説明

水中油型乳化化粧料

【課題】経時安定性に優れ、べたつきが無くのび広がりの良好な水中油型乳化化粧料を提供すること。
【解決手段】
次の成分(A)〜(D);
(A)トリアルコキシアルキルシランで表面処理された微粒子金属酸化物
(B)ポリヒドロキシステアリン酸
(C)非シリコーン系油剤
(D)アルキルメチルタウリン塩及び/又はリン脂質から選ばれる界面活性剤
を配合することを特徴とする水中油型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアルコキシアルキルシランで表面処理された微粒子金属酸化物をポリヒドロキシステアリン酸で油層中に分散した水中油型乳化化粧料に関し、さらに詳細には、経時安定性に優れ、べたつきが無くのび広がりの良好な水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料に配合される微粒子金属酸化物は、様々な機能を発揮する一方、凝集性が高いため化粧料中に均一に分散することや経時安定性を保つことは非常に困難であり、様々な検討がなされてきた。例えば、紫外線防御効果を有する化粧料には、有機紫外線吸収剤や無機紫外線散乱剤などが配合されており、無機紫外線散乱剤としては、酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物が用いられているが、屈折率が高く塗布後に肌が白くなってしまい化粧料としては好ましくない。塗布後の白さを改良するために、金属酸化物を微粒子化して可視光線の透過性を向上させる技術が報告されている(例えば特許文献1参照)。また、微粒子化した金属酸化物の分散性を向上させ、塗布後の白さを改良するため、分散剤としてスルホコハク酸ジアルキルナトリウムを用いた検討や(特許文献2)、ポリヒドロキシステアリン酸のエステル結合物を用いた検討がある(特許文献3)。
【0003】
更に、微粒子金属酸化物の分散性を向上させるために微粒子金属酸化物を予め分散処理した分散組成物を調製し、化粧料に配合することが行われている。このような分散組成物としては、分散剤としてトリメチルシロキシケイ酸やジメチルポリシロキサン・メチル(ポリオキシアルキレン)シロキサン共重合体を用いた分散組成物や(例えば特許文献4参照)、分散剤としてアクリル−シリコーングラフトポリマーを用いた分散組成物や(例えば特許文献5参照)、分散剤として両末端シリコーン化ポリグリセリンを用いた分散組成物や(例えば特許文献6参照)、分散剤として特定のオルガノポリシロキサン共重合体を用いる分散組成物や(例えば特許文献7参照)、分散剤としてポリグリセリン変性シリコーンを用いる分散組成物を得る技術があり(例えば特許文献8参照)、分散性向上や使用性の向上のため、分散媒としてデカメチルシクロペンタシロキサンなどの揮発性シリコーン油などが用いられている。デカメチルシクロペンタシロキサンなどの揮発性シリコーン油以外の油を分散媒として用いる検討は、分散剤としてリシノール酸やヒドロキシステアリン酸を用い、分散媒としてパラフィン油やトリグリセリドエステルを用いた検討や(例えば特許文献9参照)、分散剤としてポリヒドロキシステアリン酸を用い、分散媒としてエステル油やトリグリセリドエステルを用いた検討がある(例えば特許文献10参照)。
【0004】
また、水系にこれら金属酸化物を分散させる技術については、多数検討されており、例えば有機シリコン樹脂と親水性非イオン型界面活性剤、親油性非イオン型シリコーン系界面活性剤を用い金属酸化物の分散性や経時安定性を向上させた化粧料(特許文献11参照)や、アクリル酸又はアクリルアミドに脂肪酸が付加されたモノマーを構造モノマーとして含有するポリマーが被覆された金属酸化物粉体と塩基性化合物を併用し安定且つ使用性に優れた水中油型化粧料(特許文献12参照)等の検討がなされている。
さらに、水中油型化粧料において金属酸化物を安定に分散させるための乳化剤を用いた検討については、カチオン性界面活性剤を用いた検討(特許文献13参照)がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−175821号公報
【特許文献2】特開2003−226615号公報
【特許文献3】特開2003−335649号公報
【特許文献4】特開平9−208438号公報
【特許文献5】特開2006−131547号公報
【特許文献6】特開2007−161648号公報
【特許文献7】特開平11−263708号公報
【特許文献8】特開2004−169015号公報
【特許文献9】特開平6−39272号公報
【特許文献10】特表2009−508920号公報
【特許文献11】特開2003−171230号公報
【特許文献12】特開2008−150299号公報
【特許文献13】特開2007−176867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、透明性を向上させるために金属酸化物を微粒子化すると粉体の表面積が増大し、凝集力が強くなり分散するのが困難となる。特許文献2、3に用いられている分散剤は半固形で粘着性があり、化粧料に用いた場合、べたつきやのび広がりの悪さなど使用性に問題があった。特許文献4〜8に用いられているシリコーン系の分散剤は、シリコーン鎖に親水部分を導入した低HLBの界面活性剤であり、水を配合する水中油型乳化化粧料や油中水型乳化化粧料では、油と水の界面にシリコーン系分散剤が配向してしまい、微粒子金属酸化物の分散性が低下してしまうことがある。また、特許文献4〜8に用いられているシリコーン系の分散剤は、分散安定化のために分子量が大きく設計されており、べたつきや、のび広がりの悪さなど、使用性に問題があった。特に特許文献4のトリメチルシロキシケイ酸は粘着性の樹脂であり、べたつきが著しく使用性に問題があった。さらに、非シリコーン系油剤を分散媒として用いた場合、分散剤として非シリコーン系のリシノール酸やヒドロキシステアリン酸を用いた特許文献9や、分散剤としてポリヒドロキシステアリン酸を用いた特許文献10は、分散剤を多量に配合する必要があり、べたついた使用性となってしまい、のび広がりも悪く、経時安定性も充分とは言えなかった。
