検出器の校正支援装置及びその方法並びにプログラム
【課題】 フルスパンに渡った推定ドリフト量を高い精度で算出することにより、信頼性の高い健全性評価を行うこと。
【解決手段】 被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力部11と、第1のデータベース13−1乃至13−nに格納された複数の真値推定モデルを用い、検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定部12−1乃至12−nと、第2のデータベース15に格納されている真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各真値推定部12−1乃至12−nで推定された同一の検出器に対する複数の推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価部14と、最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と検出器のドリフト量特性とに基づいて、ドリフト量をフルスパンに渡って推定する健全性評価部16とを備える。
【解決手段】 被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力部11と、第1のデータベース13−1乃至13−nに格納された複数の真値推定モデルを用い、検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定部12−1乃至12−nと、第2のデータベース15に格納されている真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各真値推定部12−1乃至12−nで推定された同一の検出器に対する複数の推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価部14と、最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と検出器のドリフト量特性とに基づいて、ドリフト量をフルスパンに渡って推定する健全性評価部16とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検出器の校正支援装置及びその方法並びにプログラムに関し、特に原子力発電プラント等、多数の検出器を有する大型プラントに適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電プラントなどに設けられる検出器は、その出力(実測値)が時間の経過とともに徐々に本来検出すべき真の値(真値)からずれてしまうというドリフト特性を有している。従って、このままでは検出器の出力(実測値)誤差が大きくなり過ぎてしまい、検出器の出力(実測値)に基づくプラントの監視や制御などに支障をきたす場合がある。
【0003】
そこで、原子力発電プラントなどで使用している検出器の健全性確認に関しては、従来は定期検査時などプラントや機械装置の運転を停止したときに、校正やドリフトの調整作業を実施していた。具体的には、例えばプラント内の対象検出器に基準信号発生器を取り付けて基準入力信号を与え、このときに当該検出器が出力する信号が基準出力値と比較して許容誤差以内にあるか否か(当該検出器のドリフト量が許容範囲内にあるか否か)を確認し、許容誤差以内(許容範囲内)でなければ検出器の調整要領に基づいて設定を変更する。検出器の調整要領は様々であるが、例えば検出器に設けられた調整用つまみを操作して調整するものもあれば、専用ツールを接続して半導体内部の設定値を前記専用ツールから変更するものなどもある。
【0004】
上述のような検出器の健全性確認手法では、プラント類の運転停止中でなければこれを実施することができず、検出器の状態を常時好適に保持する点からは十分ではなく、また検出器の健全性確認のため頻繁にプラント等の運転を中止するようでは、その運転コストが増大して好ましくない。
【0005】
このような観点から、近年、検出器の健全性確認をプラントの運転中にオンラインで実施する試みがなされ始めている。特開平10−104385号公報(特許文献1)には、過去にデータベースに保存した検出器信号のトレンドと現在の値を比較したり、将来のドリフト量を予測したりして校正の要否を判断し、定期検査時の校正、ドリフトの調整作業計画に供する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の手法では、検出器の健全性を特性の動作状態において評価できても、検出器の0%出力から100%出力に渡るフルスパンでの評価ができないため、校正試験と同等の健全性評価をすることができないという欠点があった。
【0007】
このような問題に対し、例えば、特開2003−207373号公報(特許文献2)には、以下のような手法により、検出器のフルスパンに渡った検出器の健全性評価を可能とする技術が開示されている。
【0008】
上記特許文献2には、検出器から出力された検出器信号の真値を真値推定モデルを用いて推定し、この推定した真値、検出器のフルスパンに相当する下限値及び上限値、及び検出器のドリフト特性を用いた演算処理を行うことにより、検出器信号の真値からのずれを検出器のフルスパンに渡って推定し(以下、推定した検出器信号の真値からのずれ量を「推定ドリフト量」という。)、この推定ドリフト量等を健全性評価結果としてユーザ等に提示することにより、検出器の校正作業を支援する技術が示されている。
【特許文献1】特開平10−104385号公報
【特許文献2】特開2003−207373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2に開示されている従来の技術においては、検出器に大きなドリフトが発生すると、推定ドリフト量の算出精度が低下し、信頼性の高い健全性評価結果が得られないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、フルスパンに渡った推定ドリフト量を高い精度で算出することにより、信頼性の高い健全性評価を行うことのできる検出器の校正支援装置及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力手段と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルをそれぞれ格納する複数個の第1の記憶手段と、各前記真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定手段と、個々の前記真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納する第2の記憶手段と、前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各前記真値推定手段で推定された同一の検出器に対する複数の前記推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価手段と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、ドリフト量をフルスパンに渡って推定する健全性評価手段とを備える検出器の校正支援装置を提供する。
【0012】
このような構成によれば、個々の検出器の推定真値が、複数の真値推定モデルを用いることにより個別に求められる。そして、これら複数の推定真値のうち、同一の検出器に係る複数の推定真値と推定精度に関するデータとを用いて、所定の演算を行うことにより、最も信頼性の高い推定真値が統計的に求められる。そして、この最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量が算出され、この推定ドリフト量と検出器のドリフト量特性とに基づいて、フルスパンに渡るドリフト量が推定される。
このように、フルスパンに渡るドリフト量を推定することができるので、通常運転中、停止中を問わず、検出器の健全性を高い信頼度で評価することが可能となる。また、このフルスパンに渡るドリフト量を定期検査計画策定に用いることにより、運転期間の延長、検出器校正試験に要するコストの低減、定期検査期間の短縮が可能となり、プラントの稼働率の向上を図ることができる。
【0013】
上記検出器の校正支援装置において、総合評価手段は、前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ(例えば、後述する実施形態における検出器特性データ、真値推定モデル特性データ等が該当する)、前記検出器のドリフト量のサンプリング期間(例えば、後述する実施形態における通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間Nが該当する。)、及び直近の評価時から現在までの運転時間(例えば、後述する実施形態における真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差を表したnnowが該当する。)を用いて、前記真値推定モデルの推定精度(不確かさ)を算出し、この真値推定モデルの推定精度を用いて前記最も信頼性の高い推定真値を求めることが好ましい。
【0014】
このように、第2の記憶手段に格納されている真値推定モデルの推定精度に関するデータと検出器のドリフト量のサンプリング期間と、直近の評価時から現在までの運転時間とを用いて、真値推定モデルの推定精度を統計的に求めるので、運転状況をも加味した信頼性の高い推定真値を算出することが可能となる。そして、このような信頼性の高い推定真値の不確かさを用いることにより、最も信頼性の高い推定真値を高い精度で求めることが可能となる。
【0015】
上記検出器の校正支援装置において、前記総合評価手段は、前記真値推定手段により推定された真値に対して、前記真値推定モデルの推定精度(不確かさ)を用いた荷重平均を行うことにより、前記最も信頼性の高い推定真値を求めることが好ましい。
このように、真値推定モデルの不確かさを用いた加重平均を行うことにより、信頼性の高い推定真値を簡便な処理により求めることが可能となる。
【0016】
上記検出器の校正支援装置において、前記健全性評価手段は、前記被検出対象が起動して通常運転に入るまでの起動運転期間及び前記被検出対象の通常運転が終了してから完全に停止するまでの停止運転期間に発生したドリフト量のばらつきに関する数値データ、及び、直近の校正試験から現在までの間に、起動から停止までの運転サイクルを繰り返した回数に関する数値データを用いて、前記フルスパンに渡るドリフト量を推定することが好ましい。
【0017】
このように、起動運転期間や停止運転期間におけるドリフト量のばらつきまでをも考慮して、フルスパンに渡るドリフト量を推定するので、より高い精度でフルスパンにわたるドリフト量を推定することが可能となる。
【0018】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力手段と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルをそれぞれ格納する複数個の第1の記憶手段と、各前記真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定手段と、個々の前記真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納する第2の記憶手段と、前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各前記真値推定手段で推定された同一の検出器に対する複数の前記推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価手段と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測手段とを備える検出器の校正支援装置を提供する。
【0019】
このような構成によれば、個々の検出器の推定真値が、複数の真値推定モデルを用いることにより個別に求められる。そして、これら複数の推定真値のうち、同一の検出器に係る複数の推定真値と推定精度に関するデータとを用いて、所定の演算を行うことにより、最も信頼性の高い推定真値が統計的に求められる。そして、この最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量が算出され、この推定ドリフト量と検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量がフルスパンに渡り予測される。
このように、将来におけるドリフト量をフルスパンで予測することができるので、将来における検出器の健全度を高い信頼度で評価することが可能となる。また、この予測結果を定期検査計画策定に用いることにより、運転期間の延長、検出器校正試験に要するコストの低減、定期検査期間の短縮が可能となり、プラントの稼働率の向上を図ることができる。
