説明

気泡判別検査装置および気泡判別検査方法

【解決課題】検査物品の内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査し、歩留りや生産性の低下を防止することのできる気泡判別検査装置および気泡判別検査方法を提供する。
【解決手段】気泡判別検査装置は、気泡判別検査機構100を備える。気泡判別検査機構100は、異物65を浮遊させる浮遊手段10と、検査物品60を連続的に撮像する撮像部21と、画像検査部23と、を備える。画像検査部23は、検査画像形成手段25と、検査画像において特定される検査領域が中抜け形状であるか否かに基づき、検査領域を気泡64に対応する気泡領域と異物等候補領域とに判別する第1の判別手段261と、検査領域の傾き度、扁平度、不透明度に基づき、異物等候補領域を異物等67に対応する異物等領域と気泡64に対応する気泡領域とに判別する第2の判別手段262と、判断手段28と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査するための気泡判別検査装置および気泡判別検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、内容液中の異物を、容器に付着した汚れ・傷と区別して検出する異物検査装置および異物検査方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載される従来技術は、検査物品を自転させたのちに自転停止させ、自転停止された検査物品を撮像して処理画像を形成し、処理画像から所定の合成マスター画像を形成するとともに、検出用画像を抽出し、合成マスター画像の異物被疑マスター領域と検出用画像の異物被疑領域とを比較することにより、内容液中の異物の有無を判定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−95107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、検査物品の内容液中には、検査前ないし検査中に発生した気泡が含まれていることがある。このような気泡は通常、内容液中の異物や容器に付着した汚れ・傷と比べ、検査物品の品質に与える悪影響は小さいと考えられる。
しかしながら、上記の検査物品を撮像して検査する場合、撮像により得られる画像中に気泡が映り入り、この気泡が、内容液中の異物や容器に付着した汚れ・傷として誤検知される可能性がある。このため、良品とすべき検査物品が不良品とされ、歩留りや生産性が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的とするところは、検査物品の内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査し、歩留りや生産性が低下するのを防止することのできる気泡判別検査装置および気泡判別検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の気泡判別検査装置は、内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査するための気泡判別検査装置であって、該検査物品を一定の搬送経路にしたがって搬送する搬送手段と、該搬送経路に設けられる所定の気泡判別検査機構と、を備え、該気泡判別検査機構が、搬送される該検査物品の該内容液を該容器内で流動させて、該内容液中に混在し得る異物を浮遊させる浮遊手段と、該検査物品を連続的に撮像する撮像部と、該撮像部による撮像を元に、複数の検査画像を形成する検査画像形成手段と、該検査画像において特定される検査領域が、中抜け形状であるか否かに基づき、該検査領域を、気泡に対応する気泡領域と、所定の異物等候補領域と、に判別する第1の判別手段と、該検査領域の傾き度、扁平度、不透明度に基づき、該異物等候補領域を、異物等に対応する異物等領域と、気泡に対応する気泡領域と、に判別する第2の判別手段と、該第1の判別手段および該第2の判別手段による判別結果に基づき、該検査物品が良品であるか不良品であるかを判断する判断手段と、を有するように構成される。
【0008】
上記気泡判別検査装置は好ましくは、該検査画像における該異物等領域の個数に基づき、不良品候補画像を抽出するとともに、該不良品候補画像から、該異物等領域のみを含有する異物等領域含有画像と、該気泡領域および該異物等領域を含有する気泡・異物等領域含有画像と、を抽出する画像抽出手段を備え、該判断手段が、該異物等領域含有画像の枚数と、該気泡・異物等領域含有画像の枚数と、に基づき、該検査物品が良品であるか不良品であるかを判断するように構成される。
【0009】
上記気泡判別検査装置はさらに好ましくは、該気泡判別検査機構をそれぞれ有する複数の検査ステーションが、該搬送経路に沿って配設され、該検査ステーションにおける判断結果を総合することで、該検査物品が良品であるか不良品であるかを総合判断するように構成される。
【0010】
上記気泡判別検査装置はさらに好ましくは、該検査ステーションにおける判断結果に応じて、該搬送手段から搬出される該検査物品を、再び該搬送手段に搬入することのできるリターン手段を備えて構成される。
【0011】
また、本発明の気泡判別検査方法は、内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査するための気泡判別検査方法であって、該検査物品を撮像して、検査画像を形成する工程と、該検査画像において検査領域を特定する工程と、該検査領域が中抜け形状であるか否かに基づき、該検査領域を、気泡に対応する気泡領域と、所定の異物等候補領域と、に判別する工程と、該検査領域の傾き度、扁平度、不透明度に基づき、該異物等候補領域を、異物等に対応する異物等領域と、気泡に対応する気泡領域と、に判別する工程と、を含んで構成される。
【0012】
また、本発明の気泡判別検査方法は、内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査するための気泡判別検査方法であって、該検査物品を撮像して、検査画像を形成する工程と、該検査画像において検査領域を特定する工程と、該検査領域の傾き度、扁平度、不透明度に基づき、該検査領域を、気泡に対応する気泡領域と、異物等に対応する異物等領域と、に判別する工程と、を含んで構成される。
