説明

毛髪処理剤

【課題】毛髪の損傷を抑えて、毛髪をストレートのデザインに変形処理し、ストレートのデザインを持続可能な毛髪処理剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の毛髪処理剤は、チオグリコール酸およびその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる成分(II)を還元剤の総モル濃度の1/2以下の量で含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤および毛髪変形処理方法に関する。さらに詳しくは、毛髪をストレートのデザインに変形処理可能な毛髪処理剤ならびに該毛髪処理剤を用いた毛髪変形処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーマ等の毛髪変形処理に用いられる毛髪処理剤は通常2剤からなる。このような毛髪処理剤を用いた毛髪変形処理では、第1剤(還元剤ともいう)を用いて毛髪のシスチン結合を切断した後、第2剤(酸化剤ともいう)を用いて新たなシスチン結合を形成することにより、毛髪をストレート等にデザインする。
【0003】
上記第1剤においては、還元剤として従来チオグリコール酸やシステインが用いられてきたが、これらの成分を毛髪に浸透させるためには、毛髪を膨潤させる必要があった。そのため、第1剤にアルカリ剤を含有させ、第1剤をアルカリ性の溶液としていた。しかしながら、このようなアルカリ性の溶液を用いると毛髪の損傷が生じるという問題があった。
【0004】
そこで、分子量が小さく、毛髪になじみやすいシステアミンを還元剤として用いることで、アルカリ剤の使用を不要として、第1剤を酸性の溶液とした例が報告されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
このような酸性の第1剤を用いると毛髪の損傷は抑えられるが、毛髪デザイン効果が弱く、強いくせ毛の処理やストレートデザインの持続性の点で、さらなる向上が求められていた。
【0006】
一方、毛髪をストレートにヘアデザインする場合、毛髪に第1剤を塗布後、第2剤を塗布する前に、毛髪にヘアアイロン処理をすることにより、ストレートデザイン効果を向上させることが行われている。ここで、ヘアアイロン処理とは、毛髪に熱を与えながら延伸する処理をいう。システアミンのみを還元剤として用いた場合に、このようなヘアアイロン処理をすると、ヘアアイロン処理をしない場合に比べ、ストレートデザイン効果は一定の向上は得られるが、より一層の向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−8775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、毛髪の損傷を抑えて、毛髪をストレートのデザインに変形処理し、ストレートのデザインを持続可能な毛髪処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定のpH範囲でシステアミン類とチオグリコール酸類とを特定の範囲で含有する毛髪処理剤を用いれば、毛髪の損傷を抑えて優れたストレートヘアデザインが形成可能であることを見出し、本発明を完成した。本発明は、たとえば以下の[1]〜[8]である。
【0010】
[1]チオグリコール酸およびその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる成分(II)を還元剤の総モル濃度の1/2以下の量で含有することを特徴とする毛髪処理剤。
[2]システアミンおよびその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる成分(I)と、チオグリコール酸およびその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる成分(II)とを含有する毛髪処理剤であって、
pHが7.0〜10.0であり、
前記成分(I)のモル濃度(i)と前記成分(II)のモル濃度(ii)との比[(ii)/(i)]が、0.004〜1.0であり、
前記モル濃度(ii)が0.01〜0.40mol/lであり、
