説明

水性アニオン樹脂分散体のキレート剤での安定化

クロム酸ストロンチウムなどの二価金属の顔料を含む水性アニオン樹脂分散体は、アルミニウム基板の皮膜形成用として周知であり、この場合、クロム酸ストロンチウムは顕著な腐食防止をもたらす。残念ながら、これらの分散体は不安定である。本発明では、クロム酸ストロンチウムなどの二価金属の顔料を含む水性樹脂分散体の安定化が開示される。安定化は分散体にキレート剤を組み入れることによって達成される。安定化された水性分散体は、アニオン電着法において、より詳細には、アルミニウム基板へ耐腐食性皮膜を電着するために特に有用である。さらに、処理液にアゾール腐食防止剤を含めることによって、処理液中のクロム含有顔料の存在を最低限にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二価金属の顔料を含む水性アニオン分散体、およびこれらの分散体の安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
クロム酸ストロンチウムなどの二価金属の顔料を含む水性アニオン樹脂分散体は、アルミニウム基板の皮膜形成用として周知であり、この場合、クロム酸ストロンチウムは顕著な腐食防止をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら、これらの分散体は不安定である。二価金属カチオンが原因で分散体からアニオン樹脂が分離すると考えられる。このような水性樹脂分散体を安定化させることは望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、水性アニオン樹脂分散体は、二価金属の顔料、特に、クロムもまた含む二価金属の顔料を含む。このような顔料、例えばクロム酸ストロンチウムは、分散体にキレート剤を添加することによって安定化される。安定化された水性分散体は、アニオン電着(anionic electrodeposition)法において、より詳細には、アルミニウム基板へ耐腐食性皮膜を電着するために特に有用である。さらに、処理液にアゾール腐食防止剤を含めることによって、処理液中のクロム含有顔料の存在を最低限にできる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
水性分散体に含まれる樹脂は、好ましくは、アニオン樹脂である。好ましいアニオン樹脂はリン酸エステル化エポキシ樹脂である。
【0006】
ここで有用なリン酸エステル化エポキシ樹脂は、ゲル化せず、通常、次のように調製される。エポキシ含有材料、例えばポリエポキシドが、リン酸またはその等価物などのリン含有酸と反応させる。本明細書において有用なポリエポキシドは、1分子当たり1.0個を超えるエポキシ基を有する化合物、または化合物の混合物であり得る。いくつかのポリエポキシドが当技術分野において知られている。ポリエポキシドの例は、Handbook of Epoxy Resins、Lee and Neville、1967年(McGraw-Hill BookCompany)に見出すことができる。
【0007】
ポリエポキシドの好ましい種類は、ポリフェノールのポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAである。これらは、アルカリの存在下における、エピクロロヒドリンによるポリフェノールのエーテル化によって製造される。このフェノール化合物は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシtert−ブチルフェニル)プロパン;ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン;1,5−ジヒドロキシナフタレン;および1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)エタンであり得る。ポリエポキシドの別の有用な種類は、ポリフェノール樹脂から同様に製造される。
【0008】
前記ポリエポキシドに加えて、ペンダントエポキシ基を含む付加重合ポリマーもまた用いることができる。これらのポリマーは、重合性の様々なエチレン性不飽和モノマー(これらの少なくとも1種は、エポキシ含有モノマー、例えば、グリシジルアクリラートまたはグリシジルメタクリラートである)を共重合することによって製造される。
【0009】
エポキシ基と反応する基を含まない適切なエチレン性不飽和モノマーが、ここでは、コモノマーとして用いられ得る。好ましいモノマーには、α,β−エチレン性不飽和モノマー、例えば、1から約8個の炭素原子を含む飽和アルコールの不飽和カルボン酸エステル、ならびに、スチレンおよびビニルトルエンなどのモノビニル芳香族モノマーが含まれる。
【0010】
