説明

水処理方法及び水処理装置

【課題】凝集処理における凝集剤の注入量を、原水中に含まれる凝集すべき成分の量に対して過不足なく適切に制御できるような水処理方法を提供する。
【解決手段】処理対象となる原水中に化学物質を添加する化学物質添加処理と、前記化学物質添加処理後の原水中に凝集剤を注入して前記原水中の固形分を凝集させる凝集処理とを含む水処理方法であって、前記凝集剤の注入量を、前記化学物質添加後の水質を一定制御した場合における前記化学物質の必要添加量に応じて制御する水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象となる原水中に化学物質を添加する化学物質添加処理と、前記化学物質添加処理後の原水中に凝集剤を注入して前記原水中の固形分を凝集させる凝集処理とを含む水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理には、その工程の1つとして、原水(処理対象水)に凝集剤を注入して原水中の固形分を凝集させる凝集処理が含まれる。従来、この凝集処理における凝集剤の注入量は、処理システムに流入する原水の濁度に基づいて制御するのが一般的である(特許文献1及び2参照)。なお、凝集処理には沈殿処理(+砂ろ過)を伴うのが通常であり、その場合の凝集処理は、凝集によって形成されたフロックを良好に沈殿させることを目標としていた。
【0003】
近年、凝集処理の対象は、河川水や工場排水だけでなく、無機成分が少なく、かつ有機物が多く含まれる下水の二次処理水など多様化している。また、凝集処理後、必ずしも沈殿処理を行わず、凝集物(懸濁物)を除去する方式(膜ろ過処理など)が用いられつつある。沈殿処理を行わず、例えば膜ろ過処理により凝集物(懸濁物)の除去を行う場合には、原水中の微細固形物が膜に詰まって膜の透過抵抗が増大するのを抑制するため、凝集処理において、原水中の微細固形物を十分に凝集させておくことが重要である。
【0004】
ところで、凝集剤の注入量を、処理対象である原水の濁度に基づいて制御する従来の方法においては、原水の濁度が低い、若しくは濁度変化が小さいため制御ができない場合がある。また、濁度が同一であっても、濁度として計測される物質の中の無機物と有機物との比が異なっていたり、濁度として計測されない物質(溶解性の有機物など)が含まれていたりすると、必要とされる凝集剤の量が異なる場合があるため、原水の濁度に基づいて凝集剤の注入量を制御する方法では、凝集剤の過不足が生じることが有る。
【0005】
また、凝集剤の注入量を、原水中の有機物量に基づいて制御することも行われており、その際、有機物量の指標としてはE260(波長260nmの紫外線の吸光度)やTOC(総有機炭素量)などが用いられているが、これらの指標を用いる場合、有機物量の測定作業が繁雑で、迅速かつ連続的な測定を行うことが困難である。また、これらの指標は、凝集すべき有機物の総量を表してはおらず、更に無機成分については考慮されていないため、やはりそれらの値に基づいて凝集剤の注入量を過不足なく適切に制御することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−61800号公報
【特許文献2】特開2007−185610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、凝集処理における凝集剤の注入量を、原水中に含まれる凝集すべき成分の量に対して過不足なく適切に制御できるような水処理方法及び水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の水処理方法及び水処理装置が提供される。
【0009】
[1] 処理対象となる原水中に化学物質を添加する化学物質添加処理と、前記化学物質添加処理後の原水中に凝集剤を注入して前記原水中の固形分を凝集させる凝集処理とを含む水処理方法であって、前記凝集剤の注入量を、前記化学物質添加後の水質を一定制御した場合における前記化学物質の必要添加量に応じて制御する水処理方法。
【0010】
