説明

油圧駆動システム

【課題】油圧ポンプへの作動油の供給不足の発生を抑えると共に、チャージポンプの大型化を抑えることができる油圧駆動システムを提供する。
【解決手段】油圧駆動システム1において、作動油流路15は、メインポンプ10と油圧シリンダ14との間で閉回路を構成する。チャージポンプ28は、作動油流路15に作動油を補充する。ポンプ制御部24aは、流量低減制御を実行する。流量低減制御において、ポンプ制御部24aは、ストローク位置が所定の基準位置よりもシリンダロッド14aのストロークエンドに近くなったときにメインポンプ10の吸込流量がチャージポンプ28の最大吐出流量以下になるように吸込流量を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイールローダー等の作業機械は、油圧シリンダによって駆動される作業機を備えている。油圧シリンダには、油圧ポンプから吐出された作動油が供給される。油圧シリンダの内部は、シリンダロッドによって第1室と第2室とに区画されている。そして、第1室に作動油が供給され且つ第2室から作動油が排出されることにより、シリンダロッドが伸長する。また、第2室に作動油が供給され且つ第1室から作動油が排出されることにより、シリンダロッドが収縮する。
【0003】
作動油は、油圧回路を介して油圧シリンダに供給される。例えば、特許文献1では、油圧シリンダに作動油を供給するための油圧閉回路を備える作業機械が提案されている。油圧回路が閉回路であることにより、作業機の位置エネルギーが回生される。その結果、油圧ポンプを駆動する原動機の燃費を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−511831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、油圧シリンダではなく油圧モータに油圧閉回路によって作動油が供給される場合には、作動油が油圧モータに供給されている限り、油圧モータは回転を続けることができる。また、油圧モータが外力で駆動されているときには、外力が油圧モータに作用している限り、油圧モータは、回転を続けることができる。
【0006】
ところが、油圧シリンダの場合には、第1室又は第2室の端面にシリンダロッドが到達すると、シリンダロッドは、それ以上移動することができなくなる。すると、油圧シリンダから油圧ポンプへ戻る作動油の流量がゼロになる。一方、油圧ポンプは駆動源によって駆動され続ける。このため、油圧ポンプに供給される作動油の流量が不足して、油圧ポンプに作動油を供給する作動油流路の油圧(以下、「吸込み圧」と呼ぶ)は、瞬時に負圧となる。その結果、エアレーション或いはキャビテーションが発生して、油圧ポンブが損傷する可能性がある。
ところで、油圧閉回路には、チャージ回路が併設されることが多い。チャージ回路は、例えば、油圧ポンプからの漏れ油に相当する量の作動油を補充するために設けられる。油圧ポンプに供給される作動油の流量が不足して、吸込み圧がチャージ回路の油圧(以下、「チャージ圧」と呼ぶ)よりも低下すると、作動油がチャージ回路から作動油流路に供給される。従って、上述したように、油圧ポンプに供給される作動油の流量が不足したときには、チャージ回路からの作動油によって、不足している流量を補うことが考えられる。
【0007】
しかし、その場合、油圧ポンプが最高回転速度で駆動されているときには、油圧ポンプの最大吸込流量と同程度の流量の作動油がチャージ回路から補充される必要がある。従って、チャージ回路には、メインの油圧ポンプと同等以上の吐出能力を有するチャージポンプを用いる必要がある。このようなチャージポンプが用いられる場合、チャージポンプは、動力伝達には寄与しない過剰な馬力を発生させることになり、エネルギーの損失を増大させる要因となる。また、チャージポンプが大型化するため、車体でのチャージポンプの配置スペースが増大してしまう。
【0008】
本発明の課題は、油圧ポンプへの作動油の供給不足の発生を抑えると共に、チャージポンプの大型化を抑えることができる油圧駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る油圧駆動システムは、油圧シリンダと、メインポンプと、作動油流路と、チャージポンプと、ストローク位置検出部と、ポンプ制御部と、を備える。油圧シリンダは、シリンダチューブと、シリンダロッドとを有する。シリンダロッドは、シリンダチューブの内部に挿入される基端部を含む。シリンダロッドは、シリンダチューブの内部を第1室と第2室とに区画する。第1室に作動油が供給され且つ第2室から作動油が排出されることによりシリンダロッドが伸長する。第2室に作動油が供給され且つ第1室から作動油が排出されることによりシリンダロッドが収縮する。メインポンプは、第1室に作動油を供給し第2室からの作動油を吸込む状態と、第2室に作動油を供給し第1室からの作動油を吸込む状態とを切り換え可能である。作動油流路は、第1室とメインポンプとを接続し、第2室とメインポンプとを接続する。作動油流路は、メインポンプと油圧シリンダとの間で閉回路を構成する。チャージポンプは、作動油流路に作動油を補充する。ストローク位置検出部は、ストローク位置を検出する。ストローク位置は、シリンダチューブの内部におけるシリンダロッドの基端部の位置である。ポンプ制御部は、流量低減制御を実行する。流量低減制御において、ポンプ制御部は、ストローク位置が所定の基準位置よりもシリンダロッドのストロークエンドに近くなったときにメインポンプの吸込流量がチャージポンプの最大吐出流量以下になるように吸込流量を低減させる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る油圧駆動システムは、第1の態様の油圧駆動システムであって、ポンプ制御部は、流量低減制御において、ストローク位置に対する吸込流量の変化を規定する流量減少特性に従って、吸込流量を制御する。流量減少特性は、ストローク位置がストロークエンドに近づくほど吸込流量が減少する減少部分を有する。流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率は、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず変化しない。
【0011】
本発明の第3の態様に係る油圧駆動システムは、第2の態様の油圧駆動システムであって、流量低減制御の実行前の吸込流量が小さいほど吸込流量の減少が開始されるストローク位置がストロークエンドに近くなる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る油圧駆動システムは、第1の態様の油圧駆動システムであって、ポンプ制御部は、流量低減制御において、ストローク位置に対する吸込流量の変化を規定する流量減少特性に従って、吸込流量を制御する。流量減少特性は、ストローク位置がストロークエンドに近づくほど吸込流量が減少する減少部分を有する。流量低減制御の実行前の吸込流量に応じて、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が変化する。
