ20にその検査内容等の必要情報を表示する表示部70が配置されている。この表示部70は、例えばバーコードプリンタ71を有しており、適当な大きさに分割剥離できるプリントシート20cが連続的に貼着された送り出しロール71aから、個別に剥がされた状態で該プリンタ外に送り出される。なお、送りだされたときには、必要な情報はプリントアウトした状態であり、ベースシートは順次巻取ロール71cに巻かれる。送りだされたプリントシート20cは吸着盤72により吸着保持される。その後、エアシリンダ74によりプリントシート20cを搬送路30上に移動(矢印A方向の移動)し、今度はエアシリンダ73を作動させてプリントシート20cを降下(矢印B方向)させてシャーレ20に押しつけ、吸着盤71の吸着を解除したのち再び上昇(矢印C方向)して、さらに待機位置に戻る(矢印D方向)。なお、この表示部70の動作は、シャーレ検出センサ75による検出信号により開始される。
【0020】シャーレ保管部80に搬送されたシャーレ20は、所定の保管バケット81、82、83の所にて停止された後に、搬送路30から持ち上げられて積層状態で保管される。この保管バケット81にシャーレ20を移載する移載部は、例えば図6に示すように構成されている。保管バケット81の入口部分には、上方に揺動自在で搬送路上に向き合うように張り出した一対の平面形状がコ字状のフラップ84が設けられており、保管バケット81と同じ側でその脇に位置したシリンダ86により保管部81方向に往復移動可能なプッシャ85が設けられている。また、搬送路30の下側には、シャーレ20を搬送路から持ち上げることのできるリフター87が配置されている。なお、このリフター87の動作はシリンダ88等により行われる。
【0021】このリフター87がシャーレ20を持ち上げるときは、例えば先にフラップ上に載せられているシャーレを下から押し上げるようにしてフラップ84よりも上に持ち上げる。そして、フラップ84が水平に戻った状態でリフター87が下がり、該フラップ上にシャーレ20が載せられることになる。この動作を繰り返すことにより、シャーレ20が段積み状態に積み重ねられ、しかる後に、プッシャー85を作動させて段積みされたシャーレ20を保管バケット81に移動することができる。なお、他の保管バケット82、83に関しも同様な構成である。
【0022】上記のように構成された装置1における運転及び動作について説明する。先ず運転作業前においては、シャーレをコンベヤ上にセットし、培地容器を培地収納部28内にセットする。また、検体容器を処理順に合わせて移動台24上にセットすると共に、ピペットチップをセットする。また、液体培地の入ったバイエルビンBをバイエルビン供給部90にセットする。さらに又、必要に応じて希釈水の入った試験管をラック等からなる検体希釈部21にセットする。最初にシャーレ20を使用したサンプリングについて説明する。上記装置1の運転を開始するときには、ロボットアームの先端部44にピペットチップを装着し、また、シャーレ20を搬送路30上に分離、供給し、さらに所定の検体容器25の上面を滅菌する。次に、ピペットを検体容器25の上面から刺し込んで検体サンプルを吸引する。シャーレ20の蓋を蓋保持部材15により開け、検体サンプルをシャーレ内に吐出してからこのシャーレの蓋を再びする。この後、シャーレ20を培地供給領域へ搬送し、蓋保持部51により蓋を開け、所定の培地を培地分注機50により吐出して、蓋をする。次に、このシャーレ20を混釈テーブル60a上に移動する。この混釈テーブル60aはその検体サンプルによって予め設定された周期の右方向と左方向の円運動を特定の時間行って効果的な混釈をする。混釈完了後、シャーレ20を表示部70に移動し、ここでシャーレ20の上面にプリントシート20cを貼着する。その後、シャーレ20をシャーレ保管部80の所定の保管バケットの所に移動した後に搬送路30から持ち上げるようにしてフラップ84上に積層し、所定の段積み状態になったところで保管バケットに収納する。
【0023】以下、図2、図5、図7及び図8に基づいてバイエルビンの搬送部および搬送構造並びにその動作を説明する。なお、このバイエルビンBを使用したサンプリングの動作は上記シャーレ側の動作と略同期させても、また独立させた動作でもよい。しかし、同一の検体をサンプリングする場合には、前記ロボット40の動作効率等を考慮すると、バイエルビン側とシャーレ側とを同期させる動作タイミングとすることが好ましい。液体培地が入ったバイエルビンBは送りバー92を有し二列(図では二列であるが試験方法によっては所望の列数)のビン収容部91を備えたバイエルビン供給部90から該供給部90とは直交する方向に延びたバイエルビン搬送部99に一個づつ或は二個づつ供給される(試験方法によっては多数個のバイエルビンを供給する)。なお、このビン収容部91におけるバイエルビンBの移動は送りバー92による後述する間欠的な移動方法等にて行われる。バイエルビン搬送部99に供給されたバイエルビンBは所定の間隔で櫛歯状に突出した送りバー95を備えた支持プレート94により間欠的な移動で搬送プレート93上を所定の方向へ移動する。
