説明

極細径連続繊維の製造方法

【課題】アラミドポリマーを主成分とする極細繊維、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アラミドポリマー溶液から繊維を紡糸する方法であって、(1)アラミドポリマーを、その蒸気圧が、紡糸温度下で8,000Pa以下の溶剤に溶解し、(2)紡糸温度で測定した粘度が150Pa・s以下のポリマー溶液とした後、(3)該ポリマー溶液を、吐出孔9より吐出し、該吐出液に、ポリマー吐出孔の外側に同心円状に設けられたノズル7から噴出した気流8を作用させるに際し、該吐出孔の吐出孔径(D、単位;mm)と気流圧力(P、単位;MPa)、さらには1吐出孔あたりからのポリマー溶液吐出量(C、単位;g/分/ホール)が下記式(1)を充足し、(4)該ポリマー溶液が吐出孔から吐出した後、ノズルから噴出した気流によりバーストさせることなく、連続的に固化させる。0.25≦P/(C×D)・・・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー吐出孔の外側に同心円状に設けられたノズルに作用させた気流によって効果的にアラミドポリマーの紡糸を行い、アラミドポリマーからなる極細径の繊維を製造する方法及びその方法によって得られた極細径連続繊維、不織布並びにヤーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アラミドポリマー(全芳香族ポリアミド)は、耐熱性、難燃性、耐薬品性、絶縁性に優れた繊維として有用であることはよく知られており、織物、編物、湿式/乾式不織布といった繊維構造体が産業用途製品に幅広く用途展開がなされている。アラミドポリマーは、その骨格の剛直性から実質的な溶融挙動を示さないため、溶融紡糸することはできず、溶液紡糸が適用される。アラミドポリマーは、アミド化合物溶媒に可溶であって、この溶液から、乾式紡糸、湿式紡糸、半乾半湿紡糸等の方法によって繊維を製造し得ることが知られている。
【0003】
極細径繊維の製造方法としては、一般にメルトブロー法、海島型混合紡糸法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法、爆裂紡糸法などが知られている。
メルトブロー法、海島型混合紡糸法は、溶融紡糸が可能なポリマーに対して適応される方法である。
一方、フラッシュ紡糸法は、ポリマー溶液に対して適応される方法であり、高密度ポリエチレンやポリプロピレンと低沸点の溶剤(塩化フッ化炭化水素など)の混合溶液を紡糸孔から吐出する前に相分離させてから吐出するもので、低沸点の溶剤は急激にガス化膨張し、ポリマーは延伸されながら固化し、フィブリル化した極細の繊維からなる網状の連続繊維となり、これを拡げて集積しウエブを形成する方法である。ただし、この紡糸法が適用されるポリマーの種類は限られている。
【0004】
エレクトロスピニング法は、ポリマー溶液の紡糸が可能であり、アラミドポリマーにも適用されているが(特許文献1〜2)、一般にその生産性はメルトブロー法等に比べて低い。
これらの方法以外に、爆裂紡糸技術によるポリマー溶液からの糸の製造方法が知られている(特許文献3)。これは、ラバル管によって高速に加速された気流によって促進されるポリマー溶液の爆裂によって紡糸を行う方法であり、その生産性はエレクトロスピニング法に比べて一般に高い。
ただし、上記の爆裂紡糸技術を特にアラミドポリマーに適用した場合、曳糸性が悪く、高速に加速された気流によって糸切れを起こしやすく、ドロップレットの原因となる、という問題があった。
また、特許文献4には、熱可塑性ポリマーをポリマー吐出孔から吐出させ、その外周から溶融したポリマーと並行に空気を随伴させ、さらに、ノズル端面から離れたエアスロットから噴射した高速の冷空気を吐出後のポリマーに作用させることによって、ポリマーを細繊化させる装置が示されている。ただし、上記の技術を溶液紡糸、特にアラミドポリマー溶液の紡糸に適用した場合、紡糸が不安定で、繊維径の小さい繊維を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−200779号公報
【特許文献2】特開2006−336173号公報
【特許文献3】US 2004/0099981 A1
