説明

油性化粧料

【課題】 本発明は、塗布膜のツヤや付着性に優れると共に、べたつきが少なく伸び広がりの軽い油性化粧料を提供するものである。
【解決手段】 本発明は、次の成分(a)〜(c);(a)一次粒子の厚みが0.001〜0.1μm、比表面積当たりのシラノール基(SiOH)が20〜70μmol/mである鱗片状シリカを構成要素として形成された、平均粒子径が1〜50μmであり、易崩壊性である造粒シリカ粒子、(b)固形油及び/又は油ゲル化剤、(c)高粘度油剤を配合することを特徴とする油性化粧料に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜のツヤや付着性に優れると共に、べたつきが少なく伸び広がりの軽い油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から油性化粧料において塗布膜のツヤや付着性を高める為に、高粘度油剤を配合する技術が知られている。しかしながら高粘度油剤の配合が多くなるにしたがってべたつきが増し、伸び広がりが軽く感触の好ましい油性化粧料を得ることが困難になることがあった。そこで油剤のべたつきを抑制する方法として、シリカや樹脂粉末などの粉体を配合することによって油剤のべたつきやテカリを抑える技術(例えば、特許文献1)や、イソパラフィンおよびノルマルパラフィンを含有する炭化水素からなるワックス組成物を特定の分子量のポリブテンと併用してべたつきを抑える技術(例えば、特許文献2)があった。
しかしながら、シリカや樹脂粉末などの粉体を配合した場合は、低粘度油剤のべたつきやテカリを抑える効果は得られるが、ポリブテンなどの高粘度油剤と併用すると期待するほどの効果が得られず、のびが重くなってしまったりツヤが損なわれたりすることがあった。また、イソパラフィンおよびノルマルパラフィンを含有する炭化水素からなるワックス組成物を特定の分子量のポリブテンと併用する技術では、べたつきを抑える効果は得られるがのびが重くなったり、油っぽさが抑えられなかったりすることがあった。
以上のように、既存技術では、塗布膜のツヤや付着性に優れると共に、べたつきが少なく伸び広がりの軽い油性化粧料を得ることは困難であった。
【0003】
一方、肌への延展性が良好な物質として、鱗片状シリカを造粒した易崩壊性造粒シリカ粒子が知られている。易崩壊性造粒シリカ粒子を化粧料に配合した場合、塗布する際の物理的な摩擦によってシリカ粒子が徐々に崩壊することで、延展性が向上することが報告されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、この易崩壊性造粒シリカ粒子と固形油及び/又は油ゲル化剤と高粘度油剤を組み合わせて用いることによる特性については全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−247808号公報
【特許文献2】特開2002−316910号公報
【特許文献3】国際公開第2008/123284号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塗布膜のツヤや付着性に優れると共に、べたつきが少なく伸び広がりの軽い油性化粧料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の平均粒子径と圧縮強度を有する造粒シリカ粒子と、固形油及び/又は油ゲル化剤と、高粘性油剤とを組み合わせて配合することにより、高粘度油剤の持つ塗布膜のツヤや付着性といった特長を損なうことなくべたつきを抑え、さらに伸び広がりが軽く油っぽさのない使用感に優れる油性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(c);
(a)一次粒子の厚みが0.001〜0.1μm、比表面積当たりのシラノール基(SiOH)が20〜70μmol/mである鱗片状シリカを構成要素として形成された、平均粒子径が1〜50μmであり、易崩壊性である造粒シリカ粒子
(b)固形油及び/又は油ゲル化剤
(c)高粘度油剤
を配合することを特徴とする油性化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油性化粧料は、塗布膜のツヤや付着性に優れると共に、べたつきが少なく伸び広がりが軽く、油っぽさのない使用感に優れる油性化粧料が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる、成分(a)の一次粒子の厚みが0.001〜0.1μm、比表面積当たりのシラノール基(SiOH)が20〜70μmol/mである鱗片状シリカを構成要素として形成された、平均粒子径が1〜50μmであり、易崩壊性である造粒シリカ粒子(ここで「成分(a)の造粒シリカ粒子」と略すことがある。)は、本発明において高粘度油剤の持つ塗布膜のツヤや付着性といった特長を損なうことなくべたつきを抑え、さらに伸び広がりが軽く油っぽさのない使用感を具現化するものである。成分(a)の造粒シリカ粒子は文献3記載の方法で製造することができ、また記載の物質を用いることができる。
成分(a)の造粒シリカ粒子は、一次粒子の厚みが0.001〜0.1μm、比表面積当たりのシラノール基(SiOH)が20〜70μmol/mである鱗片状シリカを、水などの溶媒でスラリー状にして噴霧乾燥などの造粒工程で脱溶媒することにより製造されるものであり、平均粒子径が1〜50μm、易崩壊性である。
更にこの鱗片状シリカの平均二次粒子径は、0.05〜5μmで、アスペクト比は、10以上が好ましく、更に好ましくは、30以上である。尚、本発明においてアスペクト比は、粒子の長径を厚さで除した値であり、走査型電子顕微鏡(KEYENCE社製のリアルサーフェイスビュー顕微鏡VE−7800)を用いて長径と厚さの測定を10個の粒子について行い、その平均値を用いることで算出できる。
このような鱗片状シリカは、一般には13〜15質量%(以下、単に「%」とする。)の濃度で水に分散したコロイド分散物として提供されており、このようなコロイド分散液の例としては、旭硝子エスアイテック社製のサンラブリーLFS等の市販品が挙げられる。
