説明

水性塗料及びその製造方法

【課題】BPA由来の構成成分を全く用いず、かつ、焼付け後の硬化塗膜の耐蒸気殺菌性を悪化させる原因物質である界面活性剤を実質的に用いずに、ポリマーエマルジョンを形成し、耐蒸気殺菌性、加工性、密着性、耐腐食性に優れる塗膜を形成し得る、缶内面被覆用として好適に用いられる水性塗料を提供すること。
【解決手段】カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)を含有するカルボキシル基含有成分(B)、塩基性化合物(C)、及び水(D)を含有してなるポリマーの水溶液ないしエマルジョン(1)の存在下に、エチレン性不飽和モノマー(A1)を含有する被乳化成分(A)を、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)でラジカル重合してなるポリマーエマルジョン(F)を含有することを特徴とする水性塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料に関し、詳しくは飲料や食品を収容する缶の内面被覆に好適に用いられる水性塗料に関する。より詳しくは、衛生性に優れ、耐蒸気殺菌性、加工性、密着性に優れる塗膜の形成が可能な水性塗料に関し、さらにそれを用いて缶内面を被覆してなる被覆缶に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールA(以下「BPA」と略す)とエピクロルヒドリンとを原料として合成されるBPA型エポキシ樹脂は、耐蒸気殺菌性、加工性、密着性に優れた塗膜を形成する機能を有することから、缶内外面被覆用塗料に好適に用いられている。缶内面被覆用水性塗料には、従来、BPA型エポキシ樹脂をアクリル樹脂で変性し、カルボキシル基などを分子中に導入した水分散型アクリル変性エポキシ樹脂が主として使用されている。
【0003】
BPA型エポキシ樹脂以外で、BPA型エポキシ樹脂と同等の加工性、密着性を持つ樹脂として、例えば、乳化重合法により合成したエマルジョン型アクリル樹脂がある。乳化重合法で合成したエマルジョン型アクリル樹脂は、一般に、溶液重合法で合成したアクリル樹脂と比べ、非常に高分子量になることが知られており、エマルジョン型アクリル樹脂は高分子量になることで、加工性、密着性が得られると考えられる。
【0004】
乳化重合法とは、可溶化したモノマーがミセル内において重合開始剤により反応し、そこへ分散モノマー滴から逐次モノマーが供給される、という特殊な機構により説明される重合反応である。一般に、乳化重合法には乳化剤として界面活性剤が用いられるので、当然、この重合反応により得られるエマルジョン樹脂中にも、界面活性剤が含まれることになる。そのため、乳化重合法により生成するエマルジョン樹脂を水性塗料として用いた場合、この塗料からなる硬化塗膜は、エマルジョン樹脂中の界面活性剤の影響により耐蒸気殺菌性を悪化させ、塗膜の白化やブリスター(点状剥離)を生じさせる。
【0005】
又、乳化重合法における重合開始剤には、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような、アニオン性の水溶性開始剤が好適に用いられるが、これらイオン性の水溶性開始剤は、重合反応においてエマルジョン樹脂中に組み込まれ、一種の界面活性剤としての挙動を示すため、前述の界面活性剤と同様に、硬化塗膜の耐蒸気殺菌性低下の要因となる。
【0006】
以上のように、通常の乳化重合法で合成したエマルジョン型アクリル樹脂は、その構成成分である界面活性剤、及びアニオン性の水溶性開始剤が、硬化塗膜の耐蒸気殺菌性を悪化させるため、現段階において工業的実用化には至っていない。
【0007】
そこで、耐蒸気殺菌性悪化の原因である界面活性剤を用いずに、その代わりカルボキシル基、及びカルボキシル基以外の架橋性官能基を有する水性アクリル重合体と塩基化合物とを用い、アクリル系モノマーの混合物を予め水性媒体中に分散させてモノマーの水性分散液(プレエマルジョン)を得、別途用意しておいたカルボキシル基を有する水性樹脂の存在下に、前記モノマーの水性分散液をラジカル重合させる方法(以下、「プレ乳化法」ともいう)が提案された(特許文献1)。即ち、特許文献1には、カルボキシル基を有する水性樹脂の存在下に、アクリル系モノマーの水性分散体を滴下重合してなる、ソープフリー型アクリル樹脂エマルジョンが缶用水性塗料組成物に用い得る旨記載されており、前記水性塗料組成物は、加工性、密着性、耐煮沸性に優れる塗膜を形成し得るとされる。しかしながら、缶用塗料により被覆された缶は、内容物の種類によっては、煮沸より過酷な蒸気殺菌工程を施される場合がある。特許文献1に示された方法によって得られる水性塗料組成物を塗装した缶を、蒸気殺菌した場合、塗膜が白化したりブリスター(点状剥離)を生じたりする。
【0008】
更に、缶用塗料、とりわけ飲料缶用途においては、多様な内容物の充填に対応するべく、缶体に種々の加工が行われる場合がある。特に、蓋部分は内容物充填後の缶体の変形、及びそれに伴う腐食を防止するために、蓋材に複雑かつ高度な加工が施される。注意すべきは、この高度な加工は蓋材の両面に硬化塗膜が設けられた後に行われるという点であり、当然、該塗膜にはこの加工の下でも塗膜欠陥を生じさせない高い加工性が求められる。しかしながら、特許文献1記載の方法によって得られる水性塗料組成物を用いた場合、要求される加工性レベルは確保できない。
【0009】
又、水性塗料を作成する際に添加されるアルコールなどにより分散安定性が悪化し粘度・粘性が安定な水性塗料が得られなかった。
【特許文献1】特開2002−155234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、BPA由来の構成成分を全く用いず、かつ、焼付け後の硬化塗膜の耐蒸気殺菌性を悪化させる原因物質である界面活性剤を実質的に用いずに、ポリマーエマルジョンを形成し、耐蒸気殺菌性、加工性、密着性、耐腐食性に優れる塗膜を形成し得る、缶内面被覆用として好適に用いられる水性塗料、及びそれを用いて缶内面を被覆してなる被覆缶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に対し、本発明者らが研究を重ねた結果、カルボキシル基含有成分の存在下、水媒体中においてエチレン性不飽和モノマーをラジカル重合してなるポリマーエマルジョンが、BPA由来の構成成分を含まない上、実質的に界面活性剤を使用することなく、耐蒸気殺菌性、加工性、密着性、耐腐食性に優れる塗膜を形成することが可能であり、缶内面被覆用水性塗料に好適に使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、第1の発明は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)を含有するカルボキシル基含有成分(B)、塩基性化合物(C)、及び水(D)を含有してなるポリマーの水溶液ないしエマルジョン(1)の存在下に、エチレン性不飽和モノマー(A1)を含有する被乳化成分(A)を、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)でラジカル重合してなるポリマーエマルジョン(F)を含有することを特徴とする水性塗料である。
