説明

構造材の健全性評価方法およびプログラム

【課題】構造材の硬度を測定して塑性変形量を算出することで構造材の健全性を非破壊で迅速に評価するに当たり、より正確に塑性変形量を算出することのできる健全性評価方法を提供する。
【解決手段】本発明は、構造材の塑性変形量を算出することで該構造材の健全性を評価する健全性評価方法であって、評価対象である前記構造材について硬度値HVobs(n)を測定する第1の工程と、前記構造材が前記測定時までに受けた熱時効による硬度の変化量ΔHVagingを求める第2の工程と、前記硬度値HVobs(n)から、前記変化量ΔHVagingを差し引いて、熱時効の影響を排除した硬度値HVcal(n)を算出する第3の工程と、熱時効を受けていない前記構造材について、予め求めた塑性変形量と硬度との関係を示す第1の情報に対して、前記硬度値HVcalを当てはめて前記構造材の塑性変形量εを算出する第4の工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造材の健全性評価方法および該方法を実現するためのプログラムに関し、特に原子力発電所の構造材など、地震を受けた後に安全性を確認する必要性の高い構造材に対して好適に用いることができる健全性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大きな地震が発生した後、原子力発電所の原子炉構造材の健全性を適切かつ迅速に確認することができず、原子力発電所が稼動停止してしまい、その後安全性が確認されて稼動が再開するまで多くの時間を要することが多々あることは、周知の通りである。そのため、原子力発電所の構造材について、その健全性を迅速に、かつ、確実に評価する手法が求められている。
【0003】
原子力発電所の主たる構造材である金属材料は、地震などで該材料が塑性変形すると、強度や硬度等の物性値が変化(時に劣化)することが知られている。よって、金属材料からなる構造材の健全性は、該構造材の塑性変形量を求めることにより評価することができると考えられる。また、金属材料は、硬度と強度に強い相関があることが知られている。これらのことから、地震被災後に金属材料の硬度を測定することによって、金属材料が受けた塑性変形量を求め、震災後の金属材料の健全性を簡便に評価する手法が検討され始めている(非特許文献1参照)。
【0004】
非特許文献1では、SUS304とSS400を試供材とし、ビッカース硬度計および超音波振動式ポータブル硬度計を用いて、それぞれ塑性変形量と硬度との関係を求めている。その結果、塑性変形量が1%程度という微小な塑性変形量でも、硬度の上昇が見られ、これらの試供材について、硬度と塑性変形量の相関が確認された。
【0005】
よって、震災後にこれらの金属材料の硬度を測定することで、地震によって金属材料にごく微小な塑性変形が生じたとしても、それを検知することができるものと期待される。このように、ごく微小な塑性変形を簡潔な手法で求めることができれば、この客観的かつ高精度のデータを根拠に、原子力発電所の安全性を外部にアピールし、早期に稼動を再開することができることも期待される。
【0006】
なお、特許文献1には、硬さを測定して機器の破壊評価を行う構造材料健全性評価方法が開示されている。この文献は、構造材料に割れ、亀裂等の欠陥が存在する場合の構造健全性を評価するための評価方法を開示するものである。この方法は、硬さと硬さ以外の材料特性値との相関を求めマスターカーブ化しておき、構造材料の評価対象部位で測定した硬さをマスターカーブに当てはめて、前記材料の特性値を算出し、破壊評価を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−65921号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本原子力学会2009年秋の大会要旨集「G23 原子炉構造材の非破壊的健全性評価手法の検討(その1)−ポータブル硬度計による微小塑性変形量の評価−」,(株)原子力安全システム研究所 戸塚信夫、JFEテクノリサーチ(株) 松崎明博
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、本発明者らの検討によると、以下のような問題があることが分かった。
上記非特許文献1では、SUS304とSS400について、塑性変形量と硬度との関係を示したにすぎない。そこで、これらの金属材料の試料を複数用意し、それぞれに異なった大きさの塑性歪みを引張試験により付与して硬度を測定し、予め塑性変形量と硬度との関係を求めておいた。そして、試験材料が地震を受けたことを想定して、実際に所定時間経過後に試験材料に所定の塑性歪みを与えて硬度を測定してみたところ、予め求めた塑性変形量と硬度との関係にずれが生じる場合があることが判明した。すなわち、種々の所定時間経過後に測定した硬度を、予め求めた上記関係に当てはめても正確な塑性変形量を算出できない場合があることを見出した。
