水路ブロック製造用型枠
【課題】土留め用の壁部を一体に有する水路ブロックが製造できる型枠を提供する。
【解決手段】型枠10は、ベース11と、ベース11に開閉自在に設けられた左側板12及び右側板13と、ベース11に開閉自在に設けられた前妻板14及び後妻板15と、流水路用中子16とを備えると共に、流水路用中子16の下側に頂版部CBcの厚さに相当する間隔をおいて配された固定上板部17aと該固定上板部17aとほぼ直角を成す可変側板部17bとを有する逆L字形の壁部用中子17と、壁部用中子17の可変側板部17bを壁部CBfの厚さを規定する定常位置から内側に変位させ、且つ、内側に変位した位置から定常位置に復帰させ得る第1変位機構18とを備える。
【解決手段】型枠10は、ベース11と、ベース11に開閉自在に設けられた左側板12及び右側板13と、ベース11に開閉自在に設けられた前妻板14及び後妻板15と、流水路用中子16とを備えると共に、流水路用中子16の下側に頂版部CBcの厚さに相当する間隔をおいて配された固定上板部17aと該固定上板部17aとほぼ直角を成す可変側板部17bとを有する逆L字形の壁部用中子17と、壁部用中子17の可変側板部17bを壁部CBfの厚さを規定する定常位置から内側に変位させ、且つ、内側に変位した位置から定常位置に復帰させ得る第1変位機構18とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路構造物を構築する際に用いられる水路ブロックを製造するための型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
水路構造物を構築する際に用いられる水路ブロックは、一般に、左側版部,右側版部,頂版部,底版部及びこれらで囲まれた流水路を有する。構築される水路構造物に土留め用の壁部が必要な場合には所定形状の平板状ブロックを別途製造して、該平板状ブロックを頂版部の一側部にボルト等によって取り付ける作業が適宜施されている。
【特許文献1】特開2004−346678
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
土留め用の平板状ブロック(壁部)を頂版部の一側部に取り付ける作業は労力と時間を必要とするため、同作業によって水路構造物を構築する際のコストが増加してしまう。要するに、土留め用の壁部を一体に有する水路ブロックが製造できる型枠が提供できれば、水路構造物を構築する際に前記平板状ブロックを取り付ける作業を不要にして、水路構造物を構築する際のコストを低減できる。
【0004】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、土留め用の壁部を一体に有する水路ブロックが製造できる型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、左側版部,右側版部,頂版部,底版部及びこれらで囲まれた流水路と頂版部の一側部上に左側版部と右側版部のうちの一方と外側面を共有する土留め用の壁部とを有する水路ブロックを天地逆向きに製造するための型枠であって、ベースと、ベースに開閉自在に設けられた左側板及び右側板と、ベースに開閉自在に設けられた前妻板及び後妻板と、流水路用中子とを備えると共に、流水路用中子の下側に頂版部の厚さに相当する間隔をおいて配された固定上板部と該固定上板部とほぼ直角を成す可変側板部とを有する逆L字形の壁部用中子と、壁部用中子の可変側板部を壁部の厚さを規定する定常位置から内側に変位させ、且つ、内側に変位した位置から定常位置に復帰させ得る第1変位機構とを備える。
【0006】
この型枠によれば、水路ブロックを型枠から取り出すときに第1変位機構を利用して壁部用中子の可変側板部を内側に変位できるので、可変側板部を有しない固定式の壁部用中子を用いる場合に比べて、壁部が壁部用中子から相対的に離反するときに該壁部、特に頂版部との境界部分にクラックを生じるような応力が加わることを防止できる。これにより、土留め用の壁部一体に有する水路ブロックを良好に製造できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、土留め用の壁部を一体に有する水路ブロックが製造できる型枠を提供できる。
【0008】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[第1実施形態]
図1〜図9は本発明の第1実施形態を示す。図1は型枠の斜視図、図2は図1に示した型枠から前妻板を取り外した状態を示す型枠の前面図、図3は図2に示した壁部用中子及び第1変位機構の拡大図、図4は図3に示した壁部用中子の動作説明図、図5は図2に示した可動底板及び第2変位機構の拡大図、図6は図5に示した可動底板及び第2変位機構の側面図、図7及び図8は図1に示した型枠による水路ブロックの製造プロセスの説明図、図9は図1に示した型枠により製造された水路ブロックの斜視図である。以下の説明では、説明の便宜上、図1の手前側を左、奥側を右、左側を前、右側を後と表記する。
【0010】
まず、図1〜図6を参照して、土留め用の壁部(図9の符号CBf参照)を一体に有する水路ブロック(図9の符号CB参照)が製造できる型枠のメカニズムについて説明する。
【0011】
図に示した型枠10は、ベース11と、左側板12と、右側板13と、前妻板14と、後妻板15と、流水路用中子16と、流水路用中子16を変位させる機構(図示省略)と、壁部用中子17と、壁部用中子17を変位させる第1変位機構18と、可動底板19と、可動底板19を変位させる第2変位機構20とを備える。
【0012】
ベース11は、平板状の上板部11aと、平板状の下板部11bと、上板部11aと下板部11bとを結合する平板状の縦板部11cと、上板部11aと下板部11bとの間に形成されたスライド用の空洞11dとを有する。下板部11bは左側板12側に延長されていて、その上面には前後に間隔をおいて左右方向を向く2つのガイドレール11b1が設けられている。空洞11dは後述する左側板12の走行部12bが出入りするためのもので、その形状は略直方体形を成す。また、上板部11aの上面には複数の支持アーム11eが設けられている。
【0013】
左側板12は縦断面が略L字形状を成し、上部に縦断面L字形の張出部12aを有し、下部に平板状の走行部12bを有し、走行部12bの前後側面に2つの走行ローラ12cをそれぞれ有している。走行部12bは左側板12の内側面と直角を成している。走行部12bに設けられた各走行ローラ12cはベース11のガイドレール11b1にその一部が嵌り込んだ状態でガイドされるため、左側板12はガイドレール11b1に沿う左右方向、つまり、水路ブロックCB(図9参照)の左側版部CBa及び壁部CBfの外側面と直交する方向にスライドすることによってその開閉を行い得る。
【0014】
右側板13は略矩形状を成し、下面に複数(図中は2つ)の支持アーム13aを有している。各支持アーム13aはベース11の上板部11aの右側の支持アーム11eにそれぞれ回転自在に支持されている。
【0015】
