説明

油中水型乳化化粧料及びスキンケア方法

【課題】安定性、隔離効果及び肌感のいずれにも非常に優れた油中水型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)〜(E):
(A)シリコーンエラストマー 0.5〜10質量%、
(B)重合度が350以上1500以下であるジメチルポリシロキサン 0.2〜10質量%、
(C)重合度が1以上6以下であるジメチルポリシロキサン及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサン 3〜28質量%、
(D)エチルアルコール 0.5〜25質量%、
(E)水
を含有する油中水型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料及びスキンケア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の日常生活において、太陽の紫外線、自動車からの排気、工場等による空気の汚染、周りの人の喫煙、メーキャップなどの外界刺激が原因で、肌は常にダメージを受け続けている。本発明において、これらの外界刺激から肌を守る効果を隔離効果と定義する。
これまで、太陽の紫外線や、自動車からの排気、工場等からの粉塵、タバコの煙などの刺激から皮膚を守る化粧料の研究について行なわれている。これらの中で皮膚表面に皮膜を作ることで、刺激物質の付着、浸透を抑制するものが検討されている(特許文献1〜4)。
【0003】
特許文献1には、べたつきがなく、使用感がよく、安定性が良好な化粧料として、シリコーンエラストマーと高分子量シリコーンを組み合わせた高内水相油中水型乳化化粧料が提案されている。しかし、当該化粧料は、高分子シリコーンを使用しているため、塗布時に、伸ばしにくく、塗布後、皮膜残留感があり、優れた感触を有する皮膜が得られず、しかも、汚れが付着しやすく、保存安定性も十分ではない。
【0004】
特許文献2には、耐水性、耐油性に優れ、肌へののりが良く、化粧効果の持続性に優れた化粧料とし、シリコーンエラストマー、有機シリコーン樹脂及びアクリル−シリコーン系グラフト共重合体を組み合わせた油中水型下地化粧料が提案されている。
また、特許文献3には、化粧持ち、化粧持続性に優れ、使用性、経時安定性にも優れた化粧料とし、シリコーンエラストマー、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体を組み合わせた油中水型化粧料が提案されている。しかし、これらの化粧料は、塗布後、強い皮膜残留感により感触が重く、さっぱりした使用感が得られない。
【0005】
特許文献4には、耐水性並びにサンケア効果の持続性に優れ、べたつきやぬるつきが抑制された良好な使用感を有し、安定性に優れる化粧料とし、シリコーンエラストマー、油溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子を組み合わせた水中油型サンケア化粧料が提案されている。しかしながら、この化粧料は水溶性高分子を含有しているため、十分な撥水性が得られず、持続性も弱いため、外界刺激、特に太陽紫外線以外の刺激を隔離する効果が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-2925号公報
【特許文献2】特開平10-236917号公報
【特許文献3】特開平11-180847号公報
【特許文献4】特開平9−175977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、いずれの従来技術においても、皮膜形成のために、ポリマーやシリコーン樹脂等を使うことが多いので、塗布時に、べたつきが生じ、塗布後の肌に皮膜感やつっぱり感などの違和感を生じるなどの問題があった。また、安定性、外界刺激への隔離効果及びさっぱり感を兼ねて理想的な効果を奏することができない。従って、これらの点について、より改善されたスキンケア化粧料の開発が望まれている。
本発明は、安定性、外界刺激への隔離効果及びさっぱり感に非常に優れた油中水型乳化化粧料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、特定のシリコーンエラストマーと特定の高重合ジメチルポリシロキサンと特定の低重合シリコーン油とエチルアルコールとを、特定の割合で組み合わせて使用すると、安定性、外界刺激への隔離効果、塗布時にのびが良く、塗布後は皮膜残留感がなく、さっぱり感に非常に優れた油中水型乳化化粧料が得られることを見出した。
【0009】
本発明は、次の成分(A)〜(E):
(A)シリコーンエラストマー 0.5〜10質量%であって、
該シリコーンエラストマーは、下記一般式(a−1):
1a2bcSiO(4-a-b-c)/2 (a−1)
及び/又は下記一般式(a−2):