【0010】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、構造材の硬度を測定して塑性変形量を算出することで構造材の健全性を非破壊で迅速に評価するに当たり、より正確に塑性変形量を算出することのできる健全性評価方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この健全性評価方法を実現するためのプログラムを提供することを目的とする。
【0011】
なお、特許文献1は、上記の通り、割れ、亀裂等の欠陥が存在する場合の構造健全性を評価するための評価方法を開示するものであり、微小な塑性変形量までも検知できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記のようなずれが生じる理由を検討した。本発明者らは、塑性変形量と硬度との関係を求める際には、作製した直後の試験材料を用いて行っている一方で、実際の評価を行うのは、該材料が構造材として所定時間使用された後である点に着目した。構造材は、熱時効を受けると材料劣化をきたすことが知られている。非クリープ温度域、すなわち350℃以下で使用された場合でも、大きな組織変化はないものの、熱時効により転位組織の変化や微視的な領域での偏析、析出現象などにより、硬度に影響を及ぼす可能性がある。よって、熱時効による硬度変化を考慮することなく、評価時に測定した硬度を単純に非特許文献1で求めた関係に当てはめたとしても、正確な塑性変形量を求めることができず、的確な構造物強度の評価ができないおそれがあることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
なお、このことは、原子力発電所の構造材に限らず、健全性評価の対象となる構造材一般についても妥当する。
【0014】
すなわち、上記課題に鑑み、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)構造材の塑性変形量を算出することで該構造材の健全性を評価する健全性評価方法であって、
評価対象である前記構造材について硬度値HVobs(n)を測定する第1の工程と、
前記構造材が前記測定時までに受けた熱時効による硬度の変化量ΔHVagingを求める第2の工程と、
前記硬度値HVobs(n)から、前記変化量ΔHVagingを差し引いて、熱時効の影響を排除した硬度値HVcal(n)を算出する第3の工程と、
熱時効を受けていない前記構造材について、予め求めた塑性変形量と硬度との関係を示す第1の情報に対して、前記硬度値HVcal(n)を当てはめて前記構造材の塑性変形量εを算出する第4の工程と、
を有することを特徴とする構造材の健全性評価方法。
【0015】
(2)前記第2の工程は、
前記構造材が受ける所定の熱時効温度Tについて、予め求めた時効時間と前記構造体の硬度との関係を示す第2の情報に基づいて、前記硬度の変化量ΔHVagingを求める、上記(1)に記載の構造材の健全性評価方法。
【0016】
(3)前記第1〜第4の工程からなる構造材の健全性評価を、
所定の時間間隔で行う定期評価と、
所定規模以上の地震が発生した場合には次回の定期評価を待たずに行う臨時評価と、
に分けて行う上記(1)または(2)に記載の構造材の健全性評価方法。
【0017】
(4)前記第1〜第4の工程による2回目以降の健全性評価において、
下記の式を用いて、前記第2及び第3の工程をまとめて行い、硬度値HVcal(n)を算出する上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の構造材の健全性評価方法。

HVcal(n)=HVobs(n)−ΔHVaging
=HVobs(n)−(HVobs(n−1)−HVcal(n−1)+ΔHVpaging
(ただし、HVobs(n−1):前回評価時に第1の工程で測定した硬度値、HVcal(n−1):前回評価時に第3の工程で算出した硬度値、ΔHVpaging:前記構造材が前回評価時から今回の評価時までに受けた熱時効による硬度の変化量である。)
【0018】
(5)算出した前記塑性変形量εが所定許容値εa以下の場合、前記構造材は健全であると判定し、所定許容値εaを超えた場合、前記構造材は不健全であると判定する第5工程を有する上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の構造材の健全性評価方法。
【0019】
(6)前記構造材は、原子力発電所の構造材である上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の構造材の健全性評価方法。
【0020】
(7)前記構造材は、オーステナイト系ステンレス鋼または構造用圧延鋼材である上記(6)に記載の構造材の健全性評価方法。
【0021】
コンピュータに、上記(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の構造材の健全性評価方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、構造材の硬度を測定して塑性変形量を算出することで構造材の健全性を非破壊で迅速に評価するに当たり、硬度の測定時までに受けた熱時効による硬度変化を求めて、実測値から差し引くことにより、熱時効による硬度変化の影響を排除することができる。そのため、より正確に塑性変形量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に従う構造材の健全性評価方法の一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明における第1の情報の一例として、SUS304鋼について、塑性変形量と硬度との関係を示したグラフである。