【0010】
なお、上記鱗片状シリカのシラノール基密度は、熱重量分析法(モデル990 TGA−分析器(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)によって、以下の条件にて測定した。すなわち、20〜100mgのシリカを小さな石英ルツボ中に充填し、TGA−分析器に入れた。乾燥窒素ガスを50ml/分の流速で加熱室を通過させながら、サンプルを10℃/分の割で120°に加熱して吸着された水をシリカ表面から物理的に除去した。サンプルを重量損失がもはや観察できなくなるまで120℃に維持した。次に、温度を前と同じ加熱速度で300℃に上昇させ、一定の重量に達するまでこの温度に保持した。同じ操作を500℃、700℃、900℃、1050℃、および1200℃で繰り返した。各温度で、特徴的な重量損失を各サンプルについて観察した。シリカ面の全シラノール基濃度は、120℃の乾燥段階に続く1200℃までの全重量%損失から計算した。シラノール基濃度の計算は、シラノール基の2モルが加熱によって結合して1モルの水(これは加熱処理中にサンプルから失なわれる)になるという仮定に基づき行った。シリカ面の全シラノール基濃度(μmol/m)は下記の式に従って計算した。
【0011】
シラノール基濃度=W×1111.1/SA
ここで、Wは120℃の恒量時から1200℃における加熱までの平衡における重量%損失差、SAはシリカのBET窒素表面積m/gである。
【0012】
上記鱗片状シリカを分散させるために用いる水性溶媒としては、精製水、ミネラルウォーター、深層水や水と低級アルコールとの混合溶媒等を使用することができる。使用しうる低級アルコールとしては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。本発明ではこれらのなかでも精製水を用いるのが最も好ましい。なお、鱗片状シリカがコロイド分散液として提供される場合には、これを更に水性溶媒で希釈し、以降の造粒工程で使用しても良い。
【0013】
本発明の成分(a)の造粒シリカ粒子は、鱗片状シリカを必要に応じて水性溶媒中に分散させてスラリー状にし、これを噴霧乾燥等の造粒工程で脱溶媒することにより製造することができる。スラリーの形成方法としては、鱗片状シリカまたはそのコロイド分散物と水性溶媒を混合し、連続的にスラリーを形成する方法などが挙げられる。この際に、他の成分を添加することも可能である。
【0014】
以上のようにして得られた造粒シリカ粒子の平均粒子径は、レーザー型乾式粒度分布測定装置(例えば、セイシン企業社製PRO7000S等)を用い、体積平均粒子径(D50)として測定可能である。本発明の造粒シリカ粒子の平均粒子径には、特に限定はないが、感触上、1〜50μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1〜30μmの範囲である。また、粒子径は電子顕微鏡像から判断することも可能である。なお、得られた造粒シリカ粒子の形状は球状、異形状(楕円球状、扁平状等)、不定形状などの形態であっても構わないが、球状であることが好ましい。なお、造粒シリカ粒子の中には、中空な形状のものも存在する。
【0015】
また、造粒シリカ粒子の圧縮強度は、微小圧縮試験機MCT−W500(島津製作所社製)を用いて測定可能である。そして、この圧縮強度は、加圧圧子をΦ50μm平面圧子(ダイヤモンド製)とし、負荷速度を0.892mN/sec、試験力9.81mNの条件にて測定した時に、0.2〜4MPaの範囲の圧縮強度であることが好ましく、少なくともこの範囲であれば易崩壊性である。
【0016】
本発明に用いられる、成分(a)の造粒シリカ粒子は、造粒シリカ粒子中に有効成分として水不溶性成分及び/又は水溶性成分を内包せしめた複合粉体とすることもできる。
原料として用いられる鱗片状シリカは、上記成分成分(a)の造粒シリカ粒子と同様のものである。
【0017】
前記内包される水不溶性成分としては、油性成分や、これを含有する乳化組成物が挙げられる。これらの水不溶性成分は、一般に脱溶媒に用いるスプレードライヤーの乾燥条件が100℃以上であるため、沸点が100℃を超える、化粧料に通常使用される成分であることが望ましい。
【0018】
油性成分としては、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素系類、カルナウバロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、キャンデリラ等の天然ロウ類、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ホホバ油、炭酸ジアルキル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸ジグリセリル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、モクロウ等の油脂類、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン系油剤類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、メチルトリフロロプロピルシクロポリシロキサン等のフッ素系油剤類、赤色226号、緑色223号、紫色201号等の油溶性色素等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を選択し、用いることができる。この中でもスクワランであると、塗布膜のツヤやエモリエント感の点で好ましい。また、オリーブ油やコメヌカ油、小麦胚芽油、ゴマ油等の植物油より抽出されるスクワランがより好ましい。
【0019】
また、該複合粉体に内包させる水不溶性成分としては、上記油性成分の他、リン脂質、紫外線吸収剤、界面活性剤等も挙げられる。
