説明

汚水処理装置及び無排水トイレ装置

【課題】確実な蒸発処理を行って無排水とする汚水処理装置を提供する。
【解決手段】通気性を有する外箱11内に、適宜な通水性を有し、且つ微生物処理可能となる多孔状態に形成される部材で満たした通水分解処理部12と、通水分解処理部12から処理対象水が浸透して湿潤状態で微生物処理がなされると共に、蒸発処理がなされる蒸発分解処理部13と、余剰水の排水部16を設けてなるボックス体を、単一或いは多段で構成する蒸発分解部と、前記蒸発分解部からの余剰水を貯留する下方タンクと、蒸発分解部の上方に配置され、下方タンク貯留水をポップアップして貯留し、適時蒸発分解処理部に処理対象水として供給する上方タンクとを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の汚水の無排水処理を行う汚水処理装置及び前記汚水処理装置を使用して水洗トイレ排水を処理する無排水トイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無排水トイレ装置としては、特許文献1,2(特開平5−230858号公報、特開2000−170227号公報)に示すとおり、接触曝気槽での微生物による汚物の分解と、分解処理後の滅菌処理を行い、処理済み水を水洗トイレ洗浄用水として再度使用することを繰り返す循環方式のものが知られている。
【0003】
更にトイレ排水の処理残存水(処理対象水)を蒸発処理する手段として、特許文献3(特開2002−119988号公報)には、周面にパンチ孔(空気孔)を形成した蒸発反応層内に濾過材を多段に形成し、処理対象水の微生物処理と蒸発を同時に行う手段が開示されている。
【0004】
また特許文献4(特開2005−262077号公報)には、処理対象水を土壌中に浸透させて、土壌表面(植栽物)からの蒸発を行うと共に、前記土壌層の下方に余剰水の滞留槽を設け、前記滞留層からポンプアップして前記土壌表面に散水したり、トイレ洗浄用水として使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−230858号公報。
【特許文献2】特開2000−170227号公報。
【特許文献3】特開2002−119988号公報。
【特許文献4】特開2005−262077号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した無排水トイレ装置においては、処理水の再利用のための大型装置が必要であり、且つ多額のランニングコストが必要であり、また設置コストも高いという問題がある。
【0007】
また前記した蒸発処理方式において、特許文献4に開示されている方式は、処理に必要な適度の面積の土地が必要であり、そのような広い土地を使用できない状況においては対応することができず、且つ土壌に埋設する恒常的な設備が必要であり、臨時的或いは短期的な処理施設を必要とする場合にも対応できない。
【0008】
また前記の特許文献3記載の蒸発処理方式は、屋外設置型であるが、処理対象水の流入量変動に対しては、溢流対策のみが考慮されており、濾過材が処理対象水で満たされると好気発酵処理がスムーズになされないし、濾過材の通水性を高めてしまうと、処理対象水の発酵処理が為されずに未処理のまま蒸発槽を通過してしまい、そのまま処理済み水として、再利用されてしまう虞がある。
【0009】
そこで本発明は、確実な蒸発処理を行って無排水とする汚水処理装置及び前記汚水処理装置を使用した無排水トイレ装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)に係る汚水処理装置は、通気性を有する外箱内に、処理対象水を受け入れると共に、適宜な通水性を有し、且つ微生物処理可能となる多孔状態に形成される部材で満たした通水分解処理部と、前記通水分解処理部の周囲に通水分解処理部から処理対象水が浸透して湿潤状態で微生物処理がなされると共に、蒸発処理がなされる蒸発分解処理部とを設け、外箱下方に余剰水の排出部を設けてなるボックス体を、単一或いは多段で構成する蒸発分解部と、前記蒸発分解部からの余剰水を貯留する下方タンクと、蒸発分解部の上方に配置され、下方タンク貯留水をポップアップして貯留し、適時蒸発分解処理部に処理対象水として供給する上方タンクとを備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