【0013】
第2の発明は、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)が、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、及び2,2’−アゾビス[1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン]ジヒドロクロリドからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする第1の発明の水性塗料である。
【0014】
第3の発明は、エチレン性不飽和モノマー(A1)が、N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれるアミド系モノマーを少なくとも1種含有することを特徴とする第1又は第2の発明の水性塗料である。
【0015】
第4の発明は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)の数平均分子量が5000〜10万であることを特徴とする第1〜3いずれかの発明の水性塗料である。
【0016】
第5の発明は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)の酸価が、50〜500mgKOH/gであることを特徴とする第1〜4いずれかの発明の水性塗料である。
【0017】
第6の発明は、ポリマーエマルジョン(F)のガラス転移温度が0〜100℃であることを特徴とする第1〜5いずれかの発明の水性塗料である。
【0018】
第7の発明は、フェノール樹脂、及びアミノ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含有することを特徴とする第1〜6いずれかの発明の水性塗料である。
【0019】
第8の発明は、飲料若しくは食品を収容するための缶材の被覆用であることを特徴とする第1〜7いずれかの発明の水性塗料である。
【0020】
第9の発明は、飲料若しくは食品を収容するための缶材を第8の発明の水性塗料で被覆してなることを特徴とする被覆缶である。
【0021】
第10の発明は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)を含有するカルボキシル基含有成分(B)、塩基性化合物(C)、及び水(D)を含有してなるポリマーの水溶液ないしエマルジョン(1)の存在下に、エチレン性不飽和モノマー(A1)を含有する被乳化成分(A)を、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)でラジカル重合することを特徴とするポリマーエマルジョンの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、衛生性に優れ、耐蒸気殺菌性、加工性、密着性、耐腐食性に優れる塗膜を形成し得る、缶内面被覆用として好適に使用でき、安定性に優れる水性塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の水性塗料に含まれるポリマーエマルジョン(F)は、いわゆる一般的な界面活性剤を用いる代わりに、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体を必須とするカルボキシル基含有成分(B)を高分子乳化剤として用い、エチレン性不飽和モノマー(A1)を含有する被乳化成分(A)を、予めプレ乳化することなく、水性媒体中において、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)でラジカル重合してなるものであり、「モノマー滴下法」ともいうべき方法により得られるものである。
【0024】
次に、本発明で使用する各種成分について詳細に説明する。
<被乳化成分(A)>
被乳化成分(A)とは、エチレン性不飽和モノマー(A1)を主たる成分とするもので、その多くは水に不溶もしくは難溶性で、通常、有機溶剤を用いた溶液重合や、界面活性剤を用いた乳化重合に供される。本発明は、かかる水に不溶もしくは難溶性のモノマーを、いわゆる一般的な低分子量の界面活性剤を用いることなく、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体を含有するカルボキシル基含有成分を高分子乳化剤として用いて、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)によりラジカル重合せしめることに特徴がある。被乳化成分(A)は、エチレン性不飽和モノマー(A1)以外に、例えばポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコールないしその誘導体等をエチレン性不飽和モノマー(A1)と混合した状態で、被乳化成分(A)としてラジカル重合に供することも出来る。
【0025】
被乳化成分(A)のうちエチレン性不飽和モノマー(A1)について説明する。エチレン性不飽和モノマー(A1)には、通常のアクリル溶液重合に用いられるエチレン性不飽和モノマーや、界面活性剤を用いてアクリル乳化重合を行う際に、乳化される成分であるエチレン性不飽和モノマーと同様のものを用いることができる。エチレン性不飽和モノマー(A1)の例としては、(メタ)アクリル酸〔「アクリル酸」と「メタクリル酸」とを併せて「(メタ)アクリル酸」と表記する。以下同様。〕、(無水)イタコン酸、(無水)マレイン酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー類;
スチレン、メチルスチレン等の芳香族系モノマー類;
N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド類;
N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド類;
及び(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー類が挙げられる。
【0026】
エチレン性不飽和モノマー(A1)としては、N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミド系モノマーを含有することが好ましい。前記アミド系モノマーは、いずれも自己架橋性モノマーであり、加熱や、酸性条件下で容易に自己縮合し得る。又、カルボキシル基や水酸基の存在下では、それらの官能基とも反応することが知られている。即ち、上記アミド系モノマーを含有する被乳化成分(A)をラジカル重合してなるポリマーエマルジョンは、その粒子内に自己架橋性を有することが可能となる。
【0027】
本発明で、アミド系モノマーを含有する被乳化成分(A)をラジカル重合してなるポリマーエマルジョンの架橋反応は、ラジカル重合時、及び塗装時の焼付工程において進行する。ラジカル重合時の架橋反応は、エマルジョン粒子内の高分子量化、三次元構造化に寄与し、得られる塗膜の加工性や耐食性を向上させる。また、焼付工程においてはポリマーエマルジョン粒子間の架橋に寄与し、造膜性を向上させて強固な塗膜を形成することができる。