【図3】本発明における第2の情報の一例として、初期の塑性変形量が0%であるSUS304鋼について、温度250℃で熱時効処理を行い、時効時間と硬度との関係を示したグラフである。
【図4】本発明における第2の情報の一例として、初期の塑性変形量が3%であるSUS304鋼について、温度250℃で熱時効処理を行い、時効時間と硬度との関係を示したグラフである。
【図5】初期の塑性変形量が0%,3%,10%であるSUS304鋼について、種々の時効温度で360時間熱時効処理したあとの硬度を示した図である。
【図6】本発明に従う構造材の健全性評価方法の別の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に従う構造材の健全性評価方法の別の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に従う構造材の健全性評価方法を行うシステムの一例を示すブロック図である。
【図9】本発明における第1の情報の別の一例として、SUS316鋼について、塑性変形量と硬度との関係を示したグラフである。
【図10】本発明における第2の情報の別の一例として、初期の塑性変形量が0%,3%であるSUS316鋼について、温度250℃で熱時効処理を行い、時効時間と硬度との関係を示したグラフである。
【図11】初期の塑性変形量が0%,3%,10%であるSUS316鋼について、種々の時効温度で360時間熱時効処理したあとの硬度を示した図である。
【図12】本発明における第1の情報の別の一例として、SS400鋼について、塑性変形量と硬度との関係を示したグラフである。
【図13】本発明における第2の情報の別の一例として、初期の塑性変形量が0%,3%であるSS400鋼について、温度250℃で熱時効処理を行い、時効時間と硬度との関係を示したグラフである。
【図14】初期の塑性変形量が0%,3%,10%であるSS400鋼について、種々の時効温度で360時間熱時効処理したあとの硬度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1:SUS304鋼)
以下、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。本発明は、構造材の塑性変形量を算出することで、この構造材の健全性を評価する健全性評価方法である。図1は、本発明に従う構造材の健全性評価方法の一例を示すフローチャートである。
【0025】
第1の工程(S1)
第1の工程では、評価対象である構造材について硬度値HVobs(n)を測定する。これが、評価時の構造材の実測硬度値である。
【0026】
第2の工程(S2)
第2の工程では、構造材が測定時までに受けた熱時効による硬度の変化量ΔHVagingを求める。詳細は後述する。
【0027】
第3の工程(S3)
第3の工程では、硬度値HVobs(n)から、変化量ΔHVagingを差し引いて、熱時効の影響を排除した硬度値HVcal(n)を算出する。
HVcal(n)=HVobs(n)−ΔHVaging
構造材は、塑性変形を受けると硬度が高くなる一方で、熱時効を受けることによっても硬度が変化する。そこで、実測の硬度値から、熱時効による硬度の変化量ΔHVagingを差し引くことにより、熱時効の影響を排除した硬度値を算出することができる。
【0028】
第4の工程(S4)
第4の工程では、熱時効を受けていない構造材について、予め求めた塑性変形量と硬度との関係を示す第1の情報に対して、硬度値HVcal(n)を当てはめて構造材の塑性変形量εを算出する。第1の情報は、熱時効を受けていない構造材についての情報であるため、これに熱時効の寄与が含まれる実測の硬度値HVobsを当てはめてしまうと、評価時の構造材に生じている真の塑性変形量を正確に算出することができない。一方、熱時効の影響を排除した硬度値HVcalを当てはめれば、正確な塑性変形量を算出することができる。詳細は後述する。
【0029】
以下、原子力発電所の構造材として典型的なSUS304鋼を例にして、本発明を具体的に説明する。
【0030】
第1の情報
図2は、第1の情報の一例として、SUS304鋼について、塑性変形量と硬度との関係を示したグラフである。このグラフは以下の手順で得た。
【0031】
試験片の作製
SUS304鋼の供試材を高周波誘導加熱により溶解し、板厚12mmに熱間圧延(1200℃,3時間)後、1050℃で1時間溶体化熱処理を行い、その後水冷した。こうして得た鋼板試料から引張り試験片を加工し(JIS Z2281金属材料引張り試験片5号試験片)、室温にて引張り試験によりそれぞれ0.8,1.5,3.0,6.0,10,20%の引張り変形させることにより塑性歪みを付与し、その後徐荷して評価試験片とした。引張り試験を行わず、塑性歪みを付与しないものも評価試験片とした。なお、供試材の化学組成は、以下の通りである。
