説明

水田用農薬粒剤

【課題】本発明は、省力的な散布が可能で、農薬活性成分を短時間のうちに水中に分散させるということができる水田用農薬粒剤を提供することである。
【解決手段】農薬活性成分、中空ガラス球状体及び粘結剤を含有する水田用農薬粒剤であって、中空ガラス球状体が、火山性ガラス質粉体を加熱して粉体表面の水分を0.3%以下にした後、900〜1200℃で加熱、発泡させてなる微細中空球状発泡体であることを特徴とする水田用農薬粒剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農薬活性成分の水中での分散性が改善された水田用農薬粒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水田に施用する農薬製剤の剤型として、農業機械に装着した散布装置および動力や手動の散布機を用いて散布することが可能な又は水田に入らずに畦畔から直接投げ込むだけで散布可能な農薬粒剤が開発され使用されている。このような剤型の農薬粒剤は、取り扱いが容易で、ドリフトが極めて少なく、周辺作物への影響が小さいために広く利用されている。
【0003】
従来から、水田に施用する農薬製剤に、水面浮遊剤又は担体として、天然鉱物を焼成又は発泡させてなる鉱物性物質を配合されている。このような鉱物性物質の農薬製剤における使用例としては、発泡パーライト、発泡シラスなどを含有する特定の物理性を有する農薬キャリアー(特許文献1)、発泡シラスなどの鉱物性物質と特定の界面活性剤とを含有する農薬製剤(特許文献2、特許文献3、特許文献4)、発泡シラスなどの鉱物性物質と特定の水面拡展剤とを含有する農薬製剤(特許文献5)、発泡シラスなどを水面浮遊剤として含有する農薬製剤(特許文献6、特許文献7、特許文献8)などが知られている。
【0004】
しかしながら、従来の鉱物性物質である発泡シラスや焼成パーライトなどを配合した農薬製剤は、依然として水中での農薬活性成分の拡散が遅く、不十分な場合があり、特に、局所散布を行った場合には、散布場付近の農薬活性成分濃度は高くなり、薬害程度が大きく、また、本来農薬活性成分が持っている殺草効果が得られ難いという問題がある。
【0005】
また、従来の鉱物性物質である発泡シラスを農薬粒剤の成分として添加し、押し出し造粒すると、壊れてしまい、発泡シラスが本来有している浮遊性機能が十分に得られないという欠点がある。
【0006】
さらに、発泡させた鉱物性物質を粉末状で含有する水和剤(特許文献9、特許文献10、特許文献11)も知られているが、これらはいずれも水で希釈し強制的に攪拌後、散布するためのものであって、湛水下の水田中で自然に崩壊・分散する農薬粒剤として開発されたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−99802号公報
【特許文献2】特開平6−336403号公報
【特許文献3】特開平6−345603公報
【特許文献4】特開平8−99803号公報
【特許文献5】特開2004−155715号公報
【特許文献6】特開平9−295903号公報
【特許文献7】特開2000−319102号公報
【特許文献8】特開2000−319103号公報
【特許文献9】特開平8−143403号公報
【特許文献10】特開平9−301801号公報
【特許文献11】特開2000−204001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水面に散布することができる水田用農薬粒剤に関し、本発明の目的は、農薬活性成分を短時間のうちに水中に分散させるということができる水田用農薬粒剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の如き課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、今回、農薬活性成分を特定の微細中空ガラス球状体及び粘結剤と組み合わせて造粒して水田に施用すると、水中での農薬活性成分の分散性に優れた水田用農薬粒剤が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明は、農薬活性成分、中空ガラス球状体及び粘結剤を含有する水田用農薬粒剤であって、中空ガラス球状体が、火山性ガラス質粉体を加熱して粉体表面の水分を0.3%以下にした後、900〜1200℃で加熱、発泡させてなる微細中空球状発泡体であることを特徴とする水田用農薬粒剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水田用農薬粒剤は、水中での農薬活性成分の分散性に優れているが、そのメカニズムは次のように考えられる。
【0012】
水田用農薬粒剤の製造過程において、粘結剤は、農薬粒剤の他の粉末原料に十分な結合力を与えて水田用農薬粒剤を形成させると共に、適度に農薬活性成分を微細中空ガラス球状体に結合させる働きをする。この農薬粒剤が水田に施用されると、農薬粒剤は徐々に崩壊していくが、農薬活性成分は浮遊性のある微細中空ガラス球状体と結合しているために、一緒に水面に浮上又は水中に浮遊していく。その後、農薬活性成分と微細中空ガラス球状体との結合は水により失われて行き、農薬活性成分は水中に良好に分散された状態になると考えられる。このような現象は、特定の微細中空ガラス球状体と粘結剤とを組み合わせたときに発生し得るもので、本発明の水田用農薬粒剤の特徴をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、試験例3における水田用農薬粒剤の投入点と農薬活性成分の水中濃度分析のための採水位置を示す平面図である。
【0014】
以下、本発明の水田用農薬粒剤についてさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
微細中空ガラス球状体
