説明

残留農薬検出方法および表面プラズモン共鳴センサ

【課題】非イオン性および陰イオン性の界面活性剤を助剤とする広範な残留農薬の検知を可能にする。
【解決手段】表面プラズモン共鳴センサの表面に、アルキル鎖を持つチオール化合物を用いて自己組織化単分子の膜15を形成し、界面活性剤を助剤とする残留農薬を含む被検査溶液を膜15に触れるように流して共鳴角を変化させ、その共鳴角の変化量に基づいて被検査溶液中の農薬濃度を検出する残留農薬検出方法であって、チオール化合物として、炭素鎖が11以上の化合物を用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物製品の残留農薬を、広範な農薬種類に対して高感度に検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
平成15年の食品衛生法の改正により、一定量以上の農薬等が残留する食品の販売等を禁止するポジティブリスト制度が導入され、残留農薬の基準値がない農薬には、一律0.01ppmの基準値が設定された。
【0003】
その結果、年間200万件を超える検査が行われているが、検査に指定されている公定法では、ガスクロマトグラフィー質量分析計などの分析装置が用いられるため、分析時間(コスト)の削減が課題となっている。
【0004】
その一つの解決策として、本願出願人らは、脂質高分子膜を用いて、市販農薬に助剤として使用されている界面活性剤を検出することで、間接的に残留農薬のスクリーニングを行うための測定手法を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−007725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記脂質高分子膜を用いた検出方法では、農薬に助剤として用いられる界面活性剤のうち、非イオン性の界面活性剤の検出が難しく、検査できる農薬の種類の範囲が全体の70%程度に限られるという問題があった。
【0007】
本発明は、この問題を解決し、非イオン性および陰イオン性の界面活性剤を助剤とする広範な残留農薬の検知が可能な残留農薬検出方法および表面プラズモン共鳴センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の残留農薬検出方法は、
表面プラズモン共鳴センサの表面に、アルキル鎖を持つチオール化合物を用いて自己組織化単分子膜を形成し、界面活性剤を助剤とする残留農薬を含む被検査溶液を前記自己組織化単分子膜に触れるように流して共鳴角を変化させ、該共鳴角の変化量に基づいて前記被検査溶液中の農薬濃度を検出する残留農薬検出方法であって、
前記チオール化合物として、炭素鎖が11以上の化合物を用いたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2の残留農薬検出方法は、請求項1記載の残留農薬検出方法において、
助剤として陰イオン性の界面活性剤が含まれている被検査溶液に対して、
前記チオール化合物として、末端に四級アンモニウムカチオンを有する化合物を用いたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3の残留農薬検出方法は、請求項2記載の残留農薬検出方法において、
陰イオン性の界面活性剤が助剤として含まれている被検査溶液に対して、
前記チオール化合物として、
TMA N,N,N-trimethyl-(mercaptoundecyl) ammonium chloride 分子量281.93
を用いたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4の残留農薬検出方法は、請求項1記載の残留農薬検出方法において、
非イオン性の界面活性剤が助剤として含まれている被検査溶液に対して、
前記チオール化合物として、
C11 1-Undecanethiol 分子量188.37
C18 1-Octadecanethiol 分子量286.56
C20 Eicosane thiol 分子量314.62
のいずれかを用いていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5の表面プラズモン共鳴センサは、
センサ表面に、アルキル鎖を持つチオール化合物による自己組織化単分子膜が形成された表面プラズモン共鳴センサにおいて、
前記チオール化合物は、炭素鎖が11以上の化合物であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6の表面プラズモン共鳴センサは、請求項5記載の表面プラズモン共鳴センサにおいて、