C:0.040%,Si:0.49%,Mn:1.01%,P:0.029%,S:0.006%,Al:0.008%,Ni:8.80%,Cr:18.59%,N:0.0237%,O:0.0030%(全て質量%)
【0032】
硬度の測定
それぞれの評価試験片について、ビッカース硬度計を用いて5回硬度を測定した。図2は、各塑性変形量における5回の測定結果の平均値をプロットし、実線で結んだもの(マスターカーブ)である。
【0033】
図2より、塑性変形量の増加に伴い、硬度も高くなり、特に10%以下の歪み域においても、塑性変形量と硬度とに相関が認められる。このマスターカーブは、熱時効を受けていないSUS304鋼について、塑性変形量と硬度との関係を示すものであるので、第1の情報とすることができる。なお、第1の情報は、上記のマスターカーブを示す関係式に限定されることはなく、例えば図1に対応するデータをテーブルとして記録しておき、このデータテーブルを第1の情報としてもよい。
【0034】
なお、SUS304鋼について、上記試験片よりもC量およびN量が多い化学組成の試料と、少ない化学組成の試料について、同様の試験を行った。塑性変形量の増加に伴い、硬度も高くなる傾向は同様であったが、硬度の絶対値には多少の変化があった。このように、塑性変形を与えたときの硬度値は、金属材料の化学組成に依存する。よって、本発明の構造材評価においては、事前にその鋼種および化学組成を把握し、第1の情報を準備することが好ましい。
【0035】
第2の情報
次に、第2の工程で、硬度の変化量ΔHVagingを求める手法の具体例を示す。ここでは、構造材が受ける所定の熱時効温度Tについて、予め求めた時効時間と前記構造体の硬度との関係を示す第2の情報に基づいて、前記硬度の変化量ΔHVagingを求めることができる。図3は、第2の情報の一例として、初期の塑性変形量が0%であるSUS304鋼について、温度250℃で熱時効処理を行い、時効時間と硬度との関係を示したグラフである。このグラフは以下の手順で得た。
【0036】
評価試験片の作製方法は、前記と同様である。引張り試験は行わず、250℃で360時間,3600時間それぞれ熱時効処理を行い、ビッカース硬度計を用いて硬度を測定した。熱時効処理を行わない初期の硬度も測定した。図3は、これらの測定結果をプロットし、これを実線(マスターカーブ)で結んだものである。図3より、SUS304鋼は塑性変形していない状態では、360時間の熱時効によって多少硬度が下がることがわかった。このマスターカーブを第2の情報とすることができる。また、このマスターカーブに基づいて、時効時間と硬度のデータテーブルを用意しておき、これを第2の情報としてもよいことは、第1の情報の場合と同様である。
【0037】
次に、初期の塑性変形量が3%であるSUS304鋼について、同様に熱時効処理を行った。評価試験片の作製方法は、前記のとおりである。3%の塑性歪みの付与後、250℃で360時間,3600時間それぞれ熱時効処理を行い、ビッカース硬度計を用いて硬度を測定した。熱時効処理を行わない初期の硬度も測定した。結果を図4に示す。図4より、SUS304鋼は、3%の塑性変形をしている状態では、熱時効の時間の増加により、硬度が上昇することがわかった。このように、熱時効による硬度変化は、構造材の初期の塑性変形量に依存する。よって、種々の塑性変形量の場合について、時効時間と硬度との関係を予め求め、第2の情報としておくことが好ましい。
【0038】
さらに、初期の塑性変形量が0%,3%,10%であるSUS304鋼に対して、250℃のみならず、種々の所定温度Tで360時間熱時効処理を行ったあとの硬度を測定し、結果を図5に示した。図5より、SUS304鋼は、同じ初期の塑性変形量であれば、時効温度Tによって大きく硬度が変わることはないものの、多少の変化はあることがわかった。このように、熱時効による硬度変化は、時効温度にも依存する。よって、種々の時効温度の場合について、時効時間と硬度との関係を予め求め、第2の情報としておくことが好ましい。
【0039】
本発明の健全性評価方法を好ましく適用できる構造材は、原子力発電所の構造物の中で、非クリープ温度域、すなわち350℃以下で使用される鋼材である。より具体的には、二次系統を構成する鋼材や発電所の建屋などである。そのため、第2の情報としては、350℃以下の温度Tに対して、時効時間と硬度との関係を予め求め、第2の情報としておくことが好ましい。
【0040】
健全性評価例1(1回目の評価)
塑性変形量0%のSUS304鋼が熱時効を受けていない場合の硬度は、図2より150HVである。構造材の初期状態(原子力発電所の稼働開始時)は、この状態である。SUS304鋼は、250℃の一定温度で使用される構造材である場合、例えば、地震が起きない場合を想定し、360時間後に評価を行うとすると、次のような手順となる。
(1)評価対象の構造材(SUS304鋼)の硬度値HVobs(n)を測定すると、140.0HVとなると仮定する。
