説明

水中油型乳化皮膚外用剤

【課題】広範な水中油型エマルション基剤に適用することができる、シリコーンエラストマー分散性(安定性)を向上させる処方の提供。
【解決手段】以下の成分(a)〜(d):(a)疎水基を持つ水溶性増粘剤、(b)14以上のHLBを持つ非イオン性界面活性剤、(c)3〜5のHLBを持つポリエーテル変性シリコーン、及び(d)非乳化性の架橋型シリコーンを含有することを特徴とする水中油型乳化皮膚外用剤。(d)非乳化性架橋型シリコーンは、常温で液状の油分で膨潤した膨潤物の形態で配合するのが好ましく、組成物全体の粘度を30000mPa・s以下とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低粘度であってもシリコーンエラストマーを安定に配合することができ、使用感も良好な水中油型乳化皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化物(水中油型エマルション)は、肌に塗布した際に爽やかでしっとりした感触が得られることから、肌に直接適用される皮膚化粧料等の皮膚外用剤の基剤として広く用いられている。しかし、エマルションは熱力学的に不安定な状態であり、長期間放置するとクリーミングなどの問題を生じることが多く、その安定性を維持するためには、分散粒子径を小さくする、連続相(水相)の粘度を大きくするといった工夫が必要となる。
【0003】
一方、水中油型の皮膚外用剤にシリコーンエラストマー(架橋型シリコーン)を配合すると、皮膚を柔軟化する効果があるが、シリコーンエラストマーの配合によりエマルションの安定性が低下することも知られている。シリコーンエラストマーの分散不良が皮膚外用剤の使用性の劣化を招き、安定化のために増粘剤量を増やすとべたつきを生じる等の問題を生じていた。
【0004】
特許文献1では、白濁の原因となりうる界面活性剤の使用量を減らし、シリコーンエラストマーを安定に配合するために、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:アクリロイルジメチルタウリンアンモニウムともいう)単位とオルガノポリシロキサン単位を含む架橋していない特定の両親媒性コポリマーを用いることが提案されており、半透明の外観で低粘度から高粘度までの安定な水中油型エマルションが得られるとされている。しかしながら、前記特定の両親媒性コポリマーを必ず配合しなければならず、当該両親媒性コポリマーが適さない基剤に応用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−111674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明における課題は、広範な水中油型エマルション基剤に適用することができる、シリコーンエラストマー分散性(安定性)を向上させる処方を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明者等は鋭意研究を行った結果、特定の増粘剤と界面活性剤を組み合わせて用いることにより、シリコーンエラストマーを安定に配合できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
即ち本発明は、以下の成分(a)〜(d):
(a)疎水基を持つ水溶性増粘剤、
(b)14以上のHLBを持つ非イオン性界面活性剤、
(c)3〜5のHLBを持つポリエーテル変性シリコーン、及び
(d)非乳化性の架橋型シリコーンを含有することを特徴とする水中油型乳化皮膚外用剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用剤は、高HLBの非イオン性界面活性剤及び低HLBのポリエーテル変性シリコーンという組み合わせを採用することによって、シリコーンエラストマー(架橋型シリコーン)を良好(微細)に分散させて系を安定化できるので、使用性に優れたエマルションとなる。また、疎水性基を持つ水溶性増粘剤を用いることにより、低粘度であっても安定な分散状態が保持できる。本発明の皮膚外用剤で用いられる各成分は選択の幅が広く、様々な基剤に応用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤は、疎水基を持つ水溶性増粘剤(成分a)を必須成分として含有している。
本明細書における「疎水基を持つ水溶性増粘剤」とは、水溶性高分子の鎖に疎水基(親油基)を導入した構造を有する増粘剤を意味し、疎水性基を持つモノマーを少なくとも1種類含むコポリマー、クロスポリマー等が含まれる。例えば、分散相(水相)に溶解又は分散されたとき、分子内に存在する疎水基を介してエマルション粒子に会合し、系に弱い網目構造を形成するような、いわゆる会合型の水溶性増粘剤も本発明における「疎水基を持つ水溶性増粘剤」に含まれる。
【0011】
疎水基を持つ水溶性増粘剤の具体例としては、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/カルボキシエチルアクリレート)クロスポリマー、アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30)クロスポリマー、(PEG−240/デシルテトラデセス−20/HDI)コポリマー、及び他の疎水変性ポリエーテルウレタン等の会合型増粘剤を挙げることができる。これらは、例えばAristoflex−TAC(Clariant社製)、アデカノールGT−700(ADEKA社製)等の市販品を用いることもできる。
【0012】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤で用いられる14以上のHLBを持つ非イオン性界面活性剤(成分b)は、化粧料等の皮膚外用剤で通常使用される非イオン性界面活性剤の中で、HLBが14以上のものから選択される1種又は2種以上である。
具体例としては以下のものを挙げることができるが、これらに限定されない。
モノラウリン酸ヘキサグリセリル(HLB14.5)、モノラウリン酸デカグリセリル(HLB15.5)、モノミリスチン酸デカグリセリル(HLB14.0)等のポリグリセリン脂肪酸エステル類。