【0028】
尚、エチレン性不飽和モノマー(A1)として、N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれるアミド系モノマーを含有しないエチレン性不飽和モノマー(A1)を用い、かつ後述するカルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)としても上記のようなアミド系モノマーに由来する架橋性官能基を含有しないものを用いればアミドフリーのポリマーエマルジョンを得ることもできる。
【0029】
<カルボキシル基含有成分(B)>
次に、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)を含有するカルボキシル基含有成分(B)について説明する。カルボキシル基含有成分(B)は被乳化成分(A)に対し、乳化剤成分として機能するものである。カルボキシル基含有成分(B)は、被乳化成分(A)をラジカル重合する際に、エチレン性不飽和モノマー(A1)を含有する被乳化成分(A)を液滴としたモノマー滴を形成したり、カルボキシル基含有成分(B)からなるミセル内に被乳化成分(A)を可溶化したりし、ラジカル重合開始剤から発生するラジカルをミセル内に取り込んだ状態で重合を開始させる。つまり、カルボキシル基含有成分(B)は、水に不溶もしくは難溶性のエチレン性不飽和モノマー(A1)に、水中での重合の場を提供するものである。従ってカルボキシル基含有成分(B)は、重合速度や分子量、粒子の大きさ、エマルジョンの安定性、塗膜物性等に大きく影響するので、本発明にとって最も重要な成分の1つとして位置づけられる。
【0030】
カルボキシル基含有成分(B)に含まれる、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)の数平均分子量は5000〜10万であることが好ましく、数平均分子量は1万〜7万であることがより好ましい。数平均分子量が5000未満では被乳化成分(A)を重合してなるポリマーエマルジョンの安定性が劣り、ブツの発生やエマルジョンの沈降が発生しやすくなる。数平均分子量が10万を超えるとアクリル系共重合体(B1)が含まれる水溶液ないしエマルジョン(1)の粘度が高くなり、ゲル物が生成しやすくなる。
【0031】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)を含有するカルボキシル基含有成分(B)としては、上記アクリル系共重合体(B1)以外に、カルボキシル基を含有するポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコールないしその誘導体等の水に溶解ないし分散可能な成分も用いることが出来る。
【0032】
一般に、乳化重合における乳化剤は、疎水性成分を水性媒体中で乳化する役割を担う。そのために、親水性部分と疎水性部分とを有することが必須である。カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)は、親水性部分としてカルボキシル基を有している。カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーを共重合してなるものである。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーは、共重合に供されるモノマー100重量%中少なくとも10重量%以上含まれることが好ましく、20〜80重量%含まれることがより好ましい。又、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)は、疎水性部分を有することも重要である。そこで、芳香環を有するエチレン性不飽和モノマーもしくは炭素原子数6以上のアルキル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーを共重合成分に有することが好ましい。
【0033】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)は、通常の方法、即ち溶剤中で溶液重合によって得ることができ、所望により、水性媒体中での重合による合成や、塊状重合による合成も可能である。
【0034】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)の構成成分であるカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(無水)イタコン酸、(無水)マレイン酸等が挙げられる。尚、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)が、カルボキシル基以外に架橋反応性の官能基をもたない場合、アクリル系共重合体(B1)は有機溶剤を用いずに塊状重合によって合成することもできる。
【0035】
一般に、乳化重合は有機溶剤の存在しない状態で行うことが多く、有機溶剤が存在しても、系全体中の有機溶剤の割合があまり多くないほうが好ましい場合が多い。有機溶剤の割合が多い場合、重合の転化率が悪くなったり、塗膜の物性が悪くなったりする場合がある。故に、被乳化成分(A)をラジカル重合する際に、溶液重合によって得たアクリル系共重合体を乳化剤として用いるためには、アクリル系共重合体重合時の有機溶剤を留去しておく必要がある場合が多い。有機溶剤を留去する方法は、通常の減圧法を用いた脱溶剤の方法が用いられる。
【0036】
又、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)を構成し得るカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー以外の成分としては、前記エチレン性不飽和モノマー(A1)と同様のものが例示できる。例えば、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)は、N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれるアミド系モノマーを少なくとも1種含有するモノマーを共重合してなる共重合体とすることもできる。N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれるアミド系モノマーの有する官能基は、硬化塗膜を形成する際に自己架橋反応したり、カルボキシル基含有成分(B)のカルボキシル基、後述するフェノール樹脂等とも架橋反応したりすることができる。又、これらは、(メタ)アクリルアミドとも架橋反応を行う。これにより、塗膜の硬化性、またその他の物性がより向上する。
【0037】
カルボキシル基を有するアクリル共重合体(B1)の酸価は100〜400mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは100〜300mgKOH/gである。酸価が100mgKOH/gより小さいと、ラジカル重合に際して乳化力が低下しラジカル重合が不安定になるという不都合が生じる。酸価が400mgKOH/gより大きい場合には、得られる硬化塗膜の耐水性が低下する傾向にある。尚、本発明において、カルボキシル基含有成分(B)は、後述するように塩基性化合物(C)、及び水(D)を用いて水に溶解したり分散したりした状態にしておき、そこに被乳化成分(A)を添加するが、水に溶解した状態にしておくことが好ましい。
