説明

検知装置及び方法

【課題】排気ガスに含まれているPMを直接的に集塵するとともに、その濃度を検知することができる検知装置及び方法を提供すること。
【解決手段】電源部10と、排気管内に設置され、一対の平行平板からなる電極部11と、電源部10により電極部11に対して所定の電圧が印加され、排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質(PM)を電極部11に付着させた後、電極部11の電気的特性を測定し、測定された電気的特性から排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度を検知する検知部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM、Particulate Matter)の濃度を検知する検知装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まりにより、燃焼を伴う設備・装置からの排気ガス中に含まれる微小な粒子状物質(PM、Particulate Matter)を除去し、排出することが必要となってきている。そのため、これらの設備・装置では、排気ガス中のPMを除去する手段を設けている。また、PMの除去手段を通過した後の排気ガス中に含まれるPM量を監視し、PM除去手段が正常に動作しているかどうかを確認するため、排気ガス環境下において適用可能なPMセンサが求められている。
【0003】
ここで、PMセンサには、光学式、電気抵抗式、電荷式、マイクロ波式、又は振動型質量検知式(例えば、特許文献1乃至3を参照。)等さまざまな検知方式が提案されている。また、例えば、光学式センサは、一般的に、スモーク測定に用いられている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0123059号明細書
【特許文献2】米国特許第67886075号明細書
【特許文献3】特開2006−208123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば、自動車排気ガスに含まれているPM量を監視するために、自動車の排気口付近にPMセンサを配置する場合を考える。
【0005】
光学式センサは、センサ面が非常にデリケートであり、汚れに対する性能の保証が困難なため、定期的なメンテナンスが必要である。そのため、自動車の排気口付近のような定期的なメンテナンスが行えないような状況下における長期の使用は、困難である。
【0006】
また、自動車排気ガスは、高温であり、また、排気口付近は、圧力が高いため、厳しい環境と言える。このような厳しい環境においては、他の方式(振動方質量検知方式等)でも、長期耐久性の保証を図る必要があり、そのためのコストがかかってしまう。
【0007】
このようにして、現在までに提案されている各種方式を採用したPMセンサでは、排気ガス中に含まれるPMの浄化を直接的に監視する手段として適用するには、その選択性、耐久性、及びコストの面等において課題を抱えている。
【0008】
そこで、本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、排気ガスに含まれているPMを直接的に集塵するとともに、その濃度を検知し、厳しい環境下にも耐えうる耐久性があり、かつ、コストが低廉である検知装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検知装置は、上記課題を解決するために、排気管内に設置され、一対の平行平板、または、当該一対の平行平板を多段に組み合わせたものを含んで構成される電極部と、前記電極部に所定の電圧を印加する電源部と、前記電源部により前記電極部に対して所定の電圧が印加され、前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質を前記電極部に付着させた後、前記電極部の電気的特性を測定し、測定された前記電気的特性から前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度を検知する検知手段と、を備える。
【0010】
また、検知装置では、前記電源部の電気的特性と、前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度との関係を示すデータが格納されている格納手段をさらに備え、前記検知手段は、測定された前記電極部の電気的特性に基づいて、前記格納手段に格納されているデータを参照することにより、前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度を検知する構成である。
【0011】
また、検知装置では、前記電源部は、間欠的又は連続的に一定電流を前記電極部に印加する定電流電源あるいは間欠的又は連続的に一定電圧を前記電極部に印加する定電圧電源により構成されている。
【0012】
また、検知装置では、前記検知手段は、前記電極部の前記電気的特性として、静電容量、インピーダンス、電圧、電流、入力電流と前記電極部から検出される電圧との位相差、電力又はエネルギーの変化を測定することにより前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度を検知する構成である。
【0013】
また、検知装置は、前記検知手段により前記粒子状物質の濃度が検知された後、前記電極部に付着している前記粒子状物質を除去する除去手段をさらに備える構成である。
【0014】
また、検知装置に備えられている除去手段は、前記電極部を放電させることにより、前記電極部に付着している前記粒子状物質を分解して除去する構成である。
【0015】
また、検知装置に備えられている除去手段は、前記電極部を所定温度まで昇温することにより、前記電極部に付着している前記粒子状物質を燃焼して除去する構成である。
【0016】
また、検知装置に備えられている除去手段は、前記電極部に付着している前記粒子状物質を機械的な構造物によって物理的に除去する構成である。
【0017】
また、本発明に係る検知方法は、上記課題を解決するために、電源部により所定の電圧を排気管内に設置されている電極部に印加し、前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質を前記電極部に付着させる付着工程と、前記付着工程により前記電極部に前記粒子状物質が付着された後、前記電極部の電気的特性を測定する測定工程と、前記測定工程により測定した前記電気的特性から、前記排気管内の排気ガスに含まれている前記粒子状物質の濃度を検知する検知工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電気的集塵効果を利用することにより、排気ガスに含まれているPM濃度を直接的に測定し、排気管内のPM濃度を低濃度から測定することができるので、信頼性の高い故障検知システムに有用なPMセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る検知装置の一例であるPMセンサ1の構成を示すブロック図である。PMセンサ1は、図1に示すように、電源部10と、排気管内に設置され、一対の平行平板からなる電極部11と、電源部10により電極部11に対して所定の電圧が印加され、排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質(PM、Particulate Matter)を電極部11に付着させた後、電極部11の電気的特性を測定し、測定された電気的特性から排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度を検知する検知部12と、を備える。また、電源部10と、検知部12とは、制御装置2に接続されており、制御装置2により動作が制御される。また、以下において、PMセンサ1の電極部11は、ディーゼル機関の排気管内の任意の場所に配置されるものとして説明するが、特にディーゼル機関に限定されるものではない。
