説明

検体分析装置及びデータ処理装置

【課題】精度管理試料の測定頻度が異なる複数の精度管理データを、比較しやすいように表示する。
【解決手段】複数の前記精度管理データのうち、選択された複数の表示対象精度管理データについての精度管理グラフを同時に表示させ、複数の精度管理グラフは、それぞれ、精度管理値が時系列でプロットされたものであるとともに、複数の精度管理グラフ間で同一の単位期間に含まれる精度管理値の数が異なる場合であっても、複数の前記管理グラフには、当該単位期間に対して同一の時系列範囲が割り当てられ、割り当てられた時系列範囲に、当該時系列範囲に対応する単位期間内の精度管理値がプロットされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液などの検体を分析する検体分析装置及び精度管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
検体分析装置を使用している施設では、正しい測定結果が得られていることを確認するため、精度管理が行われている。
精度管理は、精度管理試料を定期的に(例えば毎日)測定し、その測定結果が定められた範囲内にあることを確認することによって行われる。精度管理に関しては、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
一般に、精度管理が行える検体分析装置では、精度管理試料を測定した測定結果である精度管理値を、所定期間分、時系列にプロットしてグラフ表示することができる(特許文献1参照)。所定期間分の精度管理値の集合からなる時系列データである精度管理データを、時系列表示することで、その検体分析装置における精度管理値の推移を確認することが可能である。
【0004】
精度管理値の表示に関し、特許文献1には、横軸に日付、縦軸にSD値をとった管理図が開示されている。この管理図では、濃度レベルの異なる複数の精度管理試料それぞれの測定結果を示す複数の折れ線グラフが縦に並べて表示されている。また、特許文献1では、複数の異なる精度管理試料に関して、測定日が同一月日である精度管理値(SD値)は、横軸の同一位置にプロットされている。
【0005】
このように、所定期間分の精度管理値からなる精度管理データを、複数個、同時に表示することで、検体分析装置の管理者等は、複数の精度管理データを比較することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−180616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
精度管理試料の測定は、1日に1回だけ行われるとはかぎらず、1日に複数回行われることもある。
しかも、複数の精度管理データそれぞれにおいて、同一日における測定回数が異なる場合もある。
例えば、検体分析装置が、複数の測定部を有している場合、ある時間帯では、精度管理試料を複数の測定部で測定して、複数の測定部それぞれの精度管理値が得られる。しかし、別の時間帯では、特定の測定部はシャットダウンされており使用されていないために、動作中の他の測定部だけで精度管理試料の測定が行われることがある。
【0008】
この結果、ある測定部についての精度管理データと、他の測定部についての精度管理データとでは、同一日の間における精度管理試料の測定回数が異なるものとなる。
【0009】
このように各日における測定回数の異なる複数の精度管理データを、時系列にプロットして表示する場合、特別な工夫なしでは、複数の精度管理データを比較しやすいように表示することが困難となる。
【0010】
例えば、精度管理データに含まれる各精度管理値を一定のプロット間隔でプロットすることを優先し、プロット間隔から「日」の概念を無くした場合、複数の精度管理データに対応する複数のグラフにおいて、横軸上の月日の位置がずれることになる。このため、複数の精度管理データの比較が困難となる。
また、横軸の月日の位置ずれを無くすことを優先すると、複数回の測定が行われた日には、異なる値の複数のプロットが密集することになる。このため、やはり、複数の精度管理データの比較が困難となる。
【0011】
そこで、本発明は、精度管理試料の測定頻度が異なる複数の精度管理データを、比較しやすいように表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、検体中の成分を分析する測定部と、前記測定部にて精度管理試料を測定して得た精度管理値の時系列データである精度管理データを複数記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記精度管理データを表示するための表示部と、前記精度管理データに含まれる精度管理値をプロットした精度管理グラフを、前記表示部に表示させる処理部と、を備え、前記処理部は、前記記憶部に記憶された複数の前記精度管理データのうち、前記表示部における表示対象として選択された複数の表示対象精度管理データについての前記精度管理グラフを、前記表示部に同時に表示させ、複数の前記精度管理グラフは、それぞれ、精度管理値が時系列でプロットされたものであるとともに、複数の前記精度管理グラフ間で同一の単位期間に含まれる精度管理値の数が異なる場合であっても、前記複数の前記管理グラフには、当該単位期間に対して同一の時系列範囲が割り当てられ、割り当てられた時系列範囲に、当該時系列範囲に対応する単位期間内の精度管理値がプロットされている検体分析装置である。