(2)稼働開始から360時間の間に地震がない場合、構造材はほとんど塑性変形しないため、第2の情報として図3のマスターカーブを選択する。この場合、構造材が360時間で受けた熱時効による硬度の変化量ΔHVagingは、図3を参照すると、140.0−150.0=−10.0HVとなる。
(3)熱時効の影響を排除した硬度値HVcal(n)は、140.0−(−10.0)=150.0HVとなる。
(4)そして、第1の情報として選択した図2のマスターカーブに対して、硬度値HVcal(n)=150.0HVを当てはめると、塑性変形量ε=0%と算出することができる。
【0041】
健全性評価例2(1回目の評価)
次に、評価例1と同様に、SUS304鋼が、250℃の一定温度で使用される構造材である場合、例えば、稼働開始から360時間経過直前に地震があり、その直後(360時間後)に、地震よって生じた未知の塑性変形量εを求めるには、次のような手順をとる。
(1)評価対象の構造材(SUS304鋼)の硬度値HVobs(n)を測定すると、160.0HVとなると仮定する。
(2)稼働開始から360時間の間には地震がない場合、地震発生時までの構造材の塑性変形量は稼働開始時の0%のままであるため、第2の情報として図3のマスターカーブを選択する。この場合、構造材が360時間で受けた熱時効による硬度の変化量ΔHVagingは、図3を参照すると、140.0−150.0=−10.0HVとなる。
(3)熱時効の影響を排除した硬度値HVcal(n)は、160.0−(−10.0)=170.0HVとなる。
(4)そして、第1の情報として選択した図2のマスターカーブに対して、硬度値HVcal(n)=170.0HVを当てはめると、塑性変形量ε=3%と算出することができる。
【0042】
このようにして本発明の健全性評価方法によれば、熱時効による硬度変化の影響を排除して、より正確にSUS304鋼の塑性変形量を算出することができることがわかった。しかも、10%以下の塑性変形量を定量可能であるため、地震発生時に厳しい安全性の確認が求められる原子力発電所の構造材に対して、本発明を好適に用いることができる。
【0043】
(評価タイミング)
図6は、本発明に従う構造材の健全性評価方法の別の一例を示すフローチャートであり、図1で説明した1回の健全性評価を行うタイミングを示すものである。本発明の健全性評価は、所定の時間間隔で行う定期評価と、所定規模以上の地震が発生した場合には次回の定期評価を待たずに行う臨時評価と、に分けて行うことが好ましい。この臨時評価を行うことにより、地震により構造材の健全性が許容範囲を超えて悪化していないか、迅速に確認することができる。また、定期評価を行うことにより、所定規模以上の地震が発生したときにのみ測定を行う場合よりも測定の間隔を短くし、本発明による評価の精度を高めることができる。
【0044】
(2回目以降の健全性評価)
健全性評価例1,2では1回目の健全性評価について説明した。ここで、2回目以降の健全性評価について、好ましい実施方法を説明する。2回目以降の評価は、下記の式を用いて、第2の工程(S1)及び第3の工程(S3)をまとめて行い、硬度値HVcal(n)を算出することが好ましい。

HVcal(n)=HVobs(n)−ΔHVaging
=HVobs(n)−(HVobs(n−1)−HVcal(n−1)+ΔHVpaging
(ただし、HVobs(n−1):前回評価時に第1の工程で測定した硬度値、HVcal(n−1):前回評価時に第3の工程で算出した硬度値、ΔHVpaging:前記構造材が前回評価時から今回の評価時までに受けた熱時効による硬度の変化量である。)
【0045】
この場合、ΔHVaging=HVobs(n−1)−HVcal(n−1)+ΔHVpagingであり、HVobs(n−1)およびHVcal(n−1)は、前回の評価時に測定ないし算出済みの値である。よって、ΔHVpagingを第2の情報に基づいて求めることができればよい。
【0046】
具体例を説明する。1回目の評価が健全性評価例2であった場合、その後さらに時間が経過し、稼動開始から3600時間後に2回目の評価(定期評価)を行うものと仮定すると、次のような手順となる。
(1)評価対象の構造材(SUS304鋼)の硬度値HVobsを測定すると、163.5HVとなる場合を仮定する。
(2)前回評価時(稼動開始から360時間経過後)から今回の評価時までに受けた熱時効による硬度の変化量ΔHVpagingを以下のように求める。SUS304鋼は、前回評価時以降は塑性変形量3%の状態で250℃の熱時効を受けているため、第2の情報として図4のマスターカーブを選択する。ここで本ケースでは、360時間経過の直前に地震により3%の塑性歪みを受けているため、塑性変形量ε=3%の状態での経過時間は3600−360=3240時間となる。そこで、図4で時効時間0時間から3240時間の硬さ変化が熱時効による硬度の変化量ΔHVpagingとなる。
本実施例では、時効時間3240時間での硬度値は、図4で360時間から3600時間の硬さ変化を直線補間して求めることができ、
173.0+(173.6−173.0)×(3240−360)/(3600−360)=173.5となる。
また、時効時間0時間の硬度値は、図4より170.0である。