【0021】
制御装置2は、ECU(Electronic Control Unit)3からの制御信号を受け、電源部10の制御を行うとともに、検知部12から得た信号をECU3に適した信号(パルス信号、電圧信号等)に変換する機能を備える。なお、PMセンサ1は、ECU3が制御装置2により発揮される機能を具有する場合には、制御装置2を設けない。また、ECU3は、電子制御装置であり、主に、エンジンの制御や、駆動系統の制御等を行う。
【0022】
電極部11は、一の導電体と、他の導電体とによる一対の平行平板、または、この一対の平行平板を多段に組み合わせたものにより構成されている。なお、一の導電体及び他の導電体の表面には、誘電体が形成されていることが好ましい。
【0023】
電源部10は、制御装置2による制御にしたがって、所定の電圧を電極部11に印加する。また、電源部10は、電極部11へPMを付着(集塵)させ、また、電極部11に付着しているPMの付着量を測定するために、電気の流れを変化させる機能を有し、例えば、間欠的又は連続的に一定電流を電極部11に印加する定電流電源部により構成されても良いし、間欠的又は連続的に一定電圧を電極部11に印加する定電圧電源部により構成されても良い。
【0024】
また、詳細は後述するが、排気ガスに含まれるPM濃度と、電極部11に堆積するPM堆積量とは相関関係がある。そこで、検知部12では、PM濃度とPM堆積量との相関関係を利用して、電極部11に堆積したPM堆積量から測定した電気的特性(静電容量等)の変化に基づきPM濃度を検知する。具体的には、検知部12は、電極部11の静電容量、インピーダンス、電圧、電流、入力電流と電極部11から検出される電圧との位相差、電力(W)又はエネルギー(E)等の電気的特性の変化を測定することにより、排気管内の排気ガスに含まれているPM濃度を検知する。
【0025】
ここで、PMセンサ1により排気管内の排気ガスに含まれているPM濃度を測定する手順について説明する。
【0026】
電極部11は、PM濃度の測定を実施する排気管内の任意の場所に配置する。そして、電極部11は、電源部10により電圧が印加されると、電圧による集塵効果により、排気管内の排気ガスに含まれているPMが付着する。検知部12は、電極部11の静電容量の変化を検知する。
【0027】
ここで、検知する方法としては、インピーダンス測定器により直接的に電極部11の静電容量の変化を測定する方法がある。また、他には、電源電圧又は電流の変化を利用して、電流、電圧、位相差、周期、反射波、電力又はエネルギーの変化を測定し、電極部11のPM付着量を測定する方法もある。
【0028】
このようにして、PMセンサ1は、排気管内におけるPMの集塵を行うとともに、PMの濃度測定を行うことができ、従来のPMセンサに比して、より高速にPM濃度の測定を行うことが可能である。
【0029】
また、PMセンサ1は、電源部10の電気的特性と、排気管内の排気ガスに含まれているPM濃度との相関関係を示すデータが格納されている格納部13を備える構成であっても良い。このような構成においては、検知部12は、電極部11の電気的特性を測定し、格納部13に格納されているデータを参照することにより、排気管内の排気ガスに含まれているPM濃度を検知する。
【0030】
また、詳細は後述するが、PMセンサ1は、検知部12によりPM濃度が検知された後、電極部11に付着しているPMを除去するPM除去部14を備える。
【0031】
ここで、以下に、PMセンサ1の具体的な実施例について説明する。なお、図1に示したPMセンサ1と同一の構成部には同一の番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0032】
<第1実施例>
第1実施例に示すPMセンサ100は、図2に示すように、検知部12が静電容量測定法を適用したインピーダンス測定器20により構成される。
【0033】
また、電極部11は、図3(B)に示すように、一対の平行平板が複数段(数十段)で構成されている。また、電極部11を構成する各電極は、図3(A)に示すように、アルミナ基板11Aの上部にタングステン導体11Bが積層されており、タングステン導体11Bの上部にタングステン印刷(薄膜)11Cがメッキ等により被膜されている。なお、電極部11の電極は、アルミナ基板11Aの上部にタングステン薄膜11Cがメッキ等により被膜され、このタングステン薄膜11Cの上部にタングステン導体11Bが積層される構造であっても良い。
ここで、アルミナ基板11Aの厚みは、約1mmである。また、タングステン導体11Bは略矩形状であり、各辺の長さは、それぞれ、約75mm及び約50mmである。
【0034】
このように構成される電極部11には、PMを集塵するための電圧を印加する電源部10と、電極部11の静電容量を測定するインピーダンス測定器20とが接続されている。
【0035】
また、排気管内の排気ガスに含まれているPM濃度と、電極部11に付着するPM付着量とは、図4に示すように、非線形の相関関係がある。また、電極部11の静電容量と、電極部11に付着するPM付着量との関係を図5に示す。なお、図5では、測定周波数として50Hzを用いた。また、図4及び図5の相関関係を示すデータが格納部13に格納される構成であっても良い。
【0036】
ここで、PMセンサ100の動作について説明する。
【0037】
制御装置2は、ECU3から測定開始の命令(制御信号)を受けたとき、電源部10に駆動信号を供給する。電源部10は、制御装置2から供給された駆動信号に応じて、電極部11に所定の電圧を印加する。電極部11は、電圧の印加によって、PMが付着(集塵)し始める。
【0038】
制御装置2は、所定期間経過後、電源部10に対して電源供給の停止を命ずる。電源部10は、制御装置2からの停止の命令に応じて、電極部11に対する電圧の印加を停止する。
【0039】
つぎに、制御装置2は、インピーダンス測定器20に静電容量の測定命令を行う。インピーダンス測定器20は、制御装置2からの測定命令に応じて、電極部11の静電容量の測定を行う。インピーダンス測定器20は、測定した静電容量の結果から、図5に示すPM付着量と静電容量との関係に基づいて、PM付着量を求める。また、インピーダンス測定器20は、求めたPM付着量から、図4に示すPM濃度とPM付着量との関係に基づいて、PM濃度を求める。インピーダンス測定器20は、求めたPM濃度を制御装置2へ供給する。制御装置2は、供給されたPM濃度をECU3に供給する。
【0040】
また、詳細は後述するが、ECU3は、供給されたPM濃度に基づいて、制御装置2に対して、PMの除去命令を行う。制御装置2は、PMの除去命令に応じて、PM除去部14に駆動命令を行う。PM除去部14は、駆動命令に応じて、電極部11に付着しているPMの除去を実行する。
【0041】