本発明の水田用農薬粒剤に用いることができる微細中空ガラス球状体は、発泡シラス(シラスバルーン)とも呼ばれ、火山性ガラス質粉体を原料とし、それを加熱して粉体表面の水分を0.3%以下にした後、直ちに、例えば気流と燃料と共に内燃式媒体流動床炉に供給して、900〜1200℃で加熱、発泡させることにより得られる中空で微細な球状発泡体であり、発泡させる際、火山性ガラス質粉体の粉体内水分含有量を4.0〜6.0%に調整することにより、さらに安定した粒径の揃った微細中空ガラス球状体を得ることができる。
【0016】
ここで、火山性ガラス質粉体の表面の水分は、火山性ガラス質粉体を130℃で10分間加熱した直後と、加熱する前との重量差を求めることにより得ることができ、また、火山性ガラス質粉体の粉体内水分含有量は、火山性ガラス質粉体を250℃で10分間加熱した直後と、130℃で10分間加熱した直後との重量差を求めることにより得ることができる。
【0017】
本発明に使用する微細中空ガラス球状体の原料である火山性ガラス質粉体は、火山噴出物として堆積したシラスでSiOを多量に含むものであり、例えば、福島県福島市飯坂町中野地区から産出されるものを利用することができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明で使用できる微細中空ガラス球状体は、一般に、20〜80μm、特に30〜70μmの平均粒径、0.1〜0.5、特に0.1〜0.5のかさ密度、20〜85%、特に30〜80%の浮水率及び50%以上の静水圧強度の物性を有するものが好適である。
【0019】
本発明において、「平均粒径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した値であり、「かさ密度」は、粒子を体積既知の容器にゆるく充填し、その質量から求めた値であり、「浮水率」は、水に浮遊する全試料の割合を示すもので、具体的には、分液ロートに水100ml、試料5gを入れた後、さらに水150mlを入れてよく攪拌し、1時間静止後、沈降物、水を排出し、再度、水250mlを分液ロートに入れてよく攪拌し、1時間静止後、沈降物、水を排出し、残った内容物を取り出し乾燥後、計量し試料5gとの割合を求めたものである。
【0020】
「静水圧強度」は、水中における8MPaの加圧下で、非加圧下と比較し、壊れずに残存している割合を示す。
【0021】
本発明で使用する上記特定の物性を有する微細中空ガラス球状体は、一定以上の強度を有するために、農薬粒剤を製造する造粒工程において壊れることがなく、粘結剤と組み合わせることにより、水中での農薬活性成分の優れた分散性を発現させることができる。
【0022】
本発明で使用しうる微細中空ガラス球状体としては、具体的には、例えば、マールライト713D、マールライト735C、マールライトBA−15(以上、商品名、丸中白土株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
これらの微細中空ガラス球状体はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
微細中空ガラス球状体の配合割合は、水田用農薬粒剤の重量を基準にして、一般に0.1〜90重量%、好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは2〜50重量%とすることができる。
【0025】
粘結剤
本発明の水田用農薬粒剤に用いることができる粘結剤は、各種の粉末原料を農薬粒剤に調製する際、水田用農薬粒剤に十分な結合力を与えると同時に、農薬活性成分を微細中空ガラス球状体に適度に結合させるものであればよく、一般に農薬製剤用粘結剤であれば特に限定されなく使用することができる。
【0026】
粘結剤としては、具体的に、例えば、澱粉、還元澱粉糖化物、デキストリン、セルロ−ス、メチルセルロ−ス、エチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス又はその塩、ヒドロキシエチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、カルボキシメチルデンプン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコ−ルエステル、グァ−ガム、ロ−カストビ−ンガム、アラビアゴム、キサンタンガム、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコ−ル、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコ−ル、エチレン・プロピレンブロックポリマ−、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、中でも、デキストリン、カルボキシメチルセルロ−ス又
はその塩及びポリビニルアルコ−ルが好ましく、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
これらの粘結剤の配合割合は、通常、水田用農薬粒剤の重量を基準にして、一般に0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%とすることができる。
【0028】
また、微細中空ガラス球状体と粘結剤との配合割合は、農薬活性成分の含有量により変えることができるが、通常、重量比1:0.05〜1:5.0、好ましくは1:0.1〜1:3.0、さらに好ましくは1:0.1〜1:2.0とすることができ、これにより、水中における農薬活性成分の分散性を良好に保つことができる。
【0029】
農薬活性成分
本発明の水田用農薬粒剤に用いることができる農薬活性成分は、農園芸用の有害生物を防除するための除草剤、植物成長調節剤、殺虫剤、殺菌剤など、一般に農薬の活性成分として使用される全ての薬剤をいう。
【0030】
