説明

水溶性メロキシカム顆粒

本発明は、メロキシカム、メロキシカムのメグルミン、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムの塩形成剤、結合剤、砂糖又は甘味料、キャリア、任意に用いてよい香料、及び任意に用いてよい他の賦形剤を含む、水に素早く溶解するメロキシカム顆粒、それらの製造方法及び哺乳類の呼吸器又は炎症性の疾患を処置するための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メロキシカム、メロキシカムのメグルミン、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムの塩形成剤、結合剤、砂糖又は甘味料、キャリア、任意に用いてよい香料、及び任意に用いてよい賦形剤を含む、水に素早く溶解するメロキシカム顆粒に関し、それらの製造方法及び哺乳類の呼吸器又は炎症性の疾患を処置するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メロキシカム(4−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5−メチル−2−チアゾリル)−2H−1、2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド−1、1−ジオキサイド)は、NSAID’s(非ステロイド系抗炎症剤)のグループに属する活性物質である。メロキシカムとそのナトリウム及びメグルミンの塩(N−メチル−D−グルカミン塩)はEP−A−0002482に記載されている。EP−A−0945134はメロキシカムとその塩、すなわち水溶液中のナトリウム塩、アンモニウム塩、及びメグルミン塩の溶解性がpHに依存するという特性を開示している。これによれば、メロキシカムは水に素早くは溶解しない活性物質である。EP−0945134の表1に示されているように、メロキシカムの塩、特にメグルミンの塩は、pHが4〜10の間で上昇すると、溶解性が向上する。
【0003】
病気の動物、特に発熱に苦しむ動物に、飲料水を用いて医薬を投与することは、非常に容易且つ連続的に行えることが知られている。食べ物と一緒にすれば、より容易に動物へ投与することもできる。EP0945134によれば、メロキシカムとメグルミンは、簡単に圧縮することはできない。したがって、本発明の目的は、動物の飲料水や補助食品に混入することで、動物に投薬することのできる顆粒状のメロキシカムを開発することである。
【発明の開示】
【0004】
驚くべきことに、流動床の方法で容易に作ることができ、また、水に溶解すると少なくとも48時間は安定な飲料水溶液を形成しうるメロキシカム顆粒が見出された。それらの顆粒は動物の食べ物に加えることができることも見出された。
したがって、本発明は、メロキシカム、メロキシカムのメグルミン、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムの塩形成剤、結合剤、砂糖又は甘味料、キャリア、任意に用いてよい香料、及び任意に用いてよい賦形剤、を含む水溶解性顆粒に関する。
本発明のメロキシカム顆粒は現存する製品よりも多くの利点を有する。
【0005】
病気の動物にメロキシカムが含まれている飲料水を与えると、飲料水の摂取量の増加が見られる。溶解した顆粒を様々に希釈することで、活性物質メロキシカムの種々の濃度の正確な投与を可能とすることができる。本発明のメロキシカム顆粒は水に対する溶解性が高いため、病気の動物の体に非常に早くメロキシカムの効果を示す。メロキシカム顆粒の良い風味は、補助食品として適用できることも可能にしている。さらに、本発明の顆粒は均一なメロキシカム濃度で非常に良好な流動性をもち、それらは事実上粉塵を含まず、125μメートルから500μメートルの狭い粒子の分布をもつ。水に対する顆粒の全溶解度は、飲料水に投与されるとき、この形態で治療用にのみ利用される完全に溶解した活性物質の光学的制御を確実にする。
【0006】
本発明の一つの実施形態では、塩形成剤はメグルミンである。本発明のもう一つの実施形態では、結合剤は、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、スターチ、及びポリエチレングリコールエーテルの中から選択できる。好ましくは、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレングリコールエーテル、最も好ましくはヒドロキシプロピル−メチルセルロース及びポリビニルピロリドンの中から選択できる。
【0007】
本発明のもう一つの実施形態では、砂糖又は甘味料は、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、及びSunett(登録商標)の中から選択でき、好ましくはサッカリンナトリウム又はアスパルテームである。
【0008】
本発明の特に好ましい実施形態は、バニラ、蜂蜜味、リンゴ味、及びコントラマルム(contramarum)から選択できる風味がつけられたメロキシカム顆粒である。好ましくは、蜂蜜味及びリンゴ味がよい。また、特に好ましい実施形態は、キャリアが、ラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、スクロース、及びソルビトールの中から選択でき、好ましくは、グルコース、ラクトース、又はソルビトール、さらに好ましくは、グルコース又はラクトース、最も好ましくはグルコースである、メロキシカム顆粒である。
【0009】
特に好ましい実施形態は、メロキシカム濃度が、0.05〜4%、好ましくは0.1〜2%、より好ましくは0.3〜1.5%、さらに好ましくは0.4〜1%、最も好ましくは0.6パーセントである、メロキシカム顆粒である。さらに、特に好ましくは、メグルミンとメロキシカムをモル比で、約9:8から12:8、好ましくは10:8で含む、メロキシカム顆粒である。