好ましいポリエポキシドは、約172から5000で、好ましくは300から1000のエポキシ当量を有する。
【0011】
ポリエポキシドに加えて、反応混合物は、アルコールおよびフェノールのモノグリシジルエーテル(例えば、フェニルグリシジルエーテル)、ならびにモノカルボン酸のグリシジルエステル(例えば、グリシジルネオデカノアート)などのモノマーモノエポキシドを含み得る。
【0012】
エポキシ含有材料と反応させるリン酸は、100パーセントのオルトリン酸、または、85パーセントのリン酸と呼ばれるものなどのリン酸水溶液であり得る。スーパーリン酸(superphosphoric acid)、二リン酸および三リン酸などの他の形のリン酸が、ここでは、用いられ得る。また、リン酸のポリマーまたは部分的無水物も用いることができる。通常、約70から90パーセント、好ましくは、約85パーセントのリン酸であるリン酸水溶液が用いられる。
【0013】
リン酸以外に、ホスホン酸またはホスフィン酸もまた、エポキシ含有材料と反応させることができる。ホスホン酸の例は、次の構造の有機ホスホン酸である。
【0014】
【化1】

式中、Rは、有機基、例えば、合計で1〜30個(例えば6〜18個)の炭素を有するものである。Rは、脂肪族、芳香族、または脂肪族/芳香族の混合であってよく、非置換炭化水素、または置換炭化水素であり得る。
【0015】
ホスフィン酸の例は、次の構造の有機ホスフィン酸である。
【0016】
【化2】

式中、好ましくは、RおよびR’は、互いに独立に、水素または有機基である。このような基の例は、合計で1〜30個(例えば6〜18個)の炭素を有するものである。ホスフィン酸の有機構成部分(R、R’)は、脂肪族、芳香族、または脂肪族/芳香族の混合であってよい。RおよびR’は、非置換炭化水素、または置換炭化水素であり得る。
【0017】
有機ホスホン酸の代表例は次の通りである:プロピルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、ブチルホスホン酸、カルボキシエチルホスホン酸、ジフェニルホスフィン酸、ドデシルホスホン酸、エチリデンジホスホン酸、ヘプタデシルホスホン酸、メチルベンジルホスフィン酸、ナフチルメチルホスフィン酸、オクタデシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、メチルフェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、スチレンホスホン酸、ドデシルビス−1,12−ホスホン酸、ポリ(エチレングリコール)ホスホン酸。
【0018】
また、リン酸とホスホン酸の混合物などの、リン含有酸の混合物も使用され得る。
【0019】
通常、ポリエポキシドと、リン含有酸または酸の混合物との反応は、ポリエポキシドと(1種または複数の)リン含有酸とを混合し、場合によりオニウム塩などの触媒の存在下において、高温で30から90分間加熱して反応を完了させることによって、有機溶媒中で実施される。互いに反応させる、ポリエポキシドと(1種または複数の)リン含有酸との相対量は、次の通りである:各当量のエポキシに対して、少なくとも0.1モル、通常は0.1から0.2モルの(1種または複数の)リン含有酸が存在する。通常、エポキシ−リン含有酸の反応生成物は、樹脂固体に基づいて、10から60、好ましくは15から50の酸価を有する。
【0020】
エポキシ含有材料と、リン含有酸(例えば、リン酸とホスホン酸)の混合物とを反応させること以外に、ポリエポキシドは、別々に、リン酸と、またホスホン酸と反応させることができる。次いで、様々な反応生成物は一緒にされ得る。
【0021】
他のアニオン樹脂の例は、塩基で可溶化された、カルボン酸含有ポリマー、例えば、乾性油もしくは半乾性脂肪酸エステルと、ジカルボン酸もしくは無水物との反応生成物または付加物;ならびに、脂肪酸エステル、不飽和の酸もしくは無水物、および任意のさらなる不飽和変性材料(これらの変性材料はポリオールとさらに反応させる)の反応生成物である。やはり適切であるのは、不飽和カルボン酸のヒドロキシ−アルキルエステル(例えば、ヒドロキシエチルアクリラートおよび/またはヒドロキシメチルメタクリラート)、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸)、ならびに、少なくとも1種の他のエチレン性不飽和モノマー(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸の低級アルキルエステル、例えば、エチルアクリラートおよびブチルメタクリラート)のインターポリマー(少なくとも部分的に中和されている)である。このようなインターポリマーまたは樹脂は、一般に、(メタ)アクリル樹脂と呼ばれる。さらに別の適切なアニオン樹脂は、アルキド−アミノプラストビヒクル、すなわち、アルキド樹脂およびアミン−アルデヒド樹脂を含むビヒクルである。さらに他のアニオン樹脂は、樹脂状ポリオールの混合エステルである。これらの組成物は、米国特許第3749657号の9欄の1から75行、および10欄の1から13行に詳細に記載されている。