【0007】
また、特許文献11のようにシリコーン処理した粉体はシリコーン系油剤であれば分散性に優れるが、非シリコーン系溶剤を用いた場合は分散が悪くなるものである。特許文献12のように、水相中において塩基性化合物を併用することが必須の処理粉体は、pHや温度変化、電解質等により影響を受けやすく安定性に懸念がある。特許文献13のようにカチオン性界面活性剤を配合すると皮膚刺激が懸念される。
【0008】
以上のように、分散性や経時安定性に優れ、べたつきが無くのび広がりの良好な使用性を有する水中油型乳化化粧料の検討は充分といえるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、非シリコーン系油剤を含有する油層中に微粒子金属酸化物を分散する際に、トリアルコキシアルキルシランで表面処理された微粒子金属酸化物を用い、さらに分散剤としてポリヒドロキシステアリン酸を用いることで、微粒子金属酸化物の油層中での分散性が向上し、その上、アルキルメチルタウリン塩及び/又はリン脂質から選ばれる界面活性剤で乳化することで、微粒子金属酸化物の分散性や経時安定性に優れ、べたつきが無くのび広がりの良好な水中油型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
さらに、トリアルコキシアルキルシランで表面処理された微粒子金属酸化物を予め非シリコーン系油剤中にポリヒドロキシステアリン酸で分散処理した微粒子金属酸化物分散組成物を調製することにより効率的に微粒子金属酸化物を分散することができ、分散性や経時安定性がさらに優れる水中油型乳化化粧料となる。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]次の成分(A)〜(D);
(A)トリアルコキシアルキルシランで表面処理された微粒子金属酸化物
(B)ポリヒドロキシステアリン酸
(C)非シリコーン系油剤
(D)アルキルメチルタウリン塩及び/又はリン脂質から選ばれる界面活性剤
を配合することを特徴とする水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0012】
[2]前記成分(A)のトリアルコキシアルキルシランによる表面処理量が、質量割合で表面処理剤/微粒子金属酸化物=0.02〜0.25であることを特徴とする前記[1]に記載の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0013】
[3]前記成分(A)の微粒子金属酸化物が更に(ジメチコン/メチコン)コポリマーで表面処理されていることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【0014】
[4]前記成分(C)の非シリコーン系油剤が炭化水素油又はエステル油であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0015】
[5]前記成分(C)の非シリコーン系油剤が、40℃における粘度が16mm2/s以下の炭化水素油又は炭素数27以下のエステル油であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0016】
[6]前記成分(C)の非シリコーン系油剤がイソドデカン、イソテトラデカン、イソヘキサデカン、40℃における粘度が11mm2/s以下の流動パラフィン、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸セチルであることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0017】
[7]成分(D)の配合量が0.1〜5質量%であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【0018】
[8]予め前記成分(A)を成分(B)及び成分(C)に分散処理した微粒子金属酸化物分散組成物を調製し、次いで該微粒子金属酸化物分散組成物と成分(D)を配合することを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0019】
[9]前記微粒子金属酸化物分散組成物における成分(A)の配合量が30〜70質量%であることを特徴とする前記[8]に記載の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0020】
[10]前記微粒子金属酸化物分散組成物における成分(A)と成分(B)の配合質量割合(B)/(A)が0.01〜0.5であることを特徴とする前記[8]又は[9]記載の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【0021】
[11]全ての油剤におけるシリコーン系油剤の配合量が20質量%以下であることを特徴とする前記[1]〜[10]のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水中油型乳化化粧料は、経時安定性に優れ、べたつきが無くのび広がりの良好な使用性を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳述する。
