説明

構造化有機薄膜

共有結合性有機骨格として配列した、複数のセグメントと複数の連結基とを含む、構造化有機薄膜であって、構造化有機薄膜は、複数セグメントの厚さの構造化有機薄膜とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本非仮出願は、2009年3月4日出願、米国仮出願第61/157,411号、標題“Structured Organic Films”の利益を主張するものであり、その内容は本件に引用して援用する。
【0002】
本願と同時出願の、同一出願人による、米国特許出願整理番号第 号、それぞれ、標題“ ”は、構造化有機薄膜、構造化有機薄膜の製造法、および構造化有機薄膜の用途について述べており、その内容は全て本件に引用して援用する。
【背景技術】
【0003】
分子が共有結合によって繋がり、巨大な構造体となった化学構造を持つ材料は、(1)ポリマおよび架橋ポリマと、(2)共有結合性有機骨格(covalent organic frameworks:COF)(共有結合した有機網目構造(covalently linked organic networks)としても知られる)の、2つに分類される。
【0004】
第1の種類、ポリマおよび架橋ポリマの具体的な例は、一般に、分子モノマが重合し、共有結合した分子を含む長い直鎖を形成したものである。ポリマの化学反応により、重合鎖を更に、または同時に‘架橋’させることができる。ポリマの化学反応性では、生成する物質の分子レベルでの構造、即ち、ポリマ鎖の組織化をあまり制御できず、また、鎖の間の分子モノマのパターンは殆どランダムである。規則的に並んだ棒状物として効率的に充填される一部の直鎖ポリマを除き、ほぼ全てのポリマは無定形である。一部のポリマ材料、特にブロック共重合体は、その容積の中に規則的な部分を持つことができる。先の2つのケースで、ポリマ鎖のパターン化は意図したものではなく、分子レベルでの規則性はいずれも元々の分子間の充填傾向によるものである。
【0005】
第2の種類、共有結合性有機骨格(COF)は、COFが非常にパターン化することを意図している点で、第1の種類(ポリマ/架橋ポリマ)とは異なる。COFの化学反応において、分子コンポーネントは、モノマではなく分子構成要素(molecular building blocks)と呼ばれる。COF合成の際、分子構成要素が反応して2次元または3次元の網目構造ができる。その結果、分子構成要素はCOF材料の中でパターン化し、分子構成要素は互いに強い共有結合によって結合する。
【0006】
これまでに開発されたCOFは一般に、空隙率の高い粉末で、非常に密度の低い物質である。COFは、最高記録に近い量のアルゴンおよび窒素を貯蔵することができる。これら既存のCOFは有用であるが、本発明の実施の形態に示すような、特性の向上した、既存のCOFを上回る長所を備えた新たな材料が求められている。
【0007】
既存のCOFの性質および特徴は以下の文献に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,582,798号明細書
【特許文献2】米国特許第7,196,210号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Shun Wanら、“A Belt-Shaped, Blue Luminescent, and Semiconducting Covalent Organic Framework,” Angew. Chem. Int. Ed., Vol. 47, pp. 8826-8830(2008年1月10日、ウェブ上で公開)。
【非特許文献2】Nikolas A. A. Zwaneveldら、“Organized Formation of 2D Extended Covalent Organic Frameworks at Surfaces,” J. Am. Chem. Soc., Vol. 130, pp. 6678-6679(2008年4月30日、ウェブ上で公開)。
【非特許文献3】Adrien P. Coteら、“Porous, Crystalline, Covalent Organic Frameworks,” Science, Vol. 310, pp. 1166-1170(2005年11月18日)。
【非特許文献4】Hani El-Kaderiら、“Designed Synthesis of 3D Covalent Organic Frameworks,” Science, Vol. 316, pp. 268-272(2007年4月13日)。
【非特許文献5】Adrien P. Coteら、“Reticular Synthesis of Microporous and Mesoporous Covalent Organic Frameworks” J. Am. Chem. Soc., Vol. 129, 12914-12915(2007年10月6日、ウェブ上で公開)。
【非特許文献6】Omar M. Yaghiら、“Reticular synthesis and the design of new materials,” Nature, Vol. 423, pp. 705-714(2003年6月12日)。
【非特許文献7】Nathan W. Ockwigら、“Reticular Chemistry: Occurrence and Taxonomy of Nets and Grammar for the Design of Frameworks,” Acc. Chem. Res., Vol. 38, No. 3, pp. 176-182(2005年1月19日、ウェブ上で公開)。
【非特許文献8】Pierre Kuhnら、“Porous, Covalent Triazine-Based Frameworks Prepared by Ionothermal Synthesis,” Angew. Chem. Int. Ed., Vol. 47, pp. 3450-3453(2008年3月10日、ウェブ上で公開)。
【非特許文献9】Jia-Xing Jiangら、“Conjugated Microporous Poly(aryleneethylnylene) Networks,” Angew. Chem. Int. Ed., Vol. 46, (2008) pp, 1-5(2008年9月26日、ウェブ上で公開)。
【非特許文献10】Hunt, J.R.ら、“Reticular Synthesis of Covalent-Organic Borosilicate Frameworks”J. Am. Chem. Soc., Vol. 130, (2008), 11872-11873(2008年8月16日、ウェブ上で公開)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実施の形態において、共有結合性有機骨格として配列した、複数のセグメントと複数の連結基(linker)とを含み、巨視的レベルにおいて、共有結合性有機骨格が薄膜である、構造化有機薄膜を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の他の特徴は、以下の説明により、また、実例となる実施の形態を示している以下の図を参照することにより、明らかとなろう。別記のない限り、異なる図中の同じ参照番号は、同一または同様の構造体を指している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のSOFを含む、代表的な光受容体を示す、簡略化した側面図である。
【図2】本発明のSOFを含む、第2の代表的な光受容体を示す、簡略化した側面図である。
【図3】本発明のSOFを含む、第3の代表的な光受容体を示す、簡略化した側面図である。
【図4】本発明のSOFを含む、第1の代表的な薄膜トランジスタを示す、簡略化した側面図である。
【図5】N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンのみを液体反応混合物に加えた(上)、ベンゼン−1,4−ジメタノールのみを液体反応混合物に加えた(中)、パターン化したタイプ2 SOFの生成に必要な必須成分を液体反応混合物に加えた(下)、対照実験混合物の生成物のフーリエ変換赤外スペクトルの比較を示すグラフである。
【図6】N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントと、p−キシリルセグメントと、エーテル連結基とを含む、自立型(free standing)SOFのフーリエ変換赤外スペクトルを示すグラフである。
【図7】N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントと、n−ヘキシルセグメントと、エーテル連結基とを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外スペクトルを示すグラフである。
【図8】N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントと、4,4'−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェニルと、エーテル連結基とを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外スペクトルを示すグラフである。
【図9】トリフェニルアミンセグメントと、エーテル連結基とを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外スペクトルを示すグラフである。
【図10】トリフェニルアミンセグメントと、ベンゼンセグメントと、イミン連結基とを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外スペクトルを示すグラフである。
【図11】トリフェニルアミンセグメントと、イミン連結基とを含む、自立型SOFのフーリエ変換赤外スペクトルを示すグラフである。
【図12】タイプ1の構造化有機薄膜オーバーコート層の光導電性を示す、光誘導放電曲線(PIDC)のグラフである。
【図13】ワックス添加剤を含む、タイプ1の構造化有機薄膜オーバーコート層の光導電性を示す、光誘導放電曲線(PIDC)のグラフである。
【図14】タイプ2の構造化有機薄膜オーバーコート層の光導電性を示す、光誘導放電曲線(PIDC)のグラフである。
【図15】実施例26および実施例54で作製したSOFの2次元X線散乱データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
“構造化有機薄膜(Structured Organic Film:SOF)”は、巨視的レベルにおいて薄膜であるCOFを指すために本発明で導入した新しい用語である。用語“SOF”は、巨視的レベルにおいて薄膜である共有結合性有機骨格(COF)を指す。用語“巨視的レベル”とは、例えば、このSOFを肉眼で見ることをいう。COFは“微視的レベル”または“分子レベル”において網目構造(強力な拡大装置の使用が必要、または、散乱法を用いた評価で)であるが、薄膜は、例えば、範囲とする大きさの桁が、微視的レベルのCOF網目構造よりも大きいため、本発明のSOFは、“巨視的レベル”において基本的に異なっている。本件に記載のSOFは、先に合成された一般的なCOFとは全く異なる巨視的形態を持つ。先に合成されたCOFは一般に、多結晶または微粒子粉末として得られ、粉末は少なくとも数千の粒子(結晶)の集合体であり、それぞれの粒子(結晶)はnmからmmの範囲の大きさを持つと考えられる。粒子の形状は、板状、球状、立方体、ブロック、角柱状などが可能である。それぞれの粒子(結晶)の組成は、粒子全体で同じであるが、粒子の縁または表面は共有結合した骨格のセグメントの終端となっている。本件に記載のSOFは粒子の集合体ではない。その代わり、本発明のSOFは、巨視的レベルにおいて、実質的に欠陥のないSOF、または、欠陥のないSOFであって、このSOFは、例えば、1mmよりもずっと長い長さから1m程の長さにも、また理論的には、数百mの長さにも延ばすことが可能な、連続的な共有結合性有機骨格を備えている。典型的に、SOFの2つの次元は第3の次元よりも遙かに大きく、SOFは大きなアスペクト比を持つ傾向があることも理解されよう。SOFは、COF粒子の集合体よりも、巨視的な縁や途切れている外部表面が著しく少ない。
【0014】
実施の形態において、“実質的に欠陥のないSOF”または“欠陥のないSOF”は、下部(underlying)基材の表面に堆積した反応混合物から生成する。用語“実質的に欠陥のないSOF”とは、例えば、その上でSOFを生成した下部基材から取り外す、または外さないSOFで、1平方cm当たりに、2つの隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きいピンホール、細孔、またはギャップが殆ど含まれない、例えば、1cm当たり、直径約250nmを超えるピンホール、細孔、またはギャップが10個未満、あるいは、1cm当たり、直径約100nmを超えるピンホール、細孔、またはギャップが5個未満であるSOFを指す。用語“欠陥のないSOF”とは、例えば、その上でSOFを生成した下部基材から取り外す、または外さないSOFで、1μm当たりに、2つの隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きいピンホール、細孔、またはギャップが含まれない、例えば、1μm当たり、直径約100オングストロームを超えるピンホール、細孔、またはギャップが含まれない、1μm当たり、直径約50オングストロームを超えるピンホール、細孔、またはギャップが含まれない、あるいは、1μm当たり、直径約20オングストロームを超えるピンホール、細孔、またはギャップが含まれないSOFを指す。
【0015】
実施の形態において、SOFは、少なくとも1つの炭素以外の元素の原子、例えば、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素、硫黄から成る群より選ばれる、少なくとも1つの原子を含んでいる。別の実施の形態において、SOFは、ボロキシン、ボラジン、ホウケイ酸塩、およびボロン酸エステルを含まないSOFである。
【0016】
[分子構成要素]
本発明のSOFは、セグメント(S)と官能基(Fg)とを備えた分子構成要素を含んでいる。分子構成要素には、少なくとも2つの官能基(x≧2)が必要であり、1種類の、または2種類以上の官能基が含まれる。官能基は、SOF生成過程の間に、セグメントを互いに連結する化学反応に関与する、分子構成要素の化学活性部分である。セグメントは、官能基を保持し、官能基に関係しない全ての原子を含んでいる分子構成要素の部分である。更に、分子構成要素のセグメントの組成は、SOF生成後も不変である。
【0017】
[官能基]
官能基は、SOF生成過程の間に、セグメントを互いに連結する化学反応に関与する、分子構成要素の化学活性部分である。官能基は1つの原子を含み、または、官能基は2つ以上の原子を含む。官能基の原子組成は、化合物の反応部分に一般に関与している原子組成である。官能基の非制限的な例としては、ハロゲン類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、カルボン酸類、エステル類、カルボナート類、アミン類、アミド類、イミン類、尿素類、アルデヒド類、イソシアナート類、トシラート類、アルケン類、アルキン類などが挙げられる。
【0018】
分子構成要素は複数の化学的部分を含んでいるが、このような化学的部分のサブセットだけがSOF生成過程における官能基となる。化学的部分が官能基となるかならないかは、SOF生成過程で選択した反応条件に応じて決まる。官能基(Fg)は、反応性部分である化学的部分、つまり、SOF生成過程における官能基を意味している。
【0019】
SOF生成過程において、官能基の組成は、原子の損失、原子の獲得、または、原子の損失と獲得の両方によって変わり、あるいは、官能基全体が失われることがある。SOF中において、官能基に関与していた原子は、セグメントを互いに繋ぎ合わせる化学的部分である連結基と関わることになる。官能基は特徴的な化学反応性を持ち、当業者ならば、本発明の分子構成要素中で官能基を構成している原子がおおよそ理解できる。注目すべきは、分子構成要素の官能基の一部とされる原子または原子群が、SOFの連結基の中に保持されることである。連結基については後に説明する。
【0020】
[セグメント]
セグメントは、官能基を保持し、官能基に関与しない全ての原子を含んでいる分子構成要素の部分である。更に、分子構成要素のセグメントの組成は、SOF生成後も不変である。実施の形態において、SOFは、第2のセグメントと同じ、または異なる構造を持つ第1のセグメントを含んでいる。別の実施の形態において、第1および/または第2セグメントの構造は、第3セグメント、第4セグメント、第5セグメントなどと同じ、または異なるものである。セグメントも、傾向(inclined property)を与えることのできる、分子構成要素の部分である。傾向については、後に実施の形態で説明する。
【0021】
具体的な実施の形態において、SOFのセグメントは、少なくとも1つの炭素以外の元素の原子、例えば、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素、硫黄から成る群より選ばれる、少なくとも1つの原子を含んでいる。
【0022】
分子構成要素の例を以下に図示する。それぞれの例では、セグメント(S)および官能基(Fg)として指定された分子構成要素の部分が示されている。
【0023】
[1種類の官能基を持つ分子構成要素]
分子構成要素 セグメント(S)(四角中に示したフェニル環) 官能基(Fg)(3つの円で囲んだOH基)
【化1】

【0024】
[2種類の官能基を持つ分子構成要素]
分子構成要素 セグメント(S)(四角中に示したテトラフェニルメタン基) 官能基(Fg)(2つの円で囲んだNH基、および2つの円で囲んだCHO基)
【化2】

【0025】
[2種類の官能基を持つ分子構成要素]
分子構成要素 セグメント(S)(実線の四角で示したトリル基) 官能基(Fg)(円で囲んだアミノ基、および円で囲んだヒドロキシル基)
【化3】

【0026】
[連結基]
連結基は、分子構成要素上にある官能基間の化学反応によってSOF中に生じる化学的部分である(以下に図示する)。
分子構成要素 S=セグメント(SOF中に保持されている分子構成要素の部分) Fg=官能基 反応性コーティング工程
【化4】

【0027】
連結基には、共有結合、単原子、または共有結合原子群が含まれる。前者は、共有結合連結基と定義され、例えば、共有単結合または共有二重結合であって、対になった全ての構成要素上の官能基が完全に失われたときに生じる。後者の種類の連結基は、化学基(chemical moiety)連結基と定義され、共有単結合、共有二重結合、またはこのふたつの組み合わせで結合した1つ以上の原子を含む。連結基に含まれる原子は、SOF生成過程の前に分子構成要素の官能基中にあった原子に由来する。化学基連結基は、公知の化学基、例えば、エステル類、ケトン類、アミド類、イミン類、エーテル類、ウレタン類、カルボナート類など、またはこれらの誘導体等である。
【0028】
例えば、2つのヒドロキシル(−OH)官能基を使用し、SOF中のセグメントを酸素原子を経て結合させる場合、連結基は酸素原子となり、これは、エーテル連結基とも記述される。実施の形態において、SOFは、第2の連結基と同じ、または異なる構造を持つ第1の連結基を含んでいる。別の実施の形態において、第1および/または第2連結基の構造は、第3の連結基などと同じ、または異なるものである。
【0029】
具体的な実施の形態において、連結基は、少なくとも1つの炭素以外の元素の原子、例えば、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素、硫黄から成る群より選ばれる、少なくとも1つの原子を含んでいる。
【0030】
[SOFの種類]
SOFの代表的な3つの種類について以下で述べる。これらのSOFの種類は、セグメントと連結基との組み合わせとして表される。特定のSOFの種類の名称は、選択した構成要素の組成、またはSOFの合成に用いた方法、あるいはSOFの物理的性質に対して、特に意味を持つものではない。
【0031】
タイプ1 SOF:1種類のセグメントと1種類の連結基を含む。
【0032】
タイプ2 SOF:2種類のセグメントと1種類の連結基を含む。
【0033】
タイプ3 SOF:複数種類のセグメントおよび/または複数種類の連結基を含む。
【0034】
実施の形態において、複数種類の構成要素を用いて、単一工程でSOFを生成することができる。これには更に、構成要素の官能基間の反応性が適合している限り、複数種類のセグメントを加えても良い。複数種類のセグメントおよび/または複数種類の連結基を含むSOFは、タイプ3 SOFと表される。
【0035】
例えば、可能な様々なタイプ3 SOFの中で、あるひとつのタイプ3 SOFは、構造の異なる、少なくとも第1の連結基と第2の連結基とを(必要に応じて、第3、第4、第5などの連結基も)含む複数の連結基と、構造の異なる、少なくとも第1のセグメントと第2のセグメントとを(必要に応じて、第3、第4、第5などのセグメントも)含む複数のセグメントとを含むものである。その第1セグメントは、SOFの縁にない場合、少なくとも3つの他のセグメント(連結基を経て第1セグメントに結合している3つの第2セグメントなど)に結合している。結合の少なくとも1つは第1連結基を経ていて、結合の少なくとも1つは第2連結基を経ている。または、あるひとつのタイプ3 SOFは、構造の異なる、少なくとも第1の連結基と第2の連結基とを(必要に応じて、第3、第4、第5などの連結基も)含む複数の連結基と、同一の構造を持つセグメントを含む複数のセグメントとを含むものである。SOFの縁にないセグメントは、連結基によって少なくとも3つの他のセグメントに結合している。結合の少なくとも1つは第1連結基を経ていて、結合の少なくとも1つは第2連結基を経ている。あるいは、あるひとつのタイプ3 SOFは、構造の異なる、少なくとも第1のセグメントと第2のセグメントとを(必要に応じて、第3、第4、第5などのセグメントも)含む複数のセグメントを含むものである。その第1セグメントは、SOFの縁にない場合、1つ以上の連結基によって、少なくとも3つの他のセグメント(3つの第2セグメントや、存在する様々な他のセグメントなど)に結合している。
【0036】
[SOFの種類の説明]
代表的な化学構造を持つ具体的なSOFの種類の合成法の非制限的な例を以下に示す。以下の説明から、異なる組み合わせの分子構成要素を用いて同じ種類のSOFが合成可能であることがここで明らかとなる。以下に提示したそれぞれの方法では、SOFの化学構造の一部だけを示している。
【0037】
方法1:1種類の分子構成要素を用いた、タイプ1 SOFの製造。このSOFは、エチレン(2原子)型の連結基を含んでいる。
【化5】


