説明

水栓

【課題】開放操作時における当初の水勢を確実に維持すると共に、再度の開放操作を不要とした水栓を提供すること。
【解決手段】流水路の中途に配設した弁座と、弁座を止水及び開放する弁体と、よりなる水栓において、弁座は、流水弁孔と、流水弁孔の流出側周縁に突出形成した弁座突縁と、より構成し、弁体は、弁座突縁に圧接自在とした弾性素材の圧接止水部と、圧接止水部より突出して流水弁孔の内周面に摺接自在とした摺接止水部と、より構成し、止水状態においては、弁座突縁が弁体の圧接止水部に陥没すると共に、弁体の摺接止水部が弁座の流水弁孔の内周面に摺接してそれぞれ止水を行うべく構成し、開放操作時においては、弁体の圧接止水部が摺接止水部より先に止水状態が解除され、かつ、圧接止水部と弁座突縁との間隙面積を、圧接止水部の陥没した部分が復元されたとしても、摺接止水部と流水弁孔の内周面との間隙面積よりも広くなるよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流水路の中途に配設した弁座と、弁座の流出側で開閉作動する弁体とよりなる水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、流水路の中途に配設した弁座と、弁座の流出側で開閉動作する弁体とよりなる水栓が知られている。
【0003】
このような従来の水栓においては、弁座は、流水弁孔と、その流出側周縁に突出形成した弁座突縁とより構成し、弁体は、弁座突縁に圧接自在とした弾性素材の圧接止水部とより構成しており、圧接止水部の下面を、下方に位置する弁座突縁に圧接させることで流水路を閉止して止水状態とする一方、圧接止水部の下面を、弁座突縁から離反することで流水路を開放して開放状態とするようになっている。
【0004】
そして、流水路が開放状態となると同時に、圧接止水部と弁座突縁との間の止水状態が解除され、圧接止水部と弁座突縁との間隙を水が流れるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−81820号公報
【特許文献2】実用新案登録第3064786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の水栓では、止水状態においては、弁座突縁が弁体の圧接止水部に陥没しており、この止水状態から開放操作を行うと、圧接止水部の陥没した部分が弁座突縁に向って復元し、圧接止水部と弁座突縁との間隙の幅員が除々に狭くなる。
【0007】
圧接止水部と弁座突縁との間隙の幅員が除々に狭くなると、その間隙を通過する水の流量が開放操作時に比べて除々に低下してしまい、当初の水勢を維持することができないという問題を生じていた。
【0008】
また、当初の水勢を回復するために、再度の開放操作を行う必要があり、使用者に不快感を与えると共に、再度の開放操作を行う際には、使用者が過剰な開放操作をしてしまい、使用者の意図しない過剰な水勢の水が流出してしまうという問題を生じていた。
【0009】
そこで、本発明は、流水路の中途に配設した弁座と、弁座の流出側で開閉作動する弁体とを備え、開放操作時における当初の水勢を確実に維持すると共に、再度の開放操作を不要とした水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、流水路の中途に配設した弁座と、前記弁座の流出側で開閉作動する弁体と、よりなる水栓において、前記弁座は、流水弁孔と、前記流水弁孔の流出側周縁に突出形成した弁座突縁と、より構成し、前記弁体は、前記弁座突縁に圧接自在とした弾性素材の圧接止水部と、前記圧接止水部より突出して前記流水弁孔の内周面に摺接自在とした摺接止水部と、より構成し、しかも、止水状態においては、前記弁座突縁が前記弁体の前記圧接止水部に陥没すると共に、前記弁体の前記摺接止水部が前記弁座の前記流水弁孔の内周面に摺接してそれぞれ止水作動を行うべく構成し、開放操作時においては、前記弁体の前記圧接止水部が前記摺接止水部より先に止水状態が解除され、かつ、前記圧接止水部と前記弁座突縁との間隙面積を、前記圧接止水部の陥没した部分が復元されたとしても、前記摺接止水部と前記流水弁孔の内周面との間隙面積よりも広くなるよう構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記開放操作によって、非陥没状態に復元した前記弁体の前記圧接止水部の圧接面が前記弁座突縁の頂部から離反した後に、前記摺接止水部の止水解除が行われて吐水が開始すべく構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記摺接止水