前妻板14は略矩形状を成し、上部左側に左側板12の張出部12aに対応した矩形状の張出部14aを有し、流水路用中子16の前端が嵌り込む孔14bを有し、下面に複数(図中は2つ)の支持アーム14cを有している。各支持アーム14cはベース11の上板部11aの前側の支持アーム11eにそれぞれ回転自在に支持されている。また、前妻板14の内側面における可動底板19の前端当接箇所には、合成ゴム製のパッキン(図示省略)が該内側面と面一状態で設けられている。
【0016】
後妻板15は略矩形状を成し、上部左側に左側板12の張出部12aに対応した矩形状の張出部15aを有し、流水路用中子16の後端が嵌り込む孔15bを有し、下面に複数(図中は2つ)の支持アーム15cを有している。各支持アーム15cはベース11の上板部11aの後側の支持アーム11eにそれぞれ回転自在に支持されている。また、後妻板15の内側面における可動底板19の後端当接箇所には、合成ゴム製のパッキン(図示省略)が該内側面と面一状態で設けられている。
【0017】
流水路用中子16は略矩形筒形状を成し、前妻板14の孔14bと後妻板15の孔15bのその前後端を嵌め込んだ状態で取り付けられる。この流水路用中子16は分断箇所の両側の内側変位と復帰を可能とした形状を有しおり、その内側には該変位及び復帰を行うための機構(図示省略)が設けられているが、何れも公知のものと同じであるのでここで説明を省略する。
【0018】
壁部用中子17は縦断面が逆L字形状を成し、平板状の固定上板部17aと、ハンチ部(符号無し)と、固定上板部17aとほぼ直角を成す可変側板部17bと、固定上板部17aをベース17c上に支持する複数(図中は2つ)の脚部17cとを有する。固定上板部17a,ハンチ部及び可変側板部17bは、型閉じ状態の前妻板14の内側面と後妻板15の内側面に当接する前後長さを有している。固定上板部17aと型閉じ状態の前妻板14と後妻板15に取り付けられた流水路用中子16との間隔は、水路ブロックCB(図9参照)の頂版部CBcの厚さに相当する。また、可変側板部17bが図2及び図3に示す定常位置にあるとき、該可変側板部17bと型閉じ状態の左側板12との間隔は、水路ブロックCB(図9参照)の壁部CBfの厚さに相当する。
【0019】
第1変位機構18は、ベース11の上板部11aの上面に前後に間隔をおいて立設された複数の支持板18aと、各支持板18aに回転自在に設けられたシャフト18bと、シャフト18bの前端及び後端の少なくとも一方に設けられた6角柱状の操作部(図示省略)と、シャフト18bに前後に間隔をおいて固定された第1リンク18cと、各第1リンク18cにその一端を回転自在に支持された複数の第2リンク18dと、壁部用中子17の可変側板部17bの内側面下部に前後に間隔をおいて設けられ各第2リンク18dの他端が回転自在に軸支されたブラケット18eとを有する。
【0020】
図4に示すように、第1変位機構18の操作部を適当な治具を用いて左方向に略90度回転させると、シャフト18bと一緒に回転する各第1リンク18cによって各第2リンク18dが変位し、該変位によって壁部用中子17の可変側板部17b及びハンチ部が定常位置から内側に撓むようにして変位する。また、第1変位機構18の右方向に略90度回転させて復帰させると、シャフト18bと一緒に回転する各第1リンク18cによって各第2リンク18dが変位し、壁部用中子17の可変側板部17bが内側に変位した位置から定常位置に復帰する。
【0021】
可動底板19は矩形板状を成し、左側板12と壁部用中子17の可変側板部17bとの間に配されていて水路ブロックCB(図9参照)の壁部CBfの上面を形成し得る。この可動底板19は、型閉じ状態の前妻板14の内側面のパッキンと後妻板15の内側面のパッキンに当接する前後長さを有し、定常位置にある壁部用中子17の可変側板部17bと型閉じ状態の左側板12の内側面に当接する左右幅を有する。また、可動底板19の下面の前後位置の左右には長穴付きのブラケット19aが計4つ設けられている。
【0022】
第2変位機構20は、ベース11の上板部11aに前後方向に間隔をおいて2つ設けられている。各第2変位機構20は、ベース11の上板部11aの上面に立設された第1支持部20aと、第1支持部20aの内側に立設された第2支持部20bと、両支持部20a及び20bの左右中央に回転自在に設けられたネジロッド20cと、ネジロッド20cの外側端に設けられた6角柱状の操作部20c1と、ネジロッド20cに螺合されたナット20dと、第1支持部20aの左右両側にその一端を回転自在に支持された2つの第1リンク20eと、第2支持部20bの左右両側にその一端を回転自在に支持されその略中間位置に各第1リンク20eの他端が回転自在に支持された2つの第2リンク20fとを有しており、各第2リンク20fの他端は可動底板19の下面に設けられた計4つのブラケット19aの長穴にそれぞれ回転自在に支持されている。
【0023】
2つの第2変位機構20は可動底板19の前部と後部にそれぞれ対応して設けられているため、前側の第2変位機構20の操作部20c1を適当な治具を用いて所定方向に回転させると、ネジロッド20cの回転によってナット20dが前後に移動して両リンク20e及び20fの形態が変化し、該変化によって可動底板19の前部が昇降する。また、後側の第2変位機構20の操作部20c1を所定方向に回転させると、ネジロッド20cの回転によってナット20dが前後に移動して両リンク20e及び20fの形態が変化し、該変化によって可動底板19の前部が昇降する。つまり、各第2変位機構20の操作部20c1の回転方向及び回転量を同じにすれば可動底板19の高さを変化でき、各第2変位機構20の操作部20c1の回転方向及び回転量を異ならせれば可動底板19の前後方向の傾斜角度を変化できる。
【0024】
次に、図7及び図8を参照して、前記型枠10によって土留め用の壁部(図9の符号CBf参照)を一体に有する水路ブロック(図9の符号CB参照)を製造するプロセスについて説明する。
【0025】
水路ブロックCBを製造するに際しては、型開き状態の型枠10において2つの第2変位機構20を利用して可動底板19の高さ及び傾斜角度を設定すると共に、第1変位機構18を利用して壁部用中子17の可変側板部17bを定常位置に復帰させる。
【0026】
そして、左側板12をスライドによって閉じ、且つ、右側板13を回転によって閉じ、続いて、前妻板14及び後妻板15をそれぞれ回転によって閉じてそれぞれの内側面を左側板12及び右側板13の前後面に当接させる。図示を省略してあるが、左側板12及び右側板13と前妻板14及び後妻板15には嵌め合いによって両者の位置決めを行うための凹部及び凸部がそれぞれ設けられている。
【0027】
そして、内側変位状態の流水路用中子16を妻板14の孔14bと後妻板15の孔15bに前後一方から挿入して該流水路用中子16の形状を復帰させて、前妻板14の孔14bと後妻板15の孔15bにその前後端を嵌め込んだ状態で取り付ける。
【0028】