除草剤としては、例えば、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ピリブチカルブ、ブタミホス、メフェナセット、ベンスルフロンメチル、アニロホス、ブタクロール、プレチラクロール、チオベンカルブ、クロルニトロフェン、クロメトキシフェン、ダイムロン、ビフェノックス、ナプロアニリド、オキサジアゾン、オキサジアルギル、ベンタゾン、モリネート、ピペロホス、ジメピペレート、エスプロカルブ、ジチオピル、ベンフレセート、キノクラミン、シンメチリン、MCPA又はそのナトリウム塩、カリウム塩等の塩類もしくはエステル類、2,4−D又はそのナトリウム塩、カリウム塩等の塩類もしくはエステル類、MCPB又はそのナトリウム塩、カリウム塩等の塩類もしくはエステル類、キンクロラック、ピラゾスルフロンエチル、ペントキサゾン、テニルクロール、インダノファン、クミルロン、クロメプロップ、シノスルフロン、シメトリン、ジメタメトリン、シハロホップブチル、エトベンザニド、カフェンストロール、エトキシスルフロン、アジムスルフロン、シクロスルファムロン、ピリミノバックメチル、ピリフタリド、フェントラザミド、イプフェンカルバゾン、メタゾスルホン、ピリミスルファン、ペノキススラム、フェノキサスルホン等の水田除草剤が挙げられる。
【0031】
植物生長調節剤としては、例えば、イナベンフィド、パクロブトラゾール、ウニコナゾール、トリアペンテノールが挙げられる。
【0032】
殺虫剤としては、例えば、イソキサチオン、ダイアジノン、ダイスルフォトン、プロパホス、トリクロルフォン、ホルモチオン、ジメトエート、モノクロトフォス、アセフェート、カルボフラン、カルボスルフォン、チオシクラム、カルタップ、ベンスルタップ、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、ブプロフェジン、フェノブカルブ、メトールカルブ、プロポクシュア、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド等の浸透移行性殺虫剤;シクロプロトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のイネミズゾウムシやイネドロオイムシのような水中又は水面近くに生息する害虫に有効な合成ピレスロイド等が挙げられる。
【0033】
殺菌剤としては、例えば、プロベナゾール、イソプロチオラン、イプロベンフォス、トリシクラゾール、ピロキロン、カルプロパミド、オリブライト、アゾキシストロビン、7−フルオロ−1,2,5,6−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3.2.1−i.j]キノリン−4−オン等のイモチ剤;フルトラニル、メプロニル、チフルザミド、フラメトピル、2−(4−フルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−3−トリメチルシリルプロパン−2−オール等の紋枯剤;テクロフタラム;ベノミル等
が挙げられる。
【0034】
これらの農薬活性成分はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、これらの農薬活性成分の配合割合は、農薬粒剤の重量を基準にして、一般に0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは2〜30重量%とすることができる。
【0035】
他の添加剤
本発明の水田用農薬粒剤には、前述した農薬活性成分、微細中空ガラス球状体及び粘結剤の他に、界面活性剤、担体等の農薬粒剤用添加剤を含有せしめることができ、さらに農薬活性成分が不安定な場合等には、必要に応じて、例えば、pH調整剤、酸化防止剤、光安定剤、乾燥剤等の安定剤を含有せしめることもできる。
【0036】
本発明の水田用農薬粒剤に用いることができる界面活性剤としては、粒の湿潤や崩壊を与え、あるいは農薬活性成分の水中への懸濁・分散を促し、さらには粉末原料の造粒性を向上させる等の目的に使用できるものであれば特に限定されなく使用することができ、具体的に、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホサクシネ−ト、リグニンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アルキルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルカンジオール、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテルホスフェート塩、脂肪酸塩、ポリカルボン酸金属塩、ジイソブチレン−マレイン酸共重合体塩、イソブチレン−マレイン酸共重合体塩、スチレン−マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩等の陰イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレンスチルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレンスチルフェニルエ−テルポリマー、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックホリマー、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン界面活性剤:、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩等のノニオニックアニオン型界面活性剤;更に、シリコ−ン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
これらの界面活性剤はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合割合は、通常、農薬粒剤の重量を基準にして、一般に0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%とすることができる。
【0038】