部は、先端に向って先細りのテーパー形状としたことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の水栓は、下流側で2つに分岐し、それぞれの先端に小径の吐水孔を備え、前記吐水孔から上方に吐水すべく構成した洗眼水栓であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、流水路の中途に配設した弁座と、弁座を止水及び開放する弁体と、よりなる水栓において、弁座は、流水弁孔と、流水弁孔の流出側周縁に突出形成した弁座突縁と、より構成し、弁体は、弁座突縁に圧接自在とした弾性素材の圧接止水部と、圧接止水部より突出して流水弁孔の内周面に摺接自在とした摺接止水部と、より構成し、しかも、止水状態においては、弁座突縁が弁体の圧接止水部に陥没すると共に、弁体の摺接止水部が弁座の流水弁孔の内周面に摺接してそれぞれ止水を行うべく構成し、開放操作時においては、弁体の圧接止水部が摺接止水部より先に止水状態が解除され、かつ、圧接止水部と弁座突縁との間隙面積を、圧接止水部の陥没した部分が復元されたとしても、摺接止水部と流水弁孔の内周面との間隙面積よりも広くなるよう構成したので、開放操作時に、圧接止水部と弁座突縁との間が止水解除されてから摺接止水部と流水弁孔の内周面との間が止水解除されるまでの間に圧接止水部の陥没した部分が復元されたとしても、摺接止水部と流水弁孔の内周面との間が止水解除されて吐水が開始されてからは、摺接止水部が前記弁座の前記流水弁孔の内周面との間隙で流量調整を行うことができ当初の水勢を確実に維持し、再度の開放操作を不要とすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、開放操作によって非陥没状態に復元した弁体の圧接止水部の圧接面が弁座突縁の頂部から離反した後に、摺接止水部の止水解除が行われて吐水が開始すべく構成したので、摺接止水部と流水弁孔の内周面との間が止水解除され吐水が開始された状態では、圧接止水部と弁座突縁との間隙は摺接止水部と流水弁孔の内周面との間隙よりも確実に広くなり、当初の水勢を確実に維持し、再度の開放操作を不要とすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、摺接止水部は、先端に向って先細りのテーパー形状としたので、流水弁孔の内周面における内径バラツキや、摺接吐水部の取付誤差を吸収することができ、摺接吐水部と流水弁孔との間隙を通過する水の流量を確実に調整することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の水栓は、下流側で2つに分岐し、それぞれの先端に小径の吐水孔を備え、吐水孔から上方に吐水すべく構成した洗眼水栓であるので、開放操作時に、圧接止水部と弁座突縁との間が止水解除されてから摺接止水部と流水弁孔の内周面との間が止水解除されるまでの間に、圧接止水部の陥没した部分が復元されることになり、摺接止水部と流水弁孔の内周面との間が止水解除された後に、圧接止水部と弁座突縁との間の幅員が狭くなることがなく、当初の水勢を確実に維持し、再度の開放操作を不要とすることができる洗眼水栓を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る水栓の構成を概略的に示す縦断面図であり、図2は、図1に示すB部の部分拡大図であって止水時の状態を示す図であり、図3は、水栓が備えた弁開閉機構の分解斜視図である。
【0019】
図1ないし図3に示すように、本実施形態に係る水栓は、水栓本体の下流側で2つに分岐し、それぞれの先端に小径の吐水孔を備え、吐水孔から上方に吐水すべく構成した洗眼水栓Aである。なお、本実施形態に係る水栓は、図1に示すように洗眼水栓Aに適用することができる他に、例えば、公園や図書館などの公共施設に設置される飲料用給水器の水栓にも適用しても良い。
【0020】
洗眼水栓Aは、所定の水源に連結された水栓本体1と、水栓本体1に設けられた弁開閉機構2と、水栓本体1の出水口1aに連結され下流側で2つに分岐しそれぞれの先端に小径の吐水孔3dを備えた分岐管3と、から構成されている。
【0021】
分岐管3は、弁開閉機構2の操作に伴って所定の水源から水栓本体1に供給された水を、先端に備えた吐水孔3dから上方に向けて吐水するものである。なお、水栓本体1の出水口1aと、分岐管3の下端部との連結は、例えば、袋ナット3aを用いた螺着などによって行われ、その連結部分には、水漏れを防止するために、パッキンなどのシール部材3cが設けられると共に、分岐管3の下端部が水栓本体1の出水口1aから抜け出ることを防止するために、抜け留め部材3bが設けられる。