そして、前妻板14と後妻板15を図示省略の型締め機構によって内側に締め付ける。この型閉じ状態では、壁部用中子17の固定上板部17a,ハンチ部及び可変側板部17bの前端が前妻板14の内側面に当接し後端が後妻板15の内側面に当接する。また、可動底板19の前端が前妻板14の内側面のパッキンに当接し後端が後妻板15の内側面のパッキンに当接すると共に、可動底板19の左端が左側板12の内側面に当接し右端が壁部用中子17の可変側板部17bの外側面に当接する。
【0029】
型閉じ後は左側板12と右側板13と前妻板14と後妻板15と流水路用中子16と壁部用中子17と可動底板19とによって囲まれる空間にコンクリートを打設して養生して所期の水路ブロックCBを型枠10内で作製する(図7参照)。
【0030】
水路ブロックCBが作製された後は、図示省略の型締め機構を緩めてから流水路用中子16を内側に変位させて妻板14の孔14bと後妻板15の孔15bの前後一方から抜き出すと共に、第1変位機構18を利用して壁部用中子17の可変側板部17bを内側に変位させて該可変側板部17b及びハンチ部を水路ブロックCBの壁部CBfから離反させる(図8参照)。
【0031】
そして、前妻板14及び後妻板15をそれぞれ回転によって開いて水路ブロックCBの前後端面から離反させ、続いて、左側板12をスライドによって開き、且つ、右側板13を回転によって開いて水路ブロックCBの左右外側面から離反させる(図8参照)。
【0032】
そして、水路ブロックCBを図示省略のクレーン等を用いて取り出す(図8参照)。この取り出し時には、水路ブロックCBを真上に持ち上げてもよいが、壁部CBfの損傷を極力回避するために図8に矢印で示すように好ましくは水路ブロックCBを斜めに持ち上げてから真上に持ち上げる方法を採用する。
【0033】
以上で図9に示す水路ブロックCB、即ち、土留め用の壁部CBfを一体に有する水路ブロックCBの一連の製造プロセスを完了する。
【0034】
図9に示した水路ブロックCBは、左側版部CBa,右側版部CBb,頂版部CBc,底版部CBd及びこれらで囲まれた流水路CBeを有すると共に、頂版部CBcの一側部上(左側版部CBa上)に左側版部CBaと外側面を共有する土留め用の壁部CBfを有し、また、底版部CBdの左側版部CBa側に矩形板状の延長部CBgを有する。壁部CBfの厚さは可動底板19の左右幅に一致し前後長さは可動底板19の前後長さに一致しており、高さは壁部用中子17の固定上板部17aと可動底板19の間隔に一致している。因みに、土留め用の壁部CBfの頂版部CBcの上面からの高さは土留めを行うに必要な高さに設定されており、具体的な数値を挙げれば500mm前後或いはそれ以上である。また、延長部CBgの厚さは左側板12の張出部12aの内側形状に合致し前後長さは左側板12の前後長さに一致している。
【0035】
このように、前記型枠10によれば、水路ブロックCBを型枠10から取り出すときに第1変位機構18を利用して壁部用中子17の可変側板部17b及びハンチ部を内側に撓ませて変位できるので、可変側板部17bを有しない固定式の壁部用中子を用いる場合に比べて、壁部CBfが壁部用中子17から相対的に離反するときに該壁部CBf、特に頂版部CBcとの境界部分にクラックを生じるような応力が加わることを防止できる。これにより、土留め用の壁部CBfを一体に有する水路ブロックCBを良好に製造できる。
【0036】
また、前記型枠10によれば、水路ブロックCBを型枠10から取り出すときに左側板12を左側版部CBa及び壁部CBfの外側面と直交する方向にスライドさせて開くことができるので、壁部CBfの存在によって左側板12の内側面と水路ブロックCBの密着面積が大きくなっても該左側板12が左側版部CBa及び頂版部CBcの外側面から離反するときに該左側版部CBa及び頂版部CBc、特に頂版部CBcとの境界部分にクラックを生じるような応力が加わることを防止できる。これにより、土留め用の壁部CBfを一体に有する水路ブロックCBをより一層良好に製造できる。
【0037】
さらに、前記型枠10によれば、水路ブロックCBの壁部CBfの上面を形成する可動底板19の高さ及び傾斜角度を2つの第2変位機構20を利用して任意に設定できるので、1つの型枠10によって壁部CBfの高さ及び傾斜角度が異なる水路ブロックCBを製造できる。
【0038】
[第2実施形態]
図10及び図11は本発明の第2実施形態を示す。図10は型枠から前妻板を取り外した状態を示す型枠の前面図、図11は図10に示した型枠により製造された水路ブロックの斜視図である。以下の説明では、説明の便宜上、図10の手前側を前、奥側を後、左側を右、右側を左と表記する。
【0039】
図10に示した型枠10’が第1実施形態の型枠10と異なるところは、水路ブロックCB’(図11参照)の左側版部CBaに流水路CBeに至る複数(図中は6つ)の入水孔CBhを形成するための同数の入れ子21を左側板12の内側面に設けた点にあり、各入れ子21は略平板状を成していてその周囲に抜きテーパを有する。他の構成は第1実施形態の型枠10と同じであるので同一符号を用いてその説明を省略する。
【0040】
第1実施形態と同様の製造プロセスの途中で左側板12をスライドによって開くと、該左側板12の内側面に設けられている各入れ子21は左側板12と同じ方向に移動して水路ブロックCBの左側版部CBaから抜け出し、該左側版部CBaに複数の入水孔CBhが形成される(図10参照)。
【0041】
このように、前記型枠10’によれば、左側版部CBa及び壁部CBfの外側面と直交する方向にスライドして開閉する左側板21の内側面に左側版部CBaに入水孔CBhを形成するための入れ子21を設けてあるので、左側板を回転させて開く場合に比べて、各入れ子21の抜きテーパーを小さくでき、且つ、各入水孔CBhも綺麗に形成できる。他の作用効果は第1実施形態の型枠10で得られる作用効果と同じである。
【0042】
[第3実施形態]
図12及び図13は本発明の第3実施形態を示す。図12は壁部用中子及び第1変位機構の拡大図、図13は図12のa−a線矢視図である。
【0043】
図12及び図13に示した型枠が第1実施形態の型枠10と異なるところは、壁部用中子17の代わりに固定上板部17a’と可変側板部17b’が別体で構成された壁部用中子17’を用いた点と、第1変位機構18の代わりに壁部用中子17’の可動壁板部17b’を左右方向に変位させる第1変位機構22を用いた点にある。他の構成は第1実施形態の型枠10と同じであるので同一符号を用いてその説明を省略する。
【0044】
壁部用中子17’は、平板状の固定上板部17a’と、ハンチ部(符号無し)と、固定上板部17a’とほぼ直角を成す可変側板部17b’と、固定上板部17a’をベース17c上に支持する複数(図中は2つ)の脚部17c’とを有する。固定上板部17a’と可変側板部17b’とはハンチ部に形成した前後方向の分断ライン(符号無し)を境として分離している。固定上板部17a’,ハンチ部及び可変側板部17b’は、型閉じ状態の前妻板14の内側面と後妻板15の内側面に当接する前後長さを有している。固定上板部17a’と型閉じ状態の前妻板14と後妻板15に取り付けられた流水路用中子16との間隔は、水路ブロックCB(図9参照)の頂版部CBcの厚さに相当する。また、可変側板部17b’が図12に実線で示す定常位置にあるとき、該可変側板部17b’と型閉じ状態の左側板12との間隔は、水路ブロックCB(図9参照)の壁部CBfの厚さに相当する。