本発明の水田用農薬粒剤において用いることができる担体としては、一般に農薬のキャリヤーとして用いられるものであれば特に制限されなく使用することができ、具体的には、例えば、無機担体として、クレ−、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ジ−クライト、セリサイト、酸性白土、珪石、珪藻土、軽石、ゼオライト、バ−ミキュライト、ホワイトカ−ボン、パ−ライト、アタパルジャイト等;有機担体として、オクテニルコハク酸デンプンエステル、グルコ−ス、マルト−ス、シュ−クロ−ス、ラクト−ス等が挙げられる。水溶性担体としては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、塩化カリウム、尿素、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖等が挙げられ、また、水浮遊性担体としては、例えば、発泡パーライ
ト、発泡軽石、焼成バーミキュライト等の鉱物性物質;コルク、木粉、セルロース、ケナフ等の植物性物質;発泡ポリスチロール粉粒体、塩化ビニル樹脂粉末等の合成樹脂粉粒体;マイクロスフェアー等のプラスチック中空体等が挙げられる。
【0039】
これらの担体はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合割合は、通常、農薬粒剤の重量を基準にして、一般に0.1〜90重量%、好ましくは1〜70重量%、更に好ましくは2〜50重量%とすることができる。
【0040】
本発明の水田用農薬粒剤は、上記に述べた各成分を農薬の製剤化において通常用いられる造粒法によって造粒することにより製造することができ、造粒法としては、例えば、押し出し造粒法、転動造粒法、転動流動造粒法、流動層造粒法、圧縮造粒法、攪拌混合造粒法、被覆造粒法、打錠法等を挙げることができるが、一般には、押し出し造粒法が好ましく、具体的には、例えば、次のようにして造粒することができる。
【0041】
農薬活性成分、微細中空ガラス球状体、界面活性剤、粘結剤、担体及び安定剤を混合し、その混合物を加水混練し、押し出し穴径(スクリーン径)0.5〜10mmの範囲内に調整された押し出し造粒機にて造粒する。得られる粒は、マルメライザーなどで整粒後、乾燥させ、篩い分けすることにより本発明の水田用農薬粒剤を得ることができる。
【0042】
上記造粒法で得られる本発明の水田用農薬粒剤は、通常0.5〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、更に好ましくは0.5〜3mmの範囲内の平均粒径を有することができる。
【0043】
本発明の水田用農薬粒剤は、また、必要に応じて、水溶性フィルムに分包することにより直接水田に施用することができる水田投げ込み用分包とすることができる。
【0044】
本発明の水田用農薬粒剤を水溶性フィルムに分包するための水溶性フィルムは、水に迅速に溶解又は分散するような性質を有するものであれば特に制限はなく、該水溶性フィルムの材質としては、例えば、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、プルランフィルム、ポリエチレンオキサイドもしくはその誘導体等が挙げられ、中でもポリビニルアルコールもしくはその誘導体が好ましい。
【0045】
水田に投げ込み処理をするための分包の重量は、1包(パック)当たり、通常10〜200g、好ましくは25〜100gの範囲内とすることができる。
【0046】
本発明の水田用農薬粒剤は水田に生息する有害生物を防除するために使用することができる。ここで、水田に生息する有害生物とは、望ましくない植物性有害生物および迷惑をかける有害生物、例えば、雑草、植物、昆虫、ダニ、節足動物、線虫、細菌、糸状菌(カビ)、ウイルス等をいう。
【0047】
本発明により提供される水田用農薬粒剤は、従来の水田用農薬粒剤と同様に、人力または動力散粒機、農業機械に装着した散粒器、無人ヘリコプター等を利用して、水田に均一に散布することができる。本発明の水田用農薬粒剤は、水中での農薬活性成分の分散性が良好であるので、従来より高濃度・少量散布となるように調整した水田用農薬粒剤を用いても、十分な薬効を得ることができ、薬害を生じることはない。したがって、水田への施用量は、特に限定されないが、通常10a当たり0.1〜5kg、好ましくは0.2〜3kg施用することができる。
【0048】
さらに、本発明の水田用農薬粒剤を水溶性フィルムに分包した水田投げ込み用分包は、1)畦畔等から投げ込み処理する(投げ込み処理)方法;2)水田に水を入れる際に水口
に処理し、潅漑用水とともに水田中に拡散させる(水口処理)方法等の方法で水田に処理することができ、それによって省力的に、前述した方法と同等の効果を得ることができる。
【0049】
本発明の水田用農薬粒剤は、広範囲の水面に拡展したのち、一定の時間経過後に水面で崩壊し、さらには農薬活性成分を水面に留めず水中へと均一に拡散させることができる。したがって、本発明に従う水田投げ込み用分包は、1枚の水田に多く投げ込む必要はなく、水田10a当たりの投げ込み個数は、通常1〜30個、好ましくは5〜20個とすることができる。
【0050】
以下、調製例、実施例、比較例及び試験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
調製例
下記実施例及び比較例に記載の成分を以下に示す手順に従って処理し、水田用農薬粒剤を調製した;
水田用農薬粒剤を構成する成分のうち、全ての固形成分(農薬活性成分、微細中空ガラス球状体、界面活性剤、粘結剤、担体、安定剤等)を計量して混合容器に仕込み、万能混合機で5分間混合し、得られる混合物に水、液状の成分(界面活性剤、粘結剤、安定剤等)を添加した後、更に5分間混練した。この混練物を0.5〜2.0mm径のスクリーンを備えた押し出し造粒機(バスケット型造粒機)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分けして水田用農薬粒剤を調製した。
【0052】
実施例1
