説明

検査システムおよびこの検査対象物の保持具

【課題】検査対象物毎に検査条件を自動的に設定でき、検査対象物毎の検査を容易かつ確実に行うことができること。
【解決手段】標本または被検体等の検査対象物毎に所定の検査を行う検査システムにおいて、前記検査対象物を保持するプレパラート100に設けられ、前記検査対象物に対応付けた情報を記憶するRFIDタグ101と、アンテナ8とRFIDタグ101との間にて送受信される電波を介してRFIDタグ101から前記情報を読み取るRFID処理部7と、RFID処理部7によって読み取られた情報をもとに、前記検査対象物に対する検鏡条件を設定する制御部6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所望の検査対象物に対して所定の検査を行う検査システムに関し、特に、小型の集積回路と無線通信用のアンテナとを組み合わせた情報記憶媒体を用い、この情報記憶媒体から所定の電波を介して読み取った情報をもとに、この所定の検査の検査条件を設定可能な検査システムおよびこの検査対象物の保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、検査対象物を保持する、プレパラート(以後、スライドガラスに標本を載せ、カバーガラスを被せた形のもの全般をプレパラートと称する。)または試験管等の保持具を用い、生体の細胞標本または血液等の固体状または液体状の所望の検査対象物に所定の検査を行う検査システムにおいて、検査対象物の名称または管理番号等の管理情報を示す光学情報記録媒体が保持具に付けられ、この検査対象物の検査結果を取得するとともに、この光学情報記録媒体を光学的に読み取ることによってこの管理情報を取得し、これら検査対象物に関する検査結果と管理情報とを関連付けて管理可能な検査システムが開発されている。なお、この光学情報記録媒体は、赤外光または可視光等の所定の走査光を用いて光学的に読み取り可能な情報が記録されたものである。
【0003】
この従来の検査システムの一例として、たとえば、スライドガラス上の標本に関する標本情報を示す光学情報記録媒体(たとえばドットマトリクス)が付されたプレパラートを用い、この標本の顕微鏡画像を撮像するとともに、このドットマトリクスから標本情報を光学的に読み取り、この撮像した顕微鏡画像と光学的に読み取った標本情報とを関連付けて記録する顕微鏡画像撮影装置がある(特許文献1参照)。操作者は、この顕微鏡画像撮影装置を用いることによって、この標本の検鏡操作を行えるとともに、この検鏡操作によって得られた検査結果とこの標本の標本情報とを関連付けて管理できる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−248176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に例示される従来の検査システムでは、検査対象物を保持する保持具に付された光学情報記録媒体から検査対象物に関する各種情報を光学的に読み取るようにしているので、検査対象物毎に多くの情報量を読み取ることは困難な場合が多い。このため、操作者は、プレパラートまたは試験管等の同態様の保持具群の各検査対象物について所定の検査をそれぞれ行う場合、この保持具群の保持具毎に検査対象物を視覚的に区別し、検査システムに対し、区別した検査対象物毎に検査条件を順次設定しなければならない。このため、検査対象物毎に所定の検査を行う検査作業を達成するまでに多大な時間と労力がかかるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、検査対象物毎に検査条件を自動的に設定でき、検査対象物毎の検査を容易かつ確実に行える検査システムおよびこの検査対象物の保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる検査システムは、標本または被検体等の検査対象物毎に所定の検査を行う検査システムにおいて、前記検査対象物を保持する保持具に設けられ、前記検査対象物に対応付けた情報を記憶する情報記憶媒体と、所定の電波を介して前記情報記憶媒体から前記情報を読み取る無線通信手段と、前記無線通信手段が読み取った情報をもとに、前記検査対象物に対する前記所定の検査の検査条件を設定する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2にかかる検査システムは、上記発明において、前記検査条件と異なる検査条件を入力する入力手段を備え、前記制御手段は、前記検査条件を前記入力手段から入力された異なる検査条件に変更し、前記無線通信手段は、所定の電波を介して前記情報記憶媒体内の検査条件を前記異なる検査条件に更新することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3にかかる検査システムは、上記発明において、前記無線通信手段は、所定の電波を介して前記検査対象物の検査結果を前記情報記憶媒体に書き込むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4にかかる検査システムは、上記発明において、前記保持具を載置する載置台を備え、前記無線通信手段は、前記情報記憶媒体との間にて所定の電波を送受信するアンテナを有し、該アンテナは、前記載置台に設けられたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5にかかる検査システムは、上記発明において、前記制御手段は、前記検査条件の一つとして、前記載置台上の前記検査対象物の観察位置を設定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6にかかる検査システムは、上記発明において、検査対象物毎に所定の検査を行う第1検査手段と、検査対象物毎に前記第1検査手段と異なる検査を行う第2検査手段と、前記第1検査手段に検査対象物を搬入する第1搬送経路と前記第2検査手段に検査対象物を搬入する第2搬送経路とを有し、複数の前記保持具を前記第1搬送経路または前記第2搬送経路に沿って順次搬送する搬送手段と、を備え、前記制御手段は、前記保持具の情報記憶媒体毎に読み取られた情報をもとに、順次搬送される各保持具の搬送経路を決定し、前記搬送手段に対し、前記第1搬送経路または前記第2搬送経路に沿う搬送制御を前記保持具毎に行うことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7にかかる検査システムは、上記発明において、前記載置台は、絶縁材を用いて構成されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8にかかる検査システムは、上記発明において、前記アンテナは、前記載置台に着脱可能に設けられることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9にかかる検査システムは、上記発明において、前記保持具は、絶縁材を用いて構成されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項10にかかる検査システムは、上記発明において、前記検査対象物に対応付けた情報は、前記検査対象物の検査条件、前記検査対象物に関する管理情報、および前記情報記憶媒体を特定するIDコードのいずれか一つであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項11にかかる保持具は、標本または被検体等の検査対象物を保持する保持具において、前記検査対象物に対応付ける情報を記憶する情報記憶媒体を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項12にかかる保持具は、上記発明において、前記情報記憶媒体は、当該保持具に着脱可能に設けられることを特徴とする。
【0019】
また、請求項13にかかる保持具は、上記発明において、所定の段差を有するエッジが設けられ、前記検査対象物が付されるスライドガラスと、前記情報記憶媒体が埋め込まれ、前記エッジに着脱可能に外嵌する樹脂カバーと、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項14にかかる保持具は、上記発明において、前記検査対象物を内包する筒状の容器と、前記情報記憶媒体が埋め込まれ、前記容器を着脱可能に閉塞するキャップと、を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項15にかかる保持具は、上記発明において、前記検査対象物を内包する筒状の容器と、前記容器の側壁に前記情報記憶媒体を着脱可能に押し当てる弾性ベルトと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、検査対象物毎に検査条件を自動的に設定または再現でき、操作者が複数の検査対象物を視覚的にそれぞれ区別しなくとも、検査対象物毎に適正な検査を容易かつ確実に行える検査システムとこの検査システムに好適な検査対象物の保持具とを実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、この発明にかかる検査システムおよびこの検査対象物の保持具の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下では、この検査システムの一例として光学顕微鏡を挙げるが、このことは、この発明を限定するものではなく、例えばこの発明にかかる検査システムはDNAチップ解析装置であってもよいし、この発明にかかる保持具はDNAチップ、ECAチップ、μTAS、プロラインチップ等の所謂バイオチップであってもよい。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1である光学顕微鏡の一構成例を模式的に示すブロック図である。図2は、この発明の実施の形態1である光学顕微鏡の検鏡条件を設定するまでの処理手順を例示するフローチャートである。図1に示すように、この光学顕微鏡1は、透過照明光源を有する周知の光学顕微鏡とほぼ同様の構成を有する。すなわち、光学顕微鏡1は、所定の検鏡条件に基づき、プレパラート100の検査対象物である標本を照明することによって、この標本の所望倍率の拡大像を観察可能にする。また、光学顕微鏡1は、無線通信手段としてアンテナ8とRFID処理部7とを有し、光学顕微鏡1の各構成部の動作を制御する制御手段として制御部6を有する。一方、プレパラート100は、ガラスまたは樹脂材等の絶縁材を用いて実現され、検査対象物である標本を保持するとともに、この標本に関する各種情報を記憶する情報記憶媒体の一例であるRFIDタグ101が設けられる。RFIDタグ101は、この標本に関する各種情報として、たとえば標本を管理するための標本情報と標本を観察するための検鏡条件とを記憶する。
【0025】
なお、この標本情報は、たとえば標本名称、標本管理者名、標本管理番号、生体組織名称、染色方法、患者番号、患者性別、患者年齢、試料採取日、標本作成日、および標本作成者名等である。また、この検鏡条件は、検鏡操作に用いられた顕微鏡の機種、検鏡方法、照明強度、使用対物レンジの倍率、および標本の観察位置座標等である。
【0026】
図1および図2において、載置台2は、セラミック、ガラス、または樹脂材料等の絶縁材を構成材料として用いて実現される。載置台2は、プレパラート100を載置するステージとして機能する。また、載置台2は、駆動部2aが設けられ、駆動部2aの駆動によって、図1に示すy軸方向に往復移動できる。
【0027】
クレンメル3は、載置台2上に設けられ、載置台2上にてプレパラート100を把持するように機能する。また、クレンメル3は、駆動部3aが設けられ、駆動部3aの駆動によって、図1に示すx軸方向に往復移動できる。この場合、クレンメル3は、載置台2上において、x軸方向に往復移動できる。すなわち、クレンメル3に把持されたプレパラート100は、載置台2によるy軸方向の移動とクレンメル3によるx軸方向の移動とのを組み合わせによって、載置台2およびクレンメル3の各移動可能範囲に対応する所定の座標系上の所望の座標位置に移動できる。
【0028】
入力部4は、キーボード、タッチパネル、トラックボール、またはマウス等を単一または組み合わせて用いることによって実現され、ケーブル4aを介して制御部6と電気的に接続される。入力部4は、操作者による入力操作に応じ、RFIDタグ101の情報を読み取る情報読取処理を開始指示する読取指示情報、RFIDタグ101に情報を書き込む情報書込処理を開始指示する書込指示情報、またはプレパラート100の標本を撮影する撮影処理を開始指示する撮影指示情報を制御部6に入力する。また、入力部4は、操作者による入力操作に応じ、標本を照明する照明光の照明強度、使用対物レンズの倍率、または観察位置座標等の光学顕微鏡1の検鏡条件を所望条件に変更する条件変更情報、変更後の検鏡条件をRFIDタグ101に上書きする更新指示情報、上述した標本情報、あるいはプレパラート100の標本の検査結果を制御部6に入力する。
【0029】
記憶部5は、RAM、EEPROM、またはフラッシュメモリ等の各種ICメモリ、ハードディスクドライブ、あるいは光磁気ディスクドライブ等のデータの書き込みおよび読み出しが可能な各種記憶装置を用いて実現される。記憶部5は、制御部6の制御のもと、制御部6から受信した各種情報を記憶する機能と、記憶した各種情報を制御部6に送信する機能とを有する。
【0030】