【0013】
モノオレイン酸POE(15)グリセリル(HLB14.5)等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類。
モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン(HLB16.9)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(HLB15.6)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(HLB14.9)、モノイソステアリン酸POE(20)ソルビタン(HLB15.0)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(HLB15.0)、等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類。
【0014】
モノラウリン酸POE(6)ソルビット(HLB15.5)、テトラオレイン酸POE(60)ソルビット(HLB14.0)等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類。
POE(30)ラノリン(HLB15.0)、POE(10)ラノリンアルコール(HLB15.5)、POE(20)ラノリンアルコール(HLB16.0)、POE(40)ラノリンアルコール(HLB17.0)等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体類。
POE(50)ヒマシ油(HLB14.0)、POE(60)ヒマシ油(HLB14.0)、POE(60)硬化ヒマシ油(HLB14.0)、POE(80)硬化ヒマシ油(HLB16.5)、POE(40)硬化ヒマシ油(100)硬化ヒマシ油(HLB16.5)等のポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油類。
POE(20)フィトステロール(HLB15.5)、POE(30)フィトステロール(HLB18.0)、POE(25)フィトスタノール(HLB14.5)、POE(30)コレスタノール(HLB17.0)等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール類。
【0015】
POE(9)ラウリルエーテル(HLB14.5)、POE(15)セチルエーテル(HLB15.5)、POE(20)セチルエーテル(HLB17.0)、POE(23)セチルエーテル(HLB18.0)、POE(20)ステアリルエーテル(HLB18.0)、POE(10)オレイルエーテル(HLB14.5)、POE(15)オレイルエーテル(HLB16.0)、POE(20)オレイルエーテル(HLB17.0)、POE(50)オレイルエーテル(HLB18.0)、POE(20)ベヘニルエーテル(HLB16.5)、POE(30)ベヘニルエーテル(HLB18.0)、POE(10)(C12−15)アルキルエーテル(HLB15.5)、POE(12)アルキルエーテル(HLB14.5)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類。
【0016】
モノステアリン酸PEG(25)(HLB15.0)、モノステアリン酸PEG(40)(HLB17.5)、モノステアリン酸PEG(45)(HLB18.0)、モノステアリン酸PEG(55)(HLB18.0)、ジステアリン酸PEG(HLB16.5)等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類。
【0017】
イソステアリン酸PEG(25)グリセリル(HLB14.0)、イソステアリン酸PEGグリセリル(30)(HLB15.0)、イソステアリン酸PEG(40)グリセリル(HLB15.0)、イソステアリン酸PEG(50)グリセリル(HLB16.0)、イソステアリン酸PEG(60)グリセリル(HLB16.0)等のイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル類。
【0018】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤で用いられる3〜5のHLBを持つポリエーテル変性シリコーン(成分c)は、化粧料等の皮膚外用剤で通常使用されるポリエーテル変性シリコーンの中で、HLBが3〜5のものから選択される1種又は2種以上である。
具体例としては、PEG−3ジメチコン、PEG−9メチルエーテルジメチコン、PEG−10ジメチコン(以上、HLB=4.5)、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB=4.0)、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB=3.0)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤は、非乳化性架橋型シリコーン(成分d)を含有している。本発明で用いられる非乳化性架橋型シリコーン(シリコーンエラストマーと呼ばれることもある)としては、特に限定されるものではないが、ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマー、ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー、ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス−ビニルジメチコンクロスポリマー、アルキル(C30−45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、セテアリルジメチコンクロスポリマーからなる群より選択される1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0020】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤を調製するに際しては、前記の非乳化性架橋型シリコーン(成分d)を、常温で液状の油分で膨潤した膨潤物の形態で配合することが好ましい。これにより、架橋型シリコーンの分散性及び安定性が更に向上する。
