説明

水性塗料用親水化剤

【課題】相転移温度付近で疎水性から親水性に相転移するスイッチングを鋭敏にした感熱応答性の高分子化合物を用いて浮上機能を高めた水性塗料用親水化剤を提供する。
【解決手段】親水性及び疎水性が可逆的に変わる相転移温度を有し、重合すると疎水性を示す疎水性モノマーを共重合した感熱応答性の高分子化合物をシリカ粒子に担持した構成とすることによって、親水性から疎水性への相転移を鋭敏にし、塗料中において表面に浮上しやすくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料に用いられる親水化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料によって被着体の表面に形成される塗膜において、その表面は、通常、疎水性であるため、屋外で用いられる場合には、排ガス等に起因する疎水性の汚れが付着しやすく、また、その汚れは雨水などでは除去されにくい。このような疎水性の汚れを塗膜表面に付着しにくくし、また付着した場合でも雨水等により流れ落ちやすくするため、塗膜表面を親水化して水に濡れやすくさせるような塗料用親水化剤が要望されている。
【0003】
また、近年の地球環境問題への関心の高まりや、塗装作業者へ対する考慮から、塗布後に大気中へ有機溶剤を比較的多量に放出してしまう溶剤系塗料よりも、大気中へ有機溶剤を多量に放出するおそれが少ないものであって溶剤系塗料と同等あるいはそれ以上の性能を有する水性塗料などの塗料が要望されている。
【0004】
一方、従来、塗料用の親水化剤としては、例えば、シリケート系化合物が知られている。このシリケート系化合物は、前記の溶剤系塗料に配合されて、塗布後の塗膜表面を親水化させ得るものである。ところが、このシリケート系化合物は、水との反応性が高く、水性塗料に用いるためには、塗料の液性を比較的強いアルカリ性に保持する等の液性の調整が必要であり、またシリケート系化合物を含む水性塗料は、保管状態や塗布後において、その温度条件や湿度条件によってゲル化する場合があり塗膜形成が不均一になるなどの不具合が生じ得る。
【0005】
これに対して、本出願人は、特許文献1に記載されるに、シリカ粒子が用いられた水性塗料用親水化剤であって、親水性および疎水性が可逆的に変わる相転移温度を有する感熱応答性の高分子化合物が前記シリカ粒子に担持されてなることを特徴とする水性塗料用親水化剤を提案している。この親水化剤は、該親水化剤が含まれた水性塗料が塗布されて形成される塗膜において、前記感熱応答性の高分子化合物が親水性を示す温度条件では水性塗料中に分散し得るものであり、相転移温度を超えて該感熱応答性の高分子化合物が疎水性となると、感熱応答性の高分子化合物が前記シリカ粒子を伴って塗膜表面に移動し得る。続いて、塗膜の硬化後に温度が下げられると、塗膜表面の高分子化合物は親水性となり、しかも、親水性であるシリカ粒子が塗膜表面に存在することとなり得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−127028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は鋭意研究の結果、相転移温度付近で親水性から疎水性に相転移するスイッチングを鋭敏にした感熱応答性の高分子化合物を用いて、浮上機能を高めた水性塗料用親水化剤を発明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわちこの発明に係る水性塗料用親水化剤は、親水性及び疎水性が可逆的に変わる相転移温度を有する感熱応答性の高分子化合物が前記シリカ粒子に担持され、前記感熱応答性の高分子化合物は、重合すると疎水性を示す疎水性モノマーが共重合されていることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明に係る水性塗料用親水化剤において、前記感熱応答性の高分子化合物における前記疎水性モノマーの重合比を10%以下とした構成としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感熱応答性の高分子化合物は、重合すると疎水性を示す疎水性モノマーが共重合されているので、本発明の水性塗料用親水化剤が含まれた水性塗料が塗布されて形成される塗膜において、相転移温度以下では、親水性となり得るため水性塗料中に分散し得るものであり、相転移温度を超えると、共重合された疎水性モノマーの疎水性が加わって、疎水性の度合いが急激に高まり、該高分子化合物が前記シリカ粒子を伴って塗膜表面により容易に移動し得る。
