説明

水硬性組成物用分散剤組成物

【課題】水/水硬性粉体重量比の小さいコンクリートでも十分な流動性が得られる水硬性組成物用分散剤を提供する。
【解決手段】アクリル酸由来の構成単位A1と特定のポリアルキレングリコールアクリレート系単量体由来の構成単位A2とを含み、構成単位A1とA2の合計中の構成単位A1の割合が70〜88モル%である共重合体Aと、メタクリル酸由来の構成単位B1と特定のポリアルキレングリコールメタクリレート系単量体由来の構成単位B2とを含み、構成単位B1とB2の合計中の構成単位A1の割合が90〜99モル%である共重合体Bとを含有し、共重合体Aと共重合体Bの重量比(A/B)が65/45〜95/5である水硬性組成物用分散剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用分散剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度領域のコンクリートは一般強度のコンクリートに比べ、水/水硬性粉体重量比の小さい組成で練り混ぜられて調製されている。かかる高強度コンクリートには、その性質上一般に、練り混ぜに要する時間が長い、所定の流動性を得るための添加量が多くなる、コンクリート粘性が高い、コンクリート硬化に長い時間を要することで施工期間が長くなるなどの課題がある。
【0003】
従来、コンクリート等の水硬性組成物用の混和剤として、不飽和カルボン酸系単量体と、ポリアルキレングリコールエステル系単量体もしくはポリアルキレングリコールエーテル系単量体との共重合体を用いることが知られている。特許文献1には、水0.33以下の水/水硬性粉体重量比の小さい組成において、練りあがり時間の短縮、初期分散性向上、低粘性化、硬化物性向上を同時に高いレベルで満足できる、粗骨材を含有し単位水硬性粉体量が多い水硬性組成物を提供することを課題として、アクリル酸からなる構成単位とポリアルキレングリコール鎖を有する構成単位とを含み、全構成単位中のアクリル酸からなる構成単位の割合が50モル%以上である共重合体が開示されている。
【0004】
また、ポリアルキレングリコールエステル系単量体を用いる技術として、特許文献2には、高温時のスランプロスが少なく、かつ低温時の添加量増加が少ないことを課題として、ポリアルキレングリコールを有するアクリル酸エステル系単量体とポリアルキレングリコールを有するメタクリル酸エステル系単量体とを必須成分とするセメント混和剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−298645号公報
【特許文献2】特開平11−268940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、現行の水硬性組成物用混和剤では、水/水硬性粉体重量比の小さい組成で粗骨材を含まないモルタルやセメントペーストを練り上げるのに比べて、同じ水/水硬性粉体重量比であっても粗骨材を含有するコンクリートを混練すると、モルタルフローやコンクリートの流動速度などの流動性が低下する傾向があり、水/水硬性粉体重量比の小さいコンクリートでも十分な流動性が得られるセメント分散剤が望まれる。
【0007】
本発明の課題は、水/水硬性粉体重量比の小さいコンクリートでも十分な流動性が得られる水硬性組成物用分散剤を提供することである。
【0008】
特許文献1は、水/水硬性粉体重量比の小さいコンクリートに対してアクリル酸系の重合体を用いるものであるが、良好な練りあがり性の観点から、特定のアクリル酸系の重合体のみを用いることが好ましいとしており、さらに練上がり性、初期流動性、低粘性および早硬性の4つをバランスよく満足させる観点から共重合体が1種であることが好ましいとしており(特許文献1の段落0022)、他の共重合体を併用した場合の効果についての具体的な記載はない。
【0009】
また、特許文献2には、水/水硬性粉体重量比の小さいコンクリートに着目することや、特定のアクリル酸系重合体と特定のメタクリル酸系重合体を特定比率用いることの具体的な記載はない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記一般式(A1)で表される構成単位A1と下記一般式(A2)で表される構成単位A2とを含み、構成単位A1と構成単位A2の合計中、構成単位A1の割合が70〜88モル%である共重合体Aと、
下記一般式(B1)で表される構成単位B1と下記一般式(B2)で表される構成単位B2とを含み、構成単位B1と構成単位B2の合計中、構成単位B1の割合が90〜99モル%である共重合体Bと、
を含有し、
共重合体Aと共重合体Bの重量比(A/B)が65/35〜95/5である、
水硬性組成物用分散剤組成物に関する。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、M1は水素原子又は塩を形成する対イオンを表す。〕
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中、A1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、n1はA1Oの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。〕
【0015】
【化3】

【0016】
〔式中、M2は水素原子又は塩を形成する対イオンを表す。〕
