説明

歯磨剤組成物

【課題】口腔内の細菌に対して高い殺菌効果持続を有することが出来、使用感(刺激の低減)、外観安定性(濁りの軽減)をも向上させる、う蝕予防効果の高い歯磨剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)カチオン化セルロース、(B)カチオン性殺菌剤、および(C)両性界面活性剤を含有する研磨剤無配合の歯磨剤組成物であって、(A)カチオン化セルロース/(B)カチオン性殺菌剤の質量比が0.1〜10である歯磨剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、う蝕予防効果の高い歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕、歯周病の2大口腔疾患の原因は、口腔内の各種細菌によるものであると考えられている。特に、う蝕はストレプトコッカス ミュータンス(S.mutans)等の連鎖球菌、歯周病はポルフィロモナス ジンジバリス(P.gingivalis)等の偏性嫌気性グラム陰性桿菌を主とした細菌による感染症であり、また口臭の原因としてはフゾバクテリウム ヌクレアタム(F.nucleatum)等の口腔内細菌が関与している。従って、口腔内疾患の予防、改善に有効な手段として、口腔内の病原性細菌数を低レベルに保つことが有用であると言われている。
【0003】
口腔内の病原性細菌数を低下させるには、難水溶性殺菌剤やカチオン性殺菌剤、アニオン性殺菌剤を用いることが有効である。特に、カチオン性殺菌剤は殺菌効果が高く、その作用により口腔内の総菌数を減少させ、疾患の原因となる歯垢の形成を抑制することが知られている。
【0004】
ところが、カチオン性殺菌剤は歯磨剤に用いられる発泡剤のラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤とコンプレックスを形成し、殺菌効果が著しく低下する場合がある。また同様に非イオン性界面活性剤と共存すると、ミセル中に取り込まれ、殺菌効果が低下してしまう。
【0005】
この課題を解決する手段として、非イオン性界面活性剤を減量することで殺菌力を向上させる技術(特許文献1)や、カチオン性殺菌剤とカチオン性ポリマーを組み合わせることでカチオン性殺菌剤の口腔内滞留性を高め、殺菌効果を発揮させる技術(特許文献2、特許文献3、特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−16309号公報
【特許文献2】特開2001−64137号公報
【特許文献3】特開平6−239725号公報
【特許文献4】特開2001−139443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、特殊な香料成分を配合しており、さらにアニオン性界面活性剤を配合している。この特許文献1の技術においては、特殊な香料成分を配合しているという点において汎用性が低く、さらにアニオン性界面活性剤を含んでいることから、カチオン性殺菌剤とコンプレックスを形成することが懸念され、長時間の殺菌効果を得るためには改善の余地があった。
【0008】
また、特許文献2、3、4では、非イオン性界面活性剤を配合している。この特許文献2、3、4の技術においては、非イオン性界面活性剤を配合しているという点において、ミセル中に殺菌剤が取り込まれる課題が残っているといえる。さらに、非イオン性界面活性剤は、それだけでは泡立ちが不十分な場合があり、また泡立ちを高めるために多量に配合すると特有の嫌味が生じることがある。また、特許文献2、4は、液体口腔用組成物に関する提案であるため、歯磨剤においての提案が期待されている。さらにカチオン性殺菌剤は、特有な苦味を有しており、アニオン性界面活性剤と併用することで使用者に刺激として感じられる場合があり改善が望まれている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その課題は、口腔内の細菌に対して高い殺菌効果持続を有することが出来、使用感(刺激の低減)、外観安定性(濁りの軽減)をも向上させる、う蝕予防効果の高い歯磨剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、下記構成の歯磨剤組成物を提供する。
[1](A)カチオン化セルロース、(B)カチオン性殺菌剤、および(C)両性界面活性剤を含有する研磨剤無配合の歯磨剤組成物であって、
(A)カチオン化セルロース/(B)カチオン性殺菌剤の質量比が0.1〜10である歯磨剤組成物。
[2](A)カチオン化セルロースがヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドである上記[1]に記載の歯磨剤組成物。
[3](B)カチオン性殺菌剤が塩化セチルピリジニウムである上記[1]または[2]に記載の歯磨剤組成物。