前記モル濃度(i)および前記モル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]が、
(A)pHが7.0以上8.0未満の場合、1.0〜2.4mol/lであり、
(B)pHが8.0以上8.5未満の場合、0.2〜2.4mol/lであり、
(C)pHが8.5以上9.3未満の場合、0.2〜2.0mol/lであり、
(D)pHが9.3以上9.6未満の場合、0.2〜1.6mol/lであり、
(E)pHが9.6以上10.0以下の場合、0.2〜1.3mol/lであること
を特徴とする[1]に記載の毛髪処理剤。
【0011】
[3]前記モル濃度(i)および前記モル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]が、
(A)pHが7.0以上8.0未満の場合、1.3〜2.4mol/lであり、
(B)pHが8.0以上8.5未満の場合、0.6〜2.0mol/lであり、
(C)pHが8.5以上9.3未満の場合、0.9〜1.6mol/lであり、
(D)pHが9.3以上9.6未満の場合、0.4〜1.3mol/lであり、
(E)pHが9.6以上10.0以下の場合、0.2〜1.0mol/lであること
を特徴とする[1]または[2]に記載の毛髪処理剤。
[4]pHが8.0以上9.6未満であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
【0012】
[5]前記モル濃度(i)および前記モル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]が、
(C)pHが8.5以上9.3未満の場合、1.0〜1.3mol/lであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
[6]毛髪に熱を与えながら延伸処理する操作を含むストレートヘア形成のための毛髪変形処理に用いられることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の毛髪処理剤。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の毛髪処理剤を毛髪に塗布する工程と、
該毛髪処理剤を塗布した毛髪に熱を与えながら延伸処理する工程と
を含むことを特徴とする毛髪変形処理方法。
[8]毛髪をストレートにデザインするために用いられる[7]に記載の毛髪変形処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の毛髪処理剤を用いて、毛髪にストレートヘアデザインを形成するための毛髪変形処理を行うと、毛髪の損傷を抑えて優れたストレートヘアデザイン効果を得ることが可能であり、処理後の毛髪は手触り、おさまり、艶および柔らかさが良好である。また、形成したストレートヘアデザインの持続性が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の毛髪処理剤は、チオグリコール酸およびその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる成分(II)を還元剤の総モル濃度の1/2以下の量で含有し、好ましくは特定のpHを有し、pHの範囲に応じてシステアミンおよびその塩類から選ばれる少なくとも1種(以下、システアミン類ともいう)からなる成分(I)およびチオグリコール酸およびその塩類から選ばれる少なくとも1種(以下、チオグリコール酸類ともいう)からなる成分(II)の合計量を特定の範囲で含有するとともに、毛髪処理剤中の成分(I)のモル濃度(i)と成分(II)のモル濃度(ii)との比[(ii)/(i)]が0.004〜1.0であり、かつ成分(II)のモル濃度(ii)が0.01〜0.40mol/l以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の毛髪処理剤とは、毛髪のシスチン結合を切断するために用いられる処理剤をいい、通常2剤式パーマ処理剤の第1剤をいう。
以下、各成分の毛髪処理剤中の濃度は、通常の2剤形式のパーマ処理剤の場合は、第1剤中の濃度である。
【0016】
1.成分(I)
本発明で用いる成分(I)は、
【0017】
【化1】