【0038】
<塩基性化合物(C)>
塩基性化合物(C)は、本発明において、カルボキシル基含有成分(B)中のカルボキシル基の一部ないし全部を中和し、カルボキシル基含有成分(B)の水溶液ないしエマルジョン(1)を得るために用いられるものである。
【0039】
本発明で用いられる塩基性化合物(C)としては、有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等が挙げられるが、有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これら塩基性化合物(C)は、カルボキシル基含有成分(B)中のカルボキシル基の全量100モル%に対して、20〜70モル%の割合で使用することが好ましい。
【0040】
<水(D)>
水(D)はポリマーエマルジョン(F)を得る際に、カルボキシル基含有成分(B)と塩基性化合物(C)とともにポリマーの水溶液ないしエマルジョン(1)を形成する。被乳化成分(A)100重量部に対して、水(D)は、100〜1000重量部であることが好ましく、200〜600重量部であることがより好ましい。尚、乳化を補助する目的で水溶性の溶剤を加えることもできる。一般に、乳化重合は溶剤の存在しない状態で行うことが多いが、水溶性の溶剤は、乳化を補う役割をすることがある。
【0041】
<カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)>
続いて、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)について説明する。本発明におけるカチオン性のラジカル開始剤は、水への溶解度が20℃条件下1.0%以上のものに限り「水溶性」と定義し、水への溶解度が1.0%未満であるものについては「非水溶性」として扱う。又、本発明中の「カチオン性」とは、水中において分子構造内にアニオン部分が生成し得ない性質のことを示す。
【0042】
水溶性ラジカル開始剤は、その分子構造上、カチオン性とアニオン性およびノニオン性との大きく3種類に分けられる。これら二種類の水溶性ラジカル開始剤は、乳化重合においてエチレン性不飽和モノマーと反応し、ポリマーエマルジョンを形成するという点で共通であるが、ポリマーエマルジョンそのものの性質に着目した場合に大きな差が生じる。例えば、過硫酸アンモニウムのように分子内にアニオン性官能基として過硫酸塩構造を有するアニオン性の水溶性ラジカル開始剤で乳化重合を行った場合、ラジカル開始剤由来のアニオン性官能基は、重合反応を通してポリマーエマルジョン中に組み込まれる。このアニオン性官能基は親水性に富むため、ポリマーエマルジョン表層、つまり水との界面に介在して一種の界面活性的性質を呈し、ポリマーエマルジョンの親水性向上に寄与することになる。当然、ラジカル開始剤由来のアニオン性官能基は、特に粒子界面に存在してしまうためにポリマーエマルジョンからなる硬化塗膜の親水性をも向上させてしまい、結果、硬化塗膜の耐水性、耐蒸気殺菌性は悪化し、粒子界面への水の侵入により塗膜の白化やブリスター(点状剥離)を生じる。
【0043】
その点、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤を使用して乳化重合を行った場合、これからなるポリマーエマルジョン中には親水性を向上させる開始剤由来のアニオン性官能基が存在することはなく、その硬化塗膜の親水性を向上させることも少ないため、耐水性、耐蒸気殺菌性に優れる良好な塗膜を形成することが可能となる。
【0044】
カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)としては、例えば、2,2’−アゾビス[2−(フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−545、和光純薬製)、2,2’−アゾビス{2−[N−(4−クロロフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−546、和光純薬製)、2,2’−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−548、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−552、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−553、和光純薬製)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、和光純薬製)、2,2’−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−558、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−041、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−044、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−054、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−058、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−059、和光純薬製)、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−060、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン]ジヒドロクロリド(VA−067、和光純薬製)等が挙げられる。
【0045】
本発明においては、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、及び2,2’−アゾビス[1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン]ジヒドロクロリドからなる群より選ばれる少なくとも1つを特に好ましく用いることができる。
【0046】
本発明について、上記カチオン性の水溶性ラジカル重合開始剤(E)は重合反応の際、被乳化成分(A)中に含めておくこともできるし、カルボキシル基含有成分(B)等と共に反応槽中に入れておくこともできるし、被乳化成分(A)を添加する際又は添加した後、別途反応槽中に添加することもできる。重合開始剤は、間欠的滴下ないし連続滴下で添加しても良いし、一括して添加しても良い。
【0047】