【0013】
上記気泡判別検査方法は好ましくは、該検査物品の該内容液を該容器内で流動させて、該内容液中に混在し得る異物を浮遊させる工程を含み、該異物が浮遊した状態を撮像するように構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検査物品の内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査し、歩留りや生産性が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る気泡判別検査機構の構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る検査手順を示すフローチャートである。
【図3】実施形態に係る検査画像を示す図である。
【図4】実施形態に係る中抜け形状に基づく判別処理状況を示す図である。
【図5】実施形態に係る中抜け形状に基づく判別処理例を示す図である。
【図6】実施形態に係る傾き度に基づく判別処理状況を示す図である。
【図7】実施形態に係る傾き度に基づく判別処理例を示す図である。
【図8】実施形態に係る扁平度に基づく判別処理状況を示す図である。
【図9】実施形態に係る扁平度に基づく判別処理例を示す図である。
【図10】実施形態に係る不透明度に基づく判別処理状況を示す図である。
【図11】実施形態に係る不透明度に基づく判別処理例を示す図である。
【図12】実施形態に係る判別処理状況を示す図である。
【図13】実施形態に係る判断処理状況を示す図である。
【図14】実施形態に係る判断処理状況を示す図である。
【図15】実施形態に係る気泡判別検査装置の全体構成を示す概略平面図である。
【図16】実施形態に係る気泡判別検査装置による検査状況を示す一部拡大正面図である。
【図17】実施形態に係る気泡判別検査装置による判断処理状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図1を参照して説明する。図1は実施形態に係る気泡判別検査機構100の構成を示す図である。
【0017】
気泡判別検査機構100は、図1に示すように、撮像部21と、照明部22と、画像検査部23と、を主に備える。気泡判別検査機構100により、検査物品60が検査される。
【0018】
検査物品60は、図1に示すように、円筒状の胴体部に先端部が窄まって連成される公知形状のアンプル容器62に、薬剤等の内容液63が充填されたものである。実施形態のアンプル容器62および内容液63は何れも、無色または着色された透明または半透明をなす。気泡判別検査機構100は、検査物品60における内容液63中の気泡64と、これ以外の異物等67と、を検査対象物とし、これらを判別して、検査物品60が良品であるか不良品であるかを検査する。「異物等」(67)とは、検査物品60の不良要因となるもので、内容液63中の気泡64を除く異物65の他に、アンプル容器62に付着した汚れ・傷66を含むものとする。「異物」(65)とは、内容液63の充填過程等で内容液63中に混入し得る、例えば繊維・ガラス・プラスチック・木・紙片、虫、塵埃、浮きゴミ等である。
【0019】
撮像部21は、例えばCCDカメラやCMOSカメラからなり、図1に示すように、検査物品60の一側面を、適宜の照射光のもとで外部から撮像する。検査物品60を挟んで撮像部21の反対側には、検査物品60および撮像部21に向け可視光22aを照射する照明部22が配設される。照明部22としては、例えば白色LED光源に拡散板、偏光フィルタ等を組み合わせたものが用いられる。撮像部21は、検査物品60を透過した可視光22aを受光し、検査物品60を透視撮像する。撮像部21により、検査物品60の一回の検査あたり通常、複数回の撮像がおこなわれる。
【0020】
画像検査部23は、図1に示すように、撮像部21に接続されており、検査画像形成手段25と、判別手段26と、画像抽出手段27と、判断手段28と、を主に備える。判別手段26は、第1の判別手段261と第2の判別手段262を備えて構成される。検査画像形成手段25は、撮像部21による検査物品60の撮像を元に、所定の検査画像を形成する。判別手段26、画像抽出手段27、判断手段28は、この検査画像を用いて、所定の処理をおこない、これにより、検査物品60が良品であるか不良品であるかが判断されている。
【0021】
なお、図示は省略するが、画像検査部23は、メモリ等の記憶手段、CPU等の演算処理手段や制御手段、タッチパネル・キーパッド・キーボード・マウス等の入力手段、モニタ・ディスプレイ・スピーカ等の出力手段、通信ネットワークを介して情報を送受信する送受信手段、各種インターフェース、電源ポート、所定のプログラムその他の必要なハードウェアおよびソフトウェアを適宜備えている。
【0022】
気泡判別検査機構100は好ましくは、図1に示すように、浮遊手段10を備える。浮遊手段10は、検査物品60を自転、回転、揺動、振動等させる外力を、アンプル容器62に対して付与する。浮遊手段10により、内容液63がアンプル容器62内で流動され、内容液63中に混在し得る異物65が浮遊される。異物65が浮遊した状態を撮像部21で撮像することにより、内容液63中の異物65を検出し易くなる。
【0023】
検査物品60は好ましくは、図1に示すように、搬送手段3によって搬送自在に構成される。搬送手段3は、検査物品60を一定の搬送経路にしたがって連続的または間欠的に搬送し、この搬送経路の適宜位置に気泡判別検査機構100が設けられる。これにより、大量の検査物品60を搬送しながら、次々と検査物品60の検査をおこなうことができる。気泡判別検査機構100は、搬送手段3による検査物品60の搬送に追従可能に構成されていてもよい。
【0024】
次に、上記構成の気泡判別検査機構100による検査物品60の検査手順について、図2を参照して説明する。図2は実施形態に係る検査手順を示すフローチャートである。
【0025】
まず、図2に示すように、検査画像が形成される(ステップS1)。撮像部21が検査物品60を撮像し、撮像により得られた画像情報が画像検査部23に入力される。画像情報はデジタルデータ化され、検査画像形成手段25によって適宜の画像処理が施されて検査画像が形成される。検査画像は好ましくは、設定した二値化レベルにて二値化処理を施して得られるモノクロ(白黒)の二値画像である。各画素の明暗に応じて多階調で表現されたグレースケールの濃淡画像やカラーの多値画像を検査画像として用いてもよい。二値画像を採用する場合には、データ量を小さくして検査速度を高速にできる。検査画像の形成に際しては、必要に応じて微分処理等の他の画像処理が施される。