【化6】


はそこから骨格が伸びる点を示す。
【0038】
方法2:1種類の分子構成要素を用いた、タイプ1 SOFの製造。このSOFは、単原子型の連結基を含んでいる。
【化7】


【化8】


はそこから骨格が伸びる点を示す。
【0039】
方法3:セグメントが同じである、2種類の分子構成要素を用いた、タイプ1 SOFの製造。このSOFは、イミン(2原子)型の連結基を含んでいる。
【化9】


【化10】


はそこから骨格が伸びる点を示す。
【0040】
方法4:2種類の分子構成要素を用いた、タイプ2 SOFの製造。このSOFは、2種類のセグメントと、1種類の連結基(アミド、4原子)を含んでいる。
【化11】


【化12】


はそこから骨格が伸びる点を示す。
【0041】
方法5:2種類の分子構成要素を用いた、タイプ3 SOFの製造。この場合、セグメントの数は2であり、連結基の種類の数は2である。更に、このSOFは、イミン(3原子)およびアミド(4原子)連結基で結合したパターン化セグメントを含んでいる。
【化13】


【化14】


はそこから骨格が伸びる点を示す。
【0042】
[SOFの計量的パラメータ]
SOFは適当なアスペクト比を持っている。実施の形態において、SOFは、例えば、約30:1を超える、約50:1を超える、約70:1を超える、または約100:1を超える、例えば、約1000:1のアスペクト比を持つ。SOFのアスペクト比は、その平均厚さ(即ち、その最も短い寸法)に対するその平均幅または直径(即ち、その厚さの次に大きな寸法)の比と定義される。ここで用いる、用語“アスペクト比”は、理論によって束縛するものではない。SOFの最も長い寸法はその長さであるが、SOFのアスペクト比の計算では考慮しない。
【0043】
一般に、SOFは、約500μmを超える、例えば、約10mmまたは30mmの幅および長さ、あるいは直径を持つ。SOFの厚さの例は、単一セグメントの厚さの層で、約10オングストロームから約250オングストローム、例えば、約20オングストロームから約200オングストロームであり、複数セグメントの厚さの層で、約20nmから約5mm、約50nmから約10mmである。
【0044】
SOFの寸法は、様々な器具と方法を用いて測定する。約1μm以下の寸法では、走査型電子顕微鏡が望ましい方法である。約1μm以上の寸法では、マイクロメータ(または定規)が望ましい方法である。
【0045】
[必要に応じたSOFの周期性]
SOFは結晶体または非結晶体として単離される。結晶性薄膜は、電磁放射線、例えば、X線および/または素粒子(例えば中性子など)等をコヒーレントに散乱(回折)するよう、どのような長さの尺度においても十分な周期性を持つものである。コヒーレントな散乱は、使用する放射線または粒子の検出に適した検出装置を用いて、1次元、2次元、または3次元で検出した回折パターンの観測により確認できる。非晶性薄膜は、例えば、X線および/または素粒子(例えば、中性子など)等の電磁放射線をコヒーレントに散乱(回折)しないものである。
【0046】
回折法の分野の全ての機器、または、散乱データを2次的に収集可能な機器は、コヒーレントおよび非コヒーレント散乱の測定に使用できる。このような機器としては、1、2、または3次元で散乱(電磁放射線および/または素粒子の)を検出可能な点、線、または面検出装置、物質からの散乱電子を検出するために取り付けた電子顕微鏡などの(但し、これらに限定しない)画像形成装置を取り付けた、1、2、3、また4円(circle)ゴニオメータが挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0047】
あるいは、ミクロンまたはサブミクロンスケールでの構造測定が可能な画像形成法を用いてSOFの周期性を調べても良い。このような方法としては、走査型電子顕微鏡法、トンネル電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法が挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0048】
[多層型SOF]
SOFは、単一の層または複数の層(即ち、2、3、またはそれ以上の層)を含んでいる。複数の層を含むSOFは、物理的に結合(例えば、双極子および水素結合)または化学的に結合している。物理的に付着した層は、層間相互作用または付着性が弱いという特徴があり、このため物理的付着層は互いに層間剥離し易い。化学的に付着した層は、化学的な結合(例えば、共有またはイオン結合)を持つ、あるいは、隣接層を強く結びつける多数の物理的または分子間(超分子)エンタングルメントを持つと考えられる。
【0049】
このため、化学的に付着した層の剥離はより困難である。層間の化学的付着は、集束(focusing)赤外またはラマン分光法などの分光法、あるいは、界面での化学種を正確に検出できる空間分解能を持つ別の方法を用いて検出する。層間の化学的付着が層自体の中の化学種とは異なる場合、固体(solid-state)核磁気共鳴分光法などの感度の良いバルク分析や、他のバルク分析法を用いて、これらの付着を検出することができる。
【0050】
実施の形態において、SOFは、単一の層(単一セグメントの厚さ、または複数セグメントの厚さ)または複数の層(それぞれの層が単一セグメントの厚さ、または複数セグメントの厚さ)である。“厚さ”とは、例えば、薄膜の最も小さい寸法を指す。先に述べたように、SOF内において、セグメントは、連結基を経て共有結合して薄膜の分子骨格を生じる分子単位である。薄膜の厚さは、薄膜の断面を見た場合に薄膜の軸に沿ってカウントされるセグメントの数と定義できる。“単分子層”SOFは最も簡単な場合で、例えば、薄膜がセグメント1つの厚さの場合を指す。この軸に沿って2つ以上のセグメントがあるSOFは、“複数セグメント”の厚さのSOFと呼ばれる。
【0051】
物理的に付着した多層型SOFの代表的な調製法には、(1)第1の硬化サイクルで硬化されるベースSOF層を生成する工程と、(2)ベース層上に第2の反応性ウェット層を形成後、第2硬化サイクルを行う工程と、所望ならば、第2工程を繰り返して第3層、第4層などを生成する工程とが含まれる。物理的に積み重ねた多層型SOFは、約20オングストローム以上の厚さ、例えば、次のような例示的な厚さ:約20オングストロームから約10cm、例えば、約1nmから約10mm、または約0.1mmオングストロームから約5mmの厚さを持つ。原則として、この工程で物理的に積み重ねる層の数に制限はない。
【0052】
実施の形態において、多層型SOFは、(1)表面に官能基(または、ぶら下がり(dangling)官能基)を持つベースSOF層を、第1の反応性ウェット層から生成する工程と、(2)ベース層上に、ベースSOF層の表面のぶら下がり官能基と反応する官能基を持つ分子構成要素を含む第2の反応性ウェット層から、第2のSOF層を形成する工程と、によって、化学的に付着した多層型SOFを製造する方法で作る。所望ならば、ベース層からぶら下がっている官能基と反応する官能基と、更に、第3の層を第2層に化学的に付着させるような追加の官能基とを持つ分子構成要素を、第2のSOF層の形成に用いる配合物に加えると良い。化学的に積み重ねた多層型SOFは、約20オングストローム以上の厚さ、例えば、次のような例示的な厚さ:約20オングストロームから約10cm、例えば、約1nmから約10mm、または約0.1mmオングストロームから約5mmの厚さを持つ。原則として、この工程で化学的に積み重ねる層の数に制限はない。
【0053】
実施の形態において、化学的に付着した多層型SOFの製造法は、SOF(ベース層)の形成に用いる工程の際に、1つの分子構成要素(2つ以上の分子構成要素がある場合)を少し過剰に用いて、この分子構成要素上にある官能基をベース層表面に存在させ、既存SOF(ベース層)への第2のSOFの化学的付着を促進する工程を含む。ベース層の表面を試薬で処理して、ぶら下がり官能基の活性を高め、あるいは、ぶら下がり官能基の数を増しても良い。
【0054】
実施の形態において、SOFの表面にあるぶら下がり官能基を変えて、特定の種類の分子または個々の分子(SOFなど)をベース層、あるいは追加の基材またはSOF層へ共有結合し易くし(あるいは、反対に、共有結合しにくくし)ても良い。例えば、SOF層などのベース層の表面(反応性ぶら下がり官能基を含んでいる)を、キャッピング化学基で表面処理して安定化(pacified)する。例えば、ぶら下がりヒドロキシルアルコール基を持つSOF層を塩化トリメチルシリル(trimethylsiylchloride)で処理し、ヒドロキシル基を安定なトリメチルシリルエーテルとしてキャッピングして安定化する。あるいは、非化学的に結合する試剤(ワックスなど)でベース層の表面を処理して、ぶら下がり官能基がその後の層と反応するのを妨げても良い。
【0055】
[分子構成要素の対称性]
分子構成要素の対称性は、分子構成要素セグメントの周囲を取り囲む官能基(Fg)の位置に関係する。化学的または数学的理論によって束縛するものではないが、対称性分子構成要素は、Fgの位置が、棒の端、規則的幾何学形状の垂直線、あるいは、歪んだ棒または歪んだ幾何学形状の垂直線に関係しているものである。例えば、4つのFgを含む分子構成要素として最も対称性の高い選択肢は、そのFgが正方形の角または四面体の頂点に載っているものである。
【0056】
本発明の実施の形態では、2つの理由により対称性構成要素を使用する。(1)規則的な形状の結合は、網状体化学(reticular chemistry)においてより理解されている過程であるため、分子構成要素のパターン化をより良く予想できる。(2)対称性の低い構成要素では、誤った立体構造/配向を取って、SOF中に多数の結合欠陥を生じるおそれがあるため、対称性の高いものの方が分子構成要素間の完全な反応が促進される。
【0057】
構成要素の対称要素を示したものを以下に示す。このような対称要素は本発明で使用される構成要素中に見られる。
【化15】


理想的な棒状の構成要素
【化16】


理想的な棒状の構成要素
【化17】


歪んだ棒状の構成要素
【化18】


歪んだ棒状の構成要素
【化19】


理想的な三角形の構成要素
【化20】


理想的な三角形の構成要素
【化21】


歪んだ三角形の構成要素
【化22】


歪んだ三角形の構成要素
【化23】


理想的な四面体の構成要素
【化24】


理想的な四面体の構成要素
【化25】


歪んだ四面体の構成要素
【化26】


歪んだ四面体の構成要素
【化27】


理想的な四角形の構成要素
【化28】


歪んだ四角形/四面体の構成要素
【化29】


歪んだ四角形/四面体の構成要素
【0058】
実施の形態において、タイプ1 SOFは、SOFの縁に位置せず、連結基によって少なくとも3つの他のセグメントと結合しているセグメントを含んでいる。例えば、実施の形態において、SOFは、理想的な三角形の構成要素、歪んだ三角形の構成要素、理想的な四面体の構成要素、歪んだ四面体の構成要素、理想的な四角形の構成要素、および歪んだ四角形の構成要素から成る群より選ばれる、少なくとも1つの対称性構成要素を含んでいる。実施の形態において、タイプ2とタイプ3のSOFは、SOFの縁に位置せず、連結基によって少なくとも3つの他のセグメントと結合している、少なくとも1種類のセグメントを含んでいる。例えば、実施の形態において、SOFは、理想的な三角形の構成要素、歪んだ三角形の構成要素、理想的な四面体の構成要素、歪んだ四面体の構成要素、理想的な四角形の構成要素、および歪んだ四角形の構成要素から成る群より選ばれる、少なくとも1つの対称性構成要素を含んでいる。
【0059】
[分子構成要素の一覧]
以下に、本発明のSOFの分子構成要素となる、代表的な分子実体の種類と、それぞれの種類の例のリストを示す。
【0060】
炭素またはケイ素原子のコアを含む構成要素:
【化30】