【0013】
(2)前記測定部は複数備わっており、前記処理部は、前記記憶部に記憶された複数の前記精度管理データのうち、複数の前記測定部それぞれで測定された複数の精度管理データについての複数の精度管理グラフを、前記表示部に同時に表示させるのが好ましい。
【0014】
(3)前記時系列範囲は、当該時系列範囲に対応する単位期間内における精度管理値の数が最大である精度管理グラフについて、精度管理値を所定のプロット間隔でプロットするために必要とされる範囲が確保されたものであるのが好ましい。
【0015】
(4)前記単位期間内における精度管理値の数が最大である前記精度管理グラフ以外の他の精度管理グラフについては、前記時系列範囲内において、前記単位期間内における精度管理値の数が最大である前記精度管理グラフのプロット位置のいずれかと同一のプロット位置に、精度管理値がプロットされているのが好ましい。
【0016】
(5)前記時系列範囲内において、前記他の精度管理グラフの精度管理値は、グラフ時間軸方向における古い時間側に詰めてプロットされているのが好ましい。
【0017】
(6)前記処理部は、複数の前記精度管理グラフを、前記表示部の同一画面上に重ね合わせた状態で表示させるのが好ましい。
【0018】
(7)複数の前記精度管理データは、それぞれ、複数の測定項目についての精度管理値を含み、前記処理部は、測定項目毎に複数の前記精度管理グラフを重ね合わせた状態で表示させるのが好ましい。
【0019】
(8)前記処理部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記精度管理データの中から、所定の抽出条件に従って、一の表示対象精度管理データと同時に表示される他の表示対象精度管理データの候補を抽出し、抽出された候補を前記表示部に表示させ、前記表示部に表示された候補の中から前記他の表示対象精度管理データの選択入力を受け付けるのが好ましい。
【0020】
(9)前記処理部は、抽出された前記候補を、所定のソート条件でソートして前記表示部に表示させるのが好ましい。
【0021】
(10)他の観点からみた本発明は、検体中の成分を分析する測定部にて精度管理試料を測定して得た精度管理値の時系列データである精度管理データを複数記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記精度管理データを表示するための表示部と、前記精度管理データに含まれる精度管理値をプロットした精度管理グラフを、前記表示部に表示させる処理部と、を備え、前記処理部は、前記記憶部に記憶された複数の前記精度管理データのうち、前記表示部における表示対象として選択された複数の表示対象精度管理データについての複数の前記精度管理グラフを、前記表示部に同時に表示させ、複数の前記精度管理グラフは、それぞれ、精度管理値が時系列でプロットされたものであるとともに、複数の前記精度管理グラフ間で同一の単位期間に含まれる精度管理値の数が異なる場合であっても、前記複数の前記管理グラフには、当該単位期間に対して同一の時系列範囲が割り当てられ、割り当てられた時系列範囲に、当該時系列範囲に対応する単位期間内の精度管理値がプロットされているデータ処理装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、精度管理試料の測定頻度が異なる複数の精度管理データを、比較しやすいように表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】検体分析装置の構成図である。
【図2】処理装置の構成図である。
【図3】精度管理データベースの構成図である。
【図4】精度管理グラフの表示処理手順を示すフローチャートである。
【図5】重ね合わせ対象の精度管理データの候補を表示する画面である。
【図6】重ね合わせ表示処理を示すフローチャートである。
【図7】プロットの仕方の説明図である。
【図8】測定項目毎のチャートの表示画面である。
【図9】プロットの仕方の他の例を示す説明図である。
【図10】プロットの仕方の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る検体分析装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
[1.全体構成]
