説明

水中油型クレンジング化粧料

【課題】十分な乳化安定性を有しながらも肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力、洗い流し後の後肌のしっとり感に優れる水中油型クレンジング化粧料の提供。
【解決手段】次の成分(A)〜(C);(A)下記一般式(1)で表される高級アルコール変性シロキサン化合物;


(B)N−アルキロイル−N−メチルタウリン塩(C)25℃で液状の油を含有することを特徴とする水中油型クレンジング化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型クレンジング化粧料に関し、詳細には肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力の向上、さらには洗い流し後の後肌のしっとり感に優れる水中油型クレンジング化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から水中油型クレンジング化粧料は、その目的や用途に応じ、使用感、汚れやメイクアップ化粧料へのなじみ、クレンジング力の向上、洗い流しやすさなどを考慮し、各種の油剤、界面活性剤などを適宜選択し、それらを組み合わせることによりさまざまな剤型とし要求品質を満たす製品の開発検討がなされてきた。その一例として例えば、クレンジングローションなどの水性液状剤型、乳液状やクリーム状などの乳化剤型(油中水型、水中油型)、界面活性剤と多価アルコールの混合外相中に油剤が分散しゲル化した界面活性剤中油型ゲル状剤型、オイルクレンジングなどの油性剤型などが挙げられる。油性クレンジング化粧料としては、主に化粧や油汚れと相溶することでクレンジング効果を発揮する液状油に、水での洗い流しを良好にするために界面活性剤を加え、更に洗い流し後の肌に保湿効果を付与するために多価アルコールを配合した技術(特許文献1、2)等がある。また、乳化タイプクレンジングとしては、液状油を界面活性剤にて乳化し、カルボキシビニルポリマーやカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を加えて、クリーム状、乳液状にした技術(特許文献3、4)があるが、なかでも、乳化剤型のクレンジング料は、適度な洗浄力と水洗性と、幅広い使用感を有していることから汎用されている。
【0003】
しかしながら、近年、クレンジング化粧料で落とすべきメイクアップ化粧料には、疎水性表面処理を施した粉体を用いたり、シリコーンレジンを用いるなど化粧持ちを向上させるための様々な技術が導入されている。また、近年クレンジング化粧料においても、クレンジング機能以外にも、使用時の肌なじみや後肌の感触などの様々な効果が求められ、その構成成分である界面活性剤、油剤に関して様々な検討がなされている。例えば、低分子量や低粘度の油剤を用いることで、化粧料使用時の肌へのなじみ感とメイクアップ化粧料とのなじみを向上させる技術(特許文献4)や特定の界面活性剤と油剤を組み合わせることでメイクアップ化粧料との良好ななじみ、さっばりとした水洗後の使用感を得る技術(特許文献5)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−230899号公報
【特許文献2】特開平4−308518号公報
【特許文献3】特許第4185441号公報
【特許文献4】特開2008−184413号公報
【特許文献5】特許第4602999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力の向上、さらには洗い流し後の後肌のしっとり感に優れる水中油型クレンジング化粧料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に用いられる成分(A)の高級アルコール変性シロキサン化合物は、シリコーンの軽い使用感とべたつきのない滑らかさと、高級アルコールの高極性に由来する肌なじみの良さにを特徴としており、その分子構造からシリコーン油と一般油剤との相溶性をあげることが可能であると考えられ、クレンジング化粧料として25℃で液状の油と組合せた際に、クレンジング力が顕著に向上するという知見を見出した。さらにこれらを含む水中油型のクレンジング化粧料とした場合に、種々ある界面活性剤の中でも、N−アルキロイル−N−メチルタウリン塩を用いて乳化することにより、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力、さらには洗い流し後の後肌のしっとり感に優れる水中油型クレンジング化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
次の成分(A)〜(C);
(A)下記一般式(1)で表される高級アルコール変性シロキサン化合物;
【化1】