1jkSiO(4-j-k)/2 (a−2)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
下記一般式(a−3):
m2m-1O(C24O)p(C36O)qm2m-1 (a−3)
で表されるポリオキシアルキレン、及び/又は
下記一般式(a−4):
1d3eSiO(4-d-e)/2 (a−4)
で表されるオルガノポリシロキサンと
を付加重合させて得られ、そのうち、前記一般式(a−1)及び/又は前記一般式(a−3)で表される成分を必須成分とするシリコーンエラストマー、
(式中、R1 は同種又は異種の置換又は非置換の炭素数1〜18の夫々一価のアルキル基若しくはアリール基、アラルキル基又はハロゲン化炭化水素基であり、R2は、一般式−Cn2nO(C24O)f(C36O)g4で示される有機基、R3は末端ビニル基を有する炭素数2〜10の一価の炭化水素基、R4 は水素原子若しくは炭素数1〜10の飽和有機基又はR5−(CO)−で示される基、R5は炭素数1〜5の飽和有機基であり、
a、b、c、d、e、j及びkはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1、0.001≦c≦1、1.0≦d≦3.0、0.001≦e≦1.5、1.0≦j≦3.0及び0.001≦k≦1.5であり、f及びpは2〜200の整数、g及びqは0〜200の整数、f+gは3〜200、p+qは3〜200であり、m及びnは2〜6である)
(B)重合度が350以上1500以下であるジメチルポリシロキサン 0.2〜10質量%、
(C)重合度が1以上6以下であるジメチルポリシロキサン及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサン 3〜28質量%、
(D)エチルアルコール 0.5〜25質量%、
(E)水
を含有する油中水型乳化化粧料に関する。
【0010】
また、本発明は、当該油中水型乳化化粧料を肌に使用して保持するスキンケア方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油中水型乳化化粧料は、保存安定性、外界刺激への隔離効果に優れ、また、塗布時にのびが良く、塗布後は皮膜残留感がなく良好な感触で、さっぱり感に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例において、汚れの付着測定に用いたダートチャンバーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の油中水型乳化化粧料に用いる各成分を、それぞれ詳しく説明する。
【0014】
成分(A):
成分(A)は、前記のようなシリコーンエラストマーである。
ここで、R1は、同種又は異種の置換又は非置換の炭素数1〜18の夫々一価のアルキル基が好ましく、メチル基、ラウリル基が好ましい。前記一般式(a−3)において、mは3〜6が好ましく、3がより好ましい。また、pは10〜15が好ましく、qは0が好ましい。
成分(A)は、後述する成分(B)とともに、本発明の油中水型乳化化粧料を皮膚に塗布した際にのびが良く、塗布乾燥後は、皮膜残留感が抑制され、さっぱりとしてべたつかない皮膜を形成する働きを有する。この結果、外界からの刺激を遮断でき、高い隔離効果を発揮することができる。更に、成分(A)は、自己乳化能を有し、油中水型乳化化粧料の乳化を安定化することができる。
【0015】
具体的には、成分(A)としては、(ジメチコン/(PEG−10/15))クロスポリマー、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG−10/ラウリルジメチコン)クロスポリマーなどが挙げられる。これらは通常、他の油剤と混合されて市販されている。例えば、KSG−210、KSG−240、KSG−310、KSG−320、KSG−330、KSG−340(KSGシリーズ、信越化学工業社製)などがある。
ここで、「KSG−210」は、(ジメチコン/(PEG−10/15))クロスポリマー25%とジメチコン75%の混合物であり、「KSG−240」は、(ジメチコン/(PEG−10/15))クロスポリマー20%とシクロペンタシロキサン80%の混合物であり、「KSG−310」は、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー30%とミネラルオイル70%の混合物であり、「KSG−320」は、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー25%とイソドデカン75%の混合物であり、「KSG−330」は、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー20%とトリエチルヘキサノイン80%の混合物であり、「KSG−340」は、(PEG−10/ラウリルジメチコン)クロスポリマーと(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー30%とスクワラン70%の混合物である。