又、本発明ではラジカル重合を行うに際し、上記、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)を酸化剤とし、これとともに還元剤を併用することで、レドックス系重合とすることも出来る。これにより、重合速度を促進したり、低温におけるラジカル重合をしたりすることが容易になる。レドックス系重合の際に使用される還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。酸化剤、及び還元剤は、エチレン性不飽和モノマー(A1)100重量部に対して、それぞれ0.01〜1重量部、及び0.01〜2重量部程度の量を用いるのが好ましい。
【0048】
<ポリマーエマルジョン(F)>
本発明におけるポリマーエマルジョン(F)は、上述したようにポリマー構成成分として被乳化成分(A)の重合体とカルボキシル基含有成分(B)とからなるものである。そして、上述した被乳化成分(A)の重合体とカルボキシル基含有成分(B)が、主としてポリマーエマルジョン(F)粒子のコア部とシェル部に、それぞれなり得るものと考えられる。
【0049】
本発明においては、ポリマーエマルジョン(F)のガラス転移温度(以下、「Tg」とも称す。)を0℃〜100℃とすることが好ましく、Tgが0℃〜70℃であることがより好ましい。一般に、塗料を構成する樹脂のTgを低くすることによって塗膜の加工性を向上し得る。ポリマーエマルジョンを含むアクリル樹脂においては、通常、アルキル基の長いモノマーを多量に使用することによって、Tgを低くすることが出来る。しかし、アルキル基の長いモノマーを多量に使用した樹脂を含有する塗料組成物による塗膜は、塗膜硬度が低くなる傾向にあり、塗装後の缶体に施される種々の複雑な加工に耐えうる塗膜硬度を得ることが困難である。即ち、分散樹脂のTgが0℃未満のポリマーエマルジョンを含有する水性塗料を缶内面被覆に使用すると、加工時に傷の入らない塗膜を得ることが困難となる。他方、分散樹脂のTgが100℃を超えるポリマーエマルジョンを含有する水性塗料の場合は、塗膜の加工性が劣る傾向にある。
【0050】
本発明の場合、ポリマーエマルジョンのTgは、構成成分の各Tgと組成比とで常法に従って求めることができる。例えば、被乳化成分(A)としてポリエステル樹脂等を含まずエチレン性不飽和モノマー(A1)のみを使用し、カルボキシル基含有成分(B)としてもポリエステル樹脂等を含まずカルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)のみを使用する場合は、アクリル系共重合体(B1)を構成する各モノマー、及びエチレン性不飽和モノマー(A1)の各モノマーからそれぞれ形成され得る各ホモポリマーのTgと、ポリマーエマルジョン中の複合化ポリマーを構成する各モノマーの組成比とから常法に従って計算によって求めることが出来る。尚、被乳化成分(A)やカルボキシル基含有成分(B)としてポリエスエル樹脂等を含有する場合には、ポリエステル樹脂等のTgと、ポリマーエマルジョン中に含まれるポリエステル樹脂等の割合に基づいて、同様に求めることができる。
【0051】
換言すると本発明では、被乳化成分(A)が重合してなる樹脂、及びカルボキシル基含有成分(B)の各Tgや組成比によって、ポリマーエマルジョン全体のTgを制御することができ、これによりポリマーエマルジョンのTgを0〜100℃となるように制御することが好ましい。
【0052】
一般に水性媒体中の乳化剤ミセルを利用してモノマーを重合する乳化重合は、その特有の重合機構故に、溶液重合では得られない高分子量のポリマーを得ることが出来る。本発明の場合も、単なる溶液重合の場合よりもポリマーエマルジョンが高分子量化しているので、その結果、該ポリマーエマルジョンを含有する水性塗料は、加工性、耐腐食性が良好である塗膜を形成することが出来たものと考察される。
【0053】
本発明の場合、被乳化成分(A)100重量部に対してカルボキシル基含有成分(B)は、5〜300重量部であることが好ましく、10〜200重量部であることがより好ましく、20〜100重量部であることがさらに好ましい。被乳化成分(A)100重量部に対して、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(B1)を含有する、乳化剤成分たるカルボキシル基含有成分(B)が5重量部より少ない場合、被乳化成分(A)や重合後の複合化ポリマーが乳化されにくくなる傾向にある。又、被乳化成分(A)100重量部に対して、乳化剤成分たるカルボキシル基含有成分(B)が300重量部より多い場合、焼き付け硬化後の塗膜の加工性の向上があまり期待できない。被乳化成分(A)は、ラジカル重合によって、非常に高分子量になる成分であり、これが硬化塗膜の加工性の向上に寄与することとなる。従って、乳化剤成分たるカルボキシル基含有成分(B)が300重量部よりも多くなると、相対的に被乳化成分(A)が少なくなり、その結果硬化塗膜の加工性の向上があまり期待できなくなる。
【0054】
本発明の水性塗料には、更に、必要に応じて塗膜の硬化性や密着性を向上させる目的で、上記したポリマーエマルジョンの他にフェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの誘導体等の硬化剤を1種又は2種以上添加することができる。
【0055】
フェノール樹脂やアミノ樹脂は、自己架橋反応する他、カルボキシル基含有成分(B)中のカルボキシル基と反応し得る。また、被乳化成分(A)から形成される重合体やカルボキシル基含有成分(B)が水酸基を有する場合には、フェノール樹脂やアミノ樹脂は、それらの水酸基とも反応し得る。さらに、エチレン性不飽和モノマー(A1)がアミド系モノマーに由来する架橋性官能基を有する場合は、これら架橋性官能基とも反応し得る。
【0056】
本発明において用いられるフェノール樹脂としては、石炭酸、m−クレゾール、3,5−キシレノール等の3官能フェノール化合物や、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール等の2官能フェノール化合物とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させたもの等を挙げることができる。
【0057】
本発明において用いられるアミノ樹脂としては、尿素やメラミン、ベンゾグアナミンにホルマリンを付加反応させたもの等を挙げることができる。
【0058】
上記フェノール樹脂やアミノ樹脂は、ホルマリンの付加により生成したメチロール基の一部ないし全部を、炭素数が1〜12なるアルコール類によってエーテル化した形のものも好適に用いられる。フェノール樹脂やアミノ樹脂を用いる場合には、ポリマーエマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して、0.5〜20重量部添加することが好ましく、2〜10重量部添加することがより好ましい。
【0059】
本発明の水性塗料には、必要に応じて、製缶工程における塗膜の傷付きを防止する目的で、ワックス等の滑剤を添加することもできる。ワックスとしては、カルナバワックス、ラノリンワックス、パーム油、キャンデリラワックス、ライスワックス等の動植物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、ポリオレフィンワックス、テフロン(登録商標)ワックス等の合成ワックス等が好適に用いられる。
