説明

水中油型乳化化粧料

【課題】保湿性、使用感、及び乳化安定性が良好な水中油型乳化化粧料の提供。
【解決手段】(A)HLB10〜15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上;(B)HLB10〜15のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上;(C)炭素数12〜22の高級アルコール及び/又は炭素数12〜22の脂肪酸モノグリセリルから選ばれる1種又は2種以上;(D)ホスファチジルイノシトールの含有量が20質量%以上及びホスファチジルエタノールアミンの含有量が30質量%以上のリン脂質;及び(E)水を含有し、乳化滴の平均粒径が50〜300nmである水中油型乳化化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関し、具体的には、所定の組成のリン脂質を含有する、半透明化粧料としても調製可能な水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中油型乳化化粧料は、塗布時の伸びの軽さや皮膚等への親和性の良さ等の理由から基礎化粧料、頭髪化粧料、メイクアップ化粧料等に広く用いられている。水中油型乳化化粧料の中でも、半透明の外観を有するものは、美観及び高級感があり、市場において高い需要がある。
【0003】
水中油型乳化化粧料は、一般的に、乳化剤を配合することにより、油滴を水中に安定に分散して調製される。従来、乳化剤としてリン脂質を用いることが提案されている。化粧料に乳化剤として汎用されているリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)を多く含んでいる。PCは乳化作用に優れているが、一方で、調製される水中油型乳化化粧料に高い保湿性を与えるためには、グリセリンやアミノ酸等の水溶性保湿剤を配合する必要がある。これらの水溶性保湿剤の配合は、べたつきの原因になるので、配合量は少ないほど好ましい。
【0004】
一方、PC以外のリン脂質をPCとともに、又は単独で配合した化粧料も提案されている(例えば、特許文献1〜8)。リン脂質の中でも、ホスファチジルイノシトール(PI)及びホスファチジルエタノールアミン(PE)は、PCと比較して乳化力には劣るものの、保湿性に優れるという利点がある。PI及びPEを高い割合で含むリン脂質を利用して、水中油型乳化化粧料を調製できれば、べたつきの原因になる水溶性保湿剤の配合量を少なくしても、あるいは全く配合しなくても、高い保湿性の水中油型乳化化粧料を提供でき、有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−246305号公報
【特許文献2】特開平3−58919号公報
【特許文献3】特開2001−113157号公報
【特許文献4】特開2004−248643号公報
【特許文献5】特開2006−28026号公報
【特許文献6】特開2008−291014号公報
【特許文献7】特開2008−74780号公報
【特許文献8】特開2010−90040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、PI及びPEの乳化力は、PCと比較して低く、PI及びPEを高い割合で含むリン脂質では、半透明化粧料となり得る、微小な乳化滴から構成された水中油型乳化化粧料を得るのは困難である。高圧乳化機等を利用して、強力な剪断力を与えることで乳化滴の平均粒径を小さくすることはできるが、かかる方法は、量産には適さず、機械による強力な剪断力を与えなくても、PI及びPEを高い割合で含むリン脂質を用いて、半透明化粧料となり得る、微小な乳化滴から構成された水中油型乳化化粧料を調製できれば、使用感や保湿性の観点のみならず、生産性の観点でも有利である。
本発明は、PI及びPEを高い割合で含むリン脂質を含有する水中油型乳化化粧料の乳化安定性を改善することを課題とする。
より具体的には、本発明は、保湿感、使用感(べたつきのなさ)、及び乳化安定性に優れた、半透明化粧料として調製可能な、水中油型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者が種々検討した結果、所定の界面活性剤及び所定の界面活性助剤と組み合わせて、PI及びPEを高い割合で含有するリン脂質を用いることで、半透明化粧料として調製可能な、水中油型乳化化粧料を提供できるとの知見を得、この知見に基づいてさらに検討し、本発明を完成するに至った。即ち、上記課題を解決するための手段は、
次の成分(A)〜(E);
(A)HLB10〜15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上
(B)HLB10〜15のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上
(C)炭素数12〜22の高級アルコール及び/又は炭素数12〜22の脂肪酸モノグリセリルから選ばれる1種又は2種以上
(D)ホスファチジルイノシトールの含有量が20質量%以上及びホスファチジルエタノールアミンの含有量が30質量%以上のリン脂質
(E)水
を含有し、乳化滴の平均粒径が50〜300nmである水中油型乳化化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、PI及びPEを高い割合で含むリン脂質を含有する水中油型乳化化粧料の乳化安定性を改善することができる。