前記チオール化合物は、末端に四級アンモニウムカチオンを有する化合物であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7の表面プラズモン共鳴センサは、請求項6記載の表面プラズモン共鳴センサにおいて、
前記チオール化合物が、
TMA N,N,N-trimethyl-(mercaptoundecyl) ammonium chloride
分子量281.93
であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8の表面プラズモン共鳴センサは、請求項5記載の表面プラズモン共鳴センサにおいて、
前記チオール化合物が、
C11 1-Undecanethiol 分子量188.37
C18 1-Octadecanethiol 分子量286.56
C20 Eicosane thiol 分子量314.62
のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、残留農薬に助剤として含まれる界面活性剤を、表面プラズモン共鳴センサで検出できるように、そのセンサ表面に、アルキル鎖を持つチオール化合物によって形成する自己組織化単分子膜として、炭素鎖の長さと界面活性剤の吸着性の関係を調べた結果から、炭素鎖長11以上のチオール化合物は、非イオン性界面活性剤に対して高感度な応答を示すことを確認しており、この化合物を用いることで、従来検出できなかった非イオン性界面活性剤および陰イオン性界面活性剤を助剤とする広範な農薬の高感度検知が可能となる。
【0017】
また、特に、陰イオン性界面活性剤に対しては、末端に四級アンモニウムカチオンを有するTMAに代表される化合物を用いることで、極めて高感度な検出が可能となる。
【0018】
また、非イオン性界面活性剤に対しては、
C11 1-Undecanethiol 分子量188.37
C18 1-Octadecanethiol 分子量286.56
C20 Eicosane thiol 分子量314.62
の化合物を用いることで高感度な検出が可能となり、さらに、その炭素鎖が最長のC20が特に高感度検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】表面プラズモン共鳴センサの構造の模式図
【図2】陰イオン性界面活性剤SDSに対するTMAセンサ膜の応答特性
【図3】陰イオン性界面活性剤SDSの各センサ膜への吸着特性
【図4】陰イオン性界面活性剤SDSのC20〜C11センサ膜への吸着特性
【図5】非イオン性界面活性剤Brij58に対するC20センサ膜の応答特性
【図6】非イオン性界面活性剤Brij58のC20およびC18センサ膜への吸着特性
【図7】非イオン性界面活性剤Brij58のC20〜C11センサ膜への吸着特性
【図8】農薬原体およびSDS混合物に対するTMAセンサ膜の応答特性
【図9】農薬原体およびSDS混合物に対するC20センサ膜の応答特性
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
本願発明者らは、一種の高感度な屈折率計である表面プラズモン共鳴測定装置を用いた残留農薬検知の可能性を確かめるべく、種々の実験を行った。以下、その実験方法および測定結果について説明する。
【0021】
(実験方法)
(A)測定系
測定には、表面プラズモン共鳴(以下、SPRと記す)センサを用いている。
このSPRセンサは、表面プラズモン共鳴現象を利用して高感度に化学物質などを検出することが可能なセンサであり、具体的には図1の構成を有している。
【0022】
即ち、プリズム11の表面側の金薄膜12に対してプリズム11側から発光器(LED等)13から光を照射し、その反射光を受光器14で受けて強度を測定する。この時、金薄膜12の表面では、エバネッセント波がしみ出す。金薄膜12表面のプラズモンとエバネッセント波の波数が一致したとき共鳴が起こり、光のエネルギーが共鳴に使われるため、反射光強度は減少する。この反射光強度が最小となる入射角度を共鳴角と呼ぶ。共鳴角は金薄膜12表面の屈折率に依存して変化し、その屈折率は金薄膜12表面の質量変化に応じて変化する。
【0023】
そして、金薄膜12の表面には、測定対象物質に選択的に結合するような化合物(自己組織化単分子膜SAM)の膜15が形成されており、被測定液をこの膜15に触れるように流動させることで、被測定液中の検出対象物質を膜15の表面に結合させて質量増加させ、共鳴角を変位させる。
【0024】
本発明の実験では、前記SPRセンサを用いた装置として、GEヘルスケアバイオサイエンス社製のBiacore
J(登録商標)を使用した。またセンサに装着する金薄膜としてGEヘルスケアバイオサイエンス社製のSIA Kitのものを用いた。ランニングバッファーとして、Phosphate-buffered saline(PBS; 10mM phosphate, 140mM NaCl, pH 7.4)を用いた。ランニングバッファーは使用前にフィルターでろ過し、十分脱気を行い用いた。流速は約30μl/minに設定して、測定を行った。