このようにして、PMセンサ100は、排気ガスに含まれているPMを直接的に集塵するとともに、PM濃度を検知することができる。また、PMセンサ100は、PM濃度の検知後、電極に付着しているPMを除去することもできる。また、PMセンサ100は、厳しい環境下にも耐えうる耐久性があり、かつ、構成が簡易なため、コストの低廉化を図ることができる。
【0042】
<第2実施例>
また、集塵用の電源出力の特性を利用することにより、上述したインピーダンス測定器20を設けない実施例について以下に説明する。
【0043】
詳細は後述するが、電源部10が定電流電源の場合には、電圧測定装置が必要となる。また、電圧測定装置による測定のタイミングは、電源部10の出力電圧が間欠的出力となるか、連続的出力となるかによって異なる。間欠的出力の場合には、電源電圧又は電流の変化時と、その後の減衰振動における電気的特性の変化により、PM付着量を測定する。また、連続的出力の場合には、電源電圧又は電流の変化時における電気的特性の変化により、PM付着量を測定する。
【0044】
また、電源部10が定電圧電源部の場合には、電流測定装置が必要となる。また、電流測定装置による測定のタイミングは、電源部10の出力電圧が間欠的出力となるか、連続的出力となるかによって異なる。間欠的出力の場合には、電源電圧又は電流の変化時と、その後の減衰振動における電気的特性の変化により、PM付着量を測定する。また、連続的出力の場合には、電源電圧又は電流の変化時における電気的特性の変化により、PM付着量を測定する。
【0045】
ここで、電源部10が間欠的定電流電源部により構成されるPMセンサ101について説明する。
【0046】
PMセンサ101は、図6に示すように、間欠的に定電流を出力する間欠的定電流電源部30と、電極部11と、電圧測定を行う電圧測定装置31と、を備えている。
【0047】
間欠的定電流電源部30は、図7に示すように、間欠的に変動する電圧(DC/パルス波)を電極部11に印加する電源であり、直流電圧を出力する一次電源部32と、スイッチング回路33と、昇圧のためのトランス(二次電源部)34と、により構成されている。なお、図7では、電圧の波形が三角波状になっているが、矩形波状であっても良いし、鋸波状であっても良い。
【0048】
また、間欠的定電流電源部30は、電極部11に電圧を印加するように接続されており、さらに、電極部11の電極間の電圧を測定できるように電圧測定装置31が接続されている。
【0049】
電圧測定装置31は、制御装置2を介してECU3に接続されている。制御装置2は、電圧測定装置31から供給された信号をECU3で取り扱うことが可能な信号に変換し、変換後の信号をECU3に出力する。
【0050】
なお、ECU3に電極部11の電圧を測定する機能が実装されており、かつ、そのときの電極部11の電圧が測定可能な範囲である場合には、電圧測定装置31及び制御装置2を省略することができる。このような構成の場合には、ECU3は、電極部11の電気的特性(電圧)を測定し、当該測定結果からPM濃度を算出する。
【0051】
また、PM付着量の測定に用いる電気的特性のパラメータが、電力(W)又はエネルギー(E)である場合には、PMセンサ101は、電流を測定する電流測定装置35をさらに備える構成となる。PMセンサ101は、電圧測定装置31により測定した電圧(V)と、電流測定装置35により測定した電流(I)とから、(1)式に基づいてエネルギー(E)を算出し、又は(2)式に基づいて電力(W)を算出する。
E=∫V(t)I(t)dt・・・(1)
W=E/t・・・(2)
但し、「t」は、時間を示し、「V(t)」は、時間tにおける電圧を示し、「I(t)」は、時間tにおける電流を示している。
【0052】
ここで、PMセンサ101により電極部11のPM付着量を測定する手順について説明する。なお、間欠的定電流電源部30は、スイッチング回路33が所定のタイミングでオン状態とオフ状態とが切り換えられることにより、図7に示すような、間欠的な電圧を電極部11に印加する。
【0053】
トランス34は、スイッチング回路33がオフ状態になった場合に、一次電源部32から電流が供給される。また、電極部11は、トランス34の一次コイルと二次コイルとの巻き数比に応じた所定の電流の流れ込みにより、電極に一定の電荷がチャージされる。
【0054】
また、電荷のチャージが完了すると、電極部11の電圧は、Q=CVの関係にしたがって、ピーク電圧に達し、その後、振動しながら減衰する。これは、トランス34の二次コイルと、電極部11の静電容量の回路を電荷が減衰振動を行うためである。
【0055】
また、電極部11の静電容量は、電極部11にPMが堆積しない状態に対して、電極部11にPMが堆積した状態において、変化する。そのため、電極部11にチャージされる電荷が一定の場合には、発生する電圧が変化する。この電圧の変化の様子を図8に示す。
【0056】
また、電極部11は、集塵したPMの燃焼分解を防ぐため、放電しないことが望ましい。なお、放電した場合であっても、電気的特性が変化するため、PMの付着量の測定は可能である。図8(A)には、電極部11が放電しない場合における減衰振動する電圧の波形を示し、図8(B)には、電極部11が放電した場合における減衰振動する電圧の波形を示している。また、図8(A)、(B)において、波形Aは、電極部11にPMが堆積していない場合における減衰振動する電圧の波形を示し、波形Bは、電極部11にPMが堆積している場合における減衰振動する電圧の波形を示している。
【0057】
また、PMが電極部11に付着すると、当該PMの付着量に応じて、電気的特性(電圧、振動周期、電力(W)及びエネルギー(E)等)が変化する。
【0058】
ここで、電圧変化によりPM付着量を測定する場合について、図9を用いて説明する。なお、以下の説明においては、電極部11は、放電を生じないものとする。また、図9は、各ピーク電圧をV1、V2・・・Viとしたときの電圧波形を示す。なお、図9には、PMが付着しているときの電圧波形のみを示している。
【0059】
電圧(Vi)とPM付着量との関係は、図10に示すように相関関係がある。したがって、電圧測定装置31により、電極部11の電極間電圧を測定(モニター)することにより、i番目のピーク電圧(Vi)に基づいてPM付着量を測定することができる。また、V1及びV2の減衰の時定数から、PM付着量を推定することができる。なお、図10の相関関係を示すデータが格納部13に格納される構成であっても良い。
【0060】
また、PMセンサ101が電流測定装置35を備える場合には、上述した(1)式及び(2)式にしたがって、電力(W)及びエネルギー(E)を算出し、この算出値とPM付着量を測定することができる。また、図11には、エネルギー(E)とPM付着量との相関関係を示し、図12には、電力(W)とPM付着量との相関関係を示す。また、図11及び図12の相関関係を示すデータが格納部13に格納される構成であっても良い。
【0061】
つぎに、振動周期変化によりPM付着量を測定する場合について、図13を用いて説明する。なお、以下の説明においては、電極部11は、放電を生じないものとする。
【0062】
ここで、振動周期の変化について図13を参照しながら説明する。電圧変化を起こした時間を「0(=t)」とし、最初の負の側のピーク電圧を過ぎてから電圧が再び0になる(ゼロクロスする)時間を「t1」とする。また、次の負の側のピーク電圧を過ぎてから、電圧が0になる時間を「t2」とし、同様にi番目の負の側のピーク電圧を過ぎてから、電圧が0になる時間を「ti」とする。
