説明

気密封止光学デバイス

【課題】気密封止パッケージ内のフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田の酸化を抑制する。
【解決手段】気密封止が必要な導波路型波長変換素子1と金属製ホルダ2とサーモモジュール3を気密封止パッケージ4に気密に封止する。サーモモジュール3の放熱面3bを気密封止パッケージ4の内面領域4bにフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田5で接合する。気密封止パッケージ4内の空間に酸素フリーの不活性ガス7を充填する。
【効果】気密に封止した状態でも、フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田の酸化を生じない。そして、気密に封止するため、導波路型波長変換素子1などを埃や湿気などから守ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密封止光学デバイスに関し、さらに詳しくは、気密封止パッケージ内のフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田の酸化を抑制することが出来る気密封止光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光導波路部材などが気密封止パッケージ内にフラックスレス半田で固定されると共に、気密封止パッケージ内の揮発成分を除去するために、1ppm以上の酸素を含有する不活性ガスが気密封止パッケージ内の空間に充填されたレーザモジュールが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−233885号公報(段落[0051]〜[0054])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学部品と、その光学部品を保持する金属製ホルダと、その金属製ホルダに接合された吸熱面から吸熱しその吸熱面と反対側に位置する放熱面から放熱するサーモモジュールと、光学部品及び金属製ホルダ及びサーモモジュールを気密に封止し且つフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田でサーモモジュールの放熱面が接合された内面領域を有する気密封止パッケージと、その気密封止パッケージ内の空間に充填された微量の酸素を含有する不活性ガスとを具備した光学デバイスにおいて、長期試験の結果、フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田が酸化し、品質低下を起こす場合があることが判った。
他方、光学部品及び金属製ホルダ及びサーモモジュールを気密に封止しないで、長期試験を行った結果、フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田の酸化を生じないことが判った。
しかし、光学部品が、例えば導波路型波長変換素子のように気密封止が必要な光学部品の場合、気密に封止しない訳にいかず、フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田の酸化が問題となっていた。
そこで、本発明の目的は、気密封止パッケージ内のフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田の酸化を抑制することが出来る気密封止光学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、気密封止が必要な光学部品(1)と、前記光学部品(1)を保持する金属製ホルダ(2)と、前記金属製ホルダ(2)に接合された吸熱面(3a)から吸熱し前記吸熱面(3a)と反対側に位置する放熱面(3b)から放熱するサーモモジュール(3)と、前記光学部品(1)及び前記金属製ホルダ(2)及び前記サーモモジュール(3)を気密に封止し且つフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田(5)で前記サーモモジュール(3)の放熱面(3b)が接合された内面領域(4b)を有する気密封止パッケージ(4)と、前記気密封止パッケージ(4)内の空間に充填された酸素フリーの不活性ガス(7)とを具備したことを特徴とする気密封止光学デバイス(100)を提供する。
上記第1の観点による気密封止光学デバイスでは、長期試験の結果、光学部品及び金属製ホルダ及びサーモモジュールを気密に封止した状態で、フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田の酸化を生じないことが判った。そして、光学部品及び金属製ホルダ及びサーモモジュールを気密に封止するため、光学部品などを埃や湿気などから守ることが出来た。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による気密封止光学デバイスにおいて、前記金属製ホルダ(2)と前記サーモモジュール(3)の吸熱面(3a)とを、前記フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田(5)よりも融点の低いフラックスレス半田(6)で接合したことを特徴とする気密封止光学デバイス(100)を提供する。
上記第2の観点による気密封止光学デバイス(100)では、サーモモジュール(3)の放熱面(3b)を気密封止パッケージ(4)の内面領域(4b)に半田付けした後、サーモモジュール(3)の吸熱面(3a)に金属製ホルダ(2)を半田付けする際、先に半田付けしたフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田(5)が溶けてしまうことを回避できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の気密封止光学デバイスによれば、長期試験の結果、気密に封止した状態で、フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田の酸化を生じないことが判った。そして、光学部品及び金属製ホルダ及びサーモモジュールを気密に封止するため、光学部品などを埃や湿気などから守ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1に係る気密封止光学デバイスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る気密封止光学デバイス100を示す一部破断側面図である。