【0013】
本発明の第5の態様に係る油圧駆動システムは、第4の態様の油圧駆動システムであって、流量低減制御の実行前の吸込流量が小さいほど、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が小さい。
【0014】
本発明の第6の態様に係る油圧駆動システムは、第5の態様の油圧駆動システムであって、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず吸込流量の減少が開始されるストローク位置は同じである。
【0015】
本発明の第7の態様に係る油圧駆動システムは、第2から第6の態様のいずれかの油圧駆動システムであって、流量減少特性では、ストロークエンドを含むストローク位置の所定範囲において、吸込流量がチャージポンプの最大吐出流量以下の所定流量に維持される。
【0016】
本発明の第8の態様に係る油圧駆動システムは、第2から第6の態様のいずれかの油圧駆動システムであって、流量減少特性では、ストローク位置がストロークエンドに近づくほど吸込流量が減少し、ストローク位置がストロークエンドに到達したときに、吸込流量がゼロに到達する。
【0017】
本発明の第9の態様に係る油圧駆動システムは、第2から第6の態様のいずれかの油圧駆動システムであって、流量減少特性では、ストローク位置がストロークエンドに近づくほど吸込流量が減少し、ストローク位置がストロークエンドに到達する前に、吸込流量がゼロに到達する。
【0018】
本発明の第10の態様に係る油圧駆動システムは、第2から第9の態様のいずれかの油圧駆動システムであって、伸縮判定部24bをさらに備える。伸縮判定部24bは、油圧シリンダが伸長と収縮との何れの動作中であるのかを判定する。油圧シリンダが伸長動作中であるときには、ポンプ制御部は、流量低減制御において、伸長動作用の流量減少特性に従って、吸込流量を制御する。油圧シリンダが収縮動作中であるときには、ポンプ制御部は、流量低減制御において、収縮動作用の流量減少特性に従って、吸込流量を制御する。
【0019】
本発明の第11の態様に係る油圧駆動システムは、第10の態様の油圧駆動システムであって、油圧シリンダを操作するための操作部材をさらに備える。伸縮判定部24bは、ストローク位置検出部の検出結果からシリンダロッドが伸長方向と収縮方向との何れの方向に移動しているかを判定する。伸縮判定部24bは、シリンダロッドの移動方向と、操作部材の操作方向とが一致しているときに、シリンダロッドが伸長動作中または収縮動作中であると判定する。
【0020】
本発明の第12の態様に係る油圧駆動システムは、第10又は第11の態様の油圧駆動システムであって、収縮動作時に油圧シリンダからメインポンプに戻る作動油の流量は、伸長動作時に油圧シリンダからメインポンプに戻る作動油の流量よりも大きい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の態様に係る油圧駆動システムでは、流量低減制御において、ポンプ制御部は、ストローク位置がシリンダロッドのストロークエンドに近づいたときに、メインポンプの吸込流量がチャージポンプの最大吐出流量以下になるように吸込流量を低減させる。そして、シリンダロッドがストロークエンドに到達して、吸込み圧が低下したときには、作動油の不足分がチャージポンプからの作動油によって補充される。このとき、メインポンプの吸込流量は流量低減制御によって低減されているので、補充しなければならない作動油の流量は小さくなっている。従って、チャージポンプを大型化させることなく、作動油の不足分をチャージポンプからの作動油によって補充することができる。これにより、メインポンプへの作動油の供給不足の発生を抑えると共に、チャージポンプの大型化を抑えることができる。
【0022】
本発明の第2の態様に係る油圧駆動システムでは、ストローク位置がストロークエンドに近づくにつれて吸込流量が減少するので、油圧シリンダの動作が急激に遅くなることを抑えることができる。また、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず変化しないので、油圧シリンダの動作速度の変化にバラツキが生じることを抑えることができる。
【0023】
本発明の第3の態様に係る油圧駆動システムでは、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず変化しないように、流量減少特性を容易に設定することができる。
【0024】
本発明の第4の態様に係る油圧駆動システムでは、ストローク位置がストロークエンドに近づくにつれて吸込流量が減少する。このため、油圧シリンダの動作が急激に遅くなることを抑えることができる。また、流量低減制御の実行前の吸込流量に応じて、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が変化するので、流量低減制御の実行前の状況に応じた適切な変化率で吸込流量を減少させることができる。
【0025】
本発明の第5の態様に係る油圧駆動システムでは、流量低減制御の実行前の状況に応じた適切な変化率で吸込流量を減少させることができる。
【0026】
本発明の第6の態様に係る油圧駆動システムでは、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず吸込流量の減少が開始されるストローク位置は同じであるので、油圧シリンダの動作が遅くなり始めるタイミングにバラツキが生じることを抑えることができる。
【0027】
本発明の第7の態様に係る油圧駆動システムでは、ストローク位置がストロークエンドに到達したときにも、所定流量の作動油がメインポンプに吸込まれて、再びメインポンプから吐出されている。従って、シリンダロッドの基端部は、ある程度の速度で移動して、シリンダチューブの内面の端部に接触する。このため、オペレータは、ストローク位置がストロークエンドに到達したことを容易に把握することができる。
【0028】
本発明の第8の態様に係る油圧駆動システムでは、ストローク位置がストロークエンドに到達したときに、吸込流量がゼロに到達する。このため、シリンダロッドの基端部をシリンダチューブの内面の端部に穏やかに接触させることができる。
【0029】