而して処理対象水をボックス体(蒸発分解処理部)に送り込むと、処理対象水は、通水処理部を適宜滞留しながら浸透通過すると共に、通水処理部から周囲の蒸発分解処理部に浸透して湿潤状態(微生物の繁殖の最適状態)とする。通水処理部及び蒸発分解処理部では、共にその構成部材に付着した微生物によって分解処理が行われると同時に、前記部材において特定の物質を吸着する部材を混合することで、例えば汚水中の金属イオンを吸着させて汚水の浄化を行う。
【0012】
更に外箱の外周から微生物処理のための空気が流入するが、同時に前記の空気は蒸発分解処理部の処理対象水が蒸発する。そして蒸発分解処理部で水分蒸発がなされると、通水処理部から更に処理対象水が浸透して、微生物による分解処理と、蒸発処理が継続的になされるものである。
【0013】
特に通水処理部における保水能力を超えて処理対象水が送り込まれると、余剰水として排出部から排出されて下方タンクに溜まり、下方タンクに溜まった余剰水は上方タンクに送られ、再度蒸発分解処理部で微生物分解処理と蒸発処理を行うもので、無排水で処理対象水(汚水)の処理を行うことができる。
【0014】
また本発明(請求項2)に係る汚水処理装置は、前記の汚水処理装置において、通水分解処理部内に汚水溜容器を配設すると共に、前記汚水溜容器から毛細管現象で蒸発分解処理部へ汚水を浸透させて湿潤状態とする浸透布を配置してなるものである。
【0015】
前記の汚水処理においては、通水分解処理部に保水能力以上の処理対象水が送り込まれると、汚水溜容器に処理対象水が一旦溜められ、蒸発分解処理部において処理対象水の蒸発が行われるのに対応して、浸透布の毛細管現象で汚水溜容器内の処理対象水が順次蒸発処理部に浸透して補給されていくので、処理対象水の生物分解処理及び蒸発処理が継続することになる。
【0016】
また本発明(請求項3)に係る汚水処理装置は、前記の汚水処理装置において、蒸発分解部を、複数のボックス体を多段に積層して構成すると共に、ボックス体の通水分解処理部又は蒸発分解処理部の一方又は双方の構成部材を異ならせてなるものである。
【0017】
従って予めボックス体の通水分解処理部及び蒸発分解処理部の構成部材や微生物等を上下段異なるものを採用すると、汚水の種別・内容の変化に対しても対応でき、また種々の有害物質の除去も可能となり、蒸発されずに最終的に残る排出水が存在したとしても、その浄水化が実現し、残余排出水の有効利用が可能となる。
【0018】
また本発明(請求項4,5)に係る汚水処理装置は、前記のボックス体の外周を凹凸面に形成して、空気との接触面積を大きくしたり、ボックス体の外周に溝孔を形成し、蒸発分解処理部に基方を埋設した蒸発促進布を前記溝孔より外部上方に向けて突出させてなるもので、湿潤処理部に含まれる汚水の蒸発が促進されるものである。
【0019】
本発明(請求項6)に係る無排水トイレ装置は、前記した汚水処理装置と、トイレ排水を処理して液体を排出する固液分離処理部と、圧送ポンプを付設して、トイレ排水を固液分離処理部に排出する水洗トイレとで構成されることを特徴とするものである。
【0020】
而して水洗トイレのトイレ排水は、圧送ポンプで固液分離処理部に送られ、固液分離処理部で生物分解処理と固液分離がなされ、固液分離処理部で分離した汚水(処理対象水)は、汚水処理装置での生物分解処理と蒸発処理が行われ、トイレ排水は外部に排出することなく処理されるものである。
【0021】
また本発明(請求項7)に係る無排水トイレ装置は、前記の無排水トイレ装置において、特に下方タンクに雨水又は河川水等の中水供給機構を付設すると共に、上方タンクからトイレ洗浄用水を、水洗トイレに供給してなるものである。
【0022】
即ち下方タンクに雨水・河川水等を集めて中水として利用することができ、特に蒸発処理部の余剰水(浄化水)を雨水と共に利用することができる。
【0023】
また本発明(請求項8)に係る無排水トイレ装置は、前記の中水によるトイレ洗浄を行う装置において、特に水洗トイレの排水部分をトラップ構造とし、且つ清浄水と中水を供給可能とし、トイレ洗浄に際して、中水洗浄後に清浄水を供給し、トイレ使用後に水洗トイレに清浄水が滞留するようにしたものである。
【0024】
而して前記の無排水トイレ装置においては、トイレ使用後のトイレ洗浄を始めに中水を使用して汚物を流し、その後に清浄水を供給すると、清浄水がトイレ(便器)に残り、次の使用者に対し不快感を与えない。
【発明の効果】
【0025】