【0020】
特に、前記ドリフト量予測手段は、少なくとも次回定期検査時及び次々回定期検査時におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測することが好ましい。このように、次回定期検査時及び次々回定期検査時におけるドリフト量をピンポイントで予測することにより、次回の定期検査における校正試験の要否を判断することが可能となる。次回の定期検査の要否については、次々回の定期検査時における予測結果、つまり、フルスパンに渡るドリフト量が、予め登録されている許容範囲内か否かにより判定することが可能である。
【0021】
また、上記検出器の校正支援装置において、前記ドリフト量予測手段は、将来におけるドリフト量の予測結果に基づいて、次回の定期検査の時期を決定するようにしても良い。
このように、将来におけるドリフト量を予測することにより、適切な時期に、次回の定期検査を決定することが可能となるので、検出器校正試験に要するコストの低減を図ることができる。
【0022】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力過程と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出過程と、同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出過程と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出過程と、前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、推定ドリフト量をフルスパンに渡って算出する推定ドリフト量算出過程とを備える検出器の校正支援方法を提供する。
【0023】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力過程と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出過程と、同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出過程と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出過程と、前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測過程とを備える検出器の校正支援方法を提供する。
【0024】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力処理と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出処理と、同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出処理と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出処理と、前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、推定ドリフト量をフルスパンに渡って算出する推定ドリフト量算出処理とをコンピュータに実行させるための検出器の校正支援プログラムを提供する。
【0025】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力処理と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出処理と、同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出処理と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出処理と、前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測処理とをコンピュータに実行させるための検出器の校正支援プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、フルスパンに渡った推定ドリフト量を高い精度で算出するので、信頼性の高い健全性評価を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明に係る検出器の校正支援装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る検出器の校正支援装置を示すブロック線図である。同図に示すように、本実施形態に係る検出器の校正支援装置10は、入力部(入力手段)11、複数の真値推定部(真値推定手段)12−1乃至12−n、複数の第1のデータベース13−1乃至13−n、総合評価部(総合評価手段)14、第2のデータベース15、健全性評価部(健全性評価手段)16及び出力部17を備えて構成されている。
【0029】
これらのうち、入力部11は、プラント1に設けられた多数の検出器に接続されるインターフェイスであり、各検出器から出力された各検出器信号を取得し、取得した検出器信号を実測値として各真値推定部12−1乃至12−nにそれぞれ送出する。
【0030】
真値推定部12−1乃至12−nは、それぞれ異なる真値推定モデルを用い、入力部11が送出した検出器信号の実測値に基づいて演算処理を行い、検出器信号の真値、すなわちプロセスの真の値をそれぞれ推定する(以下、推定されたプロセスの真の値を「推定真値」という。)。このため、各真値推定部12−1乃至12−nは、各真値推定モデルを第1のデータベース13−1乃至13−nからそれぞれ読み出して記憶するメモリを有する。
【0031】
第1のデータベース13−1乃至13−nは、プラント1の特定の運転状態の真値推定モデルをそれぞれ格納した記憶手段である。各第1のデータベース13−1乃至13−nは、例えばハードディスクなどの記憶装置により構成される。ここで特定の運転状態として、たとえばプラント1が原子力プラントの場合には、「冷態停止」、「温態停止」、「50%出力運転中」または「定格出力運転中」などである。
【0032】
各真値推定モデルは、事前にモデル内部のパラメータを調整または学習したものであり、たとえば線形モデルやニューラルネットワークなどである。真値推定モデルの調整や学習は、プラント1の定期検査直後に、プラント1を種々の状態で運転し、そのとき得られた検出器信号の実測値を用いて行われる。これは、プラント1の定期検査直後であれば、各検出器も調整や校正がされた直後であるため、各検出器は正常に動作していると考えられるからである。
【0033】
図2は真値推定モデルの一例としてニューラルネットワークの概念を示す模式図である。ニューラルネットワーク自体は公知であるため、ニューラルネットワークの詳細な説明については省略する。図2において、左端の4個のノードは入力層を構成し、右端の4個のノードは出力層を構成する。入力層と出力層の間は中間層である。このニューラルネットワークでは、入力層に検出器信号の実測値を入れると、ネットワーク内部の重み、バイアスおよび変換関数などに基づいて演算がおこなわれ、出力層から各検出器信号の推定真値が出力される。ここで、入力層のノード数と出力層のノード数は一致しており、第i番目のノードへの入力信号に対する推定真値は出力層の第i番目のノードに出力される。なお、入力層、中間層および出力層の各ノード数はネットワークへの入力信号の数に応じて変化するので、図2に示す個数に限らない。
【0034】
総合評価部14は、各真値推定部12−1乃至12−nで推定された同一の検出器に対する推定真値を、第2のデータベース15に格納した推定精度に関するデータを用いて総合評価するとともに、最も確からしい推定真値を求めて推定ドリフト量を算出する。ここで、第2のデータベース15は、個々の真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納している。
【0035】
さらに詳言すると、第2のデータベース15には、1)検出器特性データ、2)真値推定モデル特性データの2種類が格納されている。
1)検出器特性データ
表1に検出器特性データの一例を示す。本検出器特性データは、各検出器の検出器メーカから提示された精度、あるいは同一型式検出器において所定期間内に発生したドリフト量を統計処理して得られた標準偏差等に基づき作成する。これら精度、標準偏差等は不確かさと呼ばれる。
【0036】
【表1】
【0037】
2)真値推定モデル特性データ
検出器A1乃至Anの指示値X1乃至Xnをベクトル表現し、X=[X1、X2、…Xn]Tとすると、真値推定モデルにより得られる推定値Xk=[Xk,1,Xk,2,…,Xk,n]Tは、次式(1)となる。
【0038】
Xk=fk(X) (1)
【0039】
ここでfkは真値推定モデルkである。また、記号Tは転置を意味する。
今、検出器Aiの指示値Xiにおいて発生したドリフトが真値推定モデルkを経て得られた推定値Xk,jに影響する感度fk,ijは、次式(2)で求めることができる。
【0040】
【数1】
但し、fk,i=[fk,i1,fk,i2,…,fk,in]Tである。
【0041】
真値推定モデル特性データには、上記で得られた感度と真値推定モデルの適用可否を判定するための条件が、真値推定モデル毎にまとめられて格納されている。
表2に真値推定モデルkの真値推定モデル特性データの例を示す。この例は、一例としてA1乃至A5に対する真値推定モデルを示している。
【0042】
【表2】
【0043】
表2で、“−”は、当該真値推定モデルkに無関係な項目であることを示している。また、適用性判定条件の例としては、“60%≦検出器A1出力<70%”などプロセス量を具体的に制限した条件の他に、“起動時”、“負荷上昇時”、“定格出力時”などのプラント状態などもあり、さらにこれらの複合記述も可能である。
総合評価部14では、第2のデータベース15のデータを参照しつつ、各真値推定モデルで算出された推定値の不確かさを個別に算出する。例えば、真値推定モデルkで推定された検出器Ajの推定値Xk,jの不確かさσk,j、つまり、真値推定モデルkの不確かさは、次式(3)で計算される。
【0044】
【数2】
【0045】
ここで、右辺のσ2,Xiは、各検出器において、通常運転中に発生するドリフト量の統計量(標準偏差σ2)であり、通常運転中に発生するドリフト量の不確かさを表している。このσ2,Xiは、時間の1/2乗に比例して大きくなる。また、Nは、通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間を表しており、また、nnowは、真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差を表している。
【0046】
ここで、通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間Nとは、例えば図3に例示するように13箇月の通常運転期間の初期(B時点)と終期(C時点)の実測値に基づいて通常運転時の発生ドリフト量の統計量を算出した場合には13箇月とする。また、この例の場合、真値推定モデル構築に使用したデータ日時とは、13箇月の通常運転期間の例えば初期(B時点)の実測値に基づいて真値推定モデルを構築したときには当該初期の日時(B時点の日時)となる。
【0047】
また、この例の場合、評価時点の日時とは真値推定部12−1乃至12−n46で真値を推定して当該推定真値の不確かさを評価する日時(13箇月の通常運転期間の何れかの時点)であり、真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差nnowとは、真値推定部12−1乃至12−nで真値を推定して当該推定真値の不確かさを評価した日時が例えば13箇月の通常運転期間の初期(B時点)から5箇月経過した時点であるとすると、5箇月である。
【0048】
このように、本実施形態に係る真値推定モデルの不確かさを算出する際に、評価時における運転時間を考慮することにより、後段において算出される総合的な推定値を信頼性の高いものとすることが可能となる。
【0049】
総合評価部14は、続いて、各真値推定モデルから得られた推定値の不確かさを用いた荷重平均により、最終的な推定値とその不確かさを求める。例えば、n個の真値推定モデルから検出器Ajの真値が推定される場合、総合的な推定値XTP及びその不確かさσypはそれぞれ式(4−1)及び式(4−2)となる。
【0050】
【数3】
【0051】
このようにして、総合評価部14は、最も確からしい推定真値、換言すると、最も信頼性の高い推定真値を求めると、この最も信頼性の高い推定真値とその不確かさ及びこの推定真値を求める元となった実測値とを健全性評価部16へ出力する。