よって、ΔHVpaging=173.5−170.0=3.5HVとなる。
(3)熱時効の影響を排除した硬度値HVcal(n)は、
HVcal=163.5−(160.0−170.0+3.5)=170.0
となる。
(4)そして、第1の情報として選択した図2のマスターカーブに対して、硬度値HVcal(n)=170.0HVを当てはめると、塑性変形量ε=3%と算出され、地震発生後は塑性変形量が変化していないことがわかる。
【0047】
ここで、2回目以降の評価での特徴は、前回評価時に算出した塑性変形量εに対応した第2の情報を選択して、熱時効による硬度変化分を求めることである。上記の例では、1回目の評価では図3のマスターカーブを第2の情報としていたのに対し、2回目の評価では図4のマスターカーブを第2の情報としている。
【0048】
(健全性の判定)
図7は、本発明に従う構造材の健全性評価方法の別の一例を示すフローチャートであり、算出した塑性変形量εに基づいて、健全性に関する判定を行う場合を示している。この方法では、すでに説明した第1〜4工程のあと、算出した塑性変形量εが所定許容値εa以下の場合、構造材は健全であると判定し、所定許容値εaを超えた場合、構造材は不健全であると判定する第5工程(S5)を行う。所定許容値εaは、構造材ごとに異なり、耐震設計基準から規定することが好ましい。この方法によれば、不健全と判定された場合には、補修工事など何らかの対処を検討することができる。
【0049】
(評価システム)
図8は、本発明の健全性評価方法をシステムで行う場合の、該システムのブロック図を示している。101は構造材の硬度を測定する第1の工程を行うための硬度測定器、102は上記で説明した種々の演算を主に行う演算部、103は第1および第2の情報を格納したメモリ、104は評価タイミングを決定するために稼動開始からの時刻を計時するタイマ、105は熱時効温度を決定するために構造材の温度を測定する温度計、106は測定対象の構造体に関する情報(例えば鋼種、化学組成等)を演算部に入力する入力部、107は各種算出結果等を出力する任意の表示手段等の出力部である。
【0050】
評価時には、適切な第1および第2の情報を選択して、εを算出する必要がある。演算部102は、入力部101からの情報に基づいて、測定対象の構造体に対応する第1の情報をメモリから読み出す。勿論、初めから測定対象が定まっている場合には、このような手順は不要である。また、演算部102は、温度計105からの出力である熱時効温度Tに基づいて、これに対応する第2の情報をメモリから読み出す。その際、2回目以降の評価であれば、前回評価時の塑性変形量εをメモリ103から読み出し、この塑性変形量に対応した第2の情報を読み出す。演算部102は、読み出した第2の情報に対して、タイマ104からの出力を当てはめて、熱時効による硬度の変化量ΔHVagingを求める第2の工程を行い、さらに第3の工程の演算も行う。最後に、演算部102は、読み出した第1の情報に対して、硬度測定器101からの出力を当てはめて、構造材の塑性変形量εを算出する。
【0051】
(硬度計)
本発明において、硬度測定器101はビッカース硬度計による測定値と対応の取れる任意のポータブル硬度計を用いることができ、超音波方式ポータブル硬度計、反発式ポータブル硬度計を例示することができる。本発明者らの検討によれば、超音波方式ポータブル硬度計による測定は、個人差やばらつきが大きいが、測定手順の厳密な標準化により本発明の測定に十分に適用できる。一方、反発式ポータブル硬度計は、ばらつきは小さいが、衝撃を吸収しやすいような軽量部材や長尺配管などにはやや不向きである。したがって、本発明の実構造物の硬さ測定に当たっては、ビッカース硬度計による測定値との対応が取れているポータブル硬度計で、適宜最適な硬度計を使い分けることが好ましい。
【0052】
(プログラム)
本発明の目的は、前述した実施形態の工程を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムおよびプログラムコードを記憶した記憶媒体は、本発明を構成することになる。
【0053】
ここでプログラムコードを記憶する記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、CD−ROM、CD−R、DVD、光ディスク、光磁気ディスク、MOなどが考えられる。また、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)やWAN(ワイド・エリア・ネットワーク)などのコンピュータネットワークを、プログラムコードを供給するために用いることができる。
【0054】
(実施形態2:SUS316鋼)
次に、原子力発電所の構造材として典型的であり、SUS304鋼と同様のオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316鋼について、実施形態1と同様に第1の情報および第2の情報を測定した。
【0055】
図9は、第1の情報の一例として、SUS316鋼について、塑性変形量と硬度との関係を示したグラフである。試験片の作製および硬度の測定は、実施形態1と同様にして行った。供試材の化学組成は、以下の通りである。