本発明の構成は上記のとおりで、汚水処理を蒸発と生物分解と有害物質吸着で行う蒸発処理部(ボックス体)を備えると共に、ボックス体における通過水を再循環させて確実な蒸発処理を実施して、完全無排水処理を実現したものである。
【0026】
また特にボックス体内に汚水溜容器と浸透布を配置することで、間欠的に汚水供給が為されたとしても、蒸発処理と生物分解処理等を継続的に且つ適切に行うことができ、トイレ排水などの無排水処理を簡易な設備で実現できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明(無排水トイレ装置)の実施形態の全体説明図。
【図2】同固液分離処理部の説明図で(イ)は土壌放出処理(ロ)は液槽放出処理を示す。
【図3】同蒸発分解部(ボックス体)の説明図(断面図)。
【図4】同別例図(断面斜視図)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態は無排水トイレ装置について説明した。
【0029】
実施形態の無排水トイレ装置は、汚水処理装置を構成する蒸発処理部1及び下方タンク2、及び上方タンク3と、トイレ装置として付加される水洗トイレ部4及び固液分離処理部5で構成される。
【0030】
蒸発処理部1は、本発明の特徴とするところで、ボックス体1a,1b,1c・・・を多段に構成したもので、各ボックス体1a,1b,1c・・・は、各々通気性を有する外箱11と、通水分解処理部12と、蒸発分解処理部13と、汚水溜容器14と、浸透布15と、排水部16とで構成される。
【0031】
外箱11は、多数の小透孔111を穿設すると共に、内方周面に不織布の様な通気布112を添わせ、蒸発分解処理部13が零れ出るのを防止しているものである。
【0032】
通水分解処理部12及び蒸発分解処理部13は、土、砂、砂利、木炭、貝殻砕片等任意の部材で構成されるもので、適宜な通水性(保水性)を備えた多孔状態となるように、外箱11内に充填されているもので、通水分解処理部12は、処理対象水(汚水)Aの通水路を構成すると共に、適宜な保水性を有して、構成部材に付着した微生物で汚水Aを分解処理及び金属などの吸着処理を行う。
【0033】
蒸発分解処理部13は、前記通水分解処理部12の周囲に設けられるもので、汚水が浸透して湿潤状態で、微生物が繁殖すると共に、微生物による分解処理が行われ、同時に外箱11の小透孔111から水分が蒸発する。
【0034】
また図4に例示するように、ボックス体1a,1b,1c・・・の外箱11の側面を、凹凸形状にして、周面における空気接触面積を大きくすると、前記の蒸発が促進される。更に外箱11の側面に溝孔113を穿設し、前記溝孔113から支持板114を斜め上方に突出させて、前記溝孔113に蒸発促進布115を挿通すると共に、基方側を蒸発分解処理部13内に埋め込み、外側を前記支持板114に載置して外箱11の外方に張り出させるようにすると、前記の蒸発処理が一層促進される。
【0035】
また特に上下に積層されるボックス体1a,1b,1c・・・の通水分解処理部12及び蒸発分解処理部13は、その構成部材や微生物等が異なるものを採用すると、分解処理対象や吸着物質(除去物質)の多様性を得ることができる。
【0036】
汚水溜容器14は、前記の通水分解処理部12内に配置したもので、単一或いは多段に複数埋設しても良いし、上方を開口状態で配置しても良い。この汚水溜容器14には、浸透布15の一端側を貯留した汚水Aに浸るようにし、前記浸透布15の他方端側を蒸発分解処理部13内となるように配置したものである。
【0037】
排水部16は、外箱11の底面に皿状受け部161と流下口162を備えると共に、流下口162から通水分解処理部12及び蒸発分解処理部13の構成部材が落下しないように、フェルト等の透水布163で流下口を塞ぐようにしている。
【0038】
尚、排水部16は、皿状受け部161等を採用することなく、ボックス体1a,1b,1c・・・の底方に、図4に例示するような小透孔を穿設した水抜き管16aを配置して排水部としても良い。
【0039】
而して前記の蒸発処理部1においては、汚水(処理対象水)Aが、ボックス体1aの上方中心から放水されると、その重力で通水分解処理部12に浸透していくと共に、一部はその内部の汚水溜容器14に溜まる。
【0040】
同時に通水分解処理部12の保水限界を越えると、蒸発分解処理部13に浸透する共に、更に浸透量を越える分は排水部16から排出されて次段のボックス体1bに送られ、順次同様に処理される。
【0041】