【化31】


【化32】


【化33】


【化34】


【化35】


アルコキシコアを含む構成要素:
【化36】


窒素またはリン原子のコアを含む構成要素:
【化37】


【化38】


【化39】


【化40】


アリールコアを含む構成要素:
【化41】


【化42】


【化43】


【化44】


【化45】


【化46】


【化47】


カルボナートコアを含む構成要素:
【化48】


炭素環、二環式炭素環、または三環式炭素環のコアを含む構成要素:
【化49】


【化50】


【化51】


【化52】


【化53】


【化54】


【化55】


【化56】


【化57】


【化58】


オリゴチオフェンコアを含む構成要素
【化59】

【0061】
式中、Qは、独立して、次のものから選ぶことができる。
・必要に応じて、C1〜C8分枝および非分枝アルキル、分枝および非分枝C1〜C8パーフルオロアルキル、C1〜C6炭素環、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、メルカプチル、チオエーテルで置換された、アリール、ビアリール、トリアリール、およびナフチル
・必要に応じて、C1〜C8分枝および非分枝アルキル、分枝および非分枝C1〜C8パーフルオロアルキル、C1〜C6炭素環、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボン酸、カルボン酸エステル、メルカプチル、チオエーテルで置換された、ひとつの環当たり1〜3個のヘテロ原子を含む、アリール、ビアリール、トリアリール、ナフチル
・分枝および非分枝C1〜C8パーフルオロアルキル、C1〜C6炭素環、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボン酸、ケトン、カルボン酸エステル、メルカプチル、チオエーテル、アルキルエーテル、アリールエーテル
・C1〜C12分枝および非分枝アルキル
・C1〜C12分枝および非分枝パーフルオロアルキル
・12個程度のC−O単位を含むオリゴエーテル
・IV族の原子コアのpの範囲は、約1から約24まで、例えば、約12から約24までであり、アルコキシコアのxの範囲は、約1から約12まで、例えば、約6から約12までであり、zの範囲は、約1から約4まで、例えば、約2から約4までであり、jの範囲は、約1から約12まで、例えば、約1から約12までである。式中、Fgは、実施の形態の中で先に定義したような官能基であり、独立して、アルコール、アルキルまたはアリールエーテル、シアノ、アミノ、ハロゲン、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸クロリド、アリールまたはアルキルスルホニル、ホルミル、水素、およびイソシアナートから選ばれる。
【0062】
式中、Rは、独立して、次のものから選ばれる。
・必要に応じて、C1〜C8分枝および非分枝アルキル、分枝および非分枝C1〜C8パーフルオロアルキル、C1〜C6炭素環、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、メルカプチル、チオエーテルで置換された、アリール、ビアリール、トリアリール、およびナフチル
・必要に応じて、C1〜C8分枝および非分枝アルキル、分枝および非分枝C1〜C8パーフルオロアルキル、C1〜C6炭素環、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、メルカプチル、チオエーテルで置換された、ひとつの環当たり1〜3個のヘテロ原子を含む、アリール、ビアリール、トリアリール、ナフチル
・分枝および非分枝C1〜C8パーフルオロアルキル、C1〜C6炭素環、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ケトン、カルボン酸、カルボン酸エステル、メルカプチル、チオエーテル、アルキルエーテル、アリールエーテル
・C1〜C12分枝および非分枝アルキル
・C1〜C12分枝および非分枝パーフルオロアルキル
・12個程度のC−O単位を含むオリゴエーテル
・アルコール、アルキルまたはアリールエーテル、シアノ、アミノ、ハロゲン、カルボン酸、カルボン酸エステル、ケトン、酸クロリド、アリールまたはアルキルスルホニル、ホルミル、水素、イソシアナートなど
【0063】
[結合化学反応の実施]
実施の形態では、結合化学反応が起こると、官能基間の反応により、薄膜形成過程の間またはその後にSOFから大部分が揮散または消失する揮発性副生物が生じる、あるいは、副生物は生じない。結合化学反応副生物の存在が好ましくない用途のためのSOFが得られるよう、結合化学反応を選択しても良い。結合化学反応としては、例えば、縮合、付加/脱離、および付加反応、例えば、エステル類、イミン類、エーテル類、カルボナート類、ウレタン類、アミド類、アセタール類、シリルエーテル類などを生じる反応が挙げられる。
【0064】
実施の形態では、官能基間の反応による結合化学反応によって、薄膜形成過程後に、SOF中に大部分が含まれて残っている非揮発性副生物が生成される。結合化学反応の副生物の存在が性質に影響を与えないような用途、あるいは、結合化学反応の副生物の存在がSOFの性質(例えば、SOFの電気活性、疎水性、または親水性など)を変える用途のためのSOFが得られるよう、実施の形態の結合化学反応を選択しても良い。結合化学反応としては、例えば、置換、メタセシス、および金属触媒を用いたカップリング反応、例えば、炭素−炭素結合を生じる反応などが挙げられる。
【0065】
全ての結合化学反応において、構成要素の官能基の間の化学反応によって構成要素間の反応の速度と程度を制御できることが、本発明の重要な特徴である。反応の速度と程度を制御する理由としては、様々な被覆法に応じて薄膜形成過程を適応させることや、構成要素の微視的配置を調節して、先の実施の形態で定義したような周期性を持つSOFを得ることが挙げられる。
【0066】
[COFの固有特性]
COFは、熱安定性が高い(一般に、大気条件下で400℃を超える)、有機溶媒への溶解性が低い(化学的安定性)、多孔性である(可逆的にゲスト物質を取り込むことができる)などの固有の特性を持つ。実施の形態において、SOFもこのような固有特性を持つことがある。
【0067】
[SOFの追加機能性]
追加機能性とは、通常のCOFが本来持っている性質ではなく、分子構成要素の選択によって生じる性質を意味し、分子組成が、生成するSOFに追加機能性を与える。追加機能性は、その追加機能性の“傾向”を持つ分子構成要素が集合すると生じる。追加機能性はまた、その追加機能性の“傾向”を持たない分子構成要素が集合すると、セグメント(S)と連結基とが結合してSOFとなった結果として、追加機能性を持つSOFができることによっても生じることがある。更に、その追加機能性の“傾向”を持つ分子構成要素の使用による組み合わせ効果から、セグメントと連結基とが互いに結合してSOFとなる際にその傾向が調節または増強されて、追加機能性を生じることもある。
【0068】
[分子構成要素の傾向]
分子構成要素の“傾向”とは、例えば、ある種の分子組成物に存在することが知られている性質、あるいは、あるセグメントの分子組成を当業者が見たときに合理的に認められる性質を指す。ここでいう“傾向”および“追加機能性”とは、同じ一般的性質(例えば、疎水性、電気活性など)を指すが、“傾向”は、分子構成要素に関して使用し、“追加機能性”は、SOFに関して使用する。
【0069】
SOFの疎水性(超疎水性)、親水性、疎油性(超疎油性)、親油性、および/または電気活性(導体、半導体、電荷輸送材料)は、SOFの“追加機能性”を表す性質のいくつかの例である。
【0070】
用語“疎水性(超疎水性)”とは、例えば、水や、メタノールなどの他の極性種をはじく性質を指し、また、水を吸収しない、および/または、その結果、膨潤しないことも意味する。更に、疎水性は、水や他の水素結合種と強い水素結合を作らないことを示唆している。疎水性材料は一般に、接触角ゴニオメータまたは関連装置を用いた測定で、90度を超える水接触角を持ち、超疎水性材料は、150度を超える水接触角を持つことを特徴とする。
【0071】
用語“親水性”とは、例えば、水や他の極性種を、引きつけ、吸着し、吸収する性質、または、このような種で濡れ易い表面を指す。親水性材料は一般に、接触角ゴニオメータまたは関連装置を用いた測定で、20度未満の水接触角を持つことを特徴とする。親水性はまた、水や他の極性種で材料が膨潤することを特徴とし、または、その中に水や他の極性種を拡散または輸送できる材料を指す。親水性は更に、水や他の水素結合種と、強力な、または多数の水素結合を形成できるという特徴を持つ。
【0072】
用語“疎油性”とは、例えば、油や他の非極性種、例えば、アルカン類、脂肪類、ワックス類などをはじく性質を指す。疎油性材料は一般に、接触角ゴニオメータまたは関連装置を用いた測定で、90度を超える接触角を持つことを特徴とする。
【0073】
用語“親油性”とは、例えば、油や他の非極性種、例えば、アルカン類、脂肪類、ワックス類などを引きつける性質、または、このような種で濡れ易い表面を指す。親油性材料は一般に、例えば、接触角ゴニオメータを用いた測定で、ゼロに近い低さの油接触角を持つことを特徴とする。親油性はまた、ヘキサンや他の非極性液体で材料が膨潤することを特徴とする。
【0074】
用語“電気活性”とは、例えば、電荷(電子および/または正孔)を輸送する性質を指す。電気活性材料としては、導体、半導体、電荷輸送材料が挙げられる。導体は、電位差の存在下で電荷を容易に輸送する物質と定義される。半導体は、本質的には電荷を伝えないが、電位差の存在下で、例えば、電界、電磁放射線、熱などの刺激を加えると導電性となる物質と定義される。電荷輸送材料は、電位差の存在下で、例えば、染料、顔料、または金属などの他の物質から電荷を注入された場合に、電荷を輸送できる物質と定義される。
【0075】
導体は更に、電位差計を用いて、約0.1S/cmから約10S/cmまでのシグナルを生じる物質と定義しても良い。
【0076】
半導体は更に、例えば、電界、電磁放射線、熱などの刺激の存在下で、電位差計を用いて、約10−6S/cmから約10S/cmまでのシグナルを生じる物質と定義しても良い。あるいは、半導体は、例えば、電界、電磁放射線、熱などの刺激を加えると、飛行時間型測定法を用いて、10−10cm−1−1から約10cm−1−1の範囲の電子および/または正孔移動度を持つ物質と定義しても良い。
【0077】
電荷輸送材料は更に、飛行時間型測定法を用いて、10−10cm−1−1から約10cm−1−1の範囲の電子および/または正孔移動度を持つ物質と定義しても良い。注目すべきは、一部の状況では、電荷輸送材料が半導体に分類されることである。
【0078】
疎水性の追加機能性を持つSOFは、疎水性傾向を持つ分子構成要素を用いて製造でき、および/または、サブミクロンからミクロンの大きさの、粗面の、テクスチャ化した、または多孔性の表面を持っている。サブミクロンからミクロンの大きさの、粗面の、テクスチャ化した、または多孔性の表面を持つ材料が疎水性であることに関する文献は、CassieおよびBaxterによって著されている(Cassie, A. B. D.; Baxter, S. Trans. Faraday Soc., 1944, 40, 546)。
【0079】
フッ素化度の高いセグメントを含む、またはこれの付いた分子構成要素は疎水性傾向を持ち、疎水性の追加機能性を持つSOFを生じる。フッ素化度の高いセグメントとは、セグメント上にあるフッ素原子の数をセグメント上にある水素原子の数で割った値が1を超えるものと定義する。フッ素化度の高くないフッ素化セグメントも、疎水性の追加機能性を持つSOFを生じることがある。
【0080】
上記のフッ素化セグメントとしては、例えば、テトラフルオロヒドロキノン、パーフルオロアジピン酸水和物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールなどが挙げられる。
【0081】
サブミクロンからミクロンの大きさの、粗面の、テクスチャ化した、または多孔性の表面を持つSOFも疎水性である。粗面の、テクスチャ化した、または多孔性のSOF表面は、薄膜表面にあるぶら下がり官能基から、あるいは、SOFの構造から得ることができる。パターンの種類とパターン化度は、分子構成要素の形態と結合化学反応の効率に応じて変わる。表面の粗さやテクスチャを生じる構造物の大きさは、約100nmから約10μmまで、例えば、約500nmから約5μmまでである。
【0082】
親水性の追加機能性を持つSOFは、親水性傾向を持つ分子構成要素の使用により、および/または、極性連結基を含むことにより製造できる。
【0083】
極性置換基の付いたセグメントを含む分子構成要素は親水性傾向を持ち、親水性の追加機能性を持つSOFを生じる。用語“極性置換基”とは、例えば、水と水素結合を形成できる置換基を指し、例えば、ヒドロキシル、アミノ、アンモニウム、カルボニル(ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、カルボナート、尿素など)が挙げられる。
【0084】
電気活性の追加機能性を持つSOFは、電気活性傾向を持つ分子構成要素を用いて製造でき、および/または、共役したセグメントと連結基とが集合することで電気活性となる。以下のセクションでは、正孔輸送傾向、電子輸送傾向、および半導体傾向を持つ分子構成要素について述べる。
【0085】
正孔輸送の追加機能性を持つSOFは、例えば、次の一般構造を持つ、トリアリールアミン類、ヒドラゾン類(Tokarskiらによる、米国特許第7,202,002B2号)、エナミン類(Kondohらによる、米国特許第7,416,824B2号)などのセグメントコアを選ぶことで得られる。
【化60】


トリアリールアミン エナミン類 ヒドラゾン類
トリアリールアミンを含むセグメントコアは、次の一般式で表される。
【化61】


式中、Ar、Ar、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立して、置換または非置換アリール基を表し、あるいは、Arは独立して、置換または非置換アリーレン基を表し、kは、0または1を表しており、Ar、Ar、Ar、Ar、Arの少なくとも2つはFg(先に定義)を含んでいる。Arは更に、例えば、置換フェニル環、置換/非置換フェニレン、1価の原子価で結合した置換/非置換の芳香族環(ビフェニル、テルフェニルなど)、または置換/非置換の縮合芳香族環(ナフチル、アントラニル、フェナントリルなど)と定義できる。
【0086】
正孔輸送の追加機能性を持つアリールアミン類を含むセグメントコアとしては、例えば、アリールアミン類(トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[p−テルフェニル]−4,4”−ジアミンなど)、ヒドラゾン類(N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾンなど)、オキサジアゾール類(2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾールなど)、スチルベン類などが挙げられる。
【0087】
正孔輸送傾向を持つトリアリールアミンコアセグメントを含む分子構成要素は、例えば、次に挙げるような化学構造の一覧から誘導する。
トリアリールアミンコア
【化62】


テトラアリールビフェニレンジアミン(TBD)コア テトラアリールターフェニレンジアミン(TER)コア
【化63】

【0088】
ヒドラゾンを含むセグメントコアは、次の一般式で表される。
【化64】


式中、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立して、必要に応じて1つ以上の置換基を含むアリール基を表しており、Rは、水素原子、必要に応じて置換基を含むアリール基またはアルキル基を表しており、Ar、Ar、Arの少なくとも2つはFg(先に定義)を含んでいる。同類のオキサジアゾールは、次の一般式で表される。
【化65】


式中、ArおよびArはそれぞれ独立して、Fg(先に定義)を含むアリール基を表している。
【0089】
正孔輸送傾向を持つヒドラゾンおよびオキサジアゾールのコアセグメントを含む分子構成要素は、例えば、次に挙げるような化学構造の一覧から誘導する。
ヒドラゾンコア
【化66】


アキサジアゾールコア
【化67】

【0090】
エナミンを含むセグメントコアは、次の一般式で表される。
【化68】


式中、Ar、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立して、必要に応じて1つ以上の置換基を含むアリール基、または、必要に応じて1つ以上の置換基を含む複素環基を表しており、Rは、水素原子、必要に応じて置換基を含むアリール基またはアルキル基を表しており、Ar、Ar、Ar、Arの少なくとも2つはFg(先に定義)を含んでいる。
【0091】
正孔輸送傾向を持つエナミンコアセグメントを含む分子構成要素は、例えば、次に挙げるような化学構造の一覧から誘導する。
エナミンコア
【化69】

【0092】
電子輸送の追加機能性を持つSOFは、例えば、次の一般構造式で示される、ニトロフルオレノン類、9−フルオレニリデンマロニトリル類、ジフェノキノン類、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類を含むセグメントコアを選ぶことで得られる。
【化70】


ニトロフルオレノン類 9−フルオレニリデンマロニトリル類 ジフェノキノン類 ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類
注目すべきは、ジフェニルキノン類のカルボニル基が、SOF生成過程でFgとしても働くことである。
【0093】
半導体の追加機能性を持つSOFは、例えば、次の一般構造式で示される、アセン類、チオフェン類/オリゴチオフェン類/縮合チオフェン類、ペリレンビスイミド類、またはテトラチオフルバレン類、およびこれらの誘導体などのセグメントコアを選ぶことで得られる。
【化71】


アセン類 オリゴチオフェン類 縮合チオフェン類 ペリレンビスイミド類 テトラチオフルバレン類
【0094】
SOFは、p型半導体、n型半導体、または両極性半導体である。SOFの半導体型は、分子構成要素の性質に応じて決まる。SOF内にあると電子供与性を持つ分子構成要素(アルキル、アルコキシ、アリール、アミノ基など)は、SOFをp型半導体にする傾向がある。反対に、電子吸引性の分子構成要素(シアノ、ニトロ、フルオロ、フッ素化アルキル、フッ素化アリール基など)は、SOFをn型半導体にする傾向がある。
【0095】
半導体傾向を持つアセンコアセグメントを含む分子構成要素は、例えば、次に挙げるような化学構造の一覧から誘導する。
【化72】

【0096】
半導体傾向を持つチオフェン/オリゴチオフェン/縮合チオフェンコアセグメントを含む分子構成要素は、例えば、次に挙げるような化学構造(または異性体および混合物)の一覧から誘導する。
【化73】

