説明

水性塗料組成物

【課題】塗料として長期間安定に貯蔵・保管することが可能であって、室内及び屋外の大気に含まれる、ホルムアルデヒドや、アンモニア、メルカプタン等の有害な大気汚染物質を効率的且つ長期に渡って吸着することができる塗膜を形成可能で、下地への追従性にも優れる水性塗料組成物を提供することである。
【解決手段】α,β−エチレン性不飽和単量体と共重合可能な界面活性剤及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分とし、カルボキシル基を除くカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体が0.5質量%〜10質量%共重合された水性樹脂分散体(A)、分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物(B)、及び活性炭(C)を含む水性塗料組成物であって、
該水性分散体の動的光散乱法によって測定される平均粒子径は、該活性炭の平均細孔直径よりも大きいことを特徴とする水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料組成物に関し、特に建築内装用塗膜が得られる水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家屋の密閉性向上にともなって、家具や建材に含まれるホルムアルデヒドによるシックハウス症候群や、煙草、飲食物の腐敗、ペット等の臭気等の有害物質、不快物質による室内環境の悪化が叫ばれて久しい。これらを軽減する目的で活性炭、珪藻土、活性亜鉛華等の多孔質で吸着能力を有する物質は広く利用されている。
【0003】
塗料においては、揮発性有機溶剤を使用した塗料から水性塗料へと移行し、更に、前述の様な有害物質、不快物質を吸収させる為に多孔質で、吸着性を有する活性炭や珪藻土を塗料に用いた塗料が数多く報告、商品化されている(特許文献1〜4参照)。
【0004】
しかし、水性塗料へ活性炭を加えた際、活性炭の比率が高いほど、エマルション樹脂の界面活性剤を吸着することによって水性塗料の貯蔵安定性が著しく悪化し、粘度の増加、凝集、ゲル化等の現象に至ることがあった。また、活性炭の平均細孔直径が、エマルション樹脂の平均粒子径よりも大きい場合、エマルション樹脂自体を吸着してしまう恐れもあった。それを改善するために、エマルション樹脂に添加する前に、活性炭と界面活性剤、湿潤剤等を加えることで塗料とした後の貯蔵安定性を確保することが出来るが、塗膜になった際の活性炭の吸着能力は低下或いは、失われるといった課題があった。
【0005】
更に、得られる塗膜の有害物質、不快物質の吸着量を上げる目的で、活性炭配合比率を高くした場合、塗膜が脆く、下地素材の伸縮に追従できず、割れが発生することが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−29742号公報
【特許文献2】特許第3694462号公報
【特許文献3】特開平5−255621号公報
【特許文献4】特開2001−348302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、塗料として長期間安定に貯蔵・保管することが可能であって、室内及び屋外の大気に含まれる、ホルムアルデヒドや、アンモニア、メルカプタン等の有害な大気汚染物質を効率的且つ長期に渡って吸着することができる塗膜を形成可能で、下地への追従性にも優れる水性塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、α,β−エチレン性不飽和単量体と共重合可能な界面活性剤及び、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分とし、カルボキシル基を除くカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体が0.5質量%〜10質量%共重合された水性樹脂分散体(A)、分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物(B)、及び活性炭(C)を含む水性塗料組成物であって、
該水性分散体の動的光散乱法によって測定される平均粒子径は、該活性炭の平均細孔直径よりも大きいことを特徴とする水性塗料組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性塗料組成物は、塗料として長期間安定に貯蔵・保管することが可能であって、室内及び屋外の大気に含まれる、ホルムアルデヒドや、アンモニア、メルカプタン等の有害な大気汚染物質を効率的且つ長期に渡って吸着することができる塗膜を形成可能で、下地への追従性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、かかる問題を解決するために鋭意検討した結果、α,β−エチレン性不飽和単量体と共重合可能な界面活性剤及び、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分とし、カルボキシル基を除くカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体が0.5質量%〜10質量%共重合された水性樹脂分散体(A)、分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物(B)、及び活性炭(C)を含む水性塗料組成物であって、該水性分散体の動的光散乱法によって測定される平均粒子径は、該活性炭の平均細孔直径よりも大きいことを特徴とすることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0012】
本発明の水性塗料組成物を構成する水性樹脂分散体(A)は、水中にてα,β−エチレン性不飽和単量体と共重合可能な界面活性剤の存在下で、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体、及びそれ以外の共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合した水性樹脂分散体であり、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等の重合法を用いることができ、更に、単量体を一括して仕込む単量体一括仕込み法や、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体と水と乳化剤を予め混合乳化しておき、これを滴下するプレエマルション法、あるいは、これらを組み合わせることができ、1段階、又は2段階以上の多段階の滴下法を用いることも可能である。
【0013】