図1は、本発明の検体分析装置の一例である血液分析装置1の構成を示している。血液分析装置1は、被験者から採取した血液検体中の血球を計数する血球計数装置であり、第1測定部2及び第2測定部3の2つの測定部と、両測定部2,3の前側(図1の下側)に配置された検体搬送装置(サンプラ)4と、両測定部2,3及び検体搬送装置4に電気的に接続された処理装置(データ処理装置)5と、を備えている。また、血液分析装置1は、図示しないネットワークを介して、ホストコンピュータ6に接続されている。
【0026】
第1測定部2及び第2測定部3は、それぞれ、検体である血液を、検体搬送装置によって搬送されてきた検体容器101から吸引し、吸引した血液に試薬を混合して測定用検体を調製し、測定用検体における血球を検出し、複数の測定項目(例えば、RBC,WBC,HCT,MCV,HCMなど)についての分析結果を出力する。
【0027】
第1測定部2及び第2測定部3は、実質的に同種類の測定部であり、互いに隣接して配置されている。具体的には、本実施の形態では、第2測定部3は、第1測定部2と同じ測定原理を使用して、共通の測定項目について検体を測定する。さらに、第2測定部3は、第1測定部2が分析しない測定項目についても測定する。
【0028】
第1測定部2及び第2測定部3で得られた検出結果は、検体の測定データ(測定結果)として、処理装置5に送信される。なお、この測定データは、ユーザに提供される最終的な分析結果(赤血球数、血小板数、ヘモグロビン量、白血球数など)のもととなるデータである。
【0029】
処理装置5は、図2に示されるように、コンピュータ(PC)からなり、CPU、ROM、RAMなどからなる処理部51と、表示部52と、入力デバイス53とを含んでいる。また、表示部52は、第1測定部2及び第2測定部3から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果及び精度管理データなどを表示するために設けられている。
【0030】
また、処理部51は、CPU51aと、ROM51bと、RAM51cと、ハードディスク51dと、読出装置51eと、入出力インタフェース51fと、通信インタフェース51gと、画像出力インタフェース51hとから主として構成されている。CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hは、バス51iによって接続されている。
【0031】
CPU51aは、ROM51bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM51cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム54aをCPU51aが実行することにより、コンピュータが、本実施形態における処理装置5として機能する。
【0032】
ハードディスク51dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムなど、CPU51aに実行させるための種々のコンピュータプログラムがインストールされている。
【0033】
ハードディスク51dには、精度管理用のコンピュータプログラム54aがインストールされているとともに、第1測定部2及び第2測定部3にて精度管理試料を測定した測定・分析結果である精度管理データが登録される精度管理データベース54bも設けられている。
【0034】
読出装置51eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体54に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体54には、アプリケーションプログラム54a,54bが格納されており、コンピュータがその可搬型記録媒体54からアプリケーションプログラム等54a,54bを読み出し、ハードディスク51dにインストールすることが可能である。
【0035】
なお、前記アプリケーションプログラム等54a,54bは、可搬型記録媒体54によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータと通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム等54a,54bがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータがアクセスして、そのアプリケーションプログラム等54a,54bをダウンロードし、これをハードディスク51dにインストールすることも可能である。
【0036】
また、ハードディスク51dには、例えば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、アプリケーションプログラム54aは前記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0037】
入出力インタフェース51fには、入力デバイス53が接続されており、ユーザがその入力デバイス53を使用することにより、コンピュータにデータを入力するとともに、ユーザがコンピュータに対する操作を行うことが可能である。
【0038】