制御部6は、各種処理プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、このCPUが実行する各種処理プログラム等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、各処理の演算パラメータ、RFIDタグ101から読み取られた各種情報、入力部4から入力された各種情報等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを用いて実現される。制御部6は、上述したように、光学顕微鏡1の各構成部の動作をそれぞれ制御する。また、制御部6は、これらの各構成部に入出力される各情報について所定の入出力制御をそれぞれ行い、かつ、これらの各情報に対して所定の情報処理をそれぞれ行う。
【0031】
また、制御部6は、RFIDタグ101から読み取った検鏡条件に基づき、プレパラート100の標本を観察可能な検鏡条件を自動設定する検鏡条件設定処理を行う。すなわち、操作者が入力部4を用いて読取指示情報の入力操作を行った場合、制御部6は、入力部4から入力された読取指示情報を検知し(ステップS101,Yes)、RFID処理部7に対し、RFIDタグ101に記憶された情報を読み取るように制御する。
【0032】
RFID処理部7は、周知の変調回路、復調回路、および高周波回路等を用いて実現され、制御部6の制御のもと、アンテナ8に所定の電波を送受信させるとともに、この所定の電波を介し、RFIDタグ101から情報を読み取るまたはRFIDタグに情報を書き込む無線通信処理部として機能する。たとえば、RFID処理部7は、制御部6の制御のもと、アンテナ8に所定の電気信号を送信することによって通信可能距離が数mm〜数十mm程度の電波を出力させ、この電波を介し、RFIDタグ101から各種情報すなわち上述した標本情報および検鏡条件等を読み取ることができる。または、RFID処理部7は、制御部6の制御のもと、アンテナ8とRFIDタグ101との間にて送受信される所定の電波を介し、RFIDタグ101に各種情報すなわち標本情報、変更後の検鏡条件、検査結果等を書き込むことができる。
【0033】
アンテナ8は、アルミニウム、チタン−ニッケル合金、銅合金、またはステンレス等の導電材を用いて実現され、載置台2の裏側に着脱可能に設けられる。アンテナ8は、RFID処理部7から入力される電気信号に基づき、所定の通信可能距離内に存在するRFIDタグ101に所定の電波を送信する。また、アンテナ8は、RFIDタグ101が出力した電波を受信するとともに、この受信した電波に対応する電気信号をRFID処理部7に送信する。ここで、載置台2を絶縁材で構成すれば、アンテナ8は、金属等による通信特性の悪影響を受けずに、RFIDタグ101との間にて所定の電波を良好に送受信できる。なお、アンテナ8は、RFIDタグ101との間にて行われる無線通信の周波数帯に最適化されていれば、フレキシブル基板にコイル状パターンを形成したものであってもよいし、線状または板状の導電材をコイル状に形成したものであってもよい。
【0034】
RFID処理部7は、アンテナ8とRFIDタグ101との間にて送受信される所定の電波を介してRFIDタグ101から標本情報および検鏡条件等を読み取った場合、この標本情報および検鏡条件を制御部6に送信する。この場合、制御部6は、RFID処理部7からこの標本情報および検鏡条件を受信するとともに、この標本情報および検鏡条件を記憶部5に記憶する。これによって、制御部6は、上述したステップS101にて検知した読取指示情報に基づきRFIDタグ101から各種情報たとえば標本情報および検鏡条件等を読み取る情報読取処理を達成する(ステップS102)。
【0035】
つぎに、制御部6は、この情報読取処理によってRFIDタグ101から読み取った各種情報を表示部9に送信し、表示部9に表示させる情報表示処理を行う(ステップS103)。表示部9は、液晶表示装置(LCD)または有機ELパネル等のディスプレイを用いて実現され、制御部6の制御のもと、制御部6から受信した各種情報を表示するように機能する。表示部9は、ステップS103において、制御部6の制御のもと、RFIDタグ101から読み取られた各種情報たとえば上述した標本情報または検鏡条件を表示出力する。操作者は、表示部9の表示内容から、載置台2に載置したプレパラート100の標本に関する標本情報または検鏡条件等を視認でき、この標本が検査対象の標本であるか否か等を容易に確認できる。
【0036】
その後、制御部6は、光学顕微鏡1の各駆動部を各駆動の原点となる状態にそれぞれ復帰させる原点復帰処理を行う(ステップS104)。この場合、制御部6は、駆動部2aを駆動の原点となる状態に復帰させ、これによって、載置台2を図1に示すy軸方向の原点に復帰させる。駆動部2aは、アクチュエータとy軸方向の位置を検出するリニアエンコーダとを用いて実現され、上述したように載置台2をy軸方向に駆動させるとともに、y軸方向についての載置台2の座標位置を検出する。制御部6は、駆動部2aが検出した座標位置をもとに、載置台2のy軸方向の現座標位置を常時確認できる。したがって、制御部6は、駆動部2aが検出した座標位置をもとに原点復帰処理を行い、駆動部2aを駆動の原点となる状態に復帰できる。
【0037】
これと同時に、制御部6は、駆動部3aを駆動の原点となる状態に復帰させ、これによって、クレンメル3を図1に示すx軸方向の原点に復帰させる。駆動部3aは、アクチュエータとx軸方向の位置を検出するリニアエンコーダとを用いて実現され、上述したようにクレンメル3を載置台2上にてx軸方向に駆動させるとともに、x軸方向についてのクレンメル3の座標位置を検出する。制御部6は、駆動部3aが検出した座標位置をもとに、クレンメル3のx軸方向の現座標位置を常時確認できる。したがって、制御部6は、駆動部3aが検出した座標位置をもとに原点復帰処理を行い、駆動部3aを駆動の原点となる状態に復帰できる。
【0038】
また、制御部6は、光量制御部10aによって、光源10を基準強度(たとえば零強度または最大強度)の照明光を出力する状態に制御する。光量制御部10aは、光源10が出力する照明光の照明強度を変化するとともに、現照明強度における可変抵抗器の抵抗値を検出する。制御部6は、光量制御部10aが検出した抵抗値をもとに、光源10の照明強度を常時確認できる。したがって、制御部6は、光量制御部10aが検出した抵抗値をもとに原点復帰処理を行い、光量制御部10aを駆動の原点となる状態に復帰できる。
【0039】
さらに、制御部6は、駆動部12aを駆動の原点となる状態に復帰させ、これによって、フィルタ12を基準状態(たとえば光源10からの照明光に対して有効または無効な状態)に復帰させる。駆動部12aは、アクチュエータを用いて実現され、フィルタ12を光源10からの照明光に対して有効または無効な状態に切り替えるように駆動するとともに、このフィルタ12の切替状態を検出する。制御部6は、駆動部12aが検出したフィルタ12の切替状態をもとに、フィルタ12が光源10からの照明光に対して有効な状態であるか無効な状態であるかを常時確認できる。したがって、制御部6は、駆動部12aが検出したフィルタ12の切替状態をもとに原点復帰処理を行い、駆動部12aを駆動の原点となる状態に復帰できる。
【0040】
また、制御部6は、駆動部13aを駆動の原点となる状態に復帰させ、これによって、視野絞り部13を基準状態(たとえば光源10からの照明光に対して視野絞りを閉じた状態または全開にした状態)に復帰させる。駆動部13aは、アクチュエータを用いて実現され、視野絞り部13の視野絞りを変化する駆動を行うとともに、現視野絞りを検出する。制御部6は、駆動部13aが検出した視野絞りをもとに、視野絞り部13の視野絞りを常時確認できる。したがって、制御部6は、駆動部13aが検出した視野絞りをもとに原点復帰処理を行い、駆動部13aを駆動の原点となる状態に復帰できる。
【0041】
さらに、制御部6は、駆動部15aを駆動の原点となる状態に復帰させ、これによって、開口絞り部15を基準状態(たとえば光源10からの照明光に対して開口絞りを閉じた状態または全開にした状態)に復帰させる。駆動部15aは、アクチュエータを用いて実現され、開口絞り部15の開口絞りを変化する駆動を行うとともに、現開口絞りを検出する。制御部6は、駆動部15aが検出した開口絞りをもとに、開口絞り部15の開口絞りを常時確認できる。したがって、制御部6は、駆動部15aが検出した開口絞りをもとに原点復帰処理を行い、駆動部15aを駆動の原点となる状態に復帰できる。
【0042】
また、制御部6は、駆動部16aを駆動の原点となる状態に復帰させ、これによって、コンデンサレンズ16を基準位置すなわちコンデンサレンズ16の上下駆動および左右駆動の原点位置に復帰させる。駆動部16aは、アクチュエータとリニアエンコーダとを用いて実現され、コンデンサレンズ16を上下駆動または左右駆動するとともに、この原点位置に対する現在のコンデンサレンズ16の位置を検出する。制御部6は、駆動部16aが検出したコンデンサレンズ16の位置をもとに、コンデンサレンズ16の現在位置を常時確認できる。したがって、制御部6は、駆動部16aが検出したコンデンサレンズ16の現在位置をもとに原点復帰処理を行い、駆動部16aを駆動の原点となる状態に復帰できる。
【0043】
さらに、制御部6は、駆動部17aを駆動の原点となる状態に復帰させ、これによって、レボルバ17を回転駆動の原点位置に復帰させる。駆動部17aは、アクチュエータとロータリーエンコーダとを用いて実現され、レボルバ17を回転駆動するとともに、この回転駆動の原点に対するレボルバ17の回転位置を検出する。制御部6は、駆動部17aが検出したレボルバ17の回転位置をもとに、レボルバ17の現回転位置を常時確認できる。したがって、制御部6は、駆動部17aが検出したレボルバ17の現回転位置をもとに原点復帰処理を行い、駆動部17aを駆動の原点となる状態に復帰できる。
【0044】
また、制御部6は、駆動部20aを駆動の原点となる状態に復帰させ、これによって、ビームスプリッタ20を基準状態(たとえば光源10からの照明光を接眼レンズ19または写真撮影用レンズ22に到達させる状態)に復帰させる。駆動部20aは、アクチュエータを用いて実現され、光源10からの照明光が接眼レンズ19に到達する状態または写真撮影用レンズ22に到達する状態にビームスプリッタ20を切り替えるように駆動するとともに、このビームスプリッタ20の切替状態を検出する。制御部6は、駆動部20aが検出したビームスプリッタ20の切替状態をもとに、ビームスプリッタ20が光源10からの照明光を接眼レンズ19に到達させる状態であるか写真撮影用レンズ22に到達させる状態であるかを常時確認できる。したがって、制御部6は、駆動部20aが検出したビームスプリッタ20の切替状態をもとに原点復帰処理を行い、駆動部20aを駆動の原点となる状態に復帰できる。
【0045】
つぎに、制御部6は、光学顕微鏡1の各駆動部が駆動の原点となる状態にそれぞれ復帰したことを確認した場合、上述したステップS102の情報読取処理によってRFIDタグ101から読み取った検鏡条件をもとに、光学顕微鏡1の検鏡条件を設定する検鏡条件設定処理を行う(ステップS105)。この場合、制御部6は、この読み取った検鏡条件をもとに光学顕微鏡1の各駆動部を駆動制御することによって、光学顕微鏡1の検鏡条件を設定する。たとえば、制御部6は、この読み取った検鏡条件の観察位置座標に基づくy軸方向の座標位置にプレパラート100上の標本を移動させるように、駆動部2aを駆動制御する。駆動部2aは、制御部6の制御のもと、y軸方向の原点からこの観察位置座標に基づくy軸方向の座標位置に載置台2を移動するとともに、y軸方向についての載置台2の移動後の現座標位置を検出する。制御部6は、駆動部2aが検出した現座標位置をもとに、載置台2がこの観察位置座標に基づくy軸方向の座標位置に移動できたか否かを確認する。制御部6は、載置台2がこの観察位置座標に基づくy軸方向の座標位置に移動できた旨を確認した場合、駆動部2aに関する検鏡条件設定処理を完了する。その後、制御部6は、この載置台2の座標位置を記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件の一部として管理する。
【0046】
これと同時に、制御部6は、この読み取った検鏡条件の観察位置座標に基づくx軸方向の座標位置にプレパラート100上の標本を移動させるように、駆動部3aを駆動制御する。駆動部3aは、制御部6の制御のもと、x軸方向の原点からこの観察位置座標に基づくx軸方向の座標位置にクレンメル3を移動するとともに、x軸方向についてのクレンメル3の移動後の現座標位置を検出する。制御部6は、駆動部3aが検出した現座標位置をもとに、クレンメル3がこの観察位置座標に基づくx軸方向の座標位置に移動できたか否かを確認する。制御部6は、クレンメル3がこの観察位置座標に基づくx軸方向の座標位置に移動できた旨を確認した場合、駆動部3aに関する検鏡条件設定処理を完了する。その後、制御部6は、このクレンメル3の座標位置を記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件の一部として管理する。ここで、制御部6は、この駆動部2a,3aに関する検鏡条件設定処理を行うことによって、この観察位置座標に基づくxy平面上の座標位置にプレパラート100の標本を配置することができる。これによって、プレパラート100の標本は、このxy平面上において、操作者が光学顕微鏡1を用いてこの標本を観察可能な領域(検鏡領域)に配置される。
【0047】
また、制御部6は、この読み取った検鏡条件に基づく照明強度の照明光が光源10から出力されるように、光量制御部10aを制御する。光量制御部10aは、制御部6の制御のもと、この読み取った検鏡条件に基づく照明強度に光源10の照明強度を変化する制御を行うとともに、変化後の現照明強度における可変抵抗器の抵抗値を検出する。制御部6は、光量制御部10aが検出した抵抗値をもとに、光源10がこの読み取った検鏡条件に基づく照明強度の照明光を出力できたか否かを確認する。制御部6は、光源10がこの読み取った検鏡条件に基づく照明強度の照明光を出力できた旨を確認した場合、光量制御部10aに関する検鏡条件設定処理を完了する。その後、制御部6は、この光源10の照明強度を記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件の一部として管理する。