【0011】
また本発明に係る水性塗料用親水化剤において、前記感熱応答性の高分子化合物においての前記疎水性モノマーの重合比を10%以下とした構成とすれば、本発明の水性塗料用親水化剤が含まれた水性塗料において、相転移温度以下では、前記高分子化合物の親水性を阻害するおそれが少なくなるので、親水化剤どうしの凝集等の不具合が起こりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る水性塗料用親水化剤の実施の一形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、具体的に説明する。
【0014】
本実施形態の水性塗料用親水化剤は、シリカ粒子に感熱応答性の高分子化合物が担持されたものであって、該高分子化合物は、重合すると疎水性を示す疎水性モノマーが共重合されているものである。なお、本発明における「担持」の意味は、シリカ粒子の表面への物理的な付着、シリカ粒子の表面での化学結合や水素結合による化学的な結合、又はこれら物理的な付着と化学的な結合とが複合した結合のいずれかである。
【0015】
ここで、水性塗料とは、水で希釈できる塗料のことをいい、具体的には、分散媒又は溶媒として水、水溶性有機溶剤を含む水が用いられている塗料のことをいう。より具体的には、例えば、非水溶性樹脂や顔料が前記分散媒中に分散されてなるエマルション系水性塗料、水溶性樹脂が前記溶媒に溶解している水溶性樹脂系水性塗料などが挙げられる。水性塗料には、分散媒または溶媒として水が比較的多量に含まれているため、水性塗料が被塗布体に塗布されて塗膜が形成されるときに大気中に放出される有機溶媒の量は、比較的少ない。
【0016】
前記シリカ粒子は、特に限定されず、天然品および合成品、結晶性および非晶質性のものが例示される。シリカ粒子の製法としては、湿式法と乾式法とに大別され、シリカ粒子の平均粒径が制御しやすいという点で湿式法が好ましい。湿式法は沈降法とゲル法に類別され、湿式法では、一般的にケイ酸ナトリウムと硫酸等との中和反応によりシリカ粒子が合成される。さらに好ましいシリカ粒子としては、例えば、アルコキシシランを原料に、ゾルゲル法で合成したコロイダルシリカが挙げられる。前記シリカ粒子としては、市販されているものが用いられ得る。
【0017】
前記シリカ粒子の平均粒径は、20〜100nmであることが好ましく、20〜50nmであることがより好ましい。前記シリカ粒子の平均粒径が20nm以上であることにより、前記感熱応答性の高分子化合物が前記シリカ粒子に容易に担持されやすくなるという利点があり、100nm以下であることにより、塗膜表面に前記水性塗料用親水化剤がより移動しやすくなるという利点がある。
【0018】
前記シリカ粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定されるものである。具体的には、粒度分布測定装置(大塚電子社製 商品名「濃厚系粒径アナライザー FPAR−1000」)を用いて分散媒として純水もしくはイソプロパノールを用いて濃度0.05重量%で測定し、分布解析にCONTIN法を用いて求められる値を採用する。
【0019】
次に、感熱応答性の高分子化合物は、一般に相転移温度を境界にして、その親水性及び疎水性が可逆的に変わり、その相転移温度以下では親水性、その相転移温度以上では疎水性を示すものである。本形態に係る感熱応答性の高分子化合物は、重合すると疎水性を示す疎水性モノマーが共重合されているので、上記相転移温度以下での親水性の度合いは低下するものの、前記高分子化合物及び該高分子化合物が担持されたシリカ粒子は水性塗料に分散し得るものである。
【0020】
前記相転移温度は、具体的には、前記高分子化合物の5重量%水溶液を調製し、20〜80度の範囲で水溶液を定温上昇させて、波長700nmにおける透過計を測定し、透過率が急激に上昇しはじめた温度を相転移温度とする。なお、前記高分子化合物は水性塗料組成物に配合されて用いられるため、水以外の成分を含み得る水性塗料組成物に配合されている前記高分子化合物の相転移温度は、上記のように水中で測定した相転移温度とは異なり得る。