【0045】
第1変位機構22は、壁部用中子17’の一方の脚部17c’の左側面の前後に設けられた2つの第1支持部22aと、壁部用中子17’の一方の脚部17c’の左側面の各第1支持部22aの内側に設けられた2つの第2支持部22bと、各支持部22a及び22bの上下中央に回転自在に設けられたネジロッド22cと、ネジロッド22cの前後両端にそれぞれ設けられた6角柱状の操作部22c1と、ネジロッド22cにおける第1支持部22aと第2支持部22bとの間それぞれに設けられたネジ溝の向きが異なる2つのナット22dと、各第1支持部22aの上下両側にその一端を回転自在に支持された計4つの第1リンク22eと、各第2支持部22bの上下両側にその一端を回転自在に支持されその略中間位置に各第1リンク22eの他端が回転自在に支持された計4つの第2リンク22fとを有しており、各第2リンク22fの他端は壁部用中子17’の可変側板部17b’の内側面に設けられた計4つのブラケット17b1’の長穴にそれぞれ回転自在に支持されている。
【0046】
第1変位機構22は単一のネジロッド22cを有するものであるため、一方の操作部22c1を所定方向に回転させると、ネジロッド22cの回転によって2つのナット22dが互いに逆方向に前後に移動して前後のリンク22e及び22fの形態が変化し、該変化によって壁部用中子17’の可変側板部17b’が左右に平行移動する。つまり、一方の操作部22c1を所定方向に回転させれば、壁部用中子17’の可変側板部17b’及びハンチ部の一部が定常位置から内側に平行移動するように変位でき(図12の2点鎖線参照)、また、一方の操作部22c1を逆方向に回転させれば、壁部用中子17’の可変側板部17b’及びハンチ部の一部を内側に変位した位置から定常位置に平行移動させて復帰できる。
【0047】
水路ブロックCBの製造プロセスは、壁部用中子17’の可変側板部17b’及びハンチ部の一部の平行移動によって変位する点を除き、第1実施形態と同時である。
【0048】
このように、前記型枠によれば、水路ブロックCBを型枠から取り出すときに第1変位機構22を利用して壁部用中子17’の可変側板部17b’及びハンチ部の一部を内側に平行移動させて変位できるので、可変側板部17bを有しない固定式の壁部用中子を用いる場合に比べて、壁部CBfが壁部用中子17から相対的に離反するときに該壁部CBf、特に頂版部CBcとの境界部分にクラックを生じるような応力が加わることを防止できる。これにより、土留め用の壁部CBfを一体に有する水路ブロックCBを良好に製造できる。
【0049】
また、前記型枠によれば、壁部用中子17’の可変側板部17bを平行移動によって壁部CBfから離反できるので、可変側板部17bを利用して壁部CBfの内側面に凹凸による模様を形成する場合でも該模様を綺麗に形成できる。他の作用効果は第1実施形態の型枠10で得られる作用効果と同じである。
【0050】
尚、前述の第1〜第3実施形態では、延長部CBgを備えた水路ブロックCB,CB’を製造するために型枠10,10’の左側板12としてその上部に張出部12aを有するものを示し、前妻板14及び後妻板15として該張出部12aに対応した張出部14a,15aを有するものを示したが、延長部CBgを有しない水路ブロックCB,CB’を製造する場合には左側板12,前妻板14及び後妻板15を張出部12a,14a,15aを有しないものに交換すればよい。
【0051】
また、前述の第1〜第3実施形態では、頂版部CBcの一側部上(左側版部CBa上)に左側版部CBaと外側面を共有する土留め用の壁部CBfを有する水路ブロックCB,CB’を示したが、型枠10,10’の構成を前面からみて左右対称となるように変更すれば、頂版部CBcの一側部上(右側版部CBb上)に右側版部CBbと外側面を共有する土留め用の壁部CBfを有する水路ブロックも製造できる。
【0052】
さらに、前述の第1〜第3実施形態では、前妻板14の内側面における可動底板19の前端当接箇所と後妻板15の内側面における可動底板19の後端当接箇所にパッキンを各内側面と面一状態で設けたが、前妻板14及び後妻板15の各内側面からパッキンをそれぞれ排除し該各パッキンの代用となる合成ゴム製のパッキンを可動底板19の前端及び後端に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、型枠の斜視図である。
【図2】図1に示した型枠から前妻板を取り外した状態を示す型枠の前面図である。
【図3】図2に示した壁部用中子及び第1変位機構の拡大図である。
【図4】図3に示した壁部用中子の動作説明図である。
【図5】図2に示した可動底板及び第2変位機構の拡大図である。
【図6】図5に示した可動底板及び第2変位機構の側面図である。
【図7】図1に示した型枠による水路ブロックの製造プロセスの説明図である。
【図8】図1に示した型枠による水路ブロックの製造プロセスの説明図である。
【図9】図1に示した型枠により製造された水路ブロックの斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態を示す、型枠から前妻板を取り外した状態を示す型枠の前面図である。
【図11】図10に示した型枠により製造された水路ブロックの斜視図である。
【図12】本発明の第3実施形態を示す、壁部用中子及び第1変位機構の拡大図である。
【図13】図12のa−a線矢視図である。
【符号の説明】
【0054】
10,10’…型枠、11…ベース、11b1…ガイドレール、12…左側板、12b…走行部、12c…走行ローラ、13…右側板、14…前妻板、15…後妻板、16…流水路用中子、17,17’…壁部用中子、17a,17a’…固定上板部、17b,17b’…可変側板部、18,22…第1変位機構、19…可動底板、20…第2変位機構、CB,CB’…水路ブロック、CBa…左側版部、CBb…右側版部、CBc…頂版部、CBd…底版部、CBe…流水路、CBf…壁部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路構造物を構築する際に用いられる水路ブロックを製造するための型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
水路構造物を構築する際に用いられる水路ブロックは、一般に、左側版部,右側版部,頂版部,底版部及びこれらで囲まれた流水路を有する。構築される水路構造物に土留め用の壁部が必要な場合には所定形状の平板状ブロックを別途製造して、該平板状ブロックを頂版部の一側部にボルト等によって取り付ける作業が適宜施されている。
【特許文献1】特開2004−346678
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
土留め用の平板状ブロック(壁部)を頂版部の一側部に取り付ける作業は労力と時間を必要とするため、同作業によって水路構造物を構築する際のコストが増加してしまう。要するに、土留め用の壁部を一体に有する水路ブロックが製造できる型枠が提供できれば、水路構造物を構築する際に前記平板状ブロックを取り付ける作業を不要にして、水路構造物を構築する際のコストを低減できる。