[2] 前記水質が、残留化学物質濃度である[1]に記載の水処理方法。
【0011】
[3] 前記化学物質が、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム及び二酸化塩素からなる群より選択される何れか1種の化学物質である[1]又は[2]に記載の水処理方法。
【0012】
[4] 前記凝集剤の注入量を、前記化学物質の必要添加量に比例するように制御する[1]〜[3]の何れかに記載の水処理方法。
【0013】
[5] 処理対象となる原水中に化学物質を添加する化学物質添加処理と、前記化学物質添加処理後の原水中に凝集剤を注入して前記原水中の固形分を凝集させる凝集処理とを行う水処理装置であって、前記凝集剤の注入量を、前記化学物質添加後の水質を一定制御した場合における前記化学物質の必要添加量に応じて制御する水処理装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、凝集処理における凝集剤の注入量を制御するための指標(基準)として、化学物質添加処理における化学物質要求量(化学物質添加後の水質を一定制御した場合における化学物質の必要添加量)を用いたことにより、凝集剤を、原水中に含まれる凝集すべき成分の量に対して過不足なく注入することができ、その結果、凝集処理後段のプロセス(膜ろ過処理など)の効率及び処理水の水質を向上させることができるとともに、凝集剤の過剰な注入を防ぐことでその注入量を減少させ、水処理のランニングコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の水処理装置の構成の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明の水処理装置の構成の他の一例を示すフロー図である。
【図3】図1の水処理装置で、オゾン接触槽の出口の残留溶存オゾン濃度を一定になるよう制御した場合における、オゾン発生装置からのオゾンガス発生濃度、原水の総有機物炭素濃度及び濁度を示したグラフである。
【図4】オゾン発生装置からのオゾンガス発生濃度に応じて凝集剤の注入量を比例制御する方法の一例を示すグラフである。
【図5】オゾン発生装置からのオゾンガス発生濃度に応じて凝集剤の注入量を多段制御する方法の一例を示すグラフである。
【図6】図4に示した比例制御により、オゾン発生装置からのオゾンガス発生濃度に応じて凝集剤の注入量を制御した場合における、オゾンガス発生濃度と凝集剤の注入量との時間変化を示すグラフである。
【図7】オゾン発生装置からのオゾン発生濃度に応じて凝集剤の注入量を比例制御した場合における、凝集剤の注入量と、原水の濁度と、凝集処理後段の膜ろ過処理における膜差圧との時間変化を示すグラフである。
【図8】原水の濁度に応じて凝集剤の注入量を比例制御した場合における、凝集剤の注入量と、原水の濁度と、凝集処理後段の膜ろ過処理における膜差圧との時間変化を示すグラフである。
【図9】オゾン発生装置からのオゾン発生濃度に応じて凝集剤の注入量を制御した場合と、原水の濁度に応じて凝集剤の注入量を制御した場合とにおける、膜ろ過処理後の処理水中に含まれる総有機炭素濃度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0017】
本発明の水処理方法は、処理対象となる原水中に化学物質を添加する化学物質添加処理と、前記化学物質添加処理後の原水中に凝集剤を注入して前記原水中の固形分を凝集させる凝集処理とを含む。
【0018】
化学物質添加処理において、処理対象となる原水中に添加する化学物質としては、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素等が好適なものとして挙げられ、これらの化学物質は、原水中に含まれる成分を酸化する酸化剤として用いられる。
【0019】