【0060】
本発明の水性塗料には、塗装性を向上させる目的で、親水性有機溶剤を添加することが出来る。親水性有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、エチレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、エチレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、エチレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、プロピレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル等の各種エーテルアルコール類ないしはエーテル類;
メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、フルフリルアルコール等のアルコ―ル類;
メチルエチルケトン、ジメチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルコキシエステル類等が挙げられ、これらは1種類のみを用いてもよいし、2種以上の併用でも使用できる。
【0061】
その他、本発明の水性塗料には、塗装性を向上させる目的で、疎水性有機溶剤や、界面活性剤、消泡剤等の各種助剤を添加することも出来る。カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)を用いるとこれら有機溶剤を添加した際の安定性が特に優れる。
【0062】
本発明の水性塗料は、下記缶のみならず、一般の金属素材ないし金属製品等にも広く用いることもできるが、飲料や食品を収容する缶内外面被覆用塗料として好適に用いられ、特に缶内面被覆用に好適である。缶の素材としては、アルミニウム、錫メッキ鋼板、クロム処理鋼板、ニッケル処理鋼板等が用いられ、これらの素材はジルコニウム処理や燐酸処理等の表面処理を施される場合がある。
【0063】
本発明の水性塗料の塗装方法としては、エアースプレー、エアレススプレー、静電スプレー等のスプレー塗装が望ましいが、ロールコーター塗装、浸漬塗装、電着塗装等でも塗装することが出来る。本発明の水性塗料は、塗装した後、揮発成分が揮発しただけでも皮膜を形成出来るが、優れた耐蒸気殺菌性や加工性、密着性を得るためには焼き付け工程を加えた方が良い。焼き付けの条件としては、150℃〜280℃の温度で10秒〜30分間焼き付けることが望ましい。
【実施例】
【0064】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。例中、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」をそれぞれ表す。
【0065】
[合成例1]カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1−1)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル100部、イオン交換水100部を仕込んで、90℃まで昇温した。反応容器内の温度を90℃に保ちながら、メタクリル酸96部、スチレン52部、アクリル酸エチル42部、N−ブトキシメチルアクリルアミド10部、及び過酸化ベンゾイル2部からなる混合物を滴下槽から4時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.2部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、数平均分子量45000、ガラス転移温度73℃、酸価312mgKOH/gのアクリル系共重合体の溶液(固形分50%)を得た。次に、ジメチルエタノールアミン29.8部を添加して、10分間撹拌した後、イオン交換水368.2部を加えて水溶化せしめ、不揮発分25%のカルボキシル基を有する水性アクリル共重合体の水溶液を得た。これを水性アクリル共重合体(B1−1)水溶液とする。
【0066】
[合成例2]カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1−2)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル100部、イオン交換水100部を仕込んで、90℃まで昇温した。反応容器内の温度を90℃に保ちながら、メタクリル酸96部、スチレン52部、アクリル酸エチル42部、N−ブトキシメチルアクリルアミド10部、及び過酸化ベンゾイル8部からなる混合物を滴下槽から4時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.2部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、数平均分子量11000、ガラス転移温度73℃、酸価312mgKOH/gのアクリル系共重合体の溶液(固形分50%)を得た。次に、ジメチルエタノールアミン29.8部を添加して、10分間撹拌した後、イオン交換水361.8部を加えて水溶化せしめ、不揮発分25%のカルボキシル基を有する水性アクリル共重合体の水溶液を得た。これを水性アクリル共重合体(B1−2)水溶液とする。
【0067】
[合成例3]カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1−3)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル100部、イオン交換水100部を仕込んで、90℃まで昇温した。反応容器内の温度を90℃に保ちながら、メタクリル酸130部、スチレン36部、アクリル酸エチル24部、N−ブトキシメチルアクリルアミド10部、及び過酸化ベンゾイル2部からなる混合物を滴下槽から4時間にわたって連続滴下した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.2部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間にわたって反応を続け、数平均分子量50000、ガラス転移温度94℃、酸価425mgKOH/gのアクリル系共重合体の溶液(固形分50%)を得た。次に、ジメチルエタノールアミン29.8部を添加して、10分間撹拌した後、イオン交換水361.8部を加えて水溶化せしめ、不揮発分25%のカルボキシル基を有する水性アクリル共重合体の水溶液を得た。これを水性アクリル共重合体(B1−3)水溶液とする。
【0068】
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例1で得られたカルボキシル基含有アクリル共重合体(B1−1)水溶液120部、イオン交換水88.9部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら60℃まで昇温した。次に、滴下槽1にスチレン39.0部、アクリル酸エチル23.5部、N−ブトキシメチルアクリルアミド7.5部を仕込み、滴下槽2に1%の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、和光純薬製)水溶液3.0部仕込み、3時間かけて反応容器内の温度を60℃にたもちながら、撹拌下に滴下して、理論Tgが54℃のポリマーエマルジョンを得た。その後、イオン交換水114.3部、n−ブタノール50部、エチレングリコールモノブチルエーテル50部を添加し、5μmのフィルターで濾過して内容物を取り出し、不揮発分が20%の水性塗料(1)を得た。