検体分析装置1では、検体分析装置1の精度管理のため、通常の検体に代えて、精度管理試料を通常の血液検体と同様に測定・分析することもできる。測定部2,3にて精度管理試料を測定した得た精度管理値(精度管理試料の分析結果)は、前記精度管理データベース54bに登録される。
精度管理用コンピュータプログラム54aは、精度管理データベース54bに登録されている精度管理値を精度管理グラフ(QCチャート)として表示部52に時系列で表示させるとともに、精度管理データの統計処理などを行う。
【0039】
図3は、精度管理データベース54bを示している。精度管理データベースは、QCファイルテーブル、サンプルテーブル、データテーブルの3つのテーブルから構成されたリレーショナルデータベースである。
図3(a)に示すQCファイルテーブルは、「装置ID」、「QCファイルNo.」、「Lot No.」、「マテリアル」の項目を有している。
【0040】
「装置ID」は、検体分析装置1に含まれる測定部2,3それぞれを識別するための識別子である。ここでは、第1測定部2には「XS−10−1001」の装置IDが付与され、第2測定部3には「XS−10−1002」の装置IDが付与されているものとする。
【0041】
「QCファイルNo.」は、検体分析装置1に保存される精度管理データのファイル名(番号)を示している。一つのQCファイルは、特定のロット番号の特定のマテリアルについて、複数の測定部2,3で測定された測定結果である精度管理値の集合として構成され、複数のQCファイルが保存可能である。
【0042】
「Lot No.」は、精度管理試料のロット番号を示すものであり、「マテリアル」は、精度管理試料の種類を示すものである。個々の精度管理試料は、「Lot No.」と「マテリアル」によって一意に特定される。つまり、「Lot No.」と「マテリアル」は、精度管理試料の識別子である。
【0043】
図3(b)に示すサンプルテーブルは、「装置ID」、「QCファイルNo.」、「シーケンスNo.」、「測定日時」の項目を有している。サンプルテーブルとQCファイルテーブルとは、QCファイルNo.又は装置IDで関連付けられている。
【0044】
「シーケンスNo.」は、精度管理試料を測定する度に付与される番号であり、「測定日時」は、精度管理試料を測定した年月日及び時間を示す。
【0045】
図3(c)に示すデータテーブルは、「シーケンスNo.」、「項目」、「測定データ」の項目を有している。データテーブルとサンプルテーブルとは、シーケンスNo.で関連付けられている。
【0046】
「項目」は、精度管理試料の測定項目を示す。精度管理試料に対する1回の測定(分析)で複数の測定項目の測定データが得られる。
「測定データ」は、各測定項目の測定データ(精度管理値)を示す。
【0047】
精度管理データベース54bは、以上のように構成されているため、QCファイルNo.及び装置IDが特定されると、装置IDにて特定された測定部2,3において特定の精度管理試料を測定した複数の精度管理値の集合である精度管理データが得られる。
【0048】
つまり、精度管理データベース54bに登録されている精度管理データは、それぞれ、特定の測定部にて特定の精度管理試料を複数の測定日時で測定した複数の測定データ(精度管理値)の集合からなる時系列データである。精度管理データベース54bには、このような精度管理データを、複数個、記憶可能である。
【0049】
処理部51は、精度管理用コンピュータプログラム54aに基づき、精度管理データベース54bに登録されている精度管理値を精度管理グラフ(QCチャート)として表示部52に時系列で表示させるための処理を行う。
【0050】
図4は、複数(2個)の精度管理グラフ(QCチャート)を同時に表示させる場合の手順を示している。なお、図4に示す処理手順は、精度管理用コンピュータプログラム54aが処理部51によって実行されることで行われる。
【0051】
ここでは、一方の精度管理グラフに他方の精度管理グラフを重ね合わせる場合の手順について説明する。処理部51は、表示部52に表示されるメインチャート(一方の精度管理グラフ)の選択入力を受け付ける(ステップS1)。選択入力は、処理部51が、精度管理データベース54bに登録されている精度管理データ(QCファイル)一覧を表示部52に表示させておき、ユーザがマウスなどの入力デバイス53を用いて、表示部52の画面に表示された一覧を選択することで行える。
【0052】
処理部51は、選択された精度管理データに含まれる複数の精度管理値を、測定日時順に(時系列で)一定間隔でプロットした精度管理グラフ(メインチャート)を表示部52に表示させる(ステップS2)。
【0053】
処理部51は、メインチャートに他のQCチャート(他の精度管理グラフ)を重ね合わせるための重ね合わせ指示入力を受付けつけると(ステップS3)、さらに、QCチャートの比較(重ね合わせ)の仕方の選択入力を付けつける(ステップS4,S5)。なお、ステップS3の重ね合わせ指示の入力は、処理部51がメインチャート表示画面中に、重ね合わせ指示入力のためのボタン領域を表示させておき、ユーザがマウスなどの入力デバイス53を用いて、当該ボタン領域を選択することで行える。