【0024】
本発明に用いられる成分(A)はトリアルコキシアルキルシランで表面処理された微粒子金属酸化物であり、その成分(A)を構成する微粒子金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄等が挙げられ、これらを一種又は二種以上併用して用いることができる。これらの微粒子金属酸化物の形状等は特に限定はされないが、平均粒子径は1〜100nmが好ましい。ここでの平均粒子径とは、画像解析装置(ルーゼックスIIIU,ニコレス社製)により測定した値である。
【0025】
また、成分(A)を構成するトリアルコキシアルキルシランは、ケイ素原子に三つのアルコキシ基と一つのアルキル基が結合した化合物であり、該アルコキシ基が粉体表面の水酸基等と反応することにより、粉体表面を被覆する化合物である。このようなトリアルコキシアルキルシランは下記一般式(1)で表すことができる。該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルコキシ基は、炭素数1〜3のアルコキシ基であるメトキシ、エトキシ、プロポキシ等が好ましい。また、該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルキル基は、炭素数6〜18のアルキル基であるヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等が好ましい。このようなトリアルコキシアルキルシランは、例えば、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン等が挙げられ、これらより一種又は二種以上用いることができる。
【0026】
【化1】

【0027】
(m、nはそれぞれ正の整数で、m=6〜20、n=1〜3)
【0028】
これらトリアルコキシアルキルシランの中でも、アルキル基の炭素数が8以上であると成分(A)の油層中での分散安定性が良好となるため好ましく、上記一般式(1)においてm=7、n=2であるトリエトキシオクチルシランを用いると、成分(A)の油層中での分散安定性が非常に優れたものとなるため好ましい。
【0029】
本発明において微粒子金属酸化物の表面にトリアルコキシアルキルシランの表面処理剤を被覆する方法は、特に限定されず、通常公知の処理方法が用いられる。具体的には、アルキルチタネートと微粒子金属酸化物とを直接混合する方法、直接微粒子金属酸化物と混合し加熱して被覆する乾式被覆方法、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ヘキサン、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン等の溶媒にトリアルコキシアルキルシランを溶解又は分散し、この溶液又は分散液に微粒子金属酸化物を添加し、混合後、前記溶媒を乾燥等により除去、加熱、粉砕する湿式被覆方法、溶媒に溶解又は分散したトリアルコキシアルキルシランを流動層中で粉体にスプレーコートする気相被覆方法、メカノケミカル方法等が挙げられる。これらの中でも湿式被覆方法が好ましい。
【0030】
成分(A)の微粒子金属酸化物のトリアルコキシアルキルシランによる表面処理量は、質量比で、表面処理剤/微粒子金属酸化物=0.02〜0.25が好ましく、更に好ましくは、0.03〜0.18である。この範囲であれば、更に良好な使用性を与えることができ、分散性や経時安定性も向上する。微粒子金属酸化物の表面処理はトリアルコキシアルキルシランだけでも良く、さらに(ジメチコン/メチコン)コポリマーや他の表面処理剤を組み合わせても良い。
【0031】
本発明に用いられる成分(A)は更に(ジメチコン/メチコン)コポリマーで表面処理をすると成分(A)の吸油量が下がり、油中水型乳化化粧料中に成分(A)をより多く配合することができ好ましい。(ジメチコン/メチコン)コポリマーはINTERNATIONAL NOMENCLATURE of COSMETIC INGREDIENTSにDIMETHICONE/METHICONE COPOLYMERとして収載されている化合物であり、ジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンからなる共重合体である。通常、粉体の表面処理剤として用いられ、粉体に撥水性を付与し、しかも経時的に水素を発生し難い表面処理剤として汎用されている。具体的には、好ましい化合物として下記一般式(2)で示される化合物が例示できる。
【0032】
【化2】

【0033】
(v、wはそれぞれ正の整数で、v+w=7〜50、v:w=1:0.2〜1:4)
【0034】
成分(A)の(ジメチコン/メチコン)コポリマーによる表面処理量は、質量比で(表面処理剤)/(トリアルコキシアルキルシランで表面処理された微粒子金属酸化物)=0.01〜0.15が好ましく、更に好ましくは、0.03〜0.08である。この範囲であれば、更に良好な使用性を与えることができ、分散性や経時安定性も向上する。
【0035】
本発明における成分(A)の配合量は、3〜60質量%(以下、%と略す)であることが好ましく、更に好ましくは5〜30%である。この範囲であれば、更に良好な使用性を与えることができる。
【0036】