【0097】
半導体傾向を持つペリレンビスイミドコアセグメントを含む分子構成要素の例は、次の化学構造から誘導することができる。
【化74】

【0098】
半導体傾向を持つテトラチオフルバレンコアセグメントを含む分子構成要素は、例えば、次に挙げるような化学構造の一覧から誘導する。
【化75】


式中、Arはそれぞれ独立して、必要に応じて1つ以上の置換基を含むアリール基、または、必要に応じて1つ以上の置換基を含む複素環基を表している。
【0099】
同様に、これらの分子構成要素で製造したSOFの電気活性は、セグメントの性質、連結基の性質、SOF内でセグメントがどのように配向しているかに応じて決まると考えられる。SOF内でのセグメント部分の望ましい配向に有利に働く連結基は、より高い電気活性を生じると期待される。
【0100】
[構造化有機薄膜の製造法]
SOFの製造法は、一般に多くの作業または工程(下に示す)を含む。これらは、適当であればどのような順序で行っても良く、あるいは2つ以上の作業を同時に、または短い時間間隔で行っても良い。構造化有機薄膜の製造法は、
(a)それぞれが1つのセグメントといくつかの官能基とを含む、複数の分子構成要素を含んでいる、液体を含む反応混合物を調製する工程と、
(b)反応混合物をウェットフィルムとして堆積する工程と、
(c)分子構成要素を含むウェットフィルムの、SOFを含む乾燥薄膜への変化を促進する工程と、
(d)必要に応じて、被覆用基材からSOFを外して、自立型SOFを得る工程と、
(e)必要に応じて、自立型SOFをロールに加工する工程と、
(f)必要に応じて、SOFを裁断および縫製してベルトとする工程と、
(g)必要に応じて、次のSOF製造工程のための基材としたSOF(上記のSOF製造工程で製造)上に、上記のSOF製造工程を行う工程と、
を含み、SOFは、共有結合性有機骨格として配列した、複数のセグメントと複数の連結基とを含み、巨視的レベルにおいて、共有結合性有機骨格は薄膜である。
【0101】
上記の作業または工程は、大気圧下、加圧下、または減圧下で行う。ここでいう、用語“大気圧”とは、約760Torr(約1013hPa)の圧力を指す。用語“加圧”とは、大気圧より高いが、20気圧より低い圧力を指す。用語“減圧”とは、大気圧より低い圧力を指す。実施の形態において、作業または工程は、大気圧下またはその付近で行う。一般に、約0.1気圧から約2気圧まで、例えば、約0.5気圧から約1.5気圧まで、または0.8気圧から約1.2気圧までの圧力の使用が便利である。
【0102】
[製造法の作業A:液体を含む反応混合物の調製]
反応混合物は、液体に溶解、懸濁、または混合させた複数の分子構成要素を含んでいる。複数の分子構成要素は、1種類でも2種類以上でも良い。分子構成要素の1つ以上が液体ならば、追加の液体の使用は任意である。必要に応じて、触媒を反応混合物に加えて、SOFを生成させ、または、前述の作業Cの間のSOF生成の反応速度を調節しても良い。必要に応じて、添加剤または二次的成分を反応混合物に加えて、生成するSOFの物理的性質を変えても良い。
【0103】
反応混合物の成分(分子構成要素と、必要に応じて液体と、必要に応じて触媒と、必要に応じて添加剤)を容器内で混合する。反応混合物成分の添加順は変えても良いが、一般に触媒は最後に加える。具体的な実施の形態では、触媒の不在下、液体中で分子構成要素を加熱して、分子構成要素を溶解し易くする。更に、反応混合物をウェットフィルムとして堆積する前に、配合成分を均一に分散させるため、反応混合物を混合、撹拌、粉砕などしても良い。
【0104】
実施の形態において、反応混合物は、ウェットフィルムとして堆積する前に加熱しても良い。これにより、1つ以上の分子構成要素が溶解し易くなり、および/または、ウェット層を堆積する前に反応混合物が一部反応して、反応混合物の粘度が高くなる。反応混合物中の分子構成要素の負荷量を大きくするため、この方法を用いても良い。
【0105】
具体的な実施の形態において、反応混合物は、堆積したウェット層を支えられる粘度を持つ必要がある。反応混合物の粘度の範囲は、約10cPから約5万cPまで、例えば、約25cPから約25,000cPまで、または約50cPから約1000cPまでである。
【0106】
反応混合物中の分子構成要素負荷量または“負荷量”は、反応混合物の総重量で割った、分子構成要素および必要に応じた触媒の総重量と定義される。構成要素負荷量の範囲は、約3%から100%まで、例えば、約5%から約50%まで、または約15%から約40%までである。反応混合物の唯一の液体成分として液体の分子構成要素が用いられる(即ち、追加の液体を用いない)場合、構成要素負荷量は約100%となる。
【0107】
反応混合物で使用する液体は、純粋な液体(溶媒など)および/または溶媒混合物である。液体を用いて、分子構成要素と触媒/調節剤を反応混合物中に溶解または懸濁する。液体の選定は、一般に、分子構成要素の溶解性/分散性と特定の構成要素の負荷量とのバランス、反応混合物の粘度、ウェット層の乾燥SOFへの変化に影響する液体の沸点に基づいている。適当な液体は、約30℃から約300℃まで、例えば、約65℃から約250℃まで、または約100℃から約180℃までの沸点を持つ。
【0108】
液体としては、アルカン類(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン)、混合アルカン類(ヘキサン類、ヘプタン類)、分枝アルカン類(イソオクタン)、芳香族化合物(トルエン、o−、m−、p−キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、ブチルベンゼン、アニリン)、エーテル類(ベンジルエチルエーテル、ブチルエーテル、イソアミルエーテル、プロピルエーテル)、環状エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサン)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタン酸ブチル、酢酸エトキシエチル、プロピオン酸エチル、酢酸フェニル、安息香酸メチル)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、クロロアセトン、2−ヘプタノン)、環状ケトン類(シクロペンタノン、シクロヘキサノン)、アミン類(1級、2級、または3級アミン類、例えば、ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド)、アルコール類(メタノール、エタノール、n−、i−プロパノール、n−、i−、t−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、ベンジルアルコール)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル)、ハロゲン化芳香族(クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン)、ハロゲン化アルカン類(ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン)、水などの種類の分子が挙げられる。
【0109】
第1溶媒、第2溶媒、第3溶媒などを含む混合液体も、反応混合物に使用される。2つ以上の液体を用いて、分子構成要素を溶解/分散し易くし、および/または、分子構成要素の負荷量を増し、および/または、基材および塗布器具を濡れ易くして、堆積するウェットフィルムを安定化し、および/または、ウェット層の乾燥SOFへの変化を調節する。実施の形態において、第2溶媒は、その沸点や蒸気圧曲線、分子構成要素に対する親和性が、第1溶媒とは異なる溶媒である。実施の形態において、第1溶媒は、第2溶媒より高い沸点を持つ。実施の形態において、第2溶媒は、約100℃以下の沸点、例えば、約30℃から約100℃までの範囲、あるいは、約40℃から約90℃まで、または約50℃から約80℃までの範囲の沸点を持つ。
【0110】
実施の形態において、第1溶媒または高沸点溶媒は、約65℃以上の沸点、例えば、約80℃から約300℃までの範囲、あるいは、約100℃から約250℃まで、または約100℃から約180℃までの範囲の沸点を持つ。高沸点溶媒としては、例えば、次のものが挙げられる(括弧内の値はその化合物の沸点)。炭化水素溶媒(アミルベンゼン(202℃)、イソプロピルベンゼン(152℃)、1,2−ジエチルベンゼン(183℃)、1,3−ジエチルベンゼン(181℃)、1,4−ジエチルベンゼン(184℃)、シクロヘキシルベンゼン(239℃)、ジペンテン(177℃)、2,6−ジメチルナフタレン(262℃)、p−シメン(177℃)、樟脳油(160〜185℃)、ソルベントナフサ(110〜200℃)、cis−デカリン(196℃)、trans−デカリン(187℃)、デカン(174℃)、テトラリン(207℃)、テレビン油(153〜175℃)、灯油(200〜245℃)、ドデカン(216℃)、ドデシルベンゼン(分枝)など)、ケトンおよびアルデヒド溶媒(アセトフェノン(201.7℃)、イソホロン(215.3℃)、ホロン(198〜199℃)、メチルシクロヘキサノン(169.0〜170.5℃)、メチルn−ヘプチルケトン(195.3℃)など)、エステル溶媒(フタル酸ジエチル(296.1℃)、酢酸ベンジル(215.5℃)、γ−ブチロラクトン(204℃)、シュウ酸ジブチル(240℃)、酢酸2−エチルヘキシル(198.6℃)、安息香酸エチル(213.2℃)、ギ酸ベンジル(203℃)など)、ジエチル硫酸(208℃)、スルホラン(285℃)、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル化炭化水素溶媒、アルコール溶媒、エーテル/アセタール溶媒、多価アルコール溶媒、カルボン酸無水物溶媒、フェノール系溶媒、水、シリコーン溶媒。
【0111】
混合液体の比は、当業者によって定めることができる。2成分混合液体における液体の体積比は、約1:1から約99:1まで、例えば、約1:10から約10:1まで、または約1:5から約5:1までである。n種(nの範囲は約3から約6まで)の液体を用いる場合、それぞれの液体の量の範囲は、それぞれの液体の割合の合計が100%となるように、約1%から約95%までである。
【0112】
実施の形態において、混合液体は、沸点の異なる、少なくとも第1の溶媒と第2の溶媒を含んでいる。更に別の実施の形態において、第1溶媒と第2溶媒との沸点の差は、約0から約150℃まで、例えば、0から約50℃までである。例えば、第1溶媒の沸点は、第2溶媒の沸点よりも、約1℃から約150℃高く、例えば、約5℃から約100℃または約10℃から約50℃高い。
【0113】
SOFの特性を操作するため、混合液体を用いて、ウェット層のSOFへの変換速度を遅くしても良い。例えば、縮合および付加/脱離結合化学反応では、水、1級、2級、または3級アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、tert−ブタノールなど)等の液体が用いられる。
【0114】
必要に応じて、反応混合物に触媒を加え、ウェット層を乾燥SOFへ変化し易くしても良い。必要に応じた触媒の選択と用法は、分子構成要素上の官能基に応じて変わる。触媒は均一系(溶解性)または不均一系(不溶性または部分溶解性)で、ブレンステッド酸(塩酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、アミン保護化p−トルエンスルホン酸(p−トルエンスルホン酸ピリジウムなど)、トリフルオロ酢酸)、ルイス酸(ホウ素トリフルオロエーテラート(boron trifluoroetherate)、三塩化アルミニウム)、ブレンステッド塩基(金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなど)、1級、2級、または3級アミン類(ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど))、ルイス塩基(N,N−ジメチル−4−アミノピリジン)、金属(Cu、青銅)、金属塩(FeCl、AuCl)、金属錯体(結合した(ligated)パラジウム錯体、結合したルテニウム触媒)が挙げられる。典型的な触媒の負荷量は、反応混合物中の分子構成要素の負荷量の、約0.01%から約25%までの範囲、例えば、約0.1%から約5%までである。触媒は、最終的なSOF組成物中に存在しても、存在しなくても良い。
【0115】
反応混合物およびウェット層中に、必要に応じて添加剤または二次的成分が存在していても良い。このような添加剤または二次的成分は、乾燥SOF中にも組み込まれていて良い。添加剤または二次的成分は、反応混合物およびウェット層中、または乾燥SOF中で、均一または不均一になっている。用語“添加剤”または“二次的成分”とは、例えば、SOF中に共有結合してはいないが、組成物中にランダムに分散している原子または分子を指す。添加剤を用いて、SOFの、電気的性質(導電性、半導電性、電子輸送性、正孔輸送性)、表面エネルギ(疎水性、親水性)、引張り強さ、熱伝導性などの物理的性質を変える。このような添加剤または二次的成分としては、衝撃改質剤、強化用繊維、アンチブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、結合剤、湿潤剤、防曇剤、難燃剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、殺生物剤、染料、顔料、着臭剤、防臭剤、核形成剤(nucleating agents)などが挙げられる。
【0116】
[製造法の作業B:反応混合物のウェットフィルムとしての堆積]
反応混合物は、ウェットフィルムとして、多くの液体堆積技術を用いて様々な基材へ塗布することができる。SOFの厚さは、ウェットフィルムの厚さと、反応混合物中の分子構成要素の負荷量に応じて変わる。ウェットフィルムの厚さは、反応混合物の粘度と、反応混合物をウェットフィルムとして堆積するために用いる方法に応じて変わる。
【0117】
基材としては、例えば、ポリマ、紙、金属および金属合金、周期表のIII〜VI族の元素のドープ体および非ドープ体、金属酸化物、金属カルコゲニド、先に作製したSOF薄膜が挙げられる。ポリマ薄膜基材の例としては、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリ塩化ビニル、これらのブロックおよびランダム共重合体などが挙げられる。金属表面の例としては、金属化ポリマ、金属箔、金属板、混合材基材(ポリマ、半導体、金属酸化物、またはガラス基材上にパターン化または堆積した金属など)が挙げられる。周期表のIII〜VI族のドープおよび非ドープ元素を含む基材の例としては、アルミニウム、ケイ素、リンでn型ドープしたケイ素、ホウ素でp型ドープしたケイ素、スズ、ガリウムヒ素、鉛、ガリウムインジウムリン、インジウムが挙げられる。金属酸化物の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウムスズ、二酸化スズ、二酸化セレン、アルミナが挙げられる。金属カルコゲニドの例としては、硫化カドミウム、テルル化カドミウム、セレン化亜鉛が挙げられる。付け加えるならば、上記の基材を化学的に処理したものや機械的に改質したものは、反応混合物で覆われる表面の範囲内に留まっていることは当然である。
【0118】
実施の形態において、基材は、例えば、ケイ素、ガラス板、プラスチックフィルムまたはシートを含む。構造可撓性のデバイスでは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシートなどのプラスチック基材が用いられる。基材の厚さは、約10μmから10mm以上までで、代表的な厚さは、特に可撓性プラスチック基材では約50μmから約100μmまで、ガラスやシリコンなどの剛性基材では約1mmから約10mmまでである。
【0119】
反応混合物は、例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ウェブコーティング、浸漬塗布、カップコーティング、ロッドコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコーティング、スタンプ印刷などの多くの液体塗布技術を用いて基材に塗布する。ウェット層の堆積に用いる方法は、基材の性質、大きさ、および形状と、ウェット層の所望の厚さに応じて変わる。ウェット層の厚さは、約10nmから約5mmまでの範囲、例えば、約100nmから約1mmまで、または約1μmから約500μmまでの範囲とすることができる。
【0120】
[製造法の作業C:ウェットフィルムの乾燥SOFへの変化の促進]
用語“促進”とは、例えば、分子構成要素の反応を促進する適当な手法を指す。乾燥薄膜を作るために液体を除去する必要がある場合、“促進”は、液体の除去も指す。分子構成要素の反応と液体の除去は、逐次的に、または同時に行うことができる。ある特定の実施の形態では、液体も分子構成要素のひとつであって、SOF中に組み込まれる。用語“乾燥薄膜”とは、例えば、殆ど乾燥した薄膜を指し、実施の形態において、“乾燥薄膜”とは、例えば、液体含有量が薄膜の約5質量%未満であることも指す。
【0121】
ウェット層の乾燥SOFへの変化の促進は、適当ならばどのような手法で行っても良い。ウェット層の乾燥SOFへの変化の促進は、一般に、例えば、40℃から350℃まで、60℃から200℃まで、85℃から160℃までの範囲の温度で、オーブン乾燥、赤外線(IR)照射などを行う、熱処理を含んでいる。総加熱時間は、約4秒間から約24時間まで、例えば、1分間から120分間まで、または3分間から60分間までの範囲とすることができる。
【0122】
ウェット層のCOF薄膜への変化をIRで促進するには、ベルト輸送装置上に取り付けたIRヒーターモジュールを用いても良い。様々な種類のIRエミッタ、例えば、カーボンIRエミッタまたは短波IRエミッタ(Heraerus製)が使用できる。カーボンIRエミッタまたは短波IRエミッタに関する代表的な追加情報を、次の表1にまとめた。
【0123】
【表1】