【0016】
成分(A)は、1種又は2種以上の複数のものを混合して使用することができる。さっぱり感及び保存安定性の観点から、成分(A)の含有量は、全組成中に0.5質量%以上であり、好ましくは0.625質量%以上、より好ましくは0.75質量%以上であり、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。また、成分(A)の含有量は、全組成中に0.5〜10質量%であり、0.625〜5質量%が好ましく、0.75〜2.5質量%がより好ましい。
【0017】
成分(B):
成分(B)は、重合度が350以上1500以下であるジメチルポリシロキサンである。
成分(B)は、成分(A)と共に皮膚表面に柔軟な皮膜を形成し、塗布乾燥後の自然な皮膜を形成するのに重要である。この結果、外界刺激への隔離効果の強化に役立つ。
皮膜形成及び隔離効果の観点から、成分(B)のジメチルポリシロキサンの重合度は、350以上であり、600以上が好ましい。また、重合度は1500以下であり、800以下が好ましい。
なお、ここで、重合度とは、ジメチルポリシロキサンの分子量を74で割ったものである。
【0018】
成分(B)の重合度が350以上1500以下であるジメチルポリシロキサンとして、具体例的には、KF−96A−1000cs、KF−96A−5000cs、KF−96A−10000cs、KF−96A−100000cs(信越化学工業社製)などの市販品が挙げられる。
成分(B)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、隔離効果及びさっぱり感の観点から、含有量は、全組成中に0.2質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量以上%であり、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。また、成分(B)の含有量は、全組成中に0.2〜10質量%であり、0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0019】
成分(C):
成分(C)は、重合度が1以上6以下のジメチルポリシロキサン及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンである。
成分(C)は、本発明の油中水型乳化化粧料において、成分(A)と成分(B)の可塑剤として働き、成分(A)と成分(B)の混合性を高めると共に、塗布した際にのびが良く、肌表面に均一に拡散できる。この結果、より優れた皮膜を形成し、外界刺激への隔離効果は一層向上される。
成分(C)の重合度が1以上6以下のジメチルポリシロキサンとして、具体的には、ジメチルポリシロキサン(粘度1cs)、ジメチルポリシロキサン(粘度2cs)等が挙げられ、さらに、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0020】
成分(C)は、1種又は2種以上の複数のものを混合して使用することができる。
塗布時の伸ばしやすさ及び保存安定性から考えると、成分(C)の含有量は、全組成中に3質量%以上であり、好ましくは8質量%以上であり、28質量%以下であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは14質量%以下である。また、成分(C)の含有量は、全組成中に3〜28質量%であり、8〜18量%が好ましく、8〜14質量%がより好ましい。
【0021】
本発明の油中水型乳化化粧料において、成分(A)の含有量と、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量との質量割合(A)/((A)+(B)+(C))は、乳化安定性、皮膜形成、のびの良さの観点から、0.03以上が好ましく、より好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.06以上であり、0.27以下が好ましく、より好ましくは0.14以下である。
【0022】
成分(D):
成分(D)はエチルアルコールである。本発明の油中水型乳化化粧料において溶媒として機能し、塗布時ののびの良さに寄与し、系の保存安定性を向上できる。特に、後述の成分(H)の紫外線防御剤などの成分(A)、(B)と混ざり合わない油性成分が配合される場合、成分(D)により油の分離が抑えられる。
成分(D)の含有量は、保存安定性の観点から、全組成中に0.5質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、25質量%以下であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。また、成分(D)の含有量は、全組成中に0.5〜25量%であり、1〜20量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。