(B)N−アルキロイル−N−メチルタウリン塩
(C)25℃で液状の油
を含有することを特徴とする水中油型クレンジング化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力の向上、さらには洗い流し後の後肌のしっとり感に優れる水中油型クレンジング化粧料に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明に使用される成分(A)高級アルコール変性シロキサン化合物は下記一般式(1)で表されるものであり、成分(A)の性状は好ましくは25℃において液状である。
なお、高級アルコール部は珪素原子に結合した末端と異なる末端に1価の高級アルコール性水酸基を有するものであって、多価アルコールや糖のような複数の水酸基を有するものではない。すなわち−(CHn−OH(式中、nは10〜30)で表される構造体であり、好ましくはnが10〜18、特に好ましくは10〜15である。nが10より小さいと溶剤としての効果が高いために洗い流し後の後肌のしっとり感が得られにくくなり、30より大きいと肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力が十分ではない。また、下記一般式(1)中のRがメチル基であると、感触の点において好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
本発明に使用される成分(A)高級アルコール変性シロキサン化合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、一例としてヒドロシリル化反応触媒の存在下において、下記一般式(2)で表される不飽和高級アルコールと、下記一般式(3)で表されるオルガノハイドロジェントリシロキサンを、オルガノハイドロジェントリシロキサン中の珪素結合水素原子に対して、1モル当量以上となる物質量で付加反応させることにより得ることができる。
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