【0063】
また、時間「ti」とPM付着量との関係は、図14に示すように、相関関係がある。したがって、PMセンサ101は、電圧測定装置31により電極部11の電極間電圧を測定し、当該電極間電圧から「ti」を求め、図14の相関関係に基づいて、当該「ti」からPM付着量を測定することができる。また、図14の相関関係を示すデータが格納部13に格納される構成であっても良い。
【0064】
また、上述では、「ti」は、負の側のピーク電圧を過ぎてからゼロクロスする時間としたが、これに限られず、正の側のピーク電圧を過ぎてからゼロクロスする時間であっても良い。また、「ti」は、ゼロクロスする時間ではなく、任意の電圧値になる時間であっても良く、電圧値が0Vではない一定値になる時間でも良い。
【0065】
このようにして、PMセンサ101は、間欠的に電圧変動を生ずる間欠的定電流電源部30を用いて、電極部11の電圧変化や、振動周期変化等の電気的特性の変化に基づき、PM付着量を測定することができる。また、PMセンサ101は、測定したPM付着量と測定した排気ガスに含まれているPM濃度の相関関係から、PM濃度を算出することができる。
【0066】
<第3実施例>
つぎに、電源部10が連続的定電流電源部により構成されるPMセンサ102について説明する。なお、上述したPMセンサ100及びPMセンサ101と同一の構成部には同一の番号を付す。
【0067】
PMセンサ102は、図15に示すように、連続的に定電流を出力する連続的定電流電源部40と、電極部11と、電圧測定を行う電圧測定装置31と、を備えている。
【0068】
連続的定電流電源部40は、図16に示すように、連続的に変動する電圧(DC/sin波)を電極部11に印加する電源であり、直流電圧を出力する第1の一次電源部41と、第1のスイッチング回路42と、直流電圧を出力する第2の一次電源部43と、第2のスイッチング回路44と、昇圧のためのトランス(二次電源部)45と、により構成されている。なお、図16では、電圧の波形が正弦波状になっているが、矩形波状であっても良いし、鋸波状であっても良い。
【0069】
また、連続的定電流電源部40は、電極部11に電圧を印加するように接続されており、さらに、電極部11の電極間の電圧を測定できるように電圧測定装置31が接続されている。
【0070】
また、連続的定電流電源部40は、第1のスイッチング回路42と、第2のスイッチング回路44とを所定のタイミングで切り換えることにより、図16に示すような、連続的な正弦波状の一定電流を電極部11に供給する。
【0071】
また、連続的定電流電源部40は、電極部11に電圧を印加するように接続されており、さらに、電極部11の電極間の電圧を測定できるように電圧測定装置31が接続されている。
【0072】
電圧測定装置31は、制御装置2を介してECU3に接続されている。制御装置2は、電圧測定装置31から供給された信号をECU3で取り扱うことが可能な信号に変換し、変換後の信号をECU3に出力する。
【0073】
なお、ECU3に電極部11の電圧を測定する機能が実装されており、かつ、そのときの電極部11の電圧が測定可能な範囲である場合には、電圧測定装置31及び制御装置2を省略することができる。このような構成の場合には、ECU3は、電極部11の電気的特性(電圧)を測定し、当該測定結果からPM濃度を算出する。
【0074】
また、PM付着量の測定に用いる電気的特性のパラメータが、電力(W)又はエネルギー(E)である場合には、PMセンサ102は、電流を測定する電流測定装置35をさらに備える構成となる。PMセンサ102は、電圧測定装置31により測定した電圧(V)と、電流測定装置35により測定した電流(I)とから、上述した(1)式に基づいてエネルギー(E)を算出し、又は(2)式に基づいて電力(W)を算出する。
【0075】
また、上述したように、連続的定電流電源部40は、第1のスイッチング回路42と第2のスイッチング回路44とが所定のタイミングでオン状態とオフ状態とが切り換えられることにより、図16に示すような、連続的な正弦波状の電圧を電極部11に印加する。
【0076】
PMセンサ102は、連続的定電流電源部40により印加される電圧によって変化する電極部11の電気的特性を、電圧測定装置31により測定する。ここで、電圧測定装置31により、入力電圧に対する電極部11の電気的特性の変化の様子を図17に示す。
【0077】
図17より、PM付着後の電圧波形Eは、入力電圧(初期電圧)波形Dに対して、変化していることが分かる。なお、電流波形Cは、連続的定電流電源部40から電極部11へ出力される電流の波形を示している。
【0078】
また、電極部11は、集塵したPMの燃焼分解を防ぐため、放電しないことが望ましい。なお、放電した場合であっても、電気的特性が変化するため、PMの付着量の測定は可能である。
【0079】
このようにして、PMが電極部11の電極に付着したとき、電気的特性(電圧、振動位相、電圧と電流とから求められる電力(W)及びエネルギー(E)等)が変化する。
【0080】
ここで、電圧変化によりPM付着量を測定する場合について、説明する。なお、以下の説明においては、電極部11は、放電を生じないものとし、電圧波形を図18に示す。また、このときのピーク電圧をVpeakとする。
【0081】
peakとPM付着量との関係は、図19に示すように、相関関係がある。したがって、PMセンサ102は、電圧測定装置31により、電極部11の電極間電圧を測定(モニター)することにより、Vpeakを求め、図19に示す相関関係に基づいて、PM付着量を測定することができる。また、図19の相関関係を示すデータが格納部13に格納される構成であっても良い。
【0082】
また、PMセンサ101が電流測定装置35を備える場合には、上述した(1)式及び(2)式にしたがって、電力(W)及びエネルギー(E)を算出し、この算出値とPM付着量を測定することができる。
【0083】
つぎに、振動位相変化によりPM付着量を測定する場合について、説明する。PMセンサ102は、振動位相変化によりPM付着量を測定する場合には、図15に示すXの位置(電極部11に対して直列)に、所定の抵抗値を有する抵抗を備え、かつ、電源出力の波形を測定するために、電流測定装置35を備える構成となる。このような構成において、電極部11の電極間で放電が生じない場合の、入力電流Iinの波形と電極間電圧Voutの波形を図20に示す。
【0084】
ここで、連続的定電流電源部40の電源出力がIin(t)とし、電極間の電圧出力がVout(t)として、この二つの振動位相差をΔtとしたとき、当該振動位相差とPM付着量との関係は、図21に示すようになる。したがって、PMセンサ102は、電源出力がIin(t)と電極間の電圧出力がVout(t)とから振動位相差Δtを求め、図21に示す関係に基づいて、PM付着量を算出することができる。
【0085】
また、PMセンサ102は、電流測定装置35を設けずに、連続的定電流電源部40の第1のスイッチング回路42及び第2のスイッチング回路44の動作から、電流の波形を測定できる信号を制御装置2に送信する手段を設ける構成であっても良い。
【0086】
このようにして、PMセンサ102は、連続的に電圧変動を生ずる連続的定電流電源部40を用いて、電極部11の電圧変化等の電気的特性の変化に基づき、PM付着量を測定することができる。また、PMセンサ102は、測定したPM付着量と測定した排気ガスに含まれているPM濃度の相関関係から、PM濃度を算出することができる。