【0022】
水栓本体1は、内部に形成した流水路4と、流水路4の中途に形成された仕切壁5と、仕切壁5に形成した弁座6と、から構成されている。
【0023】
仕切壁5は、流水路4を、所定の水源に連通する上流側の導水室4aと、分岐管3に出水口1aを介して連通する下流側の排水室4bとに区画するものである。また、排水室4bにおける仕切壁5と反対側の側面には、弁開閉機構2の後述するスピンドル軸8を挿通するための挿通口20が形成されている。
【0024】
弁座6は、導水室4aと排水室4bとを連通する略円形状の流水弁孔10と、流水弁孔10の流出側周縁(排水室4b側周縁)に略リング状に突出形成した弁座突縁9と、から構成されている。弁座6に弁座突縁9が設けられていることにより、後述する弁開閉機構2の弁体7に圧接した際の水密性を向上することができる。
【0025】
弁開閉機構2は、水栓本体1の挿通口20から水栓本体1の内部に先端を挿入したスピンドル軸8と、同スピンドル軸8の外周に突出部8aを介して形成した雄ネジ部8bと、同雄ネジ部8bの先方に形成した略皿形状の弁体取付用ケース11と、同弁体取付用ケース11に嵌入固定した弁体7と、より構成されている。
【0026】
なお、図中、14bは、弁体7を弁体取付用ケース11に固定するための固定ボルト、16は、弁体7の中央に設けられ固定ボルト14bを挿入するための貫通孔であり、11aは、弁体取付用ケース11の中央に設けられた雌ネジ孔であり、弁体7は、固定ボルト14bを雌ネジ孔11aに螺着することによって弁体取付用ケース11に固定される。
【0027】
また、水栓本体1の挿通口20の内周面には、スピンドル軸8の雄ネジ部8bに対応する雌ネジ部20aが螺刻されている。
【0028】
そして、スピンドル軸8を水栓本体1の挿通口20に挿入した状態で、スピンドル軸8と水栓本体1の挿通口20とは、それぞれ雄ネジ部8bと雌ネジ部20aとを介して螺合される。
【0029】
このように、スピンドル軸8を水栓本体1の挿通口20に螺合した状態では、スピンドル軸8の先端に取り付けた弁体7は、弁座6の流水弁孔10に臨設されることになる。一方、スピンドル軸8における弁体7と反対側の他端は、水栓本体1の挿通口20から外側に突出し、操作ハンドル装着部22を介してスピンドル軸8をその軸心回りに回動操作するための操作ハンドル21が装着される。
【0030】
なお、スピンドル軸8と水栓本体1の挿通口20とが螺合した状態で、水栓本体1の挿通口20の外端部は、例えば、袋ナット13を用いて閉塞され、その閉塞部分には、水漏れを防止するために、パッキンなどのシール部材14が設けられる。
【0031】
かかる構成により、操作ハンドル21を回動操作すると、スピンドル軸8がその軸心回りに回動して、弁座6に対して近接及び離反する方向に移動することになる。そして、このスピンドル軸8の移動に伴って、弁体7が弁座6に対して圧接及び離反するようになっている。
【0032】
次に、スピンドル軸8の弁体取付用ケース11に嵌合される弁体7の具体的な構成について図2及び図3を参照して説明する。弁体7は、弾性素材で形成されており、弁座6に対して下流側(排水室4b側)から当接し弁座6を止水及び開放するものである。
【0033】
この弁体7は、弁座突縁9に下流側(排水室4b側)から圧接自在とした弾性素材の圧接止水部17と、圧接止水部17より上流側(導水室4a側)に向けて突出して流水弁孔10の内周面10aに摺接自在とした摺接止水部18と、より構成されている。
【0034】
圧接止水部17は、略ドーナツ状に形成されており、弁座突縁9と圧接する面には、平面状の圧接面17aを形成している。
【0035】
摺接止水部18は、先端に向って、すなわち、流水弁孔10の上流側(導水室4a側)に向って先細りのテーパー形状に形成されている。言い換えると、摺接止水部18は、ドーナツ状の圧接止水部17の中央に隆起状に形成した断面台形状、すなわち、先端に向って先細りの台形状に形成されている。このため、摺接止水部18の基端部、すなわち、台形基端は、流水弁孔10よりも大径に形成し、摺接止水部18の先端部、すなわち、台形先端部は、流水弁孔10よりも小径に形成されていることとなり、かかる台形の傾斜面が、流水弁孔10の内周面10aに摺接自在となるように構成している。これにより、摺接止水部18が、摺接止水部18の流水弁孔10の内周面10aにおける内径バラツキや、摺接止水部18の取付誤差を吸収することができる他、摺接止水部18と流水弁孔10との間隙を通過する水の流量を確実に調整することができる。
【0036】