ヒドロシリル化反応は、触媒の存在下で行うことが好ましく、触媒としては、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウムなどの化合物を挙げることができ、その触媒活性が高いことから白金化合物が特に有効である。白金化合物の例としては、塩化白金酸、金属白金、白金−ビニルシロキサン錯体・白金−ホスフィン錯体・白金−ホスファイト錯体・白金−アルコラート触媒などの白金錯体などを挙げることができる。用いる触媒の使用量は、白金触媒を使用する場合、金属白金として0.5〜1000ppm程度である。
【0014】
更に、本発明に使用される成分(A)高級アルコール変性シロキサン化合物は、反応後の不飽和化合物の残存による臭気改善を目的として、水素添加処理を行っても良い。水素添加による無臭化工程としては、水素ガスを加圧する方法と金属水素化物などの水素添加剤による方法があり、更に該水素化反応には均一反応と不均一反応がある。これらの処理は単独で行っても、組み合わせて行っても良い。ただ、使用した触媒が製品に残存しないという利点を考慮すると、固体触媒を用いた不均一接触水素添加反応がもっとも好ましい。
また、当該無臭化処理の前工程または後工程として、減圧下にて窒素ガスを接触させて軽質物を留去するストリッピング工程を行うことが好ましい。
【0015】
本発明に使用される成分(A)の高級アルコール変性シロキサン化合物は、シリコーンの軽い使用感とべたつきのない滑らかさと、高級アルコールの高極性に由来する肌なじみの良さ、シリコーン鎖とアルキル鎖を持つことでメイクアップ化粧料となじみやすいという特徴を有しており、分子量が同程度の他の油剤と比べ、水中油型クレンジング化粧料に配合した際に、使用感、クレンジング力に優れた効果を得られる。
【0016】
本発明における成分(A)の含有量は、3〜30質量%(以下、単に「%」とする)、更には5〜20%であることが好ましい。この範囲であれば、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力、さらには洗い流し後の後肌のしっとり感の点で満足のいくものが得られる。
【0017】
本発明の水中油型クレンジング化粧料に使用される成分(B)のN−アルキロイル−N−メチルタウリン塩は、油性成分の乳化剤として、また、肌荒れなどの肌への負担をかけることなく、水洗時のヌルつき抑制効果を付与するために含有されるものである。成分(B)は、通常化粧料に使用されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、N−ステアロイル−N−メチルタウリン塩、N−ミリストイル−N−メチルタウリン塩、N−ラウロイル−N−メチルタウリン塩、N−パルミトイル−N−メチルタウリン塩、N−ベヘノイル−N−メチルタウリン塩、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリン塩などが挙げられる。またここでいう塩とは、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、アルギニン、アミノメチルプロパノールなどが挙げられる。これらの成分は必要に応じて一種、又は二種以上を適宜選択して用いることができる。これらの中でも特に、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウムは、ぬるつき抑制効果などの使用感向上に特に優れるのでより好ましい。
【0018】
本発明における成分(B)の含有量は、0.1〜1%であることが好ましい。この範囲であれば、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力の向上、洗い流し後の後肌のしっとり感の点で満足のいくものが得られる。
【0019】
本発明の水中油型クレンジング化粧料に使用される成分(C)の25℃で液状の油は、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力を付与するために含有されるものである。なお、本発明における「液状」とは、25℃で1〜3000mPa・sの範囲にある粘度値であるものを意味する。ここでの粘度測定は、B型回転粘度計(東芝システム株式会社・ビスメトロン粘度計VDA2)を用いて測定できる。
【0020】
このような成分(C)は、通常化粧料に使用されるものであれば、特に制限されないが、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、脂肪酸類など化粧料一般に使用されるものが用いられる。具体的には、炭化水素類として流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワレン、スクワラン、α−オレフィンオリゴマー、ポリブテン等が挙げられ、油脂類としてトウモロコシ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、アボカド油、米胚芽油、小麦胚芽油、アルモンド油、大豆油、菜種油、胡麻油、ツバキ油、サザンカ油、パーシック油、オリーブ油、茶実油、シソ実油、ミンク油、ヒマシ油、アマニ油、月見草油、ボレッジ油、トリイソオクタン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等が挙げられ、エステル油類としてミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、安息香酸アルキルエステル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ホホバ油等が挙げられ、シリコーン油類として低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチコノール、フッ素変性シリコーン等があり、フッ素系油類としてパーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等が挙げられ、高級アルコールとしてオレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられ、脂肪酸類としてオレイン酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。これらの成分は必要に応じて一種、又は二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0021】