【0087】
<第4実施例>
つぎに、電源部10が定電圧電源部により構成されるPMセンサ103について説明する。
【0088】
PMセンサ103は、図22に示すように、間欠的又は連続的に定電圧を出力する定電圧電源部50と、電極部11と、電流の測定を行う電流測定装置35と、を備えている。
【0089】
電流測定装置35は、制御装置2を介してECU3に接続されている。制御装置2は、電流測定装置35から供給された信号をECU3で取り扱うことが可能な信号に変換し、変換後の信号をECU3に出力する。
【0090】
なお、ECU3に二次側の電流を測定する機能が実装されており、かつ、そのときの電流が測定可能な範囲である場合には、電流測定装置35及び制御装置2を省略することができる。このような構成の場合には、ECU3は、二次側の電気的特性(電流)を測定し、当該測定結果からPM濃度を算出する。
【0091】
また、PM付着量の測定に用いる電気的特性のパラメータが、電力(W)又はエネルギー(E)である場合には、PMセンサ103は、電圧を測定する電圧測定装置31をさらに備える構成となる。PMセンサ103は、電圧測定装置31により測定した電圧(V)と、電流測定装置35により測定した電流(I)とから、上述した(1)式に基づいてエネルギー(E)を算出し、又は(2)式に基づいて電力(W)を算出する。
【0092】
このようにして、PMセンサ103は、間欠的又は連続的に電流変動を生ずる定電圧電源部50を用いて、電極部11の電流変化や、振動周期変化等の電気的特性の変化に基づき、PM付着量を測定することができる。また、PMセンサ103は、測定したPM付着量と測定した排気ガスに含まれているPM濃度の相関関係から、PM濃度を算出することができる。
【0093】
<第5実施例>
また、本発明では、電極部11に付着しているPMを除去するPM除去部14が設けられている。なお、本実施例に係るPM除去部14は、上述した実施例(PMセンサ1、100、101、102、103)のいずれの形態に適用されても良い。
【0094】
また、電極部11に付着しているPMを除去するPM除去部14は、
1.電極部11を放電させることにより、電極部11に付着しているPMを分解して除去する第1の構成、又は、
2.電極部11を所定温度まで昇温することにより、電極部11に付着しているPMを燃焼して除去する第2の構成、又は、
3.電極部11に付着しているPMをブラシ、ヘラ、高圧ガスを吹きかける等の機械的な構造物によって物理的に除去する第3の構成等が考えられる。
【0095】
ここで、上述した第1の構成は、具体的には、図23に示すように、電源部10に、電極部11の電極が放電可能なレベルまで電圧を昇圧することができる構成、又は、放電専用の放電用電源部60を別に備える構成である。
【0096】
つぎに、放電によりPMを除去の手順について図24に示すフローチャートを用いて説明する。
【0097】
ステップST1において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、電極部11に電圧を印加し、PMを集塵する。
【0098】
ステップST2において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、電極間の電気的特性を測定し、PM濃度を算出する。なお、ステップST1及びステップST2の詳細な説明については、上述の第1実施例乃至第4実施例に記載されている。
【0099】
また、ステップST3において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、電極部11に付着しているPMを除去するために、電源部10(又は放電用電源部60)を制御し、電極部11に電源を供給する。電極部11は、電源部10(又は放電用電源部60)からの電源の供給により電極間に放電が発生する。
【0100】
ステップST4において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、電極部11の放電後、検知部12により電気的特性(静電容量、インピーダンス、インダクタンス、位相、電圧、電流等)を検知し、電極部11のPM付着量を求め、電極部11からPMが除去できているかどうかを判断する。PMが除去できていないと判断した場合(NO)には、電極部11の放電を継続し、PMが除去できていると判断した場合(YES)には、ステップST5に進む。
【0101】
ステップST5において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、PM除去モードを終了し、電源部10(又は放電用電源部60)の電源をオフにし、PM濃度を測定するモードに戻る。
【0102】
このようにして、PMセンサ1(100、101、102、103)は、排気ガスに含まれているPMを直接的に集塵するとともに、電気的特性の変化に基づき、PM濃度を検知することができる。また、PMセンサ1(100、101、102、103)は、PM濃度を検知する構成を大幅に変更することなく、PM濃度の検知後、電極に付着しているPMを放電により除去することができる。また、PMセンサ1は、厳しい環境下にも耐えうる耐久性があり、かつ、構成が簡易なため、コストの低廉化を図ることができる。
【0103】
<第6実施例(1)>
つぎに、上述した第2の構成について説明する。第2の構成は、具体的には、図25(A)に示すように、電極部11の電極に発熱抵抗体(ヒーター)70を備え、PMが付着する電極とPMを除去するヒーター70とが別個に構成される。なお、本実施例に係るヒーター70を有する電極部11は、上述した実施例(PMセンサ1、100、101、102、103)のいずれの形態に適用されても良い。
【0104】
また、電極部11は、図25(A)に示すように、電源部10に接続される電極71と、絶縁部72と、ヒーター電源部73に接続されるヒーター70と、から構成される。
【0105】
また、図25(B)は、電極部11の第1の構成パターンを示す断面図であり、電極71A(71B)の上部に絶縁部72A(72B)が形成され、絶縁部72A(72B)の上部にヒーター70A(70B)が形成され、電極71Aと電極71Bとが所定距離を隔てて、互いに向き合うように構成される様子を示している。
【0106】
また、図25(C)は、電極部11の第2の構成パターンを示す断面図であり、電極71A(71B)の上部に絶縁部72A(72B)が形成され、絶縁部72A(72B)の上部にヒーター70A(70B)が形成され、エッチング処理等により、絶縁部72A(72B)とヒーター70A(70B)が同幅となるように形成され、ヒーター70Aとヒーター70Bとが所定距離を隔てて、互いに向き合うように構成される様子を示している。
【0107】
また、図25(D)は、電極部11の第3の構成パターンを示す断面図であり、電極71A(71B)の上部にヒーター70A(70B)を内包した絶縁部72A(72B)が形成され、電極71Aと電極71Bとが所定距離を隔てて、互いに向き合うように構成される様子を示している。なお、上述した第1の構成パターン乃至第3の構成パターンは、一例であって、他の構成パターンであっても良い。
【0108】