【0023】
成分(E):
成分(E)は水である。本発明の油中水型乳化化粧料は、多量な水を化粧料中に安定的に含有することができる。この結果、塗布した際に皮膚表面にべたつきがなく軽い感触を与える。また、本発明の油中水型乳化化粧料は、閉塞性の高い皮膜を形成することができるので、長時間を経ても皮膚に水を保持させることができ、塗布した後でも、持続的に皮膚にさっぱり感を与えることができる。
成分(E)の水の含有量は、さっぱり感及び保存安定性の観点から、全組成中に30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上である。また、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0024】
成分(F):
本発明の油中水型乳化化粧料は、更に、(F)HLB8未満のシリコーン鎖を含む界面活性剤を含有することができる。
成分(F)は、本発明の油中水型乳化化粧料の安定性の向上に寄与する。本発明の乳化化粧料を製造するに際し、乳化化粧料の粒子径を均一で細かくすることで、乳化化粧料の長期保存安定性向上を実現させるため、ホモミキサーによる攪拌を加える場合がある。成分(F)を含有する場合、ホモミキサーなど強いせん断力を加えても、分離が生じない。
油中水型の乳化を安定化できるように、成分(F)の界面活性剤はHLBが8未満のものが好ましく、より好ましくはHLB3〜5である。
【0025】
ここで、HLB(親水性―親油性のバランス<Hydrophilic−Lypophilic Balance>)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、下記の式により求められるものである。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo)・・・(I)
式(I)において、Mwは親水性基部の分子量、Moは親油性基部の分子量をそれぞれ示す。
【0026】
本発明において、油相はシリコーンが主体であるので、成分(F)の界面活性剤はシリコーン系のものが好適に用いられる。具体例としては、PEG−3ジメチコン(HLB4.5)、PEG−10ジメチコン(HLB4.5)、PEG−12ジメチコン(HLB6.0)、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB4.0)、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB3.0)等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、PEG−3ジメチコン、PEG−10ジメチコン、PEG−12ジメチコンであり、より好ましくはPEG−10ジメチコンである。
【0027】
成分(F)の界面活性剤は、1種又は2種以上の複数の界面活性剤を混合して使用することができる。成分(F)の含有量は、使用感及び調製時の安定性の観点から、全組成中に0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.33質量%以上であり、更に好ましくは0.66質量%以上である。また、3質量%以下が好ましく、より好ましくは2.5質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下である。
【0028】
成分(G):
本発明の油中水型乳化化粧料は、更に、(G)無機塩類を含有することができる。本発明の油中水型乳化化粧料に、更に、成分(G)の無機塩類を含有することで、経時粘度変化を抑えることができる。
成分(G)の無機塩類の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩;水酸化カリウムなどが挙げられる。好ましくは塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化カリウムであり、より好ましくは硫酸マグネシウムである。
成分(G)の無機塩類は、1種又は2種以上の複数のものを混合して使用することができる。成分(G)の含有量は、経時粘度変化率の観点から、全組成中に0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.33質量%以上であり、更に好ましくは0.66以上である。また、3質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下である。
【0029】
成分(H):