これらの中でも、流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマー、トリイソオクタン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジメチルポリシロキサンなどの25℃で液状の油の中でも分子量が250〜600の油が、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力、の点で優れているため、好ましく用いられる。この分子量より小さいと、乳化安定性が著しく悪くなってしまうため、肌に塗布した際の肌なじみに優れなくなってしまい、この分子量より大きいと塗布時の肌なじみが悪くなってしまう共に、クレンジング力(メイクアップ化粧料とのなじみやすさ)が十分でなくなってしまう。
【0022】
また、これらの中でも特にトリイソオクタン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリル、オクタン酸セチル、オレイン酸デシル、ステアリン酸オクチル、安息香酸アルキルエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール等の25℃で液状の油の中でも分子量300〜450のエステル油が、塗布時の肌なじみのよさ、クレンジング力(メイクアップ化粧料とのなじみやすさ)を付与する上では特に好ましい。
【0023】
本発明における成分(C)の含有量は、10〜60%であることが好ましい。この範囲であれば、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力の向上、洗い流し後の後肌のしっとり感の点で満足のいくものが得られる。
【0024】
本発明の水中油型クレンジング化粧料は、上記の成分(A)、(B)、(C)に加えて、成分(D)として25℃でペースト状の油を配合することができる。成分(D)のペースト状の粘度値を有する油剤であることから、クレンジング対象とする成分への付着力をあげ、クレンジング力の向上が期待できるからである。一般的にペースト状の油を配合した化粧料は、肌に塗布する場合に、べたつき感を生じやすく、また塗りのばしにくいなど問題となる場合があった。しかしながら、本発明において、成分(D)は、成分(A)の含有により成分(C)への相溶性が向上すると考えられ、この技術を用いてクレンジング化粧料とすることにより、メイク汚れの取れやすさと後肌の潤い感が向上し、クレンジング力、後肌のしっとり感の点で更に優れたものが得られる。この場合、洗い流しではなく、ふき取り用のクレンジング化粧料としても優位なものとすることが可能である。なお、本発明における「ペースト状」とは、25℃で3001〜100000mPa・sの範囲にある粘度値であるものを意味する。ここでの粘度測定は、B型回転粘度計(東芝システム株式会社・ビスメトロン粘度計VDA2)を用いて測定できる。
【0025】
このような成分(D)の25℃でペースト状の油は、通常化粧料に使用されるものであれば、極性油、非極性油又は合成油、半合成油、動植物油等の極性や由来を問わず、何れのものでもよい。例えば、ヤシ油、パーム油、ヒマシ油などを水素添加して得られる硬化油、ワセリン、シアバター、マカダミアンナッツ脂肪酸フィトステリルのような植物油脂誘導体、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)等のアミノ酸誘導体、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)のようなダイマー酸誘導体等があげられ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力、洗い流し後の後肌のしっとり感の観点から、特にワセリン、マカダミアンナッツ脂肪酸フィトステリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)が好ましい。尚、成分(D)は1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
本発明における成分(D)の含有量は、1〜15%であることが好ましい。この範囲であれば、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力の向上、洗い流し後の後肌のしっとり感の点で優れたものが得られる。
【0027】
本発明の水中油型クレンジング化粧料において使用される成分(A)の高級アルコール変性シロキサン化合物と成分(C)の25℃で液状の油は、好ましくは(A)/[(A)+(C)]=0.08〜0.6の質量比で含有され、特に好ましくは(A)/(A)+(C)=0.1〜0.5で含有される。この範囲であれば、肌なじみの良さ、クレンジング力、後肌のしっとり感の点で十分満足のいく水中油型クレンジング化粧料が得られる。本発明において、成分(A)と成分(C)の総和中における成分(A)の適切な含有比により成分(B)の乳化能と洗い流しやすさが向上すると考えられ、この技術を用いてクレンジング化粧料とすることにより、メイク汚れの取れやすさと後肌の潤い感が向上し、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力、洗い流し後の後肌のしっとり感の点で更に優れたものが得られる。
【0028】
本発明の水中油型クレンジング化粧料は、上記した必須成分の他に、通常の化粧料に使用される成分、例えば、グリコール類、低級アルコール類、上述以外の陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤、美容成分、色素、顔料パール化剤、防腐剤、香料、スクラブ剤、無機粉体、有機粉体、アルカリ剤等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
合成例1及び2、比較合成例
[合成例1:高級アルコール変性シロキサン化合物(C11)]
攪拌装置、温度計、還流管、滴下漏斗を取り付けた反応器にウンデセニルアルコール89.0gを仕込み、窒素流通下で攪拌しながら70℃まで加熱した。白金触媒27mgを加えた後、上記一般式(4)のオルガノハイドロジェントリシロキサン127.8gを滴下漏斗から徐々に加え、反応を開始した。滴下終了後、1時間エージングを行い、ガスクロマトグラフィーにより反応が完結したことを確認した。減圧下、70℃で未反応のシロキサンを除いた後、150℃まで加温して内部転移した、もしくは過剰量のウンデセニルアルコールを除くことにより、高級アルコール変性シロキサン化合物(C11)を得た。この化合物は25℃において、液状であった。
【0030】
【化4】