で表わされる化合物(システアミン)ならびにその塩酸塩、クエン酸塩、臭化水素酸塩および酢酸塩等の塩類から選ばれる少なくとも1種である。
【0018】
システアミン類は、分子量が小さいため、毛髪への浸透が良好な還元剤である。
また、システアミン類を毛髪に塗布しても、還元作用以外の毛髪の構造への影響が少なく、毛髪に与える損傷が小さい。
【0019】
2.成分(II)
本発明で用いる成分(II)は、
【0020】
【化2】

で表わされる化合物(チオグリコール酸)ならびにそのアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩等の塩類から選ばれる少なくとも1種である。
【0021】
チオグリコール酸類は、毛髪に浸透しやすく、毛髪変形処理効果の高い還元剤である。
チオグリコール酸およびその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる成分(II)の本発明の毛髪処理剤中の含有量は、還元剤の総モル濃度の1/2以下の量であり、0.01〜0.40mol/lであることが好ましい。
【0022】
成分(II)の含有量が、上記範囲内にあると、毛髪の損傷を抑えながら、ストレートヘアデザイン効果を向上させることができる。このストレートヘアデザイン効果の向上は、毛髪に本発明の毛髪処理剤を塗布後、ヘアアイロン処理を行う場合に顕著である。
【0023】
3.pHと還元剤の含有量との関係
本発明の毛髪処理剤は、pHが7.0〜10.0が好ましい。
毛髪の損傷を抑えて、高いストレートヘアデザイン効果を得ることが可能な上記還元剤の合計の使用量は、毛髪処理剤のpHにより異なる。すなわち、毛髪処理剤がアルカリ性が強くなる程、毛髪処理剤を塗布した毛髪は膨潤し、還元剤の毛髪への浸透は良好になる。一方、毛髪処理剤のアルカリ性が高い程、毛髪の損傷の程度が大きい。さらに、還元剤の量は多いほど、還元剤としての効果は向上するが、毛髪の損傷の程度も上昇する。
【0024】
そこで、上記事項を総合的に検討した結果、毛髪処理剤におけるpH範囲と成分(I)のモル濃度(i)および成分(II)のモル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]との好適な組み合わせは、以下の通りとなる。
【0025】
(A)毛髪処理剤のpHが7.0以上8.0未満である場合
毛髪処理剤中の成分(I)のモル濃度(i)および成分(II)のモル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]は、好ましくは1.0〜2.4mol/l、より好ましくは1.3〜2.4mol/l、最も好ましくは1.6〜2.0mol/lである。
【0026】
(B)毛髪処理剤のpHが8.0以上8.5未満である場合
毛髪処理剤中の成分(I)のモル濃度(i)および成分(II)のモル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]は、好ましくは0.2〜2.4mol/l、より好ましくは0.6〜2.0mol/l、最も好ましくは1.3〜1.6mol/lである。
【0027】
(C)毛髪処理剤のpHが8.5以上9.3未満である場合
毛髪処理剤中の成分(I)のモル濃度(i)および成分(II)のモル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]は、好ましくは0.2〜2.0mol/l、より好ましくは0.9〜1.6mol/l、最も好ましくは1.0〜1.3mol/lである。
【0028】
(D)毛髪処理剤のpHが9.3以上9.6未満である場合
毛髪処理剤中の成分(I)のモル濃度(i)および成分(II)のモル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]は、好ましくは0.2〜1.6mol/l、より好ましくは0.4〜1.3mol/l、最も好ましくは0.6〜1.0mol/lである。
【0029】
(E)毛髪処理剤のpHが9.6以上10.0以下である場合
毛髪処理剤中の成分(I)のモル濃度(i)および成分(II)のモル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]は、好ましくは0.2〜1.3mol/l、より好ましくは0.2〜1.0mol/l、最も好ましくは0.4〜0.6mol/lである。
【0030】
上記pH範囲と成分(I)のモル濃度(i)および成分(II)のモル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]との組み合わせの中でも、pHが8.0以上9.6未満における組み合わせが好ましく、pHが8.5以上9.3未満における組み合わせがより好ましい。
【0031】
上記各pHの範囲において、上記範囲の量のシステアミン類およびチオグリコール酸類を用いると、毛髪の損傷を抑えて、優れたストレートヘアを得ることが可能である。
本発明の毛髪処理剤のpHは、酸、アルカリおよびpH調整剤を適宜用いて、上記範囲に調整される。好ましくは、塩酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、リン酸、炭酸等の酸、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよび2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアミノアルコール、アルギニン等の塩基性アミノ酸、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム等の中性塩、水酸化ナトリウムならびに水酸化カリウム等を1種または適宜組み合わせて使用し、上記範囲に調整する。