凝集処理は、化学物質添加処理後の原水中に凝集剤を注入して原水中の固形分を凝集させる処理であり、本発明は、この凝集処理における凝集剤の注入量を、前記化学物質添加後の水質を一定制御した場合における前記化学物質の必要添加量(以下、この必要添加量のことを「化学物質要求量」と称する。)に応じて制御することを、その主要な特徴とする。ここで、「水質」とは、前記化学物質の添加により変化する水の性質であって、例えば、前記化学物質の添加後に消費されず残留する化学物質の濃度(例えば、残留溶存オゾン濃度や残留塩素濃度)、色度、濁度、吸光度などを指す。
【0020】
凝集処理において、化学物質添加処理後の原水中に注入する凝集剤としては、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド、塩化第二鉄、PSI(ポリシリカ鉄)等が好適なものとして挙げられる。
【0021】
本発明において、凝集剤の注入量を制御するための指標(基準)として用いられる、化学物質要求量は、当該化学物質によって酸化される原水中の有機物や無機物の量及び質(種類)によって複合的に変化する。このため、化学物質要求量は、濁度や総有機炭素量などで表される原水中の一部の水質を表した指標と異なり、処理水の水質負荷(被処理物質)の総量を示す代替指標となり得る。したがって、化学物質要求量に基づいて凝集剤の注入量を制御することにより、凝集剤を、原水中に含まれる凝集すべき成分の量に対して過不足なく注入することができる。
【0022】
なお、凝集処理後の原水は、膜ろ過処理等の後段のプロセスにより凝集物(懸濁物)が分離される。膜ろ過処理を行う場合、分離膜としては、MF膜やUF膜が好適に使用できる。分離膜の材質は、高分子膜であってもセラミック膜であっても良い。また、分離膜の形状は、一般的なモノリス型の他、チューブラー膜、ハニカム膜、中空糸膜、平膜等、任意の形状のものを使用できる。
【0023】
本発明の水処理装置は、本発明の水処理方法を実施するために使用されるものである。この水処理装置は、処理対象となる原水中に化学物質を添加する化学物質添加処理と、前記化学物質添加処理後の原水中に凝集剤を注入して前記原水中の固形分を凝集させる凝集処理とを行うものであり、前記凝集剤の注入量を、前記化学物質添加後の水質を一定制御した場合における前記化学物質の必要添加量に応じて制御することを、その主要な特徴とする。
【0024】
図1は、本発明の水処理装置の構成の一例を示すフロー図である。この水処理装置100は、オゾン接触槽1、pH調整槽2、凝集混和槽3、膜ろ過装置4、及び処理水槽5を備える。処理対象である原水は、原水供給ポンプ6によりオゾン接触槽1に圧送される。オゾン接触槽1では、オゾン発生装置7より発生したオゾンガスがディフューザー8より散気され、原水中に溶解させられる。所定時間オゾンと接触した原水は、オゾン接触槽1から越流し、pH調整槽2でpH調整剤を添加された後、凝集剤混和槽3へと送水される。凝集剤混和槽3にはpH計15が設けられており、pH調整剤は、このpH計15にて計測されるpHが所定の値になるようにpH調整剤供給ポンプ16によりpH調整槽2に添加される。凝集剤混和槽3では、凝集剤貯留槽9から、凝集剤注入ポンプ10を介して凝集剤が添加され、撹拌スクリュー17により混和された後、膜ろ過供給ポンプ11を介して膜ろ過装置4へと圧送される。膜ろ過装置4で膜ろ過処理された水は、処理水槽5に貯留された後、処理水として送水される。
【0025】
本実施例における、化学物質要求量としては、オゾン発生装置7より発生したオゾンガス濃度が使用される。オゾン発生装置7より発生したオゾンガスは、オゾン接触槽1へ注入される。オゾンガス発生濃度は、溶存オゾン濃度計12で計測される残留溶存オゾン濃度が一定の範囲(例えば0.3〜1.0mg/L)になるよう制御する。溶存オゾン濃度計12で計測された残留溶存オゾン濃度の情報は制御部13に送られる。制御部13は、溶存オゾン濃度計12で計測された残留溶存オゾン濃度が制御値(例えば0.3〜1.0mg/L)より低い場合は、オゾン発生装置7の出力を上げ、残留溶存オゾン濃度が制御値より高い場合は、オゾン発生装置7の出力を下げるよう指令を出すための演算処理装置である。オゾン発生装置7で発生させたオゾンガスは、オゾンガス濃度計14にて濃度が計測される。オゾンガス濃度計14にて計測されたオゾンガス濃度の情報は、制御部13に送られ、制御部13は、そのオゾンガス濃度に基づいて凝集剤注入ポンプ10の出力を制御する。