【0017】
【化4】

【0018】
〔式中、A2Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、n2はA2Oの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。〕
【0019】
また、本発明は、前記本発明の分散剤組成物と、水硬性粉体と、細骨材と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体比が20重量%以下の水硬性組成物に関する。
【0020】
また、本発明は、下記工程(I)〜(III)を含む、前記本発明の分散剤組成物と、水硬性粉体と、細骨材と、粗骨材と、合成繊維と、水とを含有し、水/水硬性粉体比が20重量%以下の水硬性組成物の製造方法に関する。
工程(I):共重合体A、共重合体B、水、細骨材及び水硬性粉体を混練しモルタルを調製する工程
工程(II):工程(I)で得られたモルタルに粗骨材の一部又は全部を加えて混練し混練物を調製する工程
工程(III):合成繊維を工程(II)で得られた混練物に加えて混練し混練物を得る工程
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水/水硬性粉体重量比の小さいコンクリートでも十分な流動性、なかでも水硬性組成物の広がり(スランプフロー)や広がり速度(流動速度)に優れた効果が得られる水硬性組成物用分散剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の分散剤組成物は、前記一般式(A1)で表される構成単位A1と前記一般式(A2)で表される構成単位A2とを含み、構成単位A1と構成単位A2の合計中の構成単位A1の割合が70〜88モル%である共重合体Aと、前記一般式(B1)で表される構成単位B1構成単位と前記一般式(B2)で表される構成単位B2とを含み、構成単位B1と構成単位B2の合計中の構成単位B1の割合が90〜99モル%である共重合体Bと、を含有する。本発明では、共重合体Aと共重合体Bを含有する水溶液の形態で用いることができる。なお、本発明では、共重合体中の構成単位の割合は共重合の際に用いた構成単位に対応する単量体の量から計算する。
【0023】
<共重合体A>
本発明の共重合体Aはアクリル酸由来の主鎖を有しており主鎖の柔軟性が高く、一方で本発明の共重合体Bはメタクリル酸由来の主鎖を有しており主鎖の柔軟性は共重合体Aよりも劣ると考えられる。また、共重合体Bは共重合体Aよりも水硬性粉体表面への吸着基となるカルボン酸の含有量が多く、共重合体Bが水硬性粉体表面に共重合体Aよりも吸着し易いことが考えられる。水硬性粉体の表面に剛直な共重合体の間に柔軟な共重合体が吸着すること、さらに吸着のし易さ及び各共重合体の含有比率があいまって、共重合体AとBが水硬性粉体表面上をうまく覆うように吸着して、セメント分散性の効果が最大限に発揮されるものと推定される。そのため、流動性に優れた水硬性組成物を提供できる。
【0024】
また、水/水硬性粉体比が20重量%以下の水硬性組成物を調製する際、一般に、所定流動性を得るために練り混ぜに要する時間が長い、粘性が高い、など課題がある。その結果、水硬性粉体の水和が遅くなり、凝結などの硬化物性に大きな影響が出る。しかし、本発明では、共重合体Aと共重合体Bとを特定の重量比で併用する事で、セメント分散性の効果が最大限に発揮され練り上がりに要する時間が短く、また低粘性で、かつ早硬性に優れる水硬性組成物用分散剤組成物を提供できる。
【0025】
共重合体Aは、上記一般式(A1)で表される構成単位A1〔以下、構成単位A1という〕と上記一般式(A2)で表される構成単位A2〔以下、構成単位A2という〕を含む。すなわち、共重合体Aの一例としては、アクリル酸と、構成単位A2の由来となるポリアルキレングリコールとアクリル酸のエステルである単量体〔以下、単量体(A2)という〕とを構成単量体とするものが挙げられる。アクリル酸は塩を形成していてもよい。
【0026】
一般式(A1)中、M1は水素原子又は塩を形成する対イオンである。
【0027】
単量体(A2)の一例としては、ポリアルキレングリコールとアクリル酸とのモノエステルであり、一般式(A2)となる構造を有するものが挙げられる。一般式(A2)中、A1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、共重合体Aの水への溶解性の観点から、好ましくは炭素数2又は3、より好ましくは炭素数2のオキシアルキレン基(オキシエチレン基)である。n1はA1Oの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、水硬性組成物の流動性向上の観点から、好ましくは5〜150、より好ましくは8〜80、更に好ましくは10〜40である。R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基、より好ましくはメチル基である。
【0028】
共重合体Aは、構成単位A1と構成単位A2とを構成単位とし、構成単位A1及び構成単位A2の合計中の構成単位A1の割合が70〜88モル%である。コンクリートであってもスランプフロー及び流動速度を向上できる観点から、構成単位A1及び構成単位A2の合計中の構成単位A1の割合は、水硬性組成物の流動性及び硬化体の強度向上の観点から、好ましくは72〜86モル%、より好ましくは73〜85モル%である。