更に、本発明の油中水型乳化化粧料は、(H)紫外線防御剤を含有することができる。本発明の油中水型乳化化粧料に、更に、成分(H)の紫外線防御剤を含有することで、前記成分(A)、(B)及び(C)により構成される皮膜形成において、成分(H)の紫外線防御効果が更に高められる。
成分(H)の紫外線防御剤は、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤を含む。
【0030】
紫外線吸収剤の具体例としては、パラメトキシケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2−エトキシエチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、ヒドロキメトキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、4−[N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル、2−[4−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4,6−トリアニリノ−p−(カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤等の油溶性の有機紫外線吸収剤が挙げられる。
【0031】
紫外線散乱剤の具体例としては、低次酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の金属酸化物、水酸化鉄等の金属水酸化物、板状酸化鉄、アルミニウムフレーク等の金属フレーク類、炭化珪素等のセラミック類等の粉末が挙げられる。これらの粉末は、従来公知の表面処理、例えば、フッ素化合物処理(パーフルオロアルキルリン酸エステル処理やパーフルオロアルキルシラン処理、パーフルオロポリエーテル処理、フルオロシリコーン処理、フッ素化シリコーン樹脂処理が好ましい)、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、気相法テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン処理が好ましい)、シリコーン樹脂処理(トリメチルシロキシケイ酸処理が好ましい)、ペンダント処理(気相法シリコーン処理後にアルキル鎖等を付加する方法)、シランカップリング剤、チタンカップリング剤処理、シラン処理(アルキルシランやアルキルシラザン処理が好ましい)、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理(ステアリン酸やミリスチン酸塩が好ましい)、アクリル樹脂処理、金属酸化物処理等で表面処理が行ってあることが好ましく、更に好ましくはこれらの処理を複数組み合わせて用いることが好ましい。例えば、微粒子酸化チタン表面をシランやアルミナ等の金属酸化物で被覆した後、アルキルシランで表面処理すること等が挙げられる。また、これらの紫外線防御効果を有する粉体は、特に有機珪素化合物で撥水化処理されていることが好ましい。有機珪素化合物としては、上記処理剤の内、シランカップリング剤、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0032】
これらのうち、紫外線吸収剤として好ましくは、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2−[4−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルであり、紫外線散乱剤として好ましくは、シリコーン処理酸化チタン、シリコーン処理酸化亜鉛、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理又はオクチルシリル処理酸化チタン及び酸化亜鉛である。
【0033】
成分(H)の紫外線防御剤は、1種又は2種以上の複数のものを混合して使用することができる。成分(H)の紫外線防御剤の含有量は、安定性の観点から、全組成中に20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
【0034】
その他成分:
本発明の油中水型乳化化粧料は、前記成分(A)〜(H)以外に、本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、肌感を調節し、化粧料の保存安定性を向上させることを目的として、油性成分を含有することができる。
油性成分としては、鉱物油、植物油、エステル油、成分(B)及び(C)以外の低粘度シリコーン油、トコフェロールなどが挙げられる。鉱物油の具体例としては、液体パラフィン、ドデカン、ポリブチレン、ポリイソブチレンなどが挙げられ、植物油の具体例として、菜種油、アマニ油、綿実油、大豆油、茶種子油、米ぬか油、桐油などが挙げられ、低粘度シリコーン油の具体例として、粘度が6csであるジメチルシリコーン油(Silicone KF−96A−6cs、信越化学工業社製)、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(25%ジメチコン6cs分散物)(KSG−16、信越化学工業社製)などが挙げられる。