【0004】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、土留め用の壁部を一体に有する水路ブロックが製造できる型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、左側版部,右側版部,頂版部,底版部及びこれらで囲まれた流水路と頂版部の一側部上に左側版部と右側版部のうちの一方と外側面を共有する土留め用の壁部とを有する水路ブロックを天地逆向きに製造するための型枠であって、ベースと、ベースに開閉自在に設けられた左側板及び右側板と、ベースに開閉自在に設けられた前妻板及び後妻板と、流水路用中子とを備えると共に、流水路用中子の下側に頂版部の厚さに相当する間隔をおいて配された固定上板部と該固定上板部とほぼ直角を成す可変側板部とを有する逆L字形の壁部用中子と、壁部用中子の可変側板部を壁部の厚さを規定する定常位置から内側に変位させ、且つ、内側に変位した位置から定常位置に復帰させ得る第1変位機構とを備える。
【0006】
この型枠によれば、水路ブロックを型枠から取り出すときに第1変位機構を利用して壁部用中子の可変側板部を内側に変位できるので、可変側板部を有しない固定式の壁部用中子を用いる場合に比べて、壁部が壁部用中子から相対的に離反するときに該壁部、特に頂版部との境界部分にクラックを生じるような応力が加わることを防止できる。これにより、土留め用の壁部一体に有する水路ブロックを良好に製造できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、土留め用の壁部を一体に有する水路ブロックが製造できる型枠を提供できる。
【0008】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[第1実施形態]
図1〜図9は本発明の第1実施形態を示す。図1は型枠の斜視図、図2は図1に示した型枠から前妻板を取り外した状態を示す型枠の前面図、図3は図2に示した壁部用中子及び第1変位機構の拡大図、図4は図3に示した壁部用中子の動作説明図、図5は図2に示した可動底板及び第2変位機構の拡大図、図6は図5に示した可動底板及び第2変位機構の側面図、図7及び図8は図1に示した型枠による水路ブロックの製造プロセスの説明図、図9は図1に示した型枠により製造された水路ブロックの斜視図である。以下の説明では、説明の便宜上、図1の手前側を左、奥側を右、左側を前、右側を後と表記する。
【0010】
まず、図1〜図6を参照して、土留め用の壁部(図9の符号CBf参照)を一体に有する水路ブロック(図9の符号CB参照)が製造できる型枠のメカニズムについて説明する。
【0011】
図に示した型枠10は、ベース11と、左側板12と、右側板13と、前妻板14と、後妻板15と、流水路用中子16と、流水路用中子16を変位させる機構(図示省略)と、壁部用中子17と、壁部用中子17を変位させる第1変位機構18と、可動底板19と、可動底板19を変位させる第2変位機構20とを備える。
【0012】
ベース11は、平板状の上板部11aと、平板状の下板部11bと、上板部11aと下板部11bとを結合する平板状の縦板部11cと、上板部11aと下板部11bとの間に形成されたスライド用の空洞11dとを有する。下板部11bは左側板12側に延長されていて、その上面には前後に間隔をおいて左右方向を向く2つのガイドレール11b1が設けられている。空洞11dは後述する左側板12の走行部12bが出入りするためのもので、その形状は略直方体形を成す。また、上板部11aの上面には複数の支持アーム11eが設けられている。
【0013】
左側板12は縦断面が略L字形状を成し、上部に縦断面L字形の張出部12aを有し、下部に平板状の走行部12bを有し、走行部12bの前後側面に2つの走行ローラ12cをそれぞれ有している。走行部12bは左側板12の内側面と直角を成している。走行部12bに設けられた各走行ローラ12cはベース11のガイドレール11b1にその一部が嵌り込んだ状態でガイドされるため、左側板12はガイドレール11b1に沿う左右方向、つまり、水路ブロックCB(図9参照)の左側版部CBa及び壁部CBfの外側面と直交する方向にスライドすることによってその開閉を行い得る。
【0014】
右側板13は略矩形状を成し、下面に複数(図中は2つ)の支持アーム13aを有している。各支持アーム13aはベース11の上板部11aの右側の支持アーム11eにそれぞれ回転自在に支持されている。
【0015】
前妻板14は略矩形状を成し、上部左側に左側板12の張出部12aに対応した矩形状の張出部14aを有し、流水路用中子16の前端が嵌り込む孔14bを有し、下面に複数(図中は2つ)の支持アーム14cを有している。各支持アーム14cはベース11の上板部11aの前側の支持アーム11eにそれぞれ回転自在に支持されている。また、前妻板14の内側面における可動底板19の前端当接箇所には、合成ゴム製のパッキン(図示省略)が該内側面と面一状態で設けられている。
【0016】
後妻板15は略矩形状を成し、上部左側に左側板12の張出部12aに対応した矩形状の張出部15aを有し、流水路用中子16の後端が嵌り込む孔15bを有し、下面に複数(図中は2つ)の支持アーム15cを有している。各支持アーム15cはベース11の上板部11aの後側の支持アーム11eにそれぞれ回転自在に支持されている。また、後妻板15の内側面における可動底板19の後端当接箇所には、合成ゴム製のパッキン(図示省略)が該内側面と面一状態で設けられている。
【0017】
流水路用中子16は略矩形筒形状を成し、前妻板14の孔14bと後妻板15の孔15bのその前後端を嵌め込んだ状態で取り付けられる。この流水路用中子16は分断箇所の両側の内側変位と復帰を可能とした形状を有しおり、その内側には該変位及び復帰を行うための機構(図示省略)が設けられているが、何れも公知のものと同じであるのでここで説明を省略する。
【0018】
壁部用中子17は縦断面が逆L字形状を成し、平板状の固定上板部17aと、ハンチ部(符号無し)と、固定上板部17aとほぼ直角を成す可変側板部17bと、固定上板部17aをベース17c上に支持する複数(図中は2つ)の脚部17cとを有する。固定上板部17a,ハンチ部及び可変側板部17bは、型閉じ状態の前妻板14の内側面と後妻板15の内側面に当接する前後長さを有している。固定上板部17aと型閉じ状態の前妻板14と後妻板15に取り付けられた流水路用中子16との間隔は、水路ブロックCB(図9参照)の頂版部CBcの厚さに相当する。また、可変側板部17bが図2及び図3に示す定常位置にあるとき、該可変側板部17bと型閉じ状態の左側板12との間隔は、水路ブロックCB(図9参照)の壁部CBfの厚さに相当する。
【0019】