C:0.036%,Mn:1.46%,P:0.031%,S:0.019%,Al:0.030%,Ni:13.39%,Cr:16.47%,Mo:2.31%,N:0.0243%,O:0.0032%(全て質量%)
【0056】
図9より、SUS304鋼の場合と同様に、塑性変形量の増加に伴い、硬度も高くなり、特に10%以下の歪み域においても、塑性変形量と硬度とに相関が認められる。このマスターカーブは、熱時効を受けていないSUS316鋼について、塑性変形量と硬度との関係を示すものであるので、第1の情報とすることができる。
【0057】
SUS316鋼についても、上記試験片よりもC量およびN量が多い化学組成の試料と、少ない化学組成の試料について、同様の試験を行ったところ、実施形態1の場合と同様の結果となった。
【0058】
図10は、第2の情報の一例として、初期の塑性変形量が0%,3%であるSUS316鋼について、温度250℃で熱時効処理を行い、時効時間と硬度との関係を示したグラフである。このグラフは、実施形態1の図3,4と同様の測定で得た。このマスターカーブを第2の情報とすることができる。また、このマスターカーブに基づいて、時効時間と硬度のデータテーブルを用意しておき、これを第2の情報としてもよいことは、実施形態1の場合と同様である。図10より、SUS316鋼は塑性変形していない状態では、360時間の熱時効によって多少硬度が下がることがわかった。また、3%の塑性変形をしている状態でも、熱時効の時間の増加により、硬度が下がることがわかった。このように、熱時効による硬度変化は、SUS316鋼の場合にも、構造材の初期の塑性変形量に依存する。よって、種々の塑性変形量の場合について、時効時間と硬度との関係を予め求め、第2の情報としておくことが好ましい。
【0059】
図11は、初期の塑性変形量が0%,3%,10%であるSUS316鋼について、種々の時効温度で360時間熱時効処理したあとの硬度を示した図である。図11より、SUS316鋼は、図5に示したSUS304鋼の場合と同様に、同じ初期の塑性変形量であれば、時効温度Tによって大きく硬度が変わることはないものの、多少の変化はあることがわかった。このように、熱時効による硬度変化は、SUS316鋼の場合にも、時効温度に依存する。よって、種々の時効温度の場合について、時効時間と硬度との関係を予め求め、第2の情報としておくことが好ましい。
【0060】
これらの測定結果から、SUS316鋼についても本発明の健全性評価方法を適用することができ、熱時効による硬度変化の影響を排除して、より正確にSUS316鋼の塑性変形量を算出することができることがわかった。その他、詳細な実施態様は、実施形態1に示したのと同様である。
【0061】
(実施形態3:SS400鋼)
構造用圧延鋼材(SS,SM,SN,SMA材など)の一種であるSS400鋼について、実施形態1と同様に第1の情報および第2の情報を測定した。
【0062】
図12は、第1の情報の一例として、SS400鋼について、塑性変形量と硬度との関係を示したグラフである。市販のSS400鋼(熱間圧延仕上げ材、新日本製鉄株式会社製、製品名SS400熱間圧延鋼材)に対して、実施形態1と同様に引張り試験加工および塑性歪みの付与を行った。硬度の測定も実施形態1と同様にして行った。
【0063】
図12より、SUS304鋼の場合と同様に、塑性変形量の増加に伴い、硬度も高くなり、特に10%以下の歪み域においても、塑性変形量と硬度とに相関が認められる。このマスターカーブは、熱時効を受けていないSS400鋼について、塑性変形量と硬度との関係を示すものであるので、第1の情報とすることができる。
【0064】
図13は、第2の情報の一例として、初期の塑性変形量が0%,3%であるSS400鋼について、温度250℃で熱時効処理を行い、時効時間と硬度との関係を示したグラフである。このグラフは、実施形態1の図3,4と同様の測定で得た。このマスターカーブを第2の情報とすることができる。また、このマスターカーブに基づいて、時効時間と硬度のデータテーブルを用意しておき、これを第2の情報としてもよいことは、実施形態1の場合と同様である。図14より、SS400鋼は、塑性変形していない状態では、熱時効による硬度の変化はほとんどない一方、3%の塑性変形をしている状態では、熱時効の時間の増加により、硬度が大きく上昇することがわかった。このように、熱時効による硬度変化は、SS400鋼の場合にも、構造材の初期の塑性変形量に依存する。よって、種々の塑性変形量の場合について、時効時間と硬度との関係を予め求め、第2の情報としておくことが好ましい。
【0065】
図14は、初期の塑性変形量が0%,3%,10%であるSS400鋼について、種々の時効温度で360時間熱時効処理したあとの硬度を示した図である。図14より、SS400鋼は、同じ初期の塑性変形量であれば、時効温度Tによって大きく硬度が変わることはないものの、多少の変化はあり、特に400℃以上では、350℃以下よりも軟化することがわかった。このように、熱時効による硬度変化は、SS400鋼の場合にも、時効温度に依存する。よって、種々の時効温度の場合について、時効時間と硬度との関係を予め求め、第2の情報としておくことが好ましい。