本発明の第9の態様に係る油圧駆動システムでは、ストローク位置がストロークエンドに到達する前に、吸込流量がゼロに到達する。このため、シリンダロッドの基端部をシリンダチューブの内面の端部に穏やかに接触させることができる。また、より確実に、ストローク位置がストロークエンドに到達した時点での吸込流量をゼロにすることができる。
【0030】
本発明の第10の態様に係る油圧駆動システムでは、油圧シリンダの収縮動作時と伸長動作時とで、異なる流量減少特性に従って吸込流量を制御することができる。このため、油圧シリンダの動作状態に適した流量減少特性で吸込流量を制御することができる。
【0031】
本発明の第11の態様に係る油圧駆動システムでは、シリンダロッドの移動方向と、操作部材の操作方向との両方によって、シリンダロッドが伸長動作中または収縮動作中であると判定される。このため、例えば、操作部材の操作方向を逆方向に切り換えた直後のように、油圧シリンダが惰性で操作部材の操作方向と逆方向に移動している場合であっても、適切な流量減少特性を選択することができる。
【0032】
本発明の第12の態様に係る油圧駆動システムでは、収縮動作時に油圧シリンダからメインポンプに戻る作動油の流量は、伸長動作時に油圧シリンダからメインポンプに戻る作動油の流量よりも大きい。このため、収縮動作用の流量減少特性と伸長動作用の流量減少特性とが用いられることによって、作動油の戻り流量の違いに適した吸込流量の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図2】油圧駆動システムにおける吸込流量の制御を示すフローチャートである。
【図3】油圧駆動システムにおける流量減少特性を示すグラフである。
【図4】第1変形例に係る流量減少特性を示すグラフである。
【図5】第2変形例に係る流量減少特性を示すグラフである。
【図6】第3変形例に係る流量減少特性を示すグラフである。
【図7】本発明の他の実施形態に係る油圧駆動システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る油圧駆動システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る油圧駆動システム1の構成を示すブロック図である。油圧駆動システム1は、例えば油圧ショベル、ホイールローダー、ブルドーザなどの作業機械に搭載される。油圧駆動システム1は、エンジン11と、メインポンプ10と、油圧シリンダ14と、作動油流路15と、ポンプコントローラ24とを有する。
【0035】
エンジン11は、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とを駆動する。エンジン11は、本発明の駆動源に相当する。エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンであり、燃料噴射装置21からの燃料の噴射量が調整されることにより、エンジン11の出力が制御される。燃料噴射量の調整は、燃料噴射装置21がエンジンコントローラ22によって制御されることで行われる。なお、エンジン11の実回転速度は、回転速度センサ23にて検出され、その検出信号は、エンジンコントローラ22およびポンプコントローラ24にそれぞれ入力される。
【0036】
メインポンプ10は、エンジン11によって駆動され、作動油を吐出する。メインポンプ10は、第1油圧ポンプ12と、第2油圧ポンプ13とを有する。メインポンプ10から吐出された作動油は、油圧シリンダ14に供給される。
【0037】
第1油圧ポンプ12は、可変容量型の油圧ポンプである。第1油圧ポンプ12の傾転角が制御されることにより、第1油圧ポンプ12の吐出流量が制御される。言い換えれば、第1油圧ポンプ12の傾転角が制御されることにより、第1油圧ポンプ12の吸込流量が制御される。第1油圧ポンプ12の傾転角は、第1ポンプ流量制御装置25によって制御される。第1ポンプ流量制御装置25は、ポンプコントローラ24からの指令信号に基づいて、第1油圧ポンプ12の傾転角を制御することにより、第1油圧ポンプ12の吐出流量を制御する。第1油圧ポンプ12は、2方向吐出型の油圧ポンプである。具体的には、第1油圧ポンプ12は、第1ポンプポート12aと第2ポンプポート12bとを有する。第1油圧ポンプ12は、第1吐出状態と第2吐出状態とに切り換え可能である。第1油圧ポンプ12は、第1吐出状態では、第2ポンプポート12bに作動油が供給され、第1ポンプポート12aから作動油を吐出する。第1油圧ポンプ12は、第2吐出状態では、第1ポンプポート12aに作動油が供給され、第2ポンプポート12bから作動油を吐出する。
【0038】
第2油圧ポンプ13は、可変容量型の油圧ポンプである。第2油圧ポンプ13の傾転角が制御されることにより、第2油圧ポンプ13の吐出流量が制御される。言い換えれば、第2油圧ポンプ13の傾転角が制御されることにより、第2油圧ポンプ13の吸込流量が制御される。第2油圧ポンプ13の傾転角は、第2ポンプ流量制御装置26によって制御される。第2ポンプ流量制御装置26は、ポンプコントローラ24からの指令信号に基づいて第2油圧ポンプ13の傾転角を制御することにより、第2油圧ポンプ13の吐出流量を制御する。第2油圧ポンプ13は、2方向吐出型の油圧ポンプである。具体的には、第2油圧ポンプ13は、第1ポンプポート13aと第2ポンプポート13bとを有する。第2油圧ポンプ13は、第1油圧ポンプ12と同様に、第1吐出状態と第2吐出状態とに切り換え可能である。第2油圧ポンプ13は、第1吐出状態では、第2ポンプポート13bに作動油が供給され、第1ポンプポート13aから作動油を吐出する。第2油圧ポンプ13は、第2吐出状態では、第1ポンプポート13aに作動油が供給され、第2ポンプポート13bから作動油を吐出する。
【0039】
油圧シリンダ14は、第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13から吐出された作動油によって駆動される。油圧シリンダ14は、例えば、ブーム、アーム、或いはバケットなどの作業機を駆動する。油圧シリンダ14は、シリンダロッド14aとシリンダチューブ14bとを有する。シリンダロッド14aは、シリンダチューブ14bの内部を第1室14cと第2室14dとに区画している。シリンダロッド14aは、シリンダチューブ14bの内部に挿入される基端部を含む。油圧シリンダ14は、第1室14cと第2室14dに対する作動油の供給と排出とが切り換えられることにより伸縮する。具体的には、第1室14cに作動油が供給され、第2室14dから作動油が排出されることによって、シリンダロッド14aが伸長する。第2室14dに作動油が供給され、第1室14cから作動油が排出されることによって、シリンダロッドは収縮する。なお、シリンダロッド14aの第1室14cにおける受圧面積は、シリンダロッド14aの第2室14dにおける受圧面積よりも大きい。従って、油圧シリンダ14を伸長させるときには、第2室14dから排出される作動油よりも多量の作動油が第1室14cに供給される。また、油圧シリンダ14を収縮させるときには、第2室14dに供給される作動油よりも多量の作動油が第1室14cから排出される。