より具体的には、本発明によれば、保湿感、使用感(べたつきのなさ)、及び乳化安定性に優れた、半透明化粧料として調製可能な、水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明は、成分(A)〜(E);
(A)HLB10〜15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上
(B)HLB10〜15のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上
(C)炭素数12〜22の高級アルコール及び/又は炭素数12〜22の脂肪酸モノグリセリルから選ばれる1種又は2種以上
(D)ホスファチジルイノシトールの含有量が20質量%以上及びホスファチジルエタノールアミンの含有量が30質量%以上のリン脂質
(E)水
を含有する水中油型乳化化粧料に関する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0010】
成分(A):
本発明の水中油型乳化化粧料は、成分(A)HLB10〜15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含有する。成分(A)は、本発明の水中油型乳化化粧料の乳化安定性の改善に寄与する。具体的には、ソルビトールに酸化エチレンを付加したものを脂肪酸でエステル化したものであって、HLBが前記範囲であれば、いずれも使用することができる。中でも主としてソルビトールに酸化エチレンを付加したものをオレイン酸でエステル化したテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットが、乳化安定性の改善効果が高く、好ましい。市販品としては、NIKKOL GO−430NV、440V、460V(以上、日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。必要に応じその1種または2種以上を用いることができる。
【0011】
成分(B):
本発明の水中油型乳化化粧料は、成分(B)HLB10〜15のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上を含有する。成分(B)は、成分(A)と共に、本発明の水中油型乳化化粧料の乳化安定性の改善に寄与する。具体的には、ヒマシ油に水素添加して得られる硬化ヒマシ油に酸化エチレンを付加して得られたものであって、HLBが前記範囲であれば、いずれのものも使用することができる。中でも主として硬化ヒマシ油に付加される酸化エチレンが20〜80モル、より好ましくは40〜60モルのものが、乳化安定性の改善効果が高く、好ましい。市販品としては、NIKKOL HCO−20、30、40、50、60、70、80(以上、日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。必要に応じその1種または2種以上を用いることができる。
【0012】
成分(C):
本発明の水中油型乳化化粧料は、成分(C)炭素数12〜22の高級アルコール及び/又は炭素数12〜22の脂肪酸モノグリセリルから選ばれる1種又は2種以上を含有する。成分(C)は、界面活性助剤であり、界面活性剤である成分(A)及び(B)とともに、水中油型乳化化粧料の乳化安定性の改善に寄与するとともに、使用感(べたつきのなさ)の改善にも寄与する。成分(C)として、炭素数12〜22の高級アルコール及び炭素数12〜22の脂肪酸モノグリセリルを併用すると、効果が高まるので好ましい。
炭素数12〜22の高級アルコールは、不飽和結合を含まない飽和高級アルコールであっても、不飽和結合を含む不飽和高級アルコールであってもよい。炭素数12〜22の高級アルコールの例には、ラウリルアルコール(C12)、ミリスチルアルコール(C14)、セチルアルコール(C16)、ステアリルアルコール(C18)、オレイルアルコール(C18、不飽和を含む)、リノレイルアルコール(C18、不飽和結合を含む)及びベヘニルアルコール(C22)が含まれる。また、2種のアルコールの混合物である、セトステアリルアルコール(セタノールとステアリルアルコールとの混合物)等を用いることもできる。
炭素数12〜22の脂肪酸モノグリセリルとは、グリセリンの一つの水酸基が、炭素数12〜22の脂肪酸とエステル結合した化合物をいう。炭素数12〜22の脂肪酸の例には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギン酸、及びベヘン酸が含まれる。
中でも主として炭素数12〜22の高級アルコールとしては、炭素数22の高級アルコールであるベヘニルアルコール(C22)や2種のアルコールの混合物である、セトステアリルアルコール(セタノールとステアリルアルコールとの混合物)が、炭素数12〜22の脂肪酸モノグリセリルとしては、ステアリン酸グリセリルが、乳化安定性の改善効果が高く、好ましい。市販品としては、コノール2265(新日本理化社製)、セタノール(高級アルコール社製)、ポエム V−100(理研ビタミン社製)等が挙げられる。必要に応じその1種または2種以上を用いることができる。
【0013】
成分(D):