通水分解処理部12及び蒸発分解処理部13において、浸透した汚水Aは、その有機物等は両分解処理部12,13の構成部材に付着した微生物によって分解処理(好気性処理)がなされ、また前記部材に特定の物質を吸着する部材を混合することで、例えば汚水中の金属イオンを吸着して汚水の浄化がなされる。
【0042】
前記の好気性処理の空気供給は、屋外放置の外箱11に対して吹く風によってなされるが、同時に前記の空気は蒸発分解処理部13の汚水Aを蒸発させる。蒸発分解処理部13に含まれる汚水Aが蒸発しても、汚水溜容器14内の汚水Aが浸透布15の毛細管現象で蒸発分解処理部13に浸透して、汚水Aの生物分解処理及び蒸発処理が継続することになる。汚水Aの供給量が多く通水分解処理部12の保水能力及び汚水溜容器14の貯留能力を越えた場合には、排水部16から次段のボックス体1bに排出され、次段のボックス体1bでも同様の汚水Aの生物分解処理及び蒸発処理が行われることになる。
【0043】
従って前記のボックス体1a,1b,1c・・・の段数や容量は、トイレ装置の設計値(仮想使用程度:処理能力)に対応して定められるものであるが、ボックス体1a,1b,1c・・・は持ち運びでき、且つ容易に多段に組み込むことができると屋外設置が容易になされるが、前記の蒸発処理部1で全て蒸発処理が確実になされるものではないので、その対応として、下記の下方タンク2と上方タンク3を設けてなる。
【0044】
下方タンク2は、蒸発処理部1で蒸発処理されなかった余剰水(排水部16から排水)Bを受け入れるもので、内部に水位センサ(図示せず)と送水ポンプ21を内設し、上方タンク3は、水位センサ(図示せず)を内装して蒸発処理部1の上方に配置し、下方タンク2と上方タンク3との間は、第一循環路31で接続し、上方タンク3と蒸発処理部1との間に第二循環路32を介設したものである。
【0045】
そして上下タンク2,3の両水位センサの検知に応じて、下方タンク内の貯留水(前記余剰水B又は後述の中水C)を上方タンク3に送り出し、上方タンク3から第二循環路32を通して蒸発処理部1に落水させて、蒸発処理を行うことで、汚水Aの完全な蒸発処理を実現することができるものである。
【0046】
更に、基本的に汚水(トイレ汚水)Aは蒸発処理部1で蒸発処理を行い、余剰水Bの発生を抑えるように設計し(余剰水Bが発生しても前記の通り対応できる)、蒸発処理部1を水洗トイレの洗浄用水として使用する中水Cの浄化用としても使用できるようにした。
【0047】
即ち下方タンク2には、中水供給機構22を付設したもので、中水供給機構22は、例えばトイレ装置を設置する近傍の建築物の屋根、適宜範囲の地面上に設けた集水施設で形成される雨水受け等の他、周囲の河川水や沢水等を導入路等を構築して形成するものである。
【0048】
上方タンク3には、後述する水洗トイレ部4に対して洗浄用水Dを供給するものである。具体的に説明すると、集水施設である雨水受け(中水供給機構)22からの雨水(中水)Cは、下方タンク2に送られ貯留されることになる。勿論下方タンク2は、雨水Cを受け入れ易いように低所に設置するもので、内部の送水ポンプ21で高所に設置した上方タンク3に送水するものである。
【0049】
前記の送水(ポンプアップ)に際しては、両タンク2,3に内設した水位センサの検知値に基づいて送水ポンプ21の作動を制御し(空回り等を防止する)、また第一循環路31には、散水管23を分岐させて、植物の灌漑用水としての利用も可能とする。
【0050】
上方タンク3は、前記の送水ポンプ21の作動によって、一定以上のトイレの洗浄用水Dを確保し、水洗トイレ部4に対する洗浄用水供給路33を設け、水洗トイレ部4からの信号(便器付属の水槽のフロート弁による動作指示)で一定の洗浄用水Dを水洗トイレ部4に供給するものである。
【0051】
水洗トイレ部4は、水洗トイレ41と、前記水洗トイレ41にトイレ排水(汚物水)Eの排水個所に圧送ポンプ42を有するトイレ排水Eの圧送構造(例えば圧送ポンプ42を配置する汚物水溜め、汚物水を圧送し易くする粉砕攪拌機構等)を付設しているものである。尚本実施形態は、中水Cを使用する例を示したが、中水Cの供給が十分でない場合や、集水施設の設置が困難な場所では、通常の水道水を洗浄用水として使用することもできる。
【0052】