【0020】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられ、PABA系としては、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等が挙げられ、ケイ皮酸系としては、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−メトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル等が挙げられ、サリチル酸系としては、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル等が挙げられ、その他、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
該複合粉体において、これらの水不溶性成分の好ましい内包率は5%〜70%であり、更に10〜50%が伸び広がりの軽さの点で好ましい。
【0021】
なお、水不溶性成分である油性成分が水性溶媒に分散しにくい場合は、製法上、このものを乳化組成物として配合することが好ましい。この場合の乳化組成物は、水性成分、油性成分および界面活性剤で形成されるものであれば、O/W型、W/O型、W/O/W型、O/W/O型のいずれであってもよく、また複数を併用してもかまわないが、O/W型、W/O/W型が好ましい。
【0022】
水不溶性成分を、該複合粉体に内包させるには、水性溶媒中に水不溶性成分を直接分散させて配合する方法と、上記のように予め水不溶性成分を乳化組成物としてから分散、配合する方法がある。
【0023】
何れの場合においても、水性媒体が必要であるか、ここで使用される水性溶媒としては、精製水、ミネラルウォーター、深層水や、これらの水と低級アルコールとの混合溶媒のことを意味する。低級アルコールとしては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらのなかでも精製水を用いるのが最も好ましい。
【0024】
更に、水不溶成分を乳化組成物とするために利用される界面活性剤としては、通常、化粧料に用いられるものであれば特に限定されず使用することができる。具体的には、グリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ソルビトール脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等の非イオン性界面活性剤類、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アルキルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩等の陰イオン性界面活性剤類、アルキルアミン塩、ポリアミンおよびアルカノイルアミン脂肪酸誘導体、アルキルアンモニウム塩、脂環式アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤類、レシチン、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0025】
上記水不溶成分中には、更にこれに溶解できる各種の生理活性成分を配合することができる。このような生理活性成分とは、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、美白成分、抗炎症剤、老化防止剤、スリミング剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、皮膚着色剤、酵素成分等が挙げられる。その中でも天然系の植物抽出液、海藻抽出成分、生薬成分が特に好ましい。これらの生理活性成分は、一種又は二種以上を用いることができる。
【0026】
また、前記水性溶媒中には、更に水性成分を加えておくこともできる。このような水性成分としては通常、化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、具体的には、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等グリセロール類、アロエベラ、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の水蒸気蒸留水等を挙げることができ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。また更に、この水性溶媒中に、これに溶解可能な各種の生理活性成分を配合することができる。このような生理活性成分とは、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、美白成分、抗炎症剤、老化防止剤、スリミング剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、皮膚着色剤、酵素成分等が挙げられる。その中でも天然系の植物抽出液、海藻抽出成分、生薬成分が特に好ましい。本発明では、これらの生理活性成分を一種又は二種以上を用いることができる。
【0027】
本発明に用いられる、成分(a)の造粒シリカ粒子が、水溶性成分を内包し、かつ、液状油剤を内包する場合において、塗布時に内包した液状油剤が放出されることによって、塗布膜のツヤが顕著に向上する効果が得られ、好ましい。
【0028】
本発明に用いられる、成分(a)の造粒シリカ粒子は、造粒シリカ粒子中に有効成分として水溶性成分を内包せしめた複合粉体とすることもできる。
【0029】
該複合粉体に内包させる水溶性成分としては、水に可溶で、一般に脱溶媒に使用されるスプレードライヤーの乾燥温度が100℃以上であるため、沸点が100℃を超える、化粧料に通常使用される成分であることが望ましく、水溶性美容成分を安定に、しかも多量配合するために、多価アルコールが好ましい。具体的な多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が例示され、これらより選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
【0030】