【0029】
また、重量基準では、構成単位A1及び構成単位A2の合計中の構成単位A1の割合が1.0重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.5重量%以上、更に好ましくは2.0重量%以上、更により好ましくは2.5重量%以上であり、80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは60重量%以下、更により好ましくは40重量%以下である。従って、構成単位A1及び構成単位A2の合計中の構成単位A1の割合は、水硬性組成物の流動性及び硬化体の強度向上の観点から、好ましくは1.0〜80重量%、より好ましくは1.5〜70重量%、更に好ましくは2.0〜60重量%、更により好ましくは2.5〜40重量%である。なかでも構成単位A2のn1が8〜80の数である場合、このような重量%で構成単位A1を用いることは、耐塩性と初期分散性の観点から好ましい。
【0030】
構成単位A1及び構成単位A2の合計中の構成単位A1の割合が70〜88モル%であるので、構成単位A2の割合は12〜30モル%である。コンクリートであってもスランプフロー及び流動速度を向上できる観点から、構成単位A1及び構成単位A2の合計中の構成単位A2の割合の割合は、好ましくは14〜28モル%、より好ましくは15〜27モル%である。
【0031】
共重合体Aは、構成単位A1と構成単位A2以外の構成単位を含むこともできるが、前記した共重合体Aの性質、効果を発現する観点から、共重合体Aの全構成単位中、構成単位A1と構成単位A2の合計の割合が90モル%以上、更に95モル%以上、更に98モル%以上、実質100モル%であることが好ましい。その他の構成単位の由来となる単量体としては、例えば(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩類;前記不飽和ジカルボン酸類とアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;アルコールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;前記不飽和ジカルボン酸類とグリコールもしくは付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;等が挙げられる。また、共重合体Aは、その他の構成単位として、後述する構成単位B1及び/又は後述する構成単位B2を含むこともできる。共重合体Aの全構成単位中、構成単位A1と構成単位A2以外の構成単位の割合が10モル%以下、更に5モル%以下、更に2モル%以下、実質0モル%であることが好ましい。
【0032】
<共重合体B>
共重合体Bは、上記一般式(B1)で表される構成単位B1〔以下、構成単位B1という〕と上記一般式(B2)で表される構成単位B2〔以下、構成単位B2という〕を含む。すなわち、共重合体Bの一例としては、メタクリル酸と、構成単位B2の由来となるポリアルキレングリコールとメタクリル酸のエステルである単量体〔以下、単量体(B2)という〕とを構成単量体とするものが挙げられる。メタクリル酸は塩を形成していてもよい。
【0033】
一般式(B1)中、M2は水素原子又は塩を形成する対イオンである。
【0034】
単量体(B2)の一例としては、ポリアルキレングリコールとメタクリル酸とのモノエステルであり、一般式(B2)となる構造を有するものが挙げられる。一般式(B2)中、A2Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、共重合体Bの水への溶解性の観点から、好ましくは炭素数2又は3、より好ましくは炭素数2のオキシアルキレン基(オキシエチレン基)である。n2はA2Oの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、硬化体の強度向上の観点から、好ましくは50〜200、より好ましくは100〜150、更に好ましくは110〜130である。R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基、より好ましくはメチル基である。
【0035】
共重合体Bは、構成単位B1と構成単位B2とを構成単位とし、構成単位B1及び構成単位B2の合計中の構成単位B1の割合が90〜99モル%である。構成単位B1及び構成単位B2の合計中の構成単位B1の割合の下限値は好ましくは92モル%、より好ましくは94モル%である。また、構成単位B1の上限値は、より好ましくは98モル%、更に好ましくは97モル%である。従って、構成単位B1及び構成単位B2の合計中の構成単位B1の割合は、90〜99モル%、水硬性組成物の流動性の観点から、好ましくは92〜98モル%、より好ましくは92〜97モル%、更に好ましくは94〜97モル%である。
【0036】