[4](C)両性界面活性剤がヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液である上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歯磨剤組成物は、(A)カチオン化セルロースおよび(C)両性界面活性剤を配合することで、(B)カチオン性殺菌剤の口腔内滞留性を高めている。したがって、本発明の歯磨剤組成物は、口腔内の細菌に対して高い殺菌効果の持続性を有することができ、結果として使用感(刺激の低減)、外観安定性(濁りの軽減)をも向上させる、う蝕予防効果の高い各種剤形の歯磨剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の歯磨剤組成物は、(A)カチオン化セルロース、(B)カチオン性殺菌剤、および(C)両性界面活性剤を有効成分として含有する。以下、これら有効成分を記載順に説明する。
【0013】
[(A)カチオン化セルロース]
カチオン化セルロースとは、カチオンを有するセルロース、または、カチオンを有するセルロース誘導体である。カチオン化セルロースは、対イオン[例えば、ハロゲンイオン(塩素イオン)、メトサルフェートイオンなど]を有していてもよい。カチオン化セルロースの分子量は特に限定されない。成分(A)として、カチオン化セルロースは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
カチオン化セルロースの例としては、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩(例えば、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられ、好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースジメジルジアリルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0015】
(A)カチオン化セルロースを(B)カチオン性殺菌剤に併存させることにより、(B)カチオン性殺菌剤の口腔内滞留性を向上させることができ、本発明の歯磨剤組成物の殺菌効果を持続させることができる。(A)カチオン化セルロースとして、ヒドロキシエチルセルロースジメジルジアリルアンモニウムクロリドを用いることにより、上記(B)カチオン性殺菌剤の口腔内滞留性をより向上させることができ、本発明の歯磨剤組成物の殺菌効果の持続性をより一層高めることができる。
【0016】
(A)カチオン化セルロースの配合量は、組成物全体を100質量%とした場合に0.001質量%〜1.0質量%であることが好ましい。配合量が0.001質量%未満では、目的の殺菌効果の持続性が不十分となり、1.0質量%を超えると、使用時の泡量が適正量でなくなり使用感が悪化する。殺菌効果の持続性が向上でき、使用感も良好とする観点から、最適配合量は0.05質量%である。
【0017】
[(B)カチオン性殺菌剤]
カチオン性殺菌剤としては、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられ、特に限定されないが、塩化セチルピリジウムが好適である。歯磨剤組成物にカチオン性殺菌剤を配合することにより、歯磨剤組成物の使用による口腔内の総菌数を大幅に減少させることができ、う蝕の原因となる歯垢の形成を抑制することができる。(B)カチオン性殺菌剤として、塩化セチルピリジウムを用いることにより、より一層の殺菌効果が期待できる。
【0018】
(B)カチオン性殺菌剤の配合量は、組成物全体を100質量%とした場合に0.01質量%〜0.1質量%であることが好ましい。配合量が0.01質量%未満では、目的の殺菌効果が不十分となり、0.1質量%を超えると、使用時に苦みが感じられるようになり使用感が悪化する。殺菌効果が得られ、使用感も良好とする観点から、最適配合量は0.02質量%である。
【0019】
[(C)両性界面活性剤]
(C)両性界面活性剤の例としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型、N−脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩などのイミダゾリン型、N−脂肪酸アシル−L−アルギネート塩等のアミノ酸型などが挙げられ、好ましくはヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが用いられる。
【0020】