本発明の水中油型乳化化粧料は、ホスファチジルイノシトール(PI)の含有量が20質量%以上及びホスファチジルエタノールアミン(PE)の含有量が30質量%以上のリン脂質を含有する。成分(D)は、保湿性の改善に寄与する。また、成分(D)は、乳化剤及び/又は乳化助剤として作用していてもよい。本発明に用いるリン脂質において、PIは20〜35質量%であるのが好ましく、PEは、30〜40質量%であるのがより好ましい。動植物由来のリン脂質は、上記PI及びPE以外にも種々の成分を含有し、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、スフィングミエリン、及びリゾホスファチジルコリン等を含んでいる場合もある。本発明において成分(C)として用いるリン脂質は、PI及びPE以外に、これらの成分を含んでいても勿論よい。また、リン脂質の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加リン脂質を用いてもよい。動植物由来のリン脂質の組成では、一般的には、ホスファチジルコリン(PC)の割合が高くなっている。例えば、大豆リン脂質の組成では、PCの割合は50質量%以上である。本発明では、PCの割合は低いほうが好ましく、具体的には25質量%以下であるのが好ましく、10〜25質量%であるのがより好ましい。リン脂質組成中のPCの割合が高くなると、角層において十分な保湿性が得られない傾向がある。
【0014】
成分(D)として、市販品を用いてもよく、例えば、NIKKOL レシノール S−PIE(日光ケミカルズ社製)等を用いることができる。
【0015】
成分(E):
本発明の水中油型乳化化粧料は、成分(E)水を含有する。水は、水中油型乳化化粧料を構成する上で必須の成分である。化粧料に一般に用いられる水であれば特に制限はない。本発明に用いられる水は、精製水、温泉水、深層水、或いは植物の水蒸気蒸留水等でもよい。成分(E)は、必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。
【0016】
成分(A)〜(E)の割合:
本発明の水中油型乳化化粧料では、成分(A)〜(C)の割合を種々変化させることで、界面活性剤全体としてのHLBの値を変化させることができ、いかなる特性の油性成分を配合しても、乳化安定性に優れた水中油型乳化化粧料となる。従って、成分(A)〜(C)の割合の好ましい範囲は、併用される油性成分の性質によって変動する。一般的には、以下の通りであるが、以下の範囲に限定されるものではない。
成分(A)の含有量aは、例えば、0.1〜5質量%(以下、単に「%」で示す)であるのが好ましく、また1〜2%であるのがより好ましい。
成分(B)の含有量bは、例えば、0.1〜5質量%であるのが好ましく、また1〜2%であるのがより好ましい。
成分(C)の含有量cは、例えば、0.01〜5質量%であるのが好ましく、また1〜3%であるのがより好ましい。
【0017】
乳化安定性の観点では、成分(C)の含有量cと成分(A)の含有量aとが、c≦aを満足しているのが好ましく、また成分(C)の含有量cと成分(B)の含有量bとが、c≦bを満足しているのが好ましく、c≦a且つc≦bを満足しているのがより好ましい。
【0018】
成分(D)の含有量が多くなるほど、本発明の水中油型乳化化粧料の保湿性が高くなるが、一方で、乳化安定性は低下する傾向がある。高い保湿性を示すとともに、高い乳化安定性を示す水中油型乳化化粧料を提供するためには、成分(D)の含有量は、0.001〜1%であるのが好ましい。
【0019】
成分(E)の含有量は特に制限はない。水中油型乳化化粧料の剤型を維持できる範囲で変動させることができる。水の添加量によって、本発明の水中油型乳化化粧料を、透明、半透明、及び白濁の化粧料としてそれぞれ調製することができる。水の含有量が高いほど、水中油型乳化化粧料の透明性は高くなり、半透明化粧料として調製するためには、水の含有量は、一般的には、50%〜90%であるのが好ましく、また60%〜85%であるのが好ましい。
【0020】
他の成分:
本発明の水中油型乳化化粧料は、上記(A)〜(E)成分以外の成分を含有していてもよい。例えば感触調整やエモリエント成分としての油性成分、感触調整や着色としての粉体成分、繊維、粉体分散や感触調整としての成分(A)〜(C)以外の界面活性剤、保湿や粉体分散剤としての水性成分、紫外線吸収剤、アルコール類、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料、清涼剤などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。以下に、任意に配合可能な成分について説明する。
・油性成分
本発明の水中油型乳化化粧料は油性成分を含有していてもよい。化粧料に一般に使用される動物油、植物油、合成油等のいず起源の油を用いてもよく、また、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わずいずれも用いることができる。具体的には、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。液状油を用いると、配合の際に過度の加熱が不要であるので、加熱による変臭(例えば成分(D)を加熱することによって生じる変臭)・変質を軽減できるので好ましい。
【0021】