このような洗眼水栓Aにおいて、止水時には、操作ハンドル21を操作してスピンドル軸8をその軸心回りに回動して弁座6に対して近接する方向に螺進させると、スピンドル軸8が弁体7を弁座6に対して圧接して流水弁孔10を閉塞し、導水室4aから排水室4bへの水の流れを遮断する止水状態となる。
【0037】
そして、上記した構成を有する洗眼水栓Aでは、止水状態においては、弁座突縁9が弁体7の圧接止水部17に陥没すると共に、弁体7の摺接止水部18が弁座6の流水弁孔10の内周面10aに摺接してそれぞれ止水を行うべく構成されている。
【0038】
すなわち、止水状態においては、図2に示すように、弁体7の圧接止水部17が弁座突縁9の頂部9aに押し付けられることによって、圧接止水部17の圧接面17aの一部が、図2に破線で示す平面状から、弁座突縁9の外周に沿った曲面状に弾性変形して陥没し、弁座突縁9の頂部9aに対して圧接密着するようになっている。このとき、圧接止水部17の圧接面17aのうち弁座突縁9の頂部9aと接触する部分には、導水室4aから排水室4bへの水の流れを遮断する第1止水領域Pが形成されるようになっている。
【0039】
さらに、この止水状態においては、摺接止水部18の基端部が、弁座6の流水弁孔10の内周面10aに押し付けられることによって、図2に破線で示す状態から、流水弁孔10の内周面10aに沿って弾性変形して縮径し、弁座6の流水弁孔10の内周面10aに対して摺接密着するようになっている。このとき、摺接止水部18の外周面の中途部であって流水弁孔10の内周面10aと接触する部分には、導水室4aから排水室4bへの水の流れを遮断する第2止水領域Qが形成される。
【0040】
この第2止水領域Qにおける摺接止水部18の外径は、流水弁孔10の内径と等しいか、又は、流水弁孔10の内径よりもやや大きくなるように形成されている。つまり、摺接止水部18は、第2止水領域Qを境にして、流水弁孔10よりも大径に形成された基端部と、流水弁孔10よりも小径に形成された先端部とにより形成されていることとなる。
【0041】
このように、本実施形態に係る洗眼水栓Aでは、弁座突縁9と圧接止水部17の圧接面17aとが接触する部分と、摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとが接触する部分との両部分に、それぞれ別個の第1止水領域P及び第2止水領域Qを形成しているので、止水状態において第1止水領域P及び第2止水領域Qによって二重の止水を実現することができる。したがって、導水室4aを流れる水の水圧が高く第1止水領域Pだけでは止水が困難な場合であっても、さらに第2止水領域Qによっても止水がされているので、水密性を格段に向上することができ、水漏れなどの不測の事故を確実に防止することができる。
【0042】
一方、本実施形態に係る洗眼水栓Aにおいて、吐水時、すなわち、開放操作時には、操作ハンドル21を操作してスピンドル軸8をその軸心回りに回動して弁座6から離反する方向に適量だけ螺進させると、スピンドル軸8が弁体7を弁座6から離反して流水弁孔10を開放し、導水室4aから排水室4bへの水の流れを許容する吐水状態となる。
【0043】
図4は、図1に示すB部の部分拡大図であって止水時から吐水時に移行する直前の状態を示す図であり、図5は、図1に示すB部の部分拡大図であって吐水時の状態を示す図である。
【0044】
本実施形態に係る洗眼水栓Aでは、図4及び図5に示すように、開放操作時(吐水時)においては、弁体7の圧接止水部17が摺接止水部18より先に止水状態が解除され、かつ、摺接止水部18が弁座6の流水弁孔10の内周面10aとの間隙で流量調整を行うべく構成されている。
【0045】
すなわち、開放操作時(吐水時)においては、図4に示すように、まず、弁体7の圧接止水部17が弁座突縁9の頂部9aから離反することによって弁体7の第1止水領域Pの止水状態が解除され、その後、図5に示すように、弁体7の摺接止水部18が流水弁孔10の内周面10aから離反することによって弁体7の第2止水領域Qの止水状態が解除され、最終的に、摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの間隙で流量調整を行うように構成されている。
【0046】
特に、本実施形態に係る洗眼水栓Aは、開放操作によって非陥没状態に復元した圧接止水部17の圧接面17aが弁座突縁9の頂部9aから離反した後に、摺接止水部18の止水解除が行われて吐水が開始すべく構成されている。
【0047】
具体的には、弁体7の圧接止水部17が弁座突縁9の頂部9aから離反する方向に移動すると、弁座突縁9に押圧されて陥没していた圧接止水部17の圧接面17aは、弁座突縁9による押圧から解放されることによって、図4に破線で示す曲面状から、図4に実線で示す平面状に除々に弾性復元し、非陥没状態となる。