水洗トイレ41は、一般的な水洗トイレ構造であるが、特に便器洗浄機構に特別な構造及び制御を採用してなるものである。即ち通常の便器と同様に洗浄水タンク(フロート弁・一定量の供給弁を付設)とトラップ排水構造を備えるが、前記の洗浄水タンクは中水用として使用し、その他に清浄水(水道水や、水道施設が無い場合などは沢の水等を利用する)Fを使用するための構造を付設したものである。
【0053】
即ちトイレ洗浄に際しては、洗浄水タンク(中水を貯留)から従前の便器洗浄と同様に、レバー操作等で洗浄水タンクから一気に洗浄用水(中水)Dを供給して、便器内の汚物を流し出し、前記洗浄用水Dの供給後に一定量の清浄水Fを便器内に供給する構造を採用する。そうするとトイレ使用後には、便器内に清浄水Fが滞留することになる。勿論局部洗浄装置を付設する場合には、清浄水Fを使用する。
【0054】
尚清浄水Fを使用するために、清浄水Fの供給が水道水のように相応の圧力を以て行われる場合には、適宜制御される開閉弁を介して便器に供給されるようにし、所定の圧力を伴わず、単に清浄水Fの流れ込みのみを利用する場合には、更に貯水タンクを付設する。
【0055】
トイレ排水Eに対しては固液分離処理部5を設けている。固液分離処理部5は、図2(イ)に例示するように、胴部が通気性を備えた槽本体51の内部に、スクリーン部52を内設して上方室53と下方室54を形成し、上方室53のスクリーン部52の上部には、枯れ草、粉砕樹皮等の透水性を有し、且つ有機質の生物分解を行う土壌資材で形成した土壌処理層部55を形成し、前記の土壌処理層部55の上或いは中に、トイレ排水Eの放出口を開口したトイレ排水導入部56を付設し、下方室54には、蒸発処理部1への排出部57を設けてなるものである。
【0056】
また上方室53における土壌処理層部55の上方位置に、オーバーフロー部58を設けてなる。
【0057】
前記の固液分離処理部5では、トイレ排水Eが土壌処理層部55に放出されると、トイレ排水Eの固形分が土壌処理層部55に付着し、汚水Aはスクリーン部52を通して下方室54に溜まり、次の蒸発処理部1に排出される。またオーバーフロー部58からの汚水Aも蒸発処理部1に排出される。
【0058】
更に土壌処理層部55で濾されて残った固形分は、土壌処理層部55に生存する生物(例えばミミズ)や微生物(枯れ草、粉砕樹皮等に付着している細菌)によって分解処理される。
【0059】
前記の固液分離処理部5は、固形分を土壌処理層部55で濾過させる土壌放出処理構造の例であるが、図2(ロ)に示すように液槽放出処理構造でも良い。図2(ロ)に示した固液分離処理部5aは、槽本体51aの内部に、スクリーン部52aを内設して上方室53aと下方室54aを形成し、上方室53aのスクリーン部52aの上部には、適宜な土壌資材で形成した土壌処理層部55aを形成し、下方室54aを汚水だめとして汚水処理層部58aとしたものである。尚固液分離処理部5aにおいても、槽本体51aの上方部分にオーバーフロー部を設けて、蒸発処理部1に排出するようにしても良い。
【0060】
この下方室54aの上方部分に放出口を開口したトイレ排水導入部56aを付設し、下方室の中間に蒸発処理部1への排出部57aを設けてなるものである。
【0061】
前記の固液分離処理部5aは、下方室54aにトイレ排水Eが放出され滞留すると、嫌気菌による嫌気処理が為されて、少量の沈殿物と上層のスカムGに分離し、中間の汚水Aは蒸発処理部1に排出され、スカムGは、トイレ排水Eの流入時に下方室54aの水位が上昇することによって、スクリーン部52aに付着し、土壌処理層部55aの微生物によって分解処理される。
【0062】
勿論固液分離処理部5,5aは、前記の構成に特定されるものではなく、固液分離と生物分解処理が為されるものであれば良いので、従前周知の曝気槽を採用すると共に、曝気槽からの放流を蒸発処理部1に送るようにしても良い。
【0063】
而して前記のトイレ装置は、雨水Cを下方タンク2に溜め、上方タンク3に送水してトイレ洗浄用水Dとして溜めて、水洗トイレ41を使用すると、トイレ洗浄用水Dを供給してトイレ洗浄を行う。
【0064】
トイレ洗浄後のトイレ排水Eは、固液分離処理部5に送られ、固液分離と共に、生物分解処理が為され、固液分離処理部5からの汚水Aは、蒸発処理部1に送られる。
【0065】
蒸発処理部1では、その重力浸透で通水分解処理部12と蒸発分解処理部13において、生物分解処理が行われると共に蒸発分解処理部13においては、更に継続的に蒸発が行われ、多段階の生物処理と吸着処理と蒸発処理によって原則的に無排水処理が行われる。仮に余剰水Bが生じたとしても、ある程度浄化されており、下方タンクに送られるが、再度循環させて蒸発処理を行っても良いし、中水Cと混合して洗浄用水Dとして使用されたり、植物灌漑用として使用される。