【0069】
[実施例2]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例1で得られたカルボキシル基含有アクリル共重合体(B1−1)水溶液120部、イオン交換水88.9部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら60℃まで昇温した。次に、滴下槽1にスチレン43.0部、アクリル酸エチル27.0部を仕込み、滴下槽2に1%の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、和光純薬製)水溶液3.0部仕込み、3時間かけて反応容器内の温度を60℃にたもちながら、撹拌下に滴下して、理論Tgが52℃のポリマーエマルジョンを得た。その後、イオン交換水114.3部、n−ブタノール50部、エチレングリコールモノブチルエーテル50部を添加し、5μmのフィルターで濾過して内容物を取り出し、不揮発分が20%の水性塗料(2)を得た。
【0070】
[実施例3]
カルボキシル基含有アクリル共重合体(B1−1)水溶液の代わりに、合成例2で得られたカルボキシル基含有アクリル共重合体(B1−2)水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、理論Tgが54℃のポリマーエマルジョンであり、不揮発分が20%の水性塗料(3)を得た。
【0071】
[実施例4]
カルボキシル基含有アクリル共重合体(B1−1)水溶液の代わりに、合成例3で得られたカルボキシル基含有アクリル共重合体(B1−3)水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、理論Tgが58℃のポリマーエマルジョンであり、不揮発分が20%の水性塗料(4)を得た。
【0072】
[実施例5]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例1で得られたカルボキシル基含有アクリル共重合体(B1−1)水溶液120部、イオン交換水88.9部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら70℃まで昇温した。次に、滴下槽1にスチレン15.0部、アクリル酸エチル47.5部、N−ブトキシメチルアクリルアミド7.5部を仕込み、滴下槽2に1%の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、和光純薬製)水溶液3.0部を仕込み、3時間かけて反応容器内の温度を60℃にたもちながら、撹拌下に滴下して、理論Tgが23℃のポリマーエマルジョンを得た。その後、イオン交換水114.3部、n−ブタノール50部、エチレングリコールモノブチルエーテル50部を添加し、5μmのフィルターで濾過して内容物を取り出し、不揮発分が20%の水性塗料(5)を得た。
【0073】
[実施例6]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例1で得られたカルボキシル基含有アクリル共重合体(B1−1)水溶液120部、イオン交換水88.9部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら60℃まで昇温した。次に、滴下槽1にスチレン52.0部、アクリル酸エチル10.0部、N−ブトキシメチルアクリルアミド7.5部を仕込み、滴下槽2に1%の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、和光純薬製)水溶液3.0部を仕込み、3時間かけて反応容器内の温度を60℃にたもちながら、撹拌下に滴下して、理論Tgが75℃のポリマーエマルジョンを得た。その後、イオン交換水114.3部、n−ブタノール50部、エチレングリコールモノブチルエーテル50部を添加し、5μmのフィルターで濾過して内容物を取り出し、不揮発分が20%の水性塗料(6)を得た。
【0074】
[実施例7]
カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、和光純薬製)の代わりに2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−060、和光純薬製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリマーエマルジョンの理論Tgが58℃であり、不揮発分が20%の水性塗料(7)を得た。
【0075】
[実施例8](フェノール樹脂添加)
実施例1で得た水性塗料(1)200部の撹拌下に「PR−C−101」(住友ベークライト(株)製、フェノール樹脂)の20%ブタノール溶液8部を添加し、5μmのフィルターで濾過して内容物を取り出し、不揮発分が20%の水性塗料(7)を得た。
【0076】
[実施例9](アミノ樹脂添加)
実施例1で得た水性塗料(1)200部の撹拌下に「メラン11E」(日立化成工業(株)製、アミノ樹脂)の62%溶液2.6部を添加し、5μmのフィルターで濾過して内容物を取り出し、不揮発分が20%の水性塗料(9)を得た。
【0077】
[比較例1]
1%の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、和光純薬製)水溶液の代わりに、1%の過硫酸アンモニウム水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、分散樹脂の理論Tgが54℃、不揮発分が20%の水性塗料(8)を得た。
【0078】
[塗料の濾過性]
5μmのフィルターで濾過した際の濾過性の評価を下記の評価基準に従い行った。
◎:500gの塗料の濾過を10分以内に完了できる。
○:500gの塗料の濾過を10分以上20分以内で完了できる。
△:500gの塗料の濾過を20分以上30分以内で完了できる。
×:500gの塗料の濾過を30分以上でも完了できない。
【0079】
[塗膜の評価]
実施例1〜9、比較例1で得た各水性塗料を、厚さ0.26mmのアルミ板に、乾燥膜厚が5〜6μmになるように塗工し、ガスオーブンを用い雰囲気温度200℃で3分間焼き付け、評価用テストパネルを得て、以下のようにして塗膜の性能を評価した。尚、耐レトルト白化評価における塗膜の透明性については、実施例1〜9、比較例1で得た各水性塗料を厚さ0.23mmのブリキ板にアルミ板と同様の塗工、焼き付けを行い、評価用ブリキ板テストパネルを得て評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
各評価の方法を以下に説明する。
【0081】
<耐食性>