ピラクロニル2.0重量部、ベンゾビシクロン2.0重量部、マレイン酸・イソブチレンコポリマー(トキサノンGR31A:三洋化成株式会社製)2.0重量部、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ネオペレックスNo.6F:花王株式会社製)0.3重量部、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム塩(セロゲン5A:第一工業製薬株式会社)5.0重量部、ベントナイト5.0重量部、微細中空ガラス球状体(マールライト713D:丸中白土株式会社製)5.0重量部およびタルク78.7重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水20重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.0mm径のスクリ−ンを付けた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(2.38〜0.21mm)して水田用農薬粒剤を得る。
【0053】
実施例2
ピラクロニル2.0重量部、ベンゾビシクロン2.0重量部、マレイン酸・イソブチレンコポリマー(トキサノンGR31A:三洋化成株式会社製)2.0重量部、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ネオペレックスNo.6F:花王株式会社製)0.3重量部、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム塩(セロゲン5A:第一工業製薬株式会社)5.0重量部、ベントナイト5.0重量部、微細中空ガラス球状体(マールライトマールライトBA−15:丸中白土株式会社製)5.0重量部およびタルク78.7重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水20重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.0mm径のスクリ−ンを備えた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(2.38〜0.21mm)して水田用農薬粒剤を得る。
【0054】
実施例3
ピラクロニル2.0重量部、ベンゾビシクロン2.0重量部、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩(ソルポール5060:東邦化学工業株式会社製)2.0重量部、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ネオペレックスNo.6F:花王株式会社製)0.3重量部、デキストリン(パインデックス♯2:松谷化学工業株式会社製)5.0重量部、ベントナイト5.0重量部、微細中空ガラス球状体(マールライト735C:丸中白土株式会社製)5.0重量部およびタルク78.7重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水20重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.0mm径のスクリ−ンを付けた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(2.38〜0.21mm)して水田用農薬粒剤を得る。
【0055】
実施例4
ピラクロニル5.0重量部、ベンゾビシクロン5.0重量部、ポリオキシエチレンアルカンジオール(ニューカルゲンTG310:竹本油脂株式会社製)2重量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(セロゲン7A:第一工業製薬株式会社)8重量部、マレイン酸・ジイソブチレンコポリマー(ニューカルゲンWG5:竹本油脂株式会社製)2重量部、微細中空ガラス球状体(マールライト713D:丸中白土株式会社製)50重量部およびタルク28.0重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水40重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.5mm径のスクリ−ンを備えた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(3.35〜0.85mm)して水田用農薬粒剤を得る。
【0056】
実施例5
ピラクロニル5.0重量部、ベンゾビシクロン5.0重量部、ポリオキシエチレンアルカンジオール(ニューカルゲンTG310:竹本油脂株式会社製)2重量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(セロゲン7A:第一工業製薬株式会社)8重量部、マレイン酸・ジイソブチレンコポリマー(ニューカルゲンWG5:竹本油脂株式会社製)2重量部、微細中空ガラス球状体(マールライト713D:丸中白土株式会社製)30重量部、コルク10重量部およびタルク38.0重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水40重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.5mm径のスクリ−ンを備えた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(3.35〜0.85mm)して水田用農薬粒剤を得る。
【0057】
実施例6
ピラクロニル5.0重量部、ベンゾビシクロン5.0重量部、ポリオキシエチレンアルカンジオール(ニューカルゲンTG310:竹本油脂株式会社製)2重量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(セロゲン7A:第一工業製薬株式会社)8重量部、マレイン酸・ジイソブチレンコポリマー(ニューカルゲンWG5:竹本油脂株式会社製)2重量部、微細中空ガラス球状体(マールライト713D:丸中白土株式会社製)30重量部、マイクロスフェアー1重量部およびタルク47.0重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水40重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.5mm径のスクリ−ンを備えた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(3.35〜0.85mm)して水田用農薬粒剤を得る。