第1変位機構18は、ベース11の上板部11aの上面に前後に間隔をおいて立設された複数の支持板18aと、各支持板18aに回転自在に設けられたシャフト18bと、シャフト18bの前端及び後端の少なくとも一方に設けられた6角柱状の操作部(図示省略)と、シャフト18bに前後に間隔をおいて固定された第1リンク18cと、各第1リンク18cにその一端を回転自在に支持された複数の第2リンク18dと、壁部用中子17の可変側板部17bの内側面下部に前後に間隔をおいて設けられ各第2リンク18dの他端が回転自在に軸支されたブラケット18eとを有する。
【0020】
図4に示すように、第1変位機構18の操作部を適当な治具を用いて左方向に略90度回転させると、シャフト18bと一緒に回転する各第1リンク18cによって各第2リンク18dが変位し、該変位によって壁部用中子17の可変側板部17b及びハンチ部が定常位置から内側に撓むようにして変位する。また、第1変位機構18の右方向に略90度回転させて復帰させると、シャフト18bと一緒に回転する各第1リンク18cによって各第2リンク18dが変位し、壁部用中子17の可変側板部17bが内側に変位した位置から定常位置に復帰する。
【0021】
可動底板19は矩形板状を成し、左側板12と壁部用中子17の可変側板部17bとの間に配されていて水路ブロックCB(図9参照)の壁部CBfの上面を形成し得る。この可動底板19は、型閉じ状態の前妻板14の内側面のパッキンと後妻板15の内側面のパッキンに当接する前後長さを有し、定常位置にある壁部用中子17の可変側板部17bと型閉じ状態の左側板12の内側面に当接する左右幅を有する。また、可動底板19の下面の前後位置の左右には長穴付きのブラケット19aが計4つ設けられている。
【0022】
第2変位機構20は、ベース11の上板部11aに前後方向に間隔をおいて2つ設けられている。各第2変位機構20は、ベース11の上板部11aの上面に立設された第1支持部20aと、第1支持部20aの内側に立設された第2支持部20bと、両支持部20a及び20bの左右中央に回転自在に設けられたネジロッド20cと、ネジロッド20cの外側端に設けられた6角柱状の操作部20c1と、ネジロッド20cに螺合されたナット20dと、第1支持部20aの左右両側にその一端を回転自在に支持された2つの第1リンク20eと、第2支持部20bの左右両側にその一端を回転自在に支持されその略中間位置に各第1リンク20eの他端が回転自在に支持された2つの第2リンク20fとを有しており、各第2リンク20fの他端は可動底板19の下面に設けられた計4つのブラケット19aの長穴にそれぞれ回転自在に支持されている。
【0023】
2つの第2変位機構20は可動底板19の前部と後部にそれぞれ対応して設けられているため、前側の第2変位機構20の操作部20c1を適当な治具を用いて所定方向に回転させると、ネジロッド20cの回転によってナット20dが前後に移動して両リンク20e及び20fの形態が変化し、該変化によって可動底板19の前部が昇降する。また、後側の第2変位機構20の操作部20c1を所定方向に回転させると、ネジロッド20cの回転によってナット20dが前後に移動して両リンク20e及び20fの形態が変化し、該変化によって可動底板19の前部が昇降する。つまり、各第2変位機構20の操作部20c1の回転方向及び回転量を同じにすれば可動底板19の高さを変化でき、各第2変位機構20の操作部20c1の回転方向及び回転量を異ならせれば可動底板19の前後方向の傾斜角度を変化できる。
【0024】
次に、図7及び図8を参照して、前記型枠10によって土留め用の壁部(図9の符号CBf参照)を一体に有する水路ブロック(図9の符号CB参照)を製造するプロセスについて説明する。
【0025】
水路ブロックCBを製造するに際しては、型開き状態の型枠10において2つの第2変位機構20を利用して可動底板19の高さ及び傾斜角度を設定すると共に、第1変位機構18を利用して壁部用中子17の可変側板部17bを定常位置に復帰させる。
【0026】
そして、左側板12をスライドによって閉じ、且つ、右側板13を回転によって閉じ、続いて、前妻板14及び後妻板15をそれぞれ回転によって閉じてそれぞれの内側面を左側板12及び右側板13の前後面に当接させる。図示を省略してあるが、左側板12及び右側板13と前妻板14及び後妻板15には嵌め合いによって両者の位置決めを行うための凹部及び凸部がそれぞれ設けられている。
【0027】
そして、内側変位状態の流水路用中子16を妻板14の孔14bと後妻板15の孔15bに前後一方から挿入して該流水路用中子16の形状を復帰させて、前妻板14の孔14bと後妻板15の孔15bにその前後端を嵌め込んだ状態で取り付ける。
【0028】
そして、前妻板14と後妻板15を図示省略の型締め機構によって内側に締め付ける。この型閉じ状態では、壁部用中子17の固定上板部17a,ハンチ部及び可変側板部17bの前端が前妻板14の内側面に当接し後端が後妻板15の内側面に当接する。また、可動底板19の前端が前妻板14の内側面のパッキンに当接し後端が後妻板15の内側面のパッキンに当接すると共に、可動底板19の左端が左側板12の内側面に当接し右端が壁部用中子17の可変側板部17bの外側面に当接する。
【0029】
型閉じ後は左側板12と右側板13と前妻板14と後妻板15と流水路用中子16と壁部用中子17と可動底板19とによって囲まれる空間にコンクリートを打設して養生して所期の水路ブロックCBを型枠10内で作製する(図7参照)。
【0030】
水路ブロックCBが作製された後は、図示省略の型締め機構を緩めてから流水路用中子16を内側に変位させて妻板14の孔14bと後妻板15の孔15bの前後一方から抜き出すと共に、第1変位機構18を利用して壁部用中子17の可変側板部17bを内側に変位させて該可変側板部17b及びハンチ部を水路ブロックCBの壁部CBfから離反させる(図8参照)。
【0031】
そして、前妻板14及び後妻板15をそれぞれ回転によって開いて水路ブロックCBの前後端面から離反させ、続いて、左側板12をスライドによって開き、且つ、右側板13を回転によって開いて水路ブロックCBの左右外側面から離反させる(図8参照)。
【0032】
そして、水路ブロックCBを図示省略のクレーン等を用いて取り出す(図8参照)。この取り出し時には、水路ブロックCBを真上に持ち上げてもよいが、壁部CBfの損傷を極力回避するために図8に矢印で示すように好ましくは水路ブロックCBを斜めに持ち上げてから真上に持ち上げる方法を採用する。
【0033】
以上で図9に示す水路ブロックCB、即ち、土留め用の壁部CBfを一体に有する水路ブロックCBの一連の製造プロセスを完了する。
【0034】
図9に示した水路ブロックCBは、左側版部CBa,右側版部CBb,頂版部CBc,底版部CBd及びこれらで囲まれた流水路CBeを有すると共に、頂版部CBcの一側部上(左側版部CBa上)に左側版部CBaと外側面を共有する土留め用の壁部CBfを有し、また、底版部CBdの左側版部CBa側に矩形板状の延長部CBgを有する。壁部CBfの厚さは可動底板19の左右幅に一致し前後長さは可動底板19の前後長さに一致しており、高さは壁部用中子17の固定上板部17aと可動底板19の間隔に一致している。因みに、土留め用の壁部CBfの頂版部CBcの上面からの高さは土留めを行うに必要な高さに設定されており、具体的な数値を挙げれば500mm前後或いはそれ以上である。また、延長部CBgの厚さは左側板12の張出部12aの内側形状に合致し前後長さは左側板12の前後長さに一致している。