【0040】
作動油流路15は、第1油圧ポンプ12と、第2油圧ポンプ13と、油圧シリンダ14とに接続されている。作動油流路15は、第1室14cと第1ポンプポート12aとを接続し、第2室14dと第2ポンプポートとを接続する。作動油流路15は、メインポンプ10と油圧シリンダ14との間で閉回路を構成する。具体的には、作動油流路15は、第1流路31と、第2流路32とを有する。第1流路31は、油圧シリンダ14の第1室14cと第1油圧ポンプ12の第1ポンプポート12aとを接続する。第1流路31は、油圧シリンダ14の第1室14cに作動油を供給する、或いは、油圧シリンダ14の第1室14cから作動油を回収するための流路である。第1流路31は、第2油圧ポンプ13の第1ポンプポート13aにも接続される。従って、第1流路31には、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13との両方からの作動油が供給される。第2流路32は、油圧シリンダ14の第2室14dと第1油圧ポンプ12の第2ポンプポート12bとに接続される。第2流路32は、油圧シリンダ14の第2室14dに作動油を供給する、或いは、油圧シリンダ14の第2室14dから作動油を回収するための流路である。なお、第2油圧ポンプ13の第2ポンプポート13bは、作動油タンク27に接続される。従って、第2流路32には、第1油圧ポンプ12からの作動油が供給される。作動油流路15は、第1流路31と第2流路32とによって、メインポンプ10と油圧シリンダ14との間で閉回路を構成している。
【0041】
油圧駆動システム1は、チャージポンプ28をさらに備える。チャージポンプ28は、作動油流路15に作動油を補充するための油圧ポンプである。チャージポンプ28は、エンジン11によって駆動されることにより作動油を吐出する。チャージポンプ28は、固定容量型の油圧ポンプである。作動油流路15は、チャージ流路35をさらに有する。チャージ流路35は、チャージポンプ28と第1流路31とを接続する。また、チャージ流路35は、チャージポンプ28と第2流路32とを接続する。具体的には、チャージ流路35は、チェック弁41aを介して第1流路31に接続されている。チェック弁41aは、第1流路31の油圧がチャージ流路35の油圧よりも低くなったときに開かれる。チャージ流路35は、チェック弁41bを介して第2流路32に接続されている。チェック弁41bは、第2流路32の油圧がチャージ流路35の油圧よりも低くなったときに開かれる。また、チャージ流路35は、チャージリリーフ弁42を介して作動油タンク27に接続されている。チャージリリーフ弁42は、チャージ流路35の油圧を所定のチャージ圧に維持する。第1流路31又は第2流路32の油圧がチャージ流路35の油圧よりも低くなると、チャージポンプ28からの作動油がチャージ流路35を介して第1流路31又は第2流路32に供給される。これにより、第1流路31及びは第2流路32の油圧が所定値以上に維持される。
【0042】
作動油流路15は、リリーフ流路36をさらに有する。リリーフ流路36は、チェック弁41cを介して第1流路31に接続されている。チェック弁41cは、第1流路31の油圧がリリーフ流路36の油圧よりも高くなったときに開かれる。リリーフ流路36は、チェック弁41dを介して第2流路32に接続されている。チェック弁41dは、第2流路32の油圧がリリーフ流路36の油圧よりも高くなったときに開かれる。また、リリーフ流路36は、リリーフ弁43を介してチャージ流路35に接続されている。リリーフ弁43は、リリーフ流路36の圧力を所定のリリーフ圧以下に維持する。これにより、第1流路31及び第2流路32の油圧が所定のリリーフ圧以下に維持される。
【0043】
油圧シリンダ14を伸長させるときには、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とが第1吐出状態で駆動される。これにより、メインポンプ10は、第1室14cに作動油を供給し第2室14dからの作動油を吸込む状態となる。具体的には、第1油圧ポンプ12の第1ポンプポート12aと、第2油圧ポンプ13の第1ポンプポート13aとから吐出された作動油が、第1流路31を通って、油圧シリンダ14の第1室14cに供給される。また、油圧シリンダ14の第2室14dの作動油が、第2流路32を通って、第1油圧ポンプ12の第2ポンプポート12bに回収される。これにより、油圧シリンダ14が伸長する。
【0044】
油圧シリンダ14を収縮させるときには、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とが第2吐出状態で駆動される。これにより、メインポンプ10は、第2室14dに作動油を供給し第1室14cからの作動油を吸込む状態となる。具体的には、第1油圧ポンプ12の第2ポンプポート12bから吐出された作動油が、第2流路32を通って、油圧シリンダ14の第2室14dに供給される。また、油圧シリンダ14の第1室14cの作動油が、第1流路31を通って、第1油圧ポンプ12の第1ポンプポート12a及び第2油圧ポンプ13の第1ポンプポート13aに回収される。これにより、油圧シリンダ14が収縮する。
【0045】
油圧駆動システム1は、ストローク位置検出部29をさらに備える。ストローク位置検出部29は、ストローク位置を検出する。ストローク位置は、シリンダチューブ14bの内部におけるシリンダロッド14aの基端部の位置である。ストローク位置検出部29は、例えば、油圧シリンダ14によって駆動されるブーム、アーム、或いはバケットなどの作業機部材の揺動角度を検出する。後述するポンプコントローラ24は、作業機部材の揺動角度からストローク位置を算出することができる。なお、ストローク位置検出部29は、シリンダロッド14aのストローク量を検出するセンサであってもよい。
【0046】
油圧駆動システム1は、操作装置46をさらに備える。操作装置46は、操作部材46aと、操作検出部46bとを有する。操作部材46aは、作業機械の各種の動作を指令するためにオペレータによって操作される。例えば、油圧シリンダ14が、ブームを駆動するブームシリンダである場合には、操作部材46aは、ブームを操作するためのブーム操作レバーである。すなわち、操作部材46は、油圧シリンダ14を操作するためにオペレータによって操作される。操作部材46aは、中立位置から油圧シリンダ14を伸長させる方向と、油圧シリンダ14を収縮させる方向との2方向に操作可能である。操作検出部46bは、操作部材46aの操作量及び操作方向を検出する。操作検出部46bは、例えば操作部材46aの位置を検出するセンサである。操作部材46が中立位置に位置しているときには、操作部材46aの操作量はゼロである。操作部材46aの操作量及び操作方向を示す検出信号が、操作検出部46bからポンプコントローラ24に入力される。