【0025】
(B)試薬
測定対象として、以下の陰イオン性界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij58)を用いた。
(a1)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) (和光純薬工業株式会社) 分子量288.38cmc 8.1mM
(a2)ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij58) (和光純薬工業株式会社) 分子量1124cmc 0.08mM
【0026】
また、農薬として、以下のイマザリルおよびグリホサートを選んだ。
(b1)イマザリル C1414Cl20(和光純薬工業株式会社) 分子量297.18
(b2)グリホサート HOCCHNHCHP(O)(OH) (和光純薬工業株式会社) 分子量169.07
【0027】
表面の修飾試薬(SAM)としては、以下の4種類のチオール化合物、1-Undecanethiol、1-Octadecanethiol、Eicosane thiolおよびN,N,N-trimethyl-(mercaptoundecyl) ammonium chloride(TMA)を用いた。
【0028】
(c1)C11 1-Undecanethiol (化学式HS-(CH2)10-CH3)(東京化成工業株式会社) 分子量188.37
(c2)C18 1-Octadecanethiol (化学式HS-(CH2)17-CH3)(東京化成工業株式会社) 分子量286.56
(c3)C20 Eicosane thiol (化学式HS-(CH2)19-CH3)(Endeavour Speciality Chemicals社) 分子量314.62
(c4)TMA N,N,N-trimethyl-(mercaptoundecyl) ammonium chloride (化学式HS-(CH2)11NMe3)(Prochimia Surfaces社) 分子量281.93
【0029】
また、比較のために、OH末端の試薬として、
(c5)OH 11-mercapto-1-undecanol (化学式HS-(CH2)11-OH)(ALDRICH) 分子量204.37
を用いている。
【0030】
(C)センサ表面の作製
金薄膜として、GEヘルスケアバイオサイエンス社製のSIA Kit Auに含まれるSensor Chip Auを用いた。
【0031】
また、金薄膜チップをアセトン、エタノール、2-プロパノールに浸漬し、それぞれ10、2、2分間超音波洗浄を行った。その後、SC1洗浄液(アンモニア水、過酸化水素水、純水を1:1:5で混合した溶液)に浸漬し、ホットプレートで20分間90度に加熱した。その後、金薄膜チップを超純水でリンスした。
【0032】
続いて、洗浄後の金チップを、1mMのSAM溶液(溶媒 エタノール)に24時間浸漬し、SAMs(自己組織化単分子膜)を形成した。SAMs形成後は、修飾試薬エタノール溶液から取り出し、金薄膜の表面に非特異的吸着している修飾試薬を除去するため、エタノールに浸漬し、超音波洗浄機で3分間洗浄した。その後、エタノールから取り出した金薄膜チップを超純水でリンスし、窒素ブローで乾燥させた。
【0033】
(D)試薬の調整
(d1)ストック溶液の調整
100ppmのイマザリル、グリホサート、SDS、Brij58 in PBS溶液を用意した。イマザリルはアセトンに溶かした後、PBS溶液を加え、100ppmイマザリル PBS溶液を作成した。
【0034】
(d2)界面活性剤溶液
100ppmの界面活性剤 PBS溶液をPBSで希釈し、各濃度の界面活性剤 PBS溶液を作成した。
【0035】
(d3)農薬溶液
100ppmの農薬 PBS溶液をPBSで希釈し、各濃度の農薬 PBS溶液を作成した。
【0036】
(d4)農薬+界面活性剤溶液
100ppmの界面活性剤 PBS溶液と100ppmの農薬 PBS溶液を1:1の割合で混合し、さらにPBSにより希釈し、界面活性剤と農薬がそれぞれ30、100、300、1000ppbの各濃度となる農薬+界面活性剤 PBS溶液を作成した。
【0037】
(E)測定結果
(E−1)SAMsへのSDS吸着の測定
センサの金薄膜表面に前記4種類のチオール化合物(c1)〜(c4)と(c5)のOHとを修飾したセンサを用いて、SDS吸着の測定を行った。SPR装置に緩衝液を流し、各濃度のSDS溶液を2分間添加した。測定は3回行った。
【0038】