【0024】このバイエルビン搬送における間欠的な移動とは、図7に示すようにビン収納部91の底面91aから上方に突出した所定間隔の複数の送りバー92(送りバー■〜■までの5本を示す)が支持プレート92aに支持されている。この支持プレート92aは図示しない駆動手段により前後上下(図中においては左右上下)移動する。したがって、送りバー92が図7の(イ)から(ロ)に移るごとく例えば移動起点Xの位置からみて矢印a方向に移動することでバイエルビンBは左方向へ前進する。その後、送りバー92が底面91aの下に引っ込むように矢印b方向に移動すると共に矢印c方向に後退する(ロからニ)。送りバー92は矢印d方向に移動(ニからイ)して底面91aの上方に突出する。このようなボックス動作を繰り返すことにより、バイエルビンBを移動させることができる。これは、バイエルビン搬送部99においても送りバー95が水平に構成されているだけで全く同様な機構である。
【0025】バイエルビン搬送部99上のバイエルビンBは上述の滅菌装置23によりビン栓部分であるゴム製のキャップB1部分の上面が滅菌される。その後、キャップB1の部分に下孔加工部100のカッタにより適当な切り込みによる下孔が形成される。その後、下流に移動し検体分注部101において位置決めされて、前記ロボット40により検体が注入される。その後、図8に示す如く上下位置で二つの互いに異なった方向に傾斜を有するガイドレール102a、102b(ガイドレール支持構造は図示しない)からなるビン横転部102によりバイエルビンBが送りバー95(図8には図示せず)に送られながら横転される。この横転は検体と培地を混ぜ合わせる混釈作用を兼ねている。その後、表示部70のところにおいてラベル貼着を行う。
【0026】このラベル貼着はプリントシート20cのはりつけ初期の段階では前述のシャーレ20の場合と同様であるが、ビン表面が湾曲していることから、ラベル押え装置103が設けられている。このラベル押え装置103は水平移動用のエアシリンダ75、垂直移動用のエアシリンダ76、該エアーシリンダ76の先端に取り付けられビン湾曲面に対応した曲面部79aを備えた押え部79とから構成されている。また、ラベル貼着部分およびその下流側においては、図5に示すごとく搬送プレート93にはバイエルビンBの位置を固定するためにテーパ面部77が設けられていると共に、ビン首部を保持する窪み78aを備えた直立板78が設けられ、さらにビン底押し部材78aが設けられた起立部104が形成されている。これは、送りバー95(図5には図示せず)により押されて移動し、この直立板78に沿ってビンの首部分を移動していくことによりビンが徐々に立ち上がり、最終的にはビン底押し部材78によりビン底部分が押されることによって完全に立ち上がる。バイエルビンBはさらに搬送されて、搬送部99の終端部分に配置された押圧部材105により搬送部93から横方向におされてバイエルビン収納部96に送りこまれる。
【0027】上述のように検体が注入されたバイエルビンBは、培地内に繁殖した細菌がその代謝によって放出する二酸化炭素の量を、例えば赤外線分光器等を使用した測定器により検出する方法を用いることにより、寒天培地を使用した場合の検査結果を出すために必要な約24〜48時間という時間にくらべて、培地内に検体を注入してから例えば数時間程度といった非常に短い時間で検査結果を出すことができる。
【0028】本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、下記する如く種々変更できるものである。例えば、容器送り出し装置においては、ベルトコンベヤタイプでなく、例えば適当なプッシャーにより押し出すような構成、ターンテーブルの回転による供給でもよい。また、搬送手段においても周知の種々のものを使用することができるものであり、保管部の構造においてもその必要に応じてその構造を適宜変更することができる。さらに容器はシャーレの如き形状でない場合もあり、この場合にはその容器に対応した搬送系を使用するものである。更にまた、上記実施例においては混釈を行うようにしたが、本発明においてはこの混釈動作は検体によっては必ずしも必要ではなく、その場合には混釈動作を省略することもできる。また、上記実施例においては、プリントシートの貼着は混釈作業の後にしたが、この貼着作業のタイミングは個別に搬送されているときであれば特に限定するものではない。