また、重量基準では、構成単位B1及び構成単位B2の合計中の構成単位B1の割合が1.0重量%以上であることが好ましく、より好ましくは5.0重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、更により好ましくは19重量%以上であり、60重量%以下であることが好ましく、より好ましくは40重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、更により好ましくは25重量%以下である。従って、構成単位B1及び構成単位B2の合計中の構成単位B1の割合は、水硬性組成物の流動性の観点から、好ましくは1.0〜60重量%、より好ましくは5.0〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%、更により好ましくは19〜25重量%である。なかでも構成単位Bのn2が100〜150の数である場合、このような重量%で構成単位B1を用いることは、硬化体の強度向上の観点から好ましい。
【0037】
構成単位B1及び構成単位B2の合計中の構成単位B1の割合が90〜99モル%であるので、構成単位B2の割合は1〜10モルである。全構成単位中の構成単位B2の割合の下限値は、好ましくは2モル%、より好ましくは3モル%である。構成単位B2の割合の上限値は好ましくは8モル%、より好ましくは6モル%である。従って、全構成単位中の構成単位B2の割合の割合は、水硬性組成物の流動性の観点から、1〜10モル%、好ましくは2〜8モル%、より好ましくは3〜8モル%、更に好ましくは3〜6モル%である。
【0038】
共重合体Bは、構成単位B1と構成単位B2以外の構成単位を含むこともできるが、前記した共重合体Aの性質、効果を発現する観点から、共重合体Bの全構成単位中、構成単位B1と構成単位B2の合計の割合が90モル%以上、更に95モル%以上、更に98モル%以上、実質100モル%であることが好ましい。その他の構成単位の由来となる単量体としては、例えば(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩類;前記不飽和ジカルボン酸類とアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;アルコールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;前記不飽和ジカルボン酸類とグリコールもしくは付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;等が挙げられる。また、共重合体Bは、その他の構成単位として、構成単位A1及び/又は構成単位A2を含むこともできる。共重合体Bの全構成単位中、構成単位B1と構成単位B2以外の構成単位の割合が10モル%以下、更に5モル%以下、更に2モル%以下、実質0モル%であることが好ましい。
【0039】
<水硬性組成物用分散剤組成物>
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、共重合体Aと共重合体Bの重量比(A/B)が65/35〜95/5であり、水硬性組成物の流動性、なかでもスランプフロー及び流動速度を向上できる観点から、70/30〜95/5が好ましく、70/30〜90/10がより好ましく、70/30〜85/15がさらに好ましい。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、共重合体Aと共重合体Bとからなるものが好ましい。
【0040】
共重合体Aを構成する構成単位A1と、共重合体Bを構成する構成単位B1のモル比(A1/B1)は、水硬性組成物の流動性及び硬化体の強度向上の観点から、65/35〜95/5が好ましく、70/30〜95/5がより好ましく、70/30〜90/10がさらに好ましく、70/30〜85/15がよりさらに好ましい。
【0041】
共重合体Aを構成する構成単位A2のオキシアルキレン基の平均付加モル数n1と、共重合体Bを構成する構成単位B2のオキシアルキレン基の平均付加モル数n2の比率(n1/n2)は、水硬性組成物の流動性及び硬化体の強度向上の観点から、4/96〜50/50が好ましく、7/93〜30/70がより好ましく、10/90〜20/80がさらに好ましい。
【0042】
共重合体A及び共重合体Bの重量平均分子量は、水硬性組成物の初期分散性の観点から、それぞれ、1000〜200000が好ましく、10000〜100000がより好ましく、20000〜60000が更に好ましい。この重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.5mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0043】
共重合体A及び共重合体Bは、単量体成分と開始剤を用いて、溶液重合や塊状重合などの公知の重合方法により製造することができる。また高分子反応法により合成することも可能である。ちなみに、高分子反応法とは、不飽和カルボン酸を重合後に、ポリアルキレングリコール系化合物とエステル化反応を行うことで、グラフト共重合体を得る方法である。
【0044】
重合開始剤は公知のものを使用することができ、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシド等が好適に使用できる。
【0045】
<水硬性組成物>
本発明の水硬性組成物は、本発明の分散剤組成物と、水硬性粉体と、細骨材と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体比が20重量%以下であり、水硬性組成物の流動性向上効果の発現の観点から、水/水硬性粉体重量比は、好ましくは18重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。水/水硬性粉体比が20重量%以下の水硬性組成物において、スランプフローなどの流動広がりに優れることに加えて、流動速度を大きくできることは、充填作業の短縮などにつながり、効果の意義がより大きいものとなる。