【0022】
アニオン樹脂は、水性分散体の固体重量に基づいて、30から80重量パーセントの量で分散体中に存在する。
【0023】
アニオン樹脂は、通常、アミノプラストまたはフェノールプラスト樹脂などの硬化剤と共に用いられる。本発明の有用なアミノプラスト樹脂は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、およびベンズアルデヒド)と、アミノもしくはアミド基含有材料(例えば、尿素、メラミン、およびベンゾグアナミン)との縮合生成物である。アルコールおよびホルムアルデヒドと、メラミン、尿素およびベンゾグアナミンとの反応により得られる生成物が、本明細書では好ましい。
【0024】
有用なアミノプラストの例示的であるが、非限定的な例は、Cytec IndustriesからCYMELの、またSolutia Inc.からRESIMENEの商標で入手できるものである。具体的な例は、CYMEL 1130および1156、ならびにRESIMENE 750および753である。
【0025】
(a)アニオン樹脂および(b)硬化剤の相対量は、(a)および(b)の固体重量に基づいて、50から90、好ましくは60から75重量パーセントのアニオン樹脂、および10から50、好ましくは25から40重量パーセントの硬化剤である。
【0026】
樹脂組成物を水系で電気泳動性の組成物であるようにするために、それは塩基により中和される。本明細書において有用な塩基は、有機または無機であり得る。塩基の実例は、アンモニア、水酸化ナトリウム、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、もしくはトリアルキルアミン、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミンおよびシクロヘキシルアミン;モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンもしくはトリアルカノールアミン、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミンおよびジエチルエタノールアミン;モルホリン、例えば、N−メチルモルホリンもしくはN−エチルモルホリンである。中和のパーセントは、樹脂ブレンドを水分散性に、また電気泳動性にすると思われるようなものである。通常、樹脂ブレンドは、約40から150パーセント、好ましくは60から120パーセントの中和まで、少なくとも部分的に中和される。
【0027】
水性樹脂分散体は、また、二価金属の1種または複数の顔料も含む。適切な2価の金属の例は、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムおよびバリウムである。好ましくは、顔料はまた、クロムも含む。このような顔料の例は、クロム酸カルシウム、クロム酸マグネシウム、クロム酸ストロンチウムおよびクロム酸バリウムである。このようなクロム顔料は、アルミニウム基板への電着のためのアニオン樹脂分散体に、特に望ましい。二価金属顔料は、水性樹脂分散体の重量に基づいて、典型的には10重量パーセントまで、より典型的には0.01から5重量パーセントの量で水性分散体中に存在する。
【0028】
二価金属顔料がクロムを含んでいる場合、顔料レベルは、上の範囲内で、最低限にされるべきである。このため、クロム含有顔料を補足するために、環境に優しい有機の腐食防止剤が、水性分散体中に存在することが好ましい。好ましい腐食防止剤はアゾール(すなわち、複素環に、2つの二重結合、窒素原子、1個または複数の炭素原子および任意選択で硫黄原子を含む5員のN−複素環式化合物)である。好ましいアゾールはベンゾトリアゾールである。他のアゾールの例は、5−メチルベンゾトリアゾールおよび2−アミノチアゾールである。アゾールは、典型的には、水性樹脂分散体の重量に基づいて、少なくとも0.05、より典型的には0.05から10重量パーセントの量で水性分散体に存在する。
【0029】
前記のように、二価金属顔料を含む水性アニオン樹脂分散体は不安定である。分散体を安定化させるために、分散体にキレート剤が添加される。キレート剤は、二価金属カチオンと錯体を形成し、このために、アニオン樹脂が分離する原因となる、二価金属カチオンとアニオン樹脂との相互作用が妨げられると考えられる。
【0030】