【0124】
[製造法の作業D:必要に応じて、被覆用基材からSOFを外して、自立型SOFを得る]
実施の形態において、自立型SOFが望ましい。自立型SOFは、接着性の低い適当な基材を用いてウェット層の堆積を支えた場合に得られる。SOFに対して接着性の低い適当な基材としては、例えば、金属箔、金属化ポリマ基材、剥離紙、SOF(接着性の低い、あるいは、接着または付着する傾向の小さい表面を持つよう調製したSOFなど)が挙げられる。支持基材からのSOFの取り外しは、当業者によって多くの方法で行うことができる。例えば、薄膜の角または縁からSOFを剥がし始め、必要に応じて、基材とSOFを曲がった面の上に通して剥がれ易くして、基材から外す。
【0125】
[製造法の作業E:必要に応じて、自立型SOFのロールへの加工]
必要に応じて、自立型SOFまたは可撓性基材で支えられたSOFをロールに加工しても良い。貯蔵、取り扱い、または様々な他の目的のため、SOFをロールに加工する。開始時のロールの曲率は、ロール化処理の間にSOFが変形し、または割れないように選ぶ。
【0126】
[製造法の作業F:必要に応じて、SOFを裁断および縫製してベルトなどの形状とする]
SOFを裁断および縫製する方法は、その内容を全て本件に引用して援用する、1995年10月3日公示(issued)、米国特許第5,455,136号(ポリマフィルムに関して)に開示のものと同じである。SOFベルトは、単層SOF、多層SOF、またはウェブから切り出したSOFシートから製造できる。このようなシートは四角形または所望の特定の形である。SOFの全ての辺は同じ長さ、または、一対の平行な辺が他の一対の平行な辺よりも長い。SOFシートの反対側の余白端部分を重ねて接合し、SOFをベルトなどの形とする。継ぎ目は、一般に、接合部の重ね合わせた余白端部分に作られる。接合は、どのような適当な方法で行っても良い。典型的な接合法としては、例えば、溶接(超音波溶接など)、接着剤での接着、テープでの接着、加圧熱定着などが挙げられる。超音波溶接などの方法は、その速度、清浄度(無溶媒)、薄くて細い継ぎ目ができることから、可撓性シートを接合する好ましい一般的方法である。
【0127】
[製造法の作業G:必要に応じて、次のSOF製造工程のための基材としてのSOFの使用]
SOF製造工程の基材としてSOFを用いて、多層型の構造化有機薄膜が得られる。多層型SOFの層は、化学的に結合したものでも、物理的に接触しているものでも良い。化学的に結合した多層型SOFは、基材のSOF表面にある官能基が、第2の構造化有機薄膜層の形成に用いられる、堆積したウェット層の中に存在する分子構成要素と反応する場合にできる。物理的に接触している多層型SOFは、互いに化学的に結合していない。
【0128】
必要に応じて、ウェット層を堆積する前にSOF基材を化学処理し、第2のSOF層が化学的に付着できるようにして、または付着し易くして、多層型の構造化有機薄膜を形成しても良い。
【0129】
あるいは、必要に応じて、ウェット層を堆積する前にSOF基材を化学処理し、第2のSOF層が化学的に付着できないようにして(表面の不活性化)、物理的に接触している多層型SOFを形成しても良い。
【0130】
他の方法、例えば、2つ以上のSOFの積層などを用いて、物理的に接触している多層型SOFを製造しても良い。
【0131】
[SOFの用途]
SOFは、例えば、太陽電池、無線ICタグ、有機発光デバイス、光受容体、薄膜トランジスタなどの電子デバイスに使用できる。
【0132】
[用途A:光受容体層中のSOF]
電子写真用画像形成部材(例えば、光受容体)の代表的な構造を図1〜図3に示す。これらの画像形成部材には、アンチカール層1、支持基材2、導電性接地面3、電荷障壁層4、接着層5、電荷発生層6、電荷輸送層7、オーバーコート層8、およびグラウンドストリップ9が設けられている。図3では、画像形成層10(電荷発生材料と電荷輸送材料とを含んでいる)が、個々の電荷発生層6と電荷輸送層7の代わりをしている。
【0133】
図から分かるように、光受容体の製造においては、電荷発生材料(CGM)と電荷輸送材料(CTM)を、CGMとCTMが別々の層中にある積層型配置(例えば、図1および図2)、あるいは、CGMとCTMが同じ層中にある単一層配置(例えば、図3)のいずれかで、基材表面に堆積することができる。実施の形態において、光受容体は、導電層の上に、電荷発生層6と、必要に応じて、電荷輸送層7とを塗布して調製しても良い。実施の形態において、電荷発生層と、電荷輸送層(用いる場合)とは、どのような順に塗布しても良い。
【0134】
[アンチカール層]
一部の用途では、電気絶縁性または僅かに半導電性の塗膜形成有機または無機ポリマを含むアンチカール層1を、必要に応じて設ける。アンチカール層は、平坦性および/または耐摩耗性を与える。
【0135】
アンチカール層1は、基材2の裏側、画像形成層とは反対の側に形成する。アンチカール層には、塗膜形成樹脂の他に、接着促進剤のポリエステル添加剤を加えても良い。アンチカール層として有用な塗膜形成樹脂の例としては、ポリアクリラート、ポリスチレン、ポリ(4,4’−イソプロピリデンジフェニルカルボナート)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリデンジフェニルカルボナート)、これらの混合物などが挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0136】
アンチカール層中の添加剤の含有量は、アンチカール層の約0.5質量%から約40質量%までの範囲とすることができる。添加剤としては、耐摩耗性を更に向上させ、および/または、電荷緩和性を与える、有機および無機粒子が挙げられる。有機粒子としては、テフロン粉末、カーボンブラック、グラファイト粒子が挙げられる。無機粒子としては、絶縁性および半導電性金属酸化物粒子、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられる。その他の半導電性添加剤は、米国特許第5,853,906号に記載の酸化したオリゴマ塩である。このオリゴマ塩は、酸化したN,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ビフェニルジアミン塩である。
【0137】
添加剤として有用な典型的な接着促進剤としては、duPont 49,000(duPont製)、Vitel PE-100、Vitel PE-200、Vitel PE-307(Goodyear製)、これらの混合物などが挙げられる(但し、これらに限定しない)。塗膜形成樹脂への添加では、通常、塗膜形成樹脂の重さの約1質量%から約15質量%までの接着促進剤を用いる。
【0138】
アンチカール層の厚さは、一般に、約3μmから約35μmまで、例えば、約10μmから約20μmまで、または約14μmである。
【0139】
アンチカール被覆は、塗膜形成樹脂と接着促進剤を塩化メチレンなどの溶媒に溶解して調製した溶液として塗布できる。溶液は、光受容体デバイスの支持基材の裏面(画像形成層とは反対の側)に、例えば、ウェブコーティングまたは当該技術で公知の他の方法で塗布する。電荷輸送層と電荷発生層と接着層と障壁層と接地面と基材とを含む多層型光受容体に、ウェブコーティングによりオーバーコート層とアンチカール層を同時に被覆しても良い。次に、ウェットフィルムの被覆を乾燥して、アンチカール層1を生成する。
【0140】
[支持基材]
前述のように、光受容体の製造では、まず、基材2、即ち、支持体を準備する。基材は不透明またはほぼ透明のもので、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第4,457,994号、米国特許第4,871,634号、米国特許第5,702,854号、米国特許第5,976,744号、および米国特許第7,384,717号に記載のものなどの、必要な所定の機械的性質を備えた適当な追加材料を含んでいる。
【0141】
基材は、非導電性材料の層または導電性材料の層、例えば、無機または有機組成物などを含んでいる。非導電性材料を用いる場合、このような非導電性材料の上に導電性接地面を設ける必要がある。基材として導電性材料を用いるなら、別に接地面層を設ける必要はない。
【0142】
基材は、可撓性または剛性で、例えば、シート、スクロール、エンドレス可撓性ベルト、ウェブ、シリンダなどの多くの様々な形状のいずれでも良い。光受容体を、アルミニウムドラムなどの剛性で不透明な導電性基材に被覆しても良い。
【0143】
電気絶縁性材料としては、例えば、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリウレタン類など様々な樹脂が使用できる。このような基材は、MYLAR(商標)(E. I. duPont de Nemours & Co.製)、MELINEX(商標)(ICI Americas Inc.製)、またはHOSTAPHAN(商標)(American Hoechst Corporation製)として知られる、市販の二軸配向性のポリエステルを含むものでも良い。その他、基材に含まれる材料としては、ポリマ系材料、例えば、ポリフッ化ビニル(TEDLAR(商標)、E. I. duPont de Nemours & Co.製)、ポリエチレンおよびポリプロピレン(MARLEX(商標)、Phillips Petroleum Company製)、ポリ硫化フェニレン(RYTON(商標)、Phillips Petroleum Company製)、ポリイミド類(KAPTON(商標)、E. I. duPont de Nemours & Co.製)が挙げられる。前述のように、導電性接地面を予めその表面に被覆した絶縁性プラスチックドラムに光受容体を被覆しても良い。このような基材は、継ぎ合わせたものでも、継ぎ目のないものでも良い。
【0144】
導電性基材を用いる場合、適当であればどのような導電性材料を用いても良い。例えば、導電性材料としては、バインダ樹脂に加えた、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、黄銅、金、ステンレススチール、カーボンブラック、グラファイトなどの金属薄片、粉末、または繊維(金属酸化物、硫化物、ケイ化物、第4級アンモニウム塩組成物を含む)、導電性ポリマ類、例えば、ポリアセチレンまたはその熱分解および分子ドープ化生成物、電荷輸送錯体、ポリフェニルシランおよびポリフェニルシランの分子ドープ化生成物が挙げられる。導電性プラスチックドラムも、アルミニウムなどの材料で作った導電性金属ドラムと同様に使用できる。
【0145】
基材の厚さは、必要とされる機械的性能や経済的配慮など、多くの要因に応じて変わる。基材の厚さは、一般に、約65μmから約150μmまでの範囲、例えば、約75μmから約125μmまでであり、こうとすると可撓性が最適で、小径ローラ、例えば、直径19mmのローラの周囲を回転させたときに生じる表面曲げ応力が最も小さくなる。可撓性ベルト用の基材は、最終的な光導電性デバイスに悪影響を与えない限り、相当の厚さ、例えば、200μm以上、または最小の厚さ、例えば、50μm未満とすることができる。ドラムを用いる場合、必要な剛性を得るために十分な厚さでなければならない。これは一般に約1〜6mmである。
【0146】
層を塗布する基材の表面を清浄化して、このような層の接着性を良くしても良い。清浄化は、例えば、基材層の表面にプラズマ放電、イオン衝撃などを当てて行う。溶媒洗浄法など、他の方法も使用できる。
【0147】
金属層の形成にどのような手法を用いても、一般に、空気に触れると殆どの金属の外側表面に金属酸化物の薄層ができる。つまり、金属層に上塗りする別の層が“隣接”層であっても、この上塗り隣接層は、実際には、酸化性金属層の外側表面にできた薄い金属酸化物層に接していることになる。
【0148】
[導電性接地面]
先に述べたように、実施の形態において、製造した光受容体は、導電性または非導電性いずれかの基材を含んでいる。非導電性基材が用いられている場合、導電性接地面3を使用しなければならず、この接地面が導電層として働く。導電性基材が用いられている場合、基材が導電層として働くが、導電性接地面を設けても良い。
【0149】
導電性接地面を用いる場合、これを基材の上に設ける。導電性接地面に適した材料としては、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレススチール、クロム、タングステン、モリブデン、銅など、またこれらの混合物および合金が挙げられる。実施の形態では、アルミニウム、チタン、ジルコニウムが用いられる。
【0150】
接地面は、溶液コーティング、蒸着、スパッタリングなど、公知のコーティング技術で塗布する。導電性接地面の塗布法は真空蒸着である。他の適当な方法を用いても良い。
【0151】
実施の形態において、接地面の厚さは、電子光導電性部材として望ましい光透過性と可撓性に応じてかなり広い範囲で変えることができる。例えば、可撓性の光応答性画像形成デバイスでは、導電層の厚さは、約20オングストロームから約750オングストロームまで、例えば、約50オングストロームから約200オングストロームまでであると、導電性、可撓性、光透過性の兼ね合いが最適である。しかし所望ならば、接地面が不透明であっても良い。
【0152】
[電荷障壁層]
いずれかの導電性接地面層を堆積した後、その上に電荷障壁層4を塗布することができる。正に荷電する光受容体の電子障壁層は、光受容体の画像形成面から導電層へ向かって正孔が移動するのを妨げない。負に荷電する光受容体では、導電層から反対側の光導電層へ正孔が流入するのを防ぐ障壁となる、適当な正孔障壁層が使用される。
【0153】
障壁層を用いる場合、これを導電層の上に設ける。ここでいう、用語“上”とは、多くの様々な種類の層に関して、層が隣接している例に限らないことを理解すべきである。むしろ、“上”とは、例えば、層の相対的な位置を指し、不特定の中間層が含まれることも意味する。
【0154】
障壁層4には、ポリマ類(ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、ポリエステル類、ポリシロキサン類、ポリアミド類、ポリウレタン類など)、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第4,338,387号、米国特許第4,286,033号、および米国特許第4,291,110号に開示されているような、窒素含有シロキサン類または窒素含有チタン化合物(トリメトキシシリルプロピルエチレンジアミン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノベンゼンスルホニルチタン酸イソプロピル、ジ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタナート、ジ(4−アミノベンゾイル)イソステアロイルチタン酸イソプロピル、トリ(N−エチルアミノ)チタン酸イソプロピル、トリアントラニルチタン酸イソプロピル、トリ(N,N−ジメチル−エチルアミノ)チタン酸イソプロピル、チタン=4−アミノベンゼンスルホナートオキシアセタート、チタン=4−アミノベンゾアートイソステアラートオキシアセタート、γ−アミノブチルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなど)が含まれる。
【0155】
障壁層は連続しており、例えば、約0.01μmから約10μmまで、例えば、約0.05μmから約5μmまでの範囲の厚さを持つ。
【0156】
障壁層4は、スプレー、浸漬塗布、ドローバーコーティング、グラビアコーティング、シルクスクリーン、エアナイフコーティング、リバースロールコーティング、真空蒸着、化学処理など、適当であればどのような方法で塗布しても良い。薄い層が容易に得られるよう、被覆を堆積した後に、減圧、加熱などの従来法で除去できる溶媒を用いた希薄溶液の形で障壁層を塗布しても良い。一般に、障壁層材料と溶媒との重量比は、スプレーおよび浸漬塗布では、約0.5:100から約30:100まで、例えば、約5:100から約20:100までであると十分である。
【0157】
本発明は更に、粒状粒子と針状粒子とバインダ樹脂と有機溶媒とを含む被覆用溶液を用いて電荷障壁層を生成する、電子写真用光受容体の製造法を提示する。
【0158】
有機溶媒は、C1〜3低級アルコールと他の有機溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トルエン、およびテトラヒドロフランから成る群より選ばれる)との共沸混合物を含む混合物であっても良い。上記の共沸混合物は、特定の圧力において液相の組成と気相の組成が一致していて、一定の沸点を持つ混合物となる混合溶液である。例えば、35質量%のメタノールと65質量%の1,2−ジクロロエタンとを含む混合物は共沸溶液である。共沸組成物が存在すると均一な蒸発が起き、このため被覆欠陥のない均一な電荷障壁層が生成し、また電荷障壁被覆用溶液の貯蔵安定性が向上する。
【0159】
障壁層に含まれるバインダ樹脂は、単一樹脂層として生成した障壁層と同じ材料を含むものでも良い。(i)ポリアミド樹脂は、障壁層上に画像形成層を形成するために使用される溶液に溶解せず、または膨潤しない、(ii)ポリアミド樹脂は、導電性支持体との接着性が良く、可撓性である、など、バインダ樹脂に必要な様々な条件を満たしているため、特にポリアミド樹脂が用いられる。ポリアミド樹脂の中でも、アルコールに可溶なナイロン樹脂、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロンなどと重合させた共重合体ナイロン;化学的に変性したナイロン、例えば、N−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンが使用される。使用可能な他の種類のバインダ樹脂は、フェノール系樹脂またはポリビニルブチラール樹脂である。
【0160】
電荷障壁層は、バインダ樹脂と粒状粒子と針状粒子とを溶媒中に分散して、障壁層の被覆用溶液を生成し、被覆用溶液を導電性支持体に被覆し、これを乾燥することによって生成する。溶媒は、溶媒中での分散が良く、時間が経っても被覆用溶液がゲル化しないものを選ぶ。更に、被覆用溶液の組成が時間の経過と共に変化するのを防いで被覆用溶液の貯蔵安定性を高め、被覆用溶液を再生できるよう、共沸溶媒を用いても良い。
【0161】
用語“n型”とは、例えば、主に電子を輸送する材料を指す。典型的なn型材料としては、ジブロモアントアントロン、ベンゾイミダゾールペリレン、酸化亜鉛、酸化チタン、アゾ化合物(クロロジアンブルー(chlorodiane Blue)およびビスアゾ顔料など)、置換2,4−ジブロモトリアジン類、多核芳香族キノン類、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0162】
用語“p型”とは、例えば、正孔を輸送する材料を指す。典型的なp型有機顔料としては、例えば、金属を含まないフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、ガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、銅フタロシアニンなどが挙げられる。
【0163】
[接着層]
所望ならば、障壁層と電荷発生層との間に中間層5を設けて接着性を高めても良い。しかし、実施の形態において、浸漬塗布したアルミニウムドラムを、接着層なしに用いても良い。
【0164】
更に、必要ならば、光受容体のいずれかの層の間に接着層を設けて、隣接層との接着性を高めても良い。あるいは、または更に、接着剤を、接着するそれぞれの層の一方または両方に加えても良い。必要に応じたこのような接着層の厚さは、約0.001μmから約0.2μmまでである。このような接着層は、例えば、接着剤を適当な溶媒に溶解し、手、スプレー、浸漬塗布、ドローバーコーティング、グラビアコーティング、シルクスクリーン、エアナイフコーティング、真空蒸着、化学処理、ロールコーティング、巻き線棒塗布などで塗布し、乾燥して溶媒を除くことにより塗布する。適当な接着剤としては、例えば、塗膜形成ポリマ類、例えば、ポリエステル(dupont 49,000(E. I. duPont de Nemours & Co.製)、Vitel PE-100(Goodyear Tire and Rubber Co.製))、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。接着層は、約5万から約10万まで、例えば、約7万のMと、約35,000のMを持つポリエステルを含むものでも良い。
【0165】
[画像形成層]
画像形成層とは、電荷発生材料、電荷輸送材料、または電荷発生材料と電荷輸送材料の両方を含む、1つ以上の層を指す。
【0166】
本発明の光受容体には、n型、p型どちらの電荷発生材料を用いても良い。
【0167】
電荷発生材料と電荷輸送材料とが別々の層の中、例えば、電荷発生層と電荷輸送層とにある場合、電荷輸送層がSOFを含んでいる。更に、電荷発生材料と電荷輸送材料とが同じ層中にある場合、この層がSOFを含んでいる。
【0168】
[電荷発生層]
有機光導電性電荷発生材料の例としては、アゾ顔料(Sudan Red、Dian Blue、Janus Green Bなど)、キノン顔料(Algol Yellow、Pyrene Quinone、Indanthrene Brilliant Violet RRPなど)、キノシアニン顔料、ペリレン顔料(ベンゾイミダゾールペリレンなど)、インジゴ顔料(インジゴ、チオインジゴなど)、ビスベンゾイミダゾール顔料(Indofast Orangeなど)、フタロシアニン顔料(銅フタロシアニン、アルミノクロロフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニンなど)、キナクリドン顔料、またはアズレン化合物が挙げられる。適当な無機光導電性電荷発生材料としては、例えば、硫化カドミウム、スルホセレン化カドミウム、セレン化カドミウム、結晶性または非晶性セレン、酸化鉛、および他のカルコゲニド類が挙げられる。実施の形態では、例えば、セレン−ヒ素、セレン−テルル−ヒ素、セレン−テルルなどのセレンの合金が使用できる。
【0169】
電荷発生層には、適当であればどのような不活性樹脂バインダ材料を使用しても良い。典型的な有機樹脂状バインダとしては、ポリカーボネート類、アクリラートポリマ類、メタクリラートポリマ類、ビニルポリマ類、セルロースポリマ類、ポリエステル類、ポリシロキサン類、ポリアミド類、ポリウレタン類、エポキシ樹脂、ポリビニルアセタール類などが挙げられる。
【0170】
被覆用組成物として有用な分散液を作るため、電荷発生材料と共に溶媒を用いる。この溶媒は、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸アルキル、およびこれらの混合物である。酢酸アルキル(酢酸ブチル、酢酸アミルなど)は、アルキル基中に3個から5個までの炭素原子を含むことができる。組成物中の溶媒の量は、例えば、組成物の重量に対して約70質量%から約98質量%までの範囲である。
【0171】
組成物中の電荷発生材料の量は、例えば、溶媒を含む組成物の重量に対して約0.5質量%から約30質量%までの範囲である。乾燥した光導電性塗膜中に分散している光導電性粒子(即ち、電荷発生材料)の量は、選択した具体的な光導電性顔料粒子により、ある程度変化する。例えば、チタニルフタロシアニンや金属を含まないフタロシアニンなどのフタロシアニン有機顔料を使用する場合、乾燥した光導電性塗膜が、乾燥光導電性塗膜の総重量に対して約30質量%と約90質量%の間の全フタロシアニン顔料を含んでいると十分な結果が得られる。光導電性は、1平方cm当たりに被覆された顔料の相対量に影響されるため、乾燥光導電性塗膜層が厚ければ、より少ない顔料負荷量を用いる。反対に、乾燥光導電層が薄ければ、高い顔料負荷量が望ましい。
【0172】
一般に、光導電性塗膜を浸漬塗布によって塗布する場合、光導電性粒子の平均粒径が約0.6μm未満であると十分な結果が得られる。光導電性粒子の平均粒径は、約0.4μm未満である。実施の形態において、光導電性粒子の粒径はまた、粒子をその中に分散している乾燥光導電性塗膜の厚さよりも小さい。
【0173】
電荷発生層において、電荷発生材料(CGM)とバインダの重量比は、30(CGM):70(バインダ)から70(CGM):30(バインダ)までの範囲である。
【0174】
電荷発生層(ここでは、光導電層とも呼ばれる)と電荷輸送層とを含む多層型光受容体では、乾燥光導電層の被覆厚さが約0.1μmと約10μmの間であると十分な結果が得られる。実施の形態において、光導電層の厚さは約0.2μmと約4μmの間である。しかし、この厚さも顔料負荷量に応じて変わる。つまり、顔料負荷量が高いと、より薄い光導電性塗膜が使用できる。本発明の目的が達成されるならば、この範囲外の厚さとしても良い。
【0175】
光導電性粒子を被覆用組成物のバインダおよび溶媒に分散させるには、適当であればどのような手法を用いても良い。典型的な分散法としては、例えば、ボールミル法、ロールミル法、垂直粉砕機での粉砕、サンドミル法などが挙げられる。ボールロールミルを用いた典型的な粉砕時間は、約4日間と約6日間との間である。
【0176】
電荷輸送材料としては、光導電性材料からの、光励起された正孔の流入を支え、または、電子を輸送して、これらの正孔または電子を、有機層を通して運び、表面電荷を選択的に消散させることのできる有機ポリマ、非ポリマ系材料、またはSOFが挙げられる。
【0177】
[有機ポリマ電荷輸送層]
電荷輸送材料の例としては、例えば、主鎖または側鎖に、多環式芳香族環(アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネンなど)、または窒素含有複素環(インドール、カルバゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール、トリアゾール、ヒドラゾン化合物など)を持つ化合物より選ばれる正孔輸送材料が挙げられる。典型的な正孔輸送材料としては、電子供与体材料、例えば、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール、テトラフェニルピレン、1−メチルピレン、ペリレン、クリセン、アントラセン、テトラフェン、2−フェニルナフタレン、アゾピレン、1−エチルピレン、アセチルピレン、2,3−ベンゾクリセン、2,4−ベンゾピレン、1,4−ブロモピレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(ビニルピレン)、ポリ(ビニルテトラフェン)、ポリ(ビニルテトラセン)、ポリ(ビニルペリレン)などが挙げられる。適当な電子輸送材料としては、電子受容体、例えば、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリデン、テトラシアノピレン、ジニトロアントラキノン、ブチルカルボニルフルオレンマロノニトリルなどが挙げられる(その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第4,921,769号を参照)。その他の正孔輸送材料としては、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第4,265,990号に記載のアリールアミン類、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン (式中、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどから成る群より選ばれる)などが挙げられる。その他公知の電荷輸送層分子を選択しても良い(例えば、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第4,921,773号および米国特許第4,464,450号を参照)。
【0178】
電荷輸送層には、適当であればどのような不活性樹脂バインダを用いても良い。塩化メチレンに可溶な典型的な不活性樹脂バインダとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリエステル、ポリアリーラート、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリエーテル、ポリスルホンなどが挙げられる。分子量は、約2万から約150万までの範囲で変化させることができる。
【0179】
電荷輸送層において、電荷輸送材料(CTM)とバインダの重量比は、30(CTM):70(バインダ)から70(CTM):30(バインダ)までの範囲である。
【0180】
電荷輸送層および電荷発生層を基材に塗布するには、適当であればどのような手法を用いても良い。典型的な被覆法としては、浸漬塗布、ロールコーティング、スプレーコーティング、ロータリーアトマイザなどが挙げられる。この被覆法では広い固体濃度が使用できる。固体濃度は、分散液の総重量に対して約2質量%と30質量%の間である。“固体”という表現は、例えば、電荷輸送被覆用分散液の電荷輸送粒子とバインダ成分を指す。このような固体濃度は、浸漬塗布、ロール、スプレー塗布などに有用である。一般に、ロール塗布には濃度の高い被覆用分散液が用いられる。堆積した塗膜の乾燥は、オーブン乾燥、赤外線乾燥、空気乾燥など、適当であればどのような従来法で行っても良い。一般に、輸送層の厚さは約5μmから約100μmの間であるが、この範囲を超える厚さを用いても良い。一般に、電荷輸送層と電荷発生層の厚さの比は、例えば、約2:1から200:1までに保たれ、一部の例では、約400:1程にも大きい。
【0181】
[SOF電荷輸送層]