また、ヒーター70の温度は、PMが燃焼する温度である約600度以上にする必要がある。また、電極部11は、電極71A(71B)自体にPt等のPM燃焼触媒として機能する材料が用いられても良いし、又は電極71A(71B)にPM燃焼触媒を塗布するような構成であっても良い。このような構成の場合には、当該触媒による燃焼開始温度まで、ヒーター70の発熱温度を低下させることが可能となる。
【0109】
つぎに、電極部11の電極71A(71B)にヒーター70を備える構成により、電極部11に付着したPMを除去する手順について、図26に示すフローチャートを用いて説明する。
【0110】
ステップST10において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、電極部11に電圧を印加し、PMを集塵する。
【0111】
ステップST11において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、電極間の電気的特性を測定し、PM濃度を算出する。なお、ステップST10及びステップST11の詳細な説明については、上述の第1実施例乃至第4実施例に記載されている。
【0112】
ステップST12において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、ヒーター電源部73を制御して、電極部11のヒーター70を所定温度まで昇温する。
【0113】
ステップST13において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、電極部11を所定温度まで昇温した後、検知部12により電気的特性(静電容量、インピーダンス、インダクタンス、位相、電圧、電流等)を検知し、電極部11のPM付着量を求め、電極部11からPMが除去できているかどうかを判断する。PMが除去できていないと判断した場合(NO)には、電極部11の昇温状態を維持し、PMの除去を続ける。また、PMが除去できていると判断した場合(YES)には、ステップST14に進む。
【0114】
ステップST14において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、PM除去モードを終了し、ヒーター電源部73をオフにし、電源部10のヒーター70の温度を下げ、PM濃度を測定するモードに戻る。
【0115】
このようにして、PMセンサ1(100、101、102、103)は、排気ガスに含まれているPMを直接的に集塵するとともに、電気的特性の変化に基づき、PM濃度を検知することができる。また、PMセンサ1(100、101、102、103)は、PM濃度を検知する構成を大幅に変更することなく、PM濃度の検知後、電極に付着しているPMをヒーター70による昇温により除去することができる。また、PMセンサ1は、厳しい環境下にも耐えうる耐久性があり、かつ、構成が簡易なため、コストの低廉化を図ることができる。
【0116】
<第6実施例(2)>
つぎに、上述した第2の構成を簡略化した構成について説明する。具体的には、図27(A)に示すように、電極部11の電極に不導体(絶縁体)82を誘電体として適用し、PMを付着する電極とPMを除去するヒーターとを一体的に構成する。なお、本実施例に係る電極部11は、上述した実施例(PMセンサ1、100、101、102、103)のいずれの形態に適用されても良い。
【0117】
図27(B)は、電極部11の断面図を示しており、電極81A(81B)が絶縁部82A(82B)に内包されて形成される様子を示している。
【0118】
また、電極部11は、図27(C)に示すように、電極81Aの一方端部aが電源部10に接続され、電極81Aの他方端部bがスイッチSW83Aを介して電源部10に接続され、また、電極81Aに対向する電極81Bの一方端部cが、スイッチSW83Aと電源部10を結線する線路に接続され、電極81Bの他方端部dが、スイッチSW83Bを介して電極81Aの一方端部aと電源部10を結線する線路に接続されている。
【0119】
したがって、スイッチSW83A及びスイッチSW83Bをオフ状態にし、電源部10から電極部11に対して電源を供給すると、電極81Aと電極81Bとの間で分極が生じ、PMが集塵される。
【0120】
また、スイッチSW83A及びスイッチSW83Bをオン状態にし、電源部10から電極部11に対して電源を供給すると、電極81Aの一方端部aと他方端部bとの間に電位差を生じ、また、電極81Bの一方端部cと他方端部dとの間に電位差を生じ、ヒーターとしての機能が発揮され、PMの除去を行うことができる。
【0121】
また、電極81A及び電極81Bの温度は、PMが燃焼する温度である約600度以上にする必要がある。また、電極81A(81B)自体にPt等のPM燃焼触媒として機能する材料が用いられても良いし、又は電極81A(81B)にPM燃焼触媒を塗布するような構成であっても良い。このような構成の場合には、当該触媒による燃焼開始温度まで、発熱温度を低下させることが可能となる。
【0122】
ここで、電極部11に付着したPMを除去する手順について、図28に示すフローチャートを用いて説明する。
【0123】
ステップST20において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、スイッチSW83A及びスイッチSW83Bをオフ状態にし、電極部11に電圧を印加し、PMを集塵する。
【0124】
ステップST21において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、電極間の電気的特性を測定し、PM濃度を算出する。なお、ステップST10及びステップST11の詳細な説明については、上述の第1実施例乃至第4実施例に記載されている。
【0125】
ステップST22において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、スイッチSW83A及びスイッチSW83Bをオン状態にし、電極部11に電圧を印加し、PMを除去する。
【0126】
ステップST23において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、電極部11を所定温度まで昇温した後、検知部12により電気的特性(静電容量、インピーダンス、インダクタンス、位相、電圧、電流等)を検知し、電極部11のPM付着量を求め、電極部11からPMが除去できているかどうかを判断する。PMが除去できていないと判断した場合(NO)には、電極部11の昇温状態を維持し、PMの除去を続ける。また、PMが除去できていると判断した場合(YES)には、ステップST24に進む。
【0127】
ステップST24において、PMセンサ1(100、101、102、103)は、PM除去モードを終了し、電源部10をオフにし、電極81A及び電極81Bの温度を下げ、PM濃度を測定するモードに戻る。
【0128】
このようにして、PMセンサ1(100、101、102、103)は、排気ガスに含まれているPMを直接的に集塵するとともに、電気的特性の変化に基づき、PM濃度を検知することができる。また、PMセンサ1(100、101、102、103)は、PM濃度を検知する構成を大幅に変更することなく、PM濃度の検知後、スイッチSW83A及びスイッチSW83Bのスイッチング動作により電極81A及び電極81Bを昇温することにより、電極81A及び電極81Bに付着しているPMを除去することができる。また、PMセンサ1は、厳しい環境下にも耐えうる耐久性があり、かつ、構成が簡易なため、コストの低廉化を図ることができる。