用語「キレート剤」によって、キレート剤の2個以上の原子を通じて金属イオンに結合して、錯体または反応生成物を形成できる化合物を意味する。これらの結合は、共有結合もしくはイオン結合またはこれらの組合せであり得る。適切なキレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸およびトリポリリン酸ナトリウムなどの酸性物質が含まれる。通常、キレート剤は、キレート剤と二価金属顔料の重量比が0.01から0.5:1であるように水性分散体に添加される。
【0031】
アニオン樹脂、二価金属顔料、キレート剤および任意選択でアゾール腐食防止剤以外に、水性分散体は、下により詳細に記載される、他の腐食防止剤、他の顔料、酸化防止剤、触媒、流動調整剤、界面活性剤および共溶媒などの任意選択の成分を含み得る。これらの成分は、存在する場合、水性分散体の重量に基づいて、約0.1から25重量パーセントの量で存在する。
【0032】
本発明の水性分散体は、電着法により基板に皮膜を付けることに特に有用である。適切な基板の例は、冷延鋼および亜鉛メッキ鋼(galvanized steel)を含めて、スチール、ならびにアルミニウム(これが好ましい基板である)などの金属である。
【0033】
金属基板はまた、例えば、リン酸金属塩またはクロメート皮膜(chromate conversion coating)を付けることによっても処理され得る。
【0034】
水性分散体は、組成物の固体が分散相として存在し、水が連続相になっている、透明、半透明または不透明の2相系であると考えられる。一般に、固体相の平均粒径は、1.0未満で、通常は0.5ミクロン未満、好ましくは0.15ミクロン未満である。
【0035】
本発明の水性分散体が、電着処理液の形態にある場合、電着処理液の固体含量は、通常、電着処理液の全重量に基づいて、約5から25重量パーセントの範囲内にある。
【0036】
水以外に、水性媒体は、融合溶媒(coalescing solvent)などの共希釈剤を含み得る。有用な融合溶媒には、炭化水素、アルコール、エステル、エーテルおよびケトンが含まれる。好ましい融合溶媒には、アルコール、ポリオールおよびケトンが含まれる。具体的な融合溶媒には、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソホロン、2−メトキシペンタノン、エチレンおよびプロピレングリコール、ならびにエチレングリコールのモノエチル、モノブチルおよびモノヘキシルエーテルが含まれる。
【0037】
前記の水性分散体が、電着用途で用いられる場合、水性分散体は、導電性アノードおよび導電性カソードと接触するように入れられ、皮膜形成される表面はアノードである。水性分散体と接触した後、十分な電圧が電極間に加えられる時に、皮膜形成組成物の付着膜が基板上に付着する。印加電圧は変わり得る、それは、例えば、下は1ボルトから上は数千ボルトであり得るが、通常は、50と500ボルトの間である。電流密度は、通常、平方フィート当たり0.5アンペアと5アンペアの間であり、電着の間に減少する傾向があり、絶縁膜の形成を示す。
【0038】
電着の後、基板は、電着処理液から取り出され、皮膜を硬化させるために加熱される。90から150℃で15から60分間の硬化温度および時間が一般的である。
【0039】
以下の実施例は、本発明を例示するが、それらの細部に本発明を限定すると見なされるべきでない。特に断わらなければ、以下の実施例における、さらには、明細書の全体を通して、全ての部およびパーセンテージは重量による。
【実施例】
【0040】
(実施例1)(対照)
キレート剤を含まないアニオン樹脂分散体
824.2部のビスフェノールAジグリシジルエーテル(EEW 188)、265.1部のビスフェノールA、および210.7部の2−n−ブトキシ−1−エタノールの混合物を115℃に加熱した。その時点で、0.8部のエチルトリフェニルホスホニウムヨージドを加えた。この混合物を加熱し、少なくとも165℃の温度で1時間保った。混合物が88℃まで冷めた時、51.6部のEktasolve EEH溶媒(Eastman Chemical Companyから入手可能)および23.4部の2−n−ブトキシ−1−エタノールを加えた。88℃で、39.2部の85%のo−リン酸および6.9部のEktasolve EEHを加え、その後、反応混合物を少なくとも120℃の温度で30分間保った。その時点で、混合物を100℃まで冷却し、72.0部の脱イオン水を徐々に導入した。一旦水の添加が完了すると、約100℃の温度を2時間保った。次いで、混合物を90℃に冷却し、90.6部のジイソプロパノールアミンを加え、その後、415.5部のCymel 1130メチル化/ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂(Cytec Industries,Inc.から入手可能)を加えた。30分の混合後、1800部のこの混合物を1497.8部の撹拌された脱イオン水に入れて、逆−希薄化した。追加の347.1部の脱イオン水を加えて、均質な分散体を得たが、この分散体は、110℃で1時間後、41.9%の固体含量を示した。