代表的な電荷輸送SOFは、例えば、多環式芳香族環(アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネンなど)、または窒素含有複素環(インドール、カルバゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール、トリアゾール、ヒドラゾン化合物など)を含むセグメントを持つ化合物より選ばれる正孔輸送材料を含んでいる。典型的な正孔輸送SOFセグメントとしては、電子供与体材料、例えば、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール、テトラフェニルピレン、1−メチルピレン、ペリレン、クリセン、アントラセン、テトラフェン、2−フェニルナフタレン、アゾピレン、1−エチルピレン、アセチルピレン、2,3−ベンゾクリセン、2,4−ベンゾピレン、1,4−ブロモピレンなどが挙げられる。適当な電子輸送SOFセグメントとしては、電子受容体、例えば、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリデン、テトラシアノピレン、ジニトロアントラキノン、ブチルカルボニルフルオレンマロノニトリルなどが挙げられる(米国特許第4,921,769号を参照)。その他の正孔輸送SOFセグメントとしては、米国特許第4,265,990号に記載のアリールアミン類、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン (式中、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどから成る群より選ばれる)などが挙げられる。その他公知の電荷輸送SOFセグメントを選択しても良い(例えば、米国特許第4,921,773号および米国特許第4,464,450号を参照)。
【0182】
SOF電荷輸送層は、
(a)それぞれが1つのセグメントといくつかの官能基とを含む、電荷輸送傾向を持つ複数の分子構成要素を含んでいる、液体を含む反応混合物を調製する工程と、
(b)反応混合物をウェットフィルムとして堆積する工程と、
(c)分子構成要素を含むウェットフィルムの、SOFを含む乾燥薄膜への変化を促進する工程と、
によって製造できる。SOFは、共有結合性有機骨格として配列した、複数のセグメントと複数の連結基とを含み、巨視的レベルにおいて、共有結合性有機骨格は薄膜である。
【0183】
ウェット層としての反応混合物の堆積は、適当であればどのような従来法で行っても良く、多くの塗布法のいずれかで塗布する。典型的な塗布法としては、例えば、ハンドコーティング、スプレーコーティング、ウェブコーティング、浸漬塗布などが挙げられる。SOFを生成する反応混合物は、広い範囲の分子構成要素の負荷量が使用できる。実施の形態において、負荷量は、反応混合物の総重量に対して約2質量%と50質量%の間である。用語“負荷量”とは、例えば、電荷輸送SOF反応混合物の分子構成要素成分を指す。このような負荷量は、浸漬塗布、ロール、スプレー塗布などに有用である。一般に、ロール塗布には濃度の高い被覆用分散液が用いられる。堆積した塗膜の乾燥は、オーブン乾燥、赤外線乾燥、空気乾燥など、適当であればどのような従来法で行っても良い。一般に、電荷輸送SOF層の厚さは約5μmから約100μmの間、例えば、約10μmから約70μmまたは10μmから約40μmである。一般に、電荷輸送層と電荷発生層の厚さの比は、約2:1から200:1までに保たれ、一部の例では、400:1程にも大きい。
【0184】
[単一層P/R−有機ポリマ]
本件に述べた材料と手順を用いて、バインダと電荷発生材料と電荷輸送材料とを含む単一画像形成層型の光受容体を製造する。例えば、単一画像形成層用の分散液の固体含量は、分散液の重量の約2質量%から約30質量%までの範囲である。
【0185】
画像形成層が、電荷発生層と電荷輸送層の機能を兼ねている単一層では、その中に含まれる成分の量は、例えば、以下のとおりである。電荷発生材料(約5質量%から約40質量%)、電荷輸送材料(約20質量%から約60質量%)、バインダ(画像形成層のその他の部分)。
【0186】
[単一層P/R−SOF]
本件に述べた材料と手順を用いて、電荷発生材料と電荷輸送SOFとを含む単一画像形成層型の光受容体を製造する。例えば、単一画像形成層用の分散液の固体含量は、分散液の重量の約2質量%から約30質量%までの範囲である。
【0187】
画像形成層が、電荷発生層と電荷輸送層の機能を兼ねている単一層では、その中に含まれる成分の量は、例えば以下のとおりである。電荷発生材料(約2質量%から約40質量%)、電荷輸送の追加機能性の傾向を持つ分子構成要素(約20質量%から約75質量%)。
【0188】
[オーバーコート層]
本発明による実施の形態では、必要に応じて、1つ以上のオーバーコート層8を更に含むことができる。オーバーコート層を用いる場合、電荷発生層の上、または電荷輸送層の上にこれを設ける。この層は、電気絶縁性または僅かに半導電性のSOFを含んでいる。
【0189】
このような保護用オーバーコート層は、必要に応じて電荷輸送セグメントを含んでいる複数の分子構成要素を含む、SOF生成反応混合物を含んでいる。
【0190】
添加剤は、オーバーコート層中に、オーバーコート層の約0.5質量%から約40質量%までの範囲で加えることができる。実施の形態において、添加剤としては、耐摩耗性を更に向上し、および/または、電荷緩和性を与える、有機および無機粒子が挙げられる。実施の形態において、有機粒子としては、テフロン粉末、カーボンブラック、グラファイト粒子が挙げられる。実施の形態において、無機粒子としては、絶縁性および半導電性金属酸化物粒子、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられる。その他の半導電性添加剤は、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第5,853,906号に記載の酸化したオリゴマ塩である。実施の形態において、オリゴマ塩は、酸化したN,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ビフェニルジアミン塩である。
【0191】
SOFオーバーコート層は、
(a)それぞれが1つのセグメントといくつかの官能基とを含む、電荷輸送傾向を持つ複数の分子構成要素を含んでいる、液体を含む反応混合物を調製する工程と、
(b)反応混合物をウェットフィルムとして堆積する工程と、
(c)分子構成要素を含むウェットフィルムの、SOFを含む乾燥薄膜への変化を促進する工程と、
によって調製できる。SOFは、共有結合性有機骨格として配列した、複数のセグメントと複数の連結基とを含み、巨視的レベルにおいて、共有結合性有機骨格は薄膜である。
【0192】
ウェット層としての反応混合物の堆積は、適当であればどのような従来法で行っても良く、多くの塗布法のいずれかで塗布する。典型的な塗布法としては、例えば、ハンドコーティング、スプレーコーティング、ウェブコーティング、浸漬塗布などが挙げられる。ウェットフィルムの乾燥SOFへの変化の促進は、オーブン乾燥、赤外線乾燥、空気乾燥など、適当であればどのような従来法で行っても良い。
【0193】
約2μmから約15μmまで、例えば、約3μmから約8μmまでのオーバーコート層は、引っかき抵抗性と耐摩耗性を与える他に、電荷輸送分子の溶出、結晶化、電荷輸送層のひび割れの防止に有効である。
【0194】
[グラウンドストリップ]
グラウンドストリップ9は、塗膜形成バインダと導電性粒子とを含んでいる。セルロースを用いて導電性粒子を分散させても良い。導電性グラウンドストリップ層8には、適当であればどのような導電性粒子を用いても良い。グラウンドストリップ8は、例えば、その内容を全て本件に引用して援用する、米国特許第4,664,995号に挙げられている材料などを含んでいる。典型的な導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、銅、銀、金、ニッケル、タンタル、クロム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、酸化インジウムスズなどが挙げられる。
【0195】
導電性粒子は、適当であればどのような形状であっても良い。典型的な形状としては、不規則形状、粒状、球状、楕円状、立方体、フレーク状、繊維状などが挙げられる。実施の形態において、導電性粒子の粒径は、導電性グラウンドストリップ層の外表面があまり不規則にならないよう、導電性グラウンドストリップ層の厚さよりも小さくなければならない。一般に、平均粒径が約10μm未満ならば、乾燥したグラウンドストリップ層外表面に導電性粒子があまり突出せず、乾燥グラウンドストリップ層のマトリックス内に粒子を比較的均一に分散させることができる。グラウンドストリップ中に用いられる導電性粒子の濃度は、使用する具体的な導電性材料の導電性などの要因に応じて変化する。
【0196】
実施の形態において、グラウンドストリップ層は、約7μmから約42μmまでの厚さ、例えば、約14μmから約27μmまでの厚さを持つことができる。
【0197】
[用途B:薄膜トランジスタ中のSOF]
図4は、基材36と、ゲート電極38と、ソース電極40およびドレイン電極42と、絶縁層34と、有機半導体層32とを含む、薄膜トランジスタ(TFT)構造体30の概略図である。
【0198】
基材は、例えば、シリコンウエハ、ガラス板、金属シート、プラスチックフィルムまたはシートを含む。構造可撓性のデバイスでは、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシートなどのプラスチック基材が用いられる。基材の厚さは、約10μmから10mm以上までで、代表的な厚さは、特に可撓性プラスチック基材では約50μmから約2mmまで、ガラスやシリコンなどの剛性基材では約0.4mmから約10mmまでである。
【0199】
ここでは、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極の組成について述べる。ゲート電極は、金属箔、導電性ポリマフィルム、導電性インクまたはペーストから作った導電性フィルム、あるいは基材自体、例えば、大量にドープしたシリコンなどである。ゲート電極材料の例としては、例えば、アルミニウム、銀、金、クロム、酸化インジウムスズ、導電性ポリマ(ポリスチレンスルホナートをドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)など)、カーボンブラック/グラファイトまたはコロイド状銀をポリマバインダ中に分散させた導電性インク/ペースト(ELECTRODAG(商標)、Acheson Colloids Company製、など)が挙げられる。ゲート電極層は、真空蒸着、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、導電性ポリマ溶液または導電性インクの、スピンコーティング、キャスティング、または印刷による塗布によって調製できる。ゲート電極層の厚さは、例えば、金属箔では約10nmから約200nmまでの範囲、ポリマ導体では約1μmから約10μmの範囲である。ソースおよびドレイン電極層は、半導体層に対して低抵抗オーム接触となる材料から作ることができる。ソースおよびドレイン電極としての使用に適した典型的な材料としては、ゲート電極材料として挙げた、銀、金、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマ、導電性インクなどが挙げられる。ソースおよびドレイン電極の典型的な厚さは、例えば、約40nmから約1μmまで、例えば、約100nmから約400nmである。
【0200】
一般に、絶縁層は、無機材料フィルムまたは有機ポリマフィルムである。絶縁層に適した無機材料としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムジルコニウムなどが挙げられ、絶縁層用の有機ポリマの例としては、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリビニルフェノール、ポリイミド類、ポリスチレン、ポリメタクリラート類、ポリアクリラート類、エポキシ樹脂、液体ガラスなどが挙げられる。絶縁層の厚さは、使用する誘電材料の誘電率に応じて、例えば、約10nmから約500nmまでである。絶縁層の典型的な厚さは、約100nmから約500nmまで、例えば、約200nmから約400nmまでである。絶縁層は、例えば、約10−12S/cm未満の導電率を持つ。
【0201】
例えば、絶縁層とソース/ドレイン電極との間に、それらと接して半導体層を設ける場合、半導体層の厚さは一般に、例えば、約10nmから約1μmまで、または約40nmから約100nmまでである。半導体層は、半導体の追加機能性を持つSOFを含んでいても良い。半導体追加機能性を持つSOFの製造法は、次のとおりである。
(a)それぞれが、半導体の傾向を持つ1つのセグメントと、いくつかの官能基とを含む、複数の分子構成要素を含んでいる、液体を含む反応混合物を調製する。
(b)反応混合物をウェットフィルムとして堆積する。
(c)分子構成要素を含むウェットフィルムの、SOFを含む乾燥薄膜への変化を促進する。SOFは、共有結合性有機骨格として配列した、複数のセグメントと複数の連結基とを含み、巨視的レベルにおいて、共有結合性有機骨格は、複数セグメントの厚さの薄膜である。
【0202】
絶縁層とゲート電極と半導体層とソース電極とドレイン電極は、どのような順で形成しても良い。詳しくは、実施の形態において、ゲート電極と半導体層はいずれも絶縁層に接し、ソース電極とドレイン電極はいずれも半導体層に接している。用語“どのような順でも”には、逐次形成と同時形成が含まれる。例えば、ソース電極とドレイン電極とを同時に、または逐次的に形成する。薄膜トランジスタの組成、製造、および稼働については、その内容を全て本件に引用して援用する、Baoら、米国特許第6,107,117号に述べられている。
【実施例】
【0203】
ここでは、SOFの製造に用いられる方法の多くの実施例を述べる。これらは、使用される様々な組成、条件、手法の例である。それぞれの実施例の中で示されているものは、この工程に関わる名目上の作業(nominal actions)である。操作パラメータ(温度、時間、被覆法など)と同様に、作業の順序と数も以下の実施例に限定されるものではない。全ての比率は、別記のない限り質量比である。用語“rt”とは、例えば、約20℃から約25℃までの範囲の温度を指す。機械的測定値は、当該技術で標準的な方法を用いて、TA Instruments DMA Q800 力学的機械分析器で測定した。示差走査熱量測定は、当該技術で標準的な方法を用いて、TA Instruments DSC 2910 示差走査熱量計で行った。熱重量分析は、当該技術で標準的な方法を用いて、TA Instruments TGA 2950熱重量分析器で行った。FT−IRスペクトルは、当該技術で標準的な方法を用いて、Nicolet Magna 550分光計で測定した。1μm未満の厚さの測定は、Dektak 6m 表面プロファイラで行った。表面エネルギは、当該技術で標準的な方法を用いて、Fibro DAT 1100(スウェーデン)接触角測定器で測定した。別記のない限り、以下の実施例で製造したSOFは、欠陥のないSOFまたは実質的に欠陥のないSOFのいずれかであった。
【0204】
Mylar上に被覆したSOFは、室温の水浴に浸して剥離させた。10分間漬けると、SOF薄膜はMylar基材から殆ど離れた。この工程は、高い表面エネルギを持つ(極性)ことが知られる基材、例えば、ガラス、雲母、塩などに被覆したSOFで、最も効果的である。
【0205】
以下の実施例から、本発明の方法で調製した組成物は、多くの種類の成分を用いて実施でき、先に述べたような、また以下の文に示すような、多くの様々な用法があることが明らかとなろう。
【0206】
[パターン化SOF組成物の実施の形態]
本発明の実施の形態のひとつは、セグメントの微視的な配置がパターン化しているSOFを得るものである。用語“パターン化”とは、例えば、セグメントが互いに連結している配列を指す。従って、パターン化SOFとは、具体的に、例えば、セグメントAがセグメントBとだけ結合し、また反対に、セグメントBがセグメントAとだけ結合している組成物である。更に、セグメントが1つだけ(セグメントAと呼ぶ)存在し、これを用いる系は、AがAとだけ反応するため、パターン化すると考えられる。原則として、パターン化SOFは、どのような数の種類のセグメントを用いても得られる。セグメントのパターン化は、分子構成要素の官能基の反応性がパートナー分子構成要素に対して親和性を持ち、分子構成要素がそれ自体と反応する可能性が低い分子構成要素を使用することで制御する。前述のセグメントをパターン化する方策は限定されるものではない。パターン化を制御する特定の方策を意図的に行っていない例も、本件に具体的に示す。
【0207】
パターン化薄膜は、SOF内の連結基の十分な生成を検出可能な分光技術を用いて検出する。このような分光法としては、例えば、フーリエ変換赤外分光法、ラマン分光法、固体核磁気共鳴分光法が挙げられる。試料から分光学的手段によりデータを得た際の、構成要素上の官能基からのシグナルの消失と、連結基からのシグナルの出現は、構成要素間の反応と、同時に起こるSOFのパターン化と生成を示している。
【0208】
パターン化度(degree of patterning)の異なるものも具体的に示される。SOFの完全パターン化は、構成要素の官能基からの分光学的シグナルが完全に消失することで検出できると考えられる。SOF内にパターン化のドメインが存在する、パターン化度の低いSOFも具体的に示される。パターン化のドメインを持つSOFを分光学的に測定すると、パターン化ドメインの周囲に変化せずに残っている構成要素の官能基からのシグナルが生じると考えられる。
【0209】
構成要素間の反応が不十分で薄膜が形成できなければ、パターン化度が非常に低くなるのは当然である。このため、本発明の方法を十分に行うには、SOF内で構成要素の間をかなりパターン化する必要がある。SOFの形成に必要なパターン化度は可変であり、選択した構成要素と所望の連結基に応じて変えることができる。必要な最小パターン化度は、本件に記載の方法を用いて薄膜を形成するために必要な程度であり、定量的に示すならば、想定した連結基の約20%以上の形成、例えば、想定連結基の約40%以上、または想定連結基の約50%の形成である。本発明で具体的に示される公称パターン化度は、想定連結基の約60%の形成、例えば、想定連結基の約100%の形成である。連結基の形成は、先の実施の形態で述べたように分光学的に検出できる。
【0210】
[パターン化SOFの製造]
以下の実験は、パターン化SOFの発生を示している。SOF中にパターンを発生させるには多くのやり方があるのは明らかで、以下に示す作業に限定されるものではない。
【0211】
実施例1は、2つの構成要素の間でエーテル化結合反応が起こるよう成分を組み合わせた、タイプ2 SOFの合成を示している。酸触媒の存在下で加熱を行い、実施例1に記載の方法でSOFを得る。
【0212】
[実施例1:タイプ2 SOF]
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものを混合した。構成要素 ベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.47g、3.4mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.12g、1.7mmol]、1−メトキシ−2−プロパノール(17.9g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液、0.31gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。
【0213】
(作業B)反応混合物のウェットフィルムとしての堆積。8ミル(約0.2mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。
【0214】
(作業C)ウェットフィルムの乾燥SOFへの変化の促進。ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型SOFとして基材から剥離できる、約3〜6μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。このSOFの一部のフーリエ変換赤外スペクトルを図5に示す。
【0215】
実施例1で調製したSOFが、SOF内でパターン化している、使用した分子構成要素に由来するセグメントを含んでいることを示すため、3つの対照実験を行った。即ち、実施例1の作業Aで述べたものと同じ手法を用い、次のように配合をそれぞれ変えて3つの液体反応混合物を調製した。
*(対照反応混合物1;実施例2)構成要素 ベンゼン−1,4−ジメタノールを加えない。
*(対照反応混合物2;実施例3)構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンを加えない。
*(対照反応混合物3;実施例4)触媒 p−トルエンスルホン酸を加えない。
【0216】
上記の対照実験のためのSOF製造法に関する完全な記述は、以下の実施例2〜実施例4に詳細に示す。
【0217】
[実施例2:構成要素 ベンゼン−1,4−ジメタノールを加えない対照実験]
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものを混合した。構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.12g、1.7mmol]、1−メトキシ−2−プロパノール(17.9g)。均一溶液となるまで、混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液、0.31gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。
【0218】
(作業B)反応混合物のウェットフィルムとしての堆積。8ミル(約0.2mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。
【0219】
(作業C)ウェットフィルムの乾燥SOFへの変化の促進の試行。ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業では薄膜ができなかった。代わりに、沈殿した構成要素の粉末が基材上に堆積した。
【0220】
[実施例3:構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンを加えない対照実験]
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものを混合した。構成要素 ベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.47g、3.4mmol]、1−メトキシ−2−プロパノール(17.9g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液、0.31gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。
【0221】
(作業B)反応混合物のウェットフィルムとしての堆積。8ミル(約0.2mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。
【0222】
(作業C)ウェットフィルムの乾燥SOFへの変化の促進の試行。ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業では薄膜ができなかった。代わりに、沈殿した構成要素の粉末が基材上に堆積した。
【0223】
[実施例4:酸触媒 p−トルエンスルホン酸を加えない対照実験]
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものを混合した。構成要素 ベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.47g、3.4mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.12g、1.7mmol]、1−メトキシ−2−プロパノール(17.9g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過して、液体を含む反応混合物を得た。
【0224】
(作業B)反応混合物のウェットフィルムとしての堆積。8ミル(約0.2mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。
【0225】
(作業C)ウェットフィルムの乾燥SOFへの変化の促進の試行。ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業では薄膜ができなかった。代わりに、沈殿した構成要素の粉末が基材上に堆積した。
【0226】
実施例2〜実施例4で述べたように、3つの対照反応混合物のそれぞれに、実施例1に概説した作業Bと作業Cを行った。しかし、全てのケースでSOFはできず、構成要素が基材上に沈殿しただけであった。これらの結果から、構成要素は、ここに提示した反応条件下ではそれ自体と反応せず、また、構成要素は、促進剤(p−トルエンスルホン酸)が無いと反応できないと結論された。ゆえに、実施例1に述べた活性は、構成要素(ベンゼン−1,4−ジメタノールと、N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン)が、反応を促進されたときにのみ、互いに反応できるというものである。セグメントのp−キシリルとN4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンがお互いとだけ結合した場合に、パターン化SOFが生じる。SOFのフーリエ変換赤外スペクトルを対照実験生成物(図6)のそれと比較すると、開始物質に由来する官能基が無い(ベンゼン−1,4−ジメタノール(dimthanol)に由来するヒドロキシルバンドが明らかに無い)ことが分かり、更に、先に述べたように、セグメント間の結合も進んでいることが裏付けられた。また、SOFのスペクトル中にヒドロキシルバンドが全くないことは、パターン化度が非常に高いことを示している。
【0227】
本発明に従って製造した、欠陥のないSOF、および/または、実質的に欠陥のないSOFの更に別の例を以下に示す。以下の実施例において、(作業A)は、液体を含む反応混合物の調製、(作業B)は、反応混合物のウェットフィルムとしての堆積、(作業C)は、ウェットフィルムの乾燥SOFへの変化の促進である。
【0228】
[実施例5:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 ベンゼン−1,3,5−トリメタノール[セグメント=ベンゼン−1,3,5−トリメチル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.2g、1.2mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、0.59g、0.8mmol]、1−メトキシ−2−プロパノール(8.95g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液、0.16gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)20ミル(約0.5mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型SOFとして基材から剥離できる、約2〜4μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0229】
[実施例6:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 1,6−n−ヘキサンジオール[セグメント=n−ヘキシル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.21g、1.8mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、0.58g、0.87mmol]、1−メトキシ−2−プロパノール(8.95g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液、0.16gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)20ミル(約0.5mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型SOFとして基材から剥離できる、約4〜5μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。このSOFの一部のフーリエ変換赤外スペクトルを図7に示す。
【0230】
[実施例7:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 ベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.64g、4.6mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.54g、2.3mmol]、1,4−ジオキサン(7.51g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱し、次にこれを0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.28gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して4分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約8〜12μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0231】
[実施例8:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 1,6−n−ヘキサンジオール[セグメント=n−ヘキシル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.57g、4.8mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.61g、2.42mmol]、1,4−ジオキサン(7.51g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.22gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約12〜20μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0232】