【0032】
4.モル濃度の比[(ii)/(i)]
本発明の毛髪処理剤に含有される成分(I)のモル濃度(i)と成分(II)のモル濃度(ii)との比[(ii)/(i)]は、好ましくは0.004〜1.0である。
【0033】
また、成分(I)のモル濃度(i)と成分(II)のモル濃度(ii)との比[(ii)/(i)]は、上記pHと成分(I)のモル濃度(i)および成分(II)のモル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]との組み合わせと以下の関係であることが好適である。
【0034】
(A)毛髪処理剤のpHが7.0以上8.0未満である場合
(a−1)(i)+(ii)が1.0〜2.4mol/lである場合、(ii)/(i)は0.004〜0.667が好ましい。
(a−2)(i)+(ii)が1.3〜2.4mol/lである場合、(ii)/(i)は0.004〜0.444が好ましい。
(a−3)(i)+(ii)が1.6〜2.0mol/lである場合、(ii)/(i)は0.005〜0.333が好ましい。
【0035】
(B)毛髪処理剤のpHが8.0以上8.5未満である場合
(b−1)(i)+(ii)が0.2〜2.4mol/lである場合、(ii)/(i)は0.004〜1.000が好ましい。
(b−2)(i)+(ii)が0.6〜2.0mol/lである場合、(ii)/(i)は0.005〜1.000が好ましい。
(b−3)(i)+(ii)が1.3〜1.6mol/lである場合、(ii)/(i)は0.006〜0.444が好ましい。
【0036】
(C)毛髪処理剤のpHが8.5以上9.3未満である場合
(c−1)(i)+(ii)が0.2〜2.0mol/lである場合、(ii)/(i)は0.005〜1.000が好ましい。
(c−2)(i)+(ii)が0.9〜1.6mol/lである場合、(ii)/(i)は0.006〜0.800が好ましい。
(c−3)(i)+(ii)が1.0〜1.3mol/lである場合、(ii)/(i)は0.008〜0.667が好ましい。
【0037】
(D)毛髪処理剤のpHが9.3以上9.6未満である場合
(d−1)(i)+(ii)が0.2〜1.6mol/lである場合、(ii)/(i)は0.006〜1.000が好ましい。
(d−2)(i)+(ii)が0.4〜1.3mol/lである場合、(ii)/(i)は0.008〜1.000が好ましい。
(d−3)(i)+(ii)が0.6〜1.0mol/lである場合、(ii)/(i)は0.010〜1.000が好ましい。
【0038】
(E)毛髪処理剤のpHが9.6以上10.0以下である場合
(e−1)(i)+(ii)が0.2〜1.3mol/lである場合、(ii)/(i)は0.008〜1.000が好ましい。
(e−2)(i)+(ii)が0.2〜1.0mol/lである場合、(ii)/(i)は0.010〜1.000が好ましい。
(e−3)(i)+(ii)が0.4〜0.6mol/lである場合、(ii)/(i)は0.017〜1.000が好ましい。
【0039】
成分(I)と成分(II)とのモル濃度比が上記範囲であると、システアミン類を単独で使用した場合に比べ、ストレートヘアデザイン効果を著しく向上させることができる。このストレートヘアデザイン効果は、毛髪に本発明の毛髪処理剤塗布後、ヘアアイロン処理をすることにより、より顕著となる。また、成分(I)と成分(II)とのモル濃度比が上記範囲であると、毛髪に与える損傷が小さいシステアミン類の配合比率が高いため、毛髪の損傷も最小限に抑制することが可能であり、チオグリコール酸類を単独で使用した場合よりも、はるかに毛髪の損傷を抑えることができる。
【0040】
5.その他の成分
本発明の毛髪処理剤は、上記成分の他に、その他の還元剤、添加剤および溶剤を含んでいてもよい。
【0041】
その他の還元剤としては、たとえば、システインおよびその塩類、アセチルシステイン、チオ乳酸、チオグリセリン、ブチロラクトンチオール、亜硫酸およびその塩類などが挙げられる。
【0042】
添加剤としては、たとえばコラーゲンやケラチンなどの加水分解物およびその誘導体、アミノ酸、ピロリドンカルボン酸誘導体、セラミドおよびその類似物質、植物抽出液などの毛髪保護剤;
カチオン化セルロース、カチオン化グァガム、カチオン化ポリマー、カチオン化樹脂、天然水溶性高分子類などのコンディショニング剤;
炭酸アルキレン、パラフィン、流動パラフィン、ミツロウ、スクワラン、ホホバ油、オリーブ油、エステル油、トリグリセリド、ワセリン、ラノリンなどの油剤;
グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトールなどの保湿剤;
カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤などの界面活性剤;
ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコンオイルなどのシリコン誘導体;
ペンテト酸5ナトリウム、エデト酸四ナトリウム四水塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩などの金属封鎖剤;
カルボキシエチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、エチレン/アクリル酸共重合体、オイルゲル化剤およびオイル増粘剤などの増粘剤;
アスコルビン酸、エリソルビン酸、エデト酸塩、エチドロン酸塩、フェナセチン、サリチル酸などの安定化剤;
パラベン、安息香酸ナトリウムなどの防腐剤;
サトウキビエキス、チャエキス等植物抽出液、カテキン、タンニン、シクロデキストリン、酵素などの消臭剤;