【0048】
さらに、制御部6は、この読み取った検鏡条件に基づく状態(たとえばフィルタ12が光源10からの照明光に対して有効な状態)にフィルタ12を切り替えるように、駆動部12aを駆動制御する。駆動部12aは、制御部6の制御のもと、この読み取った検鏡条件に基づく状態(たとえば上述した照明光に対して有効な状態)にフィルタ12を切り替えるとともに、切り替え後のフィルタ12の切替状態(たとえば上述した照明光に対して有効な状態)を検出する。制御部6は、駆動部12aが検出したフィルタ12の切替状態をもとに、フィルタ12がこの読み取った検鏡条件に基づく状態(たとえば上述した照明光に対して有効な状態)に切り替わったか否かを確認する。制御部6は、フィルタ12がこの読み取った検鏡条件に基づく状態(たとえば上述した照明光に対して有効な状態)に切り替わった旨を確認した場合、駆動部12aに関する検鏡条件設定処理を完了する。その後、制御部6は、このフィルタ12の切替状態を記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件の一部として管理する。
【0049】
また、制御部6は、この読み取った検鏡条件に基づく視野絞りになるように、駆動部13aを駆動制御する。駆動部13aは、制御部6の制御のもと、視野絞り部13の視野絞りを上述した基準状態からこの読み取った検鏡条件に基づく視野絞りに変化するとともに、変化後の現視野絞りを検出する。制御部6は、駆動部13aが検出した現視野絞りをもとに、視野絞り部13がこの読み取った検鏡条件に基づく視野絞りに変化したか否かを確認する。制御部6は、視野絞り部13がこの読み取った検鏡条件に基づく視野絞りに変化した旨を確認した場合、駆動部13aに関する検鏡条件設定処理を完了する。その後、制御部6は、この視野絞り部13の視野絞りを記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件の一部として管理する。
【0050】
さらに、制御部6は、この読み取った検鏡条件に基づく開口絞りになるように、駆動部15aを駆動制御する。駆動部15aは、制御部6の制御のもと、開口絞り部15の開口絞りを上述した基準状態からこの読み取った検鏡条件に基づく開口絞りに変化するとともに、変化後の現開口絞りを検出する。制御部6は、駆動部13aが検出した現開口絞りをもとに、開口絞り部15がこの読み取った検鏡条件に基づく開口絞りに変化したか否かを確認する。制御部6は、開口絞り部15がこの読み取った検鏡条件に基づく開口絞りに変化した旨を確認した場合、駆動部15aに関する検鏡条件設定処理を完了する。その後、制御部6は、この開口絞り部15の開口絞りを記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件の一部として管理する。
【0051】
また、制御部6は、この読み取った検鏡条件に基づき、駆動部16aを駆動制御する。駆動部16aは、制御部6の制御のもと、コンデンサレンズ16を上述した原点位置からこの読み取った検鏡条件に基づく位置に移動するとともに、移動後のコンデンサレンズ16の現在位置を検出する。制御部6は、駆動部16aが検出したコンデンサレンズ16の現在位置をもとに、コンデンサレンズ16がこの読み取った検鏡条件に基づく位置に移動したか否かを確認する。制御部6は、コンデンサレンズ16がこの読み取った検鏡条件に基づく位置に移動した旨を確認した場合、駆動部16aに関する検鏡条件設定処理を完了する。その後、制御部6は、このコンデンサレンズ16の現在位置を記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件の一部として管理する。
【0052】
さらに、制御部6は、この読み取った検鏡条件の使用対物レンズの倍率に基づき、駆動部17aを駆動制御する。なお、レボルバ17は、互いに異なる倍率を有する複数の対物レンズたとえば図1に示す対物レンズ18a,18bが着脱可能に設けられる。この場合、対物レンズ18a,18bは、レボルバ17の回転位置について固定された位置に設けられる。したがって、制御部6は、レボルバ17の回転位置をもとに対物レンズを確認でき、駆動部17aの駆動制御を行って、レボルバ17に設けられた所望数の対物レンズたとえば対物レンズ18a,18bから、この読み取った検鏡条件の使用対物レンズの倍率に対応する対物レンズを選択できる。駆動部17aは、制御部6の制御のもと、レボルバ17を上述した回転駆動の原点位置からこの読み取った検鏡条件に基づく回転位置に回転駆動するとともに、回転駆動後のレボルバ17の現回転位置を検出する。制御部6は、駆動部17aが検出したレボルバ17の現回転位置をもとに、選択された対物レンズ18a,18bがこの読み取った検鏡条件の使用対物レンズの倍率に対応するか否かを確認する。制御部6は、選択された対物レンズ18a,18bがこの読み取った検鏡条件の使用対物レンズの倍率に対応する旨を確認した場合、駆動部17aに関する検鏡条件設定処理を完了する。その後、制御部6は、このレボルバ17の現回転位置を選択された対物レンズを示す回転位置として記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件の一部として管理する。
【0053】
また、制御部6は、この読み取った検鏡条件に基づく状態(たとえば上述した照明光を接眼レンズ19に到達させる状態)にビームスプリッタ20を切り替えるように、駆動部20aを駆動制御する。駆動部20aは、制御部6の制御のもと、上述した基準状態からこの読み取った検鏡条件に基づく状態(たとえば上述した照明光を接眼レンズ19に到達させる状態)にビームスプリッタ20を切り替えるとともに、切り替え後のビームスプリッタ20の切替状態(たとえば上述した照明光を接眼レンズ19に到達させる状態)を検出する。制御部6は、駆動部20aが検出したビームスプリッタ20の切替状態をもとに、ビームスプリッタ20がこの読み取った検鏡条件に基づく状態(たとえば上述した照明光を接眼レンズ19に到達させる状態)に切り替わったか否かを確認する。制御部6は、ビームスプリッタ20がこの読み取った検鏡条件に基づく状態(たとえば上述した照明光を接眼レンズ19に到達させる状態)に切り替わった旨を確認した場合、駆動部20aに関する検鏡条件設定処理を完了する。その後、制御部6は、このビームスプリッタ20の切替状態を記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件の一部として管理する。
【0054】
一方、操作者が入力部4を用いて上述した読取指示情報の入力操作を行わなければ、制御部6は、読取指示情報を検知せず(ステップS101,No)、このステップS101以降の処理手順を繰り返す。すなわち、制御部6は、入力部4から読取指示情報が入力されたか否かを常時監視する。
【0055】
ここで、制御部6が上述したステップS101〜S105の処理手順を行うことによって、光学顕微鏡1は、プレパラート100の標本を観察可能な検鏡条件に自動設定される。この場合、光源10は、光量制御部10aの駆動に基づく照明強度の照明光を出力する。この照明光の光路Lは、図1の破線によって示される。すなわち、この照明光は、光源10から出力された後、コレクタレンズ11によって集光される。つぎに、この照明光は、駆動部12aの駆動に応じ、フィルタ12を通過する。フィルタ12は、通過する照明光の色バランスまたは光量を調整する。その後、この照明光は、駆動部13aの駆動に基づく視野絞りに設定された視野絞り部13を通過し、ミラー14によって載置台2に向かう方向すなわち図1に示すz軸方向に偏向される。
【0056】
ミラー14によってz軸方向に偏向された照明光は、駆動部15aの駆動に基づく開口絞りに設定された開口絞り部15を通過する。開口絞り部15は、通過する照明光の開口数を決定する。つぎに、開口絞り部15を通過した照明光は、駆動部16aの駆動に基づく位置に配置されたコンデンサレンズ16を通過し、その後、アンテナ8のループ内と載置台2の開口部(図示せず)とを通過し、載置台2上に載置されたプレパラート100の標本を照明する。
【0057】
プレパラート100の標本を照明した照明光は、駆動部17aの駆動に基づき選択された対物レンズ(たとえば対物レンズ18a)に入射し、その後、駆動部20aの駆動に応じ、ビームスプリッタ20によって接眼レンズ19に向かう方向に偏向される。これによって、この照明光は、接眼レンズ19に到達する。この場合、対物レンズに入射した照明光は、この対物レンズの射出瞳を通過し、光路Lの後方にプレパラート100の標本の中間像を形成する。操作者は、接眼レンズ19を覗くことによって、この対物レンズ(たとえば対物レンズ18a)と接眼レンズ19とによって決定する倍率によるこの中間像の拡大虚像を観察することができ、これによって、この標本に対する検査作業を行うことができる。
【0058】
なお、光学顕微鏡1は、載置台2またはレボルバ17が設けられた鏡筒部を図1のz軸方向に駆動することによって、載置台2と対物レンズ18a,18bとの相対距離を調整できるように構成されている。したがって、操作者は、光学顕微鏡1の操作つまみ等(図示せず)を操作し、載置台2と対物レンズ18a,18bとの相対距離を調整することによって、プレパラート100の標本に対する焦点調整を行う。
【0059】
図3は、上述した原点復帰処理によって原点に復帰した載置台2およびクレンメル3を模式的に例示する模式図である。図3に示すように、載置台2は、そのy軸に平行な辺部に駆動部2aのリニアエンコーダ2bが設けられる。リニアエンコーダ2bは、上述したように、載置台2のy軸方向の現座標位置を検出する。たとえば、リニアエンコーダ2bは、図3に示す載置台2の基準端部をy軸方向の移動原点として検出する。制御部6は、上述した原点復帰処理において、駆動部2aを駆動制御することによって、図3に示すように載置台2の基準端部をy軸方向の原点に移動する。これによって、制御部6は、載置台2を原点に復帰させる。
【0060】
一方、クレンメル3は、上述したように載置台2上に設けられ、図3に示すように、そのx軸に平行な辺部に駆動部3aのリニアエンコーダ3bが設けられる。リニアエンコーダ3bは、上述したように、クレンメル3のx軸方向の現座標位置を検出する。たとえば、リニアエンコーダ3bは、図3に示すクレンメル3の基準端部をx軸方向の移動原点として検出する。制御部6は、上述した原点復帰処理において、駆動部3aを駆動制御することによって、図3に示すようにクレンメル3の基準端部をx軸方向の原点に移動する。これによって、制御部6は、クレンメル3を原点に復帰させる。
【0061】
また、クレンメル3は、図3に示すように、載置台2上にてプレパラート100を把持するアーム3c,3dを有する。アーム3cは、操作者によって回転自在であり、プレパラート100をアーム3d側に押し当てる。アーム3dは、内側のコーナー部にプレパラート100の角に応じた開口部3eが設けられ、アーム3cによって押し当てられたプレパラート100の一角を開口部3eに収めるとともに、プレパラート100の一辺が押し当てられる。すなわち、操作者は、プレパラート100の一角を開口部3eに合わせるとともにプレパラート100の二辺をクレンメル3本体とアーム3dとにそれぞれ当接し、さらに、アーム3cを用いてプレパラート100をアーム3d側に押し付けることによって、プレパラート100をクレンメル3に把持させる。この場合、プレパラート100の標本102は、クレンメル3に対して固定される。
【0062】
図4は、上述した検鏡条件設定処理によってプレパラート100の標本を検鏡領域に移動させた載置台2およびクレンメル3を模式的に例示する模式図である。なお、この検鏡領域Mは、載置台2とクレンメル3との移動可能範囲であるxy平面上において、上述した照明光が通過する領域(すなわち光路L上の領域)である。制御部6は、上述した検鏡条件設定処理において、駆動部2aを駆動制御し、上述した観察位置座標に基づく座標位置たとえばy軸方向に原点から距離y1の座標位置に載置台2を移動させる。この場合、載置台2は、図4に示すように、その基準端部が原点から距離y1の座標位置になるようにy軸方向に移動する。これと同時に、制御部6は、上述した検鏡条件設定処理において、駆動部3aを駆動制御し、上述した観察位置座標に基づく座標位置たとえばx軸方向に原点から距離x1の座標位置にクレンメル3を移動させる。この場合、クレンメル3は、図4に示すように、その基準端部が原点から距離x1の座標位置になるようにx軸方向に移動する。ここで、載置台2上にてクレンメル3に把持されたプレパラート100は、上述したように、クレンメル3に対して固定されるので、プレパラート100は、載置台2およびクレンメル3とともにxy平面上を移動する。したがって、制御部6は、このように駆動部2a,3aを駆動制御することによって、標本102が検鏡領域Mに位置するようにプレパラート100を移動できる。
【0063】
一方、操作者は、入力部4を用い、光学顕微鏡1の各駆動部を駆動指示する指示情報の入力操作を行うことによって、光学顕微鏡1の対象となる駆動部を駆動させることができ、光学顕微鏡1の検鏡条件をマニュアル設定できる。たとえば、操作者が載置台2またはクレンメル3を移動指示する指示情報の入力操作を行えば、制御部6は、この指示情報に基づき、駆動部2aまたは駆動部3aを駆動制御し、載置台2またはクレンメル3を移動させる。また、操作者が光源10の照明強度を変更指示する指示情報の入力操作を行えば、制御部6は、この指示情報に基づき、光量制御部10aを駆動制御し、光源10の照明強度を設定する。あるいは、操作者が対物レンズを切替指示する指示情報等の入力操作を行えば、制御部6は、この指示情報に基づき、駆動部17aを駆動制御し、レボルバ17の回転位置を変えることによって対物レンズ18a,18bを選択する。