【0026】
図3には検査画像の一例を示している。検査物品60の一回の検査あたり、このような検査画像が複数枚(実施形態では10枚)形成される。検査物品60における気泡64や異物等67(図1参照)の検査対象物は、図3に示す検査領域80を構成している。実施形態の検査領域80は、検査画像中で黒色画素として現れる。画像検査部23は、例えば検査エリア72内で黒色画素が一定画素数以上連続して分布する領域を、一の検査領域80として認識するようになっている。
【0027】
図2に示すように、検査画像が形成されると、検査画像ごとに予備検査がおこなわれ(ステップS2)、検査すべき検査領域80が特定される(ステップS3)。予備検査では、画像検査部23により、検査画像中の検査領域80のそれぞれについて面積がチェックされる。検査領域80の面積が極端に小さい場合、このような検査領域80は、検査物品60の品質に与える悪影響がきわめて小さいものであるか、ノイズ等である可能性が高いため、検査すべき検査領域80から除外する。一方、検査領域80の面積が極端に大きい場合、このような検査領域80が現れる検査物品60は明らかな不良品である可能性が高いため、当該検査物品60について以下の処理はおこなわれず、不良品として判断される。各検査領域80の面積は、例えば検査領域80の画素数と、予め設定された基準画素数と、の比較に基づいてチェックされる。
また、予備検査では、検査画像中の検査領域80の個数がチェックされる。一の検査画像に含まれる検査領域80の個数が極端に多い場合、同様に検査物品60が明らかな不良品である可能性が高いため、当該検査物品60について以下の処理はおこなわれず、不良品として判断される。
【0028】
図2に示すように、検査すべき検査領域80が特定されると、この検査領域80に対して、所定の判別処理がおこなわれる(ステップS4〜S32)。判別処理は、判別手段26によりおこなわれ、第1の判別処理工程(S10〜S12)と、第2の判別処理工程(S20〜S26)と、を含む。判別処理は、検査画像の検査領域80ごとにおこなわれる。
判別処理に際しては、検査画像中で特定された検査領域80の個数(N個)がチェックされる(ステップS4)。検査領域80の個数がゼロ(N=0)であれば、以下の処理はおこなわれず、当該検査画像は良品候補画像としてカウントアップされる(ステップS41参照)。
【0029】
図2に示すように、検査領域80の個数がチェックされると、検査する検査領域80がカウントアップされ(ステップS5)、この検査領域80に対して、第1の判別処理がおこなわれる(ステップS10〜S12)。第1の判別処理は、第1の判別手段261によりおこなわれている。第1の判別処理では、検査領域80が、気泡領域と異物等候補領域に判別される。気泡領域は、検査物品60の気泡64に対応する。異物等候補領域は、検査物品60の異物等67に対応する可能性のあるものである。
【0030】
図2に示すように、第1の判別処理では、検査領域80が中抜け形状に該当するか否かが確認される(ステップS10)。検査領域80が中抜け形状に該当すれば、この検査領域80は気泡領域と判別される(ステップS11)。検査領域80が中抜け形状に該当しなければ、この検査領域80は異物等候補領域と判別される(ステップS12)。検査領域80が気泡領域と判別された場合には、気泡領域フラグが付与される(ステップS30)。
【0031】
「中抜け形状」とは、細線または太線状の輪郭部と、輪郭部内の中抜け部とによって構成された、例えばリング状、ドーナツ状等の形状を言うものとする。内容液63中の気泡64は通常、中空の球状体である。そのため、検査画像中では、このような中抜け形状となって現れることが比較的多く、検査領域80が中抜け形状に該当する場合には、検査領域80は気泡領域である可能性が高いと考えられる。これに対して異物等67が、検査画像中で、中抜け形状となって現れることはきわめて稀である。第1の判別処理により、検査領域80が中抜け形状に該当することをもって、この検査領域80が気泡領域と判別される。
【0032】
検査領域80が中抜け形状に該当するか否かは、例えば図4に示すように、検査領域80の黒色画素82(輪郭部)が白色画素83(中抜け部)を完全に取り囲むように形成されているか否か、および取り囲まれた白色画素83(中抜け部)の画素数が、予め設定された基準画素数以上存在するか否かにより決定される。
例えば図5(a)に示す検査領域80は、中抜け形状に該当するとして、気泡領域と判別される。図5(b)〜図5(d)に示す検査領域80は、中抜け形状に該当しないとして、異物等候補領域と判別される。
【0033】
図2に示すように、異物等候補領域に対しては、第2の判別処理がおこなわれる(ステップS20〜S26)。第2の判別処理は、第2の判別手段262によりおこなわれている。第2の判別処理では、異物等候補領域が、異物等領域と気泡領域に判別される。異物等領域は、検査物品60の異物等67に対応する。気泡領域は、検査物品60の気泡64に対応する。
【0034】
図2に示すように、第2の判別処理では、まず異物等候補領域の傾き度が基準値内であるか否かが確認される(ステップS20)。異物等候補領域の傾き度が基準値内であれば、この異物等候補領域は異物等領域と判別される(ステップS21)。
【0035】
「傾き度」とは、異物等候補領域(検査領域80)が、水平または垂直に対してどれだけ斜めに傾いた形状であるかを言うものとする。異物等67は通常、繊維状や細長状、いびつ状のものが多く、検査画像中では、比較的大きく斜めに傾いた形状となって現れる可能性が高いと考えられる。これに対して内容液63中の気泡64は通常、中空の球状体であるため、検査画像中で、一定以上斜めに傾いた形状となって現れることはきわめて稀である。第2の判別処理により、異物等候補領域(検査領域80)の傾き度が所定の基準値内であることをもって、この異物等候補領域(検査領域80)が異物等領域と判別される。
【0036】