【0052】
健全性評価部16は、総合評価部14から取得した実測値及び最も確からしい推定真値を用いて推定ドリフト量を算出する。
まず、推定ドリフト量を算出処理においては、フルスパン補償処理を行う。
フルスパン補償処理では、1)運転ポイントのドリフト量の推定、2)フルスパンでの検出器特性の推定、3)推定検出器特性のフルスパンへの展開の3つの処理を行う。
【0053】
1)運転ポイントのドリフト量の推定
健全性評価部16は、第2のデータベースに格納されている検出器のドリフト特性を用いて、ドリフト量を推定する。
ここで、まずは、第2のデータベースに格納されている検出器のドリフト特性について説明する。図4は、プラント類の定期検査時に校正試験した試験結果の例を図示したものである。校正試験においては、例えば、検出器のドリフト量を0%、25%、50%、75%、100%出力の5段階で計測し、ドリフト量が許容誤差内になければ調整して許容誤差内に入るようにし、最終的に調整結果を確認する。図4では、第n回定期検査時の調整後から第n+1回定期検査時の調整前までにおいて、検出器のドリフト量は正方向にずれており、このずれ量が定期検査インターバルにおけるドリフト量に相当する。
【0054】
図5は、定期検査インターバルにおけるドリフト量をフルスパンに渡って図示したもので、図4における△(三角)印と□(四角)印の差を5点の×(バツ)印で示している。この5点の×印に対して最小二乗法により近似曲線を引けば、ドリフト量はゼロ点ドリフト成分とスパンドリフト成分に分解することができる。図6は、1つの検出器について複数回の定期検査インターバルで発生したスパンドリフト量の分布を図示したもので、平均μ、標準偏差σの統計量で特徴を現すことができる。第2のデータベースには、このような統計量が検出器のドリフト特性として格納されている。なお、スパンドリフト量の分布は複数の複数の検出器をひとまとめにして求めても良い。
【0055】
そして、健全性評価部16は、第2のデータベースから上述したドリフト特性を読み出し、この特性と上記(4−1)式にて得た最終的な推定真値を用い、以下の手法に従って、推定ドリフト量を求める。
図7は、推定ドリフト量の算出方法を示す模式図である。まず、第2のデータベースから得られる直近の校正試験時のドリフト特性Aに基づき、運転ポイントにおける初期ドリフト量y0(%)を直線近似による内挿計算にて求める。続いて、実測値と推定真値との差(以下、「差分」という)ye(%)を算出し、この差分ye(%)を初期ドリフト量y0(%)に加算することにより、評価時の運転ポイントにおける推定ドリフト量yp(%)を算出する。この推定ドリフト量yp(%)を式で表すと以下の(5)式のように表される。
【0056】
yp=y0+ye (5)
【0057】
2)フルスパンでの検出器特性の推定
次に、健全性評価部16は、上記運転ポイントにおける初期ドリフト量以外のドリフト量、つまり、0%、25%、50%、75%、100%出力の5段階における各初期ドリフト量に、それぞれ上記誤差ye(%)を加算することにより、各検出値に対する推定ドリフト量を次式(6)にて求める。
yp,i=y0,i+ye(i=1,・・・,5) (6)
そして、各推定ドリフト量を内挿処理することにより、図8に示すような推定ドリフト特性を得る。
【0058】
3)推定検出器特性のフルスパンへの展開
続いて、健全性評価部16は、第2のデータベースに格納されているスパンドリフトの統計量である平均値μf、及び標準偏差σfを用いて、上述の手法にて取得した推定ドリフト特性を所定信頼度で写像する。推定ドリフト特性の座標を(x1,yp,1),・・・,(xn,yp,n(但し、nは5或いは6である。))、また、現在の運転ポイントをxpとする。このとき、各検査ポイントiにおけるドリフト量の推定区間[y´pmin,i,y´pmax,i](i=1,…,5或いは6)は、次式(7)及び(8)にて求めることができる。図9に運転ポイントとドリフト量の推定区間の関係を示す。
【0059】
【数4】
上記式(7)及び(8)において、Nは、通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間を表しており、また、nnowは、真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差を表している。また、kは区間推定の信頼度に関する定数である。例えば、95%の信頼度時にはk=2であり、また、99%の信頼度時にはk=3である。
更に、健全性評価部16は、上記(7)及び(8)にて得たドリフト量の推定区間に対して、推定ドリフト量yp,i(%)の処理上の不確かさσyp(%)とプラントが起動して通常運転に入るまでの間と通常運転が終了してプラントが停止するまでに発生するドリフト量のばらつきσe(%)を考慮し、最終的なドリフト量の推定区間[ypmin,i,ypmax,i]を次式(9)及び(10)に従って求める。なお、jは、直近の校正試験から現在までの間に、起動から停止までの運転サイクルを繰り返した回数である。図10に最終的なドリフト量の推定区間の例を示す。
【0060】
【数5】
【0061】
続いて、健全性評価部16は、上述の手法により求めた最終的な推定ドリフト量yp、最終的なドリフト量の推定区間[ypmin,i,ypmax,i]に基づいて、検出器の健全性を評価する。例えば、この推定区間[ypmin,i,ypmax,i]が予め設定されている許容範囲内か否かを判定し、許容範囲内でなければ、異常と判定する。なお、この異常判定には、種々の統計的手法が利用可能である。
【0062】
このように、本実施形態に係る健全性評価部16では、プラントを起動したり、停止したりする際に生ずるドリフト量のばらつきを考慮して最終的な推定区間を求めるため、信頼性の高いドリフト量を得ることができ、後述の健全度評価を高い精度で行わせることが可能となる。また、最終的なドリフト量の推定区間の算出において、通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間Nや、真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差nnow等を用いるため、校正検査のインターバルが変化したとしても、何の不都合もなく速やかに対処することが可能となる。
【0063】
健全性評価部16は、上記判定が終了すると、この判定結果とともに、最終的な推定ドリフト量yp、最終的なドリフト量の推定区間[ypmin,i,ypmax,i]、推定に用いた実測値等を出力部17へ送信する。
出力部17は、健全性評価部16から取得したこれら情報をディスプレイやプリンタ等に出力する。
【0064】
図11は本実施形態に係る検出器の校正支援方法の処理フローを示すフローチャートである。同図に示すように、本実施形態においては、まず入力部11が、プラント1の各検出器から検出器信号を入力し、その実測値を各真値推定部12−1乃至12−nに送信する(ステップS11)。
【0065】
各真値推定部12−1乃至12−nは、第1のデータベース13−1乃至13−nにそれぞれ格納された真値推定モデルをRAMなどのメモリに読み込む。そして、入力部11を介してプラント1から供給された検出器信号の実測値を用いて推定真値を算出し、その推定真値を総合評価部14に送信する(ステップS12)。
この結果、総合評価部14では第2のデータベース15のデータを参照して推定値の総合評価を行い、最も確からしい推定真値を求め、健全性評価部16に送信する(ステップS13)。
【0066】
健全性評価部16では、総合評価部14から取得した最も確からしい推定真値を用いて、フルスパンに渡る推定ドリフト量の推定区間を算出し、更に、この推定ドリフト量の推定区間を用いて、検出器の健全性を評価する。そして、その評価結果並びに総合評価部14から入手した情報を出力部17に送信する(ステップS14)。
出力部17は、総合評価部14による評価結果及び健全性評価部による評価結果を出力する(ステップS15)。
【0067】
以上述べてきたように、本実施形態に係る検出器の校正支援装置及びその方法によれば、個々の検出器の推定真値を、複数の真値推定モデルを用いて個別に求め、さらにこれらを総合評価して最終的な推定真値と推定ドリフト量を算出する。更に、この最終的な推定真値を用いてフルスパン補償処理を行うことにより、フルスパンに渡って推定ドリフト量を求める。そして、このフルスパンに渡って推定されたドリフト量を用いて、自動的に検出器の健全性評価を行うので、検出器信号にドリフトが発生した場合、通常運転中であっても検出器の健全性を高信頼度で自動的に評価することが可能となる。
【0068】
例えば、本実施形態の場合は、断線等の大きな異常だけでなく、軽微な異常により長期間に渡って検出器の実測値が少しずつドリフトするようなときでも、検出器の健全性を高い信頼度で評価することができる点で有効である。
また、この健全性評価部16により得られた評価結果に基づいて、プラントの作業員等は、検出器の校正の要否を判断できるので、定期検査計画策定に用いれば、運転期間の延長、検出器校正試験に要するコストの低減、定期検査期間の短縮が可能で、プラントの稼働率の向上を図ることができる。
【0069】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について、図12を用いて説明する。
本実施形態の検出器の校正支援装置40が第1の実施形態と異なる点は、適用性評価部18を備えている点、及び、健全性評価部16に代えてドリフト量予測部(ドリフト量予測手段)19を備える点である。以下、本実施形態の検出器の校正支援装置について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0070】
図12は本発明の第2の実施形態に係る検出器の校正支援装置を示すブロック線図である。この図において、適用性評価部18は、各真値推定部12−1乃至12−nの入力信号である実測値や出力信号である各推定真値に基づき、各真値推定モデルが適用可能か否かを判断するものである。
【0071】
すなわち、例えば各推定真値の使用可能な範囲を予め決めておき、この範囲を逸脱するような推定真値は、検出器の取付状態や真値推定モデルの対象とする系統機器・配管が異常な状態になっている等、推定真値として利用するのは不適切であると判断してこの推定真値を出力した真値推定部12−1乃至12−nの出力データを除外して総合評価部14における処理を行うようにしたものである。
【0072】
この判断の際には、入力部11の出力信号である検出器の実測値との比較において推定真値を評価する。また、各検出器信号の使用可能な範囲を予め決めておき、この範囲を逸脱するような実測値を異常と判断して、当該検出器信号を入力する真値推定部12−1乃至12−nの出力データを除外してもよい。さらに、各真値推定部12−1乃至12−nの適用性判定条件を条件式で決めておき、条件式を評価した結果、適用不可と判定されたときに、当該真値推定部12−1乃至12−nの出力データを除外してもよい。
【0073】
このことにより、真値推定モデルの入力に使用している検出器や電源・計装ケーブル等に不具合が発生したり、系統機器や配管に異常が発生したりして、通常の値から大幅にずれた場合等、真値推定モデルが適切に推定できる範囲を逸脱したような検出器信号となった場合でも、該当する真値推定モデルの利用を取りやめて、残りの真値推定モデルの出力で推定真値及び推定ドリフト量を総合評価するため、出力された情報の精度と信頼性が向上するという効果を得る。
【0074】
また、ドリフト量予測部19は、上述した総合評価部14から最も信頼性の高い推定真値等を取得し、この推定真値と検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するものである。ここで、フルスパンに渡るドリフト量の算出手法の基本的な考え方は、上述した第1の実施形態で述べた手法、つまり、フルスパン補償処理と同様であるが、第1の実施形態では現時点におけるドリフト量を推定していたのに対し、本実施形態では、将来におけるドリフト量を予測するため、上記式(9)及び(10)に代わって、次式(11)及び(12)を用いて演算を行うこととなる。
【0075】
【数6】
【0076】
上記(11)、(12)式において、nは、現在から将来の評価時点までの通常運転期間を表している。jは、直近の校正試験から将来の評価時点までに、起動から停止までの運転サイクルを繰り返した回数を示している。
ドリフト量予測部19は、将来のある時点におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測すると、このフルスパンに渡る予測ドリフト量を、上記相互評価部14から入力された種々の情報とともに、出力部17に送信する。