【0054】
QCチャートの比較(重ね合わせ)の仕方としては、同一測定部によって測定された複数の精度管理データ(QCチャート)を比較する場合(ステップS4)と、異なる複数の測定部によって測定された複数の精度管理データ(QCチャート)を比較する場合(ステップS5)とがある。
比較(重ね合わせ)の仕方の選択入力を受け付けるには、処理部51は、重ね合わせ指示入力を付けつけると、いずれの比較(重ね合わせ)の仕方を選択するかの選択肢を表示部52に表示させておき、ユーザがマウスなどの入力デバイス53を用いて選択肢を選択することで行える。
【0055】
続いて、処理部51は、メンチチャートに重ね合わせて表示される他のQCチャート(精度管理グラフ)の基になる精度管理データ(QCファイル)の候補の一覧を表示部52に表示させる。
【0056】
図5は、候補の一覧を表示する画面10の例を示している。なお、図5は、ステップS5の「異なる複数の測定部によって測定された複数の精度管理データを比較する」が選択された場合における画面である。
表示される精度管理データの候補は、データベース54bに登録されている複数の精度管理データの中から、処理部51が所定の抽出条件に従って抽出したものである。処理部51は、抽出された候補を、所定のソート条件でソートして、表示部52の画面10中に表示させる。
【0057】
ステップS4の「同一測定部によって測定された複数の精度管理データを比較する」が選択されている場合、候補抽出のための所定の抽出条件としては、例えば、下記1)〜4)のAND条件によることができる。
1)メインチャートと同一測定部の精度管理データであること
2)ロット登録済みの精度管理試料についての精度管理データであること
3)メインチャートと同一のマテリアルであること
4)メインチャートをのぞく
【0058】
また、ステップS5の「異なる複数の測定部によって測定された複数の精度管理データを比較する」が選択されている場合、候補抽出のための所定の抽出条件としては、例えば、下記1)〜3)のAND条件によることができる。
1)メインチャートとは異なる測定部の精度管理データであること
2)ロット登録済みの精度管理試料についての精度管理データであること
3)メインチャートと同一のマテリアルであること
【0059】
所定の抽出条件で、データベース54b中の多数の精度管理データを絞り込んだ上で表示することで、表示される候補の数が少なくなり、ユーザが候補の選択を行い易くなる。しかも、比較(重ね合わせ)の仕方に応じて、異なる抽出の仕方をするため、適切な候補が抽出される。
【0060】
上記抽出条件にて抽出された複数の精度管理データ候補のソート条件としては、例えば、第1ソート条件としてロット登録日付の降順、第2条件としてロット番号の昇順、第3条件としてQCファイルNo.の昇順、とすることができる。なお、第1ソート条件が最優先され、次に第2条件、第3条件の順で優先してソートが行われる。
重ね合わせられる可能性の高い精度管理データほど先頭(上位)に表示されるようにソートすることで、ユーザが候補の選択を行い易くなる。
【0061】
精度管理データベース54bから抽出された候補のリストは、画面10中の候補表示部12に表示される。図5では、複数の候補12a,12b,12c,12dが表示されている。ユーザは、マウスなどの入力デバイス53を用いて候補12a,12b,12c,12dを選択することができる。そして、画面10中の「OKボタン」13をクリックすると、選択された候補が、メインチャートに重ね合わせる精度管理データとして選択されたことが確定する(ステップS7)。
【0062】
処理部51は、ステップS7で候補の選択入力を受け付けると、メインチャートに選択された精度管理データのQCチャートを重ね合わせる処理(ステップS8)を行う。
【0063】
図6は、ステップS8の重ね合わせ処理の詳細を示している。
ここで、重ね合わせに係る精度管理データ(重ね合わせられる精度管理データと重ね合わせる精度管理データ)は、精度管理値が同時に測定されたものとは限らないし、精度管理値の測定頻度(例えば、1日当たりの測定回数)も異なることがある。
図6に示す重ね合わせ処理は、そのような精度管理データのQCチャートを比較し易いようにユーザに提示するためのものである。
【0064】
まず、処理部51は、QCチャートとして重ね合わせに係る複数の精度管理データにおいて、測定月日日が最も古い日をサーチし、その日を、指定月日として設定する(ステップS8−1)。
【0065】
そして、処理部51は、メインチャートの基になる第1精度管理データの指定月日における精度管理値の数m1をサーチする(ステップS8−2)。また、メインチャートに重ね合わせる第2精度管理データの指定月日における精度管理値の数n1をサーチする(ステップS8−3)。
【0066】