【0035】
このように、前記型枠10によれば、水路ブロックCBを型枠10から取り出すときに第1変位機構18を利用して壁部用中子17の可変側板部17b及びハンチ部を内側に撓ませて変位できるので、可変側板部17bを有しない固定式の壁部用中子を用いる場合に比べて、壁部CBfが壁部用中子17から相対的に離反するときに該壁部CBf、特に頂版部CBcとの境界部分にクラックを生じるような応力が加わることを防止できる。これにより、土留め用の壁部CBfを一体に有する水路ブロックCBを良好に製造できる。
【0036】
また、前記型枠10によれば、水路ブロックCBを型枠10から取り出すときに左側板12を左側版部CBa及び壁部CBfの外側面と直交する方向にスライドさせて開くことができるので、壁部CBfの存在によって左側板12の内側面と水路ブロックCBの密着面積が大きくなっても該左側板12が左側版部CBa及び頂版部CBcの外側面から離反するときに該左側版部CBa及び頂版部CBc、特に頂版部CBcとの境界部分にクラックを生じるような応力が加わることを防止できる。これにより、土留め用の壁部CBfを一体に有する水路ブロックCBをより一層良好に製造できる。
【0037】
さらに、前記型枠10によれば、水路ブロックCBの壁部CBfの上面を形成する可動底板19の高さ及び傾斜角度を2つの第2変位機構20を利用して任意に設定できるので、1つの型枠10によって壁部CBfの高さ及び傾斜角度が異なる水路ブロックCBを製造できる。
【0038】
[第2実施形態]
図10及び図11は本発明の第2実施形態を示す。図10は型枠から前妻板を取り外した状態を示す型枠の前面図、図11は図10に示した型枠により製造された水路ブロックの斜視図である。以下の説明では、説明の便宜上、図10の手前側を前、奥側を後、左側を右、右側を左と表記する。
【0039】
図10に示した型枠10’が第1実施形態の型枠10と異なるところは、水路ブロックCB’(図11参照)の左側版部CBaに流水路CBeに至る複数(図中は6つ)の入水孔CBhを形成するための同数の入れ子21を左側板12の内側面に設けた点にあり、各入れ子21は略平板状を成していてその周囲に抜きテーパを有する。他の構成は第1実施形態の型枠10と同じであるので同一符号を用いてその説明を省略する。
【0040】
第1実施形態と同様の製造プロセスの途中で左側板12をスライドによって開くと、該左側板12の内側面に設けられている各入れ子21は左側板12と同じ方向に移動して水路ブロックCBの左側版部CBaから抜け出し、該左側版部CBaに複数の入水孔CBhが形成される(図10参照)。
【0041】
このように、前記型枠10’によれば、左側版部CBa及び壁部CBfの外側面と直交する方向にスライドして開閉する左側板21の内側面に左側版部CBaに入水孔CBhを形成するための入れ子21を設けてあるので、左側板を回転させて開く場合に比べて、各入れ子21の抜きテーパーを小さくでき、且つ、各入水孔CBhも綺麗に形成できる。他の作用効果は第1実施形態の型枠10で得られる作用効果と同じである。
【0042】
[第3実施形態]
図12及び図13は本発明の第3実施形態を示す。図12は壁部用中子及び第1変位機構の拡大図、図13は図12のa−a線矢視図である。
【0043】
図12及び図13に示した型枠が第1実施形態の型枠10と異なるところは、壁部用中子17の代わりに固定上板部17a’と可変側板部17b’が別体で構成された壁部用中子17’を用いた点と、第1変位機構18の代わりに壁部用中子17’の可動壁板部17b’を左右方向に変位させる第1変位機構22を用いた点にある。他の構成は第1実施形態の型枠10と同じであるので同一符号を用いてその説明を省略する。
【0044】
壁部用中子17’は、平板状の固定上板部17a’と、ハンチ部(符号無し)と、固定上板部17a’とほぼ直角を成す可変側板部17b’と、固定上板部17a’をベース17c上に支持する複数(図中は2つ)の脚部17c’とを有する。固定上板部17a’と可変側板部17b’とはハンチ部に形成した前後方向の分断ライン(符号無し)を境として分離している。固定上板部17a’,ハンチ部及び可変側板部17b’は、型閉じ状態の前妻板14の内側面と後妻板15の内側面に当接する前後長さを有している。固定上板部17a’と型閉じ状態の前妻板14と後妻板15に取り付けられた流水路用中子16との間隔は、水路ブロックCB(図9参照)の頂版部CBcの厚さに相当する。また、可変側板部17b’が図12に実線で示す定常位置にあるとき、該可変側板部17b’と型閉じ状態の左側板12との間隔は、水路ブロックCB(図9参照)の壁部CBfの厚さに相当する。
【0045】
第1変位機構22は、壁部用中子17’の一方の脚部17c’の左側面の前後に設けられた2つの第1支持部22aと、壁部用中子17’の一方の脚部17c’の左側面の各第1支持部22aの内側に設けられた2つの第2支持部22bと、各支持部22a及び22bの上下中央に回転自在に設けられたネジロッド22cと、ネジロッド22cの前後両端にそれぞれ設けられた6角柱状の操作部22c1と、ネジロッド22cにおける第1支持部22aと第2支持部22bとの間それぞれに設けられたネジ溝の向きが異なる2つのナット22dと、各第1支持部22aの上下両側にその一端を回転自在に支持された計4つの第1リンク22eと、各第2支持部22bの上下両側にその一端を回転自在に支持されその略中間位置に各第1リンク22eの他端が回転自在に支持された計4つの第2リンク22fとを有しており、各第2リンク22fの他端は壁部用中子17’の可変側板部17b’の内側面に設けられた計4つのブラケット17b1’の長穴にそれぞれ回転自在に支持されている。
【0046】
第1変位機構22は単一のネジロッド22cを有するものであるため、一方の操作部22c1を所定方向に回転させると、ネジロッド22cの回転によって2つのナット22dが互いに逆方向に前後に移動して前後のリンク22e及び22fの形態が変化し、該変化によって壁部用中子17’の可変側板部17b’が左右に平行移動する。つまり、一方の操作部22c1を所定方向に回転させれば、壁部用中子17’の可変側板部17b’及びハンチ部の一部が定常位置から内側に平行移動するように変位でき(図12の2点鎖線参照)、また、一方の操作部22c1を逆方向に回転させれば、壁部用中子17’の可変側板部17b’及びハンチ部の一部を内側に変位した位置から定常位置に平行移動させて復帰できる。
【0047】
水路ブロックCBの製造プロセスは、壁部用中子17’の可変側板部17b’及びハンチ部の一部の平行移動によって変位する点を除き、第1実施形態と同時である。
【0048】
このように、前記型枠によれば、水路ブロックCBを型枠から取り出すときに第1変位機構22を利用して壁部用中子17’の可変側板部17b’及びハンチ部の一部を内側に平行移動させて変位できるので、可変側板部17bを有しない固定式の壁部用中子を用いる場合に比べて、壁部CBfが壁部用中子17から相対的に離反するときに該壁部CBf、特に頂版部CBcとの境界部分にクラックを生じるような応力が加わることを防止できる。これにより、土留め用の壁部CBfを一体に有する水路ブロックCBを良好に製造できる。