【0021】
前記相転移温度としては、好ましくは、30〜70度が例示される。前記相転移温度が30度以上であることにより、室温では、水性塗料組成物の安定性が高まり、室温でより長期間保管できるという利点がある。また70度以下であることにより、前記相転移温度が水の沸点より低くなるため、塗膜乾燥温度が相転移温度以上の必要がある場合にその乾燥温度の選択範囲が広がるという利点がある。
【0022】
前記高分子化合物の重量分子量は、特に限定されず、通常、2,000〜50,000が挙げられ、好ましくは、2,000〜10,000が挙げられる。前記温度応答性部位の分子量が2,000以上であることにより、前記感熱応答性の高分子化合物がより前記シリカ粒子に担持されやすくなり、しかも、より前記シリカ粒子から乖離しにくくなるという利点があり、10,000以下であることにより、水性塗料用親水化剤を製造するときに用いられ得る溶媒に前記感熱応答性の高分子化合物が溶解しやすくなり、その製造がより容易に実施できるという利点がある。なお、分子量は、GPC分析により得られた測定値を標準ポリスチレンによって換算したものとする。
【0023】
前記高分子化合物は、一般の感熱応答性ポリマーに、重合すると疎水性を示す疎水性モノマーが共重合されたものであり、一般の感熱応答性ポリマーとしては、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリビニルメチルエーテル、および、これらが複数混合されたものが例示される。なかでも、前記相転移温度が35度付近であるという点で、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテルが好ましい。また重合すると疎水性を示す疎水性モノマーとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、スチレン、エチレン、プロピレン等が例示される。
【0024】
前記高分子化合物の調整方法は、先ず、感熱応答性ポリマーを調整し、その後、前記感熱応答性ポリマーに前記疎水性モノマーを共重合させてもよく、また前記感熱応答性ポリマーの構成単位であるモノマーと前記疎水性モノマーとを共重合させてもよい。なかでも、N−イソプロピルアクリルアミドとメタクリル酸メチルとで共重合させれば、共重合のための化学反応が1段階で済み、またN−イソプロピルアクリルアミドに比べメタクリル酸メチルの反応性が低いため、この反応性の差を利用して、前記高分子化合物中のN−イソプロピルアクリルアミドとメタクリル酸メチルとの重合比率を調節しやすくなり、より好ましい。
【0025】
前記高分子化合物としては、一般的な方法により重合されたもの、市販されているものをさらに反応させたものなどが用いられ得る。
【0026】
本実施形態の水性塗料用親水化剤は、前記高分子化合物が前記シリカ粒子に担持されてなる。前記水性塗料用親水化剤としては、具体的には、例えば、前記高分子化合物が前記シリカ粒子に物理的に付着されたものが挙げられる。また、例えば、前記感熱応答性の高分子化合物が前記シリカ粒子と化学的に結合されたものが挙げられる。また、例えば、前記感熱応答性の高分子化合物が前記シリカ粒子と化学的に結合されたものに、さらに前記感熱応答性の高分子化合物が物理的に付着されたものが挙げられる。
【0027】
前記水性塗料用親水化剤は、前記感熱応答性の高分子化合物と前記シリカ粒子とが化学的に結合されてなる化学修飾シリカ粒子が含まれていることが好ましい。前記感熱応答性の高分子化合物と前記シリカ粒子とが化学的に結合されてなる化学修飾シリカ粒子が含まれていることにより、前記感熱応答性の高分子化合物がより確実に前記シリカ粒子を伴って塗膜表面に移動するという利点がある。
【0028】
前記高分子化合物と前記シリカ粒子とが化学的に結合されてなる化学修飾シリカ粒子としては、例えば、高分子化合物の一部にアルコキシシリル基を有する高分子シランカップリング剤をシリカ粒子に化学的に結合させてなるものが挙げられる。また重合反応性基を有するアルコキシシラン化合物と前記シリカ粒子とを化学的に結合させたうえで、前記重合反応性基と前記高分子化合物の構成単位であるモノマーとを重合させることにより得られるものを挙げることができる。