出力部17は、取得した情報をモニタやプリンタなどに出力する。
【0077】
なお、上記ドリフト量予測部19には、以下のような機能を付加しても良い。
例えば、ドリフト量予測部19は、次回の定期検査時におけるドリフト量と、次々回の定期検査時におけるドリフト量とを予測し、次々回の定期検査時におけるドリフト量が予め設定されている許容範囲内か否かを判定する。そしてこの判定結果に応じて、次回の定期検査の要否を判定し、その判定結果を出力部16へ出力するようにしてもよい。
【0078】
また、ドリフト量予測部19は、現時点から10ヵ月後、20ヶ月後、25ヵ月後などのように、複数の時点におけるドリフト量を予測するようにし、この予測結果に基づいて、次回の定期検査の時期を決定するようにしても良い。例えば、各時点における予測結果を補間処理することにより、数十ヶ月に渡るドリフト量の変化をグラフとして表し、このグラフにおいて、予め設定されている許容範囲を満たさなくなった時点よりも数ヶ月早い時期に、次回の検査を行うよう決定するようにする。
【0079】
なお、ドリフト量が許容範囲を超えているか否かの判定については、次式(13)及び(14)に示すように、検出器のレンジ内の所定の点検ポイントi(例えば、0%、25%、50%、75%、100%出力の5段階)において、それぞれ算出したドリフト量において、下限値yPmin,i(n)の最小値、及び上限値yPmax,i(n)の最大値を採用するようにしてもよい。
【0080】
【数7】
【0081】
次に、本発明に係る各実施形態の適用例として、原子力プラントに適用した場合について説明する。図13は、本適用例に係る原子力プラントの一部を示す系統図である。また、表3にはこの場合の真値推定モデルの入力信号の例を示している。
【0082】
【表3】
【0083】
図11に示すように、原子炉101内で発生した熱は一次冷却材(ほう酸水)に吸収される。この一次冷却材は、原子炉101、蒸気発生器102および一次冷却材ポンプ103により構成される原子炉冷却系統104において、一次冷却材ポンプ103により強制的に循環させられている。一方、蒸気発生器102内に供給された二次冷却材(水)は、一次冷却材からの入熱により蒸発し、蒸気となって図示しないタービンへ送られる。また、原子炉冷却系統104の配管には、圧力を調整するための加圧器105が接続されている。
【0084】
ここで、T601およびT602はそれぞれ一次冷却材の高温側温度および低温側温度を検出する検出器、F601およびF602はいずれも蒸気発生器給水流量を検出する検出器、F603およびF604はいずれも蒸気発生器蒸気流量を検出する検出器、P601からP603はいずれも蒸気発生器圧力を検出する検出器、U600(図示略)は原子炉出力を検出する検出器、L601からL603はいずれも加圧器水位を検出する検出器である。たとえば、これら13の検出器の検出器信号が上述した各実施の形態において真値推定モデルに入力される。したがって、真値推定モデルが図2に示すようなニューラルネットワークである場合、ニューラルネットワークの入力層および出力層の各ノード数は13となる。
【0085】
なお、上述の如き各実施形態に係る検出器の校正支援装置における最終的な推定真値を実運用のプラントの計測値として監視乃至制御に使用するように構成することもできる。この場合には、検出器を多重化することなくプラント等の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【0086】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0087】
例えば、上述した各実施形態に係る検出器の校正支援装置については、ハードウェアによる処理を前提としてきたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、ソフトウェア処理により同様の機能を実現させるようにしても良い。この場合、検出器の校正支援装置は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した検出器の校正支援処理に関する一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
すなわち、検出器の校正支援装置が備える各部により実現される各種処理は、CPU等の中央演算処理装置がROMやRAM等の主記憶装置に上記プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、実現される。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る検出器の校正支援装置を示すブロック線図である。
【図2】図1に示す検出器の校正支援装置に用いる真値推定モデルの一例を示す説明図である。
【図3】原子力発電プラントの運転サイクルなどを示す説明図である。
【図4】検出器の校正・調整試験結果を示す模式図の一例である。
【図5】検出器において発生するゼロ点ドリフトとスパンドリフトの概念を示す模式図である。
【図6】検出器において発生するスパンドリフトの統計量の概念を示す模式図である。
【図7】推定ドリフト量の算出方法の概念を示す模式図である。
【図8】フルスパンに渡る推定ドリフト量の算出方法の概念を示す模式図である。
【図9】フルスパンに渡るドリフト量の推定区間の概念を示す模式図である。
【図10】フルスパンに渡る最終的なドリフト量の推定区間の概念を示す模式図である。
【図11】図1に示す検出器の校正支援方法の処理フローを示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る検出器の校正支援装置を示すブロック線図である。
【図13】本発明の好適な適用例である原子力プラントの一部を示す系統図である。
【符号の説明】
【0089】
1 プラント
10、40 検出器の校正支援装置
11 入力部
12−1乃至12−n 真値推定部
13−1乃至13−n 第1のデータベース
14 総合評価部
15 第2のデータベース
16 健全性評価部
17 出力部
18 適用性評価部
19 ドリフト量予測部
【技術分野】
【0001】
本発明は検出器の校正支援装置及びその方法並びにプログラムに関し、特に原子力発電プラント等、多数の検出器を有する大型プラントに適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電プラントなどに設けられる検出器は、その出力(実測値)が時間の経過とともに徐々に本来検出すべき真の値(真値)からずれてしまうというドリフト特性を有している。従って、このままでは検出器の出力(実測値)誤差が大きくなり過ぎてしまい、検出器の出力(実測値)に基づくプラントの監視や制御などに支障をきたす場合がある。
【0003】
そこで、原子力発電プラントなどで使用している検出器の健全性確認に関しては、従来は定期検査時などプラントや機械装置の運転を停止したときに、校正やドリフトの調整作業を実施していた。具体的には、例えばプラント内の対象検出器に基準信号発生器を取り付けて基準入力信号を与え、このときに当該検出器が出力する信号が基準出力値と比較して許容誤差以内にあるか否か(当該検出器のドリフト量が許容範囲内にあるか否か)を確認し、許容誤差以内(許容範囲内)でなければ検出器の調整要領に基づいて設定を変更する。検出器の調整要領は様々であるが、例えば検出器に設けられた調整用つまみを操作して調整するものもあれば、専用ツールを接続して半導体内部の設定値を前記専用ツールから変更するものなどもある。
【0004】
上述のような検出器の健全性確認手法では、プラント類の運転停止中でなければこれを実施することができず、検出器の状態を常時好適に保持する点からは十分ではなく、また検出器の健全性確認のため頻繁にプラント等の運転を中止するようでは、その運転コストが増大して好ましくない。
【0005】
このような観点から、近年、検出器の健全性確認をプラントの運転中にオンラインで実施する試みがなされ始めている。特開平10−104385号公報(特許文献1)には、過去にデータベースに保存した検出器信号のトレンドと現在の値を比較したり、将来のドリフト量を予測したりして校正の要否を判断し、定期検査時の校正、ドリフトの調整作業計画に供する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の手法では、検出器の健全性を特性の動作状態において評価できても、検出器の0%出力から100%出力に渡るフルスパンでの評価ができないため、校正試験と同等の健全性評価をすることができないという欠点があった。
【0007】
このような問題に対し、例えば、特開2003−207373号公報(特許文献2)には、以下のような手法により、検出器のフルスパンに渡った検出器の健全性評価を可能とする技術が開示されている。
【0008】
上記特許文献2には、検出器から出力された検出器信号の真値を真値推定モデルを用いて推定し、この推定した真値、検出器のフルスパンに相当する下限値及び上限値、及び検出器のドリフト特性を用いた演算処理を行うことにより、検出器信号の真値からのずれを検出器のフルスパンに渡って推定し(以下、推定した検出器信号の真値からのずれ量を「推定ドリフト量」という。)、この推定ドリフト量等を健全性評価結果としてユーザ等に提示することにより、検出器の校正作業を支援する技術が示されている。
【特許文献1】特開平10−104385号公報
【特許文献2】特開2003−207373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2に開示されている従来の技術においては、検出器に大きなドリフトが発生すると、推定ドリフト量の算出精度が低下し、信頼性の高い健全性評価結果が得られないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、フルスパンに渡った推定ドリフト量を高い精度で算出することにより、信頼性の高い健全性評価を行うことのできる検出器の校正支援装置及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力手段と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルをそれぞれ格納する複数個の第1の記憶手段と、各前記真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定手段と、個々の前記真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納する第2の記憶手段と、前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各前記真値推定手段で推定された同一の検出器に対する複数の前記推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価手段と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、ドリフト量をフルスパンに渡って推定する健全性評価手段とを備える検出器の校正支援装置を提供する。
【0012】
このような構成によれば、個々の検出器の推定真値が、複数の真値推定モデルを用いることにより個別に求められる。そして、これら複数の推定真値のうち、同一の検出器に係る複数の推定真値と推定精度に関するデータとを用いて、所定の演算を行うことにより、最も信頼性の高い推定真値が統計的に求められる。そして、この最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量が算出され、この推定ドリフト量と検出器のドリフト量特性とに基づいて、フルスパンに渡るドリフト量が推定される。
このように、フルスパンに渡るドリフト量を推定することができるので、通常運転中、停止中を問わず、検出器の健全性を高い信頼度で評価することが可能となる。また、このフルスパンに渡るドリフト量を定期検査計画策定に用いることにより、運転期間の延長、検出器校正試験に要するコストの低減、定期検査期間の短縮が可能となり、プラントの稼働率の向上を図ることができる。
【0013】
上記検出器の校正支援装置において、総合評価手段は、前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ(例えば、後述する実施形態における検出器特性データ、真値推定モデル特性データ等が該当する)、前記検出器のドリフト量のサンプリング期間(例えば、後述する実施形態における通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間Nが該当する。)、及び直近の評価時から現在までの運転時間(例えば、後述する実施形態における真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差を表したnnowが該当する。)を用いて、前記真値推定モデルの推定精度(不確かさ)を算出し、この真値推定モデルの推定精度を用いて前記最も信頼性の高い推定真値を求めることが好ましい。