また、水溶性成分として、上記多価アルコールの他、これに溶解可能な各種の生理活性成分も例示することができる。本発明で用いる生理活性成分とは、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、美白成分、抗炎症剤、老化防止剤、スリミング剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、皮膚着色剤、酵素成分等が挙げられる。その中でも天然系の植物抽出液、海藻抽出成分、生薬成分が特に好ましい。本発明では、これらの生理活性成分を一種又は二種以上を用いることができる。
【0031】
更に、他の水溶性成分としては、赤色106号、赤色227号、青色202号、青色205号、黄色5号、黄色203号、緑色201号、緑色202号、橙色205号等の水溶性色素も挙げることができる。
該複合粉体において、これらの水性成分の好ましい内包率は5〜70%であり、更に10〜50%がべたつき感の低減や安定性の点で好ましい。
【0032】
上記した水溶性成分は、水性溶媒に含有させた上で、鱗片状シリカのコロイド分散物と混合され、スラリー化される。ここで使用される水性溶媒とは、精製水、ミネラルウォーター、深層水や、これらの水と低級アルコールとの混合溶媒のことを意味する。低級アルコールとしては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。本発明ではこれらのなかでも精製水を用いるのが最も好ましい。
【0033】
本発明にもちらいれる複合粉末の製法はこれに限られるものではないが、上記の各成分を混合してスラリー状にし、これを噴霧乾燥等の造粒工程により脱溶媒することにより調製することが好ましい。スラリーの形成方法としては、鱗片状シリカのコロイド分散物と水性溶媒に水溶性成分をデスパーミルにより混合し、連続的にスラリーを形成する方法などが挙げられる。
本発明に用いられる、成分(a)の造粒シリカ粒子の好ましい配合量は、全組成分中0.05〜15%であり更に好ましくは0.1〜5%である。この範囲であると、べたつきがかなり抑えられ、伸び広がりが非常に軽く油っぽさのない使用感に優れるため好ましい。また、成分(a)の造粒シリカ粒子中に水溶性成分及び/又は水不溶性成分を内包せしめた複合粉体の配合量は、ツヤや保湿感の向上、べたつきの低減、伸び広がりの軽さの点で0.05〜20%が好ましく、更には0.1〜10%が好ましい。
【0034】
本発明で用いられる成分(b)の固形油及び/又は油ゲル化剤としては、通常化粧料に用いられるもので、油性成分を固化ないしゲル化できるものであれば特に限定されず、固形状、ペースト状等の化粧料の性状に応じて、適宜選択して配合することができる。成分(b)の配合量は、特に制限されないが、全組成分中0.05〜25%が好ましく、更に0.1〜20%が好ましい。この範囲であると、使用性、化粧膜のツヤ感等に優れた油性化粧料を得ることができる。固形油及び/又は油性ゲル化剤は、必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0035】
リップスティックやスティックファンデーションのような固形状の油性化粧料には、固形油を用いることが好ましく、この中でも、炭化水素ワックスが好ましく、パラフィンワックス、セレシンワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられ、さらにこの中でも合成炭化水素ワックスである、エチレン・プロピレンコポリマー、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスであることが好ましい。エチレン・プロピレンコポリマーは分子量が500〜700の範囲にあるものが好ましく用いることができる。また、その融点は、特に80℃〜110℃のものが形状保持性の観点より好ましい。このようなエチレン・プロピレンコポリマーとしては、市販品として、ペトロライトEP−700(Baker
Petrolite社製)等が例示でき、ポリエチレンワックスの市販品としては、PERFORMALENE500、PERFORMALENE655、PERFORMALENE725、PERFORMALENE850(Baker
Petrolite社製)等が例示でき、フィッシャートロプシュワックスの市販品としては、CIREBELLE108(CIREBELLE社製)等が例示できる。
【0036】
本発明の油性化粧料における成分(b)として炭化水素ワックスを配合する場合の配合量は、0.1〜20%が好ましく、特に、2〜15%がより好ましい。この範囲で配合すると、使用感、経時安定性が良好で、ツヤに優れるとともに、形状保持性がより向上する。
【0037】
また、リキッドルージュやリキッドアイシャドウのようなペースト状の油性化粧料には、油ゲル化剤を用いることが好ましく、この中でもデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、金属石鹸、煙霧状無水ケイ酸、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、及び有機変性粘土鉱物等が挙げられ、さらにこの中でもデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸を用いることが好ましく、更にデキストリン脂肪酸エステルを用いるとツヤの点で好ましい。
デキストリン脂肪酸エステルは、油溶性のもので炭素数8〜24(好ましくは14〜18)の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和脂肪酸と平均重合度10〜50(好ましくは20〜30)のデキストリンとのエステル化合物である。具体例としてはパルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸/ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。市販品としてはレオパールKL、レオパールTL、レオパールTT(千葉製粉社製)等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、通常化粧料に使用するショ糖脂肪酸エステルであればいずれのものも使用できるが、特にパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、及びラウリン酸等の脂肪酸エステルが好ましい。
