説明

水素源を含む独立型水検出装置

本発明は、第1の電極(2)と、電解質層(3)と、第2の(seconde)電極(4)と、電気測定装置(5)とを含むなくとも1つの燃料電池を含む水検出装置であって、水の存在下で水素が自由に流れるように、燃料電池の第1の電極が、Si−H結合を含む多孔質シリコン基板(1)の第1の面と接触することを特徴とする水検出装置に関する。有利には、多孔質シリコンの基板は、水に対して透過性の第1のハウジング(6)中に組み込まれ、燃料電池は第2のハウジング(8)中に組み込まれ、前記第2のハウジングは水に対して不透過性であり、酸素に対して透過性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、エネルギー自律型水検出装置の分野であり、より明確には、水の量を評価することができ、周知の水検出器において得られるような水が存在するかしないかの2値モードでのみ動作するのではない水検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大部分の水検出装置は、エネルギーに関して自律型ではない。エネルギーの供給は、装置内部への供給源(電力セル)、または電気配電システムによって行われる。この理由のため、既存の装置は小型化できず、大きさが限定された空間や到達が困難な空間には適合していない接続手段が必要である。
【0003】
しかし、仏国特許出願公開第2 906 037号明細書には、ボルタ電池型のエネルギー自律型水検出器がすでに記載されている。この電解質は多孔質材料で構成される。その多孔層は、イオン種が遊離するコーティングを有する。電解質が水と接触すると、電解質中のイオンが遊離することでイオン伝導が生じ、反応:
Zn→2e+Zn2+
2HO+2e→2HO+H
によってエネルギーが発生する。
【0004】
この種類の検出器では、漏れの量を評価することができない。段階的な信号が存在せず:水の存在下では信号が存在し、一方、水が存在しないと信号は存在しない。情報は2値的となる。さらに、亜鉛電極が消費されると、その系はもはや機能しなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況において、本発明の主題は、水素を遊離する反応を引きを起こすために水の存在を利用し、それによってそれ自体が燃料電池となり、その燃料電池が電気信号の供給元の役割を果たすことにある解決法である。このような装置の興味深い点は、水の量に比例する信号が得られることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
より明確には、本発明の主題は、第1の電極と、電解質層と、第2の電極と、電気測定装置とを含む少なくとも1つの燃料電池を含む水検出装置であって、水の存在下で水素が自由に流れるように、燃料電池の第1の電極が、Si−H結合を含む多孔質シリコン基板の第1の面と接触することを特徴とする水検出装置である。
【0007】
本発明の一変形によると、装置は、シリコン基板の孔隙の内側に触媒をさらに含むことで、水素の自由な流れが促進される。
【0008】
本発明の一変形によると、触媒は、水酸化物イオンを遊離することができる材料を含み、その材料はKOH型であってよい。
【0009】
本発明の一変形によると、水検出装置は、多孔質シリコン基板を含む水透過性の第1のハウジングを含む。
【0010】
本発明の一変形によると、水検出装置は、燃料電池を含む第2のハウジングを含み、前記第2のハウジングは、水に対して不透過性であり、酸素に対して透過性である。
【0011】
本発明の一変形によると、水検出装置は基本セルの組立体を含み、各基本セルは、少なくとも1つの基本燃料電池および1つの基本多孔質シリコン基板を含む。
【0012】
本発明の一変形によると、水検出装置は、多孔質シリコン基板を含む基本セルの組立体を含み、多孔質シリコン基板の電極の面に対して垂直の寸法は、水の種々の基本量を検出できるような勾配に従って分布する。
【0013】
本発明の一変形によると、水装置(water device)は、共通の電解質層を含み、第1の電極および第2の電極は、電解質材料の層および共通の多孔質シリコン基板のいずれの側でも不連続である。
【0014】
本発明の一変形によると、共通の電解質層は、プロトンに対して不透過性の横方向の絶縁領域を含み、それによって基本セル内部でプロトンが分配される。
【0015】
本発明の一変形によると、水検出装置は、基本水検出セルのマトリックス構造を含む。
【0016】
本発明の別の主題は、マトリックス電気測定装置が取り付けられた本発明による水検出装置を含む、水性領域地図作製装置である。
【0017】