異物等候補領域(検査領域80)の傾き度は、例えば図6に示すように、主軸85の傾斜角度θ(0°≦θ≦90°)が、予め設定された所定範囲87内にあるか否かにより確認される。主軸85は、異物等候補領域(検査領域80)の長手方向に沿って形成される。主軸85としては、異物等候補領域(検査領域80)に外接する所定の仮想外接矩形86(後述)の長辺に平行し、かつ異物等候補領域(検査領域80)の重心を通る軸線を用いることができる。上記所定範囲87は、水平線Xおよび垂直線Yからそれぞれ所定角度を隔てて鋭角状に設けられる。
実施形態では上記所定範囲87が、10°〜80°に設定されており、例えば図7(a)〜図7(b)に示す異物等候補領域(検査領域80)は、主軸85の傾斜角度θがこの範囲87内にあるため、異物等領域と判別される。図7(c)〜図7(f)に示す異物等候補領域(検査領域80)は、主軸85の傾斜角度θがこの範囲87内にないため、異物等領域と判別されない。
【0037】
図2に示すように、異物等候補領域の傾き度が基準値内でなければ、この異物等候補領域は異物等領域と判別されず、次の扁平度が基準値内であるか否かが確認される(ステップS22)。異物等候補領域の扁平度が基準値内であれば、この異物等候補領域は異物等領域と判別される(ステップS23)。
【0038】
「扁平度」とは、異物等候補領域(検査領域80)が、どれだけ扁平した形状であるかを言うものとする。異物等67は通常、繊維状や細長状、いびつ状のものが多く、検査画像中では、比較的大きく扁平した形状となって現れる可能性が高いと考えられる。これに対して内容液63中の気泡64は通常、中空の球状体であるため、検査画像中で、一定以上扁平した形状となって現れることはきわめて稀である。第2の判別処理により、異物等候補領域(検査領域80)の扁平度が所定の基準値内であることをもって、この異物等候補領域(検査領域80)が異物等領域と判別される。
【0039】
異物等候補領域(検査領域80)の扁平度は、例えば図8に示すように、異物等候補領域(検査領域80)に外接する仮想外接矩形86の短辺aと長辺bとの比率(a/b比率)が、予め設定された所定範囲内にあるか否かにより確認される。仮想外接矩形86は、異物等領域(検査領域80)に外接する矩形のうち最も長細形状をなすもので、a/b比率が最小となるように異物等候補領域(検査領域80)に外接して設けられる。
実施形態では上記所定範囲が、0〜0.7に設定されており、例えば図9(a)〜図9(c)に示す異物等候補領域(検査領域80)は、a/b比率がこの範囲内にあるため、異物等領域と判別される。図9(d)〜図9(f)に示す異物等候補領域(検査領域80)は、a/b比率がこの範囲内にないため、異物等領域と判別されない。
【0040】
図2に示すように、異物等候補領域の扁平度が基準値内でなければ、この異物等候補領域は異物等領域と判別されず、次の不透明度が基準値内であるか否かが確認される(ステップS24)。異物等候補領域(検査領域80)の不透明度が基準値内であれば、この異物等候補領域(検査領域80)は異物等領域と判別される(ステップS25)。異物等候補領域(検査領域80)の不透明度が基準値内でなければ、この異物等候補領域(検査領域80)は異物等領域と判別されず、気泡領域と判別される(ステップS26)。異物等候補領域(検査領域80)が気泡領域と判別された場合には、気泡領域フラグが付与される(ステップS30)。
【0041】
「不透明度」とは、異物等候補領域(検査領域80)が、主として重心付近においてどれだけ不透明な形状であるかを言うものとする。異物等67には凝集した塊状のものがあり、検査画像中では、重心付近が比較的不透明な形状となって現れることがある。これに対して内容液63中の気泡64は通常、中空の球状体であるため、検査画像中で、重心付近が一定以上不透明な形状となって現れることはきわめて稀である。第2の判別処理により、異物等候補領域(検査領域80)の不透明度が所定の基準値内であることをもって、この異物等候補領域(検査領域80)が異物等領域と判別される。また、異物等候補領域(検査領域80)の傾き度、扁平度、不透明度が何れも各基準値内でなければ、異物等候補領域(検査領域80)が異物等領域である可能性は非常に低くなるため、この異物等候補領域(検査領域80)は気泡領域と判別される。
【0042】
異物等候補領域(検査領域80)の不透明度は、例えば図10に示すように、重心を含む一定画素88の平均的な濃淡値(重心濃淡値)を算出し、この重心濃淡値と、内容液63に対応する適宜領域89の平均的な濃淡値(液中濃淡値)と、の差異である相対濃淡値が、所定範囲内にあるか否かにより確認される。画像検査部23は、検査画像における一定領域P(図3参照)の平均的な濃淡値を予め算出し、液中濃淡値として記憶している。
実施形態では、液中濃淡値が200と算出され、相対濃淡値の上記所定範囲が30以上と設定されており、例えば図11(a)に示す異物等候補領域(検査領域80)は、相対濃淡値がこの範囲内にあるため、異物等領域と判別される。図11(b)〜図11(c)に示す異物等候補領域(検査領域80)は、相対濃淡値がこの範囲内にないため、異物等領域と判別されず、気泡領域と判別される。
【0043】
このようにして、第2の判別処理により、異物等候補領域(検査領域80)が、異物等領域と気泡領域とに判別される。図2に示すように、異物等候補領域(検査領域80)が異物等領域と判別されると(ステップS21、S23、S25)、検査画像中の異物等領域の個数がカウントアップされる(ステップS31)。
なお、図12には、上記した第1の判別処理、第2の判別処理により、様々な形状の検査領域80を、気泡領域と異物等領域とに判別する一連の判別処理状況をまとめて示している。
【0044】
検査物品60の内容液63中に気泡64が含まれている場合、第1の判別処理により通常、大半の気泡領域を判別することができると考えられるが、さらに第2の判別処理により、残りの気泡領域を補完的に判別することができる。特に気泡64は、検査画像中で、中抜け形状の輪郭部を不完全化したような形状(例えば略C字形状や略三日月形状;図11(b)(c)等参照)となって現れる場合があるが、このような場合であっても、第2の判別処理を通じて、確実に気泡領域を判別することができる。