【0047】
エンジンコントローラ22は、燃料噴射装置21を制御することによりエンジン11の出力を制御する。エンジンコントローラ22には、設定された目標エンジン回転速度および作業モードに基づいて設定されるエンジン出力トルク特性がマップ化されて記憶されている。エンジン出力トルク特性は、エンジン11の出力トルクと回転速度との関係を示す。エンジンコントローラ22は、エンジン出力トルク特性に基づいて、エンジン11の出力を制御する。
【0048】
ポンプコントローラ24は、操作部材46aの操作量に応じて第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13とを制御する。ポンプコントローラは、ポンプ制御部24aと、伸縮判定部24bと、記憶部24cとを有する。ポンプ制御部24aと伸縮判定部24bとは例えばCPUなどの演算装置によって実現される。記憶部24cは、RAM、ROM、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記録装置によって実現される。記憶部24cは、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13との制御のための情報を記憶している。
【0049】
ポンプ制御部24aは、操作部材46aの操作量に応じて油圧シリンダ14に供給される作動油の目標流量を演算する。また、ポンプ制御部24aは、流量低減制御を実行する。流量低減制御は、ストローク位置が所定の基準位置よりもシリンダロッド14aのストロークエンドに近くなったときに第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13との吸込流量がチャージポンプの最大吐出流量以下になるように吸込流量を低減させる制御である。流量低減制御については後に詳細に説明する。
【0050】
伸縮判定部24bは、油圧シリンダ14が伸長と収縮との何れの動作中であるのかを判定する。伸縮判定部24bは、ストローク位置検出部29の検出結果と操作検出部46bの検出結果とからシリンダロッド14aが伸長方向と収縮方向との何れの方向に移動しているかを判定する。具体的には、伸縮判定部24bは、シリンダロッド14aの移動方向と、操作部材46aの操作方向とが一致しているときに、シリンダロッド14aが伸長動作中または収縮動作中であると判定する。
【0051】
次に、流量低減制御の処理について、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0052】
ステップS101では、ストローク位置検出部29によってストローク位置Sが検出される。ステップS102では、シリンダロッド14aの移動方向が収縮方向であるか否かが判定される。例えば、シリンダ位置の変化に基づいてシリンダロッド14aの移動方向が収縮方向であるか否かが判定される。ストローク位置Sは、収縮動作時のストロークエンドをゼロとして、伸長動作時のストロークエンドに近づくほど大きくなる値で表現される。シリンダロッド14aの移動方向が収縮方向であるときには、ステップS103に進む。
【0053】
ステップS103では、操作検出部46bによって操作部材46aの操作方向が検出される。次に、ステップS104において、操作部材46aの操作方向が収縮方向か否かが判定される。操作部材46aの操作方向が収縮方向であるときには、ステップS105に進む。ステップS105では、ストローク位置Sが、収縮動作時の減少開始位置S2以下であるか否かが判定される。ストローク位置Sが減少開始位置S2以下であるときには、ステップS106に進む。ステップS106では、収縮動作用の流量減少特性で第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13の吸込流量が制御される。流量減少特性は、ストローク位置Sに対する吸込流量の変化を規定する。図3(a)に示すように、流量減少特性は、ストローク位置Sが収縮動作時の基準位置S1よりも収縮側のストロークエンドに近くなったときに第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13の吸込流量がチャージポンプ28の最大吐出流量Qcmax以下になるように、ストローク位置Sに対する吸込流量の変化を規定する。なお、図3(a)は、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ13との合計吸込流量の変化を示している。収縮動作用の流量減少特性については後に詳細に説明する。なお、ステップS104において、操作部材46aの操作方向が収縮方向ではないと判定されたときには、ステップS101へ戻る。また、ステップS105において、ストローク位置Sが所定の収縮動作時の減少開始位置S2以下ではないと判定されたときには、ステップS101に戻る。
【0054】
ステップS102において、シリンダロッド14aの移動方向が収縮方向ではないと判定されたときにはステップS107へ進む。ステップS107において、シリンダロッド14aの移動方向が伸長方向であるか否かが判定される。シリンダロッド14aの移動方向が伸長方向であるときには、ステップS108に進む。
【0055】
ステップS108では、操作検出部46bによって操作部材46aの操作方向が検出される。次に、ステップS109において、操作部材46aの操作方向が伸長方向か否かが判定される。操作部材46aの操作方向が伸長方向であるときには、ステップS110に進む。ステップS110では、ストローク位置Sが、伸長動作時の減少開始位置S3以上であるか否かが判定される。ストローク位置Sが減少開始位置S3以上であるときには、ステップS111に進む。ステップS111では、図3(b)に示す伸長動作用の流量減少特性で吸込流量が制御される。図3(b)に示すように、流量減少特性は、ストローク位置Sが伸長動作時の基準位置S4よりも伸長側のストロークエンドSmaxに近くなったときに第1油圧ポンプ12の吸込流量がチャージポンプ28の最大吐出流量Qcmax以下になるように、ストローク位置Sに対する吸込流量の変化を規定する。なお、図3(b)は、第1油圧ポンプ12の吸込流量の変化を示している。伸長動作用の流量減少特性については後に詳細に説明する。なお、ステップS107において、シリンダロッド14aの移動方向が伸長方向ではないと判定されたときには、ステップS101へ戻る。また、ステップS109において、操作部材46aの操作方向が伸長方向ではないと判定されたときには、ステップS101へ戻る。また、ステップS110において、ストローク位置Sが伸長動作時の減少開始位置S3以上ではないと判定されたときには、ステップS101に戻る。