【0014】
このように、第2の記憶手段に格納されている真値推定モデルの推定精度に関するデータと検出器のドリフト量のサンプリング期間と、直近の評価時から現在までの運転時間とを用いて、真値推定モデルの推定精度を統計的に求めるので、運転状況をも加味した信頼性の高い推定真値を算出することが可能となる。そして、このような信頼性の高い推定真値の不確かさを用いることにより、最も信頼性の高い推定真値を高い精度で求めることが可能となる。
【0015】
上記検出器の校正支援装置において、前記総合評価手段は、前記真値推定手段により推定された真値に対して、前記真値推定モデルの推定精度(不確かさ)を用いた荷重平均を行うことにより、前記最も信頼性の高い推定真値を求めることが好ましい。
このように、真値推定モデルの不確かさを用いた加重平均を行うことにより、信頼性の高い推定真値を簡便な処理により求めることが可能となる。
【0016】
上記検出器の校正支援装置において、前記健全性評価手段は、前記被検出対象が起動して通常運転に入るまでの起動運転期間及び前記被検出対象の通常運転が終了してから完全に停止するまでの停止運転期間に発生したドリフト量のばらつきに関する数値データ、及び、直近の校正試験から現在までの間に、起動から停止までの運転サイクルを繰り返した回数に関する数値データを用いて、前記フルスパンに渡るドリフト量を推定することが好ましい。
【0017】
このように、起動運転期間や停止運転期間におけるドリフト量のばらつきまでをも考慮して、フルスパンに渡るドリフト量を推定するので、より高い精度でフルスパンにわたるドリフト量を推定することが可能となる。
【0018】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力手段と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルをそれぞれ格納する複数個の第1の記憶手段と、各前記真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定手段と、個々の前記真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納する第2の記憶手段と、前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各前記真値推定手段で推定された同一の検出器に対する複数の前記推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価手段と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測手段とを備える検出器の校正支援装置を提供する。
【0019】
このような構成によれば、個々の検出器の推定真値が、複数の真値推定モデルを用いることにより個別に求められる。そして、これら複数の推定真値のうち、同一の検出器に係る複数の推定真値と推定精度に関するデータとを用いて、所定の演算を行うことにより、最も信頼性の高い推定真値が統計的に求められる。そして、この最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量が算出され、この推定ドリフト量と検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量がフルスパンに渡り予測される。
このように、将来におけるドリフト量をフルスパンで予測することができるので、将来における検出器の健全度を高い信頼度で評価することが可能となる。また、この予測結果を定期検査計画策定に用いることにより、運転期間の延長、検出器校正試験に要するコストの低減、定期検査期間の短縮が可能となり、プラントの稼働率の向上を図ることができる。
【0020】
特に、前記ドリフト量予測手段は、少なくとも次回定期検査時及び次々回定期検査時におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測することが好ましい。このように、次回定期検査時及び次々回定期検査時におけるドリフト量をピンポイントで予測することにより、次回の定期検査における校正試験の要否を判断することが可能となる。次回の定期検査の要否については、次々回の定期検査時における予測結果、つまり、フルスパンに渡るドリフト量が、予め登録されている許容範囲内か否かにより判定することが可能である。
【0021】
また、上記検出器の校正支援装置において、前記ドリフト量予測手段は、将来におけるドリフト量の予測結果に基づいて、次回の定期検査の時期を決定するようにしても良い。
このように、将来におけるドリフト量を予測することにより、適切な時期に、次回の定期検査を決定することが可能となるので、検出器校正試験に要するコストの低減を図ることができる。
【0022】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力過程と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出過程と、同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出過程と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出過程と、前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、推定ドリフト量をフルスパンに渡って算出する推定ドリフト量算出過程とを備える検出器の校正支援方法を提供する。
【0023】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力過程と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出過程と、同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出過程と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出過程と、前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測過程とを備える検出器の校正支援方法を提供する。
【0024】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力処理と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出処理と、同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出処理と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出処理と、前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、推定ドリフト量をフルスパンに渡って算出する推定ドリフト量算出処理とをコンピュータに実行させるための検出器の校正支援プログラムを提供する。
【0025】
本発明は、被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力処理と、真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出処理と、同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出処理と、前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出処理と、前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測処理とをコンピュータに実行させるための検出器の校正支援プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、フルスパンに渡った推定ドリフト量を高い精度で算出するので、信頼性の高い健全性評価を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明に係る検出器の校正支援装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
〔第1の実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態に係る検出器の校正支援装置を示すブロック線図である。同図に示すように、本実施形態に係る検出器の校正支援装置10は、入力部(入力手段)11、複数の真値推定部(真値推定手段)12−1乃至12−n、複数の第1のデータベース13−1乃至13−n、総合評価部(総合評価手段)14、第2のデータベース15、健全性評価部(健全性評価手段)16及び出力部17を備えて構成されている。
【0029】
これらのうち、入力部11は、プラント1に設けられた多数の検出器に接続されるインターフェイスであり、各検出器から出力された各検出器信号を取得し、取得した検出器信号を実測値として各真値推定部12−1乃至12−nにそれぞれ送出する。
【0030】
真値推定部12−1乃至12−nは、それぞれ異なる真値推定モデルを用い、入力部11が送出した検出器信号の実測値に基づいて演算処理を行い、検出器信号の真値、すなわちプロセスの真の値をそれぞれ推定する(以下、推定されたプロセスの真の値を「推定真値」という。)。このため、各真値推定部12−1乃至12−nは、各真値推定モデルを第1のデータベース13−1乃至13−nからそれぞれ読み出して記憶するメモリを有する。
【0031】
第1のデータベース13−1乃至13−nは、プラント1の特定の運転状態の真値推定モデルをそれぞれ格納した記憶手段である。各第1のデータベース13−1乃至13−nは、例えばハードディスクなどの記憶装置により構成される。ここで特定の運転状態として、たとえばプラント1が原子力プラントの場合には、「冷態停止」、「温態停止」、「50%出力運転中」または「定格出力運転中」などである。
【0032】
各真値推定モデルは、事前にモデル内部のパラメータを調整または学習したものであり、たとえば線形モデルやニューラルネットワークなどである。真値推定モデルの調整や学習は、プラント1の定期検査直後に、プラント1を種々の状態で運転し、そのとき得られた検出器信号の実測値を用いて行われる。これは、プラント1の定期検査直後であれば、各検出器も調整や校正がされた直後であるため、各検出器は正常に動作していると考えられるからである。
【0033】
図2は真値推定モデルの一例としてニューラルネットワークの概念を示す模式図である。ニューラルネットワーク自体は公知であるため、ニューラルネットワークの詳細な説明については省略する。図2において、左端の4個のノードは入力層を構成し、右端の4個のノードは出力層を構成する。入力層と出力層の間は中間層である。このニューラルネットワークでは、入力層に検出器信号の実測値を入れると、ネットワーク内部の重み、バイアスおよび変換関数などに基づいて演算がおこなわれ、出力層から各検出器信号の推定真値が出力される。ここで、入力層のノード数と出力層のノード数は一致しており、第i番目のノードへの入力信号に対する推定真値は出力層の第i番目のノードに出力される。なお、入力層、中間層および出力層の各ノード数はネットワークへの入力信号の数に応じて変化するので、図2に示す個数に限らない。
【0034】
総合評価部14は、各真値推定部12−1乃至12−nで推定された同一の検出器に対する推定真値を、第2のデータベース15に格納した推定精度に関するデータを用いて総合評価するとともに、最も確からしい推定真値を求めて推定ドリフト量を算出する。ここで、第2のデータベース15は、個々の真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納している。
【0035】
さらに詳言すると、第2のデータベース15には、1)検出器特性データ、2)真値推定モデル特性データの2種類が格納されている。
1)検出器特性データ
表1に検出器特性データの一例を示す。本検出器特性データは、各検出器の検出器メーカから提示された精度、あるいは同一型式検出器において所定期間内に発生したドリフト量を統計処理して得られた標準偏差等に基づき作成する。これら精度、標準偏差等は不確かさと呼ばれる。
【0036】
【表1】
【0037】
2)真値推定モデル特性データ
検出器A1乃至Anの指示値X1乃至Xnをベクトル表現し、X=[X1、X2、…Xn]Tとすると、真値推定モデルにより得られる推定値Xk=[Xk,1,Xk,2,…,Xk,n]Tは、次式(1)となる。