【0058】
比較例1
ピラクロニル2.0重量部、ベンゾビシクロン2.0重量部、マレイン酸・イソブチレンコポリマー(トキサノンGR31A:三洋化成株式会社製)2.0重量部、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ネオペレックスNo.6F:花王株式会社製)0.3重量部、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム塩(セロゲン5A:第一工業製薬株式会社)5.0重量部、ベントナイト5.0重量部およびタルク83.7重量部を混合容器に秤り込み(固形分として100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水15重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.0mm径のスクリ−ンを備えた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(2.38〜0.21mm)して農薬粒剤を得る。
【0059】
比較例2
ピラクロニル2.0重量部、ベンゾビシクロン2.0重量部、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩(ソルポール5060:東邦化学工業株式会社製)2.0重量部、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ネオペレックスNo.6F:花王株式会社製)0.3重量部、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム塩(セロゲン5A:第一工業製薬株式会社)5.0重量部、ベントナイト5.0重量部およびタルク83.7重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水15重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.0mm径のスクリ−ンを備えた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(2.38〜0.21mm)して農薬粒剤を得る。
【0060】
比較例3
ピラクロニル5.0重量部、ベンゾビシクロン5.0重量部、ポリオキシエチレンアルカンジオール(ニューカルゲンTG310:竹本油脂株式会社製)2重量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(セロゲン7A:第一工業製薬株式会社)8重量部、マレイン酸・ジイソブチレンコポリマー(ニューカルゲンWG5:竹本油脂株式会社製)2重量部、シラスバルーン50重量部およびタルク28.0重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水40重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.5mm径のスクリ−ンを備えた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(3.35〜0.85mm)して農薬粒剤を得る。
【0061】
比較例4
ピラクロニル5.0重量部、ベンゾビシクロン5.0重量部、ポリオキシエチレンアルカンジオール(ニューカルゲンTG310:竹本油脂株式会社製)2重量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(セロゲン7A:第一工業製薬株式会社)8重量部、マレイン酸・ジイソブチレンコポリマー(ニューカルゲンWG5:竹本油脂株式会社製)2重量部、シラスバルーン30重量部、コルク10重量部およびタルク38.0重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水40重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.5mm径のスクリ−ンを備えた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(3.35〜0.85mm)して農薬粒剤を得る。
【0062】
比較例5
ピラクロニル5.0重量部、ベンゾビシクロン5.0重量部、ポリオキシエチレンアルカンジオール(ニューカルゲンTG310:竹本油脂株式会社製)2重量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(セロゲン7A:第一工業製薬株式会社)8重量部、マレイン酸・ジイソブチレンコポリマー(ニューカルゲンWG5:竹本油脂株式会社製)2重
量部、シラスバルーン30重量部、マイクロスフェアー1重量部およびタルク47.0重量部を混合容器に秤り込み(固形分として合計100重量部)、万能混合機で5分間混合し、この混合物100重量部に対して水40重量部を添加した後、更に5分間混練する。この混練物を1.5mm径のスクリ−ンを備えた押し出し造粒機(バスケット型:アーステクニカ製)で造粒し、整粒後の粒を乾燥し、得られた粒を篩い分け(3.35〜0.85mm)して農薬粒剤を得る。
【0063】
試験例1
以上の実施例1〜4で調製した水田用農薬粒剤および比較例1〜3で調製した農薬粒剤について以下の試験を実施した。
【0064】
[水中分散性試験]
500mlビーカーにアドバンテックNo.50濾紙を敷き、水温20℃の3度硬水250mlを入れ、上記で調製した農薬粒剤20mgを処理する。24時間及び48時間後にビーカー中央部から1ml採水する。また、48時間後に採水したのち、ビーカーごと超音波で農薬活性成分を十分に分散させ1ml採水する。これらの試料中の農薬活性成分濃度を液体クロマトグラフィーで測定し、得られる測定値から下記の式を用いて水中分散率を算出する。その結果を表1に示す。