【0046】
本発明の水硬性組成物は、単位水硬性粉体量が500kg/m3以上であることが好ましい。単位水硬性粉体量は800kg/m3以上がより好ましく、1000kg/m3以上がより好ましく、1250kg/m3以上が更に好ましい。また、単位水硬性粉体量は2200kg/m3以下が好ましく、2000kg/m3以下がより好ましく、1800kg/m3以下が更に好ましく、1500kg/m3以下がより更に好ましい。従って、単位水硬性粉体量は、500〜2200kg/m3が好ましく、800〜2000kg/m3がより好ましく、1000〜1800kg/m3が更に好ましく、1250〜1500kg/m3がより更に好ましい。
【0047】
本発明に用いられる水硬性粉体としては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、対硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、ビーライトセメント(例えば低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント製)ハイフローセメント(太平洋セメント製))、各種混合セメント(高炉セメント、シリカフュームセメント、フライアッシュセメント)、エコセメント(太平洋セメント製)などのセメントが挙げられる。これらのなかでも、共重合体A及び共重合体Bの加水分解を抑制する観点から、中庸熱セメント、ビーライトセメント及びシリカフュームセメントが好ましい。
【0048】
石粉(炭酸カルシウムの粉末)、高炉スラグ(ブレーン値3000〜10000cm2/g)、フライアッシュなどのフィラーを水硬性粉体と併用することもできる。
【0049】
本発明の水硬性組成物は、シリカフュームなどの微粒子を含有することができる。シリカフュームにはジルコニアフューム、アルミナフューム、チタンフュームも含む。また、上記シリカフュームセメント等のような予めセメントと混合した製品を用いることもできる。微粒子は、比表面積(BET法)が5m2/g以上、更に10〜30m2/g、より更に12〜28m2/gであることが好ましい。本発明では、水硬性粉体として、シリカフュームを8〜20重量%混入したセメントを用いることが好ましい。なお、シリカフュームとは、フェロシリコン、電融ジルコニア、金属シリコンをアーク式電気炉で製造する際に発生する排ガスから捕集される非晶質の二酸化珪素を主成分とする平均粒径0.1μm程度の非常に細かい球状の微粒子である。その成分は80重量%以上が非晶質のSiO2であり、少量成分としてAl2O3、Fe2O3、CaO、TiO2などが含まれる。
【0050】
シリカフュームなどの微粒子を含有することで、水硬性組成物の塩基性が低下し共重合体A及び共重合体Bの加水分解が抑制される。とりわけ共重合体Aは共重合体Bよりも加水分解されやすい傾向があるので有効である。さらに、共重合体A及び共重合体Bとの相互作用により微粒子の凝集を抑制する効果があると考えられる。微粒子による材料粒子間への充填、材料粒子間でのボールベアリング効果、ポゾラン反応により、混練性や硬化体の強度が向上する。
【0051】
本発明の水硬性組成物は、粗骨材を含有する。粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。中でも、強度向上の観点から、粗骨材の強度が高い硬質砂岩の使用がより好ましい。また、骨材として細骨材等を含有することもでき、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。粗骨材とは、目開き5mmのふるいに重量で85%以上とどまる骨材(土木学会コンクリート標準示方書)をいう。また、細骨材とは、目開き10mmふるいを全部通り、目開き5mmふるいを重量で85%以上通過する骨材(土木学会コンクリート標準示方書)をいう。
【0052】
本発明の水硬性組成物において、粗骨材の含有量は、水硬性組成物の硬化の際の収縮性及び硬化後の強度の観点から、300〜1100kg/m3であり、350〜1100kg/m3が好ましく、600〜1050kg/m3がより好ましく、700〜1000kg/m3がより更に好ましく、800〜950kg/m3が特に好ましい。また、体積基準では115〜500L/m3(水硬性組成物1m3あたりの体積(リットル))が好ましく、130〜500L/m3がより好ましく、200〜450L/m3が更に好ましく、250〜450L/m3が更に好ましい。
【0053】
細骨材と粗骨材の容積比〔細骨材/(細骨材+粗骨材)×100、容積比、s/aと表記されることもある〕は8〜60容積%が好ましく、10〜55容積%がより好ましく、12〜40容積%が更に好ましく、12〜30容積%がより更に好ましく、12〜30容積%がより更に好ましく、12〜16容積%がより更に好ましい。
【0054】
本発明の水硬性組成物における骨材の含有量(細骨材と粗骨材の合計量)は、400〜2000kg/m3が好ましく、600〜1800kg/m3がより好ましく、700〜1400kg/m3が更に好ましく、800〜1200kg/m3がより更に好ましい。本発明の水硬性組成物として、粗骨材を含有する超高強度コンクリートが挙げられる。