【0038】
Xk=fk(X) (1)
【0039】
ここでfkは真値推定モデルkである。また、記号Tは転置を意味する。
今、検出器Aiの指示値Xiにおいて発生したドリフトが真値推定モデルkを経て得られた推定値Xk,jに影響する感度fk,ijは、次式(2)で求めることができる。
【0040】
【数1】
但し、fk,i=[fk,i1,fk,i2,…,fk,in]Tである。
【0041】
真値推定モデル特性データには、上記で得られた感度と真値推定モデルの適用可否を判定するための条件が、真値推定モデル毎にまとめられて格納されている。
表2に真値推定モデルkの真値推定モデル特性データの例を示す。この例は、一例としてA1乃至A5に対する真値推定モデルを示している。
【0042】
【表2】
【0043】
表2で、“−”は、当該真値推定モデルkに無関係な項目であることを示している。また、適用性判定条件の例としては、“60%≦検出器A1出力<70%”などプロセス量を具体的に制限した条件の他に、“起動時”、“負荷上昇時”、“定格出力時”などのプラント状態などもあり、さらにこれらの複合記述も可能である。
総合評価部14では、第2のデータベース15のデータを参照しつつ、各真値推定モデルで算出された推定値の不確かさを個別に算出する。例えば、真値推定モデルkで推定された検出器Ajの推定値Xk,jの不確かさσk,j、つまり、真値推定モデルkの不確かさは、次式(3)で計算される。
【0044】
【数2】
【0045】
ここで、右辺のσ2,Xiは、各検出器において、通常運転中に発生するドリフト量の統計量(標準偏差σ2)であり、通常運転中に発生するドリフト量の不確かさを表している。このσ2,Xiは、時間の1/2乗に比例して大きくなる。また、Nは、通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間を表しており、また、nnowは、真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差を表している。
【0046】
ここで、通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間Nとは、例えば図3に例示するように13箇月の通常運転期間の初期(B時点)と終期(C時点)の実測値に基づいて通常運転時の発生ドリフト量の統計量を算出した場合には13箇月とする。また、この例の場合、真値推定モデル構築に使用したデータ日時とは、13箇月の通常運転期間の例えば初期(B時点)の実測値に基づいて真値推定モデルを構築したときには当該初期の日時(B時点の日時)となる。
【0047】
また、この例の場合、評価時点の日時とは真値推定部12−1乃至12−n46で真値を推定して当該推定真値の不確かさを評価する日時(13箇月の通常運転期間の何れかの時点)であり、真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差nnowとは、真値推定部12−1乃至12−nで真値を推定して当該推定真値の不確かさを評価した日時が例えば13箇月の通常運転期間の初期(B時点)から5箇月経過した時点であるとすると、5箇月である。
【0048】
このように、本実施形態に係る真値推定モデルの不確かさを算出する際に、評価時における運転時間を考慮することにより、後段において算出される総合的な推定値を信頼性の高いものとすることが可能となる。
【0049】
総合評価部14は、続いて、各真値推定モデルから得られた推定値の不確かさを用いた荷重平均により、最終的な推定値とその不確かさを求める。例えば、n個の真値推定モデルから検出器Ajの真値が推定される場合、総合的な推定値XTP及びその不確かさσypはそれぞれ式(4−1)及び式(4−2)となる。
【0050】
【数3】
【0051】
このようにして、総合評価部14は、最も確からしい推定真値、換言すると、最も信頼性の高い推定真値を求めると、この最も信頼性の高い推定真値とその不確かさ及びこの推定真値を求める元となった実測値とを健全性評価部16へ出力する。
【0052】
健全性評価部16は、総合評価部14から取得した実測値及び最も確からしい推定真値を用いて推定ドリフト量を算出する。
まず、推定ドリフト量を算出処理においては、フルスパン補償処理を行う。
フルスパン補償処理では、1)運転ポイントのドリフト量の推定、2)フルスパンでの検出器特性の推定、3)推定検出器特性のフルスパンへの展開の3つの処理を行う。
【0053】
1)運転ポイントのドリフト量の推定
健全性評価部16は、第2のデータベースに格納されている検出器のドリフト特性を用いて、ドリフト量を推定する。
ここで、まずは、第2のデータベースに格納されている検出器のドリフト特性について説明する。図4は、プラント類の定期検査時に校正試験した試験結果の例を図示したものである。校正試験においては、例えば、検出器のドリフト量を0%、25%、50%、75%、100%出力の5段階で計測し、ドリフト量が許容誤差内になければ調整して許容誤差内に入るようにし、最終的に調整結果を確認する。図4では、第n回定期検査時の調整後から第n+1回定期検査時の調整前までにおいて、検出器のドリフト量は正方向にずれており、このずれ量が定期検査インターバルにおけるドリフト量に相当する。
【0054】
図5は、定期検査インターバルにおけるドリフト量をフルスパンに渡って図示したもので、図4における△(三角)印と□(四角)印の差を5点の×(バツ)印で示している。この5点の×印に対して最小二乗法により近似曲線を引けば、ドリフト量はゼロ点ドリフト成分とスパンドリフト成分に分解することができる。図6は、1つの検出器について複数回の定期検査インターバルで発生したスパンドリフト量の分布を図示したもので、平均μ、標準偏差σの統計量で特徴を現すことができる。第2のデータベースには、このような統計量が検出器のドリフト特性として格納されている。なお、スパンドリフト量の分布は複数の複数の検出器をひとまとめにして求めても良い。
【0055】
そして、健全性評価部16は、第2のデータベースから上述したドリフト特性を読み出し、この特性と上記(4−1)式にて得た最終的な推定真値を用い、以下の手法に従って、推定ドリフト量を求める。
図7は、推定ドリフト量の算出方法を示す模式図である。まず、第2のデータベースから得られる直近の校正試験時のドリフト特性Aに基づき、運転ポイントにおける初期ドリフト量y0(%)を直線近似による内挿計算にて求める。続いて、実測値と推定真値との差(以下、「差分」という)ye(%)を算出し、この差分ye(%)を初期ドリフト量y0(%)に加算することにより、評価時の運転ポイントにおける推定ドリフト量yp(%)を算出する。この推定ドリフト量yp(%)を式で表すと以下の(5)式のように表される。
【0056】
yp=y0+ye (5)
【0057】
2)フルスパンでの検出器特性の推定
次に、健全性評価部16は、上記運転ポイントにおける初期ドリフト量以外のドリフト量、つまり、0%、25%、50%、75%、100%出力の5段階における各初期ドリフト量に、それぞれ上記誤差ye(%)を加算することにより、各検出値に対する推定ドリフト量を次式(6)にて求める。
yp,i=y0,i+ye(i=1,・・・,5) (6)
そして、各推定ドリフト量を内挿処理することにより、図8に示すような推定ドリフト特性を得る。
【0058】
3)推定検出器特性のフルスパンへの展開
続いて、健全性評価部16は、第2のデータベースに格納されているスパンドリフトの統計量である平均値μf、及び標準偏差σfを用いて、上述の手法にて取得した推定ドリフト特性を所定信頼度で写像する。推定ドリフト特性の座標を(x1,yp,1),・・・,(xn,yp,n(但し、nは5或いは6である。))、また、現在の運転ポイントをxpとする。このとき、各検査ポイントiにおけるドリフト量の推定区間[y´pmin,i,y´pmax,i](i=1,…,5或いは6)は、次式(7)及び(8)にて求めることができる。図9に運転ポイントとドリフト量の推定区間の関係を示す。
【0059】
【数4】
上記式(7)及び(8)において、Nは、通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間を表しており、また、nnowは、真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差を表している。また、kは区間推定の信頼度に関する定数である。例えば、95%の信頼度時にはk=2であり、また、99%の信頼度時にはk=3である。
更に、健全性評価部16は、上記(7)及び(8)にて得たドリフト量の推定区間に対して、推定ドリフト量yp,i(%)の処理上の不確かさσyp(%)とプラントが起動して通常運転に入るまでの間と通常運転が終了してプラントが停止するまでに発生するドリフト量のばらつきσe(%)を考慮し、最終的なドリフト量の推定区間[ypmin,i,ypmax,i]を次式(9)及び(10)に従って求める。なお、jは、直近の校正試験から現在までの間に、起動から停止までの運転サイクルを繰り返した回数である。図10に最終的なドリフト量の推定区間の例を示す。
【0060】
【数5】
【0061】
続いて、健全性評価部16は、上述の手法により求めた最終的な推定ドリフト量yp、最終的なドリフト量の推定区間[ypmin,i,ypmax,i]に基づいて、検出器の健全性を評価する。例えば、この推定区間[ypmin,i,ypmax,i]が予め設定されている許容範囲内か否かを判定し、許容範囲内でなければ、異常と判定する。なお、この異常判定には、種々の統計的手法が利用可能である。
【0062】
このように、本実施形態に係る健全性評価部16では、プラントを起動したり、停止したりする際に生ずるドリフト量のばらつきを考慮して最終的な推定区間を求めるため、信頼性の高いドリフト量を得ることができ、後述の健全度評価を高い精度で行わせることが可能となる。また、最終的なドリフト量の推定区間の算出において、通常運転時の発生ドリフト量の統計量算定の基準とした期間Nや、真値推定モデル構築に使用したデータ日時と評価時点の日時の差nnow等を用いるため、校正検査のインターバルが変化したとしても、何の不都合もなく速やかに対処することが可能となる。
【0063】
健全性評価部16は、上記判定が終了すると、この判定結果とともに、最終的な推定ドリフト量yp、最終的なドリフト量の推定区間[ypmin,i,ypmax,i]、推定に用いた実測値等を出力部17へ送信する。
出力部17は、健全性評価部16から取得したこれら情報をディスプレイやプリンタ等に出力する。
【0064】
図11は本実施形態に係る検出器の校正支援方法の処理フローを示すフローチャートである。同図に示すように、本実施形態においては、まず入力部11が、プラント1の各検出器から検出器信号を入力し、その実測値を各真値推定部12−1乃至12−nに送信する(ステップS11)。
【0065】
各真値推定部12−1乃至12−nは、第1のデータベース13−1乃至13−nにそれぞれ格納された真値推定モデルをRAMなどのメモリに読み込む。そして、入力部11を介してプラント1から供給された検出器信号の実測値を用いて推定真値を算出し、その推定真値を総合評価部14に送信する(ステップS12)。
この結果、総合評価部14では第2のデータベース15のデータを参照して推定値の総合評価を行い、最も確からしい推定真値を求め、健全性評価部16に送信する(ステップS13)。
【0066】
健全性評価部16では、総合評価部14から取得した最も確からしい推定真値を用いて、フルスパンに渡る推定ドリフト量の推定区間を算出し、更に、この推定ドリフト量の推定区間を用いて、検出器の健全性を評価する。そして、その評価結果並びに総合評価部14から入手した情報を出力部17に送信する(ステップS14)。
出力部17は、総合評価部14による評価結果及び健全性評価部による評価結果を出力する(ステップS15)。
【0067】
以上述べてきたように、本実施形態に係る検出器の校正支援装置及びその方法によれば、個々の検出器の推定真値を、複数の真値推定モデルを用いて個別に求め、さらにこれらを総合評価して最終的な推定真値と推定ドリフト量を算出する。更に、この最終的な推定真値を用いてフルスパン補償処理を行うことにより、フルスパンに渡って推定ドリフト量を求める。そして、このフルスパンに渡って推定されたドリフト量を用いて、自動的に検出器の健全性評価を行うので、検出器信号にドリフトが発生した場合、通常運転中であっても検出器の健全性を高信頼度で自動的に評価することが可能となる。
【0068】
例えば、本実施形態の場合は、断線等の大きな異常だけでなく、軽微な異常により長期間に渡って検出器の実測値が少しずつドリフトするようなときでも、検出器の健全性を高い信頼度で評価することができる点で有効である。