水中分散率(%)=(Ct/Cx)×100

Ct:散布24時間及び48時間後の農薬活性成分濃度、
Cx:ビーカーごと超音波で十分に分散させた農薬活性成分濃度。

【0065】
【表1】

【0066】
その結果、実施例1〜4で調製した本発明の水田用農薬粒剤は、比較例1〜3の農薬粒剤に比べて速やかに水中に分散することが認められる。
【0067】
試験例2
前述の実施例4〜6で調製した水田用農薬粒剤及び比較例3〜5で調製した農薬粒剤について、以下の方法により沈降粒数を評価した。その結果を表2に示す。
【0068】
[沈降粒数の評価]
300mlのビーカーに水温20℃の3度硬水300mlを入れ、0.5gの粒剤を投入し数秒以内に沈む粒数の数を数える。この試験を5回行い、合計粒数を算出して、以下に示す判定基準により評価した。

<判定基準>
○ :10粒以下の沈降、
△ :11粒〜50粒未満の沈降、
× :51粒以上の沈降。

【0069】
【表2】

【0070】
その結果、実施例4〜6で調製した本発明の水田用農薬粒剤は、比較例3〜5の農薬粒剤に比べて沈降粒が少ないことが認められる。
【0071】
試験例3
前述の実施例4〜6で調製した水田用農薬粒剤及び比較例3〜5で調製した農薬粒剤について、以下の方法により粒の広がり程度を示す水面拡展性及び粒の崩壊程度を示す水面崩壊性を評価した。その結果を表3に示す。
【0072】
[水面拡展性の評価]
37cm×60cmのプラスチック製バットに水道水4リットルを入れて静置し、各々の農薬粒剤から任意に5粒選び、バット中央部に静かに落とした。水面拡展性は、拡展時の粒の挙動(接合状態)及び1分後における粒の最大拡展距離(移動距離)を調査し、以下に示す判定基準により評価した。なお、処理後1分以内に粒の沈降が認められたものは、1段階評価を下げた。

<判定基準>
○ :粒同士が接合せず水面を拡展し、移動距離が15cm以上、
△ :粒同士が接合せず水面を拡展し、移動距離が10cm以上15cm未満、
または、一部の粒が接合した状態で水面を拡展し、移動距離が10cm以上、
× :一部又は多くの粒が接合した状態で水面を拡展し、移動距離が10cm未満。

