説明

水質サンプリング装置および水質サンプリング方法

【課題】排出特性が定まらない場合であっても水質を正確に測定することが可能な水質サンプリング装置および水質サンプリング方法の提供。
【解決手段】被測定水を導入する受水槽3と、受水槽3から溢れ出る被測定水の一部を所定時間導入して収容するサンプリング槽4とを有する水質サンプリング装置1であり、被測定水を受水槽3に導入し、受水槽3から溢れ出る被測定水の一部をサンプリング槽4に所定時間導入して収容し、サンプリング槽4内に収容された被測定水を所定時間の平均サンプルとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化槽などの水質を測定するための水質サンプリング装置および水質サンプリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄化槽が正常な機能を発揮するためには、適正な維持管理が必要である。浄化槽は微生物の働きを利用して汚水を浄化するため、維持管理を適正に行わない場合、その機能が低下し、水質汚濁の原因となる。そのため、浄化槽には、保守点検、清掃や法定検査といった維持管理が法律で定められている。
【0003】
従来、浄化槽を設置する住宅、店舗、工場や学校などからの排水基準値やBODなどは、放流槽から随時サンプリングして解析するようにしている。ところが、浄化槽は汚水の排出特性(時間帯別の流入汚水量など)を検討して計画および設計されているが、排出特性の実体が計画と一致しない場合もあり、詳細な解析を行うことが困難である。
【0004】
従来の水質測定方法としては、例えば特許文献1〜4に記載されたものが知られている。特許文献1には、1時間ごとに排水処理槽内の排水の窒素濃度を測定し、24時間で1日24個の排水処理槽内の排水の窒素濃度の値を測定し、これらの24個の平均値を求めることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、塩素濃度計が使用可能な流量を確保したバイパスを設け、その水路部に塩素濃度計を配設して有効塩素濃度を測定し、測定された有効塩素濃度の特定時間内における平均値を算出することが記載されている。また、特許文献3には、NH4−N濃度を求める対象の処理期間においてN回のバッチ操作を行い、N回の平均値を求めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−325985号公報(第0071段落)
【特許文献2】特開2002−1341号公報(第0021、0025段落)
【特許文献3】特開2002−224696号公報(第0083段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の水質測定方法は、いずれも単位時間ごとに濃度を非連続に測定しておき、その平均値を求めることで平均濃度を測定するものである。そのため、単位時間内で実濃度が大きく変化するような場合には測定値と大きく乖離する可能性があり、測定精度も悪い。
【0008】
そこで、本発明においては、排出特性が定まらない場合であっても水質を正確に測定することが可能な水質サンプリング装置および水質サンプリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水質サンプリング装置は、被測定水を導入する受水槽と、受水槽から溢れ出る被測定水の一部を所定時間導入して収容するサンプリング槽とを有するものである。また、本発明の水質サンプリング方法は、被測定水を受水槽に導入すること、受水槽から溢れ出る被測定水の一部をサンプリング槽に所定時間導入して収容すること、サンプリング槽内に収容された被測定水を所定時間の平均サンプルとすることを特徴とする。
【0010】
これらの発明により、被測定水を受水槽に導入し、受水槽から溢れ出る被測定水の一部をサンプリング槽に所定時間導入して収容し、サンプリング槽内に収容された被測定水を所定時間の平均サンプルとすることができる。
【0011】
ここで、受水槽とサンプリング槽との間には、受水槽から溢れ出る被測定水の一部を通過させる開口部を有することが望ましい。これにより、受水槽から溢れ出る被測定水のうち、この受水槽とサンプリング槽との間の開口部を通過した一部の被測定水のみがサンプリング槽に導入されて収容される。
【0012】
また、開口部は、受水槽とサンプリング槽との間に配置され、かつ受水槽の側壁よりも高く形成された仕切板に設けられたものであることが望ましい。これにより、受水槽に導入され、受水槽の側壁から溢れ出た被測定水は、この側壁よりも高く形成された仕切板に設けられた開口部からのみサンプリング槽に流入し、この開口部以外の部分では仕切板に阻止される。
【0013】
また、開口部は、仕切板に形成された幅可変のスリットであることが望ましい。これにより、仕切板に形成されたスリットの幅を変更することで、平均サンプルの取得時間に応じてサンプリング槽に導入される被測定水の量を調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
(1)被測定水を受水槽に導入し、受水槽から溢れ出る被測定水の一部をサンプリング槽に所定時間導入して収容する構成により、サンプリング槽内に収容された被測定水を所定時間の平均サンプルとすることができる。こうして得られた所定時間の平均サンプルは、連続的に被測定水の一部を収集したものであるため、水質を正確に測定することが可能となる。
【0015】
(2)受水槽とサンプリング槽との間に、受水槽から溢れ出る被測定水の一部を通過させる開口部を有することにより、受水槽から溢れ出る被測定水のうち、この受水槽とサンプリング槽との間の開口部を通過した一部の被測定水のみがサンプリング槽に導入されて収容されるので、簡易な構成により水質を正確に測定することが可能となる。
【0016】
(3)開口部が、受水槽とサンプリング槽との間に配置され、かつ受水槽の側壁よりも高く形成された仕切板に設けられたものであることにより、受水槽に導入され、受水槽の側壁から溢れ出た被測定水は、この側壁よりも高く形成された仕切板に設けられた開口部からのみサンプリング槽に流入し、この開口部以外の部分では仕切板に阻止されるので、仕切板に開口部を形成するという簡易な構成により水質を正確に測定することが可能となる。
【0017】