【0035】
また、本発明の効果に影響を与えない範囲で、目的に応じて化粧品、医薬品等に用いられる他の各種の任意成分を配合してもよい。例えば、保湿剤、粉体、濃化剤、増粘剤、他の界面活性剤、乳化剤、消炎剤、酸化防止剤、pH調節剤、キレート剤、防腐剤、色素、香料、コラーゲン等が挙げられる。
【0036】
本発明の油中水型乳化化粧料は、製品形態としては、ジェル、乳液、クリーム、軟膏等が挙げられる。
【0037】
本発明の油中水型乳化化粧料を用いてスキンケアを行う場合、本発明の油中水型乳化化粧料を肌に使用しかつ保持すれば良い。更に、本発明の油中水型乳化化粧料を肌に使用する場合、該乳化化粧料はただちに解乳化され、肌の表面にべたつきがなく、さっぱりする膜を形成し、外界刺激への隔離効果を効果的に発揮する。
【実施例】
【0038】
実施例1及び比較例1〜8
下記製造方法に準じ、表2に示される組成の実施例1及び比較例1〜8の油中水型乳化化粧料を製造し、外界刺激への隔離効果、保存安定性、塗布時ののびの良さ、塗布乾燥後の感触、及びさっぱり感を評価した。その結果を表1に示した。
【0039】
(製造方法)
成分(A)〜(D)を第I相(油相)成分とし、成分(E)を第II相(水相)成分とする。第I相の成分を表2に示される量で、室温でプロペラ撹拌(500rpm)により均一混合し、溶解混合した第II相を攪拌下ゆっくりと加えて乳化し、油中水型乳化化粧料300gを製造した。
【0040】
(評価方法及び基準)
以下の方法及び基準に基づき、油中水型乳化化粧料の外界刺激への隔離効果、保存安定性、塗布時ののびの良さ、塗布乾燥後の感触、さっぱり感を評価する。
【0041】
(I)外界刺激への隔離効果に対する評価:
外界刺激への隔離効果について、接触角、閉塞性及び汚れの付着測定を利用して評価する。その具体的な評価方法は以下の通りである。
(A)接触角:
(1)面積が5cm×4cmの人工皮革(サプラーレ/出光社製)を用意する。
(2)上記人工皮革に化粧料0.04mLを均一に塗布し、室内で一晩乾燥させる。
(3)上記人工皮革を水平に設置する。更に人工皮革の水平線上にカメラを設置し、カメラの高さ及び距離を調整することにより、上記人工皮革上乾燥サンプルの水平表面を撮影できるようにする。
(4)マイクロシリンジを用いて、人工皮革の乾燥サンプル表面に5μLの純水(水滴)をゆっくりと塗布表面に接触滴下する。
(5)5分間静置後、写真を撮影する。
(6)得られた水滴の写真から、下記の式を用いて、接触角θを計算する。
接触角が大きいほど、ぬれ性が低く、外界刺激成分が広がりにくいため、隔離効果が高いことを意味する。
【0042】
【数1】

【0043】
(B)閉塞性:
カップ法により、閉塞性の測定を行う。すなわち、40mLバイアルビン(ピアースバイアルCV−400(アズワン社製);蓋に直径17.3mmの孔が空いている)に、φ=22.0mm Glass Microfiber Filter(Whatman GF/C)をビンの上にのせ、蓋をする。乳化化粧料0.05gをむき出しになっているフィルター部分に塗布し、1昼夜乾燥させた。その後、水25mLを入れ、20℃、湿度40%で3日間放置後(サンプルの質量変動がない状態)、質量を測定(M1)、更にその24時間後の質量を測定(M2)し、下記式により、水分蒸散量を求めた。
水分蒸散量(g)=M1−M2
【0044】
また、乳化化粧料の代わりにPlacebo(水)を用い、上記と同様に処理して水分蒸散量を求め、下記式により、閉塞性(%)を求めた。閉塞性が高いほど、均一な皮膜形成能が高く、外界刺激への隔離効果が大きいことを意味する。
閉塞性(%)=[1−(乳化化粧料の水分蒸散量/Placebo処理の水分蒸散量)]×100
【0045】
(C)汚れの付着測定:
煤を大気汚染物質のモデルとし、ダートチャンバーを用いて付着性を調べる。
(1)5cm×4cmの白色人工皮革(サプラーレ、出光社製)を用意する。
(2)0.02gのモデル皮脂を均一に塗布する(モデル皮脂組成は表1のとおり)。
【0046】
【表1】

【0047】
(3)0.04mLの化粧料を上記人工皮革全体に均一に塗布する。
(4)一晩乾燥させる。
(5)色差計(D−2500d、オリンパス社製)により、L*a*b*値を測定する。
(6)ダートチャンバー(65×40×40cm箱型/循環用ファン付き(花王社製))を準備する(図1)。
(7)チャンバー内中心に、排気口の高さに合わせて、化粧料を塗布した人工皮革を設置する。
(8)燃焼室に、灯油を染み込ませた濾紙(φ=22.0mm Glass Microfiber Filter(Whatman GF/C))を設置し、点火する。