実施形態では、第2の判別処理において、検査領域80の傾き度、扁平度、不透明度の順番に処理をおこなっているが、この順番は適宜入れ替えられてもよい。また、第1の判別処理を省略し、第2の判別処理のみによって、検査領域80を気泡領域と異物等領域とに判別することもできる。但し、第1の判別処理を含む構成とすることで、非常に効率的に判別処理をおこなうことが可能となる。
【0045】
図2に示すように、検査領域80の判別処理が終了するたびに、終了した検査領域80の個数がチェックされる(ステップS32)。そして、検査画像中のN個全ての検査領域80について判別処理が終了するまで、ステップS5に戻って、次の検査領域80に対して以上の工程が繰り返される。
【0046】
図2に示すように、検査画像中のN個全ての検査領域80について判別処理が終了すると、この検査画像に対して、画像抽出処理がおこなわれる(ステップS40〜S51)。画像抽出処理は、画像抽出手段27によりおこなわれている。画像抽出処理では、検査画像から、異物等領域含有画像と、気泡・異物等領域含有画像と、が抽出される。異物等領域含有画像は、気泡領域を含有せず異物等領域のみを含有する。気泡・異物等領域含有画像は、気泡領域と異物等領域の両方を含有する。
【0047】
図2に示すように、画像抽出処理では、検査画像中の異物等領域の個数が基準値内(例えば1個未満)であるか否かがチェックされる(ステップS40)。異物等領域の個数が基準値内であれば、この検査画像は良品候補画像としてカウントアップされる(ステップS41)。異物等領域の個数が基準値内でなければ、この検査画像は不良品候補画像としてカウントアップされ、抽出される(ステップS42)。不良品候補画像については、気泡領域フラグの有無がチェックされる(ステップS43)。気泡領域フラグが無ければ、この検査画像は、異物等領域含有画像としてカウントアップされ、抽出される(ステップS44)。気泡領域フラグが有れば、この検査画像は、気泡・異物等領域含有画像としてカウントアップされ、抽出される(ステップS45)。
【0048】
図2に示すように、画像抽出処理が終了するたびに、検査画像の枚数がカウントアップされ(ステップS50)、終了した検査画像の枚数がチェックされる(ステップS51)。そして、検査画像の全ての枚数(実施形態では10枚)について画像抽出処理が終了するまで、ステップS2に戻って、次の検査画像に対して以上の工程が繰り返される。
【0049】
図2に示すように、検査画像の全ての枚数について画像抽出処理が終了すると、画像抽出処理の結果を受けて、判断処理がおこなわれる(ステップS60〜S64)。判断処理は、判断手段28によりおこなわれている。判断処理では、異物等領域含有画像の枚数と、気泡・異物等領域含有画像の枚数と、に基づいて、検査物品60が良品であるか不良品であるかが判断される。
【0050】
図2に示すように、判断処理では、異物等領域含有画像の枚数が基準値内であるか否かがチェックされる(ステップS60)。異物等領域含有画像の枚数が基準値内でなければ、検査物品60が不良品であると判断される(ステップS61)。
【0051】
異物等領域含有画像の枚数が基準値内でない場合、検査物品60の品質に悪影響を与え得る異物等67が、検査物品60に含まれる可能性が一定以上存在すると考えられる。これにより、異物等領域含有画像の枚数が基準値内でないことをもって、検査物品60が不良品であると判断される。
実施形態では、上記基準値が2枚以下に設定されており、図13(a)に示すような場合は、異物等領域含有画像が3枚(=2、4、8枚目)であるため、検査物品60が不良品であると判断される。図13(b)に示すような場合は、異物等領域含有画像が2枚(=1、5枚目)であるため、検査物品60が不良品であるとの判断はされない。
【0052】
図2に示すように、異物等領域含有画像の枚数が基準値内であれば、この検査物品60は不良品であるとの判断はされず、次の気泡・異物等領域含有画像の枚数が基準値内であるか否かがチェックされる(ステップS62)。気泡・異物等領域含有画像の枚数が基準値内でなければ、検査物品60が不良品であると判断される(ステップS63)。気泡・異物等領域含有画像の枚数が基準値内であれば、検査物品60が不良品であるとの判断はされず、良品であると判断される(ステップS64)。
【0053】
異物等領域含有画像の枚数が基準値内であっても、気泡・異物等領域含有画像の枚数が基準値内でない場合、検査物品60の品質に悪影響を与え得る異物等67が、気泡64と併存して検査物品60に含まれる可能性が一定以上存在すると考えられる。これにより、気泡・異物等領域含有画像の枚数が基準値内でないことをもって、検査物品60が不良品であると判断される。また、異物等領域含有画像の枚数、気泡・異物等領域含有画像の枚数が何れも各基準値内であれば、検査物品60が不良品である可能性は非常に低くなるため、当該検査物品60が良品であると判断される。
実施形態では、上記基準値が3枚以下に設定されており、図14(a)に示すような場合は、気泡・異物等領域含有画像が4枚(=2、4、8、10枚目)であるため、検査物品60が不良品であると判断される。図14(b)に示すような場合は、気泡・異物等領域含有画像が1枚(=3枚目)であるため、検査物品60が不良品であるとの判断はされず、良品であると判断される。
【0054】
このように、異物等領域含有画像の枚数と、気泡・異物等領域含有画像の枚数と、に基づいて順次の判断処理をおこなうことで、検査物品60が良品であるか不良品であるかを、適切かつ効率的に判断することができる。
一回の検査あたりの検査画像の枚数は適宜設定されるが、好ましくは5枚以上であり、10枚以上がより好ましい。撮像部21や画像検査部23の処理能力等にもよるが、検査画像形成手段25によってなるべく多数の検査画像を用意しておくのがよい。多数の検査画像を用いることで、より適切な判断が可能となり、検査精度を向上させ易い。
【0055】
以上説明したとおり、気泡判別検査機構100によれば、検査画像において気泡64に対応する気泡領域と、異物等67(異物65や汚れ・傷66)に対応する異物等領域と、を判別して、検査物品60が良品であるか不良品であるかを適切に判断することができる。よって、内容液63中の気泡64が、異物65や汚れ・傷66として誤検知される可能性を軽減し、歩留りや生産性が低下するのを防止できる。
また、気泡判別検査機構100によれば、複雑な処理を要することなく簡易に、しかも適切に、気泡64に対応する気泡領域と、異物等67に対応する異物等領域とを判別することができる。