【特許文献4】US 6013223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、耐熱性、難燃性、耐薬品性、絶縁性に優れたアラミドポリマーを主成分とする極細径繊維又は不織布を提供すること、及びその製造を生産性高く行う方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定の方法によりアラミドポリマーを主成分とする溶液を紡糸することにより、特定の繊維径を有する繊維又は不織布が製造可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、ポリマー吐出孔の外側に同心円状に設けられたノズルに気流を作用させてアラミドポリマーの紡糸を行う際、紡糸温度、圧力のコントロールのみならず、ポリマー吐出孔径と気流圧力の関係、さらにはポリマー吐出量に特に最適な範囲があることを見出した。この最適範囲においては、糸切れを起こしにくく、繊維径の小さい繊維が生産性良く得られることを見出した。
かくて、本発明は、アラミドポリマー溶液から繊維を紡糸する方法であって、
(1)アラミドポリマーを、その蒸気圧が紡糸温度下で8,000Pa以下の溶剤に溶解し、
(2)落球粘度計を用い、紡糸温度で測定した粘度が150Pa・s以下のポリマー溶液とした後、
(3)該ポリマー溶液を、細径を有するポリマー吐出孔より吐出し、該吐出液に、ポリマー吐出孔の外側に該ポリマー吐出孔と同心円状に設けられたノズルから噴出した気流を作用させるに際し、該ポリマー吐出孔の吐出孔径(D、単位;mm)と気流圧力(P、単位;MPa)、さらには1吐出孔あたりからのポリマー溶液吐出量(C、単位;g/分/ホール)が下記式(1)を充足し、
(4)該ポリマー溶液がポリマー吐出孔から吐出した後、ノズルから噴出した気流によりバーストさせることなく、連続的に固化させる
ことを特徴とする極細径連続繊維の製造方法に関する。
0.25 ≦ P/(C × D) ・・・・・(1)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維又は不織布の原料として、アラミドポリマー溶液を用い、特定の方法で紡糸を行うことにより、極細の繊維径を有する繊維又は不織布を提供することができる。また、その製造は、従来知られた極細径繊維の製造方法よりも生産性高く行うことができ、工業的に極細径繊維又は不織布の製造を行う方法として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の極細径連続繊維の製造方法に用いられる紡糸ノズルおよび凝固設備の断面の概略図である。
【図2】本発明の極細径連続繊維の製造方法に用いられる紡糸ノズルの下面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明において、極細径繊維又は不織布の原料樹脂として用いられるアラミドポリマーは、耐熱性、難燃性、耐薬品性、絶縁性に優れており、1種又は2種以上の2価の芳香族基が直接アミド結合により連結されているポリマーであって、該芳香族基は2個の芳香環が酸素、硫黄又はアルキレン基で結合されたものであってもよい。また、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、クロル基などのハロゲン基等が含まれていてもよい。さらには、これらアミド結合は限定されず、パラ型、メタ型のどちらでもよい。
かかるアラミドポリマーとしては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレン−テレフタルアミド、ポリメタフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどが好ましく選択される。中でもポリメタフェニレンイソフタルアミドなどがより好ましく選択される。
【0011】
上記アラミドポリマーを溶解する溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルイミダゾリジノン、アルコキシ−N−イソプロピル−プロピオンアミドなどのアミド系極性溶媒を挙げることができる。ジメチルスルホキシド(DMSO)も、また溶媒として使用される。ポリマーの溶解性を大きく損なわない程度に、上記溶媒以外のトルエン、アセトン等の溶媒を添加しても良い。中でもNMP、DMAcが、アラミドポリマー溶液の安定性の観点から好ましい。