【0066】
しかも前記の各設備は、土中設置設備を必要とせず、全て地上に容易に構築することができるので、設置場所の限定が無く、更に安価に設置できるものである。
【0067】
このように簡易に地上設置が可能であるから、例えば蒸発処理部を適宜な室(ビニールハウス等)に収納し、適宜な廃熱利用によって冬季においても、生物分解処理や蒸発処理を適切に行うこともできる。
【0068】
また特に前記のポンプ作動及びその制御動作の動力源として、太陽電池及びその蓄電機構でまかなうと、水道設備や電力供給設備が無い山小屋等のトイレ設置にも最適なものとなる。
【符号の説明】
【0069】
1 蒸発処理部
1a,1b,1c ボックス体
11 外箱
111 小透孔
112 通気布
113 溝孔
114 支持板
115 蒸発促進布
12 通水分解処理部
13 蒸発分解処理部
14 汚水溜容器
15 浸透布
16 排水部
161 皿状受け部
162 流下口
163 透水布
16a 水抜き管
2 下方タンク
21 送水ポンプ
22 中水供給機構(雨水受け)
23 散水管
3 上方タンク
31 第一循環路
32 第二循環路
33 洗浄用水供給路
4 水洗トイレ部
41 水洗トイレ
42 圧送ポンプ
5,5a 固液分離処理部
51,51a 槽本体
52,52a スクリーン部
53,53a 上方室
54,54a 下方室
55,55a 土壌処理層部
56,56a トイレ排水導入部
57,57a 排出部
58 オーバーフロー部
58a 汚水処理層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する外箱内に、処理対象水を受け入れると共に、適宜な通水性を有し、且つ微生物処理可能となる多孔状態に形成される部材で満たした通水分解処理部と、前記通水分解処理部の周囲に通水分解処理部から処理対象水が浸透して湿潤状態で微生物処理がなされると共に、蒸発処理がなされる蒸発分解処理部とを設け、外箱下方に余剰水の排出部を設けてなるボックス体を、単一或いは多段で構成する蒸発分解部と、前記蒸発分解部からの余剰水を貯留する下方タンクと、蒸発分解処理部の上方に配置され、下方タンク貯留水をポップアップして貯留し、適時蒸発分解部に処理対象水として供給する上方タンクとを備えてなることを特徴とする汚水処理装置。
【請求項2】
通水分解処理部内に汚水溜容器を配設すると共に、前記汚水溜容器から毛細管現象で蒸発分解処理部へ汚水を浸透させて湿潤状態とする浸透布を配置してなる請求項1記載の汚水処理装置。
【請求項3】
複数のボックス体を多段に積層して蒸発分解部を構成すると共に、ボックス体の通水分解処理部又は蒸発分解処理部の一方又は双方の構成部材を異ならせてなる請求項1又は2記載の汚水処理装置。
【請求項4】
ボックス体の外周を凹凸面に形成して、空気との接触面積を大きくしてなる請求項1乃至3記載の何れかの汚水処理装置。
【請求項5】
ボックス体の外周に溝孔を形成し、蒸発分解処理部に基方を埋設した蒸発促進布を前記溝孔より外部上方に向けて突出させてなる請求項1乃至4記載の何れかの汚水処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の何れかの汚水処理装置と、トイレ排水を処理して液体を排出する固液分離処理部と、圧送ポンプを付設して、トイレ排水を固液分離処理部に排出する水洗トイレとで構成されることを特徴とする無排水トイレ装置。
【請求項7】
下方タンクに雨水又は河川水等の中水供給機構を付設すると共に、上方タンクからトイレ洗浄用水を、水洗トイレに供給してなる請求項6記載の無排水トイレ装置。
【請求項8】
排水部分をトラップ構造とした水洗トイレに、別に清浄水を供給可能とし、トイレ洗浄に際して、中水洗浄後に清浄水を供給し、トイレ使用後に水洗トイレに清浄水が滞留するようにした請求項7記載の無排水トイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−81441(P2012−81441A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231342(P2010−231342)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(591235843)
【Fターム(参考)】