【0064】
すなわち、制御部6が上述した検鏡条件設定処理を行って光学顕微鏡1の検鏡条件を設定した状態において、操作者が、入力部4を用い、光学顕微鏡1の検鏡条件を変更する条件変更情報として上述した各駆動部を駆動指示する指示情報の入力操作を行えば、制御部6は、入力された条件変更情報に基づき、光学顕微鏡1の対象となる駆動部の駆動制御を行い、光学顕微鏡1の検鏡条件を変更する。図5は、光学顕微鏡1の検鏡条件を変更してからRFIDタグ101の検鏡条件を変更後の検鏡条件に更新するまでの処理手順を例示するフローチャートである。
【0065】
図5において、操作者が、入力部4を用いて上述した条件変更情報の入力操作を行った場合、制御部6は、入力部4から入力された条件変更情報を検知し(ステップS201,Yes)、この条件変更情報に基づき、光学顕微鏡1の対象となる駆動部の駆動制御を行い、光学顕微鏡1の検鏡条件を変更する処理(検鏡条件変更処理)を行う(ステップS202)。この場合、制御部6は、上述した検鏡条件設定処理による光学顕微鏡1の検鏡条件をこの条件変更情報に基づく検鏡条件に変更するとともに、この駆動制御の対象である駆動部から変更後の検鏡条件を検出し、検出した変更後の検鏡条件を記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件として管理する。
【0066】
たとえば、制御部6は、上述した条件変更情報として載置台2またはクレンメル3の座標位置を変更する情報を検知した場合、この条件変更情報に基づき、駆動部2aまたは駆動部3aを駆動制御して載置台2またはクレンメル3の座標位置を変更するとともに、変更後の載置台2またはクレンメル3の座標位置を記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件として管理する。
【0067】
なお、制御部6は、ステップS202において、入力部4から入力された条件変更情報または変更後の検鏡条件を表示部9に表示出力させてもよい。この場合、表示部9は、制御部6の制御のもと、制御部6から受信した条件変更情報または変更後の検鏡条件を表示出力する。操作者は、この表示部6の表示内容を視認することによって、変更中の検鏡条件たとえば移動中の載置台2またはクレンメル3の座標位置等と変更後の検鏡条件たとえば移動後の載置台2またはクレンメル3の座標位置等とを容易に確認できる。
【0068】
なお、操作者が入力部4を用いて上述した条件変更情報の入力操作を行わなければ、制御部6は、条件変更情報を検知せず(ステップS201,No)、このステップS201以降の処理手順を繰り返す。すなわち、制御部6は、入力部4から条件変更情報が入力されたか否かを常時監視する。
【0069】
その後、操作者が、入力部4を用いて上述した条件変更情報の入力操作を行った場合、制御部6は、入力部4から入力された条件変更情報を検知し(ステップS203,Yes)、上述したステップS202以降の処理手順を繰り返す。この場合、制御部6は、たとえば上述した条件変更情報として光源10の照明強度を変更する情報を検知すれば、この条件変更情報に基づき、光量制御部10aを駆動制御して光源10の照明強度を変更するとともに、変更後の照明強度を記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件として管理する。また、制御部6は、上述した条件変更情報として使用対物レンズを変更する情報を検知すれば、この条件変更情報に基づき、駆動部17aを駆動制御してレボルバ17の回転位置すなわち対物レンズ18a,18bを選択的に切り替えるとともに、変更後の回転位置すなわち選択された対物レンズを記憶部5に記憶するとともに現在の検鏡条件として管理する。したがって、制御部6は、上述した条件変更情報を検知する毎にステップS202の検鏡条件変更処理を行い、光学顕微鏡1の検鏡条件を順次変更するとともに管理する。
【0070】
一方、操作者が、入力部4を用い、上述した条件変更情報の入力操作を行わずに上述した更新指示情報の入力操作を行った場合、制御部6は、条件変更情報を検知せずに(ステップS203,No)、入力部4から入力された更新指示情報を検知し(ステップS204,Yes)、この更新指示情報に基づき、変更後の検鏡条件をRFIDタグ101に書き込む情報書込処理を行う(ステップS205)。この場合、制御部6は、変更後の検鏡条件を示す電気信号をRFID処理部7に送信するとともに、RFID処理部7を制御し、この変更後の検鏡条件をRFIDタグ101に書き込ませる。RFID処理部7は、制御部6の制御のもと、アンテナ8とRFIDタグ101との間にて所定の電波を送受信させ、これによって、RFIDタグ101を活性化するとともに、この所定の電波を介してこの変更後の検鏡条件をRFIDタグ101に書き込む。ここで、RFIDタグ101は、プレパラート100の標本に関する検鏡条件を予め有するので、受信した変更後の検鏡条件をこの予め有する検鏡条件に上書きし、これによって、この予め有する検鏡条件をこの変更後の検鏡条件に更新する。操作者は、このRFIDタグ101が設けられたプレパラート100を用いることによって、このRFIDタグ101に上書きした検鏡条件とプレパラート100の標本とを関連付けて管理できる。
【0071】
他方、制御部6がステップS202の検鏡条件変更処理を行った後、操作者が上述した条件変更情報の入力操作と更新指示情報の入力操作とをともに行わなければ、制御部6は、条件変更情報を検知せず(ステップS203,No)、かつ更新指示情報を検知せず(ステップS204,No)、上述したステップS203以降の処理手順を繰り返す。
【0072】
なお、RFIDタグ101がプレパラート100の標本に関する検鏡条件を予め有していない場合、制御部6は、上述したステップS201〜S205の処理手順を行うことによって、操作者が入力部4を用いてマニュアル設定した検鏡条件をRFIDタグ101に新規に書き込むことができる。この場合、操作者は、このRFIDタグ101が設けられたプレパラート100を用いることによって、このRFIDタグ101に新規に書き込んだ検鏡条件とプレパラート100の標本とを関連付けて管理できる。
【0073】
一方、操作者は、入力部4を用い、プレパラート100の標本に関する標本情報の入力操作を行うことによって、RFIDタグ101にこの標本情報を書き込むことができる。図6は、プレパラート100の標本に関する標本情報をRFIDタグ101に書き込むまでの処理手順を例示するフローチャートである。
【0074】
図6において、操作者が、入力部4を用い、プレパラート100の標本に関する標本情報の入力操作を行った場合、制御部6は、入力部4から入力された標本情報を検知し(ステップS301,Yes)、この検知した標本情報を記憶部5に記憶するとともに処理対象の標本情報として管理する(ステップS302)。これと同時に、制御部6は、この検知した標本情報を表示部9に表示出力させる。この場合、表示部9は、制御部6の制御のもと、制御部6から受信した標本情報を表示出力する。操作者は、この表示部6の表示内容を視認することによって、入力した標本情報を容易に確認できる。
【0075】
たとえば、制御部6は、この標本情報として標本名称、標本管理者名、標本管理番号、生体組織名称、染色方法、患者番号、患者性別、患者年齢、試料採取日、標本作成日、または標本作成者名を検知した場合、この検知した標本情報を記憶部5に記憶するとともに処理対象の標本情報として管理する。これと同時に、制御部6は、この検知した標本情報たとえば標本名称、標本管理者名、標本管理番号、生体組織名称、染色方法、患者番号、患者性別、患者年齢、試料採取日、標本作成日、または標本作成者名を表示部9に表示出力させる。
【0076】
なお、操作者が入力部4を用いてこの標本情報の入力操作を行わなければ、制御部6は、標本情報を検知せず(ステップS301,No)、このステップS301以降の処理手順を繰り返す。すなわち、制御部6は、入力部4から標本情報が入力されたか否かを常時監視する。
【0077】
その後、操作者が、入力部4を用いて標本情報の入力操作を行った場合、制御部6は、入力部4から入力された標本情報を検知し(ステップS303,Yes)、上述したステップS302以降の処理手順を繰り返す。この場合、制御部6は、入力部4から順次入力された標本情報を記憶部5に順次記憶するとともに処理対象の標本情報として管理する。これと同時に、制御部6は、順次入力された標本情報を表示部9に順次表示出力させる。すなわち、制御部6は、入力部4から入力された標本情報を検知する毎に、検知した標本情報を記憶部5に記憶するとともに処理対象の標本情報として管理し、これと同時に、この検知した標本情報を表示部9に表示出力させる。
【0078】
一方、操作者が、入力部4を用い、標本情報の入力操作を行わずに、処理対象の標本情報をRFIDタグ101に書込指示する書込指示情報の入力操作を行った場合、制御部6は、標本情報を検知せずに(ステップS303,No)、入力部4から入力された書込指示情報を検知し(ステップS304,Yes)、この書込指示情報に基づき、処理対象の標本情報をRFIDタグ101に書き込む情報書込処理を行う(ステップS305)。この場合、制御部6は、処理対象の標本情報を示す電気信号をRFID処理部7に送信するとともに、RFID処理部7を制御し、この処理対象の標本情報をRFIDタグ101に書き込ませる。RFID処理部7は、制御部6の制御のもと、アンテナ8とRFIDタグ101との間にて所定の電波を送受信させ、これによって、RFIDタグ101を活性化するとともに、この所定の電波を介してこの処理対象の標本情報をRFIDタグ101に書き込む。RFIDタグ101は、この処理対象の標本情報を新規に記憶できる。操作者は、このRFIDタグ101が設けられたプレパラート100を用いることによって、このRFIDタグ101に記憶した標本情報とプレパラート100の標本とを関連付けて管理できる。
【0079】
他方、制御部6がステップS302の処理手順を行った後、操作者が標本情報の入力操作と書込指示情報の入力操作とをともに行わなければ、制御部6は、標本情報を検知せず(ステップS303,No)、かつ書込指示情報を検知せず(ステップS304,No)、上述したステップS303以降の処理手順を繰り返す。
【0080】
なお、RFIDタグ101がプレパラート100の標本に関する標本情報を予め有する場合、制御部6は、上述したステップS301〜S305の処理手順を行うことによって、この標本に関する標本情報をRFIDタグ101に上書きすることができる。
【0081】
また、操作者は、光学顕微鏡1を用いてプレパラート100の標本に対する検鏡操作を行い、その後、入力部4を用い、この検鏡操作によって得られた検査結果の入力操作を行うことができる。この場合、制御部6は、上述したステップS301〜S305とほぼ同様の処理手順を行うことによって、上述した標本情報に代えてこの検査結果をRFIDタグ101に書き込みことができる。操作者は、このRFIDタグ101が設けられたプレパラート100を用いることによって、このRFIDタグ101に記憶した検査結果とプレパラート100の標本とを関連付けて管理できる。なお、この検査結果は、たとえば検査実施者名(診断者名)、検査日(診断日)、診断名称、および診断所見等である。
【0082】
さらに、光学顕微鏡1は、載置台2に載置されたプレパラート100の標本の拡大像を所定の倍率にて撮影できるように構成される。すなわち、操作者は、入力部4を用い、光源10からの照明光を写真撮影用レンズ22に到達させる状態にビームスプリッタ20を切り替える条件変更情報を入力すれば、制御部6は、この条件変更情報に基づき駆動部20aを駆動制御し、この照明光を写真撮影用レンズ22に到達させる状態にビームスプリッタ20を切り替える。つぎに、操作者が入力部4を用いて撮影指示情報の入力操作を行えば、制御部6は、この撮影指示情報を検知するとともに、検知した撮影指示情報に基づき、写真撮影装置21に対し、プレパラート100の標本を撮影する撮影処理を行うように制御する。
【0083】
写真撮影装置21は、写真撮影用レンズ22を介して載置台2側から入力された光学情報を結像するレンズ等の光学素子と該光学素子によって結像された光学情報を光電変換するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOSメージセンサ等の受光素子とを用いて実現される。写真撮影装置21は、制御部6の制御のもと、プレパラート100の標本を所定の倍率(たとえば選択された対物レンズ18a,18bと写真撮影用レンズ22とによって決定する倍率)にて撮影する撮影処理を行うとともに、この撮影処理によって得られた画像情報を制御部6に送信する。制御部6は、写真撮影装置21から受信した画像情報を記憶部5に記憶するとともに、RFIDタグ101から読み取った標本情報と関連付けて管理する。この場合、制御部6は、取得した画像情報を表示部9に送信することによって、この画像情報に基づく標本の拡大像を表示部9に表示出力させてもよい。
【0084】
また、写真撮影装置21は、操作者によって着脱自在に記憶メディア21aを挿入でき、制御部6から入力された画像情報および標本情報等の各種情報を記憶メディア21aに書き込む機能を有する。したがって、操作者が、入力部4を用い、この画像情報と標本情報とを記憶メディア21aに書込指示する指示情報の入力操作を行えば、制御部6は、この指示情報を検知するとともに、検知した指示情報に基づき、この画像情報と標本情報とを記憶メディア21aに書き込むように写真撮影装置21を制御する。操作者は、この画像情報と標本情報とが書き込まれた記憶メディア21aを用いることによって、標本の画像情報と標本情報とを関連付けて管理できる。
【0085】