本発明のさらに別の主題は、本発明による水性領域地図作製装置を含むことを特徴とする、指紋識別装置である。
【0018】
非限定的な例および添付の図面によって提供される以下の説明を読めば、本発明がより十分に理解され、他の利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明において使用される燃料電池の原理を示している。
【図2】本発明による水検出装置の第1の変形を示している。
【図3】本発明による水検出装置の第2の変形を示している。
【図4】本発明による水検出装置の第3の変形を示している。
【図5】図4中に示される変形の改善された実施形態を示している。
【図6】基本検出セルを含む本発明による水検出装置を示している。
【図7a】有利に指紋識別装置中に使用できる本発明による水性領域地図作製装置を示している。
【図7b】有利に指紋識別装置中に使用できる本発明による水性領域地図作製装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一般的な方法における、本発明において使用される燃料電池の原理を図1中に示している。水素透過性であるアノード電極は、以下の反応が起こる場所である:
→2H+2e
【0021】
電解質材料によって、プロトンがカソードまで輸送され、その場所では、空気中に存在する酸素が供給され、電子が供給されることによって以下の反応が起こる:
1/2O+2e+2H→H
【0022】
したがって本発明の水検出器の動作の一般的原理は以下のブロック図で示すことができる:
【化1】

【0023】
特定の体積の水の存在下では、検出器は、水の体積に比例した体積の水素を発生する。同時に検出器は、その水素の体積に比例した強度の信号を発生する。
【0024】
図2は、本発明による水検出器の第1の変形を示している。検出器は、多孔質シリコンでできた基板1を含む。この多孔質シリコンはSi−H型の結合を含む。孔隙は多孔質シリコンを横断している。有利には、シリコンの孔隙は、水の存在下で水酸化物イオンを遊離するコーティングによって形成することができる触媒(図示せず)を含むことができ;典型的には、このコーティングは苛性カリであってよい。触媒は検出される水溶液中に含まれていてもよい。
【0025】
水の存在下では、水素は以下の化学反応:
Si−Si−H+4HO→Si(OH)+2H+Si−H
によって遊離する。
【0026】
水素は、多孔質シリコンの孔隙を通過して移動して電極2に到達する。電極2は、電子伝導性であり、反応:
→2H+2e
に対して活性である活性電極に相当する。
【0027】
層3は、電解質の機能を提供する層であり;有利にはプロトン伝導性膜からなる。
【0028】
電極4は、反応:
1/2O+2e+2H→H
を触媒する電子伝導性電極である。
【0029】
したがって、水の存在下で、水素が発生し、燃料電池が活性状態となる。電極2および4の間で0V〜1.1Vの間の範囲内の電圧Uが存在する。
【0030】
次に燃料電池は電気測定装置5に電力を供給することができ、この電気測定装置5は、有利には警報または作動装置を含むことができる。装置5は、作動電圧を一定にすることができる制御装置、ならびに警報(音声または画像)および/またはアクチュエーターを含むことができる。
【0031】
警報またはアクチュエーターに電力を供給するために、燃料電池によって供給されるエネルギーを貯蔵するための容量性システムまたは電池を装置5内に付け加えることもできる。制御装置は、最初に電池またはコンデンサを充電し、次に燃料電池が発生した電流の強さのばらつきを時間の関数として分析することができる。電流の強さは水素の流れと相関があるため、したがってこれによって水の流れを推定することができる。
【0032】
図3は、水に対して透過性である第1のハウジング6の中で検出器が一体化されている本発明の第2の変形を示している。水素は、水の存在下で自然に電極2に向かう。水の量が減少すると、形成された水素は漏れ止めハウジングから排気される。カソード側では、水に対しては不透過性であるが酸素は透過できる第2の疎水性ハウジング8が存在することで、水の量がレベルZ=dを超える場合に電極が水浸しになるのが防止される。ハウジング8は多孔質疎水性コーティングであってもよい。ハウジング6および多孔質シリコンは強固に取り付けられる。多孔質シリコンが消費された後、システムは、この目的で設けられた締結要素14において組立体1+6を取り外し、その場所に新しい組立体1+6を接続することによって再装填することができる。
【0033】