図2は、チオール化合物として(c4)のTMAセンサ表面を用いたSPR測定のセンサグラムである。この図2の測定結果において、1000ppbのSDS溶液の応答を見ると、溶液流通開始後からTMAセンサ表面にSDSが吸着することによりセンサ応答が立ち上がり、流通終了と同時にベースライン付近まで戻っていることがわかる。0〜30ppbの応答に違いは見られないが、100ppb以上では30ppb以下との差がはっきりわかる。なお、単位RU(Resonace Unit)は、共鳴角度0.1°=1000RUに相当する値である。
【0039】
図3は、SAMsへのSDS吸着特性を測定した結果である。この図3の結果から、C11、C18、C20、TMAで表面修飾された各センサいずれについてもSDS濃度に相関する応答が得られており、これらの炭素鎖11以上の4つのチオール化合物に関してSDSの検知が可能である。
【0040】
その中で、特に、末端に四級アンモニウムカチオンが導入されているTMAセンサ表面への吸着が一番高く、極めて高感度な検出が可能であることを示している。
【0041】
なお、サンプル溶液とランニングバッファーの比重の違いから生じるバルク効果(溶媒による屈折率変化)はヘキサエチレングリコール(EG60H) SAMをリファレンスとして用いて差し引いている。低濃度域(10ppm以下)では、バルク効果の影響はほとんどない。ヘキサエチレングリコールSAMに使った試薬は以下の通りである。
EG60H 11-mercaptoundecanol hexaethylenglycol ether
化学式 HS-(CH2)11-(OCH2CH2)-OH (Prochimia Surfaces社) 分子量 468.69
【0042】
ここで、TMAセンサとC11センサの炭素鎖長は同じであるから、C11センサに対して、末端に四級アンモニウムカチオンが導入されている点が異なるTMAセンサが、陰イオン性界面活性剤であるSDSの吸着がより促進されていることが明らかである。また、末端にヒドロキシル基を有するOHセンサには、ほとんど吸着が見られない。
【0043】
図4は、図3からC20、C18、C11の各センサの特性を比較するために抜き出したものであり、C18センサ表面とC20センサ表面の特性に大きな違いはないが、低濃度域ではC20センサ表面の方が応答性がよい。また、C11センサ表面とは、10ppm以上の濃度領域で吸着量が明確に異なることがわかる。
【0044】
(E−2)SAMsへのBrij58吸着の測定
センサ表面に、上記(c1)〜(c4)の4種類のチオール化合物を修飾し、SDS吸着の測定を行った。SPR装置に緩衝液を流し、各濃度のBrij58溶液を2分間添加した。測定は3回行った。
【0045】
図5は、例としてC20センサ表面におけるSPR測定のセンサグラムを示す。この図5から、TMAセンサ表面へのSDS吸着特性と同様に、30ppb以下では応答が見られないが、100ppb以上で、センサグラムの上昇が見られる。
【0046】
図6は、C20センサ表面およびC18センサ表面へのBrij58吸着特性を示すものであり、C18センサとC20センサの特性に大きな違いはないが、図7に示す低濃度域の拡大図ではC20センサの方が応答性がよいことがわかる。
【0047】
なお、ここでは、アルキル鎖を持つチオール化合物のうち、炭素鎖11、18、20の化合物について実験しているが、実験結果から非イオン性の界面活性剤Brij58に対しては、炭素鎖が長い程感度が高くなっているので、炭素鎖が20を超えるものがより高い感度をもつことが十分予測されるが、炭素鎖が20を超えるチオール化合物は製造上困難性があり、現状では、非イオン性界面活性剤に対して、C20のセンサが最も適していると認められる。なお、図6の結果は、ヘキサエチレングリコール(EG60H)
SAMをリファレンスとして用いてバルク効果を差し引いている。低濃度域(3ppm以下)では、バルク効果の影響はほとんどない。
【0048】
(E−3)疑似農薬の測定
図8にTMAセンサ表面における農薬原体および陰イオン性のSDS混合疑似農薬の測定結果、図9にC20センサ表面における農薬原体および非イオン性のBrij58混合疑似農薬の測定結果を示す。
【0049】
これらの測定結果から、グリホサートおよびイマザリルに対しては、1000ppbまでの濃度範囲ではほとんど応答しておらず、SDSあるいはBrij58との混合溶液では、どちらも応答していることがわかる。つまり、どちらのセンサ表面でも原体のグリホサートおよびイマザリル単体ではセンサ応答がほとんどないが、助剤である界面活性剤のSDSあるいはBrij58が存在するとセンサ応答が得られている。
【0050】
なお、実際には、農薬の原体と助剤の混合比が製品によって決まっているから、助剤である界面活性剤の濃度検知が行えれば、既知の混合比から農薬原体の濃度も推定でき、その推定値が、ある基準値を超える被検査溶液に対してのみ、ガスクロマトグラフィー質量分析計などの分析装置を用いた公定法による分析を行えばよいから、効率的な検査が行える。