【0055】
本発明の水硬性組成物は、材齢1日強度が25N/mm2以上、更に30N/mm2以上、より更に40N/mm2以上であることが好ましい。材齢1日強度は、JIS A1108に基づいて測定されたものである。このような材齢1日強度を達成するために、水/水硬性粉体重量比を小さくする、セメントの種類を選択する、共重合体Aのアクリル酸単位を調整する、早強剤を併用する等が挙げられる。
【0056】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を用いると、水/水硬性粉体比が小さい水硬性組成物に対しても混練が容易でありので、繊維を含む水硬性組成物を調製する際に好適に用いることができる。繊維を含む水硬性組成物として、硬化体が火炎等に曝され加熱された時の爆裂防止の観点から、合成繊維等の繊維を含有するものが挙げられる。繊維は、例えば100℃で軟化又は溶融することで体積減少又は分解・揮発する長さが6〜50mm、直径が5〜500μmの合成繊維が挙げられる。硬化体が加熱された際には、繊維が体積減少又は分解・揮発することで加熱による硬化体の膨張による歪を緩和し、硬化体の爆裂を防止することができる。合成繊維としては、ポリアセタール繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等の合繊繊維、レーヨン繊維等の再生繊維が挙げられ、中でもポリアセタール繊維が好ましい。繊維は水硬性組成物に対して0.01〜5.0体積%、更に0.05〜3.5体積%、80N/mm2以上の高強度コンクリートを得る観点から、より更に0.1〜3.5体積%用いることが好ましい。
【0057】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物の乾燥収縮や水/水硬性粉体重量比の小さい領域で硬化後の強度を維持しつつ自己収縮を抑制する観点から膨張材を含有することが好ましい。膨張材は、JIS A 6202に制定されているものを使用できる。具体的には、カルシウムサルホアルミネートを主成分とする膨張材及び生石灰を主成分とする膨張材から選ばれる膨張材が挙げられる。膨張材は水硬性粉体(特にセメント)100重量部に対して1〜30重量部、更に3〜20重量部、より更に5〜15重量部用いることが好ましい。
【0058】
本発明の水硬性組成物は、共重合体A及び共重合体B以外のその他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸系、デキストリン、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖系、糖アルコール系等の遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系等の高性能減水剤;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;炭素数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物、平均分子量400〜10000のポリアルキレングリコール等の収縮低減剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、β−1,3−グルカン、キサンタンガム等の天然物系、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのエチレンオキシド付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
【0059】
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体重量比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量比、水の重量/水硬性粉体の重量×100、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が20重量%以下であり、18重量%以下、更に15重量%以下であることが好ましい。水硬性組成物の十分な流動性向上効果の発現の観点から、水/水硬性粉体重量比は7〜20重量%であることが好ましく、8〜18重量%がより好ましく、8〜15重量%が更に好ましくい。なお、水硬性組成物が微粒子及び/又は膨張材を含有する場合(例えば、微粒子及び/又は膨張材が配合された水硬性粉体を用いる場合)、水硬性粉体と微粒子及び/又は膨張材との合計量を水硬性粉体の量としてW/P又はW/Cを算出する。
【0060】
本発明により、共重合体A及び共重合体Bを含有する分散剤組成物と、水硬性粉体と、細骨材と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体比が20重量%以下の水硬性組成物が提供される。共重合体A及び共重合体Bは、水硬性組成物の流動性向上の観点から、有効分換算で、共重合体Aは、水硬性粉体100重量部に対して、0.01〜5.0重量部、更に0.05〜4.0重量部、より更に0.1〜3.0重量部用いることが好ましい。また、共重合体Bは、水硬性粉体100重量部に対して、0.001〜4.0重量部、更に0.005〜3.0重量部、より更に0.01〜2.0重量部用いることが好ましい。
【0061】