イヌリン脂肪酸エステルとしては、通常化粧品に使用するイヌリン脂肪酸エステルであればいずれのものも使用できるが、特にステアリン酸の脂肪酸エステルが好ましく、市販品としては、例えば、レオパールISK(千葉製粉社製)が挙げられる。
12−ヒドロキシステアリン酸は、水酸基を持つ脂肪酸であるが、例えば、ひまし油から得られるリシノール酸に水素添加して得ることができる。
【0038】
本発明の油性化粧料における成分(b)としてデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸を配合する場合の配合量は、好ましくは0.1〜20%、更に好ましくは、1〜15%である。配合量がこの範囲であれば、塗布後のツヤ感、使用感に良好な油性化粧料を得ることができる。
【0039】
本発明に用いられる成分(c)の高粘度油剤は、本発明においてツヤと付着性を付与するもので、通常化粧料に用いられ、25℃での粘度が1Pa・s以上の液体であれば、特に制限されず使用することができる。例えば、ポリイソブチレン、ポリブテン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー等の炭化水素類、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸ポリグリセリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)等のエステル類、酢酸液状ラノリン等のラノリン誘導体、高重合度ジメチルポリシロキサン、高重合メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン類、フッ素変性オルガノポリシロキサン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。この中でも、ポリイソブチレン、ポリブテン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー等の炭化水素類が、みずみずしいツヤの点で好ましい。
(c)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜80%であり、より好ましくは1〜50%である。この範囲であれば、本発明は、塗布膜のツヤや付着性、べたつきのなさ、伸び広がりの軽さの点において満足のいくものが得られる。
【0040】
また、本発明において、成分(b)、(c)以外で、更に油剤を配合することにより、塗布時の感触を調整できる。ここで用いる油剤としては、通常化粧料に用いられる油分であれば特に制約なく使用することができ、動物油、植物油、合成油等の起源や半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類などが挙げられる。具体的には、流動パラフィン、成分(c)以外のスクワラン、ワセリン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ホホバ油等のエステル類、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン油類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類などが挙げられる。
【0041】
粉体としては、成分(a)以外で、通常化粧料に用いられるものであればいずれのものでもよく、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、二酸化珪素・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理ガラス末、酸化鉄酸化チタン処理ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、無水ケイ酸等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。また、これら粉体は一種又は二種以上の複合化したものを用いても良い。
【0042】
本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記必須成分以外の各種成分、例えば界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、水性成分、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤、香料などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0043】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であれば特に制約はなく、非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が使用される。更に、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤や、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
また、水性成分はモイスチャー効果を付与する目的で用いることができ、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等がそれぞれ挙げられる。
【0044】
本発明の油性化粧料の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、90〜100℃で溶解した成分(b)、(c)、及び必要に応じて他の液状油剤を含む油性成分に、成分(a)や他の成分を均一に分散した後、容器に充填して冷却することにより得ることができる。
【0045】