続いて、処理部51は、チャートの時間軸の初期位置(最古年月日)から、第1精度管理データの指定月日におけるm1個の精度管理値を、その測定時間順に、所定の間隔(プロット間隔)で、チャート上にプロットする(ステップS8−4)。つまり、第1精度管理データのチャート(メインチャート)では、チャートの初期位置からm1個の精度管理値が等間隔でプロットされる。
【0067】
また、同様に、処理部51は、チャートの時間軸の初期位置(最古年月日)から、第2精度管理データの指定月日におけるn1個の精度管理値を、その測定時間順に、前記所定の間隔(プロット間隔)で、チャート上にプロットする(ステップS8−4)。つまり、第2精度管理データのチャート(重ね合わせるチャート)では、チャートの初期位置からn1個の精度管理値が等間隔でプロットされる。
【0068】
そして、処理部51は、次の月日の精度管理値の有無を確認し(ステップS8−5)、次の日の精度管理値があれば、その日を指定月日として設定し(ステップS8−6)、ステップS8−2)に戻る。
【0069】
そして、処理部51は、再び、第1精度管理データの指定月日における精度管理値の数m2をサーチするとともに(ステップS8−2)、第2精度管理データの指定月日における精度管理値の数n2をサーチする(ステップS8−3)。
【0070】
続いて、処理部51は、第1精度管理データの指定月日におけるm2個の精度管理値をプロットする際に、m1≧n1であれば、チャートの初期位置からm1個目のプロット位置から前記所定の間隔おいた次のプロット位置(m1+1)から、m2個の精度管理値を、その測定時間順に、前記所定の間隔で、プロットする。一方、m1<n1であれば、処理部51は、チャートの初期位置からn1個目のプロット位置から、前記所定の間隔おいた、次のプロット位置(n1+1)から、m2個の精度管理値を、その測定時間順に、前記所定の間隔で、プロットする(ステップS8−4)。
【0071】
また、処理部51は、第2精度管理データの指定月日におけるn2個の精度管理値をプロットする際に、n1≧m1であれば、チャートの初期位置からn1個目のプロット位置から前記所定の間隔おいた次のプロット位置(n1+1)から、n2個の精度管理値を、その測定時間順に、前記所定の間隔で、プロットする。一方、n1<m1であれば、処理部51は、チャートの初期位置からm1個目のプロット位置から、前記所定の間隔おいた、次のプロット位置(m1+1)から、n2個の精度管理値を、その測定時間順に、前記所定の間隔で、プロットする(ステップS8−5)。
【0072】
このようなステップS8−2〜S8−4までの処理が、指定月日が精度管理データにおける最新の日付となるまで行われる。
【0073】
図7は、ステップS8−2〜S8−4によって、複数の精度管理データをプロットした精度管理グラフG1,G2の一部を示している。
ここでは、2011/4/21が測定日である精度管理値の数が、第1精度管理グラフG1ではm1=2であり、第2精度管理グラフG2ではn1=3である。また、翌日の2011/4/22が測定日である精度管理値の数が、第1精度管理グラフG1ではm2=2であり、第2精度管理グラフG2ではn2=1である。さらに、2011/4/23が測定日である精度管理値の数が、第1精度グラフG1ではm3=1であり、第2精度管理グラフG2ではn3=0である。さらに、2011/4/24が測定日である精度管理値の数が、第1精度管理グラフG1ではm4=0であり、第2精度管理グラフG2ではn4=1である。
【0074】
各測定日において、精度管理値の数が多い(最大である)方の精度管理グラフにおける精度管理値の数(最大プロット数)に着目すると、2011/4/21はn1=3であり、2011/4/22ではm2=2であり、2011/4/23ではm3=1であり、2011/4/24では、n4=1である。
【0075】
最大プロット数に対応して、各測定日においてプロットされる時間軸方向範囲(時系列範囲)は、2011/4/21では3プロット分の範囲であり、2011/4/22では2プロット分の範囲であり、2011/4/23では1プロット分の範囲であり、2011/424では1プロット分の範囲である。なお、測定日(単位期間)ごとに割り当てられる時系列範囲は、異なり得るものである。
【0076】
このように、本実施形態では、各測定日(単位期間)における精度管理値数が、複数の精度管理グラフG1,G2(精度管理データ)間で異なっていても、各測定日(単位期間)に対して割り当てられる時系列範囲は、複数の精度管理グラフG1,G2(精度管理データ)にとって同一のものとなっている。
【0077】
つまり、例えば、2011/4/21についてみると、その日に割り当てられた第1時系列範囲は3プロット分の範囲であるが、第1精度管理グラフG1の精度管理値数m1=2であり、2個の精度管理値が、第1時系列範囲内に左詰めで(時間軸方向における古い時間側に詰めて)プロットされている。
【0078】
また、複数の精度管理グラフG1,G2間で、精度管理値の測定時刻が異なっていても、それにかかわらず、いずれのグラフG1,G2の精度管理値も、所定のプロット間隔をおいて存在する所定のプロット位置にプロットされている。