また、この健全性評価部16により得られた評価結果に基づいて、プラントの作業員等は、検出器の校正の要否を判断できるので、定期検査計画策定に用いれば、運転期間の延長、検出器校正試験に要するコストの低減、定期検査期間の短縮が可能で、プラントの稼働率の向上を図ることができる。
【0069】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について、図12を用いて説明する。
本実施形態の検出器の校正支援装置40が第1の実施形態と異なる点は、適用性評価部18を備えている点、及び、健全性評価部16に代えてドリフト量予測部(ドリフト量予測手段)19を備える点である。以下、本実施形態の検出器の校正支援装置について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0070】
図12は本発明の第2の実施形態に係る検出器の校正支援装置を示すブロック線図である。この図において、適用性評価部18は、各真値推定部12−1乃至12−nの入力信号である実測値や出力信号である各推定真値に基づき、各真値推定モデルが適用可能か否かを判断するものである。
【0071】
すなわち、例えば各推定真値の使用可能な範囲を予め決めておき、この範囲を逸脱するような推定真値は、検出器の取付状態や真値推定モデルの対象とする系統機器・配管が異常な状態になっている等、推定真値として利用するのは不適切であると判断してこの推定真値を出力した真値推定部12−1乃至12−nの出力データを除外して総合評価部14における処理を行うようにしたものである。
【0072】
この判断の際には、入力部11の出力信号である検出器の実測値との比較において推定真値を評価する。また、各検出器信号の使用可能な範囲を予め決めておき、この範囲を逸脱するような実測値を異常と判断して、当該検出器信号を入力する真値推定部12−1乃至12−nの出力データを除外してもよい。さらに、各真値推定部12−1乃至12−nの適用性判定条件を条件式で決めておき、条件式を評価した結果、適用不可と判定されたときに、当該真値推定部12−1乃至12−nの出力データを除外してもよい。
【0073】
このことにより、真値推定モデルの入力に使用している検出器や電源・計装ケーブル等に不具合が発生したり、系統機器や配管に異常が発生したりして、通常の値から大幅にずれた場合等、真値推定モデルが適切に推定できる範囲を逸脱したような検出器信号となった場合でも、該当する真値推定モデルの利用を取りやめて、残りの真値推定モデルの出力で推定真値及び推定ドリフト量を総合評価するため、出力された情報の精度と信頼性が向上するという効果を得る。
【0074】
また、ドリフト量予測部19は、上述した総合評価部14から最も信頼性の高い推定真値等を取得し、この推定真値と検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するものである。ここで、フルスパンに渡るドリフト量の算出手法の基本的な考え方は、上述した第1の実施形態で述べた手法、つまり、フルスパン補償処理と同様であるが、第1の実施形態では現時点におけるドリフト量を推定していたのに対し、本実施形態では、将来におけるドリフト量を予測するため、上記式(9)及び(10)に代わって、次式(11)及び(12)を用いて演算を行うこととなる。
【0075】
【数6】
【0076】
上記(11)、(12)式において、nは、現在から将来の評価時点までの通常運転期間を表している。jは、直近の校正試験から将来の評価時点までに、起動から停止までの運転サイクルを繰り返した回数を示している。
ドリフト量予測部19は、将来のある時点におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測すると、このフルスパンに渡る予測ドリフト量を、上記相互評価部14から入力された種々の情報とともに、出力部17に送信する。
出力部17は、取得した情報をモニタやプリンタなどに出力する。
【0077】
なお、上記ドリフト量予測部19には、以下のような機能を付加しても良い。
例えば、ドリフト量予測部19は、次回の定期検査時におけるドリフト量と、次々回の定期検査時におけるドリフト量とを予測し、次々回の定期検査時におけるドリフト量が予め設定されている許容範囲内か否かを判定する。そしてこの判定結果に応じて、次回の定期検査の要否を判定し、その判定結果を出力部16へ出力するようにしてもよい。
【0078】
また、ドリフト量予測部19は、現時点から10ヵ月後、20ヶ月後、25ヵ月後などのように、複数の時点におけるドリフト量を予測するようにし、この予測結果に基づいて、次回の定期検査の時期を決定するようにしても良い。例えば、各時点における予測結果を補間処理することにより、数十ヶ月に渡るドリフト量の変化をグラフとして表し、このグラフにおいて、予め設定されている許容範囲を満たさなくなった時点よりも数ヶ月早い時期に、次回の検査を行うよう決定するようにする。
【0079】
なお、ドリフト量が許容範囲を超えているか否かの判定については、次式(13)及び(14)に示すように、検出器のレンジ内の所定の点検ポイントi(例えば、0%、25%、50%、75%、100%出力の5段階)において、それぞれ算出したドリフト量において、下限値yPmin,i(n)の最小値、及び上限値yPmax,i(n)の最大値を採用するようにしてもよい。
【0080】
【数7】
【0081】
次に、本発明に係る各実施形態の適用例として、原子力プラントに適用した場合について説明する。図13は、本適用例に係る原子力プラントの一部を示す系統図である。また、表3にはこの場合の真値推定モデルの入力信号の例を示している。
【0082】
【表3】
【0083】
図11に示すように、原子炉101内で発生した熱は一次冷却材(ほう酸水)に吸収される。この一次冷却材は、原子炉101、蒸気発生器102および一次冷却材ポンプ103により構成される原子炉冷却系統104において、一次冷却材ポンプ103により強制的に循環させられている。一方、蒸気発生器102内に供給された二次冷却材(水)は、一次冷却材からの入熱により蒸発し、蒸気となって図示しないタービンへ送られる。また、原子炉冷却系統104の配管には、圧力を調整するための加圧器105が接続されている。
【0084】
ここで、T601およびT602はそれぞれ一次冷却材の高温側温度および低温側温度を検出する検出器、F601およびF602はいずれも蒸気発生器給水流量を検出する検出器、F603およびF604はいずれも蒸気発生器蒸気流量を検出する検出器、P601からP603はいずれも蒸気発生器圧力を検出する検出器、U600(図示略)は原子炉出力を検出する検出器、L601からL603はいずれも加圧器水位を検出する検出器である。たとえば、これら13の検出器の検出器信号が上述した各実施の形態において真値推定モデルに入力される。したがって、真値推定モデルが図2に示すようなニューラルネットワークである場合、ニューラルネットワークの入力層および出力層の各ノード数は13となる。
【0085】
なお、上述の如き各実施形態に係る検出器の校正支援装置における最終的な推定真値を実運用のプラントの計測値として監視乃至制御に使用するように構成することもできる。この場合には、検出器を多重化することなくプラント等の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【0086】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0087】
例えば、上述した各実施形態に係る検出器の校正支援装置については、ハードウェアによる処理を前提としてきたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、ソフトウェア処理により同様の機能を実現させるようにしても良い。この場合、検出器の校正支援装置は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した検出器の校正支援処理に関する一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
すなわち、検出器の校正支援装置が備える各部により実現される各種処理は、CPU等の中央演算処理装置がROMやRAM等の主記憶装置に上記プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、実現される。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る検出器の校正支援装置を示すブロック線図である。
【図2】図1に示す検出器の校正支援装置に用いる真値推定モデルの一例を示す説明図である。
【図3】原子力発電プラントの運転サイクルなどを示す説明図である。
【図4】検出器の校正・調整試験結果を示す模式図の一例である。
【図5】検出器において発生するゼロ点ドリフトとスパンドリフトの概念を示す模式図である。
【図6】検出器において発生するスパンドリフトの統計量の概念を示す模式図である。
【図7】推定ドリフト量の算出方法の概念を示す模式図である。
【図8】フルスパンに渡る推定ドリフト量の算出方法の概念を示す模式図である。
【図9】フルスパンに渡るドリフト量の推定区間の概念を示す模式図である。
【図10】フルスパンに渡る最終的なドリフト量の推定区間の概念を示す模式図である。
【図11】図1に示す検出器の校正支援方法の処理フローを示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る検出器の校正支援装置を示すブロック線図である。
【図13】本発明の好適な適用例である原子力プラントの一部を示す系統図である。
【符号の説明】
【0089】
1 プラント
10、40 検出器の校正支援装置
11 入力部
12−1乃至12−n 真値推定部
13−1乃至13−n 第1のデータベース
14 総合評価部
15 第2のデータベース
16 健全性評価部
17 出力部
18 適用性評価部
19 ドリフト量予測部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力手段と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルをそれぞれ格納する複数個の第1の記憶手段と、
各前記真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定手段と、
個々の前記真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納する第2の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各前記真値推定手段で推定された同一の検出器に対する複数の前記推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価手段と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、ドリフト量をフルスパンに渡って推定する健全性評価手段と
を備える検出器の校正支援装置。
【請求項2】
前記総合評価手段は、前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ、前記検出器のドリフト量のサンプリング期間、及び直近の評価時から現在までの運転時間を用いて、前記真値推定モデルの推定精度を算出し、この真値推定モデルの推定精度を用いて前記最も信頼性の高い推定真値を求める請求項1に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項3】
前記総合評価手段は、前記真値推定手段により得られた推定真値に対して、前記真値推定モデルの推定精度を用いた荷重平均を行うことにより、前記最も信頼性の高い推定真値を求める請求項2に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項4】
前記健全性評価手段は、前記被検出対象が起動して通常運転に入るまでの起動運転期間及び前記被検出対象の通常運転が終了してから完全に停止するまでの停止運転期間に発生したドリフト量のばらつきに関する数値データ、及び、直近の校正試験から現在までの間に、起動から停止までの運転サイクルを繰り返した回数に関する数値データを用いて、前記フルスパンに渡るドリフト量を推定する請求項1から請求項3のいずれかの項に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項5】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力手段と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルをそれぞれ格納する複数個の第1の記憶手段と、