本発明において油性化粧料としては、メイクアップ化粧料、スキンケア化粧料、頭髪化粧料が挙げられ、具体的に例えばメイクアップ化粧料としては、口紅、グロス、リップトリートメント、リップクリーム、リップ下地、アイカラー、チーク、ファンデーション、ファンデーション下地、マスカラが挙げられる。好ましくは口唇化粧料である口紅、グロス、リップトリートメント、リップクリーム、リップ下地が挙げられ、その中でも特にグロス、口紅であることが好ましい。剤形は固形状、ペースト状、液状等に適用できるが、液状において特に色持ちや発色、塗布膜の均一性の良さが発揮される。
【0046】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0047】
(製造例1)
スクワラン内包複合粉体
シラノール基密度が60μmol/mである鱗片状シリカの15%濃度水性溶媒コロイド懸濁物(サンラブリー−LFS−C;旭硝子エスアイテック社製)70質量部に、スクワラン(植物性)30質量部をデスパーミルにて分散させ、スラリーとした。このものを噴霧装置としてディスク式アトマイザーを持つスプレードライヤー(L−8型;大川原化工機社製)を用い、アトマイザー回転数30000rpm、流量50ml/min、入口温度設定200℃、出口温度設定135〜140℃の条件で噴霧乾燥した。
【0048】
(製造例2)
造粒シリカ粒子
シラノール基密度が60μmol/mである鱗片状シリカの15%濃度水性溶媒コロイド懸濁物(サンラブリー−LFS−C;旭硝子エスアイテック社製)を原料スラリーとした。このものを、噴霧装置としてディスク式アトマイザーを持つスプレードライヤー(L−8型;大川原化工機社製)を用い、アトマイザー回転数30000rpm、流量50ml/min、入口温度設定200℃、出口温度設定130〜140℃の条件で噴霧乾燥した。
(製造例3)
フォンブリン内包複合粉体
製造例1で使用したコロイド懸濁物を80質量部、スクワラン30質量部をフォンブリン20質量部に代えて、製造例1と同様の方法で製造した。
【0049】
(製造例4)
グリセリン内包複合粉体
シラノール基密度が60μmol/mである鱗片状シリカの15%濃度水性溶媒コロイド懸濁物(サンラブリー−LFS−C;旭硝子エスアイテック社製)95質量部に、グリセリン5.0質量部をデスパーミルにて均一に分散させ、スラリーとした。このものを噴霧装置としてディスク式アトマイザーを持つスプレードライヤー(L−8型;大川原化工機社製)を用い、アトマイザー回転数30000rpm、流量50ml/min、入口温度設定200℃、出口温度設定130〜140℃の条件で噴霧乾燥した。
【0050】
(実施例1〜8及び比較例1〜2)液状グロス
表1に示す処方及び下記に示す製造方法により、液状グロスを製造した。得られた各液状グロスについて、官能評価により、塗布膜のツヤ、付着性、べたつきのなさ、伸び広がりの軽さを評価した。
【0051】
【表1】

【0052】
*1:製造例1に示すスクワラン内包複合粉体
*2:製造例2に示す造粒シリカ粒子
*3:サンスフェアL−51−c(旭硝子エスアイテック社製)
*4:レオパールKL2(千葉製粉社製)
*5:レオパールTT2(千葉製粉社製)
*6:精製ポリブテンHV−100F(SB)(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*7:KLEAROL(SONNEBORN,INC社製)
*8:AEROSIL 380S(日本アエロジル社製)
(製造方法)
A:成分4〜12を90〜100℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分1〜3、13〜19を加えて、均一に混合する。
C:Bを脱泡後、加熱してグロス容器(塗布体付き容器)に直接流し込み、液状リップグロスを得た。
【0053】
(評価)
1.官能評価
(イ)塗布膜のツヤ、(ロ)付着性、(ハ)べたつきのなさ、(ニ)のびの軽さについて、専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて7段階に評価し評点を付け、試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
(評価方法)
20名の官能検査パネルにより、各試料を口唇に塗布し、下記(イ)〜(ニ)について、パネル各人が絶対評価にて7段階に評価し、各試料のパネル全員の評点の平均値から4段階判定基準により判定した。尚、表1には判定結果とともに、平均値を記載した。
(イ)塗布膜のツヤ
(ロ)付着性
(ハ)べたつきのなさ
(ニ)伸び広がりの軽さ
(絶対評価)
(評点):(評価)
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
(判定基準)
(評点平均値) (判定)
5点を超える :非常に優れる:◎
3点を超えて5点以下:優れる :○
1点を超えて3点以下:劣る :△
1点以下 :非常に劣る :×
【0054】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜8は、塗布膜のツヤや付着性に優れると共に、べたつきが少なく伸び広がりが軽く、油っぽさのない使用感に優れるものであった。
一方、成分(a)の造粒シリカが配合されていない比較例1では、塗布膜のツヤ、付着性、べたつきのなさ、伸びの軽さのいずれも満足いくものが得られなかった。
また、成分(a)の代わりに球状シリカを配合した比較例2では、成分(a)のような塗布時の崩壊性がないために、特に伸び広がりの軽さが得られなかった。
【0055】
(実施例9〜16及び比較例3〜4)スティック状口紅(金型成型)
表2に示す処方及び下記に示す製造方法により、スティック口紅を製造した。得られた各スティック口紅について、官能評価により、塗布膜のツヤ、付着性、べたつきのなさ、伸び広がりの軽さを評価した。
【0056】
【表2】

【0057】
*9:EP−700(ニューフェーズテクノロジー社製)
*10:CIREBELLE108(シアベル社製)
(製造方法)
A:成分4〜12を100〜110℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分1〜3、13〜20を加えて、均一に混合する。