【0056】
上述したように、油圧シリンダ14が収縮動作中であるときには、図3(a)に示す収縮動作用の流量減少特性で吸込流量が制御される。また、油圧シリンダ14が伸長動作中であるときには、図3(b)に示す伸長動作用の流量減少特性で吸込流量が制御される。
【0057】
図3(a)において、Lmaxは、流量低減制御の実行前の吸込流量が最大流量であるときの流量減少特性を示している。L1は、流量低減制御の実行前の吸込流量が最大流量より少ない第1流量であるときの流量減少特性を示している。L2は、流量低減制御の実行前の吸込流量が第1流量より少ない第2流量であるときの流量減少特性を示している。各流量減少特性は、ストローク位置Sがストロークエンドに近づくほど吸込流量が減少する減少部分を有する。各流量減少特性の減少部分の傾きは一致している。すなわち、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率は、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず変化しない。ただし、各流量減少特性において吸込流量の減少が開始されるストローク位置Sは、互いに異なっている。具体的には、流量低減制御の実行前の吸込流量が小さいほど、減少開始位置が収縮動作時のストロークエンドに近くなっている。すなわち、流量減少特性L1の減少開始位置S2aは、流量減少特性Lmaxの減少開始位置S2よりも小さい。また、流量減少特性L2の減少開始位置S2bは、流量減少特性L1の減少開始位置S2aよりも小さい。また、各流量減少特性では、収縮動作時のストロークエンドを含むストローク位置Sの所定範囲(ストローク位置0−S1の間)において、吸込流量が所定流量Q0に維持される。所定流量Q0は、チャージポンプ28の最大吐出流量Qcmax以下であり、且つ、ゼロより大きい。
【0058】
図3(b)において、Lmax’は、流量低減制御の実行前の吸込流量が最大流量であるときの流量減少特性を示している。L1’は、流量低減制御の実行前の吸込流量が最大流量より少ない第1流量であるときの流量減少特性を示している。L2’は、流量低減制御の実行前の吸込流量が第1流量より少ない第2流量であるときの流量減少特性を示している。各流量減少特性は、ストローク位置Sがストロークエンドに近づくほど吸込流量が減少する減少部分を有する。各流量減少特性の減少部分の傾きは一致している。すなわち、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率は、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず変化しない。ただし、各流量減少特性において吸込流量の減少が開始されるストローク位置Sは、互いに異なっている。具体的には、流量低減制御の実行前の吸込流量が小さいほど、減少開始位置が伸長動作時のストロークエンドに近くなっている。すなわち、流量減少特性L1’の減少開始位置S3aは、流量減少特性Lmax’の減少開始位置S3よりも大きい。また、流量減少特性L2の減少開始位置S3bは、流量減少特性L1の減少開始位置S3aよりも大きい。また、各流量減少特性では、伸長動作時のストロークエンドを含むストローク位置Sの所定範囲(ストローク位置S4−Smaxの間)において、吸込流量が所定流量Q0’に維持される。所定流量Q0’は、チャージポンプ28の最大吐出流量Qcmax以下、且つ、ゼロより大きい。なお、伸長動作用の流量減少特性での所定流量Q0’は、収縮動作用の流量減少特性での所定流量Q0と同じであってもよい。或いは、伸長動作用の流量減少特性での所定流量Q0’は、収縮動作用の流量減少特性での所定流量Q0と異なっていてもよい。
【0059】
本実施形態に係る油圧駆動システム1は、以下の特徴を有する。
【0060】
流量低減制御において、ポンプ制御部24aは、ストローク位置Sがシリンダロッド14aのストロークエンドに近づいたときに、第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13の吸込流量(又は、第1油圧ポンプ12の吸込流量)がチャージポンプ28の最大吐出流量Qcmax以下になるように吸込流量を低減させる。シリンダロッド14aがストロークエンドに到達して、吸込み圧が低下したときには、作動油の不足分がチャージポンプ28からの作動油によって補充される。このとき、第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13の吸込流量(又は、第1油圧ポンプ12の吸込流量)は流量低減制御によって低減されているので、補充しなければならない作動油の流量は小さくなっている。従ってチャージポンプ28を大型化させることなく、作動油の不足分をチャージポンプ28からの作動油によって補充することができる。これにより、第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13への作動油(又は、第1油圧ポンプ12への作動油)の供給不足の発生を抑えると共に、チャージポンプ28の大型化を抑えることができる。
【0061】
図3に示す流量減少特性では、ストローク位置Sがストロークエンドに近づくにつれて吸込流量が減少するので、油圧シリンダ14の動作が急激に遅くなることを抑えることができる。また、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず変化しないので、油圧シリンダ14の動作速度の変化にバラツキが生じることを抑えることができる。
【0062】
図3(a)に示す流量減少特性では、ストローク位置Sがストロークエンドに到達したときにも、所定流量Q0の作動油が第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13に吸い込まれている。また、図3(b)に示す流量減少特性では、ストローク位置Sがストロークエンドに到達したときにも、所定流量Q0’の作動油が第1油圧ポンプ12に吸い込まれている。従って、シリンダロッド14aの基端部は、低速度で移動して、シリンダチューブ14bの内面の端部に接触する。このため、オペレータは、ストローク位置Sがストロークエンドに到達したことを容易に把握することができる。
【0063】
油圧シリンダ14の収縮動作時と伸長動作時とで、異なる流量減少特性に従って吸込流量が制御される。このため、油圧シリンダ14の動作状態に適した流量減少特性で吸込流量を制御することができる。例えば、油圧シリンダ14から第1油圧ポンプ12及び第2油圧ポンプ13に戻る作動油の流量は、油圧シリンダ14の伸長動作時と収縮動作時とで異なる。従って、油圧シリンダ14の収縮動作時と収縮動作時とで、異なる流量減少特性が用いられることによって、このような流量の違いに適した吸込流量の制御を行うことができる。