テストパネルを40×80mmに切断し、塗膜を外側(凸型)にしてデュポン衝撃(1/2インチ、500g、30cm)を加えた後、テストパネルを市販のスポーツ飲料に浸漬したまま、レトルト釜で125℃−30分レトルト処理を行った。その後、浸漬したまま50℃でし、4日後に取り出して、平面部、及びデュポン衝撃部のブリスターを評価した。
【0082】
◎:ブリスターの発生なし
○:デュポン衝撃部にブリスター発生、加工部の50%未満
△:デュポン衝撃部にブリスター発生、加工部の50%以上
×:平面部にブリスター発生
【0083】
<耐レトルト密着性>
テストパネルを水に浸漬したまま、レトルト釜で130℃−1時間レトルト処理を行った。その塗膜面にカッターにてクロスカットをした後、セロハン粘着テープを貼着し、強く剥離したのちの塗膜面の評価を行った。
【0084】
◎:全く剥離なし
○:5%未満の剥離あり
△:5〜50%の剥離あり
×:50%を超える剥離あり
【0085】
<耐レトルト白化−目視試験>
テストパネルを水に浸漬したまま、レトルト釜で130℃−1時間レトルト処理を行い、塗膜の外観について目視で評価した。
【0086】
◎:未処理の塗膜と変化なし
○:ごく薄く白化
△:やや白化
×:著しく白化
【0087】
<耐レトルト白化−塗膜の透明性(ヘイズ値)>
ブリキ板テストパネルを水に浸漬したまま、レトルト釜で130℃−1時間レトルト処理を行った。次いで、水銀を用いたアマルガム法により、レトルト処理したブリキ板テストパネルから塗膜を剥離させてフィルム状とし、得られた塗膜フィルムの透明性(ヘイズ値)をヘイズメーター(日本電色工業(株)製「NDH−500W」)にて測定した。ヘイズ値は、値の低いものほど塗膜の透明性に優れ、高いものほど透明性に劣る。レトルト処理により白化した塗膜は、透明性を低下させるため高いヘイズ値が得られる。
【0088】
◎:ヘイズ値が2.0%未満
○:ヘイズ値が2.0%以上5.0%未満
△:ヘイズ値が5.0%以上10.0%未満
×:ヘイズ値が10.0%以上
【0089】
<レトルト後の加工性>
テストパネルを水に浸漬したまま、レトルト釜で130℃−1時間レトルト処理を行った。処理したテストパネルを用いて、テストパネルを大きさ30mm×50mmに切断し、塗膜を外側にして、試験部位が30mmの幅になるように手で予め折り曲げ、この2つ折りにした試験片の間に厚さ0.26mmのアルミ板を2枚はさみ、1kgの荷重を高さ40cmから折り曲げ部に落下させて完全に折り曲げた。次いで、試験片の折り曲げ先端部を濃度1%の食塩水中に浸漬させ、試験片の、食塩水中に浸漬されていない金属部分と、食塩水との間を6.0V×6秒通電した時の電流値を測定した。塗膜の加工性が乏しい場合、折り曲げ加工部の塗膜がひび割れて、下地の金属板が露出して導電性が高まるため、高い電流値が得られる。
【0090】
◎:10mA未満
○:10mA以上20mA未満
△:20mA以上50mA未満
×:50mA以上
【0091】
【表1】

【0092】
表1に示すように、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)でラジカル重合してなるポリマーエマルジョンを用いた実施例1〜9の水性塗料は、塗料の安定性に由来する濾過性が良好であり、耐食性、耐レトルト密着性、耐レトルト白化性およびレトルト後の加工性も良好であったのに対し、比較例1の水性塗料は、濾過性や耐レトルト白化性等のいずれかが不良であり、全てが良好となるものは得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)を含有するカルボキシル基含有成分(B)、塩基性化合物(C)、及び水(D)を含有してなるポリマーの水溶液ないしエマルジョン(1)の存在下に、エチレン性不飽和モノマー(A1)を含有する被乳化成分(A)を、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)でラジカル重合してなるポリマーエマルジョン(F)を含有することを特徴とする水性塗料。
【請求項2】
カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)が、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、及び2,2’−アゾビス[1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン]ジヒドロクロリドからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の水性塗料。
【請求項3】
エチレン性不飽和モノマー(A1)が、N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれるアミド系モノマーを少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1又は2記載の水性塗料。
【請求項4】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)の数平均分子量が5000〜10万であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の水性塗料。
【請求項5】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)の酸価が、100〜400mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の水性塗料。
【請求項6】
ポリマーエマルジョン(F)のガラス転移温度が0〜100℃であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の水性塗料。
【請求項7】
フェノール樹脂、及びアミノ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含有することを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の水性塗料。
【請求項8】
飲料若しくは食品を収容するための缶材の被覆用であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の水性塗料。
【請求項9】
飲料若しくは食品を収容するための缶材を請求項8記載の水性塗料で被覆してなることを特徴とする被覆缶。
【請求項10】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(B1)を含有するカルボキシル基含有成分(B)、塩基性化合物(C)、及び水(D)を含有してなるポリマーの水溶液ないしエマルジョン(1)の存在下に、エチレン性不飽和モノマー(A1)を含有する被乳化成分(A)を、カチオン性の水溶性ラジカル開始剤(E)でラジカル重合することを特徴とするポリマーエマルジョンの製造方法。

【公開番号】特開2008−297379(P2008−297379A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142730(P2007−142730)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】