(9)ファンで、煙を循環させ、5分放置後、人工皮革を取り出す。
(10)この操作を5回繰り返す。
(11)(10)の後、サンプルを取り出し、色差計により、L*a*b*値を測定し、ΔEを求める。
△Eが小さいほど、汚れの付着抑制効果が大きく、外界刺激への隔離効果が大きいことを意味する。
【0048】
(II)保存安定性に対する評価:
各化粧料をガラスビン(高さ9.5cm、内径4.5cm)に入れ、50℃1ヵ月、1日2週間40℃〜−30℃の温度サイクル2週間保存後、サンプルの状態を目視で観察し、下記の基準によって評価する。
(評価基準)
◎:変化無し。
○:少し変化があるが、分層がなく、製品として問題がない範囲。
△:少し分層あり。
×:完全に分層。
【0049】
(III)塗布時ののびの良さ、塗布乾燥後の感触、さっぱり感に対する評価:
10名の専門パネラーが、各化粧料を0.2g顔に塗布して保持する。以下の基準(1)、基準(2)、基準(3)により、塗布時ののびのよ良さ、塗布乾燥後の感触、さっぱり感を評価する。専門パネラー10名の評価より平均点を求め、3.6以上を◎、2.6〜3.6未満を○、1.6〜2.6未満を△、1.6未満を×とする。
【0050】
評価基準(1)
4;とてものばしやすい。
3;のばしやすい。
2;ややのばしやすい。
1;のばしにくい。
【0051】
評価基準(2)
4;皮膜残留感はまったくない。
3;皮膜残留感はほとんどない。
2;皮膜残留感がややある。
1;皮膜残留感がある。
【0052】
評価基準(3)
4;とてもさっぱりしている。
3;さっぱりしている。
2;ややさっぱりしている。
1;さっぱりしていない。
【0053】
【表2】

【0054】
表2の結果から明らかなように、本発明の油中水型乳化化粧料は、比較例1〜8のものと比較して、接触角、閉塞性、汚れの付着測定のいずれの項目においても、優れた結果が得られ、外界刺激への隔離効果に優れ、塗布時にのばしやすく、塗布乾燥後の皮膜の感触に優れ、その上、保存安定性及びさっぱり感の両立も実現されたものであることがわかった。
【0055】
実施例2〜8
実施例1の製造方法に準じ、表3に示される組成の実施例2〜8の油中水型乳化化粧料を、ホモミキサーにて、4000rpm、7000rpm、10000rpmの各攪拌条件で製造した。製造後の水相分離、経時粘度変化率を評価した。その結果を表3に示した。
【0056】
(評価方法及び基準)
以下の方法及び基準に基づき、油中水型乳化化粧料の製造後の水相分離、経時粘度変化率を評価する。
【0057】
(IV)製造後(攪拌によるせん断後)の水相分離:
各化粧料をプロペラ/ホモミキサーで攪拌して、化粧料を製造する。製造後の化粧料の状態を目視で観察し、下記の基準によって評価する。
(評価基準)
○:分離しない。
×:分離する。
【0058】
(V)製造後の経時粘度変化率:
製造直後の化粧料をガラスビン(高さ9.5cm、内径4.5cm)に入れ、25℃において、B型粘度計(東機産業社製、BM型またはTV−10型)により、6rpmの速度で、粘度を測定した。当該化粧料を室温で1ヶ月保存後、前述と同様な条件で再度粘度を測定し、下記式により経時粘度変化率を求めた。変化率が1から離れていくほど、経時粘度変化が大きいことを意味する。
経時粘度変化率=調製直後粘度/室温保存1ヶ月後の粘度
【0059】
【表3】

【0060】
表3の結果から明らかなように、本発明の油中水型乳化化粧料に、成分(F)のHLB8未満のシリコーン鎖を含む界面活性剤を配合すると、ホモミキサーを使用しても、水相分離が抑えられ、さらに成分(G)の無機塩類を配合すると、経時粘度変化が抑えられた。
【0061】
実施例9〜11及び比較例9〜11
実施例1の製造方法に準じ、表4に示される組成の実施例9〜11及び比較例9〜11の油中水型乳化化粧料を製造し、各化粧料のSPF値を測定した。その結果を表4に示した。
【0062】
(測定方法)
以下の方法に基づき、油中水型乳化化粧料のSPF値を測定した。
石英ガラス板上のサージカルテープに各化粧料を2mg/cm2になるよう均一に塗布し、20分以上放置して乾燥させた後、SPFアナライザー(Optometrics社)を用いて、化粧料のSPF値を測定した。
【0063】
【表4】

【0064】
表4の結果から明らかなように、本発明の油中水型乳化化粧料は、優れた皮膜形成ができ、より優れた紫外線防御効果が得られた。
【0065】
実施例12〜30
実施例1の製造方法に準じ、表5に示される組成の実施例12〜27の油中水型乳化化粧料及び実施例28(保湿美容液)、実施例29(サンスクリーン)、実施例30(バームクリーム)を製造した。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
【表7】

【0069】
【表8】

【0070】