【0064】
シリンダロッド14aの移動方向と、操作部材46aの操作方向との両方によって、シリンダロッド14aが伸長動作中または収縮動作中であると判定される。このため、例えば、操作部材46aの操作方向を逆方向に切り換えた直後のように、油圧シリンダ14が惰性で操作部材46aの操作方向と逆方向に移動している場合であっても、適切な流量減少特性を選択することができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、図3に示す流量減少特性と異なる流量減少特性が用いられてもよい。図4に、第1変形例に係る流量減少特性を示す。図4(a)は、収縮動作時の流量減少特性を示す。図4(b)は、伸長動作時の流量減少特性を示す。図4(a)に示すように、流量低減制御の実行前の吸込流量に応じて、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が変化している。具体的には、流量減少特性L1の傾きの大きさは、流量減少特性Lmaxの傾きの大きさより小さい。流量減少特性L2の傾きの大きさは、流量減少特性L1の傾きの大きさより小さい。すなわち、流量低減制御の実行前の吸込流量が小さいほど、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が小さい。また、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず吸込流量の減少が開始されるストローク位置Sは同じである。すなわち、流量減少特性Lmaxと流量減少特性L1と流量減少特性L2とでは、いずれも減少開始位置S2において吸込流量の減少が開始される。また、流量減少特性Lmaxと流量減少特性L1と流量減少特性L2とでは、同じストローク位置Sにおいて、吸込流量がチャージポンプ28の最大吐出流量Qcmax以下の所定流量Q0に到達する。具体的には、流量減少特性Lmaxと流量減少特性L1と流量減少特性L2とでは、いずれも基準位置S1において、吸込流量が所定流量Q0に到達する。図4(b)に示す流量減少特性も、図4(a)に示す流量減少特性と同様に、流量低減制御の実行前の吸込流量に応じて、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が変化している。具体的には、流量減少特性L1’の傾きの大きさは、流量減少特性Lmax’の傾きの大きさより小さい。流量減少特性L2’の傾きの大きさは、流量減少特性L1’の傾きの大きさより小さい。すなわち、流量低減制御の実行前の吸込流量が小さいほど、流量減少特性の減少部分における吸込流量の変化率が小さい。また、流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず吸込流量の減少が開始されるストローク位置Sは同じである。すなわち、流量減少特性Lmax’と流量減少特性L1’と流量減少特性L2’とでは、いずれも減少開始位置S3において吸込流量の減少が開始される。また、流量減少特性Lmax’と流量減少特性L1’と流量減少特性L2’とでは、同じストローク位置Sにおいて、吸込流量がチャージポンプ28の最大吐出流量Qcmax以下の所定流量Q0’に到達する。具体的には、流量減少特性Lmax’と流量減少特性L1’と流量減少特性L2’とでは、いずれも基準位置S4において、吸込流量が所定流量Q0’に到達する。第1変形例に係る流量減少特性は、他の点については、上述した実施形態に係る流量減少特性と同様である。
【0067】
図5に、第2変形例に係る流量減少特性を示す。図5(a)は、収縮動作時の流量減少特性を示す。図5(b)は、伸長動作時の流量減少特性を示す。図5(a)に示すように、流量減少特性Lmax,L1,L2では、ストローク位置Sが収縮動作時のストロークエンドに到達したときに、吸込流量がゼロに到達する。すなわち、ストローク位置Sが収縮動作時のストロークエンドに到達するのと同時に、吸込流量がゼロに到達する。また、図5(b)に示すように、流量減少特性Lmax’,L1’,L2’では、ストローク位置Sが伸長動作時のストロークエンドに到達したときに、吸込流量がゼロに到達する。すなわち、ストローク位置Sが伸長動作時のストロークエンドに到達するのと同時に、吸込流量がゼロに到達する。第2変形例に係る流量減少特性は、他の点については、上述した実施形態に係る流量減少特性と同様である。
【0068】
図6に、第3変形例に係る流量減少特性を示す。図6(a)は、収縮動作時の流量減少特性を示す。図6(b)は、伸長動作時の流量減少特性を示す。図6(a)に示すように、収縮動作時の流量減少特性Lmax,L1,L2では、ストローク位置Sが収縮動作時のストロークエンドに到達する前に、吸込流量がゼロに到達する。具体的には、収縮動作時の流量減少特性Lmax,L1,L2では、ストローク位置Sが収縮動作時の基準位置S1に到達したときに、吸込流量がゼロに到達する。また、図6(b)に示すように、伸長動作時の流量減少特性Lmax’,L1’,L2’では、ストローク位置Sが伸長動作時のストロークエンドに到達する前に、吸込流量がゼロに到達する。具体的には、伸長動作時の流量減少特性Lmax’,L1’,L2’では、ストローク位置Sが伸長動作時の基準位置S4に到達したときに、吸込流量がゼロに到達する。第3変形例に係る流量減少特性は、他の点については、上述した実施形態に係る流量減少特性と同様である。
【0069】
また、第1変形例に係る流量減少特性が、第2変形例に係る流量減少特性のように、ストローク位置Sが収縮動作時のストロークエンドに到達したときに、吸込流量がゼロに到達するように修正されてもよい。或いは、第1変形例に係る流量減少特性が、第3変形例に係る流量減少特性のように、ストローク位置Sが収縮動作時のストロークエンドに到達する前に、吸込流量がゼロに到達するように修正されてもよい。
【0070】
また、油圧駆動システム1の構成は、上述した油圧駆動システム1の構成に限らない。例えば、図7に示すように、アキュムレータ38がチャージ流路35に接続されてもよい。アキュムレータ38は、チェック弁39を介してチャージポンプ28に接続される。チェック弁39は、チャージ流路35においてチャージポンプ28側からアキュムレータ38側への作動油の流れを許容し、アキュムレータ38側からチャージポンプ28側への作動油の流れを禁止する。アキュムレータ38に蓄えられる作動油によってチャージ流路35に作動油を補充することができる。このため、チャージポンプ28の大型化をさらに抑えることができる。