膨潤に用いられる液状油分としては、例えば液状シリコーン油、液状炭化水素油、液状エステル油、液状高級脂肪酸などが挙げられ、特に、常温(25℃)で低粘度、例えば、100mPa・s以下の液状油分が好ましい。好ましい粘度範囲は、1〜100mPa・sである。
本発明における好ましい配合形態である非乳化性架橋型シリコーン液状油膨潤物において、非乳化性架橋型シリコーンと液状油の混合の比率は質量比で、5:95〜40:60が好適である。この範囲において、本発明の水中油型乳化皮膚外用剤の調製にとって好適な膨潤物となる。
【0021】
非乳化性架橋型シリコーン(成分d)の液状油膨潤物は、市販されているものを用いることも可能であり、市販品の例としては、以下のようなものが挙げられる。
ジメチコンクロスポリマーの膨潤物として、9040シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、デカメチルシクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12%)、9041シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は16%)、9045シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、デカメチルシクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12.5%)、EL−8040IDシリコーンオーガニックブレンド(ジメチコンクロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は16%)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物として、KSG−15((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は4〜10%)、KSG−16((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコン6mPa・sの混合物で架橋物は20〜30%)、KSG−1610((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、メチルトリメチコンの混合物で架橋物は15〜20%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
ジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物として、KSG−18A((ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンの混合物で架橋物は10〜20%)(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0024】
ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物として、KSG−41((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、ミネラルオイルの混合物で架橋物は25〜30%)、KSG−42((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は20〜30%)、KSG−43((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、トリオクタノインの混合物で架橋物は25〜35%)、KSG−44((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、スクワランの混合物で架橋物は25〜35%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
アルキル(C30−45)セテアリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物として、VELVESIL 125(アルキル(C30−45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は約12.5%)、VELVESIL Plus(アルキル(C30−45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサン、PEG/PPG−20/23ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は約20%)(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0026】
セテアリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物として、VELVESIL DM(セテアリルジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は約17%)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0027】
次に、前記各必須成分a〜dの配合量について説明する。
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤における疎水基を持つ水溶性増粘剤(成分a)の配合量は、0.05〜3質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。配合量が0.05質量%未満であると十分な安定化効果が得られ難く、3質量%を越えて配合するとべたつきを生じて使用感が低下する場合がある。