なお、以上のような溶媒を用いたアラミドポリマー溶液のポリマー濃度は、アラミドポリマーとしてポリメタフェニレンイソフタルアミドを選択した場合、通常、8〜30重量%、好ましくは10〜25重量%程度である。
【0012】
また、曳糸性向上のために無機塩を添加しても良い。本方法で使用できる無機塩としては、カルシウム、リチウム、マグネシウムおよびアルミニウムよりなる群から選択されるカチオンを有する塩化物または臭化物等のハロゲン化物が挙げられ、特に塩化カルシウムまたは塩化リチウムが好ましい。これらの塩の混合物を使用することも可能である。
このような無機塩は必要に応じて添加することもあるが、溶液調製プロセス(例えば重合体製造プロセス)で必然的に生成するものであってもかまわない。無機塩の含有量は、アラミドポリマーを基準として45重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0013】
なお、上記の紡糸用ポリマー溶液には、本発明の目的を阻害しない範囲で水を含んでいても良い。ここで、水の含有量は、アラミドポリマーの重量を基準として70重量%以下であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0014】
本発明の紡糸方法としては、「US 6013223」で示される方法が、用いられる。具体的には、図1〜2に示すように、ダイ1によって適切な温度に温調されたキャビティー2に付属した紡糸ノズル3にポリマー溶液を供給する。このようにしてノズル内管9を通ったポリマー溶液10は、ポリマー吐出孔の外側に設置されたガス吐出口7から噴出したガス8によって、効果的に加速され、細化される。(このとき、ガス8は、吸気口6から取り入れられた圧縮空気等が、ガスキャビティー5中で分配され、ガス吐出口7を通って排出される。)
さらに、ポリマー溶液10は、ポリマー吐出孔から吐出後、大気14と接触するとともに、凝固液供給ノズル11から供給された凝固液12と接触させることによって固化し、極細の繊維15となる。
【0015】
なお、上記ガスは、ラバル管と呼ばれる管(断面積が先細りになった後、下部で広がる形状を有する)を通って加速されるものではないため、エア等のガス使用量が、ラバル管使用時に比べて少なくてすむという利点がある。また、強力な気流の加速によってポリマー溶液をバーストさせるものではないため、繊維の連続性が保たれやすい。
ただし、アラミドポリマー溶液に対して、上記紡糸方法を適用した場合、加速されたガスとの接触によってポリマー溶液の流れが切断され、ドロップレット(繊維表面の粒状塊)が生じやすかった。あるいはドロップレットが生じずとも繊維の連続性が損なわれ、得られた繊維集合体の毛羽立ちの原因となる、という問題があった。
【0016】
本発明の紡糸方法は、
(1)アラミドポリマーを、その蒸気圧が紡糸温度下で8,000Pa以下の溶剤に溶解し、
(2)落球粘度計を用い、紡糸温度で測定した粘度が150Pa・s以下のポリマー溶液とした後、
(3)該ポリマー溶液を、細径を有するポリマー吐出孔より吐出し、該吐出液に、ポリマー吐出孔の外側に同心円状に設けられたノズルから噴出した気流を作用させるに際し、該吐出孔の吐出孔径(D、単位;mm)と気流圧力(P、単位;MPa)、さらには1吐出孔あたりからのポリマー溶液吐出量(C、単位;g/分/ホール)が下記式(1)を充足し、
(4)該ポリマー溶液が吐出孔から吐出した後、ノズルから噴出した気流によりバーストさせることなく、連続的に固化させる
ことを特徴とする極細径連続繊維の製造方法に関する。
0.25 ≦ P/(C × D) ・・・・・(1)
【0017】
本発明では、まず(1)アラミドポリマーを蒸気圧が紡糸温度下で8,000Pa以下、好ましくは200〜8,000Paとなる溶剤に溶解し紡糸することにより、ポリマー吐出孔の外側に同心円状に設けられたノズルから噴出した気流を作用させたときに、必要以上の溶媒の揮発が起こらず、細径の繊維とすることができる。
ここで、蒸気圧は、通常の蒸気圧測定法、例えば固相あるいは液相と平衡するその物質の気体の圧力を種々の圧力計を用いて直接測定する方法で測定された値である。この蒸気圧が8,000Paを超えると、紡糸時に溶剤が揮発しやすく、繊維の分割前に固化が起こってしまい、極細径の繊維の製造が困難である。