【0079】
そして、2011/4/21の翌日である2011/4/22の精度管理値は、第2精度管理グラフG2については、2011/4/21で左から3つ目のプロット位置までプロットされているから、次のプロット位置である左から4つ目のプロット位置にプロットされる。
第1精度管理グラフG1については、2011/4/21で左から2つ目のプロット位置までしかプロットされていないが、左から3つ目のプロット位置までは2011/4/21に割り当てられた第1時系列範囲であるから、第2精度管理グラフG2と同様に、左から4つ目のプロット位置から時系列でプロットされる。
そして、以降の日付についても同様にプロットされ、各プロット位置が線で結ばれた折線グラフ(チャート)が生成される。
【0080】
したがって、各日(単位期間)の測定回数が異なり得る第1精度管理グラフG1と第2精度管理グラフG2とを、図7に示すように同一画面上に重ね合わせて表示しても、比較し易い表示となる。つまり、各測定日において、精度管理値が少ないほうのグラフは、精度管理値が多い方のグラフよりも少ない分のプロットをスキップしているため、グラフの時間軸方向の位置は、第1精度管理グラフG1と第2精度管理グラフG2とで異なることがない。したがって、各測定日の精度管理値を比較しやすい。
なお、複数の精度管理グラフG1,G2は、それぞれ異なる色で表示され、2本のグラフは容易に識別可能である。
【0081】
図6に示す重ね合わせ表示処理は、精度管理データに含まれる複数の測定項目毎に行われる。図8は、複数の測定項目(RGB,HGB,HCT,MCV,MCH)それぞれについて、複数の精度管理グラフを重ね合わせた画面20の表示例を示している。この画面20では、カーソル線21をグラフ上で移動させることができ、カーソル線21近傍には、そのカーソル線21が示す年月日が表示される。このように、複数の測定項目それぞれについてグラフを重ねることで、複数の測定項目についての比較を行い易くなる。
【0082】
図9は、プロットの仕方の変形例を示している。図7及び図8では、各測定日において、精度管理値数が少ないほうのグラフは、多い方のグラフにおけるプロット位置のいずれかと同一のプロット位置に精度管理値がプロットされているが、図9では、精度管理値数が少ないほうのグラフは、同一の時系列範囲内で、多い方のグラフにおけるプロット位置とは異なる位置にプロットされている。このように、両グラフのプロット位置は、各測定日(単位期間)において同一の時系列範囲内に位置していればよく、同一位置でなくてもよい。
【0083】
図10は、プロットの仕方の変形列を示している。図7及び図8では、各測定日において、精度管理値数が少ないほうのグラフは、精度管理値が左詰めでプロットされていたが、図10では、右詰めでプロットされている。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、1日を単位期間として、1日毎の時系列範囲が設定されていたが、1時間、数時間、又は数日を単位期間として、それらの単位期間毎に時系列範囲が設定されてもよい。
また、重ね合わせ表示に係る精度管理データの選択について、上記実施形態では「同一測定部の精度管理データを比較」か「異なる測定部の精度管理データを比較」のいずれかを選択していたが、両者を選択するように構成されていてもよい。例えば、2台の測定部および2種類のQCファイルを選択する場合には、合計4つのQCチャートの重ね合わせ表示を行なうことが可能である。
また、複数の精度管理グラフは重ね合わせる必要はなく、単に並べて表示するだけであってもよい。そのときにも、各精度管理グラフのプロットは単位期間毎の時系列範囲に収まるように表示される。
【0085】
また、処理装置(データ処理装置)5の機能は、検体分析装置1の一部の機能として設けられているものに限らず、検体分析装置1にネットワークを介して接続されたコンピュータ(ホストコンピュータ6など)が有するものであってもよい。この場合、精度管理装置として機能するコンピュータは、精度管理値(精度管理データ)を、検体分析装置1からネットワークを介して受信して記憶すればよい。
【符号の説明】
【0086】
1 血液分析装置
2 第1測定部
3 第2測定部
4 検体搬送装置
5 処理装置(精度管理装置)
51 処理部
52 表示部
53 入力デバイス
51d ハードディスク(記憶部)
54a 精度管理用コンピュータプログラム
54b 精度管理データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の成分を分析する測定部と、
前記測定部にて精度管理試料を測定して得た精度管理値の時系列データである精度管理データを複数記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記精度管理データを表示するための表示部と、