なお、写真撮影装置21は、上述した標本の撮影処理を行った場合、操作者によって入力される指示情報によらず、この撮影処理によって得られた画像情報を自動的に記憶メディア21aに書き込むようにしてもよい。このように構成することによって、操作者は、画像情報を記憶メディア21aに書込指示する指示情報の入力操作を省略でき、操作効率を高めることができる。
【0086】
図7は、プレパラート群の各標本に関する各種情報を管理するホストコンピュータのシステム構成を模式的に例示する模式図である。図8は、プレパラート群の各標本に関する各種情報を管理するホストコンピュータの別のシステム構成を模式的に例示する模式図である。図7に示すように、このホストコンピュータ40は、コンピュータ本体と表示装置と入力装置とを備えた周知のコンピュータを用いて実現され、RFIDリーダライタ制御部41が電気的に接続される。RFIDリーダライタ制御部41は、さらにRFIDアンテナユニット42が電気的に接続される。また、プレパラート群44は、上述したプレパラート100とほぼ同様に、標本を保持しかつRFIDタグが設けられたプレパラートを複数含む。プレパラート保管箱43は、図7に示すように、プレパラート群44を収納し、その後、RFIDアンテナユニット42上に置かれる。
【0087】
RFIDリーダライタ制御部41は、上述したRFID処理部7とほぼ同様の機能を有する。RFIDリーダライタ制御部41は、ホストコンピュータ40の制御のもと、RFIDアンテナユニット42とプレパラート群44の各RFIDタグとの間にて所定の電波を送受信させる。この場合、RFIDリーダライタ制御部41は、この所定の電波を介して、これらの各RFIDタグに記憶された標本に関する各種情報を一括して読み取るとともに、読み取った各種情報をホストコンピュータ40に送信する。これによって、ホストコンピュータ40は、プレパラート群44の各RFIDタグに記憶された標本に関する各種情報を一括して取得できるとともに、これらの標本に関する各種情報たとえば上述した標本情報、検鏡条件、および検査結果等を保持管理できる。操作者は、このホストコンピュータ40に保持管理された各種情報を用いることによって、プレパラート群44の標本毎にこの標本に関する各種情報を管理できる。
【0088】
また、プレパラート群44のRFIDタグ毎にID番号等を割り当てれば、RFIDリーダライタ制御部41は、RFIDタグ毎に標本に関する各種情報を読み取るとともに、読み取った各種情報をホストコンピュータ40に送信できる。これによって、ホストコンピュータ40は、プレパラート群44のRFIDタグ毎に、標本に関する各種情報を保持管理できる。この場合、操作者は、このホストコンピュータ40にRFIDタグ毎に保持管理された各種情報を用いることによって、プレパラート群44の標本毎にこの標本に関する各種情報を容易に管理できる。
【0089】
一方、ホストコンピュータ40は、標本に関する各種情報をRFIDリーダライタ制御部41に送信するとともに、送信した各種情報をプレパラート群44の各RFIDタグに一括して書き込むことができる。この場合、RFIDリーダライタ制御部41は、ホストコンピュータ40の制御のもと、上述した所定の電波を介して、プレパラート群44の各RFIDタグに標本に関する各種情報を一括して書き込む。この場合、操作者は、標本に関する各種情報を有するRFIDタグが設けられたプレパラート群44を容易に準備できる。
【0090】
また、プレパラート群44のRFIDタグ毎にID番号等を割り当てれば、RFIDリーダライタ制御部41は、ホストコンピュータ40の制御のもと、RFIDタグ毎に標本に関する各種情報をそれぞれ書き込むことができる。これによって、ホストコンピュータ40は、プレパラート群44のRFIDタグ毎に、標本に関する各種情報を書き込むことができる。この場合、操作者は、検査対象の標本に関する各種情報が各RFIDタグにそれぞれ記憶されたプレパラート群44を容易かつ確実に準備できる。
【0091】
なお、上述したアンテナ8は載置台2に着脱可能に設けられるので、RFIDアンテナユニット42は、このアンテナ8を用いて実現することができる。また、ホストコンピュータ40は、図8に示すように、RFIDリーダライタ制御部41およびRFIDアンテナユニット42に代えてRFIDリーダライタ45を有してもよい。RFIDリーダライタ45は、所定の電波を介し、RFIDタグから情報を読み取る機能とRFIDタグに情報を書き込む機能とを有する。すなわち、RFIDリーダライタ45は、ホストコンピュータ40の制御のもと、上述したRFIDリーダライタ制御部41およびRFIDアンテナユニット42を用いた場合と同様の作用効果を享受できる。
【0092】
つぎに、プレパラート100の構成について詳細に説明する。図9は、RFIDタグ101が設けられたプレパラート100の主要構成部分を模式的に例示する分解模式図である。図9に示すように、プレパラート100は、検査対象物である標本が付されたスライドガラス103と、RFIDタグ101が設けられた樹脂カバー104とを有する。スライドガラス103は、段差加工によって短辺部分の一端にエッジ103aが形成される。エッジ103aは、その厚さがスライドガラス103の厚さよりも小さく、図9に示すように、その両面がスライドガラス103の面に対してそれぞれ低くなっている。
【0093】
樹脂カバー104は、ゴムまたはプラスチック等の樹脂材を用いて実現され、上述したように、RFIDタグ101が設けられる。たとえば、樹脂カバー10は、インサート成形等の加工方法によって、RFIDタグ101が内蔵される。また、樹脂カバー104は、図9に示すように、エッジ103aの厚さ以下の隙間を有する凹部が形成される。したがって、樹脂カバー104は、エッジ103aに着脱可能に外嵌できる。これによって、プレパラート100は、RFIDタグ101を着脱可能に有することができる。この場合、操作者は、標本が付されたスライドガラスとRFIDタグが設けられた樹脂カバーとを自由に組み合わせることができるので、RFIDタグが設けられた樹脂カバーを一つのスライドガラスについて交換できるとともに、標本が付されたスライドガラスを一つのRFIDタグについて交換できる。これによって、操作者は、スライドガラス上の標本を無駄にすることなく、故障等によって不要となったRFIDタグを容易に交換でき、かつ、一つのRFIDタグを他のスライドガラスに容易に再利用できる。このことは、経済的に有用である。
【0094】
図10は、スライドガラス103に樹脂カバー104が取り付けられたプレパラート100の主要構成部分の縦断面を模式的に例示する縦断面模式図である。図10に示すように、樹脂カバー104は、エッジ103aに外嵌した場合、スライドガラス103の面に対して突き出ず、スライドガラス103とほぼ同一表面を形成する。すなわち、プレパラート100は、検査対象物である標本を保持するとともに、樹脂カバー104が表側および裏側についてスライドガラス103の面から突き出ないように、RFIDタグ101を交換可能に保持する。このように構成されたプレパラート100は、表側または裏側のいずれに標本が付されてもよいので、その取り扱い性が高まるとともに、操作者が検鏡操作を行う上でプレパラート100または光学顕微鏡1の破損を防止できる。
【0095】
図11は、プレパラート100の変形例の主要断面構造を模式的に例示する縦断面模式図である。図11に示すように、このプレパラート100の変形例であるプレパラート110は、開口部113bが形成されたエッジ113aを有するスライドガラス113と、RFIDタグ101が内蔵され、開口部113bに着脱可能に嵌合できる突起部114が形成された凹部を有する樹脂カバー114とを備える。樹脂カバー114は、その凹部をエッジ113aに外嵌するとともに、開口部113bに突起部114aを嵌合することによって、スライドガラス113に着脱可能に取り付けられる。この場合、樹脂カバー114は、上述したプレパラート100と同様に、スライドガラス113の面に対して突き出ず、スライドガラス113とほぼ同一表面を形成する。したがって、このように構成されたプレパラート110は、上述したプレパラート100の作用効果を享受できるとともに、スライドガラス113からのRFIDタグ101の脱落を確実に防止できる。
【0096】
なお、この発明の実施の形態1では、アンテナ8を載置台2の裏側に設けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、載置台2の表側すなわちクレンメル3が存在する側にアンテナ8が設けられてもよい。この場合、アンテナ8は、載置台2の表面から突き出ないように設けられる。これによって、アンテナ8は、クレンメル3の駆動を阻害しないように、載置台2に設けられる。また、アンテナ8は、載置台2の内部に設けられてもよい。あるいは、載置台2に載置されたプレパラートのRFIDタグとの間にて所定の電波を送受信可能な位置であれば、載置台2に限らず、光学顕微鏡1の所望箇所に設けてもよい。
【0097】
また、この発明の実施の形態1では、入力部4から入力された読取指示情報に基づき、RFIDタグ101から各種情報を読み取っていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、アーム3cがスタートスイッチとしての機能を兼ね備えるようにし、アーム3cがプレパラート100をクレンメル3本体およびアーム3dに押し当てる位置に切り替えられた場合に、アーム3cが上述した情報読取処理を行うトリガーとなる電気信号を制御部6に送信するようにしてもよい。
【0098】
さらに、この発明の実施の形態1では、入力部4から入力された読取指示情報に基づき、RFIDタグ101から各種情報を読み取っていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、操作者が電源スイッチをオン状態に切り替えることによって、電源が投入されたことをトリガーとして、RFIDタグ101から各種情報を読み取るとともに、読み取った各種情報をもとに検鏡条件を自動的に設定するようにしてもよい。また、操作者が、入力部4を用い、この検鏡条件の自動設定を実行する動作モードまたは禁止する動作モードを選択できるようにしてもよい。
【0099】
また、この発明の実施の形態1では、リニアエンコーダを用いて載置台2またはクレンメル3の座標位置を検出していたが、この発明はこれに限定されるものではなく、xy平面の原点検出をフォトインタラプタまたはフォトリフレクタを用いて行い、かつ光路Lの中心軸からの相対位置に換算するデータを各顕微鏡の記憶部に記憶させ、このデータをもとに、プレパラートを載置する載置台とプレパラートを把持するクレンメルとをステップモータで駆動して座標位置を調整してもよい。このように、原点位置と光軸との相対位置データを各顕微鏡毎に記憶させておけば、異なる機種の顕微鏡を用いた場合であっても検鏡位置の再現が可能となる。
【0100】
さらに、この発明の実施の形態1では、RFIDタグ101から標本に関する各種情報を読み取っていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、標本に関する各種情報を保持管理する外部のホストコンピュータまたはストレージ装置を用い、RFIDタグ101から特定のIDコードを読み取るとともに、このIDコードと対応付けられた標本に関する各種情報をこの外部のホストコンピュータまたはストレージ装置から読み取るようにしてもよい。これによって、RFIDタグ101の記録容量に制限されることなく、多くの情報を記録することができる。
【0101】
また、この発明の実施の形態1では、入力部4がケーブル4aを介して光学顕微鏡1本体の外部に設けられていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、入力部4は、光学顕微鏡1本体に一体的に設けられてもよい。
【0102】
さらに、この発明の実施の形態1では、照明光の色バランスまたは光量を調整するフィルタ12が設けられた場合を例示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、フィルタ15に代えて照明光を偏光する偏光素子が設けられてもよいし、この偏光素子とフィルタ15とがともに設けられてもよい。
【0103】
また、この発明の実施の形態1では、この発明にかかる検査システムの一例として、検査対象物である標本を撮影する写真撮影機能を備えた光学顕微鏡を示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、この写真撮影機能を備えていない光学顕微鏡であってもよいし、この写真撮影機能と各種情報の表示機能とを備えていない光学顕微鏡であってもよいし、この写真撮影機能に代えてフィルムに標本の像を撮影する写真撮影機能を備えた光学顕微鏡であってもよい。また、明視野観察が可能な顕微鏡であってもよいし、暗視野観察が可能な顕微鏡であってもよいし、位相差観察が可能な顕微鏡であってもよい。さらに、微分干渉法による標本観察が可能な顕微鏡であってもよいし、蛍光観察が可能な顕微鏡であってもよいし、偏光観察が可能な顕微鏡であってもよい。また、各種電子顕微鏡であってもよいし、X線を用いた標本観察が可能な各種X線検査システムであってもよい。
【0104】
さらに、この発明の実施の形態1では、RFIDタグ101から読み取った各種情報を表示出力する情報表示処理を行い、その後、各駆動部を原点に復帰させる原点復帰処理を行っていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、検鏡条件設定処理を行う前に原点復帰処理を行えばよく、たとえば読取指示情報を検知した後に原点復帰処理を行ってもよいし、情報読取処理を行った後に原点復帰処理を行ってもよい。あるいは、電源が投入された後に原点復帰処理を行ってもよい。
【0105】