【0129】
<第7実施例>
つぎに、上述した第3の構成について説明する。なお、本実施例に係るPM除去部14は、上述した実施例(PMセンサ1、100、101、102、103)のいずれの形態に適用されても良い。
【0130】
PM除去部14は、第1の構成パターンとして、図29に示すように、電極部11に付着しているPMを除去するヘラにより構成されている。
【0131】
また、PM除去部14は、第2の構成パターンとして、図30に示すように、電極部11に付着しているPMを除去するブラシにより構成されている。
【0132】
また、PM除去部14は、第3の構成パターンとして、図31に示すように、所定の空気圧を出力する機構により構成されており、空気圧により電極部11に付着しているPMを除去する。なお、上述した第1の構成パターン乃至第3の構成パターンは、一例であって、他の構成パターンであっても良い。
【0133】
このようにして、PMセンサ1(100、101、102、103)は、排気ガスに含まれているPMを直接的に集塵するとともに、電気的特性の変化に基づき、PM濃度を検知することができる。また、PMセンサ1(100、101、102、103)は、PM濃度を検知する構成を大幅に変更することなく、上述した第1の構成パターン乃至第3の構成パターンのいずれかにより構成されるPM除去部14を駆動し、電極部11に付着しているPMを物理的に除去することができる。また、PMセンサ1は、厳しい環境下にも耐えうる耐久性があり、かつ、構成が簡易なため、コストの低廉化を図ることができる。
【0134】
<第8実施例>
つぎに、第8実施例のPMセンサ104について、図32〜図36を参照して説明する。
図32は、PMセンサの第8実施例の構成を示すブロック図である。このPMセンサ104は、上述の第1実施例のPMセンサ100と、電極部22の構成が異なる。なお、上述の第1実施例のPMセンサ100と同一の構成部には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0135】
図33は、PMセンサ104の電極部22の構成を示す図である。より具体的には、図33(A)は、電極部22の電極板221の構成を示す図であり、図33(B)は、一対の平行平板としての2枚の電極板221,221を含んで構成される電極部22の構成を示す図である。
【0136】
図33(A)に示すように、電極板221は、略矩形状のアルミナ基板221Aと、このアルミナ基板221Aの表面に形成されたタングステン導体層221Bと、を備える。このタングステン導体層221Bは、アルミナ基板221Aの略中央部において、略正方形状に形成された導体部と、この導体部からアルミナ基板221Aの一端側へかけて線状に延びる導線部と、を含んで構成される。また、アルミナ基板221Aの一端側には、このタングステン導体層221Bの導線部に積層して設けられたタングステン印刷部221Cが形成されている。
ここで、アルミナ基板221Aの厚みは、約1mmであり、タングステン導体層221Bの導体部の一辺の長さは、約10mmである。
【0137】
図33(B)に示すように、電極部22は、一対の電極板221,221を、板状のスペーサ222,222を介装して組み合わせることにより構成される。これらスペーサ222,222は、各電極板221の両端側に設けられており、これにより、各電極板221のタングステン導体221Bの導体部には、PMが集塵されるキャビティ223が形成される。
【0138】
以上のような電極部22には、上述の第1実施例のPMセンサ100と同様に、PMを集塵するための電圧を印加する電源部10と、電極部22の静電容量を測定するインピーダンス測定器20とが接続されている。
また、PMセンサ104の動作は、上述の第1実施例のPMセンサ100の動作と同じであり、その説明を省略する。
【0139】
次に、電極部22の評価試験について説明する。
図34は、評価試験に用いる試験装置25の構成を示すブロック図である。
試験装置25は、自動車用のエンジン26と、排気を浄化する酸化触媒27と、排気を濾過しPMを捕集するDPF28と、を含んで構成される。また、これら酸化触媒27及びDPF28は、エンジン26の排気通路261内に、上流側から酸化触媒27、DPF28の順で設けられる。PMセンサ104の電極部22は、排気通路261のうち、DPF28の下流側に設けられる。
【0140】
この評価試験では、エンジン26を所定の出力で駆動するとともに、DPF28の下流のPM濃度を変更し、各PM濃度における電極部22に付着したPMの単位時間当たりの量を測定した。さらにこの評価試験では、電極部22に付着したPM付着量を変化させ、各PM付着量における、電極部22の静電容量を測定した。
【0141】
また、エンジン26には、の排気量が2200ccのディーゼルエンジンを用い、評価試験は、25Nの負荷の下、回転数を1500rpmに保った状態で行った。また、DPF28の捕集フィルタの一部を削り取り、DPF28の捕集性能を劣化させることにより、DPF28の下流のPMの濃度を変更した。
【0142】
図35は、排気のPM濃度と、電極部22に付着したPMの単位時間当たりの量との関係を示す図である。この図に示すように、排気のPM濃度と、電極部22の単位時間当たりのPM付着量との間には、線形の正の相関関係がある。
図36は、電極部22のPM付着量と、電極部22の静電容量との関係を示す図である。なお、静電容量の測定では、測定周波数として10Hzを用いた。
【0143】
ここで、第1実施例のPMセンサ100と、第8実施例におPMセンサ104とを比較すると、第8実施例のPMセンサ104の電極部は、電極板の枚数が少なく、また、電極板の寸法も小さい。このため、例えば、PMセンサ104の電極部を上述の図34に示すようにエンジンの排気通路に設けた場合、排気通路の圧損の増加や、重量の増加を抑制できる。
また、このように電極板の枚数を少なくしたり、電極板の寸法を小さくしたりすることにより、電極部のPM付着量及び静電容量も小さくなるものの、図35及び図36に示すように、電極部の静電容量と排気のPM濃度との相関を測定することは十分に可能であり、PMの濃度を測定するセンサとしての機能が損なわれることはない。
【0144】
また、以上説明した第8実施例のPMセンサ104に、上述の第5〜第7実施例のPM除去部14を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明に係るPMセンサの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るPMセンサの第1実施例の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すPMセンサの電極部の構成を示す図である。
【図4】PM濃度と電極へのPM付着量との相関関係を示す図である。
【図5】PM付着量と静電容量との関係を示す図である。
【図6】本発明に係るPMセンサの第2実施例の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示すPMセンサの電源部から出力される信号波形を示す図である。
【図8】電極部が、放電しない場合と、放電する場合とにおいて、電圧が減衰振動する波形の様子を示す図である。
【図9】電極部に放電が起こらない場合において、電圧が減衰振動する波形の様子を示す図である。
【図10】電圧とPM付着量との相関関係を示す図である。