各前記真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定手段と、
個々の前記真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納する第2の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各前記真値推定手段で推定された同一の検出器に対する複数の前記推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価手段と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測手段と
を備える検出器の校正支援装置。
【請求項6】
前記ドリフト量予測手段は、少なくとも次回定期検査時及び次々回定期検査時におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測する請求項5に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項7】
前記ドリフト量予測手段は、将来におけるドリフト量の予測結果に基づいて、次回の定期検査における校正試験の要否を判定する請求項5又は請求項6に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項8】
前記ドリフト量予測手段は、将来におけるドリフト量の予測結果に基づいて、次回の定期検査の時期を決定する請求項5に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項9】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力過程と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出過程と、
同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出過程と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出過程と、
前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、推定ドリフト量をフルスパンに渡って算出する推定ドリフト量算出過程と
を備える検出器の校正支援方法。
【請求項10】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力過程と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出過程と、
同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出過程と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出過程と、
前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測過程と
を備える検出器の校正支援方法。
【請求項11】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力処理と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出処理と、
同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出処理と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出処理と、
前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、推定ドリフト量をフルスパンに渡って算出する推定ドリフト量算出処理と
をコンピュータに実行させるための検出器の校正支援プログラム。
【請求項12】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力処理と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出処理と、
同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出処理と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出処理と、
前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測処理と
をコンピュータに実行させるための検出器の校正支援プログラム。
【請求項1】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力手段と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルをそれぞれ格納する複数個の第1の記憶手段と、
各前記真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定手段と、
個々の前記真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納する第2の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各前記真値推定手段で推定された同一の検出器に対する複数の前記推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価手段と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、ドリフト量をフルスパンに渡って推定する健全性評価手段と
を備える検出器の校正支援装置。
【請求項2】
前記総合評価手段は、前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ、前記検出器のドリフト量のサンプリング期間、及び直近の評価時から現在までの運転時間を用いて、前記真値推定モデルの推定精度を算出し、この真値推定モデルの推定精度を用いて前記最も信頼性の高い推定真値を求める請求項1に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項3】
前記総合評価手段は、前記真値推定手段により得られた推定真値に対して、前記真値推定モデルの推定精度を用いた荷重平均を行うことにより、前記最も信頼性の高い推定真値を求める請求項2に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項4】
前記健全性評価手段は、前記被検出対象が起動して通常運転に入るまでの起動運転期間及び前記被検出対象の通常運転が終了してから完全に停止するまでの停止運転期間に発生したドリフト量のばらつきに関する数値データ、及び、直近の校正試験から現在までの間に、起動から停止までの運転サイクルを繰り返した回数に関する数値データを用いて、前記フルスパンに渡るドリフト量を推定する請求項1から請求項3のいずれかの項に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項5】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力手段と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルをそれぞれ格納する複数個の第1の記憶手段と、
各前記真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値をそれぞれ算出する複数個の真値推定手段と、
個々の前記真値推定モデルの推定精度に関するデータを格納する第2の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に格納されている前記真値推定モデルの推定精度に関するデータ及び各前記真値推定手段で推定された同一の検出器に対する複数の前記推定真値から、最も信頼性の高い推定真値を求める総合評価手段と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて推定ドリフト量を算出し、この推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測手段と
を備える検出器の校正支援装置。
【請求項6】
前記ドリフト量予測手段は、少なくとも次回定期検査時及び次々回定期検査時におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測する請求項5に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項7】
前記ドリフト量予測手段は、将来におけるドリフト量の予測結果に基づいて、次回の定期検査における校正試験の要否を判定する請求項5又は請求項6に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項8】
前記ドリフト量予測手段は、将来におけるドリフト量の予測結果に基づいて、次回の定期検査の時期を決定する請求項5に記載の検出器の校正支援装置。
【請求項9】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力過程と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出過程と、
同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出過程と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出過程と、
前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、推定ドリフト量をフルスパンに渡って算出する推定ドリフト量算出過程と
を備える検出器の校正支援方法。
【請求項10】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力過程と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出過程と、
同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出過程と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出過程と、
前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測過程と
を備える検出器の校正支援方法。
【請求項11】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力処理と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出処理と、
同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出処理と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出処理と、
前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、推定ドリフト量をフルスパンに渡って算出する推定ドリフト量算出処理と
をコンピュータに実行させるための検出器の校正支援プログラム。
【請求項12】
被検出対象に設けた複数の検出器から出力した各検出器信号を入力する入力処理と、
真値を推定するための複数個の真値推定モデルを用い、前記検出器信号の実測値に基づいて推定真値を算出する推定真値算出処理と、
同一の前記検出器に対する複数の前記推定真値と、前記真値推定モデルの推定精度に関するデータとを用いて、最も信頼性の高い推定真値を求める最終推定真値算出処理と、
前記最も信頼性の高い推定真値を用いて、推定ドリフト量を算出する推定ドリフト量算出処理と、
前記推定ドリフト量と前記検出器のドリフト量特性とに基づいて、将来におけるドリフト量をフルスパンに渡り予測するドリフト量予測処理と
をコンピュータに実行させるための検出器の校正支援プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−3381(P2007−3381A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184639(P2005−184639)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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