本発明に用いられる成分(B)のポリヒドロキシステアリン酸は、成分(A)を油層中に分散させるために用いられ、ヒドロキシステアリン酸の水酸基は12位が好ましく、ヒドロキシステアリン酸の重合度は3〜12が好ましく、更に好ましくは重合度4〜8である。市販品としては、ARLACEL P−100(ユニケマ社製)を挙げることが出来る。
【0037】
本発明において、成分(A)と成分(B)の配合質量比(B)/(A)は0.01〜0.5が好ましく、更に好ましくは、0.02〜0.3である。この範囲であれば、更に良好な使用性を与えることができ、分散性や経時安定性も向上する。
【0038】
本発明に用いられる成分(C)の非シリコーン系油剤は、成分(A)を分散させる媒体であり、ポリシロキサン骨格を持たない油剤であれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わないが、常温(25℃)で液状である液体油が成分(A)の分散性の観点から好ましい。例えば、炭化水素類、油脂類、硬化油類、エステル油類、フッ素系油剤類、ラノリン誘導体類等を用いることができ、より具体的には流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、イソテトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、カメリア油、ローズピップ油、アボカド油等の油脂類、ホホバ油、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、オレイン脂肪酸フィトステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)等のエステル油類、p−アミノ安息香酸エチルヘキシルジメチル、サリチル酸エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジネオペンチル−4’−メトキシベンザルマロナート等の油溶性紫外線吸収剤類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類等を例示することができ、これらのうち一種又は二種以上を用いることができる。これらのうち、炭化水素油及びエステル油が好ましく、そのなかでも、40℃における粘度が16mm2/s以下の炭化水素油又は炭素数27以下のエステル油が好ましく、更には、イソドデカン、イソテトラデカン、イソヘキサデカン、40℃における粘度が11mm2/s以下の流動パラフィン、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸セチルが好ましい。これらの油剤であると、べたつきが無くのび広がりの良好な水中油型乳化化粧料を得ることができる。なおここでの粘度はJIS−K−2283記載の原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法に基づき測定したものである。
【0039】
本発明における成分(C)の配合量は、5〜90%が好ましく、更に好ましくは10〜60%である。この範囲であると、のび広がりに優れた水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0040】
さらに、予めトリアルコキシアルキルシランで表面処理された微粒子金属酸化物(成分(A))を分散媒である非シリコーン系油剤(成分(C))中に分散剤であるポリヒドロキシステアリン酸(成分(B))を用いて分散処理して微粒子金属酸化物分散組成物を調製し、次いで該微粒子金属酸化物分散組成物を油中水型乳化化粧料に配合することがより好ましい。このような方法を行うことで、成分(A)の分散性や経時安定性がさらに優れる水中油型乳化化粧料となる。
【0041】
上記の予め混合分散した成分(A)〜(C)(以下、微粒子金属酸化物分散組成物ということもある)における成分(A)の配合量は30〜70%であることが好ましく、更に好ましくは40〜60%である。この範囲であれば、経時安定性にさらに優れた水中油型乳化化粧料となる。
【0042】
また、上記の微粒子金属酸化物分散組成物における成分(B)及び成分(C)の配合量はそれぞれ以下の範囲が好ましい。成分(B)の配合量は0.3〜15%が好ましく、0.5〜10%がより好ましく、また、成分(C)の配合量は30〜70%が好ましく、40〜60%がより好ましい。この範囲であると各種微粒子金属酸化物の特性を十分に発揮することができ、経時安定性にさらに優れる水中油型乳化化粧料となる。
【0043】
上記の微粒子金属酸化物分散組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、成分(B)と成分(C)を混合し、これに成分(A)を添加し、均一に分散処理することにより得ることができる。この際に、分散処理する機器としては、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル等が挙げられるが、より好ましくは媒体を用いたボールミルやビーズミル等の湿式粉砕処理機器である。
【0044】
上記の微粒子金属酸化物分散組成物には、上記成分(A)〜(C)に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、上記成分以外の油剤や粉体、界面活性剤、ゲル化剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤、香料、化粧料用成分等を配合することができる。
【0045】