【0049】
また、前記型枠によれば、壁部用中子17’の可変側板部17bを平行移動によって壁部CBfから離反できるので、可変側板部17bを利用して壁部CBfの内側面に凹凸による模様を形成する場合でも該模様を綺麗に形成できる。他の作用効果は第1実施形態の型枠10で得られる作用効果と同じである。
【0050】
尚、前述の第1〜第3実施形態では、延長部CBgを備えた水路ブロックCB,CB’を製造するために型枠10,10’の左側板12としてその上部に張出部12aを有するものを示し、前妻板14及び後妻板15として該張出部12aに対応した張出部14a,15aを有するものを示したが、延長部CBgを有しない水路ブロックCB,CB’を製造する場合には左側板12,前妻板14及び後妻板15を張出部12a,14a,15aを有しないものに交換すればよい。
【0051】
また、前述の第1〜第3実施形態では、頂版部CBcの一側部上(左側版部CBa上)に左側版部CBaと外側面を共有する土留め用の壁部CBfを有する水路ブロックCB,CB’を示したが、型枠10,10’の構成を前面からみて左右対称となるように変更すれば、頂版部CBcの一側部上(右側版部CBb上)に右側版部CBbと外側面を共有する土留め用の壁部CBfを有する水路ブロックも製造できる。
【0052】
さらに、前述の第1〜第3実施形態では、前妻板14の内側面における可動底板19の前端当接箇所と後妻板15の内側面における可動底板19の後端当接箇所にパッキンを各内側面と面一状態で設けたが、前妻板14及び後妻板15の各内側面からパッキンをそれぞれ排除し該各パッキンの代用となる合成ゴム製のパッキンを可動底板19の前端及び後端に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、型枠の斜視図である。
【図2】図1に示した型枠から前妻板を取り外した状態を示す型枠の前面図である。
【図3】図2に示した壁部用中子及び第1変位機構の拡大図である。
【図4】図3に示した壁部用中子の動作説明図である。
【図5】図2に示した可動底板及び第2変位機構の拡大図である。
【図6】図5に示した可動底板及び第2変位機構の側面図である。
【図7】図1に示した型枠による水路ブロックの製造プロセスの説明図である。
【図8】図1に示した型枠による水路ブロックの製造プロセスの説明図である。
【図9】図1に示した型枠により製造された水路ブロックの斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態を示す、型枠から前妻板を取り外した状態を示す型枠の前面図である。
【図11】図10に示した型枠により製造された水路ブロックの斜視図である。
【図12】本発明の第3実施形態を示す、壁部用中子及び第1変位機構の拡大図である。
【図13】図12のa−a線矢視図である。
【符号の説明】
【0054】
10,10’…型枠、11…ベース、11b1…ガイドレール、12…左側板、12b…走行部、12c…走行ローラ、13…右側板、14…前妻板、15…後妻板、16…流水路用中子、17,17’…壁部用中子、17a,17a’…固定上板部、17b,17b’…可変側板部、18,22…第1変位機構、19…可動底板、20…第2変位機構、CB,CB’…水路ブロック、CBa…左側版部、CBb…右側版部、CBc…頂版部、CBd…底版部、CBe…流水路、CBf…壁部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左側版部,右側版部,頂版部,底版部及びこれらで囲まれた流水路と頂版部の一側部上に左側版部と右側版部のうちの一方と外側面を共有する土留め用の壁部とを有する水路ブロックを天地逆向きに製造するための型枠であって、
ベースと、ベースに開閉自在に設けられた左側板及び右側板と、ベースに開閉自在に設けられた前妻板及び後妻板と、流水路用中子とを備えると共に、
流水路用中子の下側に頂版部の厚さに相当する間隔をおいて配された固定上板部と該固定上板部とほぼ直角を成す可変側板部とを有する逆L字形の壁部用中子と、
壁部用中子の可変側板部を壁部の厚さを規定する定常位置から内側に変位させ、且つ、内側に変位した位置から定常位置に復帰させ得る第1変位機構とを備える。
【請求項2】
請求項1に記載の型枠であって、
左側板と右側板のうち水路ブロックの壁部の外側面と向き合う側の側板は、壁部の外側面と直交する方向にスライドすることによってその開閉を行い得る。
【請求項3】
請求項1または2に記載の型枠であって、
左側板と右側板のうち水路ブロックの壁部の外側面と向き合う側の側板と壁部用中子の可変側板部との間に配されていて壁部の上面を形成し得る可動底板と、
可動底板の高さ及び傾斜角度を変化させ得る第2変位機構とをさらに備える。
【請求項1】
左側版部,右側版部,頂版部,底版部及びこれらで囲まれた流水路と頂版部の一側部上に左側版部と右側版部のうちの一方と外側面を共有する土留め用の壁部とを有する水路ブロックを天地逆向きに製造するための型枠であって、
ベースと、ベースに開閉自在に設けられた左側板及び右側板と、ベースに開閉自在に設けられた前妻板及び後妻板と、流水路用中子とを備えると共に、
流水路用中子の下側に頂版部の厚さに相当する間隔をおいて配された固定上板部と該固定上板部とほぼ直角を成す可変側板部とを有する逆L字形の壁部用中子と、
壁部用中子の可変側板部を壁部の厚さを規定する定常位置から内側に変位させ、且つ、内側に変位した位置から定常位置に復帰させ得る第1変位機構とを備える。
【請求項2】
請求項1に記載の型枠であって、
左側板と右側板のうち水路ブロックの壁部の外側面と向き合う側の側板は、壁部の外側面と直交する方向にスライドすることによってその開閉を行い得る。
【請求項3】
請求項1または2に記載の型枠であって、
左側板と右側板のうち水路ブロックの壁部の外側面と向き合う側の側板と壁部用中子の可変側板部との間に配されていて壁部の上面を形成し得る可動底板と、
可動底板の高さ及び傾斜角度を変化させ得る第2変位機構とをさらに備える。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−162062(P2008−162062A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351937(P2006−351937)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(390027568)株式会社カイエーテクノ (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(390027568)株式会社カイエーテクノ (12)
【Fターム(参考)】
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