使用可能な油性成分の例には、流動パラフィン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、リンゴ酸ジイソステアリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリメリト酸トリデシル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、ダイマージリノール酸(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)、メドウフォーム油、水添ロジン酸ペンタエリスリチル、水添アビエチン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、トリグリセライド等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、沸点が常圧において260℃以下の側鎖を有する飽和炭化水素油、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルシクロペンタシロキサンなどの低分子鎖状ポリシロキサン、低重合度ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の低分子環状のシリコーン油等の揮発性油剤、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、ポリオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0022】
本発明の水中油型乳化化粧料中の油性成分の含有量については特に制限はないが、一般的には、
0.01〜20%であるのが好ましく、また0.1〜5%であるのがより好ましい。
【0023】
・ 粉体成分
本発明の水中油型乳化化粧料は、粉体成分を含有していてもよい。粉体成分としては、化粧料に一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等のいずれも使用することができる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の体質粉体、ホウケイ酸カルシウムアルミニウム、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆ガラス末、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄被覆ガラス末、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いてもよい。
【0024】
・繊維
使用可能な繊維としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成繊維、レーヨン等の人造繊維、セルロース等の天然繊維、アセテート人絹等の半合成繊維等が挙げられ、これらは特に限定されるものではなく、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。これらの繊維は、ポリエチレンテレフタレートとナイロンを層状に重ねた複合繊維のように、1種又は2種以上の複合化したものを用いてもよく、また、本発明の効果を妨げない範囲で、一般油剤、シリコーン油、フッ素化合物、界面活性剤等で処理したものも使用することができる。
【0025】
・他の界面活性剤
本発明において乳化の主体となる界面活性剤は成分(A)及び成分(B)であり、界面活性助剤は成分(C)である。これら以外に、粉体を配合した場合その分散性を向上させることや乳化安定化剤として他の界面活性剤を配合することができる。その他の界面活性剤は化粧料一般に用いられているものであればいずれのものも使用できるが、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0026】
・被膜形成成分
使用可能な被膜形成性成分としてはエマルションポリマー、水溶性樹脂、油溶性樹脂等いずれのものも使用することができる。被膜形成性エマルションポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸エマルション、メタアクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、ポリ酢酸ビニルエマルション、シリコーン含有重合体エマルション等が挙げられる。水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ビニルピロリドン・スチレン共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。油溶性樹脂としては、ロジン酸ペンタエリスリット等のロジン酸系樹脂、トリメチルシロキシケイ酸、アクリル変性シリコーン、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0027】
・水性成分
使用可能な水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー等の合成系のものを挙げることができる。タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の他の保湿剤を含有する事もできる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、p−アミノ安息香酸系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0028】
・酸化防止剤
使用可能な酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、等が挙げられる。
【0029】
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法:
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法は特に限定されるものではないが、一例は、以下の通りである。
成分(A)〜(D)及び所望により添加される油性成分を均一に混合する。所望により加熱してもよい。加熱は65〜75℃程度にするのが好ましい。