C:Bを脱泡後、加熱して金型(アルミニウム製)に流し込み、冷却固化してスティック状口紅を得た。
【0058】
(評価)
評価方法は実施例1〜8、比較例1,2と同様に行った。
【0059】
表2から明らかなように、本発明の実施例9〜16は、塗布膜のツヤや付着性に優れると共に、べたつきが少なく伸び広がりが軽く、油っぽさのない使用感に優れるものであった。
一方、成分(a)の造粒シリカが配合されていない比較例3では、塗布膜のツヤ、付着性、べたつきのなさ、伸びの軽さのいずれも満足いくものが得られなかった。
また、成分(a)の代わりに球状シリカを配合した比較例4では、成分(a)のような塗布時の崩壊性がないために、特に伸び広がりの軽さが得られなかった。
【0060】
実施例17:固形状アイカラー
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス 10
2.ロジン酸ペンタエリスリット 5.5
3.ラウリン酸デキストリン 2
4.ミリスチン酸デキストリン 5
5.ベヘニン酸デキストリン 5
6.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 20
7.流動パラフィン*7 残量
8.無水ケイ酸*8 6
9.ナイロン末*11 10
10.スクワラン内包シリカ*1 10
11.シリコーン処理タルク*12 5.5
12.赤色202号 0.05
13.黄色4号アルミニウムレーキ 0.05
14.青色1号アルミニウムレーキ 0.05
15.雲母チタン 1.5
16.防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 適量
17.香料 適量
*11:ナイロン粉末 SP−500(東レ社製)
*12:ジメチルポリシロキサン5%処理
(製造方法)
A:成分1〜6を110℃で溶解混合する。
B:Aに成分7〜17を加え、均一に混合分散する。
C:Bを容器に流し込み、冷却固化してアイカラーを得た。
実施例17のアイカラーは、塗布膜のツヤや付着性に優れると共に、べたつきが少なく伸び広がりが軽く、油っぽさのない使用感に優れるアイカラーであった。
【0061】
実施例18:化粧下地
(成分) (%)
1.マイクロクリスタリンワックス 10
2.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
3.流動パラフィン*7 20
4.ポリイソブチレン 10
5.グリセリン内包複合粉体*13 10
6.防腐剤(1,2−ペンタンジオール) 適量
*13:製造例4で示すグリセリン内包複合粉体
(製造方法)
A:成分1〜4を110℃で溶解混合する。
B:Aに成分5〜6を加え、均一に混合分散する。
C:Bを容器に流し込み、冷却して下地を得た。
実施例18の化粧下地は、塗布時の伸び広がりの軽さや付着性に優れると共に、べたつきが少ない良好な下地であった。更に、上からファンデーションを塗布しても、密着性がよく、更に、化粧持ち効果、塗布時の滑らかな伸び広がりにおいて優れたものであった。
【0062】
実施例19:スティック状ファンデ−ション
(成分) (%)
1.イソノナン酸イソノニル 8
2.トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 40
3.ミリスチン酸イソステアリル 5
4.エチレン・プロピレンコポリマー*9 5
5.固形パラフィン(融点85℃) 6
6.メチルハイドロジェン(2%)処理酸化チタン 8
7.メチルハイドロジェン(2%)処理酸化亜鉛 2
8.メチルハイドロジェン(2%)処理ベンガラ 0.5
9.メチルハイドロジェン(2%)処理黄色酸化鉄 2
10.メチルハイドロジェン(2%)処理黒色酸化鉄 0.2
11.メチルハイドロジェン(2%)処理セリサイト 残量
12.フォンブリン内包複合粉体*14 10
13.防腐剤(フェノキシエタノール) 0.3
14.香料 適量
*14:製造例3で示すフォンブリン内包複合粉体
(製造方法)
A:成分1〜5を100〜110℃に加熱し、均一溶解する。
B:Aに成分6〜14を添加して、均一分散する。
C:Bを溶融して、脱泡する。
D:Cをスティック状の容器に流し込み、室温まで冷却して、スティック状ファンデ−ションを得た。
実施例19のスティック状ファンデ−ションは、塗布時の伸び広がりの軽さや付着性に優れると共に、べたつきが少なく油っぽさのない使用感に優れ、化粧持ちのよいファンデーションであった。
【0063】
(実施例20) リキッドルージュ(塗布体付き容器)
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス 2
2.エチレン・プロピレンコポリマー*9 4
3.マイクロクリスタリンワックス 1
4.イソノナン酸イソトリデシル 5
5.ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル
/フィトステリル/ベヘニル) 5
6.ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 1
7.ワセリン 10
8.ポリブテン 5
9.重質流動イソパラフィン 10
10.流動パラフィン*7 12
11.リンゴ酸ジイソステアリル 残量
12.デカイソステアリン酸デカグリセリル 5
13.防腐剤(フェノキシエタノール) 0.1
14.酸化防止剤(2,6−ジ−ターシャリ−ブチル−パラクレゾール) 0.1
15.無水ケイ酸*8 2
16.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン5%処理
酸化チタン被覆ガラス末 3
17.香料 適量
(製造方法)
A:成分1〜12を100℃にて均一溶解する。
B:Aに成分13〜17を加え、均一に混合分散する。
C:Bを脱泡後、加熱して塗布体付き容器に直接流し込み、液状口紅を得た。
実施例20のリキッドルージュは、塗布時伸び広がりの軽さや付着性、ツヤに優れると共に、べたつきが少なく油っぽさのない使用感に優れるリキッドルージュであった。
【0064】