【0056】
次に、上記の気泡判別検査機構100を用いて構成した気泡判別検査装置1について、図15〜図17を参照して説明する。図15は実施形態に係る気泡判別検査装置1の全体構成を示す概略平面図、図16は気泡判別検査装置1による検査状況を示す一部拡大正面図である。図17は気泡判別検査装置1による判断処理状況を示す図である。
【0057】
気泡判別検査装置1は、図15〜図16に示すように、搬送手段3と、搬入手段4および搬出手段5と、気泡判別検査機構100をそれぞれ有する検査ステーション101、102、103、104と、を備えて構成される。
【0058】
搬送手段3は、図15〜図16に示すように、ターレット30を備える。ターレット30は、検査物品60を等間隔一列で周縁部に載置する下円盤31と、下円盤31の上方に離間して設けられ、検査物品60の鉛直状態を保つ上円盤32と、を備えており、検査物品60を平面視略円環状に支持して水平搬送する。下円盤31および上円盤32は主軸33に固着され、一定の回転方向R3に連続回転している。ターレット30により検査物品60は、円弧状の搬送経路にしたがって、先端部を上方にした鉛直状態で搬送される。
【0059】
ターレット30では、図16に示すように、上下一対のホルダ35が各検査物品60に装着される。ホルダ35は、所定の下ロッド36および上ロッド37に連結されるとともに、図示しないベアリング等を介して下円盤31および上円盤32にそれぞれ挿嵌されている。下ロッド36の適宜箇所に、後述する自転手段11が作用することで、各検査物品60が、ホルダ35と一体に、自身の軸廻りを回転(自転)自在となっている。上ロッド37の上端には、図示しないカム機構等がさらに連結されており、適時のタイミングで上ロッド37が昇降し、これに伴ってホルダ35が検査物品60に着脱される。このようなホルダ35を用いることで、検査物品60を安定して高速自転させ易くなる。
【0060】
搬入手段4は、図15に示すR41、R42の向きにそれぞれ水平回転(かつターレット30と同期)する仕込みスターホイール41、供給スターホイール42からなり、供給フィーダー45から順次供給される検査物品60をターレット30へ搬入している。一方で、搬出手段5は、図15に示すR51、R52、R53の向きにそれぞれ水平回転(かつターレット30と同期)する振分けスターホイール51、良品取出しスターホイール52、不良品取出しスターホイール53からなり、検査を終えた検査物品60をターレット30から搬出している。
【0061】
検査ステーション101〜104は、図15に示すように、ターレット30による検査物品60の搬送経路に沿って、搬入手段4と搬出手段5との間に配設される。実施形態の検査ステーション101〜104は、互いに略同一の構成を有する。すなわち、各検査ステーション101〜104は、浮遊機構10としての自転手段11及び停止手段15と、姿勢保持手段16と、撮像部21と、照明部22と、画像検査部23と、を備える。自転手段11、停止手段15、姿勢保持手段16は、ターレット30の下円盤31下方の外周に臨むようにして設けられる。
【0062】
自転手段11は、図15に示すように、モータ12およびローラ13と、これらに掛回されて下ロッド36に当接可能なベルト14と、から構成される。自転手段11は、下ロッド36およびホルダ35に数千rpm程度の大きな回転力を生じせしめ、検査物品60を高速で自転させる。停止手段15は、例えば摩擦式のブレーキ部材からなり、下ロッド36に適宜作用して、高速自転中の検査物品60を急停止させる。一方、姿勢保持手段16は、上記自転手段11と同様、モータ17、ローラ18、ベルト19によって構成されるが、下ロッド36およびホルダ35に所定の僅かな回転力を生じせしめるように調整されている。
【0063】
撮像部21は、図15に示すように、検査物品60をターレット30の外方から撮像する。ターレット30内には照明部22が設けられ、撮像部21と照明部22とが、ターレット30の径方向に配置される。撮像部21および照明部22は、ターレット30の回転からは縁切りされ、それぞれ独立状に固設される。撮像部21は、ターレット30によって搬送される各検査物品60を連続的に多数回撮像している。撮像部21には、所定の画像検査部23(図1参照)が接続される。
【0064】
上記姿勢保持手段16は、撮像部21によって撮像中の検査物品60を、撮像部21に対して一定姿勢に保持する働きをなす。検査物品60がカメラ視野70(図16参照)内を回転方向R3に移動するにしたがって、撮像部21と各検査物品60とのなす中心角が変化し、撮像の瞬間ごとの検査物品60の投影に微妙なズレが生じ得るが、姿勢保持手段16が検査物品60をゆっくりと回転(自転)させてこれを矯正するため、撮像部21が常に決まった投影面で各検査物品60の静止画を撮像できるようになっている。
【0065】
実施形態の気泡判別検査装置1には、図15に示すように、所定のリターン手段9が付設される。リターン手段9は、検査ステーション101〜104における判断結果に応じて、ターレット30から搬出される検査物品60を、再びターレット30に搬入することを可能とする。リターン手段9は、図15に示すR91、R92の向きに水平回転(かつ仕込みスターホイール41および振分けスターホイール51と同期)するリターン用振分けスターホイール91、リターン用スターホイール92から構成されている。リターン用振分けスターホイール91、リターン用スターホイール92は、振分けスターホイール51と仕込みスターホイール41との間に配設される。
【0066】
上記の気泡判別検査装置1は、以下のように動作する。
【0067】
搬入手段4を介してターレット30で搬送される検査物品60は、各検査ステーション101〜104において、上記のとおり、自転手段11による高速自転と停止手段16による自転停止とを間欠して繰り返す。すなわち、自転手段11が、内容液63中の異物65を浮遊させる外力を検査物品60に付与したのちに、停止手段16が、アンプル容器62をターレット30に対して相対静止させるが、各撮像部21はこの直後の状態をそれぞれ撮像している。
【0068】
実施形態では、各検査物品60がカメラ視野70内で1ピッチd(図16参照)だけ搬送移動される間に連続的に10回撮像され、検査物品60の一回の検査あたり10枚の検査画像が形成されるようになっている。
【0069】