(C)両性界面活性剤を(A)カチオン化セルロースと(B)カチオン性殺菌剤との混合系に併存させることにより、(B)カチオン性殺菌剤による歯磨剤組成物の殺菌効果を持続させることができ、歯磨剤組成物の使用時の刺激を低減して良好な使用感を提供することができる。(C)両性界面活性剤として、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを用いることにより、本発明の歯磨剤組成物の殺菌効果の持続性をより一層高め、使用感も良好なものとすることができる。
【0021】
(C)両性界面活性剤の配合量は、組成物全体を100質量%とした場合に0.1質量%〜1.0質量%であることが好ましい。配合量が0.1質量%未満では、目的の殺菌効果の持続性が不十分となり、また、使用時の泡量が適正量でなくなり使用感が悪化し、1.0質量%を超えると、使用時に苦みが感じられるようになり使用感が悪化する。殺菌効果の持続性を向上でき、使用感も良好とする観点から、最適配合量は0.3質量%である。
【0022】
[(A)カチオン化セルロース/(B)カチオン性殺菌剤の質量比]
(A)カチオン化セルロース/(B)カチオン性殺菌剤の質量比は、0.1〜10であることが好ましい。上記質量比が0.1未満となると、(B)カチオン性殺菌剤による殺菌効果の持続性が不十分となり、また歯磨剤組成物の使用時に苦みを感じるようになる。また、上記質量比が10を超えると、歯磨剤組成物の使用時の泡立ちが悪くなり、(B)カチオン性殺菌剤による殺菌効果が発揮されにくくなり、結果として殺菌効果の持続性も得られなくなる。
【0023】
[研磨剤の無配合]
本発明に歯磨剤組成物は、先に述べたように、含有する(B)カチオン性殺菌剤による殺菌効果を発揮させることができ、しかもこの殺菌効果を持続させて、高いう蝕予防効果を使用者にもたらすことを目的としている。
従来、歯磨剤組成物には、歯垢をはじめとする汚れを除去するために、通常、研磨剤が配合される。しかし、研磨剤の使用により、歯牙や口腔粘膜が侵襲されるおそれがある。特にう蝕が生じやすい、いわゆる、う蝕ハイリスク者には特に懸念があると考えられている。
本発明の歯磨剤組成物は、上述のように、高いう蝕予防効果を使用者に提供することを最大の目的としている。したがって、本発明の歯磨剤組成物は、有効成分が吸着するおそれがある研磨剤を含まない(研磨剤無配合の)歯磨剤組成物とすることで、上述の必須成分(A)、(B)、(C)の組み合わせにより実現される高いう蝕予防効果を発揮できる。
先に説明したように、本発明では、配合した(B)カチオン性殺菌剤による殺菌効果を最大限に発揮させることができるので、本発明の歯磨剤組成物の使用によって口腔内の総菌数を大幅に減少させることができ、う蝕の原因となる歯垢の形成を抑制することができる。したがって、従来の歯磨剤組成物において歯垢の除去を担ってきた研磨剤が本発明の歯磨剤組成物に無配合であっても、歯垢形成に関する問題が生じることはない。
【0024】
[本発明の歯磨剤組成物の剤形]
本発明の歯磨剤組成物の剤形は特に限定されず、例えば、粉歯磨、潤製歯磨、練歯磨、液状歯磨、液体歯磨、ゲル状歯磨が挙げられ、好ましくは練歯磨、液状歯磨、液体歯磨、ゲル状歯磨である。
【0025】
[本発明の歯磨剤組成物の製造方法]
本発明の歯磨剤組成物の製造方法は特に限定されず、剤形に応じて適宜選択できる。例えば、上記必須成分(A)〜(C)、水、及び必要に応じて用いられる他の任意成分を配合し、通常の方法で調製することができる。
【0026】
[その他の成分]
本発明の歯磨剤組成物に配合できる、上記必須成分(A)〜(C)以外の任意成分としては、粘結剤、粘稠剤、薬効成分、香料、甘味剤、着色剤、防腐剤などが挙げられる。任意成分は1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。任意成分は剤形に応じて選択することができる。
【0027】
粘結剤としては上記成分(A)カチオン化セルロース以外のものであれば特に限定されない。例えば以下のものが挙げられる:カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;カラギーナン、グアガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウムなどの多糖;ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーなどの合成樹脂;シリカゲル、ラポナイト、アルミニウムシリカゲルなどの無機物;モンモリロナイト、ビーガム等の粘土鉱物。粘結剤は1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0028】
粘結剤を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、通常、例えば、組成物全体を100質量%とした場合に0.2〜3質量%である。
【0029】