(実施例21) リップクリーム(油性固形スティック状)
(成分) (%)
1.マイクロクリスタリンワックス 8
2.ポリブテン 20
3.ワセリン 30
4.イソオクタン酸セチル 残量
5.ジイソステアリン酸ジグリセリル 10
6.グリセリン内包複合粉体*13 5
7.無水ケイ酸 0.5
8.天然ビタミンE 0.5
9.防腐剤(フェノキシエタノール) 0.2
10.酸化防止剤(2,6−ジ−ターシャリ−ブチル−パラクレゾール) 0.02
11.香料 適量
(製造方法)
A:成分1〜5を110℃に加温して溶解する。
B:Aに成分6〜11を加えて均一に混合分散する。
C:Bを脱泡後、90℃にてスティック容器に流し込み室温まで冷却して製品とする。
本発明のリップクリームは塗布時伸び広がりの軽さや付着性、ツヤに優れると共に、保湿感の点において優れたリップクリームであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)一次粒子の厚みが0.001〜0.1μm、比表面積当たりのシラノール基(SiOH)が20〜70μmol/mである鱗片状シリカを構成要素として形成された、平均粒子径が1〜50μmであり、易崩壊性である造粒シリカ粒子
(b)固形油及び/又は油ゲル化剤
(c)高粘度油剤
を配合することを特徴とする油性化粧料。
【請求項2】
前記成分(a)の造粒シリカ粒子の圧縮強度が0.2〜4MPa・sであることを特徴とする請求項1記載の油性化粧料。
【請求項3】
前記成分(a)の造粒シリカ粒子が、鱗片状シリカの平均二次粒子径が、0.05〜5μmであり、アスペクト比が10以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油性化粧料。
【請求項4】
前記成分(a)の造粒シリカ粒子が、造粒シリカ粒子中に水不溶性成分及び/又は水溶性成分を内包せしめた複合粉体であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項5】
前記水不溶性成分が、油性成分である複合粉体を配合することを特徴とする請求項4に記載の油性化粧料。
【請求項6】
前記油性成分が、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、カルナウバロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、キャンデリラ、脂肪酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ホホバ油、炭酸ジアルキル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸ジグリセリル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、モクロウ、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、フッ素系油剤、シリコーン系油剤、油溶性色素から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項5に記載の油性化粧料。
【請求項7】
請求項6記載の油性成分がスクワランであることを特徴とする油性化粧料。
【請求項8】
前記水不溶性成分が、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−メトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾンから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項4に記載の油性化粧料。
【請求項9】
前記水溶性成分が、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、美白成分、抗炎症剤、老化防止剤、スリミング剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、皮膚着色剤、酵素から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項4に記載の油性化粧料。
【請求項10】
前記成分(b)の油ゲル化剤がデキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、金属石鹸、煙霧状無水ケイ酸、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、有機変性粘土鉱物から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項11】
前記成分(b)の油ゲル化剤がデキストリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項12】
前記成分(c)の高粘度油剤がポリイソブチレン、ポリブテン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸ポリグリセリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル、酢酸液状ラノリン、高重合度ジメチルポリシロキサン、高重合メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、パーフルオロポリエーテルから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の油性化粧料。
【請求項13】
前記成分(c)の高粘度油剤がポリブテンであることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の油性化粧料。

【公開番号】特開2013−35789(P2013−35789A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174033(P2011−174033)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】