本発明における上記の微粒子金属酸化物分散組成物の配合量は1〜80%が好ましく、5〜60%がより好ましい。この範囲であると、べたつきが無くのび広がりに優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。また微粒子金属酸化物分散組成物は一種又は二種以上を用いることができる。
【0046】
本発明に用いられる成分(D)のアルキルメチルタウリン塩及び/又はリン脂質は、水中油型化粧料の界面活性剤であり、微粒子金属酸化物の分散安定性向上に寄与し、水中油型化粧料の経時安定性を著しく向上させる。更に、使用時のべたつきの無さなどの使用性向上にも寄与する。本発明に用いられる(D)のアルキルメチルタウリン塩は通常化粧料で使用されているものであれば特に限定されないが、これらの中でも、経時安定性及び使用感向上効果の観点から、Nアシルメチルタウリン塩が好ましく、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。また、成分(D)のリン脂質は、通常化粧料で使用されているものであれば特に限定されないが、具体的に例示するのであれば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴリン脂質、大豆レシチン、卵黄レシチン、あるいはそれらの水素添加物等のリン脂質及びリン脂質・コレステロール複合体、リン脂質・フィトステロール複合体等のリン脂質複合体を挙げることができる。これらの成分(D)のアルキルメチルタウリン塩及び/又はリン脂質は、必要に応じて一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0047】
成分(D)の配合量は0.01〜10%が好ましく、より好ましくは0.1〜5%である。この範囲内であれば乳化状態も良好であり、使用性が良好で、充分な経時安定性を有するものが得られる。
【0048】
本発明の水中油型乳化化粧料にはみずみずしさを得る目的や油性成分、及び微粒子金属酸化物等の分散媒として水を用いるが、化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば精製水、温泉水、深層水、又は植物等の水蒸気蒸留水等が挙げられる。イオン交換水や蒸留水等の精製水であると、金属イオンなどの不純物が少ないため特に好ましい。
【0049】
本発明の水中油型乳化化粧料には感触調整等のためにさらにシリコーン系油剤を配合してもよい。シリコーン系油剤とはポリシロキサン骨格を持つ油剤であり、例えば、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0050】
本発明の水中油型乳化化粧料においてシリコーン系油剤の配合量はできるだけ少量であることが好ましい。本発明の水中油型乳化化粧料中の全ての油剤におけるシリコーン系油剤の配合量は20%以下であることが好ましく、更に好ましくは10%以下であり、最も好ましくはシリコーン系油剤を配合しないことである。また、微粒子金属酸化物分散組成物においても同様にシリコーン系油剤の配合量はできるだけ少量であることが好ましい。全ての油剤中のシリコーン系油剤の配合量が多くなると、微粒子金属酸化物分散組成物の粘度が高くなり、成分(A)の分散性が低下する。
【0051】
本発明の水中油型乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(A)〜(D)の他に、通常化粧料に配合される成分として、成分(A)〜(D)以外の界面活性剤やシリコーン系油剤、多価アルコール、低級アルコール、水溶性高分子、保湿剤等の水性成分、糖類、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、薬効成分、安定化剤、色素、香料等を各種の効果の付与のために適宜配合することができる。
【0052】
界面活性剤としては成分(D)の他に非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、N−アルキルジメチルアミンオキシドポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどを挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸のナトリウム塩又はトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸などのポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。例えば、カチオン性界面活性剤としては、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジベヘニルジメチルアンモニウム、臭化ジベヘニルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、臭化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレン(15モル)ヤシ油アルキルメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレン(4モル)ラウリルエーテルジメチルアンモニウム、塩化ステアリン酸アミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジココイルエチルヒドロキシエチルメチルアンモニウム・メチル硫酸塩等を挙がられる。例えば両性界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。これらの中でも、経時安定性及び使用感向上効果の観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を成分(A)〜(D)と併用させることが好ましい。