[実施例9:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール[セグメント=4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェニル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.97g、6mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.21g、1.8mmol]、1,4−ジオキサン(7.51g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.22gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約12〜20μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。SOFのフーリエ変換赤外スペクトルを図8に示す。
【0233】
[実施例10:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 ベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.52g、3.8mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.26g、1.9mmol]、1,4−ジオキサン(6.3g)、酢酸n−ブチル(1.57g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱し、次にこれを0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.28gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して4分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約7〜10μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0234】
[実施例11:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例7と同じ。(作業B)金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材に載せた、顔料とポリマ系バインダとを含む光導電層に、10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、120℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して20分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約9〜10μmの範囲であった。
【0235】
[実施例12:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 ベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.52g、3.8mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.26g、1.9mmol]、1,4−ジオキサン(6.3g)、メチルイソブチルケトン(1.57g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱し、次にこれを0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.28gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して4分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約7〜10μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0236】
[実施例13:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 1,6−n−ヘキサンジオール[セグメント=n−ヘキシル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.47g、4.0mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.31g、2.0mmol]、1,4−ジオキサン(6.3g)、酢酸n−ブチル(1.57g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.22gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約8〜12μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0237】
[実施例14:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例10と同じ。(作業B)金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材に載せた、顔料とポリマ系バインダとを含む光導電層に、10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、120℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して20分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約9〜10μmの範囲であった。
【0238】
[実施例15:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 1,6−n−ヘキサンジオール[セグメント=n−ヘキシル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.47g、4.0mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、1.31g、2.0mmol]、1,4−ジオキサン(6.3g)、メチルイソブチルケトン(1.57gの)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.22gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約8〜12μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0239】
[実施例16:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール[セグメント=4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェニル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.8g]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、0.8g、1.5mmol]、1,4−ジオキサン、酢酸n−ブチル(1.57g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.22gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約12μmの厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0240】
[実施例17:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例13と同じ。(作業B)金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材に載せた、顔料とポリマ系バインダとを含む光導電層に、10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、120℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して20分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約9〜10μmの範囲であった。
【0241】
[実施例18:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェノール[セグメント=4,4’−(シクロヘキサン−1,1−ジイル)ジフェニル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.8g、3.0mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、0.8g、1.5mmol]、1,4−ジオキサン、メチルイソブチルケトン(1.57g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.22gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約12μmの厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0242】
[実施例19:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例7と同じ。(作業B)金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材に載せた、顔料とポリマ系バインダとを含む光導電層に、10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、強制換気ドラフト内、周囲温度で5分間乾燥した後、120℃に予熱した強制換気オーブンに移して15分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約9〜10μmの範囲であった。
【0243】
[実施例20:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例10と同じ。(作業B)金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材に載せた、顔料とポリマ系バインダとを含む光導電層に、10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、強制換気ドラフト内、周囲温度で5分間乾燥した後、120℃に予熱した強制換気オーブンに移して15分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約9〜10μmの範囲であった。
【0244】
[実施例21:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例13と同じ。(作業B)金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材に載せた、顔料とポリマ系バインダとを含む光導電層に、10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、強制換気ドラフト内、周囲温度で5分間乾燥した後、120℃に予熱した強制換気オーブンに移して15分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約9〜10μmの範囲であり、剥離させることはできなかった。
【0245】
[実施例22:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例7と同じ。(作業B)発生体層と、ポリマ系バインダ中に分散させたジアミン型分子を含む輸送層とを含む多層型感光性部材に、10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、強制換気ドラフト内、周囲温度で5分間乾燥した後、120℃に予熱した強制換気オーブンに移して15分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約9〜10μmの範囲であった。
【0246】
[実施例23:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例10と同じ。(作業B)発生体層と、ポリマ系バインダ中に分散させたジアミン型分子を含む輸送層とを含む多層型感光性部材に、10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、強制換気ドラフト内、周囲温度で5分間乾燥した後、120℃に予熱した強制換気オーブンに移して15分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約9〜10μmの範囲であった。
【0247】
[実施例24:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例13と同じ。(作業B)発生体層と、ポリマ系バインダ中に分散させたジアミン型分子を含む輸送層とを含む多層型感光性部材に、10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、強制換気ドラフト内、周囲温度で5分間乾燥した後、120℃に予熱した強制換気オーブンに移して15分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約9〜10μmの範囲であった。
【0248】
[実施例25:タイプ1 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 (4,4’,4”,4’”−(ビフェニル−4,4’−ジイルビス(アザントリイル))テトラキス(ベンゼン−4,1−ジイル))テトラメタノール[セグメント=(4,4’,4”,4’”−(ビフェニル−4,4’−ジイルビス(アザントリイル))テトラキス(ベンゼン−4,1−ジイル)、Fg=アルコール(−OH)、1.48g、2.4mmol]、1,4−ジオキサン(8.3g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.15gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)25ミル(約0.64mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、約8〜24μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0249】
[実施例26:タイプ1 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 4,4’,4”−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメタノール[セグメント=(4,4’,4”−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメチル)、Fg=アルコール(−OH)、1.48g、4.4mmol]、1,4−ジオキサン(8.3g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.15gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)15ミル(約0.38mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、自立型薄膜として基材から剥離できる、約6〜15μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。この薄膜のフーリエ変換赤外スペクトルを図9に示す。2次元X線散乱データを図15に示す。図15から分かるように、バックグラウンドを超えるシグナルが無いことは、検出可能な周期性を持つ分子秩序が無いことを示している。
【0250】
[実施例27:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、0.26g、0.40mmol]、第2構成要素 3,3’−(4,4’−(ビフェニル−4−イルアザンジイル)ビス(4,1−フェニレン))ジプロパン−1−オール[セグメント=3,3’−(4,4’−(ビフェニル−4−イルアザンジイル)ビス(4,1−フェニレン))ジプロピル、Fg=ヒドロキシ(−OH)、0.34g、0.78mmol]、1−メトキシ−2−プロパノール(1.29ml)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液、0.2gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)8ミル(約0.2mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、150℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約15〜20μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。
【0251】
[実施例28:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例24と同じ。(作業B)発生体層と、ポリマ系バインダ中に分散させたジアミン型分子を含む輸送層とを含む多層型感光性部材に、5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて反応混合物を塗布した。(作業C)載せたウェット層を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約5μmであった。
【0252】
[実施例29:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例24と同じ。(作業B)発生体層と、ポリマ系バインダ中に分散させたジアミン型分子を含む輸送層とを含む多層型感光性部材を、750rpmで回転するスピンコーティング装置に固定して、反応混合物を塗布した。回転する基材の中心に液体反応混合物を滴下してウェット層を堆積した。(作業C)載せたウェット層を、140℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、均一に被覆された多層型デバイスができた。SOFの厚さは約0.2μmであった。
【0253】
[実施例30:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 テレフタルアルデヒド[セグメント=ベンゼン、Fg=アルデヒド(−CHO)、0.18g、1.3mmol]、第2構成要素 トリス(4−アミノフェニル)アミン[セグメント=トリフェニルアミン、Fg=アミン(−NH)、0.26g、0.89mmol]、テトラヒドロフラン(2.5g)。均一溶液となるまで混合物を震盪した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmPTFE膜で濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1−テトラヒドロフラン溶液、0.045gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、120℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約6μmの厚さを持つSOFができた。SOFの色は赤橙色であった。この薄膜のフーリエ変換赤外スペクトルを図10に示す。
【0254】
[実施例31:タイプ1 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 4,4’,4”−ニトリロトリベンズアルデヒド[セグメント=トリフェニルアミン、Fg=アルデヒド(−CHO)、0.16g、0.4mmol]、第2構成要素 トリス(4−アミノフェニル)アミン[セグメント=トリフェニルアミン、Fg=アミン(−NH)、0.14g、0.4mmol]、テトラヒドロフラン(1.9g)。均一溶液となるまで混合物を撹拌した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、120℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約6μmの厚さを持つSOFができた。SOFの色は赤色であった。この薄膜のフーリエ変換赤外スペクトルを図11に示す。
【0255】
[実施例32:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 グリオキサール[セグメント=共有単結合、Fg=アルデヒド(−CHO)、0.31g、5.8mmol、40質量%の水溶液、即ち、0.77gのグリオキサール水溶液として添加]、第2構成要素 トリス(4−アミノフェニル)アミン[セグメント=トリフェニルアミン、Fg=アミン(−NH)、1.14g、3.9mmol]、テトラヒドロフラン(8.27g)。均一溶液となるまで混合物を震盪した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)10ミル(約0.25mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、120℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約6〜12μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は赤色であった。
【0256】
[実施例33:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 テレフタルアルデヒド[セグメント=ベンゼン、Fg=アルデヒド(−CHO)、0.18g、1.3mmol]、第2構成要素 トリス(4−アミノフェニル)アミン[セグメント=トリフェニルアミン、Fg=アミン(−NH)、0.26g、0.89mmol]、テトラヒドロフラン(2.5g)、水(0.4g)。均一溶液となるまで混合物を震盪した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、120℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、6μmの厚さを持つSOFができた。SOFの色は赤橙色であった。
【0257】
[実施例34:タイプ1 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 4,4’,4”−ニトリロトリベンズアルデヒド[セグメント=トリフェニルアミン、Fg=アルデヒド(−CHO)、0.16g、0.4mmol]、第2構成要素 トリス(4−アミノフェニル)アミン[セグメント=トリフェニルアミン、Fg=アミン(−NH)、0.14g、0.4mmol]、テトラヒドロフラン(1.9g)、水(0.4g)。均一溶液となるまで混合物を撹拌した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、120℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約6μmの厚さを持つSOFができた。SOFの色は赤橙色であった。
【0258】
[実施例35:タイプ2 SOF]
(作業A)実施例28と同じ。(作業B)反応混合物をガラスピペットからガラススライド上に滴下した。(作業C)ガラススライドを加熱ステージ上で80℃に加熱し、約200μmの厚さを持つ、深赤色のSOFを得た。これは、ガラススライドから剥離できた。
【0259】
[実施例36:タイプ1 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 トリス[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]アミン[セグメント=トリ(p−トリル)アミン、Fg=ヒドロキシ(−OH)、5.12g]、添加剤 Cymel303(55mg)およびSilclean 3700(210mg)、触媒 Nacure XP-357(267mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(13.27g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合後、均一溶液となるまで55℃で65分間加熱した。混合物をローター上に置き、室温まで冷ました。溶液を1μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)カップコーター(ツキアゲコーティング)を用い、240mm/分の引っ張り速度で、市販の30mmドラム型光受容体に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた光受容体ドラムを、140℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、約6.9μmの厚さを持つSOFができた。図12は、このSOFオーバーコート層の光導電性(75ms(露光−測定)での電圧)を示す、光誘導放電曲線(PIDC)である。
【0260】
[実施例37:添加剤を加えた、タイプ1 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 トリス[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]アミン[セグメント=トリ(p−トリル)アミン、Fg=ヒドロキシ(−OH)、4.65g]、添加剤 Cymel303(49mg)およびSilclean 3700(205mg)、触媒 Nacure XP-357(254mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(12.25g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合後、均一溶液となるまで55℃で65分間加熱した。混合物をローター上に置き、室温まで冷ました。溶液を1μmのPTFEメンブランで濾過した。ポリエチレンワックス分散液(平均粒径5.5μm、40%固体/i−プロピルアルコール、613mg)を反応混合物に加えた。これに10分間超音波をかけ、ローター上で30分間混合した。(作業B)カップコーター(ツキアゲコーティング)を用い、240mm/分の引っ張り速度で、市販の30mmドラム型光受容体に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた光受容体ドラムを、140℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、SOF中にワックス粒子を一様に含んでいる、6.9μmの厚さを持つ薄膜ができた。図13は、このSOFオーバーコート層の光導電性(75ms(露光−測定)での電圧)を示す、光誘導放電曲線(PIDC)である。
【0261】
[実施例38:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 N,N,N’,N’−テトラキス−[(4-ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=ヒドロキシ(−OH)、3.36g]、構成要素 N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−ヒドロキシフェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラフェニルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=ヒドロキシル(−OH)、5.56g]、添加剤 Cymel303(480mg)およびSilclean 3700(383mg)、触媒 Nacure XP-357(480mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(33.24g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合後、均一溶液となるまで55℃で65分間混合した。混合物をローター上に置き、室温まで冷ました。溶液を1μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)カップコーター(ツキアゲコーティング)を用い、485mm/分の引っ張り速度で、市販の30mmドラム型光受容体に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた光受容体ドラムを、140℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、6.0μmから6.2μmまでの範囲の厚さを持つ薄膜ができた。図14は、このSOFオーバーコート層の光導電性(75ms(露光−測定)での電圧)を示す、光誘導放電曲線(PIDC)である。
【0262】
[実施例39:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 炭酸ジプロピル[セグメント=カルボニル[−C(=O)−]、Fg=プロポキシ(CHCHCHO−)、4.38g、30mmol]、構成要素 1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン[セグメント=シクロヘキサン、Fg=ヒドロキシル(−OH)、3.24g、20mmol]、触媒 ナトリウムメトキシド(38mg)、N−メチル−2−ピロリジノン(25.5g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合し、1μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた基材を、200℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0263】