共重合体A及び共重合体Bは、それぞれ、水溶液で用いることができるが、水溶液中の共重合体A及び共重合体Bの濃度や水溶液の使用量は、水硬性粉体に対する共重合体A及び共重合体Bの割合が上記範囲となるように適宜設定できる。
【0062】
また、本発明により、本発明の分散剤組成物と、水硬性粉体と、細骨材と、粗骨材と、合成繊維と、水とを含有し、水/水硬性粉体比が20重量%以下の水硬性組成物の製造方法であって、粗骨材の少なくとも一部を水硬性粉体(又はモルタル等の前記粗骨材を含まない混合物)と混合する工程の後に、合成繊維を混合する工程を有する水硬性組成物の製造方法が提供される。すなわち、粗骨材を最初に水硬性粉体と混合した後に、合成繊維の最初の混合を行うことが好ましい。この製造方法は、下記工程(I)〜(III)を含む。
工程(I):共重合体A、共重合体B、水、細骨材及び水硬性粉体を混練しモルタルを調製する工程
工程(II):工程(I)で得られたモルタルに粗骨材の一部又は全部を加えて混練し混練物を調製する工程
工程(III):合成繊維を工程(II)で得られた混練物に加えて混練し混練物を得る工程
【0063】
工程(II)で、最終的に水硬性組成物に配合される粗骨材の量の全部を加えた場合は、工程(III)で得られた混練物がそのまま水硬性組成物となる。また、工程(II)で、最終的に水硬性組成物に配合される粗骨材の量の一部を用いた場合は、更に下記工程(IV)を含む。
工程(IV):残りの粗骨材を、工程(III)で得られた混練物に加えて混練する工程
【0064】
粗骨材の混練の後に合成繊維を混練することで、水硬性組成物の流動性がより良好となる。この理由として本発明の分散剤組成物の成分が効率よく合成繊維に吸着することで流動性がより向上するものと推定される。水硬性組成物の調製の際の材料混合性の観点から、粗骨材を工程(II)と工程(IV)とに別けて混練することが好ましく、工程(II)で粗骨材の全配合量の30〜70重量%を混練することが好ましく、40〜60重量%がより好ましく、残りを工程(IV)で混練することが好ましい。
【0065】
工程(I)〜(IV)で用いる混練機は、傾胴ミキサ、パン型ミキサ、強制二軸ミキサ、ジクロスミキサなどが使用でき、中でも強制二軸ミキサ(例えば IHI社製DAM60)やジクロスミキサ(例えば 北川鉄工所製のWHQ−60A)の使用が好ましい。
【実施例】
【0066】
製造例1
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水6118gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で78℃まで昇温した。次にメトキシポリエチレングリコールモノアクリレート5100gとアクリル酸631gを水2300gに混合溶解した単量体水溶液と、3−メルカプトプロピオン酸33gを水177gに溶解した水溶液と、過硫酸アンモニウム31gを水179gに溶解した水溶液の3者の水溶液をそれぞれ1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに過硫酸アンモニウム15gを水75gに溶解させた水溶液を0.5時間かけて滴下した。その後、1時間78℃に温度を維持し、熟成を行うことで重合反応を完結させた。得られた反応混合物を含む水溶液を48%水酸化ナトリウム水溶液で中和することで、pH5.5、重量平均分子量41,600、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.21の共重合体(A−1)の水溶液を得た。
【0067】
製造例2
単量体の種類及び比率を表1のように変更し、製造例1に準じて表1の各共重合体を製造した。
【0068】
【表1】

【0069】
表1中の[I]/[II]共重合比は、構成単位A1と構成単位A2の合計中の構成単位A1の割合、又は構成単位B1と構成単位B2の合計の構成単位B1の割合である。
【0070】
また、表中の記号は以下の意味である。
・AA:アクリル酸
・MAA:メタクリル酸
・AA−PEGエステル:メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート
・MAA−PEGエステル:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート
・EO鎖長:エチレンオキサイド平均付加モル数
・Mw:重量平均分子量
【0071】
実施例1及び比較例1
表1の共重合体を用いて、表2の配合によりコンクリートを製造し、評価を行った。結果を表3に示す。なお、表3では、共重合体A、Bに該当しない共重合体も便宜的にそれらの欄に記載した。
【0072】
(1)コンクリート配合
【0073】
【表2】

【0074】
W:上水道水(共重合体を含む)
C:シリカフュームプレミックスセメント(太平洋セメント製;密度=3.07g/cm3
E:エトリンガイト系膨張材 Σ2000(電気化学工業製;密度=3.07g/cm3
S:山砂(細骨材、密度=2.55g/cm3
G:石灰砕石(粗骨材、密度=2.72g/cm3、粗粒率FM=6.45)
PA:合成繊維 ポリアセタール繊維(ダイワボウポリテック製 白色 毛状 長さ:約10mm、密度1.40g/cm3(実測値))
W/P=W/(C+E)×100
s/a=S/(S+G)×100
【0075】
(2)コンクリートの調製