【0053】
水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のもの、他にタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
【0054】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類等が挙げられる。
【0055】
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法は、特に限定されるものではないが、成分(A)〜(C)および必要に応じて他の添加剤等を混合したものを、成分(D)と任意の水系成分、界面活性剤を混合分散したものに添加、その後水を添加し乳化させ、これを容器又は型に充填して得ることができる。また、上述のように成分(A)〜(C)を予め混合分散してから配合することが好ましい。
【0056】
本発明の水中油型乳化化粧料は、特に限定されないが、形状として液状、半固形状、固形状のものが挙げられる。また、製品形態としては、洗顔フォーム・クリーム、クレンジング、マッサージクリーム、パック、化粧水、乳液、クリーム、美容液、化粧下地、日焼け止めなどの皮膚用化粧料、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、コンシーラー、口紅、リップクリーム等の仕上げ用化粧料、ヘアミスト、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアトニック、ヘアクリーム、ポマード、チック、液体整髪料、セットローション、ヘアスプレー、等の頭髪用化粧料などを例示することができる。この中でも、日焼け止め、ファンデーション、化粧下地等が本発明の効果が発揮されやすい水中油型乳化化粧料である。
【実施例】
【0057】
以下に製造例及び実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0058】
製造例1〜7:表面処理微粒子金属酸化物
表1に示す組成の表面処理微粒子金属酸化物を下記の製造方法により調製した。
【0059】
【表1】

【0060】
(注1)MT−100SA(テイカ社製)
(注2)MZ−500(テイカ社製)
(注3)KF−9901(信越化学工業社製)
(注4)KF−96A−100cs(信越化学工業社製)
【0061】
(製造方法)
イソプロピルアルコール100部と成分3〜5を混合し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)中で成分1、2と混合する。その後、減圧下、60℃でイソプロピルアルコールを回収し、粉砕処理して表面処理微粒子金属酸化物を得た。
【0062】
製造例8〜16:微粒子金属酸化物分散組成物
表2に示す組成の微粒子金属酸化物分散組成物を下記の製造方法により調製した。
【0063】
【表2】

【0064】
(注5)ARLACEL P−100(ユニケマ社製)
(注6)KLEAROL(SONNEBORN社製)
(注7)KF−96A−6cs(信越化学工業社製)
【0065】
(製造方法)
成分(1)〜(10)を均一に混合し、アシザワ(株)製のビーズミル(LMZ−0.6)にてジルコニアビーズ3mmを用い、ビーズ充填率60%、アジテーター回転数2000rpmにて5時間分散させ、微粒子金属酸化物分散組成物を得た。
【0066】
実施例1〜8及び比較例1〜8:水中油型乳化化粧料
表3及び表4に示す組成の水中油型乳化化粧料を下記の製造方法により調製し、各試料について、「経時安定性」、「べたつきの無さ」、「のびの良さ」について評価を行い、その結果も併せて表3及び表4に示した。
【0067】
【表3】

【0068】
(注8)レシチンCLO(J−オイルミルズ社製)
(注9)KP−540(信越化学工業社製)
【0069】
【表4】

【0070】
<製造方法>
A.成分(1)〜(8)を70℃にて均一に混合分散する。
B.成分(9)〜(20)を70℃にて均一に混合溶解する。
C.成分(21)、(22)を70℃にて均一に混合溶解する。
D.AにBを均一に混合し70℃にてゲル化する。
E.DにCを均一に混合分散し70℃にて乳化する。
F.Eを冷却する。
G.Fに成分(23)〜(26)を加え、均一に混合分散し水中油型乳化化粧料を得た。
【0071】
(評価方法)経時安定性
経時安定性については次に示す加速試験にて評価した。ここでの加速試験とは50℃恒温槽に4週間保管することである。水中油型乳化化粧料の経時安定性が良好であれば微粒子金属酸化物の凝集が抑えられ加速試験前後の化粧料の粘度変化は小さい。一方、経時安定性が悪い場合は微粒子金属酸化物が凝集し、それによって体積効果が発生したり、微粒子金属酸化物が沈降したりすることで加速試験前後の粘度変化が大きくなる。加速試験による評価の具体的方法としては、水中油型乳化化粧料を製造後、30℃恒温槽にて1日保管した後にB型粘度計で測定した粘度値と、50℃恒温槽に4週間保管した後30度の恒温槽に1日保管した後に測定した粘度値を比較し、下記の基準に従って判断した。
(評価):(判定)
粘度変化が0mPa・s以上、±10000mPa・s未満 ;◎
粘度変化が±10000mPa・s以上、±20000mPa・s未満 ;○
粘度変化が±20000mPa・s以上、±40000mPa・s未満 ;△
粘度変化が±40000mPa・s以上 ;×
【0072】
(評価方法)べたつきの無さ、のびの良さ