[実施例40:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 炭酸ジプロピル[セグメント=カルボニル[−C(=O)−]、Fg=プロポキシ(CHCHCHO−)、4.38g、30mmol]、構成要素 1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン[セグメント=シクロヘキサン、Fg=ヒドロキシル(−OH)、3.24g、20mmol]、リン酸(2M水溶液、100mg)、N−メチル−2−ピロリジノン(25.5g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合し、1μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた基材を、200℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0264】
[実施例41:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 1,1’−カルボニルジイミダゾール[セグメント=カルボニル[−C(=O)−]、Fg=イミダゾール、4.86g、30mmol]、構成要素 1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン[セグメント=シクロヘキサン、Fg=ヒドロキシル(−OH)、3.24g、20mmol]、触媒 ナトリウムメトキシド(38mg)、N−メチル−2−ピロリジノン(25.5g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合し、1μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた基材を、200℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0265】
[実施例42:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 カルボニルジイミダゾール[セグメント=カルボニル[−C(=O)−]、Fg=イミダゾール、4.86g、30mmol]、構成要素 1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン[セグメント=シクロヘキサン、Fg=ヒドロキシル(−OH)、3.24g、20mmol]、リン酸(2M水溶液、100mg)、N−メチル−2−ピロリジノン(25.5g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合し、1μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた基材を、200℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0266】
[実施例43:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 トリメシン酸[セグメント=1,3,5−ベンゼントリカルボキシラート、Fg=H、4.20g、20mmol]、構成要素 1,6−ヘキサンジオール[セグメント=ヘキサン、Fg=ヒドロキシル(−OH)、3.55g、30mmol]、リン酸(2M水溶液、100mg)、N−メチル−2−ピロリジノン(25.5g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合し、1μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた基材を、200℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0267】
[実施例44:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 トリメシン酸[セグメント=1,3,5−ベンゼントリカルボキシラート、Fg=H、4.20g、20mmol]、構成要素 1,6−ヘキサンジオール[セグメント=ヘキサン、Fg=ヒドロキシル(−OH)、3.55g、30mmol]、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(50mg)、N−メチル−2−ピロリジノン(25.5g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合し、1μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた基材を、200℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0268】
[実施例45:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 トリメシン酸[セグメント=1,3,5−ベンゼントリカルボキシラート、Fg=H、4.20g、20mmol]、構成要素 ヘキサメチレンジアミン[セグメント=ヘキサン、Fg=アミン(−NH)、3.49g、30mmol]、リン酸(2M水溶液、100mg)、N−メチル−2−ピロリジノン(25.5g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合し、1μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた基材を、200℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0269】
[実施例46:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 トリメシン酸[セグメント=1,3,5−ベンゼントリカルボキシラート、Fg=H、4.20g、20mmol]、構成要素 ヘキサメチレンジアミン[セグメント=ヘキサン、Fg=アミン(−NH)、3.49g、30mmol]、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(50mg)、N−メチル−2−ピロリジノン(25.5g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合し、1μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた基材を、200℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0270】
[実施例47:タイプ2 SOF]
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものを混合することができる。構成要素 1,4−ジイソシアナトベンゼン[セグメント=フェニル、Fg=イソシアナート(−N=C=O)、0.5g、3.1mmol]、第2構成要素 4,4’,4”−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメタノール[セグメント=4,4’,4”−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメチル、0.69g、2.1mmol]、ジメチルホルムアミド(10.1g)、トリエチルアミン(1.0g)。均一溶液が得られるまで混合物を撹拌する。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)8ミル(約0.2mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して120分間加熱する。
【0271】
[実施例48:タイプ2 SOF]
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものを混合することができる。構成要素 1,4−ジイソシアナトヘキサン[セグメント=ヘキシル、Fg=イソシアナート(−N=C=O)、0.38g、3.6mmol]、第2構成要素 トリエタノールアミン[セグメント=トリエチルアミン、0.81g、5.6mmol]、ジメチルホルムアミド(10.1g)、トリエチルアミン(1.0g)。均一溶液が得られるまで混合物を撹拌する。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過する。(作業B)8ミル(約0.2mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して120分間加熱する。
【0272】
[実施例49:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 N,N,N’,N’−テトラキス[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=ヒドロキシ(−OH)、4.24g]、構成要素 N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−ヒドロキシフェニル)テルフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラフェニルテルフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=ヒドロキシル(−OH)、5.62g]、添加剤 Cymel303(530mg)およびSilclean 3700(420mg)、触媒 Nacure XP-357(530mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(41.62g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合後、均一溶液となるまで55℃で65分間加熱した。混合物をローター上に置き、室温まで冷ました。溶液を1μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)カップコーター(ツキアゲコーティング)を用い、485mm/分の引っ張り速度で、市販の30mmドラム型光受容体に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた光受容体ドラムを、140℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、6.2μmの厚さを持つSOFができた。
【0273】
[実施例49:タイプ2 SOFの試行]
(作業A)液体を含む反応混合物の調製の試行。以下のものを混合した。構成要素 トリス[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]アミン[セグメント=トリ(p−トリル)アミン、Fg=ヒドロキシ(−OH)、5.12g]、添加剤 Cymel303(55mg)、Silclean 3700(210mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(13.27g)。分子構成要素を完全に溶解させようと、混合物を55℃で65分間加熱したが、完全には溶解しなかった。触媒 Nacure XP-357(267mg)を加え、不均一混合物を更にローリングウェーブローター上で10分間混合した。この実施例では、加熱工程の後に触媒を加えた。不溶解の分子構成要素の量のため、溶液は被覆前に濾過しなかった。(作業B)反応混合物のウェットフィルムとしての堆積。カップコーター(ツキアゲコーティング)を用い、240mm/分の引っ張り速度で、市販の30mmドラム型光受容体に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェットフィルムの乾燥フィルムへの変化の促進。ウェット層を載せた光受容体ドラムを、140℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業では均一な薄膜ができなかった。粒子を含む不均一な薄膜が形成された部分がいくつかあり、また、薄膜が全く形成されない部分もあった。
【0274】
[実施例50:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 トリス[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]アミン[セグメント=トリ(p−トリル)アミン、Fg=ヒドロキシ(−OH)、5.12g]、添加剤 Cymel303(55mg)およびSilclean 3700(210mg)、触媒Nacure XP-357(267mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(13.27g)。混合物をローリングウェーブローター上で10分間混合後、均一溶液となるまで55℃で65分間加熱した。混合物をローター上に置き、室温まで冷ました。溶液を1μmのPTFEメンブランで濾過した。加熱工程後、反応混合物の粘度の上昇が見られた(但し、加熱前後の溶液の粘度は測定しなかった)。(作業B)カップコーター(ツキアゲコーティング)を用い、240mm/分の引っ張り速度で、市販の30mmドラム型光受容体に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた光受容体ドラムを、140℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、6.9μmの厚さを持つSOFができた。
【0275】
[実施例51:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 N,N,N’,N’−テトラキス[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=ヒドロキシ(−OH)、1.84g]、構成要素 3,3’−(4,4’−(ビフェニル−4−イルアザンジイル)ビス(4,1−フェニレン))ジプロパン−1−オール[セグメント=3,3’−(4,4’−(ビフェニル−4−イルアザンジイル)ビス(4,1−フェニレン))ジプロピル、Fg=ヒドロキシ(−OH)、2.41g]、触媒 p−トルエンスルホン酸(10質量%ダワノール溶液、460mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(16.9g、50ppmのDC510を含む)。混合物を、ローリングウェーブローター上で5分間混合後、均一溶液となるまで70℃で30分間加熱した。混合物をローター上に置き、室温まで冷ました。溶液を1μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)製品を被覆した(production-coated)ウェブ型光受容体に、ヒラノウェブコーターで反応混合物を塗布した。シリンジポンプ速度:4.5ml/分。(作業C)ウェット層を載せた光受容体を、130℃に予熱した強制換気オーブンに1.5m/分の速度で2分間通した。これらの作業により、2.1μmの厚さを持つSOFオーバーコート層が光受容体上にできた。
【0276】
[実施例52:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 N,N,N’,N’−テトラキス[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=ヒドロキシ(−OH)、5.0g]、構成要素 ベンゼンジメタノール[セグメント=p−キシリル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、2.32g]、触媒 p−トルエンスルホン酸(10質量%ダワノール溶液、720mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(22.5g、50ppmのDC510を含む)。混合物をローリングウェーブローター上で5分間混合後、均一溶液となるまで40℃で5分間加熱した。混合物をローター上に置き、室温まで冷ました。溶液を1μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)製品を被覆した、製品ウェブ型光受容体に、ヒラノウェブコーターで反応混合物を塗布した。シリンジポンプ速度:5ml/分。(作業C)ウェット層を載せた光受容体を、130℃に予熱した強制換気オーブンに1.5m/分の速度で2分間通した。これらの作業により、2.2μmの厚さを持つSOFオーバーコート層が光受容体上にできた。
【0277】
[実施例53:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 N,N,N’,N’−テトラキス[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=ヒドロキシ(−OH)、5.0g]、構成要素 ベンゼンジメタノール[セグメント=p−キシリル、Fg=ヒドロキシル(−OH)、2.32g]、触媒 p−トルエンスルホン酸(10質量%ダワノール溶液、720mg)、1−メトキシ−2−プロパノール(22.5g、50ppmのDC510を含む)。混合物をローリングウェーブローター上で5分間混合後、均一溶液となるまで40℃で5分間加熱した。混合物をローター上に置き、室温まで冷ました。溶液を1μmのPTFEメンブランで濾過した。(作業B)製品を被覆した、製品ウェブ型光受容体に、ヒラノウェブコーターで反応混合物を塗布した。シリンジポンプ速度:10ml/分。(作業C)ウェット層を載せた光受容体を、130℃に予熱した強制換気オーブンに1.5m/分の速度で2分間通した。これらの作業により、4.3μmの厚さを持つSOFオーバーコート層が光受容体上にできた。
【0278】
[実施例54]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 4,4’,4”−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメタノール[セグメント=4,4’,4”−ニトリロトリス(ベンゼン−4,1−ジイル)トリメチル、Fg=アルコール(−OH)、1.48g、4.4mmol]、水(0.5g)、1,4−ジオキサン(7.8g)。均一溶液となるまで混合物を震盪して60℃に加熱した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1,4−ジオキサン溶液、0.15gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)15ミル(約0.38mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、金属化(TiZr)MYLAR(商標)基材の反射側に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた金属化MYLAR(商標)基材を、130℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱した。これらの作業により、単一の自立型薄膜として基材から剥離できる、約4〜10μmの範囲の厚さを持つSOFができた。SOFの色は緑色であった。2次元X線散乱データを図15に示す。図15から分かるように、2θは約17.8、dは約4.97オングストロームで、これはSOFが周期約0.5nmの分子秩序を持っていることを示している。
【0279】
[実施例55:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 4−ヒドロキシベンジルアルコール[セグメント=トルエン、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.0272g、0.22mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、0.0728g、0.11mmol]、1−メトキシ−2−プロパノール(0.88g)、silcleanの10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液(0.01g)。均一な溶液が得られるまで混合物を震盪して55℃に加熱する。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過する。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液、0.01gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得る。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、アルミニウム基材に反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せたアルミニウム基材を、140℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0280】
[実施例56:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合することができる。構成要素 4−(ヒドロキシメチル)安息香酸[セグメント=4−メチルベンズアルデヒド、Fg=ヒドロキシル(−OH)、0.0314g、0.206mmol]、第2構成要素 N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン、Fg=メトキシエーテル(−OCH)、0.0686g、0.103mmol]、1−メトキシ−2−プロパノール(0.88g)、silcleanの10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液(0.01g)。均一な溶液が得られるまで混合物を震盪して55℃に加熱する。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過する。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の10質量%1−メトキシ−2−プロパノール溶液、0.01gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得る。(作業B)5ミル(約0.13mm)のギャップを持つバードバーを取り付けた等速ドローダウンコーターを用いて、アルミニウム基材に反応混合物を塗布する。(作業C)ウェット層を載せたアルミニウム基材を、140℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して40分間加熱する。
【0281】
[実施例57:タイプ2 SOF]
(作業A)以下のものを混合した。構成要素 1,4−ジアミノベンゼン[セグメント=ベンゼン、Fg=アミン(−NH)、0.14g、1.3mmol]、第2構成要素 1,3,5−トリホルミルベンゼン[セグメント=ベンゼン、Fg=アルデヒド(−CHO)、0.144g、0.89mmol]、NMP(2.8g)。均一溶液となるまで混合物を震盪した。室温まで冷まし、溶液を0.45μmのPTFEメンブランで濾過した。濾過した溶液に酸触媒(p−トルエンスルホン酸の2.5質量%NMP溶液、0.02gとして)を加えて、液体を含む反応混合物を得た。(作業B)可変速スピンコーターの回転ユニットに貼付した石英板を、1000RPMで30秒間回転させて、これに反応混合物を塗布した。(作業C)ウェット層を載せた石英板を、180℃に予熱した強制換気オーブンに素早く移して120分間加熱した。これらの作業により、水に浸すと基材から剥離可能な、400nmの厚さを持つ黄色薄膜ができる。
【0282】
上記およびその他の特徴および機能、またはその代わりとなるもののいくつかを、多くの様々な別の系または用途に好ましいように組み合わせられることは明らかであろう。現時点で予見または予期しない、様々なその代替物、修正物、変更物、または改良物が、後に当業者によって作製されると考えられるが、これらも以下の請求項に含まれるものとする。請求項に具体的に挙げられていない限り、請求項の工程および成分は、全ての特定の順序、数、位置、大きさ、形状、角度、色、または材料に関して、明細書や他の請求項のものを示し、または、意味しているとすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有結合性有機骨格(COF)として配列した、複数のセグメントと複数の連結基とを含む構造化有機薄膜(SOF)であって、前記SOFは、実質的に欠陥のない薄膜であることを特徴とするSOF。
【請求項2】
複数の前記セグメントは同一の構造を持つセグメントを含み、複数の前記連結基は同一の構造を持つ連結基を含み、前記SOFの縁にない前記セグメントは、連結基によって少なくとも3つの他のセグメントに結合していることを特徴とする、請求項1に記載のSOF。
【請求項3】
複数の前記セグメントは、構造の異なる、少なくとも第1セグメントと第2セグメントとを含み、前記第1セグメントは、前記SOFの縁にない場合、連結基によって少なくとも3つの他のセグメントに結合していることを特徴とする、請求項1に記載のSOF。
【請求項4】
複数の前記連結基は、構造の異なる、少なくとも第1連結基と第2連結基とを含み、
複数の前記セグメントは、
構造の異なる、少なくとも第1セグメントと第2セグメントとを含み、前記第1セグメントは、前記SOFの縁にない場合、少なくとも3つの他のセグメントに結合しており、前記結合の少なくとも1つは第1の連結基を経由し、前記結合の少なくとも1つは第2の連結基を経由している、
あるいは、
同一の構造を持つセグメントを含み、前記SOFの縁にない前記セグメントは、連結基によって少なくとも3つの他のセグメントに結合しており、前記結合の少なくとも1つは第1の連結基を経由し、前記結合の少なくとも1つは第2の連結基を経由している、
のいずれかである、
ことを特徴とする、請求項1に記載のSOF。
【請求項5】
前記セグメントは、炭素、窒素、ケイ素、またはリン原子のコア、アルコキシコア、アリールコア、カルボナートコア、炭素環コア、二環式炭素環コア、三環式炭素環コア、およびオリゴチオフェンコアから成る群より選ばれるコアを含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のSOF。
【請求項6】
前記連結基は、単原子連結基、共有単結合連結基、共有二重結合連結基、エステル連結基、ケトン連結基、アミド連結基、アミン連結基、イミン連結基、エーテル連結基、ウレタン連結基、およびカルボナート連結基から成る群より選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のSOF。
【請求項7】
前記SOFは、炭素ではない元素の少なくとも1つの原子を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のSOF。
【請求項8】
炭素ではない元素の少なくとも1つの前記原子は、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素、および硫黄から成る群より選ばれることを特徴とする、請求項7に記載のSOF。
【請求項9】
前記SOFは、1cm当たりに含まれる、直径約250nmを超えるピンホール、細孔、またはギャップが10個未満であることを特徴とする、請求項1に記載のSOF。
【請求項10】
前記SOFは、欠陥のないSOFであることを特徴とする、請求項1に記載のSOF。
【請求項11】
前記SOFは周期的であることを特徴とする、請求項1に記載のSOF。
【請求項12】
構造化有機薄膜(SOF)の製造法であって、
前記製造法は、
(a)それぞれが1つのセグメントといくつかの官能基とを含む、複数の分子構成要素を含んでいる、液体を含む反応混合物を調製する工程と、
(b)前記反応混合物をウェットフィルムとして堆積する工程と、
(c)前記ウェットフィルムの変化を促進し、乾燥SOFを生成する工程と、
を含むことを特徴とする、SOFの製造法。
【請求項13】
前記官能基の反応を促進する工程を更に含み、前記官能基の反応の結果として副生物が生成しないことを特徴とする、請求項12に記載の製造法。
【請求項14】
前記乾燥SOFは、前記ウェットフィルムに、オーブン乾燥または赤外線(IR)乾燥、あるいは、オーブン乾燥およびIR乾燥を行った後に生成することを特徴とする、請求項12に記載の製造法。
【請求項15】
前記反応混合物は、ウェットフィルムとして基材上に堆積することを特徴とする、請求項12に記載の製造法。
【請求項16】
前記乾燥SOFを前記基材から外し、自立型SOFを得る工程を更に含むことを特徴とする、請求項15に記載の製造法。
【請求項17】
前記基材は、SOF基材であることを特徴とする、請求項15に記載の製造法。
【請求項18】
前記乾燥SOFを、共有結合またはイオン結合のいずれかによって前記SOF基材に化学的に付着させる工程を更に含むことを特徴とする、請求項17に記載の製造法。
【請求項19】
前記官能基の反応を促進する工程を更に含み、前記官能基の反応の結果として揮発性副生物が生成することを特徴とする、請求項12に記載の製造法。
【請求項20】
構造化有機薄膜(SOF)の製造法であって、
前記製造法は、
(a)それぞれが1つのセグメントといくつかの官能基とを含む、複数の分子構成要素を含んでいる、液体を含む反応混合物を調製する工程と、
(b)前記反応混合物をウェットフィルムとして基材上に堆積する工程と、
(c)前記ウェットフィルムの変化を促進し、乾燥SOFを生成する工程と、
(d)前記乾燥SOFを前記基材から外し、単一の自立型SOFを得る工程と、
を含むことを特徴とする、SOFの製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−519757(P2012−519757A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553083(P2011−553083)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/026079
【国際公開番号】WO2010/102025
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】