実施例12〜30で得られた油中水型乳化化粧料はいずれも、保存安定性が良く、塗布時や塗布後の感触が良く、さっぱり感を有するとともに、外界刺激への隔離効果に優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E):
(A)シリコーンエラストマー 0.5〜10質量%であって、
該シリコーンエラストマーは、下記一般式(a−1):
1a2bcSiO(4-a-b-c)/2 (a−1)
及び/又は下記一般式(a−2):
1jkSiO(4-j-k)/2 (a−2)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
下記一般式(a−3):
m2m-1O(C24O)p(C36O)qm2m-1 (a−3)
で表されるポリオキシアルキレン、及び/又は
下記一般式(a−4):
1d3eSiO(4-d-e)/2 (a−4)
で表されるオルガノポリシロキサンと
を付加重合させて得られ、そのうち、前記一般式(a−1)及び/又は前記一般式(a−3)で表される成分を必須成分とするシリコーンエラストマー、
(式中、R1 は同種又は異種の置換又は非置換の炭素数1〜18の夫々一価のアルキル基若しくはアリール基、アラルキル基又はハロゲン化炭化水素基であり、R2は、一般式−Cn2nO(C24O)f(C36O)g4で示される有機基、R3は末端ビニル基を有する炭素数2〜10の一価の炭化水素基、R4 は水素原子若しくは炭素数1〜10の飽和有機基又はR5−(CO)−で示される基、R5は炭素数1〜5の飽和有機基であり、
a、b、c、d、e、j及びkはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1、0.001≦c≦1、1.0≦d≦3.0、0.001≦e≦1.5、1.0≦j≦3.0及び0.001≦k≦1.5であり、f及びpは2〜200の整数、g及びqは0〜200の整数、f+gは3〜200、p+qは3〜200であり、m及びnは2〜6である)
(B)重合度が350以上1500以下であるジメチルポリシロキサン 0.2〜10質量%、
(C)重合度が1以上6以下であるジメチルポリシロキサン及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサン 3〜28質量%、
(D)エチルアルコール 0.5〜25質量%、
(E)水
を含有する油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(A)の含有量と、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量との質量割合(A)/((A)+(B)+(C))が、0.03〜0.27である請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(A)のシリコンエラストマーが、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー及び(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマーから選ばれるものである請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
成分(B)のジメチルポリシロキサンの重合度が、600以上1500以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項5】
成分(B)のジメチルポリシロキサンの重合度が、600以上800以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項6】
成分(E)の油中水型乳化化粧料における含有量が、30〜90質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項7】
さらに、(F)HLB値が8未満のシリコーン鎖を含む界面活性剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項8】
さらに、(G)無機塩類を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項9】
さらに、(H)紫外線防御剤を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料を皮膚に使用しかつ保持することを特徴とするスキンケア方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−107887(P2013−107887A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−254031(P2012−254031)
【出願日】平成24年11月20日(2012.11.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】