【0041】
(実施例2)
0.36%のEDTAを含むアニオン樹脂分散体
792.6部のビスフェノールAジグリシジルエーテル(EEW 188)、254.9部のビスフェノールA、および202.6部の2−n−ブトキシ−1−エタノールの混合物を115℃に加熱した。その時点で、0.8部のエチルトリフェニルホスホニウムヨージドを加えた。この混合物を加熱し、少なくとも165℃の温度で1時間保った。混合物が88℃まで冷めた時、49.6部のEktasolve EEH溶媒および22.5部の2−n−ブトキシ−1−エタノールを加えた。88℃で、37.7部の85%のo−リン酸および6.6部のEktasolve EEHを加え、その後、反応混合物を少なくとも120℃の温度で30分間保った。その時点で、混合物を100℃まで冷却し、69.2部の脱イオン水を徐々に導入した。一旦水の添加が完了すると、約100℃の温度を2時間保った。次いで、混合物を90℃に冷却し、87.1部のジイソプロパノールアミンを加え、その後、9.9部のジイソプロパノールアミンと5.4部のエチレンジアミン四酢酸および61.4部の脱イオン水との混合物を加え、次に、399.6部のCymel 1130メチル化/ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を加えた。30分の混合後、1800部のこの混合物を1382.9部の撹拌された脱イオン水に入れて、逆−希薄化した。追加の335.0部の脱イオン水を加えて、均質な分散体を得たが、この分散体は、110℃で1時間後、41.8%の固体含量を示した。
【0042】
(実施例3)
0.73%のEDTAを含む水性樹脂分散体
792.6部のビスフェノールAジグリシジルエーテル(EEW 188)、254.9部のビスフェノールA、および202.6部の2−n−ブトキシ−1−エタノールの混合物を115℃に加熱した。その時点で、0.8部のエチルトリフェニルホスホニウムヨージドを加えた。この混合物を加熱し、少なくとも165℃の温度で1時間保った。混合物が88℃まで冷めた時、49.6部のEktasolve EEH溶媒および22.5部の2−n−ブトキシ−1−エタノールを加えた。88℃で、37.7部の85%のo−リン酸および6.6部のEktasolve EEHを加え、その後、反応混合物を少なくとも120℃の温度で30分間保った。その時点で、混合物を100℃まで冷却し、69.2部の脱イオン水を徐々に導入した。一旦水の添加が完了すると、約100℃の温度を2時間保った。次いで、混合物を90℃に冷却し、87.1部のジイソプロパノールアミンを加え、その後、19.8部のジイソプロパノールアミンと10.9部のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)および122.8部の脱イオン水との混合物を加え、次に、399.6部のCymel 1130メチル化/ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を加えた。30分の混合後、1800部のこの混合物を1276.5部の撹拌された脱イオン水に入れて、逆−希薄化した。追加の323.8部の脱イオン水を加えて、均質な分散体を得たが、この分散体は、110℃で1時間後、42.1%の固体含量を示した。
【0043】
119.5部の脱イオン水、0.04部のTektronic 150R1界面活性剤(BASF Corporationから入手可能)、14.2部のACPP−1120グレー顔料ペースト(PPG Industries,Inc.から入手可能、固体51%)、および5.2部の顔料ペースト(固体49.5%、固体の66.7%は、クロム酸ストロンチウム顔料であった)を、EDTAを含まない81.5部の分散体(塗料A)、0.36%のEDTAを含む81.7部の分散体(塗料B)、および0.72%のEDTAを含む81.1部の分散体(塗料C)と、それぞれ一緒にすることによって、3種の分散体を3種の塗料に製造した。
【0044】
3種の塗料は、3時間にわたって、BYK ChemieのType 1912 Dynometerで、沈殿する傾向について評価した。各塗料で捕集された沈降物のミリグラムを表1に示す。
【0045】
【表1】

本発明の特定の実施形態が、例示のために、上に説明されたが、当業者には、本発明の詳細の多数の変形が、添付の特許請求の範囲に定められる本発明から逸脱することなく、なされ得ることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アニオン樹脂、
(2)二価金属カチオンの顔料、および
(3)前記顔料と反応できるキレート剤