【0048】
ここで、摺接止水部18は、圧接止水部17の圧接面17aが弾性復元して非陥没状態となったとしても、弁座突縁9との間に所定幅の間隙が形成されるまで、流水弁孔10の内周面10aに継続して摺接するように、すなわち、第2止水領域Qの止水状態が維持されるように構成されている。
【0049】
したがって、仮に、第2止水領域Qの止水状態が維持されないことによって圧接止水部17の圧接面17aと弁座突縁9との間隙に水が通過するとした場合に、圧接止水部17の圧接面17aの弾性復元に伴って、圧接止水部17の圧接面17aと弁座突縁9との間隙幅が狭小化し、その間隙を通過する水量が開放操作時に比べて低下する事態を回避することができる。
【0050】
そして、弁体7の圧接止水部17が弁座突縁9の頂部9aから離反することによって、
弁座突縁9と圧接止水部17の圧接面17aとの間に形成された所定幅の間隙には、流路R1が形成されることになる。この流路R1が形成されることによって、弁体7の第1止水領域Pの止水状態が解除されることになるが、弁体7の第2止水領域Qの止水状態が解除されていないので、上流側(導水室4a側)からの水が流路R1に流れ込むことはない。
【0051】
その後、図5に示すように、弁体7の摺接止水部18が流水弁孔10の内周面10aから離反することによって、弁体7の摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの間に形成された間隙には、流路R2が形成されることになる。この流路R2が形成されることによって、弁体7の第2止水領域Qの止水状態が解除され、上流側(導水室4a側)からの水が流路R2及び流路R1の順に流れ込み、排水室4b及び分岐管3を順に通過して分岐管3の吐水孔3dから上方へ吐水される。
【0052】
このように、摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとが止水解除されて吐水が開始された吐水状態では、圧接止水部17の圧接面17aが既に弾性復元を終えて非陥没状態となっており、圧接止水部17と弁座突縁9との間には、吐水のための流路R1が形成されている。しかも、流路R1の間隙面積は、流路R2の間隙面積よりも広い。
【0053】
このため、流路R2から流れ込む水が流路R1を通過する際中に、流路R1の流路幅が減少することによって水の流れを妨害することがなくなり、水勢を減少させることはない。
【0054】
また、本実施形態に係る洗眼水栓Aでは、弁体7の第2止水領域Qの止水状態が解除され、流路R2が形成された後は、この流路R2の流路幅、すなわち、摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの隙間で水の流量調整を行うべく構成されている。
【0055】
このように、摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの隙間で水の流量調整を行うため、使用者の操作ハンドル21の回動操作量をそのまま摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの隙間の増減として関連付けることができ、一般に微小流量の流量調整が必要な洗眼水栓においてデリケートな流量調整を実現することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの間が止水解除された時点で、圧接止水部17の圧接面17aが既に弾性復元を終えて非陥没状態となる構成としたが、この構成に限られるものではない。すなわち、摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの間が止水解除された時点で、圧接止水部17の圧接面17aが弾性復元中であり完全な非陥没状態となっていなくてもよい。この場合でも、上記した流路R1の隙間面積が、流路R2を通過する水の流れを阻害しない程度の隙間面積となるように構成されている。
【0057】
このように、本実施形態に係る洗眼水栓Aによれば、開放操作時に、圧接止水部17と弁座突縁9との間の止水状態が解除されてから摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの間の止水状態が解除されるまでの間に、圧接止水部17の陥没した部分が復元される。このため、摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの間が止水解除される時点では、圧接止水部17と弁座突縁9との間に形成された流路R1の隙間面積が、摺接止水部18と流水弁孔10の内周面10aとの間に形成された流路R2を通過する水の流れを阻害しない程度に十分に確保されることによって、流路R2から流路R1に流れ込む水の流量が低下することを防止することができる。したがって、一旦開放操作が行われると、当初の水勢を確実に維持することができ、再度の開放操作を不要とすることができる。