【0051】
(E−4)検出限界
サンプルとして、PBSのみを流した場合(測定回数11回)の平均値と標準偏差σから、検出限界を、
検出限界(RU)=平均値+3.29σ
として求めた。この結果より、SDSの検出限界は15.99RU、Brij58の検出限界は16.31RUとなる。
【0052】
そして、この検出限界における界面活性剤濃度を検量線より求めると、
SDS……50ppb
SDS+グリホサート……90ppb
SDS+イマザリル……60ppb
Brij58……30ppb
Brij58+グリホサート……90ppb
Brij58+イマザリル……90ppb
となり、総じて90ppbの濃度で検出できることがわかる。
【0053】
以上の測定結果から、TMAで代表されるように、末端に四級アンモニウムカチオンを有するチオール化合物によるSAMが好適であり、また、C20〜C11のようなアルカンチオール化合物によるSAMの場合、炭素鎖長が長い程、応答が高いと認められる。
【0054】
したがって、アニオン性(陰イオン性)界面活性剤の検出には、鎖長が長く(C11以上)、末端に四級アンモニウムカチオンを有するSAMを用いることで、より高感度に界面活性剤および農薬助剤を検出することが可能であり、非イオン性界面活性剤の検出には、炭素鎖が長い(C11以上)ほど高感度な検出が可能であり、これらを使い分けることで80%の農薬の検知が可能となった。
【符号の説明】
【0055】
11……プリズム、12……金薄膜、13……発光器、14……受光器、15……膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面プラズモン共鳴センサの表面に、アルキル鎖を持つチオール化合物を用いて自己組織化単分子膜を形成し、界面活性剤を助剤とする残留農薬を含む被検査溶液を前記自己組織化単分子膜に触れるように流して共鳴角を変化させ、該共鳴角の変化量に基づいて被検査溶液中の農薬濃度を検出する残留農薬検出方法であって、
前記チオール化合物として、炭素鎖が11以上の化合物を用いたことを特徴とする残留農薬検出方法。
【請求項2】
助剤として陰イオン性の界面活性剤が含まれている被検査溶液に対して、
前記チオール化合物として、末端に四級アンモニウムカチオンを有する化合物を用いたことを特徴とする請求項1記載の残留農薬検出方法。
【請求項3】
陰イオン性の界面活性剤が助剤として含まれている被検査溶液に対して、
前記チオール化合物として、
TMA N,N,N-trimethyl-(mercaptoundecyl) ammonium chloride
分子量281.93
を用いたことを特徴とする請求項2記載の残留農薬検出方法。
【請求項4】
非イオン性の界面活性剤が助剤として含まれている被検査溶液に対して、
前記チオール化合物として、
C11 1-Undecanethiol 分子量188.37
C18 1-Octadecanethiol 分子量286.56
C20 Eicosane thiol 分子量314.62
のいずれかを用いていることを特徴とする請求項1記載の残留農薬検出方法。
【請求項5】
センサ表面に、アルキル鎖を持つチオール化合物による自己組織化単分子膜が形成された表面プラズモン共鳴センサにおいて、
前記チオール化合物は、炭素鎖が11以上の化合物であることを特徴とする表面プラズモン共鳴センサ。
【請求項6】
前記チオール化合物は、末端に四級アンモニウムカチオンを有する化合物であることを特徴とする請求項5記載の表面プラズモン共鳴センサ。
【請求項7】
前記チオール化合物が、
TMA N,N,N-trimethyl-(mercaptoundecyl) ammonium chloride
分子量281.93
であることを特徴とする請求項6記載の表面プラズモン共鳴センサ。
【請求項8】
前記チオール化合物が、
C11 1-Undecanethiol 分子量188.37
C18 1-Octadecanethiol 分子量286.56
C20 Eicosane thiol 分子量314.62
のいずれかであることを特徴とする請求項5記載の表面プラズモン共鳴センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−2817(P2013−2817A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130656(P2011−130656)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(502240607)株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー (10)
【Fターム(参考)】