【0066】
これらの測定結果から、SS400鋼についても本発明の健全性評価方法を適用することができ、熱時効による硬度変化の影響を排除して、より正確にSS400鋼の塑性変形量を算出することができることがわかった。その他、詳細な実施態様は、実施形態1に示したのと同様である。
【0067】
(その他の実施形態)
これまで原子力発電所の構造材として典型的な3種類の金属材料について、実際に塑性変形量と硬度との関係(第1の情報)および時効時間と硬度との関係(第2の情報)を求め、本発明の健全性評価方法が適用可能であることを説明した。しかし、本発明はこれらの構造材に限られることはない。すでに述べたように、金属材料であれば、塑性変形量と硬度に相関があり、かつ、熱時効を受けて硬度が経時変化する場合がある。そして、第1の情報である塑性変形量と硬度との関係は、金属材料の種類(鋼種)、金属材料の化学組成(例えばC元素、N元素の比率)、金属材料の加工方法などによって、傾向や硬度の絶対値が異なる。また、第2の情報である時効時間と硬度との関係も、これと同様の要素によって異なるし、さらに、金属材料の初期歪みおよび時効温度によっても異なる。そのため、健全性評価の対象となる金属材料の構造材一般についても、同様の手法で予めこれら「第1の情報」および「第2の情報」を求めておけば、本発明の方法で健全性評価が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、構造材の硬度を測定して塑性変形量を算出することで構造材の健全性を非破壊で迅速に評価するに当たり、硬度の測定時までに受けた熱時効による硬度変化を求めて、実測値から差し引くことにより、熱時効による硬度変化の影響を排除することができる。そのため、より正確に塑性変形量を算出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造材の塑性変形量を算出することで該構造材の健全性を評価する健全性評価方法であって、
評価対象である前記構造材について硬度値HVobs(n)を測定する第1の工程と、
前記構造材が前記測定時までに受けた熱時効による硬度の変化量ΔHVagingを求める第2の工程と、
前記硬度値HVobs(n)から、前記変化量ΔHVagingを差し引いて、熱時効の影響を排除した硬度値HVcal(n)を算出する第3の工程と、
熱時効を受けていない前記構造材について、予め求めた塑性変形量と硬度との関係を示す第1の情報に対して、前記硬度値HVcal(n)を当てはめて前記構造材の塑性変形量εを算出する第4の工程と、
を有することを特徴とする構造材の健全性評価方法。
【請求項2】
前記第2の工程は、
前記構造材が受ける所定の熱時効温度Tについて、予め求めた時効時間と前記構造体の硬度との関係を示す第2の情報に基づいて、前記硬度の変化量ΔHVagingを求める、請求項1に記載の構造材の健全性評価方法。
【請求項3】
前記第1〜第4の工程からなる構造材の健全性評価を、
所定の時間間隔で行う定期評価と、
所定規模以上の地震が発生した場合には次回の定期評価を待たずに行う臨時評価と、
に分けて行う請求項1または2に記載の構造材の健全性評価方法。
【請求項4】
前記第1〜第4の工程による2回目以降の健全性評価において、
下記の式を用いて、前記第2及び第3の工程をまとめて行い、硬度値HVcal(n)を算出する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造材の健全性評価方法。

HVcal(n)=HVobs(n)−ΔHVaging
=HVobs(n)−(HVobs(n−1)−HVcal(n−1)+ΔHVpaging
(ただし、HVobs(n−1):前回評価時に第1の工程で測定した硬度値、HVcal(n−1):前回評価時に第3の工程で算出した硬度値、ΔHVpaging:前記構造材が前回評価時から今回の評価時までに受けた熱時効による硬度の変化量である。)
【請求項5】
算出した前記塑性変形量εが所定許容値εa以下の場合、前記構造材は健全であると判定し、所定許容値εaを超えた場合、前記構造材は不健全であると判定する第5工程を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の構造材の健全性評価方法。
【請求項6】
前記構造材は、原子力発電所の構造材である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の構造材の健全性評価方法。
【請求項7】
前記構造材は、オーステナイト系ステンレス鋼または構造用圧延鋼材である請求項6に記載の構造材の健全性評価方法。
【請求項8】
コンピュータに、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の構造材の健全性評価方法の各工程を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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