【0073】
[水面崩壊性の評価]
直径9cmのガラス製シャーレに20℃の3度硬水50mlを入れて静置し、各実施例
及び各比較例から任意に5粒選び、シャーレ中央部に静かに落とした。水面崩壊性は、これら5粒が水面で完全に崩壊・分散するまでの時間を測定した。

<判定基準>
○ :水面で完全に崩壊・分散するまでの時間が10分を超えて20分以内、
△ :水面で完全に崩壊・分散するまでの時間が5分を超えて10分以内、
または20分を超えて30分以内、
× :水面で完全に崩壊・分散するまでの時間が5分以内、または30分を超える。

【0074】
【表3】

【0075】
その結果、実施例4〜6で調製した本発明の水田用農薬粒剤は、いずれも優れた水面拡展性および水面崩壊性を示すことが認められる。これに対し、比較例3〜5で調製した農薬粒剤は、水面拡展性が十分でなく、水面での崩壊・分散に要する時間も適正な範囲になかった。
【0076】
試験例4
前述の実施例4〜6で調製した水田用農薬粒剤及び比較例3〜5で調製した農薬粒剤について、以下の方法により農薬活性成分の水中分散性を評価した。その結果を表4に示す。
【0077】
[農薬活性成分の水中分散性の評価]
幅3m×奥行き11mの水田に水深5cmとなるよう湛水し、各々の農薬粒剤13.2g(400g/10a相当)を水溶性フィルムに包み、図1に示すA地点に投げ込み散布した。散布より3時間後、6時間後、24時間後に図1に示すB〜Dの各地点より水を採取して、各農薬活性成分を分析し水中濃度を求めた。各農薬活性成分の水中分散性は、以下の判定基準に従い評価した。なお、2地点間の水中濃度の比が0.85〜1.15の範囲内にあるとき、2地点の水中濃度は同等であるとみなした。

<判定基準>
○ :成分は水中に均一分散している(農薬活性成分の水中濃度は3地点全てで同等)

△ :成分の分散はやや不均一(農薬活性成分の水中濃度はB地点−C地点またはB地
点−D地点のいずれか一方で同等)、
× :成分の分散は不均一(農薬活性成分の水中濃度はB地点−C地点およびB地点−
D地点のいずれでも異なる)。

【0078】
【表4】

【0079】
その結果、実施例4〜6で調製した本発明の水田用農薬粒剤は、散布後24時間以内にいずれの農薬活性成分も水田全体に均一に分散していることが認められる。これに対し、比較例3〜5で調製した農薬粒剤は、散布後24時間経過しても農薬活性成分の分散が不均一であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬活性成分、中空ガラス球状体及び粘結剤を含有する水田用農薬粒剤であって、中空ガラス球状体が、火山性ガラス質粉体を加熱して粉体表面の水分を0.3%以下にした後、900〜1200℃で加熱、発泡させてなる微細中空球状発泡体であることを特徴とする水田用農薬粒剤。
【請求項2】
微細中空ガラス球状体が、20〜80μmの平均粒径、0.1〜0.5のかさ密度、20〜85%の浮水率及び50%以上の静水圧強度を有する請求項1に記載の水田用農薬粒剤。
【請求項3】
微細中空ガラス球状体が、水田用農薬粒剤の重量を基準にして0.1〜90重量%含有する請求項1又は2に記載の水田用農薬粒剤。
【請求項4】
粘結剤が、デキストリン、カルボキシメチルセルロ−ス又はその塩及びポリビニルアルコ−ルより選ばれる少なくとも1種であり、その合計の含有量が水田用農薬粒剤の重量を基準にして0.1〜30重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水田用農薬粒剤。
【請求項5】
微細中空ガラス球状体及び粘結剤を1:0.05〜1:5.0の重量比で含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の水田用農薬粒剤。
【請求項6】
粒径が0.5mm〜10mmの粒剤の形態である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水田用農薬粒剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の水田用農薬粒剤を水田に均一散布することを特徴とする有害生物の防除方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の水田用農薬粒剤を水溶性フィルムに分包してなる水田投げ込み用分包。
【請求項9】
請求項8に記載の水田投げ込み用分包を10aあたり1〜30個ずつ水田に投げ込み処理することを特徴とする有害生物の防除方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−144112(P2011−144112A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3932(P2010−3932)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000234890)協友アグリ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】