次に、上記混合物に成分(E)の一部を添加し、乳化させる。この際も所望により加熱してもよい。加熱は65〜75℃程度にするのが好ましい。この工程で乳化に用いられる成分(E)の量は、成分(A)〜(D)の合計質量に対して、5〜60倍程度の質量であるのが好ましい。
成分(E)の残部、並びに所望により添加される水性成分、被膜形成成分及び酸化防止剤を、さらに上記乳化物に混合する。
【0030】
通常、高級アルコール等の両親媒物質と界面活性剤は水相中にαゲルと呼ばれる状態を形成するが、これを高圧剪断乳化機等を用いて乳化滴を微細にして界面積を増大させ、両親媒物質と界面活性剤を油水界面に配向させることにより、従来は微細エマルションの安定化を図っていた。しかし、本発明で利用する、界面活性剤である成分(A)及び(B)と、界面活性助剤である成分(C)高級アルコール等との組合せは、より界面に効率的に配向するため、乳化滴の界面積を厳密にコントロールしなくても、液状で安定な微細乳化物を形成していると考えられる。このため、従来、微細エマルションを調製する際には必要であった高圧剪断乳化機は必要なく、本発明の水中油型乳化化粧料は、パドルミキサーなど、剪断力が弱い攪拌機で製造することができる。
【0031】
本発明の水中油型乳化化粧料の性質:
・乳化滴
本発明の水中油型乳化化粧料が含有する乳化滴の平均粒子径は、50〜300nmであり、好ましくは60〜150nmである。
乳化滴の平均粒子径が前記範囲であると、乳化安定性及び使用感が良好なものとなる。しかも、半透明化粧料として調製でき、美観に優れ、高級感のある水中油型乳化化粧料を提供できる。しかも、上記した通り、本発明では、高圧剪断乳化機等の剪断力の強い機械を用いなくても、上記微小な乳化滴から構成される水中油型乳化化粧料を調製することができる。
なお、乳化滴の平均粒径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置(例えば、サブミクロン粒子アナライザー N5 BECKMAN COULTER社製)を用いて測定することができる。
【0032】
・透過率
本発明の水中油型乳化化粧料の一態様は、半透明化粧料である。本明細書において、「半透明」とは、1cm角の石英セルでの波長700nmの光の透過率が、5%〜95%の範囲であることを言うものとする。好ましくは30〜80%である。
透過率の測定には、例えば、SHIMADZU社製「UV−2500PC UV−VIS REDCORDING SPECTROPHOTOMETER」等の一般的な分光光度計を用いることができる。
【0033】
本発明の水中油型乳化化粧料の剤型としては、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状、固形状等、種々の剤型にて実施することができ、化粧水、乳液、美容液、クリーム、アイクリーム等の基礎化粧料、ヘアクリーム、ヘアワックス等の頭髪化粧料、口紅、コンシーラー、ファンデーション、頬紅、日焼け止め化粧料、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー等のメイクアップ化粧料に用いることができる。この中でも皮膚外用剤で効果を十分に利用することができ、更に、基礎化粧料において好適に用いられ、特に化粧水、乳液、美容液、クリーム、アイクリームにおいて好適に用いられ、発明の効果を十分に利用することができる。外観は、半透明、不透明(白濁)のいずれであってもよい。また、剤型は液状であることが好ましく、30℃にてB型回転粘度計により測定した粘度値が10000mPa・s以下であることが好ましい。
【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1〜10及び比較例1〜11:水中油型乳化化粧料
下記表に示す組成の水中油型乳化化粧料を下記の方法でそれぞれ調製した。
各試料の乳化滴の平均粒径を測定し、以下の基準で評価した。さらに、各試料の保湿感の持続性、使用感(べたつきのなさ)、及び乳化安定性を以下の基準で評価した。これらの結果も併せて下記表に示す。
【0035】
(製法)
A.成分(1)〜(14)を約70℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに約70℃に加熱した(15)〜(16)を添加し、乳化後、冷却する。
C.Bに(17)〜(24)を混合する。
D.Cを容器に充填して水中油型乳化化粧料を得た。
【0036】
(評価方法・基準)
a.平均粒径
各試料の乳化滴の平均粒径を、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置(サブミクロン粒子アナライザー N5 BECKMAN COULTER社製)により測定し、下記の基準により評価した。
評価基準
(判定):(判定基準)
◎ : 平均粒径が60nm以上150nm以下
○ : 平均粒径が50nm以上60nm未満、150nmを超え300nm以下
△ : 平均粒径が50nm未満、300nmを超え350nm以下
× : 平均粒径が350nmを超える
【0037】
b.保湿感の持続性
bの保湿感の持続性については、各試料を肌に塗布し、化粧歴10年以上の化粧品専門パネル20名に通常の生活をしてもらい、6時間後の保湿感の持続性について評価した。下記評価基準に従って5段階評価し評点を付け、試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
(評価基準)
評価結果 :評点
非常に保湿感が高い :5点
保湿感が高い :4点
普通 :3点
保湿感が低い :2点