粘稠剤としては、例えば、以下のものが挙げられる:ソルビット、キシリット、マルチトール、ラクチトール等の糖アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール;エタノール、変性エタノール等のアルコール;糖アルコール還元でんぷん糖化物など。
【0030】
粘稠剤は1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。粘稠剤を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、組成物全体を100質量%とした場合に通常5〜60質量%である。
【0031】
薬効成分としては、成分(B)カチオン性殺菌剤以外の、歯磨剤組成物に添加され得る薬効又は有効成分であればよい。その配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。例えば以下のものが挙げられる:フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化第1スズ等のフッ素化合物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテナーゼ、ムタナーゼ等の酵素;トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、ヒノキチオール、アスコルビン酸、酢酸dl-トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α-ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェート等のキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、トリクロンサン、塩化リゾチーム等の殺菌剤、ポリリン酸塩類、ゼオライト等の歯石予防剤。薬効成分(有効成分)は1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0032】
香料としては、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材であればよく、例えば以下のものが挙げられる:ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料;天然香料を加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)して得られる香料;メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアセデヒド、シトラール、プレゴン、カルビートアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料;ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料。
【0033】
香料は1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。香料を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、通常、組成物全体を100質量%とした場合に0.000001〜1質量%である。上記香料素材を賦香用香料として配合する場合、賦香用香料の配合量は、組成物全体を100質量%とした場合に0.05〜2質量%であることが好ましい。
【0034】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルヒドロカルコン、ペルラルチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。
【0035】
着色剤としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、酸化チタン等が挙げられる。
【0036】
防腐剤としては、例えば、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン類、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
甘味剤、着色剤、防腐剤を配合する場合の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で、それぞれの歯磨剤への通常の配合量とすることができる。
【0038】
本発明の歯磨剤組成物を収容する容器は特に制限されず、通常、歯磨剤組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどのプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0039】
[実施例1〜10および比較例1〜6]
下記(表1)、(表2)に示す組成分および組成分量の歯磨剤組成物サンプルを、以下の作製手順に従って、作製した。