乳化重合法の代表例としては、水中にて重合開始剤、及び必要に応じて連鎖移動剤の存在下、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体及び、その他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体の混合物、更に、水及び、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な界面活性剤を事前混合したプレエマルションを、通常60〜90℃の加温下で滴下し乳化重合することで水性樹脂分散体を得る方法が挙げられる。
【0014】
前記重合開始剤は、従来から一般的にラジカル重合に使用されているものが使用可能であるが、中でも水溶性のものが好適であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライドや、4,4’−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2’アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物;過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。更に、L−アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤と、硫酸第一鉄等を組み合わせたレドックス系も使用できる。
【0015】
前記連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン等の長鎖のアルキルメルカプタン類や、芳香族メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類、スチレンダイマー等を挙げることが出来る。
【0016】
その他、一般的な水性樹脂分散体としては、乳化安定化剤としてポリビニルアルコールや、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を用いられることがあるが、本発明では活性炭の有害、不快物質の吸着を阻害する為、使用しないことが好ましい。
【0017】
また、本発明で必須である、α,β−エチレン性不飽和単量体と共重合可能な界面活性剤としては、重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(製品例:第一工業製薬株式会社製アクアレンKH−10)、α−スルホ−ω−(i((ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイルアンモニウム塩(製品例:株式会社ADEKA製アデカリアソープSE10)、ポリオキシエチレンプロペニルアルキルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(製品例:第一工業製薬株式会社製アクアレンBC10)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩(製品例:花王株式会社製ラテムルPD104)等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。更に、前述の骨格で末端基が−OH基であるノニオン性界面活性剤等も挙げられ、これらを単独若しくは、2種以上を組み合わせて使用することができる。一方、α,β−エチレン性不飽和単量体と共重合性を有さない非反応型界面活性剤は、活性炭の細孔に入り込み、その吸着能力を著しく低下させるのみならず、塗料組成物の耐水性も低下させるために水性樹脂分散体(A)には含有しないことが好ましい。
【0018】
次に、水性樹脂分散体の形成に使用されるエチレン性不飽和単量体について説明する。前述の通り、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体及び、カルボキシル基を除くカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体が0.5質量%〜10質量%を必須成分として含有するものである。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル等が挙げられる。これらは特に制限無く使用できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体は、重合後アンモニアやアミン類、無機塩などで中和することにより、優れた貯蔵安定性、機械的安定性などを得ることができる。一方、カルボキシル基を除くカルボニル基を有する単量体としては、例えば、アクロレインや、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレート−アセチルアクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン等が挙げられる。これらの中でも、特にアクロレインや、ジアセトンアクリルアミド、及びビニルメチルケトンが好ましい。
【0019】
これらカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体は、水性樹脂分散体を形成する全エチレン性不飽和単量体中、0.5質量%未満となる十分な粒子間の架橋形成ができない為に、塗膜の弾性が得られず、基材追従性が低下する。逆に、10質量%を超えると耐水性等が低下し、好ましくない。
【0020】
また、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合する共単量体としては、従来からアクリル樹脂の製造に使用されている各種エチレン性不飽和単量体が、特に制限なく使用できる。
【0021】
具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;
スチレンや、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;
(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;
2−アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;
グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴノマー;
その他N−メチロール基を有したN−メチロールアクリルアミドや、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート
等が代表的なものとして挙げられ、これらを適宜組み合わせて使用することができる。
【0022】
更に、ジビニルベンゼンや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体を使用する方法;
乳化重合反応時の温度にて相互に反応する官能基を持つ単量体を組合せ、例えば、カルボキシル基とグリシジル基や、水酸基とイソシアネート基等の組合せの官能基を持つエチレン性不飽和単量体を選択含有させた単量体混合物を使用する方法;