【0026】
図3は、前記水処理装置で、オゾン接触槽1の出口の残留溶存オゾン濃度を一定になるよう制御した場合における、オゾン発生装置7からのオゾンガス発生濃度、原水の総有機物炭素濃度及び濁度を示したグラフである。なお、このグラフにおいて、左側縦軸の数値は、総有機物炭素濃度(mg/L)と濁度(度)との両方に共有される。このグラフから、残留溶存オゾン濃度を一定になるよう制御した場合に必要となるオゾンの添加量(オゾンガスの発生濃度)は、濁度や総有機炭素濃度の変動のみに依存していないことがわかる。
【0027】
オゾンは、総有機炭素や濁度として計測される成分の全部若しくは一部に消費される。総有機炭素で計測される成分では、有機物の形態(高分子、低分子など)によってオゾンの消費量が変わり、濁度として計測される濁質は、有機性と無機性のものがあり、存在する濁質の質と量によってオゾンの消費量は異なる。このため、同じ総有機物炭素濃度や濁度であっても、原水中の含有成分によってオゾンの消費量は異なるものとなる。また、オゾンを消費する物質は、総有機炭素や濁度として計測される成分だけではない。残留溶存オゾン濃度一定制御下において、オゾン発生装置7からのオゾンガス発生濃度(オゾン接触槽1へのオゾンガス注入量)は、原水中に含まれる、オゾンを消費する成分(オゾンにより酸化される成分)の総量に対応して変動する。このため、オゾン発生濃度は、処理水の水質負荷(被処理物質)の総量を示す代替指標となり得る。このオゾンガス発生濃度に基づいて凝集剤の注入量を制御することにより、凝集剤を、原水中に含まれる凝集すべき成分の量に対して過不足なく注入することができる。
【0028】
図4及び図5は、オゾンガス発生濃度(化学物質要求量)に応じて凝集剤の注入量を制御する方法の例を示すグラフである。本発明においては、図4に示すように、凝集剤の注入量を、化学物質要求量に比例するように制御(比例制御)しても良いし、図5に示すように、凝集剤の注入量を、化学物質要求量に応じて段階的に変化するように制御(多段制御)しても良い。
【0029】
図6は、図4のように、凝集剤の注入量をオゾンガス発生濃度(化学物質要求量)に応じて比例制御した場合における、化学物質要求量と凝集剤の注入量との時間変化を示すグラフである。また、図7は、凝集剤の注入量をオゾンガス発生濃度(化学物質要求量)に応じて比例制御した場合における、凝集剤の注入量と、原水の濁度と、凝集処理後段の膜ろ過処理における膜差圧との時間変化を示すグラフであり、図8は、原水の濁度に応じて比例制御した場合における、凝集剤の注入量と、原水の濁度と、凝集処理後段の膜ろ過処理における膜差圧との時間変化を示すグラフである。なお、図7及び図8のグラフにおいて、左側縦軸の数値は、凝集剤注入量(mg/L)と膜差圧(kPa)との両方に共有される。
【0030】
膜差圧は、膜ろ過処理に用いられる分離膜の目詰まりの程度によりその値が変動し、膜差圧の値が上昇するほど膜の目詰まりが進行して運転が困難になる。図7に示すように、凝集剤の注入量を化学物質要求量に応じて比例制御した場合、膜差圧はほとんど上昇することなく安定運転が可能である。これは、原水中に含まれる凝集すべき成分の量に対して適切な量の凝集剤の注入されたため、目詰まりの原因となる微細固形物が膜ろ過処理の前に十分に凝集されて、分離膜の目詰まりが抑制されためである。
【0031】
一方、図8に示すように、凝集剤の注入量を原水の濁度に応じて比例制御した場合、図中に星印で示した濁度が低い時には、それに対応して凝集剤の注入量を低下させる。最初の濁度低下時(左側の星印)には、それに対応して凝集剤の注入量を低下させても膜差圧の上昇が見られないため、凝集剤の注入量は十分であると考えられる。一方、2度目の濁度低下時(右側の星印)には、濁度低下に対応して凝集剤の注入量を低下させると、膜差圧が大きく上昇している。この膜差圧の上昇は、凝集剤の注入量が不足して、微細固形物が十分に凝集されず、分離膜の目詰まりを引き起こしたことを意味する。すなわち、最初の濁度低下時と2度目の濁度低下時とでは、濁度の値はほぼ同一であるが、前者においては凝集剤の注入量が十分であるのに対し、後者では凝集剤の注入量が不足しており、このことから、同じ濁度においても、必要な凝集剤の注入量が異なる場合があり、凝集剤の注入量を原水の濁度に基づいて制御する方法では、適切な量の凝集剤の注入ができないことがわかる。