また、この発明の実施の形態1では、検査対象物である標本の保持具の一例として、スライドガラスを用いたプレパラートを示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、シャーレであってもよい。
【0106】
さらに、この発明の実施の形態1では、スライドガラスの両面に段差があるエッジが形成され、RFIDタグが内蔵された樹脂カバーをこのエッジに外嵌していたが、この発明はこれに限定されるものではなく、スライドガラスの片面のみに段差があるエッジを形成し、RFIDタグが内蔵された樹脂カバーをこのエッジに外嵌してもよい。この場合、段差がない側のスライドガラス面を載置台に載置する側の面とする。また、スライドガラスの片面のみに段差があるエッジに開口部を形成し、RFIDタグが内蔵された樹脂カバーに突起部を形成し、この突起部をこの開口部に嵌合することによって、このスライドガラスにこの樹脂カバーを着脱可能に取り付けてもよい。
【0107】
また、この発明の実施の形態1では、RFIDタグが内蔵された樹脂カバーをスライドガラスに着脱可能に取り付けることによって、プレパラートにRFIDタグを交換可能に設けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、粘着テープを用いてRFIDタグをプレパラート等の保持具に着脱可能に貼り付けてもよいし、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリスチレン(OPS)、またはポリ塩化ビニル(PVC)等の熱収縮フィルムを用いてRFIDタグを保持具に着脱可能に貼り付けてもよい。この場合、保持具に取り付けたRFIDタグがこの保持具の面から突き出ていれば、RFIDタグが突き出た面の反対側の面を載置台に載置する面とする。なお、この熱収縮フィルムは、たとえば厚さ0.03mm〜数mm程度の環状またはシート状のフィルムであることが望ましい。
【0108】
さらに、この発明の実施の形態1では、RFIDタグが内蔵された樹脂カバーをスライドガラスに着脱可能に取り付けることによって、プレパラートにRFIDタグを交換可能に設けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、RFIDタグをプレパラート等の保持具に埋め込んでもよいし、接着剤を用いてRFIDタグを保持具に固定してもよいし、周知のポッティング樹脂を用いてRFIDタグを保持具に固定してもよい。この場合、保持具に取り付けたRFIDタグがこの保持具の面から突き出ていれば、RFIDタグが突き出た面の反対側の面を載置台に載置する面とする。
【0109】
以上、説明したように、この発明の実施の形態1では、検査対象物である標本を保持するプレパラートに設けられたRFIDタグから、所定の電波を介してこの標本に関する各種情報を読み取り、この読み取った各種情報をもとに、この標本を検鏡可能な検鏡条件を自動的に設定するように構成したので、この検鏡可能な検鏡条件たとえば標本の観察位置座標、使用対物レンズの倍率、および照明強度等を標本毎に容易に再現でき、操作者が複数のプレパラートから検査対象の標本を視覚的に区別しなくとも、標本毎に検鏡操作を容易かつ確実に行える顕微鏡を実現できる。かかる構成によれば、プレパラートまたはシャーレ等の各種保持具に保持された液体状または固体状の各種検査対象物毎に検鏡条件を容易に再現でき、操作者が複数の保持具から検査対象物を視覚的に区別しなくとも、検査対象物毎に検鏡操作を容易かつ確実に行える検査システムを実現できる。
【0110】
また、この顕微鏡に設けられた無線通信手段が行う無線通信の周波数帯に最適化されたRFIDタグを各プレパラートに設けるように構成したので、各プレパラートに保持された標本に関する多量の各種情報を標本毎に対応付けるとともに、所定の電波を介してこの標本に関する各種情報を容易に読み取りまたは書き込むことができ、上述した顕微鏡に好適な保持具を実現できる。かかる構成によれば、液体状または固体状の各種検査対象物を保持でき、上述した検鏡操作が可能な検査システムに好適な保持具を実現できる。
【0111】
さらに、この保持具にRFIDタグを着脱可能に設けることによって、一つの検査対象物についてRFIDタグを複数回交換できるとともに、一つのRFIDタグについて検査対象物を複数回交換できる。これによって、検査対象物を無駄にすることなく、故障等によって不要となったRFIDタグを容易に交換できるとともに、他の検査対象物に対して一つのRFIDタグを容易に再利用でき、経済的に有用である。
【0112】
また、このRFIDタグに消去不能な個別のIDコードを割り当てることによってまたはこのRFIDタグに記憶する各種情報を暗号化することによって、このRFIDタグに記憶した各種情報の読取権限を設定し管理することができ、これによって、このRFIDタグに記憶した各種情報が第三者(すなわち読取権限を持たない者)に漏れることを防止でき、この各種情報の守秘義務を容易に管理できる。この場合、たとえば病院において、患者から採取した生体組織等の標本に関する各種情報をRFIDタグのIDコードを用いて管理することによって、この標本が第三者に閲覧されても、この標本に関する各種情報が第三者に漏れない。すなわち、第三者は、この標本が採取された患者に関する名前または検査結果等の情報を知ることはできない。
【0113】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。上述した実施の形態1では、検査対象物である標本を保持するプレパラート100にRFIDタグ101が設けられ、このRFIDタグ101から読み取った標本に関する各種情報をもとに、この標本を検鏡可能な検鏡条件を自動的に設定していたが、この実施の形態2では、検査対象物を保持する筒状の保持具にRFIDタグが設けられ、このRFIDタグから読み取った検査対象物に関する各種情報をもとに、この検査対象物の検査条件を自動的に設定している。
【0114】
なお、この実施の形態2では、この発明にかかる保持具の一例として、検査対象物たとえば血液に関する各種情報を記憶するRFIDタグが設けられかつこの血液を保持する試験管を例示し、また、この発明にかかる検査システムの一例として、このRFIDタグから読み取った血液に関する各種情報をもとに、この血液の検査条件を自動的に設定できる血液検査システムを例示している。しかし、この発明は、このことによって限定されない。
【0115】
図12は、この発明の実施の形態2である血液検査システムの一構成例を模式的に例示するブロック図である。図12において、この血液検査システム200は、検査対象物である血液を内包する試験管を順次搬送する搬送装置201を有し、搬送装置201の入力端には、各血液をそれぞれ保持した複数の試験管を搬送装置201に順次搬入する搬入装置202が配置され、搬送装置201の出力端には、血液検査が行われた血液を保持する試験管を回収する回収装置203が配置される。搬送装置201は、分岐点Pによって分岐される二つの搬送経路A,Bを有する。すなわち、搬送装置201は、搬入装置202から搬入された試験管を搬送経路Aまたは搬送経路Bに沿って搬送する。
【0116】
搬送装置202上には、搬入装置202の後段に読取装置204が配置される。さらに、読取装置204の後段の搬送装置202上には、搬送経路Aに沿った試験管の搬送方向に順次、検査装置205と書込装置206とが配置され、搬送経路Bに沿った試験管の搬送方向に順次、検査装置207と書込装置208とが配置される。また、搬入装置202の近傍には、検査対象の各血液をそれぞれ保持する試験管の個数すなわち搬送装置201に搬送する試験管の個数を示す個数情報等が入力される入力装置211が配置される。制御装置209は、搬送装置201、搬入装置202、回収装置203、読取装置204、検査装置205,207、書込装置206,208、記憶装置210、入力装置211、および出力装置212と電気的に接続される。制御装置209は、血液検査システム200の各構成部たとえば搬送装置201、搬入装置202、回収装置203、読取装置204、検査装置205,207、書込装置206,208、記憶装置210、入力装置211、および出力装置212を制御する。
【0117】
入力装置211は、キーボード、タッチパネル、トラックボール、またはマウス等を単一または組み合わせて用いることによって実現される。入力装置211は、操作者による入力操作に応じ、上述した試験管の個数情報を制御装置209に入力する。また、入力装置211は、操作者による入力操作に応じ、検査実施日および検査管理者名等の上述した試験管のRFIDタグに書き込む所望の情報を制御装置209に入力する。さらに、入力装置211は、操作者による入力操作に応じ、情報出力等の所望の動作を制御装置209に指示する各種指示情報を制御装置209に入力する。
【0118】
搬入装置202は、上述したように、検査対象の各血液をそれぞれ保持した複数の試験管を搬送装置201に順次搬入する。この場合、搬入装置202は、搬送装置201に試験管を搬入する毎に、試験管の搬入を示す搬入情報を制御装置209に送信する。なお、搬入装置202は、搬送装置201に搬入した試験管の個数を計数するとともに、この試験管の計数値を上述した個数情報として制御装置209に順次自動入力してもよい。
【0119】
ここで、順次搬送される複数の試験管には、保持する血液に関する各種情報を記憶するRFIDタグがそれぞれ設けられる。この血液に関する各種情報として、血液が採取された患者の患者番号、患者性別、患者年齢、および血液採取日等を示す試料情報と、この血液に対して行うべき血液検査の検査条件とが例示される。以下、検査対象の血液を保持する試験管として試験管300を例示する。この試験管300には、上述したように、保持する血液に関する各種情報を記憶するRFIDタグ301が設けられる。
【0120】
搬送装置201は、上述したように、搬入装置202から搬入された複数の試験管を回収装置203に向かう搬送方向に順次搬送する。たとえば、試験管300が搬入装置202から搬送装置201に搬入された場合、搬送装置201は、この試験管300を先ず読取装置204に搬送する。この場合、試験管300は、搬送装置201によって読取装置204に搬入される。
【0121】
読取装置204は、搬入された試験管の有無を検出する周知の検出装置と周知のRFIDリーダまたはRFIDリーダライタとを用いて実現され、順次搬入された各試験管のRFIDタグから所定の電波を介して各種情報を順次読み取るように機能する。読取装置204は、たとえば試験管300が搬入された場合、搬入された試験管300を検出するとともに、試験管300が搬入された旨を示す電気信号を制御装置209に送信する。この場合、読取装置204は、制御装置209の制御のもと、所定の電波を介して、この試験管300のRFIDタグ301から血液に関する各種情報たとえば上述した試料情報および検査条件を読み取る。その後、読取装置204は、読み取った試料情報および検査条件を制御装置209に送信する。
【0122】
つぎに、搬送装置201は、制御装置209の制御のもと、読取装置204から送出された試験管を図12に示す搬送経路Aまたは搬送経路Bに沿って順次搬送する。たとえば、制御装置209が、搬送装置201に対し、搬送経路Aに沿って試験管300を搬送する駆動制御を行った場合、搬送装置201は、制御装置209の制御のもと、試験管300を搬送経路Aに沿って搬送する。この場合、読取装置204から送出された試験管300は、分岐点Pを通過し、検査装置205に搬入される。
【0123】
検査装置205は、搬入された試験管の有無を検出する機能と試験管内に保持された血液に対して上述した検査条件に基づく血液検査を行う機能とを有する。検査装置205は、たとえば試験管300が搬入された場合、搬入された試験管300を検出するとともに、試験管300が搬入された旨を示す電気信号を制御装置209に送信する。この場合、検査装置205は、制御装置209の制御のもと、この試験管300が保持する血液に対し、RFIDタグ301から読み取られた検査条件に基づく血液検査を行う。たとえば、検査装置205は、この血液検査として、試験管300内の血液に試薬Qを混合し、その後、この試薬Qが混合された血液の成分または透過率等を検査する。その後、検査装置205は、得られた血液検査結果を制御装置209に送信する。
【0124】
つぎに、搬送装置201は、検査装置205から送出された試験管を書込装置206に順次搬送する。たとえば、試験管300が検査装置205から送出された場合、搬送装置201は、制御装置209の制御のもと、この試験管300を書込装置206に搬送する。この場合、検査装置205から送出された試験管300は、搬送装置201によって書込装置206に搬入される。
【0125】
書込装置206は、搬入された試験管の有無を検出する周知の検出装置と周知のRFIDライタまたはRFIDリーダライタとを用いて実現され、順次搬入された各試験管のRFIDタグに所定の電波を介して各種情報を順次書き込むように機能する。書込装置206は、たとえば試験管300が搬入された場合、搬入された試験管300を検出するとともに、試験管300が搬入された旨を示す電気信号を制御装置209に送信する。この場合、書込装置206は、制御装置209の制御のもと、試験管300のRFIDタグ301に書き込む各種情報たとえば検査実施日、検査管理者名、および血液検査結果等を制御装置209から受信するとともに、所定の電波を介して、この受信した各種情報をRFIDタグ301に書き込む。
【0126】
その後、搬送装置201は、書込装置206から送出された試験管を回収装置203に順次搬送する。回収装置203は、制御装置209の制御のもと、搬送装置201によって順次搬入された試験管を順次回収する。たとえば、試験管300が書込装置206から送出された場合、搬送装置201は、制御装置209の制御のもと、この試験管300を回収装置203に搬送する。この場合、書込装置206から送出された試験管300は、搬送装置201によって回収装置203に搬入され、その後、回収装置203に回収される。