図16に示すように、カメラ視野70内の各検査物品60には、所定の検査エリア72が設定され、この検査エリア72を基準にして上記検査画像が形成される。図16中の73は、検査物品60におけるアンプル容器62の管壁・管底および内容液63の液面を検知する検知手段である。カメラ視野70内で、各検査物品60は回転方向R3に沿って搬送移動されているが、この検知手段73を介して、各検査物品60にそれぞれの検査エリア72が電気的に追従し、検査エリア72の位置およびサイズが自動設定されるようになっている。
なお、実施形態では、図16に示すように、カメラ視野70内に最大3本の検査物品60が収められ、各検査物品60が2ピッチ(=d×2)搬送移動される間に、それぞれ2回分の検査を可能にしてある。
【0070】
検査ステーション101〜104では、画像検査部23を介して、各検査ごとに検査物品60が良品であるか不良品であるかが判断(個別判断)されている。各検査の検査手順については上記したとおりである。実施形態では、各検査ステーション101〜104において、それぞれ2回分の検査がおこなわれるため、一の検査物品60につき合計8回(検査画像80枚)の検査がおこなわれることになる。気泡判別検査装置1では、各検査による個別判断の結果を総合することで、検査物品60が良品であるか不良品であるかが総合判断される。
【0071】
図17(a)(b)には、気泡判別検査装置1による判断処理状況の一例を示している。実施形態では、図17(a)に示すように、個別判断の結果に基づき、各検査ステーション101〜104単位で検査物品60が良品であるか不良品であるかが判断(中間判断)される。例えば、各検査ステーション101〜104における個別判断の結果が「良品」/「良品」の場合、検査物品60が「良品」であると中間判断される。これに対して、個別判断の結果に「不良品」が一つでも含まれる場合、すなわち個別判断の結果が「良品」/「不良品」、「不良品」/「良品」、「不良品」/「不良品」の何れかの場合、検査物品60が「不良品」であると中間判断される。このような中間判断の処理は、各検査ステーション101〜104における画像検査部23の判断手段28(図1参照)によりおこなわれる。
【0072】
そして、図17(b)に示すように、上記中間判断の結果に基づき、検査物品60が良品であるか不良品であるかが総合判断される。例えば、中間判断による「良品」の個数が4個(「不良品」の個数が0個)の場合、検査物品60が「良品」であると総合判断される。中間判断による「良品」の個数が1個以下(「不良品」の個数が3個以上)の場合、検査物品60が「不良品」であると総合判断される。
【0073】
気泡判別検査装置1は、図示しない制御手段を備え、制御手段により、総合判断の処理がおこなわれる。制御手段には、各検査ステーション101〜104の中間判断の結果が入力されており、制御手段は搬出手段5に所定の信号を出力する。図15に示すように、検査物品60が「良品」であると総合判断された場合には、良品60Aとして良品取出しスターホイール52を介して搬出され、検査物品60が「不良品」であると総合判断された場合には、不良品60Bとして不良品取出しスターホイール53を介して搬出される。
【0074】
また、気泡判別検査装置1では、総合判断において検査物品60が「良品」である、または「不良品」であると断定し難いような場合、リターン手段9により、当該検査物品60が自動的に再検査されるようになっている。
【0075】
実施形態では、図17(b)に示すように、中間判断による「良品」の個数が3または2個(「不良品」の個数が1または2個)の場合、検査物品60が「要再検査」であると総合判断される。検査物品60が「要再検査」であると総合判断された場合には、上記制御手段が搬出手段5およびリターン手段9に所定の信号を出力し、図15に示すように、振分けスターホイール51で搬出途中の当該検査物品60が、リターン用振分けスターホイール91、リターン用スターホイール92を介して、搬入手段4の仕込みスターホイール41に再び供給される。
【0076】
なお、検査ステーション101〜104における判断結果を総合する上記工程は任意に変更可能である。例えば、検査ステーション101〜104単位の中間判断を省略して、個別判断による「良品」の個数が7個以上(「不良品」の個数が1個以下)の場合、検査物品60が「良品」であると総合判断し、個別判断による「良品」の個数が2個以下(「不良品」の個数が6個以上)の場合、検査物品60が「不良品」であると総合判断し、これら以外の場合、検査物品60が「要再検査」であると総合判断するような構成であってもよい。
【0077】
このように気泡判別検査装置1によれば、複数の検査ステーション101〜104において所定の検査がおこなわれ、各検査の個別判断の結果を総合して、検査物品60が良品であるか不良品であるかが総合判断されるため、良品とすべきものを不良品としたり、不良品とすべきものを良品とする誤判断を防止し易くなる。
【0078】
また、気泡判別検査装置1によれば、総合判断において検査物品60が良品である、または不良品であると断定し難いような場合には、リターン手段9により、当該検査物品60が自動的に再検査されるため、歩留りや生産性を向上させることが可能となる。
【0079】
また、気泡判別検査装置1によれば、各撮像部21が、ターレット30から独立状に固設されており、検査物品60における検査エリア72が、検査物品60の搬送に追従して自動設定されるようにしたため、撮像部21を検査物品60の回転(公転)に同期移動させるようなもの等に比べて、構造をきわめて簡素化できるとともに、短時間で大量の検査物品60を処理することが可能となる。
【0080】
なお、気泡判別検査装置1には、異物65を検出可能な所定の異物検査機構を併設することができる。異物検査機構としては、例えば特開2011−95107号公報に記載される機構が好ましく用いられる。図示および詳細な説明については省略するが、このような異物検査機構は、所定の処理画像形成手段、マスター画像形成手段、検出用画像抽出手段、判定手段等を、画像検査部23が備えることによって構成される。これによれば、検査物品60における気泡64と異物等67とを判別することができるだけでなく、異物等67から、異物65を汚れ・傷66と区別して的確に検出することができる。よって、歩留りや生産性をより一層向上させることが可能となる。