[合成例2:高級アルコール変性シロキサン化合物(C15)]
攪拌装置、温度計、還流管、滴下漏斗を取り付けた反応器にペンタデセニルアルコール93.2gを仕込み、窒素流通下で攪拌しながら70℃まで加熱した。白金触媒27mgを加えた後、上記一般式(4)のオルガノハイドロジェントリシロキサン127.8gを滴下漏斗から徐々に加え、反応を開始した。滴下終了後、1時間エージングを行い、ガスクロマトグラフィーにより反応が完結したことを確認した。減圧下、70℃で未反応のシロキサンを除いた後、150℃まで加温して内部転移した、もしくは過剰量のペンタデセニルアルコールを除くことにより、高級アルコール変性シロキサン化合物(C15)を得た。この化合物は25℃において、液状であった。

[比較合成例:高級アルコール変性ジメチルポリシロキサン化合物(C11)]
攪拌装置、温度計、還流管、滴下漏斗を取り付けた反応器に下記一般式(5)のメチルハイドロジェンポリシロキサン50.0gを仕込み、窒素流通下で攪拌しながら70℃まで加熱した。ウンデセニルアルコール28.4gと白金触媒19.6mgを滴下漏斗から徐々に加え、反応を開始した。滴下終了後、100℃にてエージングを行い、IRスペクトルによりSi−Hの消失を確認することで反応が完結したことを確認した。減圧下、150℃まで加温して、内部転移したもしくは過剰量のウンデセニルアルコールを除くことにより、高級アルコール変性ジメチルポリシロキサン化合物(C11)を得た。この化合物は25℃において、液状であった。

【0031】
【化5】

【0032】
[実施例1〜17及び比較例1〜5:クレンジングクリーム]
下記表1〜表3に記載のクレンジングクリームを以下に示す製造方法により調製し、下記処方及び製造方法で調製された固形状油中水型ファンデーションをクレンジング対象として、1)肌に塗布した際の肌なじみ、2)メイクアップ化粧料に対するクレンジング力、3)洗い流し後の後肌のしっとり感の3項目に関して以下に示す評価方法及び判断基準により評価し、結果を併せて表1〜表3に示した。
【0033】
固形状油中水型ファンデーション(クレンジング対象)の処方
(成分) (%)
1.有機変性スメクタイト 1.0
2.エタノール 5.0
3.1,2−ペンタンジオール 2.0
4.塩化ナトリウム 0.5
5.クエン酸 0.1
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.香料 適量
8.精製水 残量
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
10.硫酸バリウム被覆雲母チタン 1.5
11.ジメチルポリシロキサン処理酸化チタン 7.5
12.ジメチルポリシロキサン処理黄酸化鉄 0.4
13.ジメチルポリシロキサン処理被覆ベンガラ 0.07
14.ジメチルポリシロキサン処理黒酸化鉄 0.01
15.シリコーン界面活性剤※1 2.0
16.ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレン※2 1.0
17.オクタメチルシクロテトラシロキサン 7.0
18.イソノナン酸イソノニル 10.0
19.イソノナン酸イソトリデシル 3.0
20.ショ糖脂肪酸エステル 1.0
21.マイクロクリスタリンワックス 6.0
22.酢酸トコフェロール 0.05
※1 KF−6028(信越化学工業社製)
※2 アラセルP−135(クローダ社製)
【0034】
固形状油中水型ファンデーション(クレンジング対象)の製造方法
A:成分1〜9を70℃にて均一に溶解する。
B:成分10〜22を70℃にて均一に混合する。
C:BにAを加え乳化する。
D:70℃にて容器に流し込み充填後室温まで冷却する。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
[実施例1〜17、比較例1〜5の製造方法]
A:成分(1)〜(7)を80℃にて加熱溶解する。
B:成分(8)〜(19)を80℃にて加熱し、Aに添加混合する。
C:Bを冷却後、成分(20)(21)を添加、混合後、脱泡し、目的であるクレンジングクリームを得た。
【0039】
[実施例1〜17、比較例1〜5の評価方法]
表1〜表3に示す処方を、上記製造方法にてクレンジングクリームを製造し、下記評価方法により、(a)肌なじみ、(b)クレンジング力、(c)後肌のしっとり感について評価し、結果も併せて表1〜表3に示した。

【0040】
(評価方法)
<評価項目>
(a)肌なじみ
(b)クレンジング力
(c)後肌のしっとり感
各試料について、(a)〜(c)は専門パネル20名により使用テストを行った。
(a)〜(c)の評価としては、前記油中水型ファンデーション(クレンジング対象)0.5gを顔に塗布し、3時間経過後に表1〜表3のクレンジングクリーム(水中油型クレンジング化粧料)を2g手に取り、1分間クレンジング行為を行った後、水で洗い流して評価した。この際、パネル各人が、下記絶対評価にて評価し、評点をつけ、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
尚、評価項目(a)はバルク塗布時の肌へなじむ状態のよさを評価、評価項目(b)はメイクアップ化粧料をクレンジングし、水で洗い流した後の、メイクアップ化粧料の肌への残り度合いを評価し、評価項目(c)は使用後に後肌の潤い感が得られているかを評価した。
(a)、(c)の評価
<6段階絶対評価>
(評点):(評価)
5:非常に良い
4:良い
3:やや良い
2:普通
1:やや悪い
0:悪い
<4段階判定基準>
◎:4点以上 :非常に良好
○:3点以上で4点未満 :良好
△:1.5点以上で3点未満 :やや不良
×:1.5点未満 :不良