【0032】
また、凝集剤の注入量を平均値で比較すると、図7に示すように、凝集剤の注入量を化学物質要求量に応じて比例制御した場合では15.5mg/Lであったのに対し、図8に示すように、凝集剤の注入量を原水の濁度に応じて比例制御した場合では18.9mg/Lであった。このことから、凝集剤の注入量を、化学物質要求量に応じて制御した場合には、原水の濁度に応じて制御した場合に比べて、凝集剤の過剰な注入が生じにくく、その結果、凝集剤の注入量を低減できることがわかる。
【0033】
図9は、オゾンガス発生濃度(化学物質要求量)に応じて凝集剤の注入量を制御した場合と、原水の濁度に応じて凝集剤の注入量を制御した場合とにおける、膜ろ過処理後の処理水中に含まれる総有機炭素濃度の時間変化を示すグラフである。このグラフより、濁度に応じて凝集剤の注入量を制御した場合には、処理水の水質が安定せず、急激な水質の悪化(総有機炭素濃度の増大)が生じることがあるが、化学物質要求量に応じて凝集剤の注入量を制御した場合には、そのような急激な水質の悪化は発生せず、安定した水質を維持しながら装置の運転ができることがわかる。
【0034】
なお、以上説明してきた実施形態においては、化学物質添加処理の際の化学物質としてオゾンを用い、凝集処理における凝集剤の注入量を制御するための指標(基準)として、オゾンガス発生濃度(オゾンガス注入率)を用いているが、化学物質添加処理に用いる化学物質は、オゾンに限定されるものではなく、他の化学物質、例えば次亜塩素酸ナトリウムや二酸化塩素であっても良い。
【0035】
図2は、化学物質添加処理の際の化学物質として次亜塩素酸ナトリウムを用い、次亜塩素酸ナトリウム添加後の残留次亜塩素酸ナトリウム濃度を一定制御した場合における前記次亜塩素酸ナトリウムの添加量に応じて、凝集剤の注入量を制御する場合に使用可能な水処理装置の一例である。
【0036】
この水処理装置200は、次亜塩素酸ナトリウム添加槽21、pH調整槽2、凝集混和槽3、膜ろ過装置4、及び処理水槽5を備える。処理対象である原水は、原水供給ポンプ6により次亜塩素酸ナトリウム添加槽21に圧送される。次亜塩素酸ナトリウム添加槽21では、次亜塩素酸ナトリウム注入装置27より送られた次亜塩素酸ナトリウムが、原水に添加される。次亜塩素酸ナトリウムが添加された原水は、亜塩素酸ナトリウム添加槽21から越流し、pH調整槽2でpH調整剤を添加された後、凝集剤混和槽3へと送水される。凝集剤混和槽3にはpH計15が設けられており、pH調整剤は、このpH計15にて計測されるpHが所定の値になるようにpH調整剤供給ポンプ16によりpH調整槽2に添加される。凝集剤混和槽3では、凝集剤貯留槽9から、凝集剤注入ポンプ10を介して凝集剤が添加され、撹拌スクリュー17により混和された後、膜ろ過供給ポンプ11を介して膜ろ過装置4へと圧送される。膜ろ過装置4で膜ろ過処理された水は、処理水槽5に貯留された後、処理水として送水される。
【0037】
次亜塩素酸ナトリウム添加槽21への次亜塩素酸ナトリウムの添加量は、残留塩素濃度計22で計測される残留次亜塩素酸ナトリウム濃度が一定の範囲になるよう制御する。残留塩素濃度計22で計測された残留次亜塩素酸ナトリウム濃度の情報は制御部23に送られ、制御部23は、残留次亜塩素酸ナトリウム濃度が制御値より低い場合は、次亜塩素酸ナトリウム注入装置27からの注入量を増加させ、残留次亜塩素酸ナトリウム濃度が制御値より高い場合は、次亜塩素酸ナトリウム注入装置27からの注入量を減少させるよう指令を出す。次亜塩素酸ナトリウム注入装置27から次亜塩素酸ナトリウム添加槽21に注入される次亜塩素酸ナトリウムの添加量は、流量計24にて計測される。流量計24にて計測された次亜塩素酸ナトリウムの添加量の情報は、制御部23に送られ、制御部23は、その添加量に基づいて凝集剤注入ポンプ10の出力を制御する。