【0010】
本発明はさらに、工程a)〜c)が連続的に行われる本発明のメロキシカム顆粒の製造方法に関する。
a)結合剤、任意に用いてよい砂糖又は甘味料、メロキシカム、メグルミン及び/又は香料を含む、水性顆粒形成用液体を製造する工程。
b)50℃から80℃、好ましくは65℃の一定の温度で供給される空気流を用いた上方噴霧流動床法により、キャリア上に顆粒形成用の液体を噴霧する工程。
c)続いて、上方噴霧流動床法により結合剤、砂糖又は甘味料及び/又は香料を含む水性顆粒形成用液体をコーティングする工程。
【0011】
本発明の好ましい方法では、顆粒形成用液体は、成分を70℃から100℃、好ましくは約90℃で加熱、攪拌することにより製造される。
本発明のメロキシカム顆粒の特徴は、室温下で専用の包装に保存した場合、24ヶ月以上の長期間安定性を有するということである。
特に好ましいメロキシカム顆粒の製造物には、メロキシカム、メグルミン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、及びグルコースモノハイドレートを含む。
さらに、本発明は、動物における痛み、炎症、発熱、急性乳腺炎、下痢、凝り、運動障害及び呼吸器疾患、好ましくは急性乳腺炎、下痢、凝り、運動障害及び呼吸器疾患、最も好ましくは運動障害及び呼吸器疾患を処置する医薬組成物の製造のためのメロキシカム顆粒の使用に関する。
本発明の調合物は動物、好ましくは哺乳類に、特に豚、馬、牛、犬、又は猫などの家庭内ペット又は家畜、さらに好ましくは豚又は馬の処置に好適である。
本発明のメロキシカム顆粒は、活性物質の一回の投与量を体重1キロg当たり0.2〜1.0mgの範囲、好ましくは体重1キロg当たり0.4〜0.8mg、好ましくは体重1キロg当たり0.5〜0.7mg、さらに好ましくは体重1キロg当たり0.6mgとして用いるのが好適である。
本発明のメロキシカム顆粒を用いて、飲料水中及び補助飼料としても投与することのできる医薬組成物を製造するのも良い。
【0012】
本発明の調合物は、メロキシカムの塩として、メグルミン、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムの塩、好ましくはメロキシカムのメグルミンの塩を含むことができる。
メグルミンの割合はメロキシカム顆粒中、0.035%と2.8パーセントの間、好ましくは0.07%から1.4%、好ましくは0.21%から1.05%、さらに好ましくは0.28%から0.7%、とくに約0.42%である。ナトリウム、カリウム、及びアンモニウムの可能な濃度は、それに応じて計算してよい。
結合剤の濃度は、顆粒1g中、20〜80mgの範囲、好ましくは30〜70mg、好ましくは40〜60mg、最も好ましくは50mgとしてよい。
砂糖の濃度は、顆粒1g中、50〜150mgの範囲、好ましくは75〜125mg、さらに好ましくは約100mgとしてよい。
甘味料の濃度は、顆粒1g中、1〜10mgの範囲、好ましくは2〜5mg、さらに好ましくは約3mgとしてよい。
キャリアの濃度は、顆粒1g中、800〜985mgの範囲、好ましくは900〜960mg、さらに好ましくは約930mgとしてよい。
香料の濃度は、顆粒1g中、0.1〜10mgの範囲、好ましくは0.2〜1.0mg、さらに好ましくは約0.5mgとしてよい。
【0013】
本発明を処方するときに用いる包装材料は、顆粒用の数多くの標準的な商品のうちのいずれでもよい。それらは例えば、プラスティックの包装容器、例えば高圧ポリエチレンからつくられるもの、アルミニウムの袋、又は裏地がアルミニウムである紙の袋を含む。
【0014】
メロキシカム顆粒は、上方噴霧流動床法によってつくられる。この際、まず始めに、結合剤、例えばPVP25000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はマクロゴル6000、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースを約50〜70g、及び/又は甘味料、例えばSunett(登録商標)又はサッカリンナトリウム、好ましくはSunett(登録商標)を約1〜5g、及び/又は香料、例えばバニラ、蜂蜜、香料203180、又はコントラマルム、好ましくは蜂蜜を約0.5〜2.5g、及びメロキシカム(peg milled)を約10〜15g、及びメグルミンを約7〜11g、からなる水性顆粒形成用液体溶液を、約70から100℃で加熱しながら攪拌することによってつくる。
【0015】
次に、この顆粒形成用液体をキャリア、例えばラクトース、グルコース、又はソルビトール、好ましくはグルコースに、逆流工程(上方噴霧)によって噴霧する。これは、例えば、2つの吹き出し口を用いて、約50〜80℃、好ましくは約65℃の一定の空気圧で噴霧することにより行う。次に、コーティングする工程は、別の水性顆粒形成用液体を用いて行ってよい。使用する溶液を製造するために、原液は完全に水に溶解させるべきである。次に、水を混合することによって、原液を望みの濃度に合わせる。使用の安全性を高めるために、顆粒に水溶性の着色物を含ませてもよい。
【0016】
本発明のメロキシカム顆粒を、以下の例を用いて例証する。技術者であれば、この例は単に例として意図されたものであり、限定的なものと見なされるべきではないことがわかるであろう。
【0017】
≪実施例1≫
0.6%メロキシカム顆粒
処方: g/100g
メロキシカム 0.6
メグルミン 0.42
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3.00
ポビドン 2.00
グルコースモノハイドレート 93.98
≪実施例2≫
1.2%メロキシカム顆粒
メロキシカム 1.2
メグルミン 0.84
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3.00