加水分解縮合反応する、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、や、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシリル基含有エチレン性不飽和単量体を含有させた単量体混合物を使用する方法;
を併用することも可能である。
【0023】
また、水性分散体(A)の動的光散乱法によって測定される平均粒子径は、活性炭(C)の平均細孔直径よりも大きいことを必須である。活性炭(C)の平均細孔直径は一般的に1nm〜30nmである。上記手法で得られる水性樹脂分散体(A)の動的光散乱法によって測定される平均粒子径が活性炭(C)の平均細孔直径よりも小さい30nm以下であると活性炭の細孔内に水性樹脂分散体が入り込む為、塗料組成物の安定性及び、得られる塗膜の有害物質、不快物質の吸着能力が著しく低下させられる。その為、水性樹脂分散体(A)の平均粒子径は、活性炭(C)の平均細孔直径つまり30nmよりも大きく、好ましくは、50nm以上、より好ましくは、測定される光散乱強度による粒度分布の最小値が30nmよりも大きくなることが塗料の安定性、活性炭の吸着能力を低下させることが無い為に好ましい。
【0024】
分子内にヒドラジド基を2個以上、好ましくは、2〜3個含有する化合物(B)としては、例えば、カルボヒドラジドや、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、チオカルボジヒドラジド等が挙げられる。これらの中でも、水性塗料組成物への分散性や耐水性等のバランスからカルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドが好ましい。
【0025】
(B)成分の配合量は、水性樹脂分散体(A)のカルボニル基1当量に対し、0.1〜2.0当量、好ましくは0.3〜1.2当量のヒドラジド基となるような量であるのが適当である。
【0026】
なお、(B)成分の量が、前記範囲より少ないと、水性樹脂分散体に含有されるカルボニル基との反応が不十分となり、下地素材の伸縮に追従できなくなり、逆に過剰になると、未反応の(B)成分が塗膜中に残存し、耐水性等が低下する傾向にある。
【0027】
本発明で用いられる活性炭(C)は、例えばウバメガシを900〜1400℃、好ましくは1000〜1200℃の高温で焼いた後に適量の水に灰と土をかけて急冷することにより製造した備長炭に代表される白炭や、ナラ、クヌギ、ヒバ、杉等を400〜800℃で焼き、自然に冷却して製造した黒炭、孟宗竹、マダケ、ハチク等を400〜800℃で焼き、自然に冷却して製造した竹炭、その他籾殻や、胡桃殻、サトウキビから糖類を搾り取った搾りかす等の植物性原料、更に石炭等の鉱物性原料を、水蒸気や二酸化炭素、空気等のガスを使う高温炭化法用いた後、それらを粉砕して300メッシュ以下の粒子径にしたもので、これらを特に制限無く1種又は2種以上を混合して用いることができる。活性炭(C)の粒径は0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜3μmである。活性炭を微粉末状にすることで表面積が広がり吸着能力が向上し、本発明の効果がより引き出すことができる。活性炭の焼成温度を1000〜1200℃とすることにより活性炭が塩基性の性質を示し、酸性の物質を良く吸着するようになり、また導電(半導体)特性を帯て、電磁波吸着材としての機能も発揮するようになる。
【0028】
上記本発明の水性塗料組成物に用いられる顔料は、通常塗料分野で用いられる着色顔料、体質顔料等の顔料が特に制限なく使用できる。
【0029】
着色顔料としては、酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック等の黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルー等の青色顔料;フタロシアニングリーン等の緑色顔料;等を挙げることができる。
【0030】
体質顔料としては、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、亜鉛末、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉等を挙げることができる。更に意匠性が要求される場合には光輝性顔料も使用することができ、光輝性顔料として例えば、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、リン化鉄等のメタリック顔料;パール状金属コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等のパール顔料を挙げることができる。
【0031】
本発明の水性塗料組成物は、貯蔵安定性及び塗装作業性の点から、増粘剤、レオロジーコントロール剤を含有することができる。かかる増粘剤としては、従来公知のものが制限なく使用することができ、具体的には例えば、
ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンロリロナイト、有機モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;
ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系増粘剤;
「UH−814N」、「UH−462」、「UH−420」、「UH−472」、「UH−540」(以上、旭電化社製)、「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」(以上、サンノプコ社製)等のウレタン会合型増粘剤;
カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;
カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;
アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;
ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;
プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;
ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;
ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤
等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明の水性塗料組成物には、更に必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、塩基性中和剤、防腐剤、抗菌剤、防かび・防藻剤、消泡剤、抑泡剤を配合することができる。但し、顔料分散剤、湿潤剤、及びその他の添加剤に含まれる界面活性剤の総量が、塗料組成物100質量部に対し、3質量部以下であることが好ましく、より好ましくは、1質量部以下である。具体的には例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル;等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリル化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;等のポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレートソルビタンジステアレート;等のソルビタン脂肪酸エステル類等の非反応型ノニオン性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム;等のアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム;等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム;等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、ポリオキシエチレン多環フェニル硫酸ナトリウム、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤等の非反応型アニオン性界面活性剤が挙げられる。これら非反応型界面活性剤は、活性炭の細孔に入り込み、その吸着能力を著しく低下させるのみならず、塗料組成物の耐水性も低下させる。
【0033】
また、水性樹脂組成物の成膜を補助する目的で揮発性有機化合物、例えば具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;等のアルキレングリコールエーテル系有機溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート;等のアセテート系有機溶剤、2,2,4−トリメチル−1,3ペンタンジオールモノイソブチレート等を適宜添加することはできるが、沸点50℃〜150℃の揮発性有機溶剤を含まないことが好ましい。
【0034】
この様にして得られた、本発明の水性塗料組成物は、被塗面として、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛メッキ鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼板等の金属;これらの金属表面にりん酸亜鉛処理、クロメート処理等の化成処理を施した表面処理金属;プラスチック、木材、コンクリート、dモルタル等の被塗物素材面、又はこれら被塗物素材面にプライマー等の下塗り及び/又は中塗り及び/又は上塗り塗料を塗装した塗膜面等に塗装することが出来る。更に、本発明の水性塗料組成物を塗装する塗装手段としては、スプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装等特に制限はなく、乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれであってもよい。
【実施例】
【0035】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0036】
以下、本発明について、実施例により更に詳細に説明する。なお、実施例中「部」、「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
【0037】
水性樹脂分散体(A1〜A4)の製造
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水240部、炭酸水素ナトリウム塩(pH調整剤)0.5部、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(反応型アニオン性界面活性剤;第一工業製薬株式会社製アクアレンKH−10)2部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温した後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.5部を加え、続いて、予め別容器で撹拌混合しておいた表1に示す乳化物(a1〜a4)を、3時間かけて連続滴下し、滴下終了後、80℃で2時間攪拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、28%アンモニア水にてpH9.0に調整し、動的光散乱法によって測定される平均粒子径が、それぞれ100nm(最小値50nm)、95nm(最小値50nm)、105nm(最小値50nm)、90nm(最小値50nm)の水性樹脂分散体(A1〜A4)を得た。
【0038】
尚、粒子径の測定については、大塚電子株式会社製、FPAR1000を使用し、動的光散乱法によって測定し、散乱強度による平均値を用いた。
【0039】
水性樹脂分散体(A5)の製造
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水525部、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(反応型アニオン性界面活性剤;第一工業製薬株式会社製アクアレンKH−10)10部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温した後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.5部を加え、続いて、予め別容器で撹拌混合しておいた表1に示す乳化物(a5)を、3時間かけて連続滴下し、滴下終了後、80℃で2時間撹拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、28%アンモニア水にてpH9.0に調整し、動的光散乱法によって測定された平均粒子径30nm(最小値5nm)、水性樹脂分散体(A5)を得た。
【0040】
水性樹脂分散体(A6)の製造
水性樹脂分散体(A1)の製造において、界面活性剤を非反応型アニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンジスチリル化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬製ハイテノールNF08)2部に変更し、表1に示す乳化物(a6)を滴下する以外は同様の手順によって、動的光散乱法によって測定された平均粒子径90nm(最小値50nm)の水性樹脂分散体(A6)を得た。
【0041】
【表1】

MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸ブチル
DAAM:ジアセトンアクリルアミド
AA:アクリル酸
KH10:第一工業製薬製反応型アニオン性界面活性剤
NF08:第一工業製薬製非反応型アニオン性界面活性剤
【0042】
(実施例1〜5及び比較例1〜5)