このような溶剤としては、上述したアラミドポリマーを溶解する溶媒が挙げられ、好ましくはNMP、DMAc等である。
【0018】
また、本発明では、(2)落球粘度計を用いて紡糸温度で測定した場合のポリマー粘度を150Pa・s以下とすることにより、アラミドポリマーの紡糸を安定的に実施することができる。上記ポリマー粘度の好ましい範囲は1〜150Pa・sである。上記ポリマー粘度が150Pa・sを超える場合には、ノズルから吐出したポリマー溶液の流動性が損なわれ、高速に加速された気流が効率的に作用せず、目的とするアラミドポリマーからなる極細径連続繊維を得ることが出来ない。なお、上記ポリマー粘度1Pa・s未満の場合には、紡糸安定性が著しく損なわれ、安定に紡糸することが困難になる。
ポリマー粘度を150Pa・s以下とするには、アラミドポリマー溶液のポリマー濃度や、溶媒の種類を選択すること、無機塩の添加量を変化させること、あるいは適正な分子量のアラミドポリマーを選択することにより、容易に調整することができる。
【0019】
さらに、本発明において、(3)上記ポリマー溶液を、細径を有するノズルより吐出し、ポリマー吐出孔の外側に同心円状に設けられたノズルから噴出した気流を作用させるに際し、ポリマー溶液を吐出させる吐出孔の吐出孔径(D、単位;mm)と気流圧力(P、単位;MPa)、さらには1吐出孔あたりからのポリマー溶液吐出量(C、単位;g/分/ホール)との関係は、下記式(1)を充足するようにする。
0.25 ≦ P/(C × D) ・・・・・(1)
吐出孔径と気流圧力が上記式を満たす場合、特にアラミドポリマーの紡糸において、(4)ポリマー溶液のバーストが起こらず細径となるため、得られる繊維の細繊化が可能となる。P/(C × D)は、好ましくは0.25〜25である。P/(C × D)が0.25未満では、ポリマー溶液の効果的な細化が起こりにくく、太繊度の繊維となりやすい。
ここで、バーストとは、ポリマー溶液が一気に破裂し、極細径となることを指し、ポリマー溶液が細径に分割することを指す。バーストが起こると細径の繊維とはなるが、繊維の連続性は損なわれ、ドロップレットや毛羽立ちの原因となりやすい。
【0020】
本発明では、ポリマー溶液は、空気などの周囲の気体との接触、および/または、凝固液との接触により固化される。凝固液としては、アラミドポリマーに対する貧溶媒が用いられ、水、水/アミド系極性溶媒の混合液、水/アルコール類の混合液、アルコール類等が挙げられる。水/アミド系極性溶媒の混合液に含まれるアミド系極性溶媒としては、アラミドポリマーを溶解し、水と良好に混和するものであれば任意のものを使用することができるが、特にNMP、DMAc、DMFを好適に用いることができる。なかでも、溶媒の回収等を考慮すると、紡糸用ポリマー溶液中のアミド系極性溶媒と同種のものが好ましい。上記凝固液の中でも、水、水/NMP混合溶媒もしくは水/DMAc混合溶媒が好ましい。
【0021】
本発明で得られる極細径繊維を、走行するベルト上に捕捉することによって、均質な不織布構造体を得ることができる。その際、シート状基材の上に直接補足し、基材との積層体とすることもできる。このようにして得られた積層体をいったん巻き取り、再度この巻き取った積層体に該アラミドポリマー極細径繊維を捕捉し、三層構造にすることもできる。
【0022】
紡糸が完了した後、得られた繊維もしくは不織布を洗浄しても良い。繊維もしくは不織布を洗浄する方法としては、繊維から溶媒および塩を除去するあらゆる手段または機器を使用しても良く、例えば、洗浄浴に浸漬する方法、洗浄液もしくはスチーム等をふきつける方法、乾燥機にて乾燥除去する方法等が挙げられる。中でも、洗浄浴に浸漬する方法が好ましい。
【0023】
次いで、必要に応じて乾燥し、水分並びに残留溶媒を除去する。乾燥された繊維もしくは不織布は、引き続いて熱処理工程にて100〜500℃の温度で熱処理しても良い。この際の熱処理は、熱板上、乾熱雰囲気下もしくは蒸気雰囲気下のいずれの条件で行っても良い。蒸気雰囲気を使用する場合、該蒸気中には水以外にアミド系極性溶媒が含まれていてもよい。ここで、熱処理温度は、100〜500℃で実施するのが好ましい。500℃を超える場合には、得られる繊維は激しく劣化・着色し、場合によっては断糸する場合がある。一方、100℃未満の場合には、繊維が十分に弛緩されない場合がある。なお、熱板にて熱処理する場合には、好ましくは200〜400℃、さらに好ましくは250〜350℃で実施するのが好ましい。また、乾熱雰囲気下の熱処理の場合には、250〜500℃で実施するのが好ましい。蒸気雰囲気下の熱処理の場合に、100〜400℃で実施するのが好ましい。