配合に従い、30リットルの強制2軸ミキサに、セメント、膨張材及び細骨材を投入し30秒空練りを行った。そこへ表1に記載する共重合体(セメント分散剤組成物)を含む水を投入し、420秒(7分)混練することでモルタルペーストを調製した。さらにここへ砂利(粗骨材)の1/2量、合成繊維、その後、残りの砂利(粗骨材)を投入して180秒(3分)混練し、5分静置後、更に30秒攪拌することで最終のコンクリートを得た。
【0076】
(3)評価方法
調製した各コンクリートについて、スランプフロー、材齢24時間後及び56日後の圧縮強度を、それぞれJIS A1101、JIS A1108にしたがって測定した。また、スランプフローの測定の際に、フローが50cmに到達する時間と、フローが停止するまでの時間を測定した。値が小さいほどコンクリートの拡がりが早く施工性に優れることを示す。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
(注)
1)重量%は、セメントに対する共重合体A又は共重合体Bの有効分の重量%である。共重合体A又は共重合体Bは、何れも30重量%濃度の水溶液として使用し、水溶液の水の量は、練り水の量に含む。
【0079】
実施例2
実施例1−3の配合条件で、粗骨材(G)と合成繊維(PA)の混練順序を、以下のように変えて、コンクリートを調製した。調製した各コンクリートについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0080】
*実施例2−1
実施例1の「コンクリートの調製」と同じ条件でコンクリートを製造した。
【0081】
*実施例2−2
粗骨材、合成繊維を含む全配合成分を、一括で30リットルの強制2軸ミキサに投入して、600秒(10分)混練し、5分静置後、更に30秒攪拌すること以外は実施例2−1と同様にして最終のコンクリートを得た。
【0082】
*実施例2−3
30リットルの強制2軸ミキサに、水(分散剤組成物を含む)、水硬性粉体、細骨材、合成繊維を投入して420秒(7分)混練し、モルタルを調製した後、粗骨材を投入して180秒(3分)混練し、5分静置後、更に30秒攪拌すること以外は実施例2−1と同様にして最終のコンクリートを製造した。
【0083】
*実施例2−4
30リットルの強制2軸ミキサに、水(分散剤組成物を含む)、水硬性粉体、細骨材、粗骨材を投入して420秒(7分)混練し、コンクリート用の組成物を製造した後、合成繊維を投入して180秒(3分)混練し、5分静置後、更に30秒攪拌すること以外は実施例2−1と同様にして最終のコンクリートを製造した。
【0084】
【表4】

【0085】
表4の結果から、合成繊維を含有するコンクリートにおいて、粗骨材の少なくとも一部を水硬性粉体と混合する工程の後に、合成繊維を混合する工程を有することが、スランプフローや流動速度の向上により好ましいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1)で表される構成単位A1と下記一般式(A2)で表される構成単位A2とを含み、構成単位A1と構成単位A2の合計中、構成単位A1の割合が70〜88モル%である共重合体Aと、
下記一般式(B1)で表される構成単位B1と下記一般式(B2)で表される構成単位B2とを含み、構成単位B1と構成単位B2の合計中、構成単位B1の割合が90〜99モル%である共重合体Bと、
を含有し、
共重合体Aと共重合体Bの重量比(A/B)が65/35〜95/5である、
水硬性組成物用分散剤組成物。
【化1】


〔式中、M1は水素原子又は塩を形成する対イオンを表す。〕
【化2】


〔式中、A1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、n1はA1Oの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。〕
【化3】


〔式中、M2は水素原子又は塩を形成する対イオンを表す。〕
【化4】


〔式中、A2Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、n2はA2Oの平均付加モル数であり、2〜300の数を表し、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。〕
【請求項2】
請求項1記載の分散剤組成物と、水硬性粉体と、細骨材と、粗骨材と、水とを含有し、水/水硬性粉体比が20重量%以下の水硬性組成物。
【請求項3】
さらに合成繊維を含有する請求項2記載の水硬性組成物。
【請求項4】
下記工程(I)〜(III)を含む請求項3記載の水硬性組成物の製造方法。
工程(I):共重合体A、共重合体B、水、細骨材及び水硬性粉体を混練しモルタルを調製する工程
工程(II):工程(I)で得られたモルタルに粗骨材の一部又は全部を加えて混練し混練物を調製する工程
工程(III):合成繊維を工程(II)で得られた混練物に加えて混練し混練物を得る工程
【請求項5】
工程(II)において粗骨材の一部を使用し、更に下記工程(IV)を含む請求項4記載の水硬性組成物の製造方法。
工程(IV):残りの粗骨材を工程(III)で得られた混練物に加えて混練する工程

【公開番号】特開2012−136389(P2012−136389A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290107(P2010−290107)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】