【0029】
前記シリカ粒子と、それに担持される前記高分子化合物との重量比は、特に限定されるものではないが、該高分子化合物が相転移温度で疎水性となった際に、該シリカ表面を覆って前記水性塗料用親水化剤として疎水性を示せばよく、具体的には、シリカ粒子1重量部に対して、高分子化合物0.1〜1重量部であることが好ましい。

【0030】
次に、本実施形態の水性塗料用親水化剤の製造方法について説明する。
【0031】
本実施形態の水性塗料用親水化剤は、例えば、前記シリカ粒子を含むコロイダルシリカと、前記高分子化合物とを混合することにより、分散体という状態で製造することができる。
【0032】
また、例えば、前記シリカ粒子を含むコロイダルシリカと、エタノールなどの水溶性有機溶媒と、感熱応答性の高分子化合物の一部にアルコキシシラン基などを有するシラン化合物とを混合して、シリカ粒子とすることにより製造することができる。
【0033】
更に、例えば、前記シリカ粒子を含むコロイダルシリカと、エタノールなどの水溶性有機溶媒と、重合性基及びシリカ粒子と化学的に結合し得る反応性基を有する化合物とを混合し、シリカ粒子に重合性基を導入させたうえで、感熱応答性の高分子化合物の構成モノマーをさらに加えて、シリカ粒子を感熱応答性の高分子化合物で化学的に修飾した化学修飾シリカ粒子とすることにより製造することができる。
【0034】
本実施形態の水性塗料用親水化剤を用いた水性塗料としては、一般的な水性塗料組成物に通常配合され得る各成分に対して、前記水性塗料用親水化剤が0.5〜10重量%配合されていることが好ましく、1〜5重量%配合されていることがより好ましい。前記水性塗料用親水化剤が0.5重量%以上配合されていることにより、塗布された塗膜がより親水化されるという利点があり、10重量%以下配合されていることにより、塗膜強度、塗膜均一性などの他の塗膜特性がより優れたものとなるという利点がある。
【0035】
本実施形態の水性塗料組成物には、例えば、樹脂、着色剤及び/又は体質顔料、有機溶剤、界面活性剤、防腐剤、防カビ剤等が含まれ得る。また前記水性塗料組成物には、必要に応じて、一般的な塗料組成物に通常用いられる架橋剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調節剤、ゲル化防止剤、光安定剤、帯電防止剤などが含まれ得る。
なお、本発明を上記例示の水性塗料用親水化剤、水性塗料組成物に限定するものではない。また一般の水性塗料用親水化剤、水性塗料組成物において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0036】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお以下に記述する実施例、比較例において、重量部および容量部の関係は、1gおよび1mlの関係と同様である。
【0037】
<感熱応答性の高分子化合物の調製>
フラスコにN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)1重量部、メタクリル酸メチル、0.1重量部、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル0.02重量部、γ−メルカプトプロピル取りメトキシシラン0.02重量部及びエタノール50容量部を加え、70度で6時間撹拌した後、n−ヘキサンにて重合後の溶液を再沈殿させ、得られた粗重合物をジエチルエーテルで8回洗浄し、その後減圧乾燥して、感熱応答性の高分子化合物であるN−イソプロピルアクリルアミド−メタクリル酸メチル共重合体を調製した。なお、調製された前記高分子化合物のGPC測定による分子量は、9800(標準ポリスチレン換算)であった。また、相転移温度は30.0度であった。
【0038】
(実施例1)