【図11】エネルギーとPM付着量との相関関係を示す図である。
【図12】電力とPM付着量との相関関係を示す図である。
【図13】振動周期変化によりPM付着量を測定する手法についての説明に供する電圧波形の図である。
【図14】ゼロクロスする時間とPM付着量との相関関係を示す図である。
【図15】本発明に係るPMセンサの第3実施例の構成を示すブロック図である。
【図16】図15に示すPMセンサの電源部から出力される信号波形を示す図である。
【図17】入力電圧に対する電極部の電気的特性の変化を示す図である。
【図18】電極部に放電が起こらない場合の電圧波形を示す図である。
【図19】ピーク電圧(Vpeak)とPM付着量との相関関係を示す図である。
【図20】振動位相変化によりPM付着量を測定する手法についての説明に供する入力電流Iinの波形と電極間電圧Voutの波形を示す図である。
【図21】振動位相差とPM付着量との相関関係を示す図である。
【図22】本発明に係るPMセンサの第4実施例の構成を示すブロック図である。
【図23】本発明に係るPMセンサの第5実施例の構成を示すブロック図である。
【図24】図23に示すPMセンサにより、放電を利用してPMを除去の手順についての説明に供するフローチャートである。
【図25】本発明に係るPMセンサの第6実施例(1)の構成を示すブロック図である。
【図26】図25に示すPMセンサにより、昇温を利用してPMを除去の手順についての説明に供するフローチャートである。
【図27】本発明に係るPMセンサの第6実施例(2)の構成を示すブロック図である。
【図28】図27に示すPMセンサにより、昇温を利用してPMを除去の手順についての説明に供するフローチャートである。
【図29】本発明に係るPMセンサに備えられるPM除去部の第1の構成パターンを示す図である。
【図30】本発明に係るPMセンサに備えられるPM除去部の第2の構成パターンを示す図である。
【図31】本発明に係るPMセンサに備えられるPM除去部の第3の構成パターンを示す図である。
【図32】本発明のPMセンサの第8実施例の構成を示すブロック図である。
【図33】図32に示すPMセンサの電極部の構成を示す図である。
【図34】評価試験に用いる試験装置の構成を示すブロック図である。
【図35】排気のPM濃度と電極部の単位時間当たりのPM付着量との関係を示す図である。
【図36】電極部のPM付着量と電極部の静電容量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0146】
1、100、101、102、103、104 PMセンサ、2 制御装置、3 ECU(Electronic Control Unit)、10 電源部、11 電極部、12 検知部、13 格納部、14 PM除去部、20 インピーダンス測定器、22 電極部、30 間欠的定電流電源部、31 電圧測定装置、32 一次電源部、33 スイッチング回路、34、45 トランス(二次電源部)、35 電流測定装置、40 連続的定電流電源部、41 第1の一次電源部、42 第1のスイッチング回路、43 第2の一次電源部、44 第2のスイッチング回路、50 定電圧電源部、70、70A、70B 発熱抵抗体(ヒーター)、71、71A、71B、81A、81B 電極、72、72A、72B、82A、82B 絶縁部、73 ヒーター電源部、83A スイッチSW、83B スイッチSW。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管内に設置され、一対の平行平板、または、当該一対の平行平板を多段に組み合わせたものを含んで構成される電極部と、
前記電極部に所定の電圧を印加する電源部と、
前記電源部により前記電極部に対して所定の電圧が印加され、前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質を前記電極部に付着させた後、前記電極部の電気的特性を測定し、測定された前記電気的特性から前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度を検知する検知手段と、を備えることを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記電源部の電気的特性と、前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度との関係を示すデータが格納されている格納手段を備え、
前記検知手段は、測定された前記電極部の電気的特性に基づいて、前記格納手段に格納されているデータを参照することにより、前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度を検知することを特徴とする請求項1記載の検知装置。
【請求項3】
前記電源部は、間欠的又は連続的に一定電流を前記電極部に印加する定電流電源あるいは間欠的又は連続的に一定電圧を前記電極部に印加する定電圧電源により構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の検知装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記電極部の前記電気的特性として、静電容量、インピーダンス、電圧、電流、入力電流と前記電極部から検出される電圧との位相差、電力又はエネルギーの変化を測定することにより前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質の濃度を検知することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の検知装置。
【請求項5】
前記検知手段により前記粒子状物質の濃度が検知された後、前記電極部に付着している前記粒子状物質を除去する除去手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の検知装置。
【請求項6】
前記除去手段は、前記電極部を放電させることにより、前記電極部に付着している前記粒子状物質を分解して除去することを特徴とする請求項5記載の検知装置。
【請求項7】
前記除去手段は、前記電極部を所定温度まで昇温することにより、前記電極部に付着している前記粒子状物質を燃焼して除去することを特徴とする請求項5記載の検知装置。
【請求項8】
前記除去手段は、前記電極部に付着している前記粒子状物質を機械的な構造物によって物理的に除去することを特徴とする請求項5記載の検知装置。
【請求項9】
電源部により所定の電圧を排気管内に設置されている電極部に印加し、前記排気管内の排気ガスに含まれている粒子状物質を前記電極部に付着させる付着工程と、
前記付着工程により前記電極部に前記粒子状物質が付着された後、前記電極部の電気的特性を測定する測定工程と、
前記測定工程により測定した前記電気的特性から、前記排気管内の排気ガスに含まれている前記粒子状物質の濃度を検知する検知工程を有することを特徴とする検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2008−139294(P2008−139294A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289654(P2007−289654)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】