(4)開口部が、仕切板に形成された幅可変のスリットであることにより、仕切板に形成されたスリットの幅を変更することで、平均サンプルの取得時間に応じてサンプリング槽に導入される被測定水の量を容易に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における浄化槽の水質サンプリング装置の概略構成図である。
【図2】図1の水質サンプリング装置の拡大図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態における浄化槽の水質サンプリング装置の概略構成図、図2は図1の水質サンプリング装置の集水槽の拡大図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【0020】
図1において、本発明の実施の形態における水質サンプリング装置1は、被測定水としての家庭排水(以下、「排水」と称す。)を収集する原水槽Rから排水を汲み上げるポンプ2と、ポンプ2により汲み上げた排水を導入する受水槽3と、受水槽3から溢れ出る排水の一部を導入して収容するサンプリング槽4と、ポンプ2により汲み上げた排水を受水槽3まで送る配管5と、配管5の途中に設けられた電磁弁6とを備えている。
【0021】
図2に示すように、受水槽3とサンプリング槽4とは、1つの集水槽7内に一体に設けられている。集水槽7は略直方体状であり、4つの側板7a,7b,7c,7dと、底板7eと、4つの側板7a〜7dの上端辺周り、すなわち集水槽7の上部開口部周りに形成された鍔板7fと、集水槽7内を仕切る仕切板8とから形成されている。
【0022】
仕切板8は、受水槽3とサンプリング槽4との間に配置され、共通の側壁を構成している。すなわち、受水槽3の側壁は側板7a,7b,7dおよび仕切板8であり、サンプリング槽4の側壁は側板7b,7c,7dおよび仕切板8である。なお、仕切板8は、側板7a〜7dよりも高く形成されている。
【0023】
また、仕切板8には、受水槽3から溢れ出る排水の一部を通過させる開口部としてのスリット8aが形成されている。スリット8aは、水平方向にスライド可能なプレート8bによってその幅を変更可能となっている。また、スリット8aは、仕切板8の上部に受水槽3側の側板7a,7b,7dの高さまで切り込んで形成されている。
【0024】
したがって、受水槽3から溢れ出た排水は、受水槽3側の側板7a,7b,7dの上端から集水槽7の外側に流出するとともに、スリット8aを通過してサンプリング槽4へ流入する。このとき、受水槽3側の側板7b,7dの上端から排水がサンプリング槽4へ浸入しないように、仕切板8の上部は図2(a)に示すように平面視で略コの字状に形成されている。
【0025】
上記構成の水質サンプリング装置1では、原水槽Rに流入する排水を、サンプリング期間(例えば24時間)中、常時、ポンプ2により汲み上げ、配管5および電磁弁6を通じて受水槽3に導入する。そして、この受水槽3から溢れ出る排水の一部は、スリット8aを通過してサンプリング槽4に導入される。そして、サンプリング期間が終了すると、電磁弁6を閉じる。こうして得られたサンプリング期間の排水は、サンプリング期間中、連続的に排水の一部を収集したものであるため、このサンプリング期間中の排水の平均サンプルであり、この平均サンプルにより水質を正確に測定することが可能である。
【0026】
また、この水質サンプリング装置1では、プレート8bをスライドさせて、仕切板8に形成されたスリット8aの幅を変更することで、平均サンプルの取得時間に応じてサンプリング槽4に導入される排水の量を容易に調整することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態における水質サンプリング装置1は、原水槽Rにレベル計9を設け、このレベル計9による検出結果に基づいて、原水槽Rに導入された排水が所定量の範囲内にあるときのみポンプ2を駆動し、電磁弁6を開く構成とすることも可能であり、自動的にポンプ2および電磁弁6を作動させて測定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の水質サンプリング装置および水質サンプリング方法は、住宅、店舗、工場や学校などに設置された浄化槽の他、水質検査が必要な水域の水質を測定するための装置および方法として有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 水質サンプリング装置
2 ポンプ
3 受水槽
4 サンプリング装置
5 配管
6 電磁弁
7 集水槽
8 仕切板
9 レベル計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定水を導入する受水槽と、
前記受水槽から溢れ出る前記被測定水の一部を所定時間導入して収容するサンプリング槽と
を有する水質サンプリング装置。
【請求項2】
前記受水槽と前記サンプリング槽との間に前記受水槽から溢れ出る前記被測定水の一部を通過させる開口部を有する請求項1記載の水質サンプリング装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記受水槽と前記サンプリング槽との間に配置され、かつ前記受水槽の側壁よりも高く形成された仕切板に設けられたものである請求項2記載のサンプリング装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記仕切板に形成された幅可変のスリットである請求項3記載のサンプリング装置。
【請求項5】
被測定水を受水槽に導入すること、
前記受水槽から溢れ出る前記被測定水の一部をサンプリング槽に所定時間導入して収容すること、
前記サンプリング槽内に収容された前記被測定水を前記所定時間の平均サンプルとすること
を含む水質サンプリング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−179981(P2011−179981A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44698(P2010−44698)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(501046800)
【Fターム(参考)】