【0071】
上記の実施形態では、油圧シリンダ14に2つの油圧ポンプ12,13が接続されている2ポンプ型の油圧駆動システムに本発明が適用されているが、油圧シリンダ14に1つの油圧ポンプが接続される1ポンプ型の油圧駆動システムに本発明が適用されてもよい。また、駆動源は、エンジンに限らず、電動機であってもよい。この場合、油圧ポンプは、上記の油圧ポンプ12,13のような可変容量型の油圧ポンプではなく、固定容量型の油圧ポンプを用いることができる。固定容量型の油圧ポンプの吸込流量は、電動機の回転数を制御することにより、制御することができる。
【0072】
上記の実施形態では、伸長動作時と収縮動作時との両方において、流量低減制御が実行されているが、伸長動作時と収縮動作時とのいずれか一方において、流量低減制御が実行されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、油圧ポンプへの作動油の供給不足の発生を抑えると共に、チャージポンプの大型化を抑えることができる油圧駆動システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 油圧駆動システム
11 エンジン
10 メインポンプ
14 油圧シリンダ
15 作動油流路
24a ポンプ制御部
24b 伸縮判定部
28 チャージポンプ
29 ストローク位置検出部
46a 操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、前記シリンダチューブの内部に挿入される基端部を含み前記シリンダチューブの内部を第1室と第2室とに区画するシリンダロッドとを有し、前記第1室に作動油が供給され且つ前記第2室から作動油が排出されることにより前記シリンダロッドが伸長し、前記第2室に作動油が供給され且つ前記第1室から作動油が排出されることにより前記シリンダロッドが収縮する油圧シリンダと、
前記第1室に作動油を供給し前記第2室からの作動油を吸込む状態と、前記第2室に作動油を供給し前記第1室からの作動油を吸込む状態とを切り換え可能なメインポンプと、
前記第1室と前記メインポンプとを接続し、前記第2室と前記メインポンプとを接続し、前記メインポンプと前記油圧シリンダとの間で閉回路を構成する作動油流路と、
前記作動油流路に作動油を補充するチャージポンプと、
前記シリンダチューブの内部における前記シリンダロッドの基端部の位置であるストローク位置を検出するストローク位置検出部と、
前記ストローク位置が所定の基準位置よりも前記シリンダロッドのストロークエンドに近くなったときに前記メインポンプの吸込流量が前記チャージポンプの最大吐出流量以下になるように吸込流量を低減させる流量低減制御を実行するポンプ制御部と、
を備える油圧駆動システム。
【請求項2】
前記ポンプ制御部は、前記流量低減制御において、前記ストローク位置に対する前記吸込流量の変化を規定する流量減少特性に従って、前記吸込流量を制御し、
前記流量減少特性は、前記ストローク位置が前記ストロークエンドに近づくほど前記吸込流量が減少する減少部分を有し、
前記流量減少特性の前記減少部分における前記吸込流量の変化率は、前記流量低減制御の実行前の吸込流量に関わらず変化しない、
請求項1に記載の油圧駆動システム。
【請求項3】
前記流量低減制御の実行前の前記吸込流量が小さいほど前記吸込流量の減少が開始される前記ストローク位置が前記ストロークエンドに近くなる、
請求項2に記載の油圧駆動システム。
【請求項4】
前記ポンプ制御部は、前記流量低減制御において、前記ストローク位置に対する前記吸込流量の変化を規定する流量減少特性に従って、前記吸込流量を制御し、
前記流量減少特性は、前記ストローク位置が前記ストロークエンドに近づくほど前記吸込流量が減少する減少部分を有し、
前記流量低減制御の実行前の吸込流量に応じて、前記流量減少特性の前記減少部分における前記吸込流量の変化率が変化する、
請求項1に記載の油圧駆動システム。
【請求項5】
前記流量低減制御の実行前の吸込流量が小さいほど、前記流量減少特性の前記減少部分における前記吸込流量の変化率が小さい、
請求項4に記載の油圧駆動システム。
【請求項6】
前記流量低減制御の実行前の前記吸込流量に関わらず前記吸込流量の減少が開始される前記ストローク位置は同じである、
請求項5に記載の油圧駆動システム。
【請求項7】
前記流量減少特性では、前記ストロークエンドを含む前記ストローク位置の所定範囲において、前記吸込流量が前記チャージポンプの最大吐出流量以下の所定流量に維持される、
請求項2から6のいずれかに記載の油圧駆動システム。
【請求項8】
前記流量減少特性では、前記ストローク位置が前記ストロークエンドに近づくほど前記吸込流量が減少し、前記ストローク位置が前記ストロークエンドに到達したときに、前記吸込流量がゼロに到達する、
請求項2から6のいずれかに記載の油圧駆動システム。
【請求項9】
前記流量減少特性では、前記ストローク位置が前記ストロークエンドに近づくほど前記吸込流量が減少し、前記ストローク位置が前記ストロークエンドに到達する前に、前記吸込流量がゼロに到達する、
請求項2から6のいずれかに記載の油圧駆動システム。
【請求項10】
前記油圧シリンダが伸長と収縮との何れの動作中であるのかを判定する伸縮判定部をさらに備え、
前記油圧シリンダが伸長動作中であるときには、前記ポンプ制御部は、前記流量低減制御において、伸長動作用の前記流量減少特性に従って、前記吸込流量を制御し、
前記油圧シリンダが収縮動作中であるときには、前記ポンプ制御部は、前記流量低減制御において、収縮動作用の前記流量減少特性に従って、前記吸込流量を制御する、
請求項2から9のいずれかに油圧駆動システム。
【請求項11】
前記油圧シリンダを操作するための操作部材をさらに備え、
前記伸縮判定部は、前記ストローク位置検出部の検出結果から前記シリンダロッドが伸長方向と収縮方向との何れの方向に移動しているかを判定し、前記シリンダロッドの移動方向と、前記操作部材の操作方向とが一致しているときに、前記シリンダロッドが伸長動作中または収縮動作中であると判定する、
請求項10に記載の油圧駆動システム。
【請求項12】
収縮動作時に前記油圧シリンダから前記メインポンプに戻る作動油の流量は、伸長動作時に前記油圧シリンダから前記メインポンプに戻る作動油の流量よりも大きい、
請求項10又は11に記載の油圧駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−44397(P2013−44397A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182939(P2011−182939)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】