非常に保湿感が低い :1点
判定基準:
評点の平均点 :評価
4.5以上 :◎
3.5以上4.5未満:○
1.5以上3.5未満:△
1.5未満 :×
【0038】
c.使用感(べたつきのなさ)
cの使用時のべたつきのなさについては、各試料について、化粧歴10年以上の化粧品評価専門パネル20名により各試料を肌に塗布してもらい、「べたつきのなさ」について、下記評価基準に従って5段階評価し評点を付け、試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
(評価基準)
評価結果 :評点
非常に良好 :5点
良好 :4点
普通 :3点
やや不良 :2点
不良 :1点
判定基準:
評点の平均点 :評価
4.5以上 :◎
3.5以上4.5未満:○
1.5以上3.5未満:△
1.5未満 :×
【0039】
d.乳化安定性
dの経時安定性について、前記実施例及び比較例の水中油型乳化化粧料を40℃の恒温槽に入れて、1ヶ月後の外観の状態を肉眼にて観察し以下の判定基準にて判定した。
(経時安定性判定基準)
判定 : 評 価
◎ : 全くクリーミングしていない
○ : ごくわずかにクリーミングしている
△ : かなりクリーミングしている
× : 著しくクリーミングしている
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
また、実施例1〜10の水中油型乳化化粧料について、SHIMADZU社製「UV−2500PC UV−VIS REDCORDING SPECTROPHOTOMETER」を用いて、波長700nmの透過率を測定したところ、透過率はいずれも30〜80%であり、即ち、半透明化粧料として調製されていた。
【0043】
上記表に示す結果から、本発明の実施例1〜10の水中油型乳化化粧料はいずれも、保湿性、使用感及び乳化安定性のいずれの評価結果も良好であったことが理解できる。また、実施例1〜10は、半透明化粧料であり、高い美観があり、高級感のある化粧料としての提供が可能である。
一方、比較例1〜11は、成分(A)〜(D)のいずれか少なくとも1種を含有していないので、実施例と比較して、1以上の評価項目が顕著に劣っていたことが理解できる。具体的には、成分(A)及び(B)の双方又は少なくとも一方が配合されておらず、あるいは成分(A)及び(B)の代わりにHLBが10未満のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル及びHLBが10未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油がそれぞれ配合された比較例1〜9は、乳化滴の平均粒子径が所望の範囲にはならず、半透明化粧料としての調製ができず、さらに乳化安定性も顕著に劣っていたことが理解できる。
成分(C)が配合されていない比較例10は、べたつきがあり使用感に劣り、また乳化安定性も低いことが理解できる。
成分(D)が配合されていない比較例11は、保湿感の持続性に劣っていることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E);
(A)HLB10〜15のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上
(B)HLB10〜15のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上
(C)炭素数12〜22の高級アルコール及び/又は炭素数12〜22の脂肪酸モノグリセリルから選ばれる1種又は2種以上
(D)ホスファチジルイノシトールの含有量が20質量%以上及びホスファチジルエタノールアミンの含有量が30質量%以上のリン脂質
(E)水
を含有し、乳化滴の平均粒径が50〜300nmである水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(D)の含有量が0.001〜1質量%である請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(D)におけるホスファチジルコリンの含有量が25質量%以下である請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
成分(A)の含有量a及び成分(c)の含有量cが、c≦aを満足する請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
成分(B)の含有量b及び成分(c)の含有量cが、c≦bを満足する請求項1〜4のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
成分(C)として、炭素数12〜22の高級アルコール及び炭素数12〜22の脂肪酸モノグリセリルのそれぞれから選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項7】
さらに液状油を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項8】
半透明化粧料である請求項1〜7のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。

【公開番号】特開2012−77000(P2012−77000A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220369(P2010−220369)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】