また、本発明の乾燥された繊維もしくは不織布は、カレンダーロール、平板プレス機等にて加圧熱処理しても良い。カレンダーロールを用いる際、特に限定されないが、線圧は10kg/cm以上が好ましく、20kg/cm以上がより好ましく、50kg/cm以上がよりさらに好ましい。
【0024】
本発明の紡糸方法においては、アラミドポリマーの糸切れが起こりにくく、得られる繊維は本質的に連続であり、毛羽立ちの少ない極細径繊維の不織布を得ることができる。また、同時に細径化を実現することができ、得られる繊維の平均繊維径は5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。また、得られる繊維の平均繊維径の好ましい下限は、0.05μmである。
【0025】
また、本発明で得られる極細径連続繊維を切断することによって、短繊維を得た後、これに撚りをかけることによって、ヤーンを得ることができる。切断後の短繊維の長さは5〜200mmとするのが好ましい。本発明で得られる短繊維に別の短繊維を混合して撚りをかけ、ヤーンとしても良い。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。なお、実施例中における各物性値は、下記の方法で測定した。
<固有粘度(IV)>
ポリマーをNMPに100mg/20mLで溶解し、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した。
<ポリマー溶液粘度>
外径3mmの鋼球(材質SUS316)を用い、紡糸温度の恒温槽内で落球法にて測定した。
<平均繊維径>
得られた繊維から任意にサンプリングし、繊維50本について、走査型電子顕微鏡JSM6330F(JEOL社製)にて観察および測長を行い、平均繊維径を算出した。なお観察は、3,000倍の倍率で行った。
<繊維脱落(毛羽立ち)の観察>
得られた繊維集合体表面を指で軽く擦った時の繊維の脱落及び/又は層間剥離の有無を、目視ならびに顕微鏡にて観察した。「無し」は、50mm×50mmの試験片を採取し、繊維片の脱落や毛羽の発生がないと判断した状態を、「有り」は繊維片が1本以上脱落する、もしくは一ヶ所以上に小さな毛玉ができはじめる程度に毛羽立っていると判断した状態を示す。
【0027】
[実施例1]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した固有粘度(IV)=1.35のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末 20重量部を、−10℃に冷却したDMAc 80重量部中に懸濁させ、スラリー状にした後、45℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。このポリマー溶液の30℃における粘度は、22Pa・sであった。なお、DMAcの蒸気圧は、30℃で約330Paである。
図1の紡糸装置において、吐出孔径、すなわちノズル内管(キャピラリ)の内径を0.38mmとした。上記のポリマー溶液を、ギアポンプを使って図1の紡糸装置に供給し、紡糸温度30℃、圧空圧力0.14MPaとして紡糸を行った。この時、1吐出孔あたりからのポリマー溶液吐出量が0.2g/分/ホールとなるように、ポリマー溶液供給量を調整した。凝固液として水を使用し、吐出後のポリマー溶液に吹き付けることによって固化させ、不織布を得た。なお、吐出部分から凝固液スプレー位置までの距離は、30cmとした。
【0028】
[実施例2〜5、比較例1〜2]
ポリマー溶液吐出量、エア圧力を表1のように変えた以外は、実施例1と同様の方法で紡糸を行った。得られた不織布の繊維脱落の有無、不織布を構成する繊維の平均繊維径を表1に示す。
【0029】
[実施例6〜7、比較例3〜4]
ポリマー溶液として、表2の組成のポリメタフェニレンイソフタルアミド/NMP/CaClを用いた以外は、実施例1と同様の方法で紡糸を行った。このポリマー溶液の30℃における粘度は、60Pa・sであった。得られた不織布の繊維脱落の有無、不織布を構成する繊維の平均繊維径を表2に示す。