【0028】
非乳化性架橋型シリコーン(成分d)の配合量は、0.1〜8質量%、好ましくは1.5〜6.5質量%である。配合量が0.1質量%未満であると柔軟性付与効果が得られ難く、8質量%を越えて配合しても効果の増強はみられず、却って不安定化を生じさせる一因になり得る。
【0029】
14以上のHLBを持つ非イオン性界面活性剤(成分b)の配合量は0.2〜5.0質量%とするのが好ましく、3〜5のHLBを持つポリエーテル変性シリコーン(成分c)の配合量は0.1〜1.0質量%とするのが好ましい。成分b及びcの配合量が前記下限値未満であると架橋型シリコーンを良好に分散させるのが困難になり、前記上限値を越えて配合するとべたつきを生じて使用性が低下する場合がある。
【0030】
また、前記成分bと成分cの配合量比率(質量%比率:b/c)は、好ましくは0.2〜4.0、より好ましくは0.5〜3.0の範囲内とする。この質量%比率(b/c)が0.2未満であるか4.0を越える場合は、架橋型シリコーンを良好に(微細に)分散させることが困難になることがある。
【0031】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤は、疎水基を持つ水溶性増粘剤を配合しているので、比較的低粘度であっても架橋型シリコーンを良好且つ安定に分散させることができる。従って、本発明の水中油型乳化皮膚外用剤は、例えば30000m・Pa以下の粘度の製剤とするのに特に適している。
【0032】
本発明の水中油型乳化皮膚外用剤は、前記必須成分a〜dに加えて、水中油型の乳化皮膚外用剤に配合しうる他の任意成分を本発明の効果を阻害しない範囲で含有することができる。
他の任意成分としては、限定されないが、例えば、保湿剤、中和剤、防腐剤、キレート剤、エモリエント剤、油剤、各種薬剤などを挙げることができる。
【実施例】
【0033】
以下、具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。なお、以下の実施例、比較例における配合量は全て質量%である。
【0034】
下記の表1〜表3に掲げた組成を有する水中油型乳化組成物を調製した。
調製した各組成物の物性を測定した後、各組成物を用いて20名の専門パネルによる実使用試験を行った。測定及び試験項目は以下の通りである。
(1)物性測定
粘度:25℃における粘度をB型粘度計により測定した。(VDA型粘度計(芝浦システム株式会社 DIGITAL VISMETRON VDA)、ローターNo.3又はNo.4、回転数12rpm、1分間の条件)
乳化粒子及びエラストマー粒子の径:水相中に分散された油相粒子(乳化粒子)の直径及び架橋型シリコーン粒子の直径を顕微鏡観察により測定した。
乳化安定性:組成物を目視観察し、製造直後及び50℃、1ヶ月後に変化の見られなかったものを○、若干の変化が見られたものを△、凝集が見られたものを×とした。
【0035】
(2)使用性評価
伸びの滑らかさ、べたつきのなさについて、以下の評価点基準に基づいて各専門パネルが評価し、その評価点の合計によって4段階にランク付けした。ランク付けした結果を表1〜3に併せて示す。
【0036】
評価点基準:
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣っている。
1点:非常に劣っている。
評価ランク:
◎:合計点が90点以上100点以下
○:合計点が70点以上90点未満
△:合計点が40点以上70点未満
×:合計点が40点未満
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
表1に示した結果では、本発明の成分a(疎水基を持つ水溶性増粘剤)であるアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム(AMPS)/カルボキシエチルアクリレート)クロスポリマーを、疎水基を持たない水溶性増粘剤である(AMPS/ビニルピロリドン(VP))コポリマーに置換した比較例2では、その粘度が40000と大きくなるため架橋型シリコーンの分散性(安定性)は保持されるものの、使用性の全ての項目で不十分な結果となった。
【0041】
さらにポリエーテル変性シリコーン(成分c)を抜去した比較例1では、架橋型シリコーンの粒子径が大きいものとなった。また、比較例1における水溶性増粘剤の配合量を減らして粘度を低下させると、使用性の改善は見られたが、架橋型シリコーンの分散性(乳化安定性)が低下してしまうという現象が観察された。
【0042】
表2に示した結果は、成分c(PEG−10ジメチコン)の配合量を1質量%に固定して、成分b(モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン)と成分cとの質量%比率(b/c)を0.5〜3.0の範囲内で変化させたところ、何れの場合も油相及び架橋型シリコーンが安定に微細分散され、使用性の全ての項目ですぐれたものが得られることを示唆している。
【0043】
表3に示した結果は、成分bと成分cとの質量%比率(b/c)を1.5とし、それらの配合量を変化させた場合の特性変化を示している。成分b及びcの配合量を減少させると、架橋型シリコーンの粒子径及び組成物の粘度が増大する傾向が見られた。一方、成分cの配合量が1.0質量%を越えるとべたつきが生じるという結果も示された。
【0044】
以下に示す処方で本発明の水中油型乳化皮膚外用剤を調製した。
実施例9.美白クリーム
(成分名) (質量%)
(1)イオン交換水 残余
(2)グリセリン 5.0
(3)ジプロピレングリコール 5.0
(4)エリスリトール 1.0
(5)ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
(6)(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/
カルボキシエチルアクリレート)クロスポリマー 1.5
(7)(アルキル(C30−45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、