【0127】
一方、制御装置209が、搬送装置201に対し、搬送経路Bに沿って試験管300を搬送する駆動制御を行った場合、搬送装置201は、制御装置209の制御のもと、試験管300を搬送経路Bに沿って搬送する。この場合、読取装置204から送出された試験管300は、分岐点Pを通過し、検査装置207に搬入される。
【0128】
検査装置207は、搬入された試験管の有無を検出する機能と試験管内に保持された血液に対して上述した検査条件に基づきかつ上述した検査装置205と異なる血液検査を行う機能とを有する。検査装置207は、たとえば試験管300が搬入された場合、搬入された試験管300を検出するとともに、試験管300が搬入された旨を示す電気信号を制御装置209に送信する。この場合、検査装置207は、制御装置209の制御のもと、この試験管300が保持する血液に対し、RFIDタグ301から読み取られた検査条件に基づきかつ上述した検査装置205と異なる血液検査を行う。たとえば、検査装置207は、この異なる血液検査として、試験管300内の血液に上述した試薬Qと異なる試薬Rを混合し、その後、この試薬Rが混合された血液の成分または透過率等を検査する。その後、検査装置207は、得られた血液検査結果を制御装置209に送信する。
【0129】
つぎに、搬送装置201は、検査装置207から送出された試験管を書込装置208に順次搬送する。たとえば、試験管300が検査装置207から送出された場合、搬送装置201は、制御装置209の制御のもと、この試験管300を書込装置208に搬送する。この場合、検査装置207から送出された試験管300は、搬送装置201によって書込装置208に搬入される。
【0130】
書込装置208は、搬入された試験管の有無を検出する周知の検出装置と周知のRFIDライタまたはRFIDリーダライタとを用いて実現され、順次搬入された各試験管のRFIDタグに所定の電波を介して各種情報を順次書き込むように機能する。書込装置208は、たとえば試験管300が搬入された場合、搬入された試験管300を検出するとともに、試験管300が搬入された旨を示す電気信号を制御装置209に送信する。この場合、書込装置206は、制御装置209の制御のもと、試験管300のRFIDタグ301に書き込む各種情報たとえば検査実施日、検査管理者名、および血液検査結果等を制御装置209から受信するとともに、所定の電波を介して、この受信した各種情報をRFIDタグ301に書き込む。
【0131】
その後、搬送装置201は、書込装置208から送出された試験管を回収装置203に順次搬送する。回収装置203は、制御装置209の制御のもと、搬送装置201によって順次搬入された試験管を順次回収する。たとえば、試験管300が書込装置208から送出された場合、搬送装置201は、制御装置209の制御のもと、この試験管300を回収装置203に搬送する。この場合、書込装置208から送出された試験管300は、搬送装置201によって回収装置203に搬入され、その後、回収装置203に回収される。
【0132】
制御装置209は、RFID制御部209aおよびタイミング制御部209bを有し、上述したように、記憶装置210、入力装置211、および出力装置212と電気的に接続される。すなわち、制御装置209、記憶装置210、入力装置211、および出力装置212は、周知のコンピュータを用いて実現される。記憶装置210は、制御装置209の制御のもと、制御装置209から受信した各種情報を記憶する機能と、記憶した各種情報を制御装置209に送信する機能とを有する。制御装置209は、入力装置211から入力された各種情報たとえば個数情報、検査実施日、および検査管理者等を記憶装置210に記憶する。
【0133】
また、制御装置209は、読取装置204から受信した試料情報および検査条件を試験管の搬送順位に対応付けるとともに記憶装置210に記憶し、この記憶した試料情報および検査条件を順次搬送される試験管毎の情報としてそれぞれ管理する。さらに、制御装置209は、この搬送順位と対応付けた検査条件をもとに、順次搬送される試験管毎の搬送経路(たとえば搬送経路Aまたは搬送経路B)を決定し、この試験管毎に決定した搬送経路を記憶装置210に記憶するとともに、この記憶した搬送経路を順次搬送される試験管毎の情報として管理する。制御装置209は、この試験管毎に決定した搬送経路に基づき、順次搬送される各試験管を搬送経路Aまたは搬送経路Bに順次仕分け搬送するように搬送装置201を制御する。
【0134】
さらに、制御装置209は、検査装置205から試験管が搬入された旨を示す電気信号を受信した場合、この試験管に保持された血液に対して上述した血液検査を行いかつ得られた血液検査結果を制御装置209に送信するように、検査装置205を制御する。これと同様に、制御装置209は、検査装置207から試験管が搬入された旨を示す電気信号を受信した場合、この試験管に保持された血液に対して上述した血液検査を行いかつ得られた血液検査結果を制御装置209に送信するように、検査装置207を制御する。これによって、制御装置209は、順次搬送される試験管毎に、検査装置205,207から各血液検査結果をそれぞれ受信する。その後、制御装置209は、この受信した血液検査結果を試験管の搬送順位と試験管毎に決定した搬送経路とに対応付けるとともに記憶装置210に記憶し、この記憶した血液検査結果を順次搬送される試験管毎の情報として管理する。
【0135】
RFID制御部209aは、読取装置204に対し、搬入された試験管のRFIDタグから各種情報を読み取る無線通信制御とこの読み取った各種情報を制御装置209に送信する情報送信制御とを行う。すなわち、RFID制御部209aは、制御装置209が読取装置204から上述した試験管の搬入を示す電気信号を受信した場合、この電気信号をトリガーとして、この読取装置204に対する無線通信制御と情報送信制御とを行う。また、RFID制御部209aは、書込装置206,208に対し、制御装置209から受信した各種情報たとえば検査実施日、検査管理者名、および血液検査結果等を搬入された試験管のRFIDタグに書き込む無線通信制御をそれぞれ行う。すなわち、RFID制御部209aは、制御装置209が書込装置206から上述した試験管の搬入を示す電気信号を受信した場合、この電気信号をトリガーとして、この書込装置206に対する無線通信制御を行い、制御装置209が書込装置208から上述した試験管の搬入を示す電気信号を受信した場合、この電気信号をトリガーとして、この書込装置208に対する無線通信制御を行う。
【0136】
タイミング制御部209bは、入力装置211から入力された個数情報、搬入装置202から入力された搬入情報、および搬送装置201の搬送速度等をもとに、順次搬送される搬送装置201上の各試験管の位置を把握する。これによって、タイミング制御部209bは、各試験管のRFIDタグに対する読取装置204の処理タイミングとこれらの各試験管に対する搬送装置201の分岐点Pでの仕分け搬送タイミングとを同期させる制御を行うとともに、搬送経路Aに沿って搬送される各試験管の血液に対する検査装置205の処理タイミングとRFIDタグに対する書込装置206の処理タイミングとを同期させる制御を行い、さらに、搬送経路Bに沿って搬送される各試験管の血液に対する検査装置207の処理タイミングとRFIDタグに対する書込装置208の処理タイミングとを同期させる制御を行う。すなわち、タイミング制御部209bは、上述した試験管毎の情報による管理上の各試験管と、実際に搬送される各試験管との対応付けを確実に行う。
【0137】
なお、制御装置209は、入力装置211から入力された情報出力動作の指示情報に基づき、この指示情報によって指示された情報出力を行うように出力装置212を制御する。出力装置212は、プリンタやディスプレイ等を用いて実現され、この指示情報によって指示された情報を表示出力またはプリント出力する。また、出力装置212は、制御装置209の制御のもと、制御装置209から受信した各種情報たとえば上述した試料情報、検査条件、検査実施日、検査管理者名、および血液検査結果等を表示出力またはプリント出力する。操作者は、この出力装置212による情報出力内容を用い、順次搬送される試験管毎に各血液の試料情報、検査条件、および血液検査結果等を容易に確認できる。
【0138】
ここで、搬送経路Aに沿って搬送される試験管内の血液は、上述した検査装置205による血液検査が行われ、その後、この試験管に設けられたRFIDタグは、この血液検査による血液検査結果が書き込まれる。一方、搬送経路Bに沿って搬送される試験管内の血液は、上述した検査装置207による血液検査すなわち検査装置205と異なる血液検査が行われ、その後、この試験管に設けられたRFIDタグは、この異なる血液検査による血液検査結果が書き込まれる。すなわち、順次搬送される各試験管内の血液に対する血液検査の検査条件は、各試験管の搬送経路に依存する。したがって、制御装置209は、各試験管の搬送順位と対応付けた検査条件をもとに順次搬送される試験管毎の搬送経路を決定し、かつこの試験管毎に決定した搬送経路に基づき、搬送装置201を制御することによって、各試験管に保持された血液毎に適正な血液検査が可能な検査条件を自動的に設定できる。この場合、操作者は、複数の試験管にそれぞれ保持された各血液を見分ける必要がなく、これら複数の試験管を一括して搬入装置202にセットすれば、これら複数の試験管の血液毎に適正な検査条件を得ることができる。これによって、操作者は、これら複数の試験管の血液毎に適正な血液検査を容易かつ確実に行うことができる。
【0139】
また、回収装置203に回収された試験管は、適正な検査条件に基づく血液検査が行われた血液と、この適正な血液検査による血液検査結果を含む各種情報が書き込まれたRFIDタグとを有する。すなわち、血液検査システム200は、適正な検査条件に基づく血液検査が行われた血液とこの血液に関する各種情報たとえば試料情報、検査条件、血液検査結果、検査実施日、および検査管理者名等とを対応付けた状態の試験管を回収装置203に出力できる。したがって、操作者は、適正な検査条件に基づく血液検査が行われた血液とこの血液に関する各種情報とを対応付けた状態の試験管を容易に回収でき、上述した実施の形態1の場合とほぼ同様に、この血液とこの血液に関する各種情報とを対応付けた状態にてこの血液に関する各種情報を容易に管理できる。
【0140】
つぎに、試験管300の構成について詳細に説明する。図13は、血液検査システム200に用いられる試験管300の一構成例を模式的に示す模式図である。図13に示すように、試験管300の開口部には、RFIDタグ301を有するキャップ302が着脱可能に取り付けられる。これによって、試験管300は、検査対象物である血液の試料情報、検査条件、および検査結果等の各種情報を記憶するRFIDタグ301を交換可能に有することができる。この場合、操作者は、血液を保持する試験管とRFIDタグが設けられたキャップとを自由に組み合わせることができるので、RFIDタグが設けられたキャップを一つの試験管について交換できるとともに、血液を保持する試験管を一つのRFIDタグについて交換できる。なお、RFIDタグ301は、インサート成形等の加工方法によってキャップ302内に一体的に内蔵されてもよいし、キャップ302の表面に固定されてもよい。
【0141】
一方、試験管300は、RFIDタグ301が設けられたキャップ302を用いずに、弾性ベルト等を用いてRFIDタグ301を直に有してもよい。図14は、RFIDタグ301が設けられた試験管300の一構成例を模式的に示す模式図である。この弾性ベルト303は、ゴム等の弾性材を用いて実現され、環状に形成される。弾性ベルト300は、図14に示すように、その弾性力によって、RFIDタグ301を試験管300に押し当てるとともに試験管300に着脱可能に取り付けられる。これによって、試験管300は、上述したキャップ302を用いた場合と同様に、検査対象物である血液の試料情報、検査条件、および検査結果等の各種情報を記憶するRFIDタグ301を交換可能に有することができる。この場合、操作者は、血液を保持する試験管とRFIDタグとを自由に組み合わせることができるので、RFIDタグを一つの試験管について交換できるとともに、血液を保持する試験管を一つのRFIDタグについて交換できる。なお、RFIDタグ301は、弾性ベルト303に固定されてもよいし、弾性ベルト303の内側に押圧されてもよい。
【0142】
したがって、操作者は、試験管内の検査対象物である血液を無駄にすることなく、故障等によって不要となったRFIDタグを容易に交換でき、かつ、一つのRFIDタグを他の試験管に容易に再利用できる。このことは、上述した実施の形態1と同様に、経済的に有用である。また、試験管300、キャップ302、および弾性ベルト303は、ガラスまたは樹脂等の絶縁材を用いて構成されるので、RFIDタグ301による無線通信を阻害しない。
【0143】
なお、この発明の実施の形態2では、試験管の搬送経路を制御することによって順次搬送される試験管内の血液毎に血液検査の検査条件を設定していたが、この発明はこれに限定されるものではなく、試験管に設けられたRFIDタグから読み取った検査条件をもとに、血液検査を行う検査装置の検査条件を自動設定してもよい。この場合、この自動設定される検査条件にて血液検査を行う1以上の検査装置が搬送系に配置されるように構成してもよい。
【0144】
また、この発明の実施の形態2では、互いに異なる血液検査を行う検査装置205,207に各試験管をそれぞれ搬送する2つの搬送経路A,Bを設けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、互いに異なる血液検査を行う3以上の検査装置の各検査装置について搬送経路をそれぞれ設けてもよい。