上記で得られた、水性樹脂分散体(A1〜A6)に、ヒドラジド基保有化学物質(B)として、アジピン酸ジヒドラジド及び、増粘剤として、Natrosol(Hercules Incorporated社製;ヒドロキシエチルセルロース系増粘剤)を60℃の湯で溶解した後、冷却したものを添加し撹拌機にて10分間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら活性炭(C1〜C2)及び、分散用界面活性剤としてノイゲンEA−157(第一工業製薬製ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル)を加え、更に、粘性調整として、プライマルRM8(Rohm and Haas Company製ウレタン会合型増粘剤)、防腐剤として、Proxel AM(アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社)をそれぞれ添加した後、20分間撹拌し各水性塗料組成物を得た。詳細な配合比率及び、評価結果を表2に示す。
【0043】
なお、活性炭(C1)は、植物性活性炭、平均細孔直径20nm、粒径3μm、焼成温度1000℃であり、活性炭(C2)は、植物性活性炭、平均細孔直径35nm、粒径5μm、焼成温度1000℃である。これらの平均細孔直径は、マイクロメリティックス社製高速比表面積/細孔分布測定装置ASAP 2405によって測定した。粒径はフルイによる分級である。
【0044】
評価方法は下記の様にして行った。
【0045】
<貯蔵安定性>
水性塗料組成物を50℃恒温機内へ1ヶ月間保管し、塗料の粘度及び外観を確認。塗料粘度はストーマー粘度計を用いて測定した。
評価基準
○;ストーマー粘度計による測定粘度が、初期値±5KUであり、沈殿等が確認されないこと。
△;沈殿、凝集等は確認されないが、ストーマー粘度計による測定粘度が、初期値±5よりも大きい場合
×;沈殿、凝集等が確認される。
【0046】
<成膜性>
水性塗料組成物をスレート板上に6milアプリケーターにて塗装し、23℃の室内にて1週間乾燥させた後、外観を確認した。
評価基準
○;割れ等が全く確認されない。
△;肉眼では確認できない微少な割れが局所的に発生している。
×;肉眼で全面に微少な割れが確認される。
【0047】
<下地追従性>
23℃雰囲気下における引張試験を下地追従性試験として行った。試験方法は、JIS A6909に準拠し、膜厚が0.2mmのダンベル型試験片を作製した。島津製作所製オートグラフAG−I 100kNを用いて測定した。
評価基準
○;300%以上
△;100%以上、300%未満
×;100%未満
【0048】
<耐洗浄性>
スレート板上に、6milアプリケーターで塗装した後、23℃室温下で1週間乾燥し、試験片を得た。その試験片をJIS A6909に準拠し、洗浄試験機にセットし、ブラシに約450gfの荷重を加えながら表面をこすった。500回ブラシを往復させた後、試験片を水で洗い、ブラシでこすった部分について表面の剥がれ及び磨耗による基板の露出の有無を目視観察する。
評価基準
○;塗膜表面上に剥がれや基材の露出が全く無い。
△;塗膜表面上の一部に剥がれや基材の露出がある。
×;塗膜の50%以上が剥がれや摩耗による露出が認められる。
【0049】
<汚染物質吸着性>
・試験ガスの調整
試験ガス調整用テドラーバッグを用いて、アセトアルデヒド標準ガス(ガス濃度6,000ppm)を普通空気で希釈して3L(ガス濃度80〜100ppm)とする。その後、ミニコックを閉じてバッグ内のアセトアルデヒド濃度をより均一にするためにバッグの両端を交互に押して内部のガスを混合してから静置する。
・試験板の作製
面積が10×10cmのスレート板に水性塗料組成物を塗布量1.5gを間隔1時間をおいて2回塗装し、シリカゲルを入れたデシケーター内で1週間かけて乾燥させた。
・試験操作
評価用テドラーバッグの片面にそれぞれ切れ込みを入れ、そこから上記で作製した試験板を挿入し、出来るだけバッグ内の空気を排出した後、開口部をヒートシール装置で密閉した。その後、試験ガスを調整したテドラーバッグをシリコーンチューブで接続し、両方のバッグのコックを開いてから試験ガスを調整したバッグを手で押さえて試験ガスを試験片の入ったバッグに送り込む。その後速やかにコックを閉じて、室温23℃の部屋に30分間静置した後、アセトアルデヒド濃度を検知管を用いてガス濃度測定を2回行い、その平均値を初期値とした。但し、いずれの初期値も80〜100ppmの範囲から外れる場合は、試験ガスの調整からやり直した。
【0050】
その後、3日間静置した後、再度アセトアルデヒド濃度検知管を用いて測定し、その測定値を用いて、汚染物質吸着性を決定した。
評価基準
○;アセトアルデヒド濃度が10ppm未満
△;アセトアルデヒド濃度が10ppm以上30ppm未満
×;アセトアルデヒド濃度が30ppm以上
【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β−エチレン性不飽和単量体と共重合可能な界面活性剤及び、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分とし、カルボキシル基を除くカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体が0.5質量%〜10質量%共重合された水性樹脂分散体(A)、分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物(B)、及び活性炭(C)を含む水性塗料組成物であって、
該水性分散体の動的光散乱法によって測定される平均粒子径は、該活性炭の平均細孔直径よりも大きいことを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
水性樹脂分散体(A)に用いられる界面活性剤が、α,β−エチレン性不飽和単量体との共重合性を有さない、非反応型界面活性剤が含まれない請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
活性炭や着色顔料の分散用に用いられる界面活性剤及び、消泡剤や、防腐剤等の添加剤に含まれる界面活性剤の総量が、塗料組成物100質量部に対し、3質量部以下である請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
前記活性炭(C)が、粒径0.1〜10μmであり、温度1000〜1200℃で焼成している請求項1〜3のいずれかに記載の水性塗料組成物。

【公開番号】特開2010−174184(P2010−174184A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20433(P2009−20433)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(301055424)アーテック工房株式会社 (3)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】