シクロペンタシロキサンの混合物;架橋物は約12.5%)*1) 24.0
(実分3.0)
(8)エチルヘキサン酸セチル 2.0
(9)POE(20)ベヘニルエーテル(HLB16.5) 1.3
(10)PEG−10ジメチコン 0.52
(11)トラネキサム酸 1.0
(12)アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.1
(13)エデト酸塩 0.1
(14)フェノキシエタノール 0.5
(15)香料 適量
*1) 商品名:VELVESIL125;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製
【0045】
(製法)
(1)〜(6)、(11)〜(14)を均一に溶解した水相を調製する。次いで、(7)〜(10)、(15)を均一に分散させた油相を調製する。この油相を先に調製した水相に添加して、ディスパーにて乳化粒子径を平均3μm、エラストマー粒子径を平均40μm以下に調製して、粘度25000mPa・sの目的の美白クリームを得た。
得られた美白クリームは、50℃、1ケ月の安定性に問題はなく、また、使用感においても伸びの滑らかさおよびべたつきのなさにおいても優れたものであった。
【0046】
実施例10.アンチエイジングクリーム
(成分名) (質量%)
(1)イオン交換水 残余
(2)グリセリン 7.0
(3)ジグリセリン 3.0
(4)1,3−ブチレングリコール 5.0
(5)キシリトール 1.0
(6)アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
(7)(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/
カルボキシエチルアクリレート)クロスポリマー 1.5
(8)(ジメチコンクロスポリマー、デカメチルシクロペンタシロキサン
の混合物;架橋物は12.5%)*2) 40.0
(実分5.0)
(9)トリオクタノイン 3.0
(10)POE(30)フィトステロール(HLB18.0) 2.0
(11)PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン
(HLB=4.0) 1.0
(12)カルノシン 1.0
(13)加水分解酵母エキス 0.1
(14)エデト酸塩 0.05
(15)クエン酸 0.1
(16)パラベン 0.15
(17)香料 適量
*2) 商品名:9045シリコーンエラストマーブレンド;東レ・ダウコーニング社製
【0047】
(製法)
(1)〜(7)、(12)〜(16)を均一に溶解した水相を調製する。次いで、(8)〜(11)、(17)を均一に分散させた油相を調製する。この油相を先に調製した水相に添加して、ディスパーにて乳化粒子径を平均3μm、エラストマー粒子径を平均40μm以下に調製して、粘度15000mPa・sの目的のアンチエイジングクリームを得た。
得られたアンチエイジングクリームは、50℃、1ケ月の安定性に問題はなく、また、使用感においても伸びの滑らかさおよびべたつきのなさにおいても優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)〜(d):
(a)疎水基を持つ水溶性増粘剤、
(b)14以上のHLBを持つ非イオン性界面活性剤、
(c)3〜5のHLBを持つポリエーテル変性シリコーン、及び
(d)非乳化性の架橋型シリコーンを含有することを特徴とする水中油型乳化皮膚外用剤。
【請求項2】
前記(a)疎水基を持つ水溶性増粘剤が、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/カルボキシエチルアクリレート)クロスポリマー、アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30)クロスポリマー、及び(PEG−240/デシルテトラデセス−20/HDI)コポリマーからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記(d)非乳化性架橋型シリコーンが、ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマー、ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー、ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス−ビニルジメチコンクロスポリマー、アルキル(C30−45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、及びセテアリルジメチコンクロスポリマーからなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記(d)非乳化性架橋型シリコーンが、常温で液状の油分で膨潤した膨潤物の形態で配合される、請求項1から3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記(b)14以上のHLBを持つ非イオン性界面活性剤の配合量が0.2〜5.0質量%であり、前記(c)3〜5のHLBを持つポリエーテル変性シリコーンの配合量が0.1〜1.0質量%であり、なおかつ前記成分bと成分cの質量%比率(b/c)が0.2〜4.0の範囲内である、請求項1から4の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
常温(25℃)での粘度が30000m・Pa以下である請求項1から5の何れか一項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2013−82686(P2013−82686A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−192929(P2012−192929)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】