養毛剤、紫外線吸収剤、色素、パール剤、香料などが挙げられる。
【0043】
上記カチオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム(5E.O.)、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム(2E.O.)、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩;脂肪酸アミドアミン塩;アルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩;ベンザルコニウム塩;ベンゼトニウム塩;ピリジウム塩;イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
【0044】
上記アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのPOEアルキル/アルキルアリルエーテル硫酸塩;スルホコハク酸塩;N−アシルスルホン酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;N−アシルアミノ酸塩;POEアルキルエーテルリン酸およびその塩などが挙げられる。
【0045】
上記両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのベタイン型;2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウムなどのイミダゾリン型;アミノ酸型などが挙げられる。
【0046】
上記非イオン界面活性剤としては、POEアルキルエーテル類;POEポリオキシプロピレンアルキルエーテル類;多価アルコール脂肪酸エステル類;グリセリン脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;セスキオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル類;POEグリセリン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POEソルビット脂肪酸エステル類;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;アルキルアルカノールアミド類;POE硬化ヒマシ油;ピログルタミン酸イソステアリン酸POE硬化ヒマシ油;POEエチレンラノリン;POEコレステロール;POEフィトステロール;POEコレスタノール;POEフィトスタノールなどが挙げられる。
【0047】
溶剤としては、通常、水が用いられ、イオン交換水、蒸留水、精製水などの精製工程を経たものが好ましい。
なお、本発明の毛髪処理剤と併用される第2剤およびその他の補助剤については、特に制限はなく、通常パーマ処理に用いられるものをそのまま適用することができる。第2剤は、通常たとえば臭素酸塩、過酸化水素水などの酸化剤を含有する。
【0048】
6.製造方法
本発明の毛髪処理剤は、上述した成分を、公知の方法で適宜、攪拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散(乳化)等することによって製造できる。
【0049】
7.使用方法
本発明の毛髪処理剤は、ストレートヘアをデザインするための毛髪変形処理における毛髪のシスチン結合を切断する工程に用いられ、通常、2剤式毛髪変形処理用剤の第1剤として用いられる。
【0050】
本発明の毛髪処理剤を用いてストレートヘアをデザインする場合、従来の毛髪変形処理方法を制限なく用いることができる。たとえば毛髪に毛髪処理剤を塗布した後、そのまま放置することによりストレートヘアをデザインしてもよいが、放置後毛髪をヘアアイロン処理することによりストレートヘアをデザインすることが好ましい。
【0051】
ヘアアイロン処理をする場合、本発明の毛髪処理剤の使用方法は、本発明の毛髪処理剤を該毛髪に塗布する工程と、該毛髪処理剤を塗布した毛髪を、熱を与えながら延伸処理する工程とを含む。
【0052】
本発明の毛髪処理剤の使用方法は、その他の工程を含んでいてもよい。
たとえば、前記塗布工程と延伸処理工程の間には、該毛髪処理剤を塗布した毛髪を放置する工程、毛髪の水洗工程および毛髪の乾燥工程等の工程を含んでいてもよい。
【0053】
また前記延伸処理工程後に、毛髪を通常の第2剤処理する工程、該第2剤を塗布した毛髪を放置する工程、毛髪の水洗工程および毛髪の乾燥工程およびその他の任意の工程等を含んでいてもよい。
【0054】
上記延伸処理工程は、ヘアアイロン処理といわれている工程であり、通常、ヘアアイロン、コテなどを用いて行われる。毛髪に熱を与える際の温度としては、ヘアアイロン等の毛髪に熱を与える機器の温度が、好ましくは80〜200℃、より好ましくは80〜180℃である。
【0055】
上記放置工程は、通常15〜40℃で、通常1〜30分、好ましくは5〜15分で放置する。ただし、放置時間は、毛髪の性質により異なる。
本発明の毛髪処理剤を、毛髪に塗布してヘアアイロン処理をすると、極めて優れたストレートヘアをデザイン可能である。成分(I)と成分(II)とを本発明の範囲内で併用することで、システアミン類のみを含む毛髪処理剤を毛髪に塗布し、ヘアアイロン処理した場合に較べ、ストレートヘアデザイン効果が各段に向上する。また、チオグリコール酸類を単独で使用した場合よりも、はるかに毛髪の損傷を抑えることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例に用いた第1剤100重量%中の成分は、以下の通りである。
【0057】
【表1】