(b)の評価
<5段階絶対評価>
(評点):(評価)
5:ファンデーションが完全に洗い流された状態
4:ファンデーションがほとんど洗い流された状態
3:ファンデーションが一部だけ残っている状態
2:ファンデーションがところどころ残っている状態
1:ファンデーションがほとんど落ちていない状態
<4段階判定基準>
◎:4.5点以上 :非常に良好
○:3点以上で4.5点未満 :良好
△:1.5点以上で3点未満 :やや不良
×:1.5点未満 :不良

【0041】
表1〜表3から明らかなように、本発明の実施例1〜17は、いずれも肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力の向上、洗い流し後の後肌のしっとり感のすべての点で満足のいくものであった。実施例3と実施例6、実施例4と実施例7、実施例5と実施例8、9との比較から成分(D)を含有したものは、いずれも評価結果が向上するものとなった。
一方、成分(A)の高級アルコール変性シロキサン化合物を配合しない比較例1や代わりに他のシリコーン油(高級アルコール変性ジメチルポリシロキサン化合物)に変えた比較例2では、肌なじみや後肌のしっとり感において、十分な品質を得られなかった。
また、比較例3のように成分(A)以外の液状油が含まれない場合には、クレンジング力に優れず、後肌のしっとり感において、十分な品質を得られなかった。
更には比較例4のように成分(B)のN−アルキロイル−N−メチルタウリン塩を他の乳化剤に変えた場合、そして比較例5のように成分(C)の25℃で液状の油をペースト油に変えた場合には、肌なじみやクレンジング力において、十分な品質を得られなかった。
【0042】
実施例18:ジェルクレンジング
(成分) (%)
1.ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.8
2.ポリオキシエチレン(10)コレステリルエーテル 0.5
3.ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル 2
4.ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム 0.1
5.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合 0.05
6.精製水 10
7.グリセリン 15
8.ジプロピレングリコール 10
9.トリエタノールアミン 0.05
10.トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリン 35.3
11.パルミチン酸オクチル 15
12.高級アルコール変性シロキサン化合物※4 5
13.マカダミアンナッツ脂肪酸フィトステリル 1
14.トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル 5
15.香料 0.2

※5: 合成例 2の高級アルコール変性シロキサン化合物(C15)

(製造方法)
A:成分(1)〜(9)を80℃にて加熱溶解する。
B:成分(10)〜(14)を80℃にて加熱し、Aに添加混合した。
C:Bを冷却後、成分(15)を添加、混合後、脱泡し、ジェルクレンジングを得た。
【0043】
本発明の実施例18は、肌に塗布した際の肌なじみ、メイクアップ化粧料に対するクレンジング力、洗い流し後の後肌のしっとり感のすべての点で満足のいくものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C);
(A)下記一般式(1)で表される高級アルコール変性シロキサン化合物;
【化1】

(B)N−アルキロイル−N−メチルタウリン塩
(C)25℃で液状の油
を含有することを特徴とする水中油型クレンジング化粧料。
【請求項2】
さらに成分(D)25℃でペースト状の油を含有することを特徴とする請求項1記載の水中油型クレンジング化粧料。
【請求項3】
前記成分(C)が、分子量300〜450のエステル油であることを特徴とする請求項1又は2記載の水中油型クレンジング化粧料。
【請求項4】
前記成分(D)が、ワセリン、マカダミアンナッツ脂肪酸フィトステリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項記載の水中油型クレンジング化粧料。
【請求項5】
前記成分(A)、(C)の含有質量比(A)/〔(A)+(C)〕が、0.08〜0.6の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項記載の水中油型クレンジング化粧料。


【公開番号】特開2013−95712(P2013−95712A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240886(P2011−240886)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】