コーリドン25 2.0
グルコースモノハイドレート 92.96
≪実施例3≫
0.6%メロキシカム顆粒
メロキシカム 0.6
メグルミン 0.42
ファーマコート606(Pharmacoat 606) 4.0
マクロゴル6000 1.0
アセスルフェイムK(Acesulfame K) 0.3
ラクトース 93.68
≪実施例4≫
0.6%メロキシカム顆粒
メロキシカム 0.6
メグルミン 0.42
ファーマコート606 4.75
マクロゴル6000 0.25
アセスルフェイムK 0.3
液体バニラ香料 0.05
ラクトース 93.63
【0018】
例1〜4による鮮黄色で自由流動性を有するメロキシカム顆粒は以下のように製造してよい。
顆粒を、25℃、相対湿度60%下に3ヶ月間保存する。活性物質の含有量、水分の含有量(Karl-Fische法による)、見た目の溶解度特性、脱塩水中におけるpH、及び見た目の湿潤性に関して、重要な変化はまったく見られなかった。見た目の溶解度特性を決定するために、室温下で顆粒5gを脱塩水に溶解させた。約1分後、澄んだ黄色の溶液が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メロキシカム、結合剤、砂糖又は甘味料、キャリア、メロキシカムのメグルミン、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムの塩形成剤、任意に用いてよい香料、及び任意に用いてよい他の賦形剤を含む、水溶性の顆粒。
【請求項2】
前記塩形成剤がメグルミンである、請求項1記載のメロキシカム顆粒。
【請求項3】
前記結合剤が、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、スターチ、及びポリエチレングリコールエーテルの中から選ばれる、請求項1又は2記載のメロキシカム顆粒。
【請求項4】
前記砂糖又は甘味料が、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、及びSunett(登録商標)の中から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のメロキシカム顆粒。
【請求項5】
前記香料が、バニラ、蜂蜜味、リンゴ味、及びコントラマルムの中から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のメロキシカム顆粒。
【請求項6】
前記キャリアが、ラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、スクロース、及びソルビトールの中から選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のメロキシカム顆粒。
【請求項7】
メロキシカムを0.05〜4%の割合で含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のメロキシカム顆粒。
【請求項8】
メグルミン及びメロキシカムを、モル比率9:8〜12:8で含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項9】
メグルミン及びメロキシカムを、モル比率10:8で含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項10】
以下の工程a)〜c)が連続的に行われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の顆粒の製造方法。
a)結合剤、砂糖又は甘味料、メロキシカム、メグルミン及び/又は香料を含む、水性顆粒形成用液体を製造する工程。
b)50℃〜80℃の一定の温度で供給される空気流を用いた上方噴霧流動床法により、キャリア上に前記顆粒形成用液体を噴霧する工程。
c)続いて、上方噴霧流動床法により、結合剤、砂糖又は甘味料及び/又は香料を含む水性顆粒形成用液体をコーティングする工程。
【請求項11】
前記顆粒形成用液体が、成分を70℃〜100℃で加熱、攪拌することにより製造される、請求項10記載の工程。
【請求項12】
室温下で専用の包装に保存した場合、24ヶ月以上の長期間安定性を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項13】
メロキシカム、メグルミン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、及びグルコースモノハイドレートを含む、請求項1〜9又は12のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項14】
動物の、痛み、炎症、発熱、及び呼吸器疾患を処置する医薬品組成物を調整する、請求項1〜9又は12のいずれか1項に記載のメロキシカム顆粒の使用。
【請求項15】
活性物質の一回の投与量を体重1キロg当たり0.2〜1.0mgの範囲とする、請求項13に記載のメロキシカム顆粒の使用。
【請求項16】
飲料水中及び補助飼料として投与する医薬組成物を製造するための、請求項12又は13に記載のメロキシカム顆粒の使用。

【公表番号】特表2006−505574(P2006−505574A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545974(P2004−545974)
【出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011802
【国際公開番号】WO2004/037264
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(504225895)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (34)
【Fターム(参考)】