【0040】
(歯磨剤組成物の作製手順)
(a)精製水中に水溶成分(粘結剤、プロピレングリコール等を除く)を常温で混合溶解させたA相を調製した。
(b)プロピレングリコール中に粘結剤およびカチオン性殺菌剤を常温で分散させたB相を調製した。
(c)攪拌中のA相にB相を添加混合し、C相を調製した。
(d)C相中に、香料、界面活性剤等の水溶性成分以外の成分を、5kg真空乳化装置(みづほ工業株式会社製)を用いて常温で混合し、減圧(3000Pa)による脱泡を行い、歯磨剤組成物5kgを得た。
【0041】
下記(表1)、(表2)に示した歯磨剤組成物を作製するにあたり、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドとしては、アクゾノーベル株式会社が市販している「セルコートL−200(商品名)]を、塩化セチルピリジニウムとしては、和光純薬工業株式会社が市販している「塩化セチルピリジニウム(商品名)」を、両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを用い、それ以外の原料においては、全て外原規適合品を用いた。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
前記作製手順に基づき作製した上記(表1)および(表2)に示す各実施例および各比較例の歯磨剤組成物について、下記の評価を行った。
【0045】
(1)カチオン性殺菌剤による殺菌効果の持続性の評価
(殺菌効果持続性の評価方法)
歯表面モデルとしてヒドロキシアパタイト粉末をヒトの濾過唾液中で30分間攪拌した。その後、唾液を除去しヒドロキシアパタイト粉末に水で3倍希釈した上記(表1)、(表2)に示す各歯磨剤組成物サンプルを加え、60分間攪拌した。
次に歯磨剤希釈溶液を除去し、各ヒドロキシアパタイト粉末をリン酸緩衝液(pH7.0、10mM)で4回洗浄、6回洗浄、8回洗浄、10回洗浄し、洗浄液は除去した。各洗浄回数毎のヒドロキシアパタイト粉末に対してTHBHM培地を添加した。各培地にアクチノマイセス・ビスコーサスT14Vを添加し、37℃で24時間嫌気培養した。
培養後の菌の生育抑制状態を目視で評価した。
殺菌効果持続性は、この試験を3回行い、菌の成育が見られ始める洗浄回数の前までの洗浄回数の平均値を元に下記の基準により評価した。下記評価基準において、例えば、洗浄回数が10回という評価は、10回洗浄を行った後でもヒドロキシアパタイト粉末に歯磨剤組成物による殺菌効果が残っており、そのため菌の成育が見られないことを意味する。
【0046】
(殺菌効果持続性の評価基準)
二重丸 :洗浄回数が10回
丸(○) :洗浄回数が8回以上10回未満
三角(△):洗浄回数が6回以上8回未満
バツ(×):洗浄回数が4回未満
上記二重丸印、丸印、三角印、バツ印表示による殺菌効果持続性の評価結果は、(表1)、(表2)の「カチオン性殺菌剤の効果持続」欄に示した。
【0047】
(2)歯磨剤組成物の殺菌力の評価
(殺菌力の評価方法)
凍結保存してあったポルフィロモーナス ジンジバリス培養液40μLをそれぞれ5mg/Lへミン(Sigma社製)及び1mg/LビタミンK(和光純薬工業社製)を含むトッドへーウィットブロース(Becton and Dickinson社製)培養液(THBHM)4mLに添加し、37℃で二晩嫌気 (80vol%窒素、10vol%二酸化炭素、10vol%水素) 培養して菌液とした。
上記(表1)、(表2)に示す各歯磨剤組成物サンプル1gにTHBHM培地49mLを加え攪拌した後、更にTHBHM培地を加え、各歯磨剤組成物の希釈倍率として400〜2400倍となるように各々の歯磨剤組成物の希釈培地を作成した。
得られた各々の歯磨剤組成物の希釈培地3mLに上記菌液50μLを添加し、37℃で10日間嫌気培養した。
培養後の菌の成育の有無を目視評価した。
殺菌力は、菌の成育が見られなかった最も高い希釈度を元に、下記の基準により評価した。
【0048】
(殺菌力の評価基準)
二重丸 :希釈度が1600倍以上
丸(○) :希釈度が1200倍以上1600倍未満
三角(△):希釈度が800倍以上1200倍未満
バツ(×):希釈度が800倍未満
上記二重丸印、丸印、三角印、バツ印表示による殺菌力の評価結果は、(表1)、(表2)の「殺菌力」欄に示した。
【0049】
(3)使用感の良さの評価
(使用感の良さの評価方法)
被験者10名を用い、上記(表1)、(表2)に示す各歯磨剤組成物サンプル約1gを歯ブラシにとり、3分間歯磨きを行った際の使用中に感じた刺激について以下の基準で評価した。
【0050】
(使用感の良さの評価基準1)
3点:刺激を感じない
2点:やや刺激を感じる
1点:刺激を感じる
上記評価基準に基づく10名の評価結果を平均し、さらに以下の基準で使用感(刺激の少なさ)を評価した。