以下のようにして、水性塗料用親水化剤、具体的には、N−イソプロピルアクリルアミド−メタクリル酸メチル共重合体とシリカ粒子とが化学的に結合されてなる化学修飾シリカ粒子を製造した。還流管、温度計及び滴下ロートを備えた3つ口フラスコに、実施例1と同じコロイダルシリカ0.25重量部(固形分換算)、N−イソプロピルアクリルアミド−メタクリル酸メチル共重合体0.5重量部及びエタノール50容量部をフラスコに加え、70度で6時間撹拌した後、反応溶液の遠心分離を行って上澄み液を除去する洗浄操作を8回行った。洗浄後の残査を減圧乾燥し、N−イソプロピルアクリルアミド−メタクリル酸メチル共重合体とシリカ粒子とが化学的に結合されてなる化学修飾シリカ粒子0.231重量部を製造した。
【比較例】
【0039】
フラスコにN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)1重量部、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル0.02重量部、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.02重量部及びエタノール50容量部を加え、70度で6時間撹拌した後、n−ヘキサンにて重合後の溶液を再沈殿させ、得られた粗重合物をジエチルエーテルで8回洗浄し、その後減圧乾燥して、感熱応答性の高分子化合物であるN−イソプロピルアクリルアミド−メタクリル酸メチル共重合体を調製した。なお、調製された前記高分子化合物のGPC測定による分子量は、9600(標準ポリスチレン換算)であった。また、相転移温度は28.5度であった。
【0040】
(比較例1)
以下のようにして、水性塗料用親水化剤、具体的には、ポリN−イソプロピルアクリルアミドとシリカ粒子とが化学的に結合されてなる化学修飾シリカ粒子を製造した。還流管、温度計及び滴下ロートを備えた3つ口フラスコに、実施例1と同じコロイダルシリカ0.25重量部(固形分換算)、ポリN−イソプロピルアクリルアミド0.5重量部及びエタノール50容量部をフラスコに加え、70度で6時間撹拌した後、反応溶液の遠心分離を行って上澄み液を除去する洗浄操作を8回行った。洗浄後の残査を減圧乾燥し、ポリN−イソプロピルアクリルアミドとシリカ粒子とが化学的に結合されてなる化学修飾シリカ粒子0.231重量部を製造した。
【0041】
<親水性と疎水性のスイッチング機能の評価>
図1は、実施例及び比較例で製造した化学修飾シリカ粒子を水中に分散させ、20度から80度へ温度を上げたときの親水性の変化を模式的に示したものである。相転移温度より低い温度領域では、実施例は、比較例に比べると親水性の度合いが低いものの親水性を保持している。温度が上昇し、相転移温度に近づくと、親水性の低下が徐々に始まる。更に、相転移温度を超えると、共重合された疎水性モノマーにより、比較例に比べると実施例は、疎水性の度合い大きくなる。
【0042】
又、水中においては、前記高分子化合物の疎水性を示す箇所どうしは集まって更に疎水性の度合いが高くなる。したがって、前記に示す相転移温度を超えた状態では、高分子化合物の疎水性を示す箇所は、実施例の方が多いことから、疎水性の度合いが高く、かつ疎水性の箇所が集まって疎水性の度合いが高まりやすいと言える。つまり、水中に分散した化学修飾シリカ粒子において、比較例に比べて実施例の方が疎水性の急速な高まりにより本実施例の水性塗料用親水化剤の表面も急速に疎水性が高まり、早期に水表面に浮上しやすくなり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性及び疎水性が可逆的に変わる相転移温度を有する感熱応答性の高分子化合物が前記シリカ粒子に担持され、前記感熱応答性の高分子化合物は、重合すると疎水性を示す疎水性モノマーが共重合されていることを特徴とする水性塗料用親水化剤。
【請求項2】
前記感熱応答性の高分子化合物は、前記疎水性モノマーの重合比が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料用親水化剤。


【図1】
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【公開番号】特開2011−195633(P2011−195633A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61291(P2010−61291)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】