実施例に用いた第2剤100重量%中の成分は、以下の通りである。
【0058】
【表2】

[実施例1]
表1〜3に記載の配合割合の各成分を秤量後、室温で混合することにより第1剤および第2剤を調製した。第1剤および第2剤を用いて、毛髪にストレートデザインを形成するための毛髪変形処理を以下のように行った。
【0059】
約20cmの縮毛が強く化学処理履歴のない同一人物の毛を、約1gになるようにそろえて毛束を作った。その毛束に対して第1剤を1g塗布して15分放置後、毛束を十分水洗し、ドライヤーで8割程度乾燥させた。次いで、160℃に設定したヘアアイロン(製品名B2y (株)TOM社製)で毛束を挟み、ヘアアイロンを根本から毛先に向け5秒間で移動させることにより毛束を延伸するヘアアイロン処理を3回行うことにより毛髪にストレートデザインを形成した。その後、得られた毛束に、直ちに第2剤を1g塗布して15分放置した後、十分水洗し、ドライヤーで十分乾燥を行い、施術後の毛髪とした。
【0060】
[実施例2〜168、比較例1〜132]
還元剤の配合およびpHを表3〜12に示す内容とした以外は、実施例1と同様にして、第1剤を調製し、毛髪変形処理を行ない、施術後の毛髪を得た。
【0061】
以上の実施例において得られた施術後の毛髪について、以下の項目について評価し、以下の基準で判断した。
【0062】
<くせの伸び>
施術後の毛髪のくせの伸びを以下の基準で評価した。
◎◎:非常にしっかりとくせが伸びている
◎:しっかりとくせが伸びている
○:くせが伸びている
△:少ししかくせが伸びていない
×:くせが伸びていない
【0063】
<ストレート処理の持続性>
施術後の毛髪を30回シャンプーして水洗することにより洗浄し、風乾して得られた毛髪のくせの伸びを、施術後一度も洗浄していない施術後の毛髪のくせの伸びと比較した。
◎◎:くせの伸びが、施術後未洗浄の毛髪とまったく変化がない
◎:くせの伸びが、施術後未洗浄の毛髪とほとんど変化がない
○:くせの伸びが、施術後未洗浄の毛髪に比較してわずかに元に戻っている
△:くせの伸びが、施術後未洗浄の毛髪に比較して元に戻っている
×:くせの伸びが、施術後未洗浄の毛髪に比較してかなり元に戻っている
【0064】
<毛髪のおさまり>
施術後の毛髪のおさまりを以下の基準で判断した。
◎◎:非常におさまりが良い
◎:おさまりが良い
○:ややおさまりが良い
△:おさまりがわるい
×:かなりおさまりが悪い
【0065】
<毛髪の手触り>
施術後の毛髪の手触り(滑らかさ)を以下の基準で評価した。
◎◎:手触りが非常に良い
◎:手触りが良い
○:手触りは普通である
△:手触りが悪い
×:ごわつき、ちりつきがあり、手触りが非常に悪い
【0066】
<毛髪の艶>
施術後の毛髪の艶を以下の基準で評価した。
◎◎:非常に艶がある
◎:艶がある
○:やや艶がある
△:艶がない
×:艶が非常にない
【0067】
<毛髪のやわらかさ>
施術後の毛髪のやわらかさを以下の基準で評価した。
◎◎:非常に柔らかい
◎:柔らかい
○:やや柔らかい
△:硬さがある
×:非常に硬さがある
【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
【表7】

【0073】
【表8】

【0074】
【表9】

【0075】
【表10】

【0076】
【表11】

【0077】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオグリコール酸およびその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる成分(II)を還元剤の総モル濃度の1/2以下の量で含有することを特徴とする毛髪処理剤。
【請求項2】
システアミンおよびその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる成分(I)と、チオグリコール酸およびその塩類から選ばれる少なくとも1種からなる成分(II)とを含有する毛髪処理剤であって、
pHが7.0〜10.0であり、
前記成分(I)のモル濃度(i)と前記成分(II)のモル濃度(ii)との比[(ii)/(i)]が、0.004〜1.0であり、
前記モル濃度(ii)が0.01〜0.40mol/lであり、
前記モル濃度(i)および前記モル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]が、
(A)pHが7.0以上8.0未満の場合、1.0〜2.4mol/lであり、
(B)pHが8.0以上8.5未満の場合、0.2〜2.4mol/lであり、
(C)pHが8.5以上9.3未満の場合、0.2〜2.0mol/lであり、
(D)pHが9.3以上9.6未満の場合、0.2〜1.6mol/lであり、
(E)pHが9.6以上10.0以下の場合、0.2〜1.3mol/lであること
を特徴とする請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
前記モル濃度(i)および前記モル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]が、
(A)pHが7.0以上8.0未満の場合、1.3〜2.4mol/lであり、
(B)pHが8.0以上8.5未満の場合、0.6〜2.0mol/lであり、
(C)pHが8.5以上9.3未満の場合、0.9〜1.6mol/lであり、
(D)pHが9.3以上9.6未満の場合、0.4〜1.3mol/lであり、
(E)pHが9.6以上10.0以下の場合、0.2〜1.0mol/lであること
を特徴とする請求項1または2に記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
pHが8.0以上9.6未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪処理剤。
【請求項5】
前記モル濃度(i)および前記モル濃度(ii)の合計[(i)+(ii)]が、
(C)pHが8.5以上9.3未満の場合、1.0〜1.3mol/lであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪処理剤。
【請求項6】
毛髪に熱を与えながら延伸処理する操作を含むストレートヘア形成のための毛髪変形処理に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪処理剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の毛髪処理剤を毛髪に塗布する工程と、
該毛髪処理剤を塗布した毛髪に熱を与えながら延伸処理する工程と
を含むことを特徴とする毛髪変形処理方法。
【請求項8】
毛髪をストレートにデザインするために用いられる請求項7に記載の毛髪変形処理方法。

【公開番号】特開2011−98940(P2011−98940A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255968(P2009−255968)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(595082283)株式会社アリミノ (38)
【Fターム(参考)】