【0081】
以上の実施形態の記述は、本発明をこれに限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の修正や設計変更等が可能である。
例えば、検査ステーション101、102…の配設箇所数やターレット30の大きさ等は、適宜変更することができる。検査精度向上のためには、検査ステーション101、102…が少なくとも3箇所、好ましくは4箇所以上に配設されるのがよい。
ターレット30に替えて、例えば直線状に検査物品60を搬送するコンベヤ等の他の搬送手段を用いることもできる。撮像部21や照明部22を、反射光方式等による構成としてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、検査ステーション101、102…で、同様の検査が繰り返しおこなわれるようにしたが、各検査ごとに検査画像の枚数を変えたり、異なる判別基準・判断基準に基づく処理をおこなわせるようにしてもよい。検査ステーション101、102…ごとに自転手段11による自転速度等を変えることもできる。
上記実施形態では、検査エリア72を内容液63の液面下方に設定しているが、検査エリア72は適宜変更してよい。例えば、検査エリア72を、内容液63の液面近辺に設定することもできる。
【0083】
また、上記実施形態では、薬剤等が充填されたアンプル容器62を例にして説明したが、本発明はこれに限らず、シリンジやバイアル等の様々な容器および好ましくは或る程度の流動性を有する各種の内容液からなるものが検査物品60として採用される。検査物品60の容器や内容液が不透明等の場合であっても、X線や紫外光、赤外光等を適宜用いることで、本発明の適用が可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1 気泡判別検査装置
3 搬送手段
4 搬入手段
5 搬出手段
9 リターン手段
10 浮遊手段
21 撮像部
23 画像検査部
25 検査画像形成手段
26 判別手段
27 画像抽出手段
28 判断手段
60 検査物品
62 アンプル容器
63 内容液
64 気泡
65 異物
66 汚れ・傷
67 異物等
80 検査領域
100 気泡判別検査機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査するための気泡判別検査装置であって、
該検査物品を一定の搬送経路にしたがって搬送する搬送手段と、
該搬送経路に設けられる所定の気泡判別検査機構と、を備え、
該気泡判別検査機構が、
搬送される該検査物品の該内容液を該容器内で流動させて、該内容液中に混在し得る異物を浮遊させる浮遊手段と、
該検査物品を連続的に撮像する撮像部と、
該撮像部による撮像を元に、複数の検査画像を形成する検査画像形成手段と、
該検査画像において特定される検査領域が、中抜け形状であるか否かに基づき、該検査領域を、気泡に対応する気泡領域と、所定の異物等候補領域と、に判別する第1の判別手段と、
該検査領域の傾き度、扁平度、不透明度に基づき、該異物等候補領域を、異物等に対応する異物等領域と、気泡に対応する気泡領域と、に判別する第2の判別手段と、
該第1の判別手段および該第2の判別手段による判別結果に基づき、該検査物品が良品であるか不良品であるかを判断する判断手段と、
を有する気泡判別検査装置。
【請求項2】
該検査画像における該異物等領域の個数に基づき、不良品候補画像を抽出するとともに、該不良品候補画像から、該異物等領域のみを含有する異物等領域含有画像と、該気泡領域および該異物等領域を含有する気泡・異物等領域含有画像と、を抽出する画像抽出手段を備え、
該判断手段が、該異物等領域含有画像の枚数と、該気泡・異物等領域含有画像の枚数と、に基づき、該検査物品が良品であるか不良品であるかを判断する請求項1に記載の気泡判別検査装置。
【請求項3】
該気泡判別検査機構をそれぞれ有する複数の検査ステーションが、該搬送経路に沿って配設され、
該検査ステーションにおける判断結果を総合することで、該検査物品が良品であるか不良品であるかを総合判断するようにした請求項1乃至2の何れかに記載の気泡判別検査装置。
【請求項4】
該検査ステーションにおける判断結果に応じて、該搬送手段から搬出される該検査物品を、再び該搬送手段に搬入することのできるリターン手段を備えた請求項3に記載の気泡判別検査装置。
【請求項5】
内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査するための気泡判別検査方法であって、
該検査物品を撮像して、検査画像を形成する工程と、
該検査画像において検査領域を特定する工程と、
該検査領域が中抜け形状であるか否かに基づき、該検査領域を、気泡に対応する気泡領域と、所定の異物等候補領域と、に判別する工程と、
該検査領域の傾き度、扁平度、不透明度に基づき、該異物等候補領域を、異物等に対応する異物等領域と、気泡に対応する気泡領域と、に判別する工程と、
を含む気泡判別検査方法。
【請求項6】
内容液が充填されてなる容器を検査物品とし、該内容液中の気泡と、これ以外の異物等と、を判別して検査するための気泡判別検査方法であって、
該検査物品を撮像して、検査画像を形成する工程と、
該検査画像において検査領域を特定する工程と、
該検査領域の傾き度、扁平度、不透明度に基づき、該検査領域を、気泡に対応する気泡領域と、異物等に対応する異物等領域と、に判別する工程と、
を含む気泡判別検査方法。
【請求項7】
該検査物品の該内容液を該容器内で流動させて、該内容液中に混在し得る異物を浮遊させる工程を含み、
該異物が浮遊した状態を撮像するようにした請求項5乃至6の何れかに記載の気泡判別検査方法。




















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−44688(P2013−44688A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184184(P2011−184184)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000137904)株式会社ミューチュアル (37)
【出願人】(506369911)株式会社日本電商ビジョンシステム (4)
【Fターム(参考)】