安全性の理由で、1sccm(cm/分の標準単位に相当する)を超える流れで水素が発生する場合、ハウジング6は、図4中に示される第3の変形に図示されるように漏れ止め反復帰弁(anti−return valve)7が取り付けられた漏れ止めハウジングであってもよく、これにより液体の水は透過することができるが、水素は透過できない。
【0034】
図5中に示される改善された一実施形態においては、反復帰弁7は、接続15を介して予想される方法でアクチュエーター5によって制御することもできる。
【0035】
本発明による水検出器の第1の例示的実施形態:
検出装置は、数個の基本セルを含む。したがって図6は、一例として、共通の電解質層を介して形成された燃料電池を含む3つのセルC、C、Cの組立体を示している。このために、不連続電極2、2、2が、不連続電極4、4、4とともに設けられる。このようにして、図6中に示されるように、たとえば水の量を評価するために検出器を使用することができる。水の量がレベルaからレベルbの間の範囲内にある場合、セル1の端子間に電位差Uが生じ、電流Iが発生することで、作動1(または信号1)が発生する。
【0036】
水の量がレベルbからレベルcの間の範囲内の場合、セルCが活性化し、信号2/作動2が発生し、並行してセルCも活性化する。
【0037】
量がレベルcを超える場合は、セルCが活性化して発電し、信号3/作動3が発生し、並行してセルCおよびCも活性化し、同様にn個のセル(図示せず)まで続く。
【0038】
したがってシステム10は、水の量の動的な変化を監視することができる。
【0039】
本発明による水検出装置の第2の例示的実施形態:
検出システムは、マトリックス形式で組織化された燃料電池を含む数個の基本セルを含む。このシステムにより、水の「画像」を検出することができ:たとえば指紋検出の枠組みに使用することができる。
【0040】
このシステムは、指の山および谷によって形成される水の変動に基づく指紋の形状の画像が得られる。図7aは、装置の上面図を示しており、図7bは、マトリックス構造および処理回路を強調した概略図を示している。
【0041】
図7aは、マトリックス構造の1つの横列において、共通の電解質層3がイオン非伝導性領域9を含むことで、複数の基本セルを互いに密閉することができることを強調している。電極211、..、21Nおよび電極411、...、41Nの組立体によって、検出器の基本セルC11、...、C1Nの第1の横列の燃料電池を形成することができる。
【0042】
数個のセルの配列で構成される検出器の本発明の場合では、近接する2つのセルに関連する干渉を防止するために、膜を不連続にしたり、領域9の内部でイオン非伝導性にしたりすることができる。
【0043】
セルの横寸法は10nm〜10cmの間の範囲内である。好ましくは、セルの大きさは0.1μm〜1000μmの間の範囲内である。セルの間の間隔は好ましくは0.1〜50μmの間の範囲内である。
【0044】
画像系をピクセル化された検出器と接触させると、水(または水性)の領域と接触するセルが活性化する。「活性化」は、セルの端子間に0〜1.1Vの間の範囲内、好ましくは0.5〜1.1Vの間の範囲内の電位差Uが存在し、電流Iが発生することを意味する。活性化したセルの読み取りは、マトリックスアドレス指定によって行われる。回路12によって縦列電極を選択することができ、回路13によって横列電極を選択することができる。
【0045】
情報Uから、セルが水と接触しているかどうかが分かり、したがって検出器と接触する物体の水の地図が作製される。情報Iによって、水の量を推定することができる。
【0046】
電極は、電子伝導性の触媒材料からできている。これらは、白金Pt、または白金含有合金、たとえば白金/ルテニウム型、パラジウム、またはこの場合も金、炭素、あるいは上記元素の組み合わせで構成される。
【0047】
電極2の構成要素は、電極4の構成要素と異なる場合もあるし、同一の場合もある。
【0048】
電解質3はプロトン伝導性化合物である。この化合物は、−COOH、−SOH、または−PO(OH)型の酸原子団で官能化されたフルオロカーボン型のポリマーであってよい。化合物は、前述の酸原子団で官能化された炭素ポリマーであってもよい。電解質3は、好ましくはNafion(登録商標)またはNafion(登録商標)から誘導される別のポリマーである。イオン交換膜に現在最も広く使用されている材料は、実際に、Dupont of Nemours製造のNafionである。これは、(Teflon型の)過フッ素化構造を有し、その上にスルホネートSO原子団がグラフトしたコポリマーである。その厚さは50〜150μm程度である。良好なイオン伝導性によるプロトンの移動を確実にするために、膜を水和させる必要がある。
【0049】