前記精度管理データに含まれる精度管理値をプロットした精度管理グラフを、前記表示部に表示させる処理部と、
を備え、
前記処理部は、前記記憶部に記憶された複数の前記精度管理データのうち、前記表示部における表示対象として選択された複数の表示対象精度管理データについての前記精度管理グラフを、前記表示部に同時に表示させ、
複数の前記精度管理グラフは、それぞれ、精度管理値が時系列でプロットされたものであるとともに、複数の前記精度管理グラフ間で同一の単位期間に含まれる精度管理値の数が異なる場合であっても、前記複数の前記管理グラフには、当該単位期間に対して同一の時系列範囲が割り当てられ、割り当てられた時系列範囲に、当該時系列範囲に対応する単位期間内の精度管理値がプロットされている、
検体分析装置。
【請求項2】
前記測定部は複数備わっており、
前記処理部は、前記記憶部に記憶された複数の前記精度管理データのうち、複数の前記測定部それぞれで測定された複数の精度管理データについての複数の精度管理グラフを、前記表示部に同時に表示させる
請求項1記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記時系列範囲は、当該時系列範囲に対応する単位期間内における精度管理値の数が最大である精度管理グラフについて、精度管理値を所定のプロット間隔でプロットするために必要とされる範囲が確保されたものである
請求項1又は2記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記単位期間内における精度管理値の数が最大である前記精度管理グラフ以外の他の精度管理グラフについては、前記時系列範囲内において、前記単位期間内における精度管理値の数が最大である前記精度管理グラフのプロット位置のいずれかと同一のプロット位置に、精度管理値がプロットされている
請求項3記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記時系列範囲内において、前記他の精度管理グラフの精度管理値は、グラフ時間軸方向における古い時間側に詰めてプロットされている
請求項4記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記処理部は、複数の前記精度管理グラフを、前記表示部の同一画面上に重ね合わせた状態で表示させる
請求項1〜5のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項7】
複数の前記精度管理データは、それぞれ、複数の測定項目についての精度管理値を含み、
前記処理部は、測定項目毎に複数の前記精度管理グラフを重ね合わせた状態で表示させる
請求項1〜6のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項8】
前記処理部は、
前記記憶部に記憶されている複数の前記精度管理データの中から、所定の抽出条件に従って、一の表示対象精度管理データと同時に表示される他の表示対象精度管理データの候補を抽出し、
抽出された候補を前記表示部に表示させ、
前記表示部に表示された候補の中から前記他の表示対象精度管理データの選択入力を受け付ける
請求項1〜7のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項9】
前記処理部は、抽出された前記候補を、所定のソート条件でソートして前記表示部に表示させる
請求項8記載の検体分析装置。
【請求項10】
検体中の成分を分析する測定部にて精度管理試料を測定して得た精度管理値の時系列データである精度管理データを複数記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記精度管理データを表示するための表示部と、
前記精度管理データに含まれる精度管理値をプロットした精度管理グラフを、前記表示部に表示させる処理部と、
を備え、
前記処理部は、前記記憶部に記憶された複数の前記精度管理データのうち、前記表示部における表示対象として選択された複数の表示対象精度管理データについての複数の前記精度管理グラフを、前記表示部に同時に表示させ、
複数の前記精度管理グラフは、それぞれ、精度管理値が時系列でプロットされたものであるとともに、複数の前記精度管理グラフ間で同一の単位期間に含まれる精度管理値の数が異なる場合であっても、前記複数の前記管理グラフには、当該単位期間に対して同一の時系列範囲が割り当てられ、割り当てられた時系列範囲に、当該時系列範囲に対応する単位期間内の精度管理値がプロットされている、
データ処理装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−233799(P2012−233799A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102825(P2011−102825)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】