水中油型乳化化粧料について化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人に各試料を使用してもらい、下記絶対評価基準にて6段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0073】
絶対評価基準
(評点):(評価)
6点:非常に良好
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎:5点を超える
○:3.5点を超える5点以下
△:2点を超える3.5点以下
×:2点以下
【0074】
表3及び表4に示したように、実施例1〜8は「経時安定性」、「べたつきの無さ」、「のびの良さ」の全ての項目において優れていた。一方、成分(A)の替わりにジメチルポシリロキサンで表面処理された製造例7の表面処理微粒子金属酸化物を配合した比較例1は、不均一な乳化状態であり、全ての項目において劣っていた。成分(B)のポリヒドロキシステアリン酸を配合していない比較例2も不均一な乳化状態であり、全ての項目において劣っていた。また、ポリヒドロキシステアリン酸の替わりに(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマーを配合した比較例3は、特に経時安定性が悪く、全項目で劣っていた。また、成分(C)の非シリコーン系油剤の替わりにジメチルポシリロキサンを配合した比較例4も、不均一な乳化状態となり、全ての項目において劣っていた。また、成分(D)のミリストイルメチルタウリンナトリウムに替えて、カチオン性界面活性剤である塩化ジステアリルジメチルアンモニウムを配合した比較例5、両性界面活性剤である2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを配合した比較例6、アニオン性界面活性剤であるステアリン酸を配合した比較例7、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油を増量した比較例8も微粒子金属酸化物が均一に分散せず、経時安定性が特に悪く、他の項目も劣っていた。
【0075】
実施例9〜11び比較例9:水中油型乳化化粧料
次に、表5に示す組成の微粒子金属酸化物分散組成物を配合した水中油型乳化化粧料を下記の製造方法により調製し、各試料について「経時安定性」、「べたつきの無さ」、「のびの良さ」を上記と同様に評価し、その結果も併せて表5に示した。
【0076】
【表5】

【0077】
<製造方法>
A.成分(1)〜(4)を70℃にて均一に混合分散する。
B.成分(5)〜(12)を70℃にて均一に混合溶解する。
C.成分(13)、(14)を70℃にて均一に混合溶解する。
D.AにBを均一に混合し70℃にてゲル化する。
E.DにCを均一に混合分散し70℃にて乳化する。
F.Eを冷却する。
G.Fに成分(15)〜(17)を加え、均一に混合分散し水中油型乳化化粧料を得た。
【0078】
表5に示したように、予め微粒子金属酸化物分散組成物を製造し、その微粒子金属酸化物分散組成物を配合した実施例9〜11は、「経時安定性」、「べたつきの無さ」「のびの良さ」の全ての項目において優れていた。その中でも、予め非シリコーン系油剤のみに成分(A)を分散して配合した実施例9、10は経時安定性に更に優れていた。一方、成分(A)の替わりにジメチルポシリロキサンで表面処理された微粒子金属酸化物を用いた微粒子金属酸化物分散組成物を配合した比較例9は、予め微粒子金属酸化物を分散処理しているにもかかわらず、微粒子金属酸化物の分散が悪く、全ての項目において劣るものであった。
【0079】
実施例12:水中油型日焼け止め料
(成分) (%)
1.ステアロイルメチルタウリンナトリウム 2
2.グリセリン 20
3.1,3−ブチレングリコール 5
4.セスキオレイン酸ソルビタン 0.1
5.製造例8の微粒子金属酸化物分散組成物 10
6.ステアリン酸グリセリル 0.5
7.セトステアリルアルコール 1
8.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 3
9.トリエチルヘキサン酸グリセリル 2
10.キサンタンガム 0.2
11.精製水 19.8
12.エタノール 2
13.メチルパラベン 0.2
14.精製水 残 量
(製造方法)
A.成分(1)〜(4)を70℃にて均一に混合分散する。
B.成分(5)〜(9)を70℃にて均一に混合溶解する。
C.成分(10)〜(11)を70℃にて溶解する。
D.AにBを均一に混合し70℃にてゲル化する。
E.DにCを均一に混合分散し70℃にて乳化する。
F.Eを冷却する。
G.Fに成分(12)〜(14)を加え、均一に混合分散し水中油型日焼け止め料を得た。
【0080】
実施例12の水中油型日焼け止め料は、経時安定性に優れ、べたつきがなく、のび広がりの良い水中油型日焼け止め料であった。
【0081】
実施例13:水中油型日焼け止め料
(成分) (%)
1.ヒドロキシプロピルデンプンリン酸(注10) 2
2.精製水 残 量
3.1,3−ブチレングリコール 5
4.ポリオキシエチレン(4モル)ラウリルエーテルリン酸(注11) 0.1
5.トリエタノールアミン 0.1
6.ステアロイルメチルタウリンナトリウム 2
7.製造例8の微粒子金属酸化物分散組成物 10
8.ステアリン酸グリセリル 0.5
9.セトステアリルアルコール 1
10.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 3
11.トリエチルヘキサン酸グリセリル 2