【0058】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0059】
例えば、本実施形態においては、摺接止水部18は、先端に向って先細りのテーパー形状としたが、これに代えて、外側に向って膨出する膨出部を形成する形状や先端に向って先太りのテーパー形状としても良い。
【0060】
摺接止水部18を外側に向って膨出する膨出部を形成する形状や先端に向って先太りのテーパー形状とする場合には、膨出部の外径や先端に向って先太りのテーパー形状の先端部における外径は、流水弁孔10の内径と等しいか、又は、流水弁孔10の内径よりもやや大きくなるように形成することが好ましい。
【0061】
この構成では、膨出部の先端周面や先太りテーパー形状の先端部における外周面であって流水弁孔10の内周面10aと接触する部分には、上記実施形態と同様に、導水室4aから排水室4bへの水の流れを遮断する第2止水領域Qが形成される。したがって、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0062】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る水栓の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図2】図1に示すB部の部分拡大図であって止水時の状態を示す図である。
【図3】水栓が備えた弁開閉操作機構の分解斜視図である。
【図4】図1に示すB部の部分拡大図であって止水時から吐水時に移行する直前の状態を示す図である。
【図5】図1に示すB部の部分拡大図であって吐水時の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 水栓本体
6 弁座
7 弁体
9 弁座突縁
10 流水弁孔
17 圧接止水部
18 摺接止水部
3d 吐水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水路の中途に配設した弁座と、前記弁座を止水及び開放する弁体と、よりなる水栓において、
前記弁座は、流水弁孔と、前記流水弁孔の流出側周縁に突出形成した弁座突縁と、より構成し、
前記弁体は、前記弁座突縁に圧接自在とした弾性素材の圧接止水部と、前記圧接止水部より突出して前記流水弁孔の内周面に摺接自在とした摺接止水部と、より構成し、
しかも、止水状態においては、前記弁座突縁が前記弁体の前記圧接止水部に陥没すると共に、前記弁体の前記摺接止水部が前記弁座の前記流水弁孔の内周面に摺接してそれぞれ止水を行うべく構成し、開放操作時においては、前記弁体の前記圧接止水部が前記摺接止水部より先に止水状態が解除され、かつ、前記圧接止水部と前記弁座突縁との間隙面積を、前記圧接止水部の陥没した部分が復元されたとしても、前記摺接止水部と前記流水弁孔の内周面との間隙面積よりも広くなるよう構成したことを特徴とする水栓。
【請求項2】
前記開放操作によって、非陥没状態に復元した前記弁体の前記圧接止水部の圧接面が前記弁座突縁の頂部から離反した後に、前記摺接止水部の止水解除が行われて吐水が開始すべく構成したことを特徴とする請求項1に記載の水栓。
【請求項3】
前記摺接止水部は、先端に向って先細りのテーパー形状としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水栓。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の水栓は、前記弁座の下流側で2つに分岐し、それぞれの先端に小径の吐水孔を備え、前記吐水孔から上方に吐水すべく構成した洗眼水栓であることを特徴とする水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−295675(P2008−295675A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144235(P2007−144235)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】