を含む水性樹脂分散体。
【請求項2】
前記アニオン樹脂がポリエポキシドとリン含有酸との反応生成物である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項3】
前記ポリエポキシドが多価フェノールのポリグリシジルエーテルである、請求項2に記載の水性分散体。
【請求項4】
前記リン含有酸が、リン酸、有機ホスホン酸およびこれらの混合物から選択される、請求項2に記載の水性分散体。
【請求項5】
前記アニオン樹脂が、前記分散体の固体重量に基づいて、30から80重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項6】
前記二価金属カチオンが、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウムおよびバリウムから選択される、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項7】
前記顔料がクロムを含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項8】
前記顔料がクロム酸ストロンチウムである、請求項7に記載の水性分散体。
【請求項9】
前記水性分散体の重量に基づいて、10重量パーセントまでの顔料を含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項10】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項11】
前記キレート剤が、前記水性分散体に、キレート剤と顔料の重量比が0.01から5:1であるように添加される、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項12】
アゾールを含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項13】
前記アゾールがベンゾトリアゾールである、請求項12に記載の水性分散体。
【請求項14】
前記アゾールが、前記水性分散体の重量に基づいて、少なくとも0.05重量パーセントの量で前記水性分散体中に存在する、請求項12に記載の水性分散体。
【請求項15】
水性樹脂分散体に浸漬されているアノードおよびカソードを含む電気回路におけるアノードとして機能する導電性基板を電着する方法であって、樹脂組成物を前記アノードに付着させるために前記アノードと前記カソードの間に電流を通すことを含み、前記水性分散体が、
(a)アニオン樹脂、および
(b)(i)二価金属カチオンの顔料と
(ii)キレート剤と
の反応生成物
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記アニオン樹脂が、ポリエポキシドとリン含有酸との反応生成物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アニオン樹脂が、前記水性分散体の固体重量に基づいて、30から80重量パーセントの量で存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記二価金属カチオンが、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記顔料がクロムを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記顔料が、前記水性分散体の重量に基づいて、10重量パーセントまでの量で前記水性分散体中に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記水性分散体がアゾールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記アゾールがベンゾトリアゾールである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アゾールが、前記水性分散体の重量に基づいて、少なくとも0.05重量パーセントの量で前記水性分散体中に存在する、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2010−536955(P2010−536955A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521127(P2010−521127)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/072951
【国際公開番号】WO2009/023687
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】