【0038】
本実施例においても、凝集剤の注入量は、次亜塩素酸ナトリウム濃度(化学物質要求量)に比例するように制御(比例制御)しても良いし、次亜塩素酸ナトリウム濃度(化学物質要求量)に応じて段階的に変化するように制御(多段制御)しても良い。これら制御における、適正な制御切り替え点の数値(化学物質要求量と凝集剤注入量)は、各水処理装置とその処理原水の性質により定まるものであり、水処理装置を運手しながら、切り替え点の数値を選択してゆけばよい。
【0039】
残留次亜塩素酸ナトリウム濃度一定制御下において、次亜塩素酸ナトリウム注入装置27から次亜塩素酸ナトリウム添加槽21に注入される次亜塩素酸ナトリウムの添加量は、原水中に含まれる、次亜塩素酸ナトリウムを消費する成分の総量に対応して変動する。このため、次亜塩素酸ナトリム添加量は、処理水の水質負荷(被処理物質)の総量を示す代替指標となり得る。この次亜塩素酸ナトリウムの添加量に基づいて凝集剤の注入量を制御することにより、凝集剤を、原水中に含まれる凝集すべき成分の量に対して過不足なく注入することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、河川水、工場排水、下水の二次処理水等の水処理方法として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1:オゾン接触槽、2:pH調整槽、3:凝集混和槽、4:膜ろ過装置、5:処理水槽、6:原水供給ポンプ、7:オゾン発生装置、8:ディフューザー、9:凝集剤貯留槽、10:凝集剤注入ポンプ、11:膜ろ過供給ポンプ、12:溶存オゾン濃度計、13:制御部、14:オゾンガス濃度計、15:pH計、16:pH調整剤供給ポンプ、17:撹拌スクリュー、21:次亜塩素酸ナトリウム添加槽、22:残留塩素濃度計、23:制御部、24:流量計、27:次亜塩素酸ナトリウム注入装置、100:水処理装置、200:水処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象となる原水中に化学物質を添加する化学物質添加処理と、前記化学物質添加処理後の原水中に凝集剤を注入して前記原水中の固形分を凝集させる凝集処理とを含む水処理方法であって、
前記凝集剤の注入量を、前記化学物質添加後の水質を一定制御した場合における前記化学物質の必要添加量に応じて制御する水処理方法。
【請求項2】
前記水質が、残留化学物質濃度である請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記化学物質が、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム及び二酸化塩素からなる群より選択される何れか1種の化学物質である請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記凝集剤の注入量を、前記化学物質の必要添加量に比例するように制御する請求項1〜3の何れか一項に記載の水処理方法。
【請求項5】
処理対象となる原水中に化学物質を添加する化学物質添加処理と、前記化学物質添加処理後の原水中に凝集剤を注入して前記原水中の固形分を凝集させる凝集処理とを行う水処理装置であって、
前記凝集剤の注入量を、前記化学物質添加後の水質を一定制御した場合における前記化学物質の必要添加量に応じて制御する水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−56478(P2011−56478A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212019(P2009−212019)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】