好ましくは、第1および第2の電極を分離する電解質の厚さは0.1μm〜100μmの間の範囲内であり、特に1nm〜1000nmの間の範囲内である。
【0050】
水素化多孔質シリコン基板を形成するために、水素化は、酸による電気化学的処理をドープしたシリコン基板に対して行うと有利である。孔隙の大きさは好ましくは1nm〜100nmの間の範囲内である。
【0051】
触媒が使用される場合、水に接触すると水酸化物イオンを遊離する物質が多孔質シリコン1中に含まれる。別の解決法は、水酸化物イオンを遊離するコーティングをハウジング6中に局在化して使用することある。
【0052】
したがって、本発明によると、水の存在下で、セルまたは燃料電池は活性であり:1つまたは複数のセルの電圧は0〜1.1Vの間の範囲内である。
【0053】
好ましくは、電池またはコンデンサを充電する場合、電圧は1.1〜0.4Vの間の範囲内である。時間の関数としての強度の変動を調べるために、電圧は、0〜1.1Vの間の範囲内、好ましくは0〜0.5Vの間の範囲内の電圧に設定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極(2)と、電解質層(3)と、第2の電極(4)と、電気測定装置(5)とを含む少なくとも1つの燃料電池を含む水検出装置であって、水の存在下で水素が自由に流れるように、前記燃料電池の前記第1の電極がSi−H結合を含む多孔質シリコン基板(1)の第1の面と接触することを特徴とする水検出装置。
【請求項2】
前記シリコン基板の孔隙の内側に触媒をさらに含むことで、水素の自由な流れが促進されることを特徴とする請求項1に記載の水検出装置。
【請求項3】
前記触媒は、水酸化物イオンを遊離することができる材料を含み、前記材料がKOH型であってよいことを特徴とする請求項2に記載の水検出装置。
【請求項4】
前記多孔質シリコン基板を含む水透過性の第1のハウジング(6)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水検出装置。
【請求項5】
前記燃料電池を含む第2のハウジング(8)を含み、前記第2のハウジングが、水に対して不透過性であり、酸素に対して透過性であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の水検出装置。
【請求項6】
基本セル(C、C、C)の組立体を含み、各基本セルが、少なくとも1つの基本燃料電池および1つの基本多孔質シリコン基板を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水検出装置。
【請求項7】
多孔質シリコン基板を含む基本セルの組立体を含み、前記多孔質シリコン基板の前記電極の面に対して垂直の寸法が、水の種々の基本量を検出できるような勾配に従って分布することを特徴とする請求項6に記載の水検出装置。
【請求項8】
共通の電解質層を含み、第1の電極(211、...、21N)および第2の電極(411,...,41N)が電解質材料の層および共通の多孔質シリコン基板のいずれの側でも不連続であることを特徴とする請求項6または7に記載の水検出装置。
【請求項9】
前記共通の層が、プロトンに対して不透過性の横方向の絶縁領域(9)を含み、それによって前記基本セル内部でプロトンが分配されることを特徴とする請求項8に記載の水検出装置。
【請求項10】
基本水検出セルのマトリックス構造を含むことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の水検出装置。
【請求項11】
マトリックス電気測定装置(12、13)が取り付けられた請求項10に記載の水検出装置を含むことを特徴とする水性領域地図作製装置。
【請求項12】
請求項11に記載の水性領域地図作製装置を含むことを特徴とする指紋識別装置。

【図7b】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【公表番号】特表2013−519072(P2013−519072A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550396(P2012−550396)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050752
【国際公開番号】WO2011/092105
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(510163846)コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ (47)
【Fターム(参考)】