(使用感の良さの評価基準2)
二重丸 :刺激の評価の平均点が2.5点以上3.0以下
丸(○) :刺激の評価の平均点が2.0以上2.5未満
三角(△):刺激の評価の平均点が1.5以上2.0未満
バツ(×):刺激の評価の平均点が1.0以上1.5未満
上記二重丸印、丸印、三角印、バツ印表示による使用感の良さの評価結果は、(表1)、(表2)の「歯磨剤の使用感(刺激の程度)」欄に示した。
【0051】
(4)歯磨き時の泡量の評価
(歯磨き時の泡量の評価方法)
被験者10名を用い、上記(表1)、(表2)に示す各歯磨剤組成物サンプル約1gを歯ブラシにとり、3分間歯磨きを行った際の最終的な泡量について、以下の基準で評価した。
【0052】
(歯磨き時の泡量の評価基準1)
3点:適度な泡量で磨きやすい
2点:泡量がやや少なく、またはやや多く磨きにくい
1点:泡量が少なすぎる、または多すぎて磨きにくい
上記評価基準に基づく10名の評価結果を平均し、以下の基準で泡立ち感を評価した。
(歯磨き時の泡量の評価基準1)
二重丸 :泡量評価の平均点が2.5点以上3.0点以下
丸(○) :泡量評価の平均点が2.0点以上2.5点未満
三角(△):泡量評価の平均点が1.5点以上2.0点未満
バツ(×):泡量評価の平均点が1.5点未満
上記二重丸印、丸印、三角印、バツ印表示による泡量の評価結果は、(表1)、(表2)の「歯磨剤の使用感(泡量)」欄に示した。
【0053】
(5)歯磨剤の外観(濁り)の評価
(歯磨剤の外観(濁り)の評価方法)
上記(表1)、(表2)に示す各歯磨剤組成物サンプルをブローチューブに60g充填し、各サンプル3本を−5℃で3ヶ月保存し、室温(25℃)に戻して1日放置した後、0.5mm間隔で幅0.2mmの線を2本引いた紙の上に各歯磨剤サンプルをチューブから押し出し、紙の裏からシャーカッセン(医用X線写真観察器)の光を当てて、その線の見え方により各歯磨剤組成物サンプルの濁りの状態を以下の基準で評価した。
【0054】
(歯磨剤の外観(濁り)の評価基準1)
3点:2本ともはっきり見える
2点:1本だけはっきり見える
1点:2本とも濁って見える
各歯磨剤組成物サンプルの3本の評価点の平均値を求め、以下の基準で外観(濁り)を評価した。
(歯磨剤の外観(濁り)の評価基準2)
二重丸 :濁り評価の平均点が2.5点以上3.0点以下
丸(○) :濁り評価の平均点が2.0点以上2.5点未満
三角(△):濁り評価の平均点が1.5点以上2.0点未満
バツ(×):濁り評価の平均点が1.5点未満
上記二重丸印、丸印、三角印、バツ印表示による歯磨剤の外観(濁り)の評価結果は、(表1)、(表2)の「歯磨剤の外観(濁り)」欄に示した。
【0055】
実施例1〜10の歯磨剤組成物は、「カチオン性殺菌剤に効果持続」、「殺菌力」、「歯磨剤の使用感(刺激の程度)」、「歯磨剤の使用感(泡量)」、および「歯磨剤の外観(濁り)」のいずれにも優れており、少なくとも一つの評価項目で二重丸印の評価を得ている(表1)。一方、比較例1〜6の歯磨剤組成物は、全ての評価項目で良好な評価を得たものはなく、少なくとも一つの評価項目において評価不可能或いはバツ印の評価を得ている(表2)。
【0056】
このことは、本発明の歯磨剤組成物が、口腔内の細菌に対して高い殺菌効果の持続性を有することができ、使用感(刺激の低減)、外観安定性(濁りの軽減)をも向上させる、う蝕予防効果の高い歯磨剤組成物であることをも示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン化セルロース、(B)カチオン性殺菌剤、および(C)両性界面活性剤を含有する研磨剤無配合の歯磨剤組成物であって、
(A)カチオン化セルロース/(B)カチオン性殺菌剤の質量比が0.1〜10である歯磨剤組成物。
【請求項2】
(A)カチオン化セルロースがヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドである請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
(B)カチオン性殺菌剤が塩化セチルピリジニウムである請求項1または2に記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
(C)両性界面活性剤がヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液である請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2013−67568(P2013−67568A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205622(P2011−205622)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】