【0030】
[実施例8〜10、比較例5]
紡糸装置の吐出孔径(キャピラリ径)、エア圧力を、表3のように変えた以外は、実施例6と同様の方法で紡糸を行った。得られた不織布の繊維脱落の有無、不織布を構成する繊維の平均繊維径を表3に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明による極細径連続アラミド繊維は、耐熱性薄葉材を提供することができ、該耐熱性薄葉材は、例えばリチウムイオン電池用セパレータ並びにキャパシタ用セパレータ基材用素材、フィルター用素材として極めて有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 :ダイ
2 :キャビティー
3 :紡糸ノズル
4 :紡糸口金
5 :ガスキャビティー
6 :吸気口
7 :ガス吐出口
8 :ガスの流れ
9 :ノズル内管(キャピラリ)=ポリマー吐出口
10:ポリマー溶液
11:凝固液供給ノズル
12:凝固液
14:大気
15:ポリマー
16:プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミドポリマー溶液から繊維を紡糸する方法であって、
(1)アラミドポリマーを、その蒸気圧が、紡糸温度下で8,000Pa以下の溶剤に溶解し、
(2)落球粘度計を用い、紡糸温度で測定した粘度が150Pa・s以下のポリマー溶液とした後、
(3)該ポリマー溶液を、細径を有する吐出孔より吐出し、該吐出液に、ポリマー吐出孔の外側に同心円状に設けられたノズルから噴出した気流を作用させるに際し、該吐出孔の吐出孔径(D、単位;mm)と気流圧力(P、単位;MPa)、さらには1吐出孔あたりからのポリマー溶液吐出量(C、単位;g/分/ホール)が下記式(1)を充足し、
(4)該ポリマー溶液が吐出孔から吐出した後、ノズルから噴出した気流によりバーストさせることなく、連続的に固化させることを特徴とする極細径連続繊維の製造方法。
0.25 ≦ P/(C × D) ・・・・・(1)
【請求項2】
アラミドポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドである、請求項1記載の極細繊維の製造方法。
【請求項3】
極細径連続繊維の平均繊維径が5μm以下である請求項1〜2いずれか1項に記載の極細径連続繊維の製造方法。
【請求項4】
極細径連続繊維の平均繊維径が2μm以下である請求項1〜3いずれか1項に記載の極細径連続繊維の製造方法。
【請求項5】
極細径連続繊維の平均繊維径が1μm以下である請求項1〜4いずれか1項に記載の極細径連続繊維の製造方法
【請求項6】
ノズルより吐出したアラミドポリマー溶液を冷却するか、または貧溶媒と接触させて固化させる請求項1〜5いずれか1項に記載の極細径連続繊維の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られたことを特徴とする極細径連続繊維。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られた極細径連続繊維を、走行するベルト上に捕捉したことを特徴とする不織布。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られた極細径連続繊維を切断した後、該切断した繊維に撚りをかけたことを特徴とするヤーン。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られた極細径連続繊維を、走行するベルト上に捕捉することを特徴とする不織布の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られた極細径連続繊維を切断した後、該切断した繊維に撚りをかけることを特徴とするヤーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−180611(P2012−180611A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43579(P2011−43579)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】