【0029】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は寒天培地を用いる第1容器を第1搬送路にて移動させると共に、液体培地を用いる第2容器を第2搬送路を前記第1搬送路に沿うようにして、検体のサンプルを注出する一つの検体供給手段により前記第1容器及び第2容器に該検体を供給し、その後予め入力されていた表示項目を出力可能とする一つの表示手段により、前記第1容器及び第2容器上に表示したのちに、前記各容器を前記第1搬送路及び前記第2搬送路の各終端側の保管領域に収容するので、同じ検体サンプルを使用してこのサンプルを異種の二つの培地とを夫々別の容器に同じ検体供給手段により自動的に連続的供給でき、かつ最終的に所望する情報表示においても同じ表示手段により異種の容器上に正確に表示することができ、又、各容器を別の搬送ラインにて所定箇所に集めることができる。さらに、本発明によれば、検体のサンプル取り、検体の希釈、培地分注においても、人手をなくすことができ、異なった要求に対応した異種の検査のためのサンプリングの正確性ならびに作業速度を高めることができる。更にまた、このようにサンプル取り及び培地の分注や液体培地の入ったビン内への検体の注入を全自動化したことにより、複数の作業工程が省スペースでできることから、無菌室の大きさも小さくでき、無菌室の無菌状態を高いレベルに保ち易くしかも無菌状態に保つためのランニングコストの低減培養データの信頼性の向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の自動サンプリング・培地分注装置の概略斜視図である。
【図2】図1に示した自動サンプリング・培地分注装置の概略平面図である。
【図3】図1に示した培地分注部の概略斜視図である。
【図4】図1に示した混釈部の要部概略斜視図である。
【図5】図1に示したシャーレおよびバイエルビンの表示部ならびにバイエルビンを起立させる構造を示した要部概略斜視図である。
【図6】図2におけるX−X線に沿った部分であって、保管部にシャーレを移載する部分の要部概略側面図である。
【図7】バイエルビンの搬送機構を示した概略平面図である。
【図8】バイエルビンを横にする構造を示した要部概略斜視図である。
【図9】本発明に使用するバイエルビンの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 自動サンプリング・培地分注装置
2 主架台
3 検体保持架台
4 上支持板面
5 容器送り出し装置
6 ベルトローラ
7 コンベヤベルト
8 側板
9 支持ブラケット
10 円孔
11 支持バー
12 シャーレ供給テーブル
13 回転軸
14 切りだしアーム
15 蓋保持部材
16 吸着盤
18 ピペットラック
19 ピペット回収部
20 シャーレ
20c プリントシート
21 検体希釈部
23 滅菌装置
28 培地収納部
29 コントロール部
30 搬送路
40 ロボット
50 培地分注機
51 蓋保持部
60 混釈装置
70 表示部
80 シャーレ保管部
90 バイエルビン供給部
96 バイエルビン保管部
100 下孔加工部
101 バイエルビンの検体分注部
102 ビン横転部
103 ラベル押え部
104 起立部
B バイエルビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 寒天培地を用いる第1容器を特定の第1搬送路にて移動させると共に、液体培地を用いる第2容器を第2搬送路の少なくても一部分を前記第1搬送路に沿うようにして、検体のサンプルを注出する一つの検体供給手段により前記第1容器及び第2容器に該検体を供給し、その後において、予め入力されていた表示項目を出力可能とする一つの表示手段により、前記第1容器及び第2容器上に表示したのちに、前記各容器を前記第1搬送路及び前記第2搬送路の各終端側の保管領域に収容することを特徴とする検体の自動サンプリング方法。
【請求項2】 寒天培地を用いる第1容器をを順次送り出す第1容器送出し装置及び液体培地を用いる第2容器を第2容器送出し装置と、送り出された前記第1容器を第1搬送路上にて移動させる第1搬送手段及び該第1搬送手段に少なくても一部が沿うように構成され前記第2容器を第2搬送路上にて移動させる第2搬送手段と、前記第1及び第2搬送手段に隣設し複数の検体を保持した検体保持手段と、前記検体からそのサンプルを注出するピペットチップをピペットチップラックから取出し自在としかつ前記第1及び第2容器へ検体サンプルを供給するべく移動自在なアームを備えた一つの検体供給手段と、予め入力された情報を前記第1及び第2容器に表示する一つの表示手段と検体サンプルの培養可能状態にて前記第1及び第2容器を夫々保管収容する各保管部とを備えてなる検体の自動サンプリング装置。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【特許番号】特許第3213435号(P3213435)
【登録日】平成13年7月19日(2001.7.19)
【発行日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−112409
【出願日】平成5年4月16日(1993.4.16)
【公開番号】特開平6−300673
【公開日】平成6年10月28日(1994.10.28)
【審査請求日】平成11年6月28日(1999.6.28)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【参考文献】
【文献】特開 平6−174732(JP,A)
【文献】特開 平5−103657(JP,A)
【文献】特開 昭62−267642(JP,A)
【文献】特開 昭62−155079(JP,A)
【文献】特開 平3−49676(JP,A)
【文献】実用新案登録2559688(JP,Y2)