この気密封止光学デバイス100は、気密封止が必要な導波路型波長変換素子1と、波長変換素子1を保持する金属製ホルダ2と、金属製ホルダ2に接合された吸熱面3aから吸熱し吸熱面3aと反対側に位置する放熱面3bから放熱するサーモモジュール3と、波長変換素子1及び金属製ホルダ2及びサーモモジュール3を気密に封止する気密封止パッケージ4と、サーモモジュール3の放熱面3bを気密封止パッケージ4の内面領域4bに接合するフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田5と、サーモモジュール3の吸熱面3aに金属製ホルダ2を接合するフラックスレスSn(42)−Bi(58)半田6と、気密封止パッケージ4内の空間に充填された酸素フリーの不活性ガス7とを具備している。
【0011】
導波路型波長変換素子1は、例えば周期的分極反転構造を形成したタンタル酸リチウム結晶である。
金属製ホルダ2は、例えばコバール製である。
サーモモジュール3の外面は例えばアルミナ製であり、吸熱面3aと放熱面3bには金メッキが施されている。
【0012】
気密封止パッケージ4は、例えばコバール製であり、環境温度の変化による部品の結露などを防止するため窒素雰囲気中でシーム溶接あるいはOリングあるいは半田付けなどの手法を用いて気密封止されている。リーク量は、例えば10-10Pa・m3/s以下である。
【0013】
フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田5の融点は198℃であり、サーモモジュール3の内部の半田より低融点であるため、フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田5で半田付けする際、サーモモジュール3の内部の半田が溶けてしまうことを回避できる。
【0014】
フラックスレスSn(42)−Bi(58)半田6の融点は139℃であり、フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田5より低融点であるため、サーモモジュール3の放熱面3bを気密封止パッケージ4の内面領域4bにフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田5で半田付けした後、サーモモジュール3の吸熱面3aに金属製ホルダ2をフラックスレスSn(42)−Bi(58)半田6で半田付けする際、先に半田付けしたフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田(5)が溶けてしまうことを回避できる。
【0015】
フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田5およびフラックスレスSn(42)−Bi(58)半田6を用いるため、フラックス成分の飛散による部品の汚染を防止できる。
【0016】
酸素フリーの不活性ガス7は、例えば酸素含有濃度が0.05vol・ppm以下のヘリウムガスである。ヘリウムガスは、トレーサガスとして、高精度なファインリーク測定とグロスリーク測定による気密性の確認に適している。
【0017】
実施例1に係る気密封止光学デバイス100によれば、気密に封止した状態でも、フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田5の酸化を生じない。そして、導波路型波長変換素子1及び金属製ホルダ2及びサーモモジュール3を気密に封止するため、導波路型波長変換素子1などを埃や湿気などから守ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の気密封止光学デバイスは、例えば光通信モジュールなどに利用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 導波路型波長変換素子
2 金属製ホルダ
3 サーモモジュール
4 気密封止パッケージ
5 フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田
6 フラックスレスSn(42)−Bi(58)半田
7 酸素フリーの不活性ガス
100 気密封止光学デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密封止が必要な光学部品(1)と、前記光学部品(1)を保持する金属製ホルダ(2)と、前記金属製ホルダ(2)に接合された吸熱面(3a)から吸熱し前記吸熱面(3a)と反対側に位置する放熱面(3b)から放熱するサーモモジュール(3)と、前記光学部品(1)及び前記金属製ホルダ(2)及び前記サーモモジュール(3)を気密に封止し且つフラックスレスSn(91)−Zn(9)半田(5)で前記サーモモジュール(3)の放熱面(3b)が接合された内面領域(4b)を有する気密封止パッケージ(4)と、前記気密封止パッケージ(4)内の空間に充填された酸素フリーの不活性ガス(7)とを具備したことを特徴とする気密封止光学デバイス(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の気密封止光学デバイス(100)において、前記金属製ホルダ(2)と前記サーモモジュール(3)の吸熱面(3a)とを、前記フラックスレスSn(91)−Zn(9)半田(5)よりも融点の低いフラックスレス半田(6)で接合したことを特徴とする気密封止光学デバイス(100)。

【図1】
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【公開番号】特開2012−243964(P2012−243964A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112940(P2011−112940)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】