12.エタノール 2
13.メチルパラベン 0.2
注10 STRUCTURE XL(アクゾノーベル社製)
注11 HOSTAPHAT KL340D(クラリアント・ジャパン社製)
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を70℃にて均一に混合分散する。
B.成分(7)〜(11)を70℃にて均一に混合溶解する。
C.AにBを均一に混合分散し70℃にて乳化する。
D.Cを冷却する。
E.Dに成分(12)、(13)を加え、均一に混合分散し水中油型日焼け止め料を得た。
【0082】
実施例13の水中油型日焼け止め料は、経時安定性に優れ、べたつきがなく、のび広がりの良い水中油型日焼け止め料であった。
【0083】
実施例14:水中油型化粧下地料
(成分) (%)
1.水素添加リン脂質(注12) 2
2.グリセリン 20
3.1,3−ブチレングリコール 5
4.セスキオレイン酸ソルビタン 0.1
5.製造例8の微粒子金属酸化物分散組成物 10
6.ステアリン酸グリセリン 0.5
7.セトステアリルアルコール 1
8.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 3
9.トリエチルヘキサン酸グリセリル 2
10.キサンタンガム 0.2
11.精製水 19.8
12.エタノール 2
13.メチルパラベン 0.2
14.精製水 残 量
注12 ニッコール レシノールS-10(日光ケミカルズ社製)
(製造方法)
A.成分(1)〜(4)を70℃にて均一に混合分散する。
B.成分(5)〜(9)を70℃にて均一に混合溶解する。
C.成分(10)〜(11)を70℃にて溶解する。
D.AにBを均一に混合し70℃にてゲル化する。
E.DにCを均一に混合分散し70℃にて乳化する。
F.Eを冷却する。
G.Fに成分(12)〜(14)を加え、均一に混合分散し水中油型化粧下地料を得た。
【0084】
実施例14の水中油型化粧下地料は、経時安定性に優れ、べたつきがなく、のび広がりの良い水中油型化粧下地料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D);
(A)トリアルコキシアルキルシランで表面処理された微粒子金属酸化物
(B)ポリヒドロキシステアリン酸
(C)非シリコーン系油剤
(D)アルキルメチルタウリン塩及び/又はリン脂質から選ばれる界面活性剤
を配合することを特徴とする水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(A)のトリアルコキシアルキルシランによる表面処理量が、質量割合で表面処理剤/微粒子金属酸化物=0.02〜0.25であることを特徴とする請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(A)の微粒子金属酸化物が更に(ジメチコン/メチコン)コポリマーで表面処理されていることを特徴とする請求項1又は2記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
成分(C)の非シリコーン系油剤が炭化水素油又はエステル油であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
成分(C)の非シリコーン系油剤が、40℃における粘度が16mm/s以下の炭化水素油又は炭素数27以下のエステル油であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
成分(C)の非シリコーン系油剤がイソドデカン、イソテトラデカン、イソヘキサデカン、40℃における粘度が11mm/s以下の流動パラフィン、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸セチルから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の水中油型乳化化粧料
【請求項7】
成分(D)の配合量が0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項8】
予め前記成分(A)を成分(B)及び成分(C)に分散処理した微粒子金属酸化物分散組成物を調製し、次いで該微粒子金属酸化物分散組成物と成分(D)を配合することを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項9】
前記微粒子金属酸化物分散組成物における成分(A)の配合量が30〜70質量%であることを特徴とする請求項8記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項10】
前記微粒子金属酸化物分散組成物における成分(A)と成分(B)の配合質量割合(B)/(A)が0.01〜0.5であることを特徴とする請求項8又は9記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項11】
全ての油剤におけるシリコーン系油剤の配合量が20質量%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の水中油型乳化化粧料。

【公開番号】特開2013−71920(P2013−71920A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213090(P2011−213090)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】