【0145】
さらに、この発明の実施の形態2では、2つの搬送経路A,Bを設けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、一つの搬送経路に血液検査を行う1以上の検査装置を設けてもよい。この場合、この1以上の検査装置の検査条件は、試験管に設けられたRFIDタグから読み取った検査条件をもとに自動設定される。
【0146】
また、この発明の実施の形態2では、血液検査を行う検査装置毎に一つの搬送経路を設けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、血液検査を行う2以上の検査装置を搬送経路毎に設けてもよい。
【0147】
さらに、この発明の実施の形態2では、RFIDタグから読み取った検査条件をもとに各試験管の搬送経路を決定していたが、この発明はこれに限定されるものではなく、各血液に試料情報またはIDコード等のRFIDタグの特定情報に対応付けられた検査条件を含む検査条件データベースを用い、RFIDタグから読み取った試料情報またはRFIDタグの特定情報をもとに、血液を保持する各試験管の搬送経路または各血液の検査条件を自動設定してもよい。
【0148】
また、この発明の実施の形態2では、RFIDタグに情報を書き込む書込装置を搬送経路毎に設けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、血液検査を行う検査装置の後段に搬送経路の合流点を設け、この合流点の後段に一つの書込装置を設けるように構成してもよい。
【0149】
さらに、この発明の実施の形態2では、この発明にかかる検査システムの一例として、検査対象物である血液毎に血液検査を行う血液検査システムを示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、試験管等の筒状の保持具内に入る気体状、液状、または固体状の各種検査対象物に対して所定の検査を行う各種検査システムであればよい。
【0150】
また、この発明の実施の形態2では、弾性ベルトを用いてRFIDタグを試験管に押し当てることによって、試験管にRFIDタグを交換可能に取り付けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、粘着テープを用いてRFIDタグを試験管等の保持具に着脱可能に貼り付けてもよいし、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリスチレン(OPS)、またはポリ塩化ビニル(PVC)等の熱収縮フィルムを用いてRFIDタグを保持具に着脱可能に貼り付けてもよい。
【0151】
さらに、この発明の実施の形態2では、RFIDタグを試験管に交換可能に取り付けていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、RFIDタグを試験管等の保持具内に埋め込んでもよいし、接着剤を用いてRFIDタグを保持具に固定してもよいし、周知のポッティング樹脂を用いてRFIDタグを保持具に固定してもよい。
【0152】
以上、説明したように、この発明の実施の形態2では、検査対象物である血液を保持する試験管に設けられたRFIDタグから、所定の電波を介してこの血液に関する各種情報を読み取り、この読み取った各種情報をもとに、この血液の検査条件を自動的に設定するように構成したので、検査対象の血液毎に検査条件を容易に設定でき、操作者が複数の試験管から検査対象の血液を視覚的に区別しなくとも、検査対象の血液毎に適正な血液検査を容易かつ確実に行える血液検査システムを実現できる。かかる構成によれば、筒状の保持具内に保持された気体状、液体状、または固体状の各種検査対象物毎に検査条件を容易に設定でき、操作者が複数の保持具から検査対象物を視覚的に区別しなくとも、検査対象物毎に適正な検査を容易かつ確実に行える検査システムを実現できる。
【0153】
また、この血液検査システムの無線通信手段が行う無線通信の周波数帯に最適化されたRFIDタグを各試験管に設けるように構成したので、各試験管内の血液に関する多量の各種情報を血液毎に対応付けるとともに、所定の電波を介してこの血液に関する各種情報を容易に読み取りまたは書き込むことができ、上述した血液検査システムに好適な保持具を実現できる。かかる構成によれば、気体状、液体状、または固体状の各種検査対象物を保持でき、上述した検査システムに好適な検査対象物の保持具を実現できる。
【0154】
さらに、この保持具にRFIDタグを着脱可能に設けることによって、一つの検査対象物についてRFIDタグを複数回交換できるとともに、一つのRFIDタグについて検査対象物を複数回交換できる。これによって、検査対象物を無駄にすることなく、故障等によって不要となったRFIDタグを容易に交換できるとともに、他の検査対象物に対して一つのRFIDタグを容易に再利用でき、経済的に有用である。
【0155】
また、このRFIDタグに消去不能な個別のIDコードを割り当てることによってまたはこのRFIDタグに記憶する各種情報を暗号化することによって、このRFIDタグに記憶した各種情報の読取権限を設定し管理することができ、これによって、このRFIDタグに記憶した各種情報が第三者(すなわち読取権限を持たない者)に漏れることを防止でき、この各種情報の守秘義務を容易に管理できる。この場合、たとえば病院において、患者から採取した血液等の検査対象物に関する各種情報をRFIDタグのIDコードを用いて管理することによって、この検査対象物が第三者に閲覧されても、この検査対象物に関する各種情報が第三者に漏れない。すなわち、第三者は、この検査対象物が採取された患者に関する名前または検査結果等の情報を知ることはできない。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】この発明の実施の形態1である光学顕微鏡の一構成例を模式的に示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1である光学顕微鏡の検鏡条件を設定するまでの処理手順を例示するフローチャートである。
【図3】原点に復帰した載置台およびクレンメルを模式的に例示する模式図である。
【図4】標本を検鏡領域に移動させた載置台およびクレンメルを模式的に例示する模式図である。
【図5】RFIDタグの検鏡条件を更新するまでの処理手順を例示するフローチャートである。
【図6】標本情報をRFIDタグに書き込むまでの処理手順を例示するフローチャートである。
【図7】プレパラート群の各標本に関する各種情報を管理するホストコンピュータのシステム構成を模式的に例示する模式図である。
【図8】プレパラート群の各標本に関する各種情報を管理するホストコンピュータの別のシステム構成を模式的に例示する模式図である。
【図9】RFIDタグが設けられたプレパラートの主要構成部分を模式的に例示する分解模式図である。
【図10】スライドガラスに樹脂カバーが取り付けられたプレパラートの縦断面を模式的に例示する縦断面模式図である。
【図11】プレパラートの変形例の主要断面構造を模式的に例示する縦断面模式図である。
【図12】この発明の実施の形態2である血液検査システムの一構成例を模式的に例示するブロック図である。
【図13】血液検査システムに用いられる試験管の一構成例を模式的に示す模式図である。
【図14】RFIDタグが設けられた試験管の一構成例を模式的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0157】
1 光学顕微鏡
2 載置台
2a,3a,12a,13a,15a,16a,17a,20a 駆動部
2b,3b リニアエンコーダ
3 クレンメル
3c,3d アーム
3e,113a 開口部
4 入力部
4a ケーブル
5 記憶部
6 制御部
7 RFID処理部
8 アンテナ
9 表示部
10 光源
10a 光量制御部
11 コレクタレンズ
12 フィルタ
13 視野絞り部
14 ミラー
15 開口絞り部
16 コンデンサレンズ
17 レボルバ
18a,18b 対物レンズ
19 接眼レンズ
20 ビームスプリッタ
21 写真撮影装置
21a 記憶メディア
22 写真撮影用レンズ
40 ホストコンピュータ
41 RFIDリーダライタ制御部
42 RFIDアンテナユニット
43 プレパラート保管箱
44 プレパラート群
45 RFIDリーダライタ
100,110 プレパラート
101,301 RFIDタグ
102 標本
103,113 スライドガラス
103a,113a エッジ
104,114 樹脂カバー
114a 突起部
200 血液検査システム
201 搬送装置
202 搬入装置
203 回収装置
204 読取装置
205,207 検査装置
206,208 書込装置
209 制御装置
209a RFID制御部
209b タイミング制御部
210 記憶装置
211 入力装置
212 出力装置
300 試験管
302 キャップ
303 弾性ベルト
M 検鏡領域
P 分岐点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本または被検体等の検査対象物毎に所定の検査を行う検査システムにおいて、
前記検査対象物を保持する保持具に設けられ、前記検査対象物に対応付けた情報を記憶する情報記憶媒体と、
所定の電波を介して前記情報記憶媒体から前記情報を読み取る無線通信手段と、
前記無線通信手段が読み取った情報をもとに、前記検査対象物に対する前記所定の検査の検査条件を設定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記検査条件と異なる検査条件を入力する入力手段を備え、
前記制御手段は、前記検査条件を前記入力手段から入力された異なる検査条件に変更し、前記無線通信手段は、所定の電波を介して前記情報記憶媒体内の検査条件を前記異なる検査条件に更新することを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記無線通信手段は、所定の電波を介して前記検査対象物の検査結果を前記情報記憶媒体に書き込むことを特徴とする請求項1または2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記保持具を載置する載置台を備え、
前記無線通信手段は、前記情報記憶媒体との間にて所定の電波を送受信するアンテナを有し、該アンテナは、前記載置台に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の検査システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記検査条件の一つとして、前記載置台上の前記検査対象物の観察位置を設定することを特徴とする請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
検査対象物毎に所定の検査を行う第1検査手段と、
検査対象物毎に前記第1検査手段と異なる検査を行う第2検査手段と、
前記第1検査手段に検査対象物を搬入する第1搬送経路と前記第2検査手段に検査対象物を搬入する第2搬送経路とを有し、複数の前記保持具を前記第1搬送経路または前記第2搬送経路に沿って順次搬送する搬送手段と、
を備え、前記制御手段は、前記保持具の情報記憶媒体毎に読み取られた情報をもとに、順次搬送される各保持具の搬送経路を決定し、前記搬送手段に対し、前記第1搬送経路または前記第2搬送経路に沿う搬送制御を前記保持具毎に行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の検査システム。
【請求項7】
前記載置台は、絶縁材を用いて構成されることを特徴とする請求項4または5に記載の検査システム。
【請求項8】
前記アンテナは、前記載置台に着脱可能に設けられることを特徴とする請求項4、5、または7に記載の検査システム。
【請求項9】
前記保持具は、絶縁材を用いて構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の検査システム。
【請求項10】
前記検査対象物に対応付けた情報は、前記検査対象物の検査条件、前記検査対象物に関する管理情報、および前記情報記憶媒体を特定するIDコードのいずれか一つであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の検査システム。
【請求項11】
標本または被検体等の検査対象物を保持する保持具において、
前記検査対象物に対応付ける情報を記憶する情報記憶媒体を備えたことを特徴とする保持具。
【請求項12】
前記情報記憶媒体は、当該保持具に着脱可能に設けられることを特徴とする請求項11に記載の保持具。
【請求項13】
所定の段差を有するエッジが設けられ、前記検査対象物が付されるスライドガラスと、
前記情報記憶媒体が埋め込まれ、前記エッジに着脱可能に外嵌する樹脂カバーと、
を備えたことを特徴とする請求項11または12に記載の保持具。
【請求項14】
前記検査対象物を内包する筒状の容器と、
前記情報記憶媒体が埋め込まれ、前記容器を着脱可能に閉塞するキャップと、
を備えたことを特徴とする請求項11または12に記載の保持具。
【請求項15】
前記検査対象物を内包する筒状の容器と、
前記容器の側壁に前記情報記憶媒体を着脱可能に押し当てる弾性ベルトと、
を備えたことを特徴とする請求項